説明

光学ドライブ装置

【課題】光ディスクに記録マークを書き込む際において、記録マークの記録品質をより向上できる光学ドライブ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の光学ドライブ装置は、光ピックアップと、前記情報に対応した記録マークを前記光ディスクに書き込むよう前記光ピックアップを制御する記録制御部と、を備える。そして、前記記録制御部は、前記光ディスクに前記記録マークを書き込む際、前記光ディスクの同じ位置に対して光を複数回照射することにより、前記記録マークが書き込まれるよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに対して情報を記録可能な光学ドライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクに記録されているデータは、比較的弱い一定強度の光ビームを回転する光ディスクに照射し、光ディスクによって変調された反射光を検出することによって再生される。再生専用の光ディスクには、光ディスクの製造段階でプリピットによる情報が予め同心円またはスパイラル状に記録されている。これに対して、書き換え可能な光ディスクでは、同心円またはスパイラル状のグルーブが形成された基板に、光学的にデータの記録/再生が可能な記録材料膜が蒸着等の方法によって堆積されている。書き換え可能な光ディスクにデータを記録する場合は、記録すべきデータに応じて光パワーを変調したパルス状の光ビームを光ディスクに照射し、それによって記録材料膜の特性を局所的に変化させることによってデータの書き込みを行う。
【0003】
記録可能な光ディスク又は書き換え可能な光ディスクでは、記録材料膜にデータを記録するとき、上述のように光パワーを変調した光ビームを記録材料膜に照射することより、結晶質の記録材料膜に非晶質の記録マークを形成する。この非晶質の記録マークは、記録用光ビームの照射を受けた記録材料膜の一部が融点以上の温度に上昇した後、急速に冷却されることによって形成される。光ビームを記録マークに照射するときの光パワーを低めに設定すると、光ビームが照射された記録マークの温度は融点を超えず、急冷後に結晶質に戻る(記録マークの消去)。こうして、記録マークの書き換えを何度も行うことが可能になる。データを記録するときの光ビームの光パワーの大きさが不適切であると、記録マークの形状が歪み、データを再生することが難しくなることがある。
【0004】
光ディスクに記録されているデータを再生するとき、または、記録可能な光ディスクにデータを記録するとき、光ビームが目標トラック上で常に所定の集束状態となる必要がある。このためには、「フォーカス制御」および「トラッキング制御」が必要となる。「フォーカス制御」は、光ビームの焦点(集束点)の位置が常に目標トラック上に位置するように対物レンズの位置をディスク表面の法線方向(以下、「光ディスクの深さ方向」と称する場合がある。)に制御することである。一方、トラッキング制御とは、光ビームのスポットが所定のトラック上に位置するように対物レンズの位置を光ディスクの半径方向(以下、「ディスク径方向」と称する。)に制御することである。
【0005】
上述したフォーカス制御およびトラッキング制御を行うためには、光ディスクから反射される光に基づいて、フォーカスずれやトラックずれを検知し、そのずれを縮小するように光ビームスポットの位置を調整することが必要である。フォーカスずれおよびトラックずれの大きさは、それぞれ、光ディスクからの反射光に基づいて生成される「フォーカス誤差(FE)信号」および「トラッキング誤差(TE)信号」によって示される。
【0006】
特許文献1には、光ディスクに情報を記録する場合において、情報欠落を可能な限り防止し、利用者の負担となる再記録の労を軽減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−109206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、光の照射が弱い、又は、光ディスクの回転速度が速いことによって、情報に対応した記録マークが正しく形成されていない(記録マークの記録品質が悪い)ことについては考慮していない。
【0009】
本発明は、光ディスクに記録マークを書き込む際において、記録マークの記録品質をより向上できる光学ドライブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光学ドライブ装置は、光ディスクに情報を記録することが可能な光学ドライブ装置であって、光ピックアップと、前記情報に対応した記録マークを前記光ディスクに書き込むよう前記光ピックアップを制御する記録制御部とを備え、前記記録制御部は、前記光ディスクに前記記録マークを書き込む際、前記光ディスクの同じ位置に対して光を複数回照射することにより、光が複数回照射された位置に前記記録マークが形成されるように前記光ピックアップを制御する。
【0011】
ある実施形態において、前記記録制御部は、予め情報が既存マークとして記録された光ディスクに対して、前記記録マークを形成するように前記光ピックアップを制御する。
【0012】
ある実施形態において、前記既存マークは、プリピットである。
【0013】
ある実施形態において、前記記録マークは、10個以上のプリピットとオーバーラップするように形成される。
【0014】
ある実施形態において、前記記録制御部は、前記記録マークを形成している間、前記光ピックアップから前記光ディスクに対して前記光を連続的に照射させる。
【0015】
ある実施形態において、前記光ピックアップで検出された反射光を示す信号に含まれる前記プリピットの情報に基づいて、トラッキング制御を行なうトラッキング制御部を備える。
【0016】
ある実施形態において、前記トラッキング制御部は、前記記録マークが形成されている最中において、前記光ピックアップで検出された反射光を示す信号に含まれる前記プリピットの情報に基づいて、トラッキング制御を行う。
【0017】
ある実施形態において、前記記録制御部は、前記光を複数回照射させる際において、前記光の量を徐々に大きくする。
【0018】
ある実施形態において、前記光ディスクを回転させるスピンドル部を備え、前記記録制御部は、前記光を複数回照射させる際において、前記光ディスクの回転速度を徐々に遅くさせるよう前記スピンドル部を制御する。
【0019】
ある実施形態において、前記記録制御部は、前記光ディスクに予め記録された回数を示す情報に基づいて、前記光を照射する回数を決定する。
【0020】
ある実施形態において、前記光ディスクは、記録のためのテスト領域を有し、前記記録制御部は、前記光ディスクのテスト領域に、異なる回数の光の照射によるテストマークを複数記録し、当該記録された複数のテストマークに基づいて前記光を照射する回数を決定する。
【0021】
本発明の他の光学ドライブ装置は、光ディスクに情報を記録することが可能な光学ドライブ装置であって、光ピックアップと、前記情報に対応した記録マークを前記光ディスクに書き込むよう前記光ピックアップを制御する記録制御部とを備え、前記記録制御部は、前記光ディスクに前記記録マークを書き込む際、光を照射して前記光ディスクに記録マークを形成し、当該記録マークの形成が正しくできたか否かをチェックし、当該記録マークの形成が正しくできていない場合、前記光ディスクに形成されたマークに重ね書きする形で光を照射して前記光ディスクに記録マークを書き込む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光ディスクに記録マークを書き込む際において、記録マークの記録品質をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による実施形態1に係る光学ドライブ装置の構成図
【図2A】実施形態1に係る光ディスクの一例を示す平面図
【図2B】本実施形態1に係る光ディスクに記録マークが形成されている途中の状態を示す図
【図2C】本実施形態1に係る光ディスクに記録マークが形成された状態を示す図
【図3】実施形態1に係る光学ドライブ装置の動作を示すフローチャート
【図4】本発明による実施形態2に係るテストエリアを説明するための図
【図5】実施形態2に係る光学ドライブ装置の動作を示すフローチャート
【図6A】本発明による実施形態3に係る光学ドライブ装置の動作例を示すフローチャート
【図6B】本発明による他の実施形態に係る光学ドライブ装置の動作例を示すフローチャート
【図7】光ディスクの断面図
【図8】光ディスクのプリピットを示す斜視図
【図9】光ディスク上の記録マークの位置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の光学ドライブ装置は、光ディスクに情報を記録することが可能な光学ドライブ装置である。この光学ドライブ装置は、光ピックアップと、前記情報に対応した記録マークを光ディスクに書き込むよう光ピックアップを制御する記録制御部とを備える。この記録制御部は、光ディスクに記録マークを書き込む際、光ディスクの同じ位置に対して光を複数回照射することにより、光が複数回照射された位置に記録マークが形成されるように光ピックアップを制御する。これにより、光ディスクに、より信号品質の高い記録マークを形成することができるようになる。
【0025】
(実施形態1)
図面を参照して本発明による光学ドライブ装置の実施形態を説明する。
【0026】
<1.本実施形態の構成>
<1.1 光学ドライブの構成(図1)>
まず、図1を参照しながら、本実施形態における光学ドライブ500の構成例を説明する。光学ドライブ500は、パーソナルコンピューター、光ディスクプレーヤー、光ディスクレコーダー等に用いることができる。
【0027】
図1は、光学ドライブ500の構成例を示すブロック図である。光学ドライブ500は、光ピックアップ501と、光ディスク1を回転させるスピンドルモータ503と、光ピックアップ501の位置を動かす移送モータ502と、これらの動作を制御するシステムコントローラ505と、不揮発性メモリ506と、を備えている。
【0028】
光ディスク1から光学的に読み出されるデータは、光ピックアップ501の受光素子(図示せず)で電気信号に変換され、システムコントローラ505に入力される。光ピックアップ501は、光ビームを放射する光源(半導体レーザ)と、光ビームを集光して光スポットを光ディスク1上に形成するための対物レンズ504と、対物レンズ504を駆動するアクチュエータなどの公知の構成要素を備えている。
【0029】
システムコントローラ505は、光ピックアップ501から得た電気信号に基づいて、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を含むサーボ信号の生成、ならびに再生信号の波形等価、2値化スライス、同期データなどの信号処理を行う。
【0030】
システムコントローラ505は、生成されたサーボ信号により、光ピックアップ501が光ディスク1上に形成する光スポットを、回転する光ディスク1の目標トラックに追従させる。システムコントローラ505は、光ピックアップ501が備える対物レンズ504のフォーカス制御およびトラッキング制御、光ピックアップ501の移送制御、スピンドルモータ制御など一連の制御をデジタルサーボで実現する。すなわち、システムコントローラ505の制御信号により、対物レンズ504のアクチュエータ(図示せず)の駆動のほか、光ピックアップ501を光ディスク1の内周や外周へ移送させる移送モータ502の駆動や、光ディスク1を回転させるスピンドルモータ503の駆動が適切に行われる。なお、システムコントローラ505は、半導体ICで実現可能である。
【0031】
不揮発性メモリ506には、システムコントローラ505で実行されるソフトウェア及び各種パラメータ等が記憶されている。不揮発性メモリ506には、光ディスク1において、記録マーク3を記録すべき位置を示した情報が含まれている。
【0032】
<1.2 光ディスクの構成(図2A、図2B、図2C)>
図2A、図2B、および図2Cを参照して、光ディスク1の構成を説明する。
【0033】
光ディスク1は、光学ドライブ装置500で情報を記録可能な光ディスクである。光ディスク1には、案内溝又はプリピットが形成されている。図2Aに例示される光ディスク1には、案内溝が形成されている。光ディスク1は、基板と、記録反射膜と、保護膜とを有している。 光ディスク1の基板は、例えばポリカーボネート材料から形成され得る。案内溝やプリピットは、同心円またはスパイラル状に配列され、トラックを形成する。プリピットが形成されている基板の主面は、読み出し専用の情報記録面(ROM面)として機能し得る。
【0034】
光ディスク1が図1の光学ドライブ装置に装填され、動作するとき、記録膜は、光ピックアップ501から出射された光によって照射される。光は、対物レンズ504を介して記録膜上に集光され、記録膜上に光スポットを形成する。光ディスク1の回転に伴って光スポットは、光ディスク上をその周方向に移動することになる。記録膜に情報の記録がなされるとき、記録膜は記録光で照射され、その結果、照射部分における記録膜の反射率、透過率、位相差等の光学特性が変化する。
【0035】
後述するように、本発明の好ましい実施形態では、1つの記録マークを形成するため、複数回の光照射を記録膜の同じ位置に対して行う。これは、ライトストラテジのためにマルチパルスの光で記録マークを形成する従来技術とは大きく異なる。従来のマルチパルス照射では、マルチパルスに含まれる個々のパルスは、記録膜の異なる位置を照射している。本発明では、同じ位置に光を繰り返して照射することにより記録マークの「重ね書き」を行っている。本発明によれば、記録膜における光照射領域の光学特性を、一回ではなく複数回の光照射により、目的レベルに達するように変化させる。
【0036】
記録膜のうち、記録用の光の照射によって光学特定が変化した部分が「記録マーク」として機能する。トラックに沿って複数の記録マークを形成することにより、記録膜に情報を書き込むことができる。記録マークが存在するトラックを読み出しのための光で走査すると、反射光(再生光)の強度が記録マークの有無によって変化する。再生光の強度を検出することにより、記録膜に記録された情報を読み出すことができる。再生光の強度変化は、高い周波数で生じるため、再生信号は「RF信号」と称されている。
【0037】
図2Bは、光ディスク1に記録マーク3が形成されている途中の状態を示している。図2Cは、光ディスクに記録マーク3が形成された状態を示している。この例では、光ディスク1の同じ位置に2回の光照射を行うことにより、記録マーク3の形成を完了する。記録マーク3の形成完了に必要な光照射回数は、2回に限定されず、3回以上であってもよい。
【0038】
記録膜に追記された情報を読み出すとき、記録膜は光ピックアップから出射された比較的弱い光で照射される。本実施形態で好適に用いられる記録膜は、特別に反射層を有していなくとも、光を反射することができる。つまり、記録膜は、記録膜及び反射膜として作用する。記録膜は、例えば、Ge、Sb、Te、In、Ag等による相変化材料から形成され得る。相変化材料から形成された記録膜を用いると、記録マークの書き換えを行うことができる。また、記録膜は、Te、Pd、O、Cu、Ge、Bi、Nの無機あるいは有機材料から形成され得る。このような材料からなる記録膜102に形成した記録マークは書き換えることはできない。記録膜は、例えばAlやAgから形成した金属膜であってもよい。このような金属膜に強い光を照射すると、金属膜に開口部を形成することが可能である。この開口部が「記録マーク」に相当する。
【0039】
ある実施形態における記録膜は、基板の案内溝またはプリピットが形成された面(主面)に接触しているが、基板の主面と記録膜との間には、他の膜または層が存在していてもよい。
【0040】
光ディスク1は、リードインエリアとデータエリアを有する。リードインエリアには、光ディスクのID、コントロールデータ(物理フォーマット情報、例えばディスクの種類、ディスクのサイズ、最大転送レート情報、層数、トラックパス方向、記録線密度、トラック密度等に加え、記録マークを書き込む際の光の照射回数)等が記録されている。データエリアには、光学ドライブ装置500により情報が記録される。
【0041】
<2.光学ドライブの動作>
<2.1 システムコントローラ505の記録制御(図3)>
次に、システムコントローラ505による記録マーク3の記録制御を説明する。本実施形態では、光ディスク1に光の照射回数を示す情報が記録されている。
【0042】
システムコントローラ505では、外部機器等からの指示に基づいて、情報(記録マーク)を光ディスク1に記録する。システムコントローラ505は、外部機器等からの指示を受け付けると、記録マークの記録位置、記録長、及び、並びを決定する。システムコントローラ505は、この決定した情報に基づいて、光ピックアップ501を制御する。この際、以下の動作により、光の照射回数を決定する。なお、光ピックアップ501の記録時における光源の光量は、予め決められているものとする。
【0043】
システムコントローラ505の動作概要を説明する(図3)。
1:記録マーク記録開始
2:S1の処理(光ディスク1のリードインエリアから光の照射回数を示す情報を取得)
3:S2の処理(光の照射回数に基づき光ピックアップを制御)
4:終了
【0044】
まず、システムコントローラ505は、光ディスク1のコントロールデータより光の照射回数を示す情報を取得する(ステップS1)。この光の照射回数を示す情報は、ディスク毎にバラツキがあるため、必要となる情報である。つまり、あるディスクでは、1回の光の照射で十分な記録が可能である、一方、他のディスクでは、2回の照射で十分な記録が可能である、ということが考えられる。このように、光ディスクは、製造方法等によって、ディスク自体にバラツキを生じる。そのため、このような光の照射回数を示す情報が、光ディスクに記録されていることによって、光ディスクに対応した形で、光の照射回数を制御できるようになる。
【0045】
次に、システムコントローラ505は、取得した光の照射回数に応じて、光ピックアップ501を制御する(ステップS2)。これによって、光ピックアップ501では、複数回の照射により、記録マークが書き込まれることになる。より詳しく説明する。この例は、2回の照射により、記録マークが書き込まれる動作である。光ピックアップ501は、まず、光ディスクに対して予め決められた光量で、記録マークを書き込む。光ディスク1には、図2Bに示すように、1回の照射により、記録マークが形成される。次に、光ピックアップ501は、図2Bに示された記録マークに重なる形で、予め決められた光量により、記録マークを形成する。これにより、光ディスク1には、2回の照射による記録マークが書き込まれる(図2C)。
【0046】
本実施形態では、2回以上の光の照射により、記録マークを書き込むようにした。このようにすれば、光ディスクに対して、より信号品質の高い記録マークを書き込めるようになる。なお、光源のパワーが弱い場合は、特に有効となる。
【0047】
<3.実施形態1の改変例>
なお、本実施形態では、光ディスク1に、案内溝が形成されている。しかし、プリピットが形成された光ディスクであれば、以下のメリットがある。つまり、プリピット上に記録マークを形成した場合、記録マークと重複する位置にあるプリピットの信号を残すことができれば、再生時においてプリピットの信号に基づいてトラッキング制御を実行することが可能になる。この場合、プリピットからの位相差情報(DPD信号: Differential Phase Detection信号)に基づき、トラッキング制御を実行することが可能になる。DPD信号は、RF信号の振幅を十分に大きくするような深さを有するプリピットの列にトラッキングするために好適に用いることのできるトラッキングエラー信号である。
【0048】
本実施形態では、最初に大きな光量で記録マークを形成することにより、プリピットの信号を消してしまってプリピットの信号が使用できなくなるといったことも防止できるようになる。
【0049】
また、本実施形態では、光ディスク1のコントロールデータから光の照射回数を示す情報を取得するようにした。しかし、これに限られず、以下の方法でもよい。
【0050】
1)不揮発性メモリ506から取得
不揮発性メモリ506に予め光の照射回数を示す情報を記録しておけば、システムコントローラ505は、不揮発性メモリ506から読み出すことが可能になる。このように構成した場合、光ディスク毎に対応する形での制御は難しくなるが、光学ドライブ装置500での制御が容易になる。
【0051】
2)光ディスク1のIDを用いて不揮発性メモリ506から取得
不揮発性メモリ506には、IDに対応する形で、光の照射回数を示す情報が記録されているものとする。このようにすれば、システムコントローラ505は、光ディスク1からIDを読み出し、このIDに対応する光の照射回数を示す情報を取得すればよい。
【0052】
(実施形態2)
図4および図5を参照しながら、本発明による光学ドライブ装置の第2の実施形態を説明する。上述の実施形態1と同様の構成については、説明を省略する。以下、具体的に説明する。
【0053】
<1.本実施形態の構成>
<1.1 光学ドライブ装置の構成>
光学ドライブ装置の構成は、実施形態1と同じである。
【0054】
<1.2 光ディスクの構成(図4)>
光ディスクは、リードインエリアにテストエリア600を有する。テストエリア600には、A〜Jセクタの領域が設けられているものとする。
【0055】
<2.光学ドライブの動作>
<2.1 システムコントローラ505の記録制御>
次に、システムコントローラ505による記録制御を説明する。
【0056】
システムコントローラ505では、外部機器等からの指示に基づいて、情報(記録マーク)を光ディスク1に記録する。
【0057】
システムコントローラ505の動作概要を説明する(図5)。
1:記録マーク記録開始
2:ステップT1の処理(テストエリア600にテスト記録を行う)
3:ステップT2の処理(テスト記録に基づき光の照射回数を決定する)
4:ステップT3の処理(光の照射回数に基づき、光ピックアップを制御する)
5:終了
【0058】
まず、システムコントローラ505は、光ディスク1のテストエリア600を用いて光の照射回数を示す情報を取得する(ステップT1)。以下、具体的に説明する。
【0059】
システムコントローラ505は、光ディスク1のテストエリア600に、テストマークを記録する。システムコントローラ505は、光ピックアップ501を制御してテストマークを記録する。光ピックアップ501は、予め決められた光量でテストマークを記録する。テストマークは、異なる照射回数により形成されたマークである。簡単に説明すると、1回だけ照射したマーク、2回照射されたマーク、・・・、10回照射されたマークがテストマークになる。
【0060】
本実施形態では、図4に示すように、テストマークを記録する。
【0061】
まず、光ピックアップ501は、A領域のみに光を照射する。次に光ピックアップ501は、A及びB領域に光を照射する。さらに光ピックアップ501は、A,B,C領域に光を照射する。このような動作を繰り返す。最後は、光ピックアップ501は、A〜J領域に光を照射する。これによって、A領域では、10回照射が行なわれたテストマークが形成される。また、B領域では、9回照射が行なわれたテストマークが形成される。
【0062】
この後、システムコントローラ505は、テストエリア600に記録されたテストマークに基づいて、所定の条件に最も近似する光の照射回数を決定する(ステップT2)。例えば、所定の条件には、「記録変調度が55%に最も近い」という条件を用いることができる。なお、これは、一例であり、本実施形態を限定するものではない。
【0063】
次に、システムコントローラ505は、取得した光の照射回数に応じて、光ピックアップ501を制御する(ステップT3)。
【0064】
本実施形態2によれば、照射回数をテスト記録により学習することができる。これによって、光ディスクに対応した光の照射回数を決めることができる。光ディスクは、製造によって、品質がばらつくので、本実施形態の記録方法は特に有効である。
【0065】
(実施形態3)
図6Aを参照しながら、本発明による光学ドライブ装置の第3の実施形態を説明する。実施形態1と同様の構成については、説明を省略する。以下、具体的に説明する。
【0066】
<1.光学ドライブ装置の構成>
<1.1 光学ドライブ装置の構成>
光学ドライブ装置の構成は、実施形態1と同じである。
【0067】
<1.2 光ディスクの構成>
光ディスクの構成は、実施形態1と同様である。
【0068】
<2.光学ドライブの動作>
<2.1 システムコントローラ505の記録制御>
次に、システムコントローラ505による記録制御を説明する。
【0069】
システムコントローラ505では、外部機器等からの指示に基づいて、情報(記録マーク)を光ディスク1に記録する。
【0070】
システムコントローラ505の動作概要を説明する(図6A)。
1:記録マーク記録開始
2:ステップU1の処理(設定された光量及び線速度で一度の照射により記録マークを書き込み)
ここで、「光量」は光の照射光量によって決定され、「線速度」は光ディスクの回転速度によって決定される。
3:ステップU2の処理(記録マークの品質チェック、所定の条件を満たすように形成されているか?)
4:ステップU3の処理(光量調整又は/及び線速度調整)
5:終了
【0071】
まず、システムコントローラ505は、予め設定された光量及び線速度で、記録マークを光ディスク1に形成する(ステップU1)。システムコントローラ505は、光ピックアップ501を制御して、1回の光照射により記録マークの書込みを行なう。
【0072】
次に、システムコントローラ505は、光ディスク1に書き込まれた記録マークの記録品質をチェックする(ステップU2)。具体的には、システムコントローラ505は、光ピックアップ501のディテクターで得られる信号の記録変調度が50%以上であるか否かを判断する。なお、本実施形態では、記録変調度50%以上を条件としたが、これに限られないのはいうまでもない。
【0073】
ステップU2において、条件を満たした場合、システムコントローラ505の制御は終了である。
【0074】
一方、ステップU2において、条件を満たさない場合、ステップU3の動作に移行する。
【0075】
ステップU3において、システムコントローラ505は、光量調整及び線速度調整を行なう。この調整後、前回照射したテストマークに重ねて照射を実施する。本実施形態によれば、1回照射する毎に記録品質をチェックできるので、不必要な照射を減らすことができる。また、プリピット等の情報の上に記録マークを書き込む場合、記録マークと重複する位置に存在するプリピットの形状を劣化させず、プリピットの信号を残しやすい。
【0076】
(他の実施形態)
なお、図6Bは、実施形態2と実施形態3とを組み合わせた実施形態における動作を示すフローチャートである。
【0077】
この実施形態では、ステップV1でテストエリアにテスト記録を行った後、記録マークを再生し、所定の条件を満たす記録マークが形成されたか否かを判定する(ステップV2)。1回の光照射で所定の条件を満足する記録マークが形成された場合(YES)、テスト記録を終了する。一方、所定の条件を満足する記録マークが形成されなかった場合(NO)、テスト記録によって形成した記録マークに重ねて光照射を行い、記録マークの重ね書きを行う(照射回数2回目)。こうして形成した記録マークが所定の条件を満足するか否かを判定し、判定結果に応じて上記の工程を繰りかえす。
【0078】
本実施形態では、テストエリアの同じ位置に1回または複数回の光照射を行うたびに、重ね書きされた記録マークの信号品質を確認し、所定の品質に達していない場合は更なる重ね書きを実行する。ステップV3において、所定の重ね書き回数(N回)を超えても、テストマークが所定の品質に達しない場合は、ステップV4で光量調整や線速度の調整を行った後、再度、テスト記録を実行する。
【0079】
本発明は、上記実施形態に限定されず、適宜修正された実施形態に対しても適用可能である。例えば、各記録マークが多数のプリピットに重複するように形成する構成を採用することができる。
【0080】
図7は、光ディスク1の断面の一部を模式的に示す図である。この光ディスク1は、プリピット2が主面に形成された基板101と、基板101の主面に支持された積層構造とを備えている。本実施形態における積層構造は、基板101の側から積層された記録膜102と保護膜103とハードコート104とを有している。
【0081】
なお、図1の光学ドライブ装置500は、データを光ディスク1に追記するとき、光ピックアップ501によってハードコート104の側から記録膜102に光を照射して、記録膜102に記録マーク3を形成する。
【0082】
基板101は、光ディスク1の基礎となる部材である。図7では、1つのプリピット2が記載されているが、現実の基板101の主面には、記録膜102側に、多数のプリピット2が形成されている。プリピット2は、基板101の主面における物理的な凹凸であり、光ディスク1の製造時に基板101の成型工程で作られる。プリピット2を表面に有する基板101は、例えばBD−ROMを製造する公知の方法によって作製され得る。
【0083】
プリピット2の深さは、照射する光ビームの波長をλとするとき、例えばλ/7〜λ/4の範囲内の大きさに設定される。例えばλ=約405nmのとき、プリピット2の深さの典型例は、約60〜100nm(0.06〜0.1μm)に設定され得る。プリピット2のトラック方向における長さは、例えば0.15μmから、その数倍までの範囲内に設定され得る。
【0084】
図7の例では、図8に示すように、「In−Pit」で光ディスク1にプリピット2が形成されている。「In−Pit」とは、光入射面に対して、凹部の形状を有するプリピットをいう。一方、「On−Pit」とは、光入射面に対して、凸部の形状を有するプリピットをいう。図7、8に示す例では、プリピット2は基板101の光入射側面に形成された凹部であるが、他の例において、プリピット2は凸部であってもよい。
【0085】
図9は、記録マーク3の形成位置の例を示す図である。図9の例では、システムコントローラ505が、各トラックに形成する記録マーク3が、隣接するトラックに形成されている記録マーク3との間で影響し合わないように、記録マーク3の形成位置を調整する。図9に示す例では、第1の記録マーク3aがトラックt7に形成され、第2の記録マーク3bがトラックt3に形成されている。
【0086】
図9に示す例では、記録マーク3の長さ(トラックに沿って計測されるサイズ)は、各記録マーク3が少なくとも10個のプリピット2とオーバーラップするように設定されている。記録マーク3の長さは、プリピット2の最短長の10倍以上であり、好ましくはプリピットの最短長の50倍以上である。例えば1−7変調方式で変調されたデータがプリピット2によって形成される場合、チャネルクロックの周期をTとすると、プリッピット2の最小長さは2Tであり、最大長さは8Tである。記録マーク3の長さは、例えば80T以上に設定され得る。本発明の好ましい実施形態では、記録マーク3を形成するとき、光源をマルチパルス状に発光させるのではなく、連続的に発光させる。
【0087】
このような構成を採用することにより、光ディスク1からの反射光に含まれるプリピット2からの信号と記録マーク3からの信号とを分離することが容易になる。例えば、帯域フィルタにより2つの信号を分離することができる。
【0088】
このように相対的に長い記録マークを多数のプリピットと重複するように形成する場合、記録マーク形成に用いる光を照射した領域におけるプリピットからの信号を再生できなくなると、プリピットを利用してトラッキングエラー信号を生成できなくなる。記録マークが長いと、トラッキング制御不能な時間も長くなる。このような問題は、しかし、記録マーク形成のための光照射回数を複数回に設定し、1回の照射あたりの光量を低めに抑えることで解決できることがわかった。すなわち、本発明によれば、1回で照射する光の量を少なくできるため、光照射によりプリピット信号の劣化を避け、記録マークが形成されている領域からも適切にプリピット信号を再生することが可能になる。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、光学ドライブ装置のトラッキング制御部は、光ピックアップで検出された反射光を示す信号に含まれるプリピットの情報に基づいて、トラッキング制御を行なう。また、好ましい例において、トラッキング制御部は、記録マークが形成されている最中においても、光ピックアップで検出された反射光を示す信号に含まれるプリピットの情報に基づいて、トラッキング制御を行う。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、光ディスクに情報を記録することが可能な光学ドライブ装置、および、光学ドライブ装置を内蔵した各種の電子機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 光ディスク
2 プリピット
3 記録マーク
3a 記録マーク
3b 記録マーク
101 基板
102 記録膜
103 保護膜
104 ハードコート
500 光学ドライブ装置
501 光ピックアップ
502 移送モータ
503 スピンドルモータ
504 対物レンズ
505 システムコントローラ
506 不揮発性メモリ
600 テストマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに情報を記録することが可能な光学ドライブ装置であって、
光ピックアップと、
前記情報に対応した記録マークを前記光ディスクに書き込むよう前記光ピックアップを制御する記録制御部と、
を備え、
前記記録制御部は、
前記光ディスクに前記記録マークを書き込む際、前記光ディスクの同じ位置に対して光を複数回照射することにより、光が複数回照射された位置に前記記録マークが形成されるように前記光ピックアップを制御する、光学ドライブ装置。
【請求項2】
前記記録制御部は、予め情報が既存マークとして記録された光ディスクに対して、前記記録マークを形成するように前記光ピックアップを制御する、請求項1に記載の光学ドライブ装置。
【請求項3】
前記既存マークは、プリピットである、請求項2に記載の光学ドライブ装置。
【請求項4】
前記記録マークは、10個以上のプリピットとオーバーラップするように形成される、請求項3に記載の光学ドライブ装置。
【請求項5】
前記記録制御部は、前記記録マークを形成している間、前記光ピックアップから前記光ディスクに対して前記光を連続的に照射させる、請求項1から4のいずれかに記載の光学ドライブ装置。
【請求項6】
前記光ピックアップで検出された反射光を示す信号に含まれる前記プリピットの情報に基づいて、トラッキング制御を行なうトラッキング制御部を備える、請求項5に記載の光学ドライブ装置。
【請求項7】
前記トラッキング制御部は、前記記録マークが形成されている最中において、前記光ピックアップで検出された反射光を示す信号に含まれる前記プリピットの情報に基づいて、トラッキング制御を行う請求項6に記載の光学ドライブ装置。
【請求項8】
前記記録制御部は、前記光を複数回照射させる際において、前記光の量を徐々に大きくする、請求項1から7のいずれかに記載の光学ドライブ装置。
【請求項9】
前記光ディスクを回転させるスピンドル部を備え、
前記記録制御部は、前記光を複数回照射させる際において、前記光ディスクの回転速度を徐々に遅くさせるよう前記スピンドル部を制御する、請求項1から8のいずれかに記載の光学ドライブ装置。
【請求項10】
前記記録制御部は、前記光ディスクに予め記録された回数を示す情報に基づいて、前記光を照射する回数を決定する、請求項1から9のいずれかに記載の光学ドライブ装置。
【請求項11】
前記光ディスクは、記録のためのテスト領域を有し、
前記記録制御部は、前記光ディスクのテスト領域に、異なる回数の光の照射によるテストマークを複数記録し、当該記録された複数のテストマークに基づいて前記光を照射する回数を決定する、請求項1から9のいずれかに記載の光学ドライブ装置。
【請求項12】
光ディスクに情報を記録することが可能な光学ドライブ装置であって、
光ピックアップと、
前記情報に対応した記録マークを前記光ディスクに書き込むよう前記光ピックアップを制御する記録制御部と、
を備え、
前記記録制御部は、
前記光ディスクに前記記録マークを書き込む際、光を照射して前記光ディスクに記録マークを形成し、当該記録マークの形成が正しくできたか否かをチェックし、当該記録マークの形成が正しくできていない場合、前記光ディスクに形成されたマークに重ね書きする形で光を照射して前記光ディスクに記録マークを書き込む、光学ドライブ装置。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−165304(P2011−165304A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288808(P2010−288808)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】