説明

光学ドライブ装置

【課題】プリピットが形成された光ディスクに形成された記録マークの再生をより安定させることができる光学ドライブ装置を提供する。
【解決手段】
光学ドライブ装置は、トラック上に複数のプリピットが形成された基板および前記基板に支持される記録膜を有する光ディスクに情報を記録する。光学ドライブ装置は、トラック上に記録マークを形成するよう光ピックアップを制御し、記録膜に記録用の光を照射させる記録制御部を備える。記録制御部は、トラック上において、記録マークを形成できる複数の記録領域Aa1〜Aa4、および記録マークを形成できない複数のプリピット再生領域Ab1〜Ab4を規定する情報に基づいて、記録領域の少なくとも一部に記録マークを形成するよう光ピックアップを制御する。記録マークが形成されるトラックにおいて、各記録領域の長さはいずれのプリピット再生領域の長さよりも短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報を記録することが可能な光学ドライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクに記録されているデータは、比較的弱い一定強度の光ビームを回転する光ディスクに照射し、光ディスクによって変調された反射光を検出することによって再生される。再生専用の光ディスクには、光ディスクの製造段階でプリピットによる情報が予め同心円またはスパイラル状に記録されている。これに対して、書き換え可能な光ディスクでは、同心円またはスパイラル状のグルーブが形成された基板に、光学的にデータの記録/再生が可能な記録材料膜が蒸着等の方法によって堆積されている。書き換え可能な光ディスクにデータを記録する場合は、記録すべきデータに応じて光パワーを変調したパルス状の光ビームを光ディスクに照射し、それによって記録材料膜の特性を局所的に変化させることによってデータの書き込みを行う。
【0003】
記録可能な光ディスク又は書き換え可能な光ディスクでは、記録材料膜にデータを記録するとき、上述のように光パワーを変調した光ビームを記録材料膜に照射することにより、結晶質の記録材料膜に非晶質の記録マークを形成する。この非晶質の記録マークは、記録用光ビームの照射を受けた記録材料膜の一部が融点以上の温度に上昇した後、急速に冷却されることによって形成される。光ビームを記録マークに照射するときの光パワーを低めに設定すると、光ビームが照射された記録マークの温度は融点を超えず、急冷後に結晶質に戻る(記録マークの消去)。こうして、記録マークの書き換えを何度も行うことが可能になる。データを記録するときの光ビームの光パワーの大きさが不適切であると、記録マークの形状が歪み、データを再生することが難しくなることがある。
【0004】
光ディスクに記録されているデータを再生するとき、または、記録可能な光ディスクにデータを記録するとき、光ビームが目標トラック上で常に所定の収束状態となる必要がある。このためには、「フォーカス制御」および「トラッキング制御」が必要となる。「フォーカス制御」は、光ビームの焦点(集束点)の位置が常に目標トラック上に位置するように対物レンズの位置をディスク表面の法線方向(以下、「光ディスクの深さ方向」と称する場合がある。)に制御することである。一方、トラッキング制御とは、光ビームのスポットが所定のトラック上に位置するように対物レンズの位置を光ディスクの半径方向(以下、「ディスク径方向」と称する。)に制御することである。
【0005】
上述したフォーカス制御およびトラッキング制御を行うためには、光ディスクから反射される光に基づいて、フォーカスずれやトラックずれを検知し、そのずれを縮小するように光ビームスポットの位置を調整することが必要である。フォーカスずれおよびトラックずれの大きさは、それぞれ、光ディスクからの反射光に基づいて生成される「フォーカス誤差(FE)信号」および「トラッキング誤差(TE)信号」によって示される。
【0006】
特許文献1には、データの記録容量を増大させるために、光ディスクに形成されたプリピットの間に情報を記録する光学ドライブ装置が開示されている。
【0007】
従来の光学ドライブ装置として、例えば特許文献1には、データの記録容量を増大させるために、光ディスクに形成されたプリピットの間に情報を記録する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−181429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された光学ドライブ装置は、光ディスクのトラック上に並んだ複数のプリピットの間に多数の記録マークを形成する。個々のプリピットの長さよりも記録マークが形成される領域の長さの方が長いため、再生時にPLL制御を安定して実行することができない可能性がある。その結果、トラックずれなどが発生し、追記録情報を適切に読み出すことができない場合がある。
【0010】
光学ドライブ装置において、記録された情報の再生品質は重要である。本発明は、プリピットが形成された光ディスクに記録マークが形成された場合において、記録後の記録マークの再生をより安定させることができる光学ドライブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光学ドライブ装置は、トラック上に複数のプリピットが形成された基板と、前記基板に支持される記録膜とを有する光ディスクに情報を記録することが可能な光学ドライブ装置である。光学ドライブ装置は、光ピックアップと、前記トラック上に記録マークを形成するよう前記光ピックアップを制御し、前記記録膜に記録用の光を照射させる記録制御部であって、前記トラック上において、記録マークを形成できる複数の記録領域、および前記記録マークを形成できない複数のプリピット再生領域を規定する情報に基づいて、前記記録領域の少なくとも一部に前記記録マークを形成するよう前記光ピックアップを制御する記録制御部とを備えている。前記記録マークが形成されるトラックにおいて、各記録領域の長さはいずれのプリピット再生領域の長さよりも短い。
【0012】
ある実施形態において、光学ドライブ装置は、メモリをさらに備え、前記複数の記録領域および前記複数のプリピット再生領域を規定する情報は、前記メモリに格納されている。
【0013】
ある実施形態において、前記複数の記録領域は、前記複数のプリピットの一部と重なるように設定されている。
【0014】
ある実施形態において、前記光ディスクのトラック上には、複数のプリピットが形成された領域とプリピットが形成されていない領域とが交互に設けられ、前記複数の記録領域は、前記プリピットが形成されていない領域に設定されている。
【0015】
ある実施形態において、前記記録制御部は、前記プリピットが形成されていない領域に、前記記録マークを記録するように前記光ピックアップを制御する。
【0016】
ある実施形態において、前記記録制御部は、前記プリピットの信号周波数帯域と前記記録マークの信号周波数帯域とが等しくなるように前記光ピックアップに前記記録マークを形成させる。
【0017】
ある実施形態において、前記光ディスクにおいて、前記プリピットが形成されない領域に、案内溝が形成されている。
【0018】
ある実施形態において、光学ドライブ装置は、前記光ピックアップで検出された反射光を示す信号に含まれる前記プリピットの情報に基づいて、トラッキング制御を行うトラッキング制御部を備える。
【0019】
ある実施形態において、前記トラッキング制御部は、前記記録マークが形成されている最中において、前記光ピックアップで検出された反射光を示す信号に含まれる前記プリピットの情報に基づいて、トラッキング制御を行う。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光学ドライブ装置によれば、プリピットが形成された光ディスクに記録マークを形成する場合において、記録後の記録マークの再生をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1に係る光学ドライブ装置の構成図
【図2】実施形態1に係る光ディスクの記録領域およびプリピット再生領域の例を示す図
【図3】実施形態1に係る光ディスクの断面図
【図4】実施形態1に係る光ディスクのプリピットを示す斜視図
【図5A】実施形態1に係る光ディスク(記録前)の平面図
【図5B】実施形態1に係る光ディスク(記録後)の平面図
【図5C】実施形態1に係る光ディスク上のプリピットと記録マークの関係を説明するための図
【図6】実施形態1に係る光学ドライブ装置による記録処理の流れを示す図
【図7A】実施形態1に係る記録マーク記録中のRF信号の例を示す図
【図7B】実施形態1に係る記録マーク記録後のRF信号の例を示す図
【図8A】実施形態2に係る光ディスク(記録前)の平面図
【図8B】実施形態2に係る光ディスク(記録後)の平面図
【図9】実施形態2に係る光ディスク上のプリピットと記録マークとの関係を説明するための図
【図10】実施形態2に係る記録マーク記録中のTE信号を説明するための図
【図11】実施形態2の変形例に係る光ディスク上のプリピットと記録マークとの関係を説明するための図
【図12】記録マークが多数のプリピットとオーバーラップする実施形態に係る光ディスクの記録マークの位置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による光学ドライブ装置の実施形態を説明する。以下の説明では、光ディスクのトラック上において、光学ドライブ装置が記録マークを形成し得る領域を「記録領域」と呼び、記録マークを形成し得ない領域を「プリピット再生領域」と呼ぶこととする。記録領域は、光学ドライブ装置によって指定される。
【0023】
(実施形態1)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。
【0024】
<1.本実施形態の構成>
<1.1 光学ドライブの構成(図1)>
図1を参照しながら、本実施形態における光学ドライブ500の構成例を説明する。光学ドライブ500は、パーソナルコンピューター、光ディスクプレーヤー、光ディスクレコーダー等に用いることができる。
【0025】
図1は、光学ドライブ500の構成例を示すブロック図である。光学ドライブ500は、光ピックアップ501と、光ディスク1を回転させるスピンドルモータ503と、光ピックアップ501の位置を制御する移送モータ502と、これらの動作を制御するシステムコントローラ505と、不揮発性メモリ506とを備えている。
【0026】
光ディスク1から光学的に読み出されるデータは、光ピックアップ501の受光素子(図示せず)で電気信号に変換され、システムコントローラ505に入力される。光ピックアップ501は、光ビームを放射する光源(半導体レーザ)と、光ビームを集光して光スポットを光ディスク1上に形成するための対物レンズ504と、対物レンズ504を駆動するアクチュエータなどの公知の構成要素を備えている。
【0027】
システムコントローラ505は、光ピックアップ501から得た電気信号に基づいて、フォーカスエラー(FE)信号およびトラッキングエラー(TE)信号を含むサーボ信号の生成、ならびに再生信号の波形等価、2値化スライス、同期データなどのアナログ信号処理を行う。
【0028】
システムコントローラ505は、生成されたサーボ信号により、光ピックアップ501の光スポットを、回転する光ディスク1の目標トラックに追従させる。システムコントローラ505は、光ピックアップ501が備える対物レンズ504のフォーカス制御およびトラッキング制御、光ピックアップ501の移送制御、スピンドルモータ制御などの一連の制御をデジタルサーボで実現する。すなわち、システムコントローラ505の働きにより、対物レンズ504のアクチュエータ(図示せず)の駆動のほか、光ピックアップ501を光ディスク1の内周や外周へ移送させる移送モータ502の駆動や、光ディスク1を回転させるスピンドルモータ503の駆動が適切に行われる。なお、システムコントローラ505は、半導体ICで実現可能である。
【0029】
不揮発性メモリ506には、システムコントローラ505で実行されるソフトウェア及び各種パラメータ等が記録されている。不揮発性メモリ506には、光ディスク1のトラック上において、記録マーク3を記録可能な位置(記録領域)および記録マーク3を記録できない位置(記録禁止領域)を規定する情報(記録領域情報)が記録されている。なお、記録禁止領域には、プリピットのみが形成され、記録マークが形成されないことから、本明細書では記録禁止領域のことを「プリピット再生領域」と称する。記録領域情報は、例えば、光ディスク1上のどのアドレスが記録領域で、どのアドレスがプリピット再生領域であるかを規定している。記録領域情報は、光ディスク1のトラック上のどの位置が記録領域かを示す情報であれば、どのような情報であってもよい。
【0030】
図2は、光ディスク1の1つのトラック上の記録領域およびプリピット再生領域の位置関係の例を模式的に示す図である。図2に示す例では、領域Aa1、Aa2、Aa3、Aa4が記録領域として規定されている。この場合、記録マークが形成され得るのは、記録領域Aa1、Aa2、Aa3、Aa4内に限られ、プリピット再生領域Ab1、Ab2、Ab3、Ab4内に記録マークが形成されることはない。なお、記録領域であっても記録マークが常に形成されるわけではなく、データに応じて1つの記録領域の中で記録マークが形成される部分と形成されない部分とが生じ得る。記録領域に記録マークを形成する処理については後述する。
【0031】
記録領域は、プリピット再生領域に比べて範囲が狭くなるように規定されている。言い換えれば、記録マークが形成されるトラックにおいて、各記録領域の長さは、いずれのプリピット再生領域の長さよりも短くなるように設定されている。
【0032】
本実施形態では、図2に示すように、各記録領域はプリピット再生領域に挟まれるように、分散して配置されている。このような配置により、安定した信号の再生を実現できる。このように構成することで、光ディスクには、プリピットのみが形成されたプリピット再生領域と、プリピットに加えて記録マークが形成され得る記録領域とが交互に設けられることになる。
【0033】
プリピットのみが存在する領域については、プリピットによる信号のみが得られるため、PLL制御を安定して実行することができる。一方、プリピットおよび記録マークの両方が形成された領域については、プリピットによる信号に加えて記録マークによる信号が重畳されるため、PLL制御を安定して実行できない場合がある。このような場合、記録マークがトラック上の長い距離にわたって形成されていると、PLL制御が不安定になり、トラックずれ等が発生し得る。
【0034】
しかしながら、本実施形態では、記録領域は、プリピット再生領域に挟まれており、また、記録領域の長さがプリピット再生領域の長さよりも短く設定されている。そのため、再生領域における安定したPLL制御により、記録領域におけるPLL制御もより安定するようになる。よって、本実施形態の光学ドライブ装置500によれば、再生時に記録領域でのPLL制御が不安定になる問題を解決することができる。
【0035】
言い換えれば、本実施形態では、再生領域の信号を再生した後、記録領域の信号を再生する際、PLL制御が安定した状態で記録領域の再生を開始できるので、記録領域におけるPLL制御もより安定するようになる。
【0036】
また、本実施形態の記録方式(プリピットの上に記録マークを記録すること)では、記録中にプリピットからのRF信号(TE信号も検出可能)を得ることができる。これにより、記録中もプリピットによるPLL制御ができるようになる。そのため、記録領域に形成される記録マークによる信号品質を高めることができる。
【0037】
<1.2 光ディスクの構成(図3〜図5C)>
次に、図3から図5Cを参照しながら、光ディスク1の構成を説明する。
【0038】
図3は、光ディスク1の断面の一部を模式的に示す図である。光ディスク1は、プリピット2が主面に形成された基板101と、基板101の主面に支持された積層構造とを備えている。本実施形態における積層構造は、基板101の側から積層された記録膜102と保護膜103とハードコート104とを有している。
【0039】
図1の光学ドライブ装置500は、データを光ディスク1に追記するとき、光ピックアップ501によってハードコート104の側から記録膜102に光を照射して、記録膜102に記録マーク3を形成する。
【0040】
基板101は、光ディスクの基礎となる部材である。図3では、1つのプリピット2が記載されているが、現実の基板101の主面には、記録膜102側に、多数のプリピット2が形成されている。プリピット2は、基板101の主面における物理的な凹凸であり、光ディスク1の製造時に基板101の成型工程で作られる。プリピット2を表面に有する基板101は、例えばBD−ROMを製造する公知の方法によって作製され得る。
【0041】
プリピット2の深さは、照射する光ビームの波長をλとするとき、例えばλ/7〜λ/4の範囲内の大きさに設定される。例えばλ=約405nmのとき、プリピット2の深さの典型例は、約60〜100nm(0.06〜0.1μm)に設定され得る。プリピット2のトラック方向における長さは、例えば0.15μmから、その数倍までの範囲内に設定され得る。
【0042】
本実施形態では、図4に示すように、「In−Pit」で光ディスク1にプリピット2が形成されている。「In−Pit」とは、光入射面に対して、凹部の形状を有するプリピットをいう。一方、「On−Pit」とは、光入射面に対して、凸部の形状を有するプリピットをいう。図3、4に示す例では、プリピット2は基板101の光入射側面に形成された凹部であるが、他の例において、プリピット2は凸部であってもよい。
【0043】
基板101は、例えばポリカーボネート材料から形成され得る。プリピット2は、同心円またはスパイラル状に配列され、トラックを形成する。すなわち、トラック上にプリピット2の列が形成されている。プリピット2により、基板101には作製時から書き換え不能のデータが記録される。プリピット2が形成されている基板101の主面は、読み出し専用の情報記録面(ROM面)として機能する。本実施形態で使用する光ディスク1は、このROM面に接する記録膜102をも有している。
【0044】
光ディスク1が図1の光学ドライブ装置500に装填され、動作するとき、記録膜102は、光ピックアップ501から出射された光によって照射される。光は、対物レンズ504を介して記録膜102上に集光され、記録膜102上に光スポットを形成する。光ディスク1の回転に伴って光スポットは、光ディスク上をその周方向に移動することになる。記録膜102に情報の追記がなされるとき、記録膜102は十分に強い光で照射され、その結果、照射部分における記録膜102の反射率、透過率、位相差等の光学特性が変化する。
【0045】
記録膜102のうち、記録用の光の照射によって光学特性が変化した部分が「記録マーク3」として機能する。トラックに沿って複数の記録マーク3を形成することにより、記録膜102に情報(追記データ)を書き込むことができる。同一トラック上において、隣接する記録マーク3と記録マーク3との間の部分を「スペース」と呼ぶことにする。記録マーク3およびスペースの長さは、記録すべき情報に応じて決定される。言い換えると、記録マーク3は、異なる複数の長さから選択された長さを有している。記録マーク3およびスペースが存在するトラックを読み出しのための光で走査すると、反射光(再生光)の強度が記録マーク3とスペースとの間で変化する。再生光の強度を検出することにより、記録膜102に記録された情報(追記情報)を読み出すことができる。再生光の強度変化は、高い周波数で生じるため、再生信号は「RF信号」と称されている。
【0046】
記録膜102に追記された情報を読み出すとき、記録膜102は光ピックアップから出射された比較的弱い光で照射される。本実施形態で好適に用いられる記録膜102は、特別に反射層を有していなくとも、前記光を反射することができる。つまり、記録膜102は、記録膜及び反射膜として作用する。記録膜102は、例えば、Ge、Sb、Te、In、Ag等による相変化材料から形成され得る。相変化材料から形成された記録膜102を用いると、記録マークの書き換えを行うことができる。また、記録膜102は、Te、Pd、O、Cu、Ge、Bi、N等の無機あるいは有機材料から形成され得る。このような材料からなる記録膜102に形成した記録マークは書き換えることはできない。記録膜102は、例えばAlやAgから形成した金属膜であってもよい。このような金属膜に強い光を照射すると、金属膜に開口部を形成することが可能である。この開口部が「記録マーク」に相当する。
【0047】
保護膜103は、記録膜102を保護する。保護膜103は、例えば、樹脂材料で構成可能である。ハードコート104は、記録膜102や保護膜103の外側からの傷や汚れを軽減する。例えば、ハードコート104は、SiO2粒子と潤滑剤から形成され得る。
【0048】
本実施形態における記録膜102は、基板101のプリピット2が形成された面(主面)に接触しているが、基板101の主面と記録膜102との間には、他の膜または層が存在していてもよい。ただし、光ピックアップからの光ビームを記録膜102上にフォーカスしているときに得られる反射光の強度がプリピット2の有無によって変化するように光ディスク1が設計されていることが好ましい。本発明の好ましい実施形態においては、記録膜102に記録マーク3で情報を書き込むとき、あるいは、記録膜102に形成された記録マーク3の情報を読み出すとき、プリピット2によるトラッキングエラー信号を生成する。このため、基板101の主面と記録膜102との間に配置される膜または層の厚さは、例えば、0.5μm以下に設定される。なお、本発明では、プリピット2の情報と記録マーク3の情報とを同時に読み出さない構成であってもよい。そのような構成においては、基板101の主面と記録膜102とが0.5μmよりも大きく離れていてもよい。
【0049】
本実施形態によれば、光ディスク1からプリピット2の情報を読み出すときに必要なトラッキング制御と、記録マーク3の情報を光ディスク1に追記するとき、および記録マーク3の情報を光ディスク1から読み出すときに必要なトラッキング制御の両方が、同一のトラッキングエラー信号に基づいて実行できる。このため、トラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成部の構成が著しく簡単になる。トラッキングエラー信号生成部は、一組の四分割光検出器を使って実現できるため、本実施形態の構成には、光ピックアップを低コストで製造できる利点がある。
【0050】
次に、図5Aおよび図5Bを参照しながら、記録マーク3を形成する前の光ディスク1と記録マーク3を形成した後の光ディスク1を説明する。
【0051】
図5Aは、記録マーク3を形成する前の光ディスク1aの平面図である。光ディスク1aには、基板101上にプリピット2が同心円状またはスパイラル状に内周から外周まで刻まれている。図5Bは、記録マーク3を形成した後の光ディスク1bの平面図である。光ディスク1bでは、記録マーク3がプリピット2に重なるように記録膜102に形成されている。
【0052】
図5Cは、記録マーク3記録後の光ディスク1のプリピット2と記録マーク3の混在する領域の一部を拡大した例を示す図である。ここでは、例として3つのプリピットと記録マーク3とがオーバーラップしている様子が示されているが、本実施形態は、このような例に限定されない。ここでプリピット2は、記録マーク3が記録された後も、光学ドライブ装置500(光ピックアップ501)で読み取り可能である。
【0053】
<2.光学ドライブの動作>
<2.1 システムコントローラ505の記録制御>
次に、システムコントローラ505による記録マーク3の記録制御を説明する。本実施形態では、不揮発性メモリ506に記録された記録領域情報に基づいて記録制御を行なう。なお、本実施形態では、記録領域内であればどのような記録マークを形成してもよい。すなわち、記録領域に記録マークが形成されないこともあるし、複数の記録マークが形成されることもある。
【0054】
システムコントローラ505は、記録マーク3を形成するよう、外部機器等から指示を受け付けると、指示に対応する記録マーク3を光ディスク1に形成する。
【0055】
図6は、本実施形態の光学ドライブ装置500による記録マークの形成手順を示すフローチャートである。まず、システムコントローラ505は、不揮発性メモリ506から記録領域情報を読み出す(S1)。次に、システムコントローラ505は、読み出した記録領域情報に規定された記録領域に記録マークを記録するよう、光ピックアップ501を制御する(S2)。光ピックアップ501は、システムコントローラ505による制御に基づき、例えば、図5Bに示すように光ディスク1に記録マーク3を記録する。記録マーク3は、いずれも記録領域情報に規定された記録領域内に形成される。
【0056】
以上の動作により、システムコントローラ505は、所定の範囲に、記録マーク3を形成できる。
【0057】
以下、光学ドライブ装置500による記録中の動作をより詳細に説明する。
【0058】
光ピックアップ501から出射された光ビームが、光ディスク1上のプリピット2にフォーカスし、目標とするトラック上のプリピット2を追従するようにフォーカス制御およびトラッキング制御が実行される。ここで光学ドライブ装置500は、光ディスク1の反射光から得られる非点収差情報に基づき、フォーカス制御を実行する。また、光学ドライブ装置500は、光ディスク1の反射光に含まれる、プリピット2からの位相差情報(Differential Phase Detection 以下、「DPD」)に基づき、トラッキング制御を実行する。DPD信号は、RF信号の振幅を十分に大きくするような深さを有するプリピット2の列にトラッキングするために好適に用いることのできるトラッキングエラー信号である。プッシュプル方式のトラッキングエラー信号の振幅は、プリピット2の深さがλ/8のときに最も大きくなるが、深さがλ/8のプリピット2から得られるRF信号の振幅はゼロになってしまう。逆に深さがλ/4のプリピット2から得られるRF信号の振幅は最大化されるが、深さがλ/4のプリピット2からは、プッシュプル方式のトラッキングエラー信号の振幅がゼロになってしまう。このため、プリピット2の列に対してトラッキング制御を行うには、プッシュプル方式のトラッキングエラー信号を用いるのではなく、DPD方式のトラッキングエラー信号を用いることが好ましい。
【0059】
なお、プリピット2の両側に、プリピット2の深さ(例えばλ/4)とは異なる深さ(例えばλ/8)を有するグルーブ(案内溝)を形成した場合、この案内溝を利用してプッシュプル方式のトラッキングエラー信号を生成することが可能である。本実施形態では、DPD方式のトラッキングエラー信号を用いるため、このようなグルーブは不要である。
【0060】
ここで、図7Aを参照して、記録マーク形成中のトラッキング制御を説明する。本実施形態では、ディスク表面の法線方向から光ディスク1を見たときの記録マーク3を形成する箇所に、プリピット2が存在している。したがって、光学ドライブ装置500は、案内溝がないトラックにおいて、記録マーク3を形成する場合であっても、光ディスク1からの反射光に含まれるプリピット信号を用いてDPDトラッキング制御を行なうことが可能である。記録マーク3を形成しないときは、トラッキング制御に必要なDPD信号を得るために必要なパワーで光ビームを照射するが、記録マーク3を形成するとき、その光ビームのパワーを一時的に高める。パワーを高められた光ビームの照射を受けた記録膜102の光学的性質が局所的に変化し、記録マーク3が形成される。本実施形態では、プリピット2に比べて長い記録マーク3を形成している間、光源をマルチパルス状に発光させるのではなく、連続的に発光させる。ここで、記録マーク3を形成するために必要な光パワーをPhigh、記録マーク3を形成しないがDPD信号を得るために必要な光パワーをPlowとする。この場合、光パワーをPlowからPhighに上昇させているとき、記録マーク3が形成される。このため、光パワーをPlowからPhighに上昇させている時間に比例した長さの記録マーク3が形成される。
【0061】
従来、記録用の光ビームを光ディスク1の目標トラックに照射しながら、トラッキングエラー信号を得るための光ビーム(サブビーム)を目標トラックに隣接するトラックに照射する技術が存在する。本実施形態では、1本のビームでトラッキングエラー信号(DPD信号)を生成しながら、記録マーク3をトラック上に正しく形成することができる。
【0062】
図7Aに示す例では、記録マーク3を形成しているとき、光ビームのパワーが高いため、その反射光の強度を示すRF信号のレベルも全体として高くなっている。RF信号上の相対的に高い周波数の波形は、複数のプリピット2によるものである。1つの記録マーク3が複数のプリピット2とオーバーラップしているため、記録マーク3を形成しているときの反射光の強度を示す信号には、図7Aに示すように、複数のプリピット2による信号が重畳される。その結果、記録マーク3の形成中において、光ディスク1の反射光から、プリピット信号を分離して読み出すことが可能である。
【0063】
このように、システムコントローラ505は、記録マーク3の形成中において、プリピット2からの信号を得ることができる。言い換えると、記録マーク3を形成している最中も、DPD信号を得ることができる。このため、光学ドライブ装置500は、DPDトラッキング制御を行った上で記録マーク3を形成できる。
【0064】
加えて、記録開始直前のプリピット2の情報を読み取りながらPLL制御を安定にかけてクロック信号を生成できる。そのクロック信号を基準に記録タイミングを生成し、さらに、記録マーク3の形成中もプリピット2の情報を読み取り、クロックの生成が可能である。このため、記録マークを形成するために必要な高いパワーで発光するタイミングを正確に制御でき、結果としてジッタの少ない記録マーク3を作成できる。
【0065】
ここで、DPDトラッキング制御を使うメリットを説明する。通常の記録用の光ピックアップでは、往路で3ビームに分割し、4分割の光検出器を3組用意して、DPPトラッキング制御を行う。これにより、光ディスク1の偏芯に対物レンズが追従することにより発生するTEオフセットをキャンセルし、光ディスクの案内溝に安定に追従する。
【0066】
一方、本実施形態では、記録中にもDPDトラッキングでトラッキング制御が可能である。そのため、光検出器は、4分割の光検出器が1組あればよい。つまり、光検出器のサイズが小さくなり、光ディスク1のサイズを小型化、低価格化することが可能となる。また、3ビームに分割する必要がないので、往路の回折格子が不要になる。そのため、光ディスク1のサイズを小型化、低価格化に寄与する。さらに、3ビームに分割しないので、光源の利用効率が良くなり、消費電力が減少する。加えて、光源の利用可能時間が増大し、低発光パワーの光源が利用可能となる。
【0067】
<2.2 システムコントローラ505の再生制御>
次に、システムコントローラ505による光ディスク1の再生制御を説明する。システムコントローラ505は、光ピックアップ501を制御し、光ディスク1から情報を読み出すことが可能である。ここで、システムコントローラ505は、光ディスク1に記録された記録マーク3及びプリピット2を両方検出可能である。システムコントローラ505は、PLL制御によって基準となるクロックを生成し、記録マーク3およびプリピット2を復合化する。
【0068】
図7Bは、1ビットの記録マークが形成されている部分、および、その前後に位置する未記録部分から得られるRF信号の波形例を示している。記録マークが形成されている部分から得られるRF信号のレベルは、未記録部分から得られるRF信号のレベルよりも低い。図7Aでは、記録マークを形成するとき、光ビームのパワーが高くなるため、記録マークの反射率が未記録部分の反射率よりも低下したとしても、記録マーク形成中に得られるRF信号のレベルは高くなる。しかし、データ再生時には、比較的低い一定のパワーの光ビームで光ディスク1を照射するため、図7Bに示すように、反射率が低下した記録マークから得られるRF信号のレベルが低下することになる。記録マークと未記録部分との間には、このようにRF信号のレベルに差異があるため、これを検知すれば、記録マークを検出することができる。また、RF信号の高周波成分を抽出することにより、プリピット2の信号も検出することができる。
【0069】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について図面を参照しながら説明する。なお、光学ドライブ500の構成は、実施の形態1と同じであるため、説明を省略する。以下、実施形態1と異なる点を説明する。
【0070】
<1.1 光ディスクの構成(図8A、8B)>
光ディスク10の構成を、図8A、8Bを参照しながら説明する。本実施形態では、光ディスク10のトラック上に複数のプリピット20が所定の間隔を空けて配置されている。そして、プリピット20が形成されていない領域が、光学ドライブ装置500によって記録マーク3が記録され得る記録領域に設定される。本実施形態においても、各記録領域の長さは、いずれのプリピット再生領域の長さよりも短く設定される。
【0071】
図8Aは、本実施形態において記録マーク30を形成する前の光ディスクを模式的に示す図である。図8Aに示すように、光ディスク10aには、プリピット20がスパイラル状に所定の間隔を空けて形成されている。なお、プリピットが形成されていない領域40には、案内溝も存在しない。
【0072】
図8Bは、記録マーク30を形成した後の光ディスクを模式的に示す図である。図8Bに示すように、光ディスク10bには、プリピット20が形成されたトラック上に、記録マーク30が記録されている。記録マーク30は、記録領域情報に基づいて、記録領域に記録されている。図示される例では、プリピットが形成されていない領域40がそのまま記録領域に設定されているが、記録領域は、プリピットが形成されていない領域の一部に設定されていてもよい。
【0073】
図9は、記録マーク30が所定の領域に形成された場合における光ディスク10の一部を拡大した図である。図示される例では、トラック1の記録領域40には2つの記録マークが形成されている。一方、トラック2、3の記録領域40には1つの記録マークが形成されている。また、トラック2に形成された記録マークの長さとトラック3に形成された記録マークの長さとは異なっている。このように、1つの記録領域40に形成される記録マークの数および長さは記録領域40によって異なり得る。
【0074】
なお、不揮発性メモリ506の記録領域情報には、光ディスク10の記録領域40が、アドレスで規定されている。ここで、記録領域となる所定の領域には、溝等が存在しないため、記録領域は、その前後のアドレスを用いて規定されている。
【0075】
<2.光学ドライブの動作>
<2.1 システムコントローラ505の記録制御>
次に、システムコントローラ505による記録マーク30の記録制御を説明する。
【0076】
システムコントローラ505は、記録マーク30を記録するよう、外部機器等から指示を受け付けると、以下の動作を開始する。ここでシステムコントローラ505は、外部機器から受け付けた指示に対応する記録マークを光ディスク10に記録するための準備をする。
【0077】
まず、システムコントローラ505は、指示に応じた記録マークを生成する。ここで不揮発性メモリ506には、記録マーク30の1ビットの記録長が予め記録されている。記録マーク30の1ビットの記録長は、光ディスク10に形成されたプリピット20の長さと同等の長さになるよう決められている。つまり、記録マーク30の信号帯域は、プリピット20の信号帯域と同じ帯域である。したがって、システムコントローラ505は、不揮発性メモリ506に記録された記録マーク30の1ビットの記録長を用いて、記録マーク30の記録信号を生成する。また、システムコントローラ505は、不揮発性メモリ506から記録領域情報を読み出す。システムコントローラ505は、読み出した記録領域情報で指定された記録領域に、記録マーク30を記録するよう、光ピックアップ501を制御する。
【0078】
次に、記録中のシステムコントローラ505の動作を説明する。
【0079】
システムコントローラ505は、光ピックアップ501によって記録マーク30を記録する際、DPDトラッキングのトラッキングをホールドして光ピックアップ501を制御する(図10)。
【0080】
例えば、図9に示す構成では、記録領域40に案内溝がない。そのため、記録領域40では、トラッキング制御信号が得られない。そこで、光ディスク10の回転中に光ビームの焦点が記録領域40を通過する際、システムコントローラ505は、トラッキング制御をホールドすることにより、光ディスク1上の半径方向の光スポット位置を固定する。これにより、トラッキングの制御を安定させることができる。
【0081】
<2.2 システムコントローラ505の再生制御>
次に、システムコントローラ505による光ディスク10の再生制御を説明する。システムコントローラ505は、光ピックアップ501を制御し、光ディスク10から情報を読み出すことが可能である。ここで、システムコントローラ505は、光ディスク10に記録された記録マーク30及びプリピット20を両方検出可能である。また、記録マーク30とプリピット20とは、連続して読み出し可能である。これは、プリピット再生領域と記録領域とが交互に存在し、記録領域には、プリピットが存在しないためである。
【0082】
本実施形態では、記録マーク30はプリピット20と同じ信号帯域で記録されているため、システムコントローラ505内の同じ信号再生ブロックで復号化可能である。そのため、記録マーク30とプリピット20とを連続して再生する時に(記録マーク30とプリピット20の境界部においても)PLL制御を安定に実行した状態で、復号化を継続する事が可能である。つまり、単一の信号再生ブロックで記録マーク30とプリピット20とを再生することが可能になる。
【0083】
さらに、システムコントローラ505は、記録マーク30とプリピット20とを意識することなく、トラッキング制御を実行することができる。なお、本実施形態においてもDPD方式によるトラッキング制御を実行することが望ましい。
【0084】
本実施形態では、記録マーク30が記録された記録領域には、プリピット20が存在しない。そのため、実施形態1と比べ、記録マーク30を良好なSNR(Signal Noise Ratio)で再生することが可能である。
【0085】
(他の実施形態)
本発明は以上の実施形態には限定されず、適宜修正された実施形態に対しても適用可能である。
【0086】
実施形態1では、プリピット2は、記録マーク3が記録された後も、光学ドライブ装置500(光ピックアップ501)で読み取り可能になるよう構成した。しかし、本発明はこのような構成に限られず、記録マーク3が形成された後にプリピット2の信号が読み取り不可能になってもよい。例えば、記録マーク3の形成後にプリピット2の情報を利用しない場合には、プリピット2の信号が読み取り不可能になっても問題は生じない。実施形態1では、プリピット2上に記録マーク3が形成できれば、どのような構成であってもよい。
【0087】
実施形態2では、光ディスク10において、プリピット20の間に、記録領域40(案内溝なし)を設けるようにした。しかし、これに限られず、図11に示すように、記録領域40に案内溝60を設けてもよい。このようにすれば、TE信号をホールドするだけではトラッキング制御が不安定な場合(例えば、記録領域40が長い場合)であっても、案内溝を利用して記録中にトラッキング制御を実行することで、記録マーク30を安定して記録できるようになる。
【0088】
実施形態1、2では、記録領域情報は不揮発性メモリに506に記録されているが、他の記録媒体に記録されていてもよい。例えば、光学ドライブ装置500に装填された光ディスクに管理情報として記録されていてもよい。
【0089】
また、光ディスク上の各記録領域の長さは、プリピット再生領域よりも短ければどのような値に設定されていてもよい。全ての記録領域の長さが一定の値に設定されていてもよいし、互いに異なる長さに設定されていてもよい。
【0090】
本発明は、各記録マーク3が多数のプリピット2に重複するように形成される構成に適用することも可能である。図12は、このような構成における記録マーク3の形成位置の例を示す図である。図12に示す例では、システムコントローラ505が、各トラックに形成する記録マーク3が、隣接するトラックに形成されている記録マーク3との間で影響し合わないように、記録マーク3の形成位置を調整する。図12に示す例では、第1の記録マーク3aがトラックt7に形成され、第2の記録マーク3bがトラックt3に形成されている。なお、図11における破線で示されている領域50a、50bは、記録領域である。記録マーク3a、3bは、それぞれ、記録領域50a、50bの内部に形成される。記録領域50a、50bは、プリピット再生領域(不図示)よりも短い長さに設定されている。
【0091】
図12に示す例では、記録マーク3の長さ(トラックに沿って計測されるサイズ)は、各記録マーク3が少なくとも10個のプリピット2とオーバーラップするように設定されている。記録マーク3の長さは、プリピット2の最短長の10倍以上であり、好ましくはプリピットの最短長の50倍以上である。例えば1−7変調方式で変調されたデータがプリピット2によって形成される場合、チャネルクロックの周期をTとすると、プリピット2の最小長さは2Tであり、最大長さは8Tである。記録マーク3の長さは、例えば80T以上に設定され得る。
【0092】
このような構成を採用することにより、光ディスク1からの反射光に含まれるプリビット2からの信号と記録マーク3からの信号とを分離することが容易になる。例えば、帯域フィルタにより2つの信号を分離することができる。
【0093】
このように相対的に長い記録マーク3を多数のプリピットと重複するように形成する場合、記録マーク形成に用いる光を照射した領域におけるプリピット2からの信号を再生できなくなると、プリピット2を利用してトラッキングエラー信号を生成できなくなる。記録マーク3が長いと、トラッキング制御不能な時間も長くなる。しかしながら、このような問題は、記録マーク3の長さを適切な範囲内に限定することにより、解決できる。本発明によれば、記録マーク3の長さは、プリピット再生領域よりも短い記録領域の長さ以下に抑えられる。その結果、記録マーク3が形成された領域におけるトラッキング制御を安定して実行できる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、光ディスクに情報を記録することが可能な光学ドライブ装置、および光学ドライブ装置を内蔵した各種の電子機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1、10 光ディスク
101 基板
102 記録反射膜
103 保護膜
104 ハードコート
2、20 プリピット
3、3a、3b、30 記録マーク
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、40、50a、50b 記録領域
Ab1、Ab2、Ab3、Ab4 プリピット再生領域
500 光学ドライブ装置
501 光ピックアップ
502 移送モータ
503 スピンドルモータ
504 対物レンズ
505 システムコントローラ
506 不揮発性メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラック上に複数のプリピットが形成された基板と、前記基板に支持される記録膜とを有する光ディスクに情報を記録することが可能な光学ドライブ装置であって、
光ピックアップと、
前記トラック上に記録マークを形成するよう前記光ピックアップを制御し、前記記録膜に記録用の光を照射させる記録制御部であって、前記トラック上において、記録マークを形成できる複数の記録領域、および前記記録マークを形成できない複数のプリピット再生領域を規定する情報に基づいて、前記記録領域の少なくとも一部に前記記録マークを形成するよう前記光ピックアップを制御する記録制御部と、
を備え、
前記記録マークが形成されるトラックにおいて、各記録領域の長さはいずれのプリピット再生領域の長さよりも短い、
光学ドライブ装置。
【請求項2】
メモリをさらに備え、
前記複数の記録領域および前記複数のプリピット再生領域を規定する情報は、前記メモリに格納されている、請求項1に記載の光学ドライブ装置。
【請求項3】
前記複数の記録領域は、前記複数のプリピットの一部と重なるように設定されている、請求項1または2に記載の光学ドライブ装置。
【請求項4】
前記光ディスクのトラック上には、複数のプリピットが形成された領域とプリピットが形成されていない領域とが交互に設けられ、
前記複数の記録領域は、前記プリピットが形成されていない領域に設定されている、請求項1または2に記載の光学ドライブ装置。
【請求項5】
前記記録制御部は、前記プリピットが形成されていない領域に、前記記録マークを記録するように前記光ピックアップを制御する、請求項4に記載の光学ドライブ装置。
【請求項6】
前記記録制御部は、前記プリピットの信号周波数帯域と前記記録マークの信号周波数帯域とが等しくなるように前記光ピックアップに前記記録マークを形成させる、請求項4または5に記載の光学ドライブ装置。
【請求項7】
前記光ディスクにおいて、前記プリピットが形成されない領域に、案内溝が形成されている、請求項4から6のいずれかに記載の光学ドライブ装置。
【請求項8】
前記光ピックアップで検出された反射光を示す信号に含まれる前記プリピットの情報に基づいて、トラッキング制御を行うトラッキング制御部を備える、請求項1から7のいずれかに記載の光学ドライブ装置。
【請求項9】
前記トラッキング制御部は、前記記録マークが形成されている最中において、前記光ピックアップで検出された反射光を示す信号に含まれる前記プリピットの情報に基づいて、トラッキング制御を行う、請求項8に記載の光学ドライブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−159378(P2011−159378A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288807(P2010−288807)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】