説明

光学フィルタ、結像ユニット、および画像撮影装置

【課題】応答速度が早く安定した調光能力を有する光学フィルタ、結像ユニット、および画像撮影装置を提供する。
【解決手段】透過する光を制御する光学フィルタ1において、光学フィルタ1が、少なくとも光透過領域が光透過性である容器15と、容器15内に封入された光透過性の分散媒11と、分散媒11内に分散した、電荷を持つ有色の着色ナノ粒子10と、着色ナノ粒子10を電気泳動させることにより光の透過を制御する電極13aおよび13bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過を制御する光学フィルタ、被写体を結像する結像ユニット、および光の透過を制御する光学フィルタを経由した被写体を捉えた撮影により画像信号を生成する画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラを中心とする画像撮影装置や、このような画像撮影装置を構成する様々な要素に関する技術が急速に発展してきている。こうした画像撮影装置では、光学絞りを備えたものが多く、このような光学絞りは高精度の光制御技術が必要とされる構成要素であり、その多くはモータなどを用いた駆動方式で動作する。デジタルカメラ等の画像撮影装置に対しても小型化が要求されており、こうした光学絞りも高精度の性能を維持しながら小型化を推進する必要性が増してきている。
【0003】
ところが、従来から用いられてきた駆動方式では、既に限界に近いレベルにまで小型化されてきており、性能を維持しながらこれ以上の小型化を行うことは装置の設計上困難である。更なる小型化を実現する手段として、モータ等による機械的な駆動方式を排した光学絞りを実現することが考えられる。
【0004】
このような技術として、光が撮像素子に入射してくる前面に、調光機能をもつシールガラスを配備する方式(例えば、特許文献1)や、着色された荷電粒子を電気泳動させて調光を行う方式(例えば、特許文献2)が提案されている。
【特許文献1】特開平10−191181号公報
【特許文献2】特開2002−214666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1記載の調光機能をもつシールガラスを配備する方式は、液晶分子の配列を変化させることによって透過する光を制御するが、このような液晶分子の配列を変化させる方式では調光能力に限界があり、光学絞りとして十分な調光性能を発揮できない。また、特許文献2記載の着色された荷電粒子を電気泳動させて調光を行う方式では、荷電粒子として従来から一般に用いられている1μm以上の大きさの荷電粒子を用いると、電気泳動するスピードが遅いため応答速度が遅く、光学絞りとして必要となる駆動電圧が大きくなることに加えて、調光性能が安定していない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、応答速度が早く安定した調光能力を有する光学フィルタ、結像ユニット、および画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の光学フィルタは、透過する光を制御する光学フィルタにおいて、
少なくとも光透過領域が光透過性である容器と、
上記容器内に封入された光透過性の分散媒と、
上記分散媒内に分散した、電荷を持つ有色の着色ナノ粒子と、
上記着色ナノ粒子を電気泳動させることにより光の透過を制御する電極とを備えたこと
を特徴とする。
【0008】
ここで着色ナノ粒子とは、着色された直径が1nm以上1000nm以下の粒子をいう。特に、5nm〜100nmの粒径を有する着色ナノ粒子であることが好ましい。
【0009】
本発明の光学フィルタは、被写体光の透過の制御をナノスケールの大きさの着色ナノ粒子の電気泳動を制御することによって行う。そのため、従来から一般に用いられている1μm以上の大きさの大きな荷電粒子を用いた場合よりも、電場を印加した時の応答速度が早く電力の消費量が少なくてすむ。しかも、大きな粒子を用いる場合よりもナノスケールの大きさの着色ナノ粒子を用いた場合の方が粒子の密度にむらができにくく、安定した調光能力を有する光学フィルタが実現できる。
【0010】
ここで、本発明の光学フィルタは、光の透過光量を段階的に制御する絞りであることを特徴とする光学フィルタであってもよい。
【0011】
本発明の光学フィルタは、着色ナノ粒子の電気泳動を制御することによって、光束が通過する付近に分布する着色ナノ粒子の密度を操作することができるため、光の透過光量を段階的に制御する絞りとして構成することができる。
【0012】
また、本発明の光学フィルタは、上記着色ナノ粒子がカーボンブラックを含むものであってもよく、あるいはシリカを含むものであってもよい。
【0013】
カーボンブラックやシリカは安価であるため、本発明の光学フィルタの製造コストを抑制することができる。
【0014】
また、本発明の光学フィルタは、上記着色ナノ粒子がポリマーを含むものであってもよい。
【0015】
ポリマーは、着色材料との相溶性がよいため、着色ナノ粒子を有色にするための着色作業が容易になる。
【0016】
また、本発明の光学フィルタは、上記着色ナノ粒子がシリカおよび顔料を含むものであ
あってもよく、あるいは上記着色ナノ粒子がシリカおよび染料を含むものであってもよい。
【0017】
また、本発明の光学フィルタは、上記着色ナノ粒子がポリマーおよび顔料を含むものであってもよく、あるいは、上記着色ナノ粒子がポリマーおよび染料を含むものであってもよい。
【0018】
着色ナノ粒子を有色にするための着色材料として顔料は耐久性がよいため、光学フィルタの光を制御する能力を長期間維持することができる。また、染料は色彩の鮮鋭度が高いため、着色ナノ粒子の色の鮮鋭度を高めて光の透過を制御する能力が高い光学フィルタを実現できる。
【0019】
また、本発明の光学フィルタは、上記分散媒が有機溶媒であってもよい。
【0020】
有機溶媒は、化学反応を起こしにくいため劣化しにくく安定しており、性能の安定した光学フィルタを実現することができる。
【0021】
また、本発明の光学フィルタは、上記分散媒が炭化水素系有機溶媒であってもよい。
【0022】
炭素と水素だけからなる炭化水素系有機溶媒は、有機溶媒の中でも酸化反応あるいは還元反応を起こしにくいため、アルコール系有機溶媒やエステル系有機溶媒などの有機溶媒と比べて劣化しにくく安定している。このため性能の安定した光学フィルタを実現することができる。
【0023】
また、本発明の光学フィルタは、上記分散媒が該分散媒に分散した着色ナノ粒子どうしの凝集を妨げる界面活性剤を含むものであってもよい。
【0024】
分散媒に分散した着色ナノ粒子は、着色ナノ粒子どうしが凝集することにより大きな粒子を形成することがある。その場合、こうした大きな粒子は電気泳動による移動が困難であり、光学フィルタとしての性能を悪化させてしまう。個々の着色ナノ粒子それぞれのまわりを取り巻くように界面活性剤が吸着することにより、このような着色ナノ粒子どうしの凝集を妨げることができる。
【0025】
また、本発明の光学フィルタは、上記電極が、電極の内側の面に絶縁膜がコーティングされ、該絶縁膜が上記分散媒に接して配置されているものであってもよい。
【0026】
着色ナノ粒子の電気泳動を制御する際、電極に引き寄せられた着色ナノ粒子がそのまま電極表面に吸着してしまい、制御能力が低下することがある。電極が分散媒に接している面に絶縁膜をコーティングすることによってこのような着色ナノ粒子の吸着を妨げることができる。
【0027】
上記目的を達成するための本発明の結像ユニットは、被写体光を制御する光学フィルタを備えた、被写体を結像する結像ユニットにおいて、
上記光学フィルタが、
少なくとも光透過領域が光透過性である容器と、
上記容器内に封入された光透過性の分散媒と、
上記分散媒内に分散した、電荷を持つ有色の着色ナノ粒子と、
上記着色ナノ粒子を電気泳動させることにより光の透過を制御する電極とを備えたことを特徴とする。
【0028】
また、上記目的を達成するための本発明の画像撮影装置は、光の透過を制御する光学フィルタを経由した被写体を捉えた撮影により画像信号を生成する画像撮影装置において、
上記光学フィルタが、
少なくとも光透過領域が光透過性である容器と、
上記容器内に封入された光透過性の分散媒と、
上記分散媒内に分散した着色ナノ粒子と、
上記着色ナノ粒子を電気泳動させることにより光の透過を制御する電極とを備えたことを特徴とする。
【0029】
本発明の結像ユニットおよび画像撮影装置は、被写体光の透過の制御をナノスケールの大きさの微小な着色ナノ粒子の電気泳動を制御することによって行う光学フィルタを有している。このため、電力消費量が少なく、かつ応答速度が早い方式で光の透過を制御することができる。また、このような微小な着色ナノ粒子を用いると粒子密度にむらができにくいため、調光能力が安定している結像ユニットおよび画像撮影装置が実現できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の光学フィルタ、結像ユニット、および画像撮影装置によれば、応答速度が早く、かつ安定した調光が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
[第一実施形態]
以下において、着色ナノ粒子10の電気泳動を制御することにより光の透過光量を制御する本発明の光学フィルタの一実施形態について説明する。本実施形態の光学フィルタは、光の透過光量を大/小の2段階の選択を行う光学絞りとして用いることができる。
【0032】
図1は、本実施形態の光学フィルタの側面の概略断面図である。
【0033】
図1に示す光学フィルタ1は、分散媒11と、分散媒11中に分散している着色ナノ粒子10と、分散媒11と着色ナノ粒子10とが封入された光透過性のガラス製の容器15と、容器15の上端部および下端部にそれぞれ備えられている電極13aおよび電極13bとを構成要素としている。電極13aは陽極であり、電極13bは陰極である。
本実施形態で用いられる分散媒11は、炭化水素系有機溶媒の一種であるエクソン社製の分散媒アイソパーである。また、着色ナノ粒子10は、顔料の一種であるカーボンブラックを組成成分としている黒色の粒子であり、このようなカーボンナノ粒子は、水中パルスアーク放電により生成される。さらに、この着色ナノ粒子10の表面には、界面活性剤10aが吸着している。
【0034】
図2は、着色ナノ粒子と、着色ナノ粒子の表面に吸着している界面活性剤を表す模式図である。
【0035】
図2に示すように、中心に示す個々の着色ナノ粒子10それぞれのまわりを取り巻くように界面活性剤10aが吸着している。界面活性剤10aがない場合、着色ナノ粒子10どうしが凝集することにより大きな粒子を形成することがある。こうした大きな粒子は電気泳動による移動が困難であり、光学フィルタとしての性能を悪化させてしまう。界面活性剤10aが着色ナノ粒子10の表面に吸着することによって、着色ナノ粒子10どうしが互いに凝集することを妨げられる。本実施形態では、界面活性剤10aは、ポリアクリルアミドである。
【0036】
カーボンブラックを組成成分として含む本実施形態の着色ナノ粒子10はプラスに帯電しており、図1に示す電極13aおよび電極13bを用いて電場を印加すると、着色ナノ粒子10は陰極である電極13bに集まる。電極13aおよび電極13bには、絶縁膜であるポリイミド膜がコーティングされており、電極表面に着色ナノ粒子10が吸着することを防いでいる。電場を印加していない状態では図1のように着色ナノ粒子10が容器15中に分散する。図1において、光は一点斜線で示されているように光学フィルタ1の中心に入射するため、図1の状況では、光学フィルタ1の中心付近に分布する着色ナノ粒子10によって入射光の一部が吸収される。この状態は、光の透過光量を2段階に制御する光学絞りとしては、光の透過光量を絞っている状態に対応する。
【0037】
図3は、図1に示す光学フィルタに電場を印加した時の着色ナノ粒子の分布を表す概略断面図である。
【0038】
容器15の上端部および下端部それぞれにおいて、それぞれ備えられている電極13aおよび電極13bを用いて電場を印加すると、着色ナノ粒子10は、プラスに帯電しているため、図3に示すように陰極である電極13bに付近に多く集まる。その結果容器15の中心付近の着色ナノ粒子10の密度は、図1の状態と比べて小さくなる。このため、この状態で光が一点斜線で示すように入射してきたときには、この光学フィルタ1を通過する光の透過率は図1の状態よりも大きくなる。この状態は、光の透過光量を2段階に制御する光学絞りとしては、光の透過光量を絞っていない状態に対応する。
【0039】
以上の図1〜図3を用いた説明は、着色ナノ粒子10の電気泳動を制御することにより、光の透過率が変化する光学フィルタについての説明である。本実施形態における光学フィルタ1は、光の透過光量が大/小の2段階の制御ができる光学絞りであるが、本発明の光学フィルタは、本実施形態の光学フィルタ1を、例えば、2枚重ねることによって光の透過光量を段階的に3通りに変化させることができる光学絞りであってもよい。このように本実施形態の光学フィルタ1を複数枚重ねることにより多段階の光学絞りが実現される。
[第二実施形態]
以下では、本発明の結像ユニットの実施形態を第二実施形態として説明する。この第二実施形態は、第一実施形態で説明した光学フィルタ1を用いて構成した結像ユニットの実施形態である。
【0040】
図4は、図1に示す光学フィルタを用いた結像ユニットの構成を表す模式図である。
【0041】
本実施形態の結像ユニット2では、図4に一点斜線で示すように、被写体光は鏡筒22の内部を通り、鏡筒22の内部に備えられているレンズ21により集光されながらレンズ21の背後に備えられている光学フィルタ1の中央部付近を経由し、その光学フィルタ1の背後に結像する。その結像点に、例えば固体撮像素子を配置して画像信号を生成することもできる。図1および図3において説明したように、この光学フィルタ1は、光の透過光量が大/小の2段階の制御ができる光学絞りである。すなわち光学フィルタ1において電場を印加することによって分散媒11に分散している着色ナノ粒子10の泳動の制御が行われ、その際の着色ナノ粒子の密度の変化によって、集光された被写体光の光の透過光量が大/小の2段階のうちいずれであるかが選択される。この光学フィルタ1の構成は、図1において説明した通りであるため、ここでは重複説明は省略する。
[第三実施形態]
続いて、本発明の画像撮影装置の実施形態を第三実施形態として説明する。この本実施形態は、第一実施形態で説明した光学フィルタ1を用いて構成した画像撮影装置の実施形態である。
【0042】
本実施形態の画像撮影装置は、光学絞りの機能を有する光学フィルタ1を備えたデジタルカメラである。
【0043】
図5は、本発明の画像撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラを前面斜め上から見た外観斜視図である。
【0044】
図5に示すように、このデジタルカメラ100の前面中央部には、撮影レンズ101が備えられている。また、このデジタルカメラ100の前面上部には、光学式ファインダ対物窓102および補助光発光部103が備えられている。さらに、このデジタルカメラ100の上面には、スライド式の電源スイッチ104およびレリーズスイッチ150が備えられている。
【0045】
図6は、図5に示すデジタルカメラの概略構成図である。
【0046】
図6に示すように本実施形態のデジタルカメラ100の内訳は大きく分けて撮影光学系110と信号処理部120とに分かれる。そのほかに撮影した画像を表示させるために画像表示部130およびその撮影した画像信号を記録しておくための外部記録媒体140が備えられている。また撮影のための処理をデジタルカメラ100に行なわせる、ズームスイッチ170、撮影モードスイッチ160、およびレリーズスイッチ150も設けられている。
【0047】
まず撮影光学系110の構成を、図6を参照して説明する。本実施形態のデジタルカメラ100では、図6の左方から被写体光が入射し、ズームレンズ115およびフォーカスレンズ114を経て、被写体光の光量を調整するアイリスとして機能する光学フィルタ1を通過した後、シャッタ112が開いている場合は固体撮像素子111に結像する。本来撮影光学系には複数のレンズが配備され、それらの複数のレンズの中の少なくとも1つがピント調節に大きく関与し、それら複数のレンズの相対位置が焦点距離に関与するが、この図6では、焦点距離の変化に係わるレンズをズームレンズ115として模式的に示しており、同じくピントの調節に係わるレンズをフォーカスレンズ114として模式的に示している。このズームレンズ115、フォーカスレンズ114はそれぞれ後述する信号処理部120からの信号に基づいて移動することが自在な構成になっていて、ズームレンズ115、フォーカスレンズ114とも信号処理部120からの信号に基づいて各位置に配置されるようになっている。このズームレンズ115、フォーカスレンズ114、およびシャッタ112は、ズームモータ115a、フォーカスモータ114a、およびシャッタモータ112aによりそれぞれ駆動され移動する。これらズームモータ115a、フォーカスモータ114a、およびシャッタモータ112aを作動させる指示は信号処理部120中のデジタル信号処理部120bからモータドライバ120cを通じて伝達される。
【0048】
フォーカスレンズ114は、本実施形態のデジタルカメラ100が有するTTLAF(Through The Lens Auto Focus)機能が作動したときに光軸方向に前後に移動するものであり、このTTLAF機能によりピント調節が行なわれる。このTTLAF機能とはフォーカスレンズ114を、被写体距離の最遠点に対応する位置から被写体距離の至近点に対応する位置まで移動させることにより変化する被写界のコントラストを、後述する信号処理部120のAF/AE演算部126で検出して、そのコントラストのピークが得られる位置をピント位置としてそのフォーカスレンズ114をそのピント位置に調節するものである。ズームレンズ115は、光軸方向に移動して撮影倍率を決定する。
【0049】
光学フィルタ1は、フィルタコントローラ113aを経由してデジタル信号処理部120b内のAF/AE演算部126から与えられた指示に基づき、被写体光の光量が適切な光量となるように調整する機能を有している。この光学フィルタ1の構成は前述した光学フィルタ1と同じである。この光学フィルタ1を用いることにより、光の透過光量が2段階に制御される。この光学フィルタ1についての重複説明は省略する。図6においては、例として、1枚の光学フィルタ1を用いた光学絞りが示されているが、本発明は、これを2枚以上の光フィルタ1によって、絞り調節機能が多段階となっているデジタルカメラであってもよい。
【0050】
以上が撮影光学系110の構成である。
【0051】
続いて信号処理部120の構成を説明する。撮影光学系で固体撮像素子111に結像させた被写体像が画像信号としてアナログ処理(A/D)部120aに読み出され、このアナログ処理部(A/D)120aでアナログ信号がデジタル信号に変換されデジタル信号処理部120bへと供給される。デジタル信号処理部120bにはシステムコントローラ121が配備されており、そのシステムコントローラ121内の動作の手順を示したプログラムにしたがってデジタル信号処理部120b内の信号処理が行なわれる。このシステムコントローラ121と、画像信号処理部122、画像表示制御部123、画像圧縮部124、メディアコントローラ125、AF/AE演算部126、キーコントローラ127、バッファメモリ128、内部メモリ129との間のデータの受け渡しはバス1200を介して行なわれ、そのバス1200を介してデータの受け渡しが行なわれるときのバッファとして内部メモリ129が働いている。この内部メモリ129に各部の処理プロセスの進行状況に応じて変数となるデータが随時書き込まれて、システムコントローラ121、および画像信号処理部122、画像表示制御部123、画像圧縮部124、メディアコントローラ125、AF/AE演算部126、キーコントローラ127の各部では、そのデータを参照することにより適切な処理が行なわれる。つまり、システムコントローラ121からの指示がバス1200を介して上記の各部に伝えられ、各部の処理プロセスが立ち上げられる。そして、その内部メモリ129のデータがプロセスの進行状況に応じて書き換えられ、さらにシステムコントローラ121側で参照されて上記の各部の動作が管理される。言い換えれば、電源が投入され、システムコントローラ121内のプログラムの手順にしたがって各部のプロセスが立ち上げられる。たとえば、レリーズスイッチ150、ズームスイッチ、撮影モードスイッチのスイッチが操作されると、その操作されたという情報がキーコントローラ127を経由してシステムコントローラ121に伝えられ、その操作に応じた処理がシステムコントローラ121内のプログラムの手順にしたがって行われる。
【0052】
レリーズ操作が行われると、固体撮像素子111から読み出された画像データは、アナログ処理(A/D)部120aでアナログ信号からデジタル信号に変換され、このデジタル化された画像データがデジタル信号処理部120b内のバッファメモリ128にいったん蓄えられる。このデジタル化された画像データのRGB信号が画像信号処理部122でYC信号に変換され、さらに画像圧縮部124でJPEG圧縮と呼ばれる圧縮が行なわれて画像信号が画像ファイルとなってメディアコントローラ125を介して外部記録媒体140に記録される。この画像ファイルとして記録された画像データは、画像表示制御部123を通じて画像表示部130において再生される。この処理の際、RGB信号に基づいてピント調節および露出調節の演算を行なっているのがAF/AE演算部である。このAF/AE演算部126ではピント調節のためにRGB信号から被写体距離ごとにコントラストを検出することが行なわれる。この検出結果に基づいて、フォーカスレンズ114を駆動する駆動機構によってフォーカスレンズ114がピント位置に配置される。またAF/AE演算部ではRGB信号から輝度信号が抽出され、そこから被写界輝度が検出される。この結果に基づき、固体撮像素子111に与えられる被写体光の光量が適切になるように、フィルタコントローラ113aを介して光学フィルタ1によって露出調節が行なわれる。
【0053】
以上が、本発明の光学フィルタ、結像ユニット、および画像撮影装置の各実施形態の説明である。
【0054】
第一実施形態〜第三実施形態の各実施形態において、光学フィルタ1に用いる着色ナノ粒子10には、安価なカーボンブラックを組成成分として含む黒色の着色ナノ粒子10が用いられたが、カーボンブラックの代わりに顔料の一種であるフタロシアニンを用いてもよい。この着色ナノ粒子は、マイクロカプセル化法に合成される。
【0055】
あるいは、上記の各実施形態において採用した光学フィルタは、安価なシリカゲルを組成成分として含み、着色材料として顔料や染料を用いた着色ナノ粒子であってもよい。この場合、着色ナノ粒子はマイナスに帯電したナノ粒子である。こうしたナノスケールの微粒子は、例えば、染料とシリカゲルを含む着色ナノ粒子の場合、シリカゲルと染料を複合化させた粒子を染料存在下シリケートのゾルゲル反応を行い調整することにより生成することができる。
【0056】
また、上記の各実施形態において採用した光学フィルタは、顔料や染料のような着色材料との相溶性に優れたポリマーであるポリスチレンを組成成分として含む着色ナノ粒子を用いてもよい。この場合、ニグロシン系化合物を帯電剤としてポリスチレンに吸着させることにより電荷を持たせることができる。ポリスチレンを含むナノスケールの微粒子は、例えば、染料とポリスチレンをを含む着色ナノ粒子の場合、油溶性染料の存在下スチレンのマイクロエマルション法により調整して生成することができる。
【0057】
また、上記の各実施形態において採用した光学フィルタは、界面活性剤10aとしてポリアクリルアミドが用いられているが、本発明の光学フィルタ、結象ユニットおよび画像形成装置は、メラミンポリマーを界面活性剤として用いるものであってもよい。
【0058】
また、以上の各実施形態における光学フィルタ1では、電場の印加の有無によって光の透過光量が大/小の2段階を切り替えていたが、本発明の光学フィルタは、容器15の上端部および下端部の電極に加えて側面部にも透明電極を備え陽極と陰極を切り替えることにより、着色ナノ粒子の分布を変化させる光学フィルタであってもよい。以下においてこのような光学フィルタの機能を説明する。この光学フィルタも光の透過光量を大/小の2段階に制御する光学絞りとして用いることができる。
【0059】
図7は、容器15の上端部、下端部および側面部に電極を備えた光学フィルタの概略断面図である。
【0060】
図7の光学フィルタ1aにおいて、図1の光学フィルタ1の、図面上の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して示し、同一の構成要素についての重複説明は省略する。図7に示す光学フィルタ1aは、図1に示す光学フィルタ1と異なり、容器15の上端部および下端部の電極14aの他に側面部に透明な電極14bが備えられている。図7の状態では、電極14aは陰極、電極14bは陽極である。このため、カーボンブラックを組成成分として含む本実施形態の着色ナノ粒子10はプラスに帯電しているため、図7に示すように陰極である電極14a付近に多く集まる。このため、容器15の中心付近では光を吸収する着色ナノ粒子10が少なく、図7において一点斜線で示すように被写体光の光路は容器15の中心を通っているので入射光の透過率は大きい。この状態は、光の透過光量を大/小の2段階に制御する光学絞りとしては、光の透過光量が大である状態に対応する。
【0061】
図8は、図7に示す光学フィルタに備えられた電極の、陽極と陰極とを入れ替えた状態を表す概略断面図である。
【0062】
プラスに帯電している着色ナノ粒子10は、図8に示すように陰極である透明電極14b付近に多く集まる。このため、容器15の中心付近では、光を吸収する着色ナノ粒子10が多くなり、図7に比べて光の透過率が小さくなる。この状態は、光の透過光量を大/小の2段階に制御する光学絞りとしては、光の透過光量が小である状態に対応する。
【0063】
ここで、上記では、本発明の概念を実現するための基本的な実施形態について説明したが、本発明に採用する光学フィルタを実用化するにあたっては、光路上にゴミや水滴などが付着して光学フィルタの性能が劣化してしまう不具合を防止するための工夫を施すことが好ましい。
【0064】
例えば、分散媒が収容された容器の光路と交わる外面(以下では、この面を光透過面と称する)に撥水性膜を付設することが好ましい。光透過面に撥水性を付与することによって、ゴミや水滴の付着などが防止される。この撥水性膜を構成する材料としては、シリコン樹脂、オルガノポリシロキサンのブロック共重合体、フッ素系ポリマー、およびポリテトラフルオロエタンなどが好ましい。
【0065】
また、光学フィルタを構成する容器の光透過面に、親水性膜を付設することも好ましい。光透過面に親水撥油性を付与することによっても、ゴミの付着を防止することができる。この親水性膜としては、アクリレート系ポリマーで構成されたものや、非イオン性オルガノシリコン系界面活性剤などといった界面活性剤を塗布したものなどが好ましく、親水性膜の作製方法としては、シラン系モノマーのプラズマ重合や、イオンビーム処理などを適用することができる。
【0066】
また、光学フィルタを構成する容器の光透過面に、酸化チタンなどといった光触媒を付設することも好ましい。光と反応した光触媒によって汚れなどが分解され、光透過面をきれいに保つことができる。
【0067】
また、光学フィルタを構成する容器の光透過面に、帯電防止膜を付設することも好ましい。容器の光透過面に静電気が溜まったり、電極によって帯電してしまうと、光透過面にゴミや埃がくっついてしまう恐れがある。光透過面に帯電防止膜を付設することによって、このような不要物の付着を防止することができる。この帯電防止膜は、ポリマーアロイ系の材料で構成されていることが好ましく、このポリマーアロイ系が、ポリエーテル系や、ポリエーテルエステルアミド系や、カチオン性基を有するものや、レオミックス(商品名、第一工業製薬株式会社)であることが特に好ましい。また、この帯電防止膜が、ミスト法によって作製されたものであることが好ましい。
【0068】
また、光学フィルタを構成する容器に、防汚性素材を適用しても良い。防汚性素材としてはフッ素樹脂が好ましいが、具体的には、含フッ素アルキルアルコキシシラン化合物や、含フッ素アルキル基含有ポリマー、オリゴマー等が好ましく、上記硬化性樹脂と架橋可能な官能基を有するものが特に好ましい。また、防汚性素材の添加量は、防汚性を発現する必要最低量であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態の光学フィルタの側面の概略断面図である。
【図2】着色ナノ粒子と、着色ナノ粒子の表面に吸着している界面活性剤を表す模式図である。
【図3】図1に示す光学フィルタに電場を印加した時の着色ナノ粒子の分布を表す概略断面図である。
【図4】図1に示す光学フィルタを用いた結像ユニットの構成を表す模式図である。
【図5】本発明の画像撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラを前面斜め上から見た外観斜視図である。
【図6】図5に示すデジタルカメラの概略構成図である。
【図7】容器15の上端部、下端部および側面部に電極を備えた光学フィルタの概略断面図である。
【図8】図7に示す光学フィルタに備えられた電極の、陽極と陰極とを入れ替えた状態を表す概略断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 光学フィルタ
10 着色ナノ粒子
10a 界面活性剤
11 分散媒
13a、13b 電極
14a、14b 電極
15 ガラス製の容器
2 結像ユニット
21 レンズ
22 鏡筒
100 デジタルカメラ
101 撮影レンズ
102 光学式ファインダ対物窓
103 補助光発光部
104 電源スイッチ
110 撮影光学系
111 固体撮像素子
112 シャッタ
112a シャッタモータ
113a フィルタコントローラ
114 フォーカスレンズ
114a フォーカスモータ
115 ズームレンズ
115a ズームモータ
120 信号処理部
120a アナログ処理(A/D)部
120b デジタル信号処理部
120c モ−タドライバ
121 システムコントローラ
122 画像信号処理部
123 画像表示制御部
124 画像圧縮部
125 メディアコントローラ
126 AF/AE演算部
127 キーコントローラ
128 バッファメモリ
129 内部メモリ
1200 バス
130 画像表示部
140 外部記録媒体
150 レリーズスイッチ
160 撮影モードスイッチ
170 ズームスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過する光を制御する光学フィルタにおいて、
少なくとも光透過領域が光透過性である容器と、
前記容器内に封入された光透過性の分散媒と、
前記分散媒内に分散した、電荷を持つ有色の着色ナノ粒子と、
前記着色ナノ粒子を電気泳動させることにより光の透過を制御する電極とを備えたことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
前記光学フィルタは、光の透過光量を段階的に制御する絞りであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記着色ナノ粒子が、カーボンブラックを含むものであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記着色ナノ粒子が、シリカを含むものであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記着色ナノ粒子が、シリカおよび顔料を含むものであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記着色ナノ粒子が、シリカおよび染料を含むものであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記着色ナノ粒子が、ポリマーを含むものであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記着色ナノ粒子が、ポリマーおよび顔料を含むものであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記着色ナノ粒子が、ポリマーおよび染料を含むものであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記分散媒が、有機溶媒であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項11】
前記分散媒が、炭化水素系有機溶媒であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項12】
前記分散媒が、該分散媒に分散した着色ナノ粒子どうしの凝集を妨げる界面活性剤を含むものであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項13】
前記電極は、内側の面に絶縁膜がコーティングされ、該絶縁膜が前記分散媒に接して配置されていることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項14】
被写体光を制御する光学フィルタを備えた、被写体を結像する結像ユニットにおいて、
前記光学フィルタが、
少なくとも光透過領域が光透過性である容器と、
前記容器内に封入された光透過性の分散媒と、
前記分散媒内に分散した、電荷を持つ有色の着色ナノ粒子と、
前記着色ナノ粒子を電気泳動させることにより光の透過を制御する電極とを備えたことを特徴とする結像ユニット。
【請求項15】
光の透過を制御する光学フィルタを経由した被写体を捉えた撮影により画像信号を生成する画像撮影装置において、
前記光学フィルタが、
少なくとも光透過領域が光透過性である容器と、
前記容器内に封入された光透過性の分散媒と、
前記分散媒内に分散した着色ナノ粒子と、
前記着色ナノ粒子を電気泳動させることにより光の透過を制御する電極とを備えたことを特徴とする画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−64943(P2006−64943A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246633(P2004−246633)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】