説明

光学フィルタおよび画像表示装置

【課題】色素含有粘着剤層における色素の劣化が抑制された耐久性に優れる光学フィルタを提供すること。
【解決手段】画像表示装置における画像表示部の前面側に配置される光学フィルタ1であって、色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも一方の色素、光安定剤、ならびに紫外線吸収剤を含有する色素含有粘着剤層3と、前記色素含有粘着剤層3の前面側に配置される紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層7とを有するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置における画像表示部の前面側に配置される光学フィルタ、およびこれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルからは、可視光とともに近赤外線が放射されている。近赤外線は、家庭用テレビ、クーラー、ビデオデッキ等の家電製品用の近赤外線リモコン、その他の通信機器に利用されており、プラズマディスプレイパネルからの近赤外線によりこれらの機器が誤作動することがある。このため、プラズマディスプレイパネルの前面側(視認側)に近赤外線吸収フィルムを有する光学フィルタを設置し、例えば850〜1100nmの近赤外線の透過率を20%以下としている。
【0003】
近赤外線吸収フィルムは、一般に樹脂フィルム中に近赤外線吸収色素を含有させたものであり、反射防止フィルムや電磁波遮蔽フィルム等の機能フィルムとともにガラス板等の透明基板上に貼着されて光学フィルタを構成している。しかし、このような光学フィルタについては、近赤外線吸収フィルムに加えて、これを貼着するための粘着剤層を別に設ける必要があり、必ずしも生産性に優れない。
【0004】
そこで、近赤外線吸収フィルムを省略するために、粘着剤層中に近赤外線吸収色素を含有させることが提案されている。近赤外線吸収色素としては、例えばフタロシアニン系、ジイモニウム系、ポリメチン系、金属錯体系、スクアリウム系、シアニン系、インドアニリン系等の各種色素が挙げられる。しかし、このような近赤外線吸収色素は必ずしも耐光性に優れず、光学フィルタの耐久性が低下しやすい。
【0005】
光学フィルタの耐光性を向上させるために、例えば粘着剤層中に紫外線吸収剤を含有させることや、粘着剤層が形成される基材となるフィルムを紫外線吸収フィルムとすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、紫外線吸収剤を含有させるだけ、または紫外線吸収フィルムを設けるだけでは、必ずしも十分な耐光性を得ることができない。
【0006】
また、近年、光学フィルタへの外光の写り込みによるコントラストの低下を抑制するために、透光性領域と暗色部とを有するマイクロルーバ層とも呼ばれるコントラスト向上層を設けることが検討されている。例えば、透光性領域は、樹脂フィルム等の透明支持体上に水平方向に延びるように、かつ断面形状が略台形状等となるように互いに溝部を介して複数形成され、暗色部は各透光性領域間に形成される溝部を埋めるように形成され、一般に生産性等の観点からこれらは紫外線硬化性樹脂からなる(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかし、紫外線硬化性樹脂を用いる場合、この紫外線硬化性樹脂を硬化させるためのラジカル等を発生させる光重合開始剤が併用され、これが硬化物中に残存する。このため、例えば光学フィルタの使用時に外光、具体的には紫外線が照射されたときに、ラジカル等が発生する。コントラスト向上層に粘着剤層が接触して配置される場合、コントラスト向上層で発生したラジカル等により粘着剤層中の近赤外線吸収色素が劣化する。粘着剤層中に色調補正色素が含有される場合についても同様の問題が発生する。
【0008】
コントラスト向上層と粘着剤層との位置関係を変更し、コントラスト向上層に粘着剤層が接触しない構造とすることも考えられる。しかし、通常、透光性領域の表面の高さに比べてこれらの間の溝部に形成される暗色部の表面の高さは低くなり、コントラスト向上層の表面には凹凸が発生することから、コントラスト向上層の表面に粘着剤層を接触するように配置しないと視認性が低下しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/090705号パンフレット
【特許文献2】特開2006−178092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、粘着剤層中の色素の劣化が抑制された耐久性に優れる光学フィルタを提供することを目的としている。また、本発明は、このような光学フィルタを用いた画像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光学フィルタは、画像表示装置における画像表示部の前面側に配置されるものであって、色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも一方の色素、光安定剤、ならびに紫外線吸収剤を含有する色素含有粘着剤層と、前記色素含有粘着剤層の前面側に配置される紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の他の光学フィルタは、画像表示装置における画像表示部の前面側に配置される光学フィルタであって、透光性領域および暗色部を有するとともに前記透光性領域および暗色部の少なくとも一方が紫外線硬化性樹脂および光重合開始剤を含有する組成物の硬化物からなるコントラスト向上層と、前記コントラスト向上層の前面側に前記コントラスト向上層と接触して配置され、色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも一方の色素、光安定剤、ならびに紫外線吸収剤を含有する色素含有粘着剤層と、前記色素含有粘着剤層の前面側に配置される紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の画像表示装置は、画像表示部の前面側に光学フィルタが配置された画像表示装置であって、前記光学フィルタが上記した本発明の光学フィルタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学フィルタによれば、色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも一方の色素を含有する色素含有粘着剤層中に光安定剤および紫外線吸収剤を含有させるとともに、色素含有粘着剤層の前面側に紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を配置することで、色素含有粘着剤層中の色素の劣化を効果的に抑制できる。
【0015】
特に、透光性領域および暗色部を有するとともに、これらの少なくとも一方が紫外線硬化性樹脂および光重合開始剤を含有する組成物の硬化物からなるコントラスト向上層を備え、このコントラスト向上層の前面側に色素含有粘着剤層が接触して配置されるものにおいて、色素含有粘着剤層中の色素の劣化を効果的に抑制できる。
【0016】
本発明の画像表示装置によれば、上記した色素含有粘着剤層における色素の劣化が抑制された光学フィルタを用いることで、耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の光学フィルタの一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の光学フィルタの一例を示す断面図である。
【0019】
光学フィルタ1は、画像表示装置における画像表示部の前面側、すなわち観察者側に配置されるものであって、例えば、画像表示部側から順に、コントラスト向上フィルム2、色素含有粘着剤層3、および紫外線吸収反射防止フィルム4を有する。
【0020】
コントラスト向上フィルム2は、外光によるコントラストの低下を抑制するために設けられるものであり、例えば、透明支持体5の前面側にコントラスト向上層6を有するものである。なお、本発明の光学フィルタ1については、コントラスト向上フィルム2(コントラスト向上層6)が設けられていることが好ましいが、必ずしもコントラスト向上フィルム2(コントラスト向上層6)が設けられている必要はない。
【0021】
コントラスト向上層6は、水平方向に延び、かつ互いに平行に配置される複数の透光性領域6aと、これら透光性領域6a間に配置される暗色部6bとを有する。暗色部6bは、暗色粒子を含有するものであり、その断面形状は、略台形状の他、正方形状や長方形状、三角形状等であってもよい。透光性領域6aおよび暗色部6bは、少なくとも一方が紫外線硬化性樹脂および光重合開始剤を含有する組成物の硬化物からなることが好ましい。
【0022】
このようなコントラスト向上フィルム2(コントラスト向上層6)によれば、暗色粒子を含有する暗色部6bによって外光を吸収して表示画像のコントラストを向上させることができ、また透光性領域6aには暗色粒子が含有されないことから光透過性が低下せず、表示画像が暗くなることによる視認性の低下を抑制できる。
【0023】
紫外線吸収反射防止フィルム4は、紫外線吸収機能と反射防止機能とを有するものであり、本発明の光学フィルタ1では、特に色素含有粘着剤層3における色素の劣化を抑制するために設けられる。紫外線吸収反射防止フィルム4は、例えば、紫外線吸収フィルム7の前面側に反射防止層8を有するものである。ここで、紫外線吸収フィルム7が、本発明における紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層に該当する。
【0024】
本発明の光学フィルタ1については、少なくとも色素含有粘着剤層3の前面側に紫外線吸収層が配置される必要があるが、色素含有粘着剤層3と紫外線吸収層とは必ずしも接触している必要はない。また、本発明の光学フィルタ1については、反射防止層8が設けられることが好ましいが、必ずしも反射防止層8が設けられていなくてもよい。
【0025】
コントラスト向上フィルム2と紫外線吸収反射防止フィルム4とは、色素含有粘着剤層3によって貼り合わされる。色素含有粘着剤層3は、色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも一方の色素を含有するとともに、光安定剤および紫外線吸収剤を含有するものである。
【0026】
本発明の光学フィルタ1によれば、色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも一方の色素を含有する色素含有粘着剤層3に光安定剤および紫外線吸収剤を含有させるとともに、色素含有粘着剤層3の前面側に紫外線吸収層を配置することで、色素含有粘着剤層3に含有される色素の劣化を抑制できる。特に、紫外線硬化性樹脂および光重合開始剤を含有する組成物の硬化物を少なくとも一部に含むコントラスト向上層6を有し、このコントラスト向上層6に色素含有粘着剤層3が接触するために該色素含有粘着剤層3における色素が劣化しやすいものにおいて、色素の劣化を効果的に抑制できる。
【0027】
コントラスト向上フィルム2における透明支持体5としては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス、樹脂材料等からなるフィルム状または板状のものが挙げられる。例えば、樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、セロファン等が挙げられる。透明支持体5の厚さは、10〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0028】
コントラスト向上層6における透光性領域6aの構成材料は、暗色部6bを形成するための溝部を形成しやすく、軽量で薄くすることができ、可撓性にも優れることから樹脂材料が好ましく、例えば、電離放射線硬化性樹脂の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂等の樹脂材料が挙げられる。なお、本発明の光学フィルタ1においては、透光性領域6aおよび暗色部6bのうち少なくとも一方の樹脂材料を紫外線硬化性樹脂、特にラジカル重合性官能基を有するプレポリマーやモノマーとし、光重合開始剤、特にラジカルを発生するものを併用することが好ましい。
【0029】
電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線、例えば紫外線または電子線等を照射することにより、架橋または重合反応にて硬化する樹脂を意味する。このような電離放射線硬化性樹脂としては、例えば電離放射線重合性プレポリマーおよび/または電離放射線重合性モノマーが挙げられる。
【0030】
電離放射線重合性プレポリマー(オリゴマーも包含する)としては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリオール(メタ)アクリレート系、シリコン(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル系等の分子中にラジカル重合性官能基を有する重合性プレポリマー、あるいはノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等のエポキシ系樹脂等の分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性プレポリマー等が挙げられる。これらの電離放射線重合性プレポリマーは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートまたはメタクリレート」を意味する。
【0031】
また、電離放射線重合性モノマー(単量体)としては、分子中にラジカル重合性官能基を有する重合性モノマーである多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有するモノマーとしては、例えば、3,4−エポキシシクロへキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロへキセンカルボキシレート等の脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等グリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等ビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等オキセタン類等が挙げられる。これらの電離放射線重合性モノマーは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、電離放射線重合性プレポリマーと併用してもよい。
【0032】
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合、光重合開始剤を電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが好ましい。光重合開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択できる。
【0033】
分子中にラジカル重合性官能基を有する重合性モノマーや重合性プレポリマーとしては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール等が挙げられる。また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性モノマーや重合性プレポリマーとしては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。また、光増感剤としては、p−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等が挙げられる。
【0034】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、汎用の2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール硬化物)等が挙げられる。
【0035】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、テレフタル酸−エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等のセルロース樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0036】
コントラスト向上層6における暗色部6bとしては、バインダー樹脂中に暗色粒子を分散させたものが好ましく、可視光線波長域の大部分を吸収し、入射する可視光線(外光)を高い割合で吸収するものが好ましい。このようなものによれば、反射する外光が目立たず、その反射光が画像光に混入しても画像コントラストの低下が抑制される。
【0037】
暗色粒子としては、各色の粒子を用いることができ、例えば、黒色粒子として、カーボンブラック(墨)、黒色酸化鉄等の黒色顔料や、アクリル等の透明粒子をカーボンブラック等の黒色顔料で染色した樹脂粒子等が挙げられる。暗色粒子は、青色、紫色、黄色、赤色等の各種顔料を混合して無彩色化した顔料粒子でもよく、それらの顔料で染色した樹脂粒子でもよい。青色顔料として、銅フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、コバルトブルー、群青等、紫色顔料として、ジオキサジンバイオレット等、黄色顔料として、ジスアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、黄鉛等、赤色顔料として、クロモフタルレッドタイペル、キナクリドンレッド、弁柄等、緑色顔料として、銅フタロシアニングリーン、緑青等が挙げられる。暗色粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10〜100質量部が好ましい。
【0038】
バインダー樹脂としては、透光性領域6aの樹脂材料と同様のものが挙げられ、例えば、電離放射線硬化性樹脂の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂等の樹脂材料が挙げられる。なお、既に説明したように、本発明の光学フィルタ1においては、透光性領域6aおよび暗色部6bのうち少なくとも一方の樹脂材料を紫外線硬化性樹脂、特にラジカル重合性官能基を有するプレポリマーやモノマーとし、光重合開始剤、特にラジカルを発生するものを併用することが好ましい。
【0039】
コントラスト向上フィルム2は、例えば以下のように製造できる。まず、透明支持体5の上に透光性領域形成用組成物を塗布し、その表面に暗色部6bを形成するための溝部等を形成して透光性領域6aを形成する。例えば、紫外線硬化性樹脂からなる透光性領域6aの場合、紫外線硬化性樹脂と光重合開始剤とを有機溶剤に溶解させて透光性領域形成用組成物を調製した後、これを透明支持体5の表面に塗布し、その表面にロール状の金型(賦形型ロール)を押し当てて暗色部6bを形成するための溝部を形成しつつ、紫外線を照射することにより硬化させて形成する。
【0040】
暗色部6bは、暗色粒子とバインダー樹脂とを有機溶剤に溶解させて暗色部形成用組成物を調製した後、これを透光性領域6a間の溝部に塗布し、硬化させることにより形成できる。例えば、バインダー樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合、暗色粒子、紫外線硬化性樹脂、および光重合開始剤を有機溶剤に溶解させて暗色部形成用組成物を調製し、これを透光性領域6a間の溝部に塗布した後、紫外線を照射することにより硬化させて形成する。
【0041】
透光性領域6aの厚さは、例えば暗色部6bを形成する観点等から、20〜200μmが好ましく、30〜150μmがより好ましく、暗色部6bの厚さ(深さ)は、10〜180μmが好ましく、20〜130μmがより好ましく、幅は5〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましく、ピッチは10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましい。
【0042】
色素含有粘着剤層3は、色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも一方の色素、光安定剤、ならびに紫外線吸収剤を含有する。色素、光安定剤、および紫外線吸収剤は、粘着剤中に分散された状態で含有されている。
【0043】
粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ブタジエン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられ、特にアクリル系粘着剤が好ましい。
【0044】
アクリル系粘着剤は、アクリル系単量体単位を主成分として含む重合体である。アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、(無水)フマル酸、クロトン酸、これらのアルキルエステルが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸を意味する。
【0045】
アクリル系単量体の中でも、(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステルを主成分とするものが好ましい。ここで、主成分とするとは、(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステルが、アクリル系粘着剤全量に対して95質量%以上含まれることを意味する。より好ましくは98質量%以上であり、さらに好ましくは99質量%以上である。(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
粘着剤の凝集力を高めるために、架橋点となりうる官能基(例えば、ヒドロキシ基、グリシジル基等)を有する単量体を使用することが好ましい。架橋点となりうる官能基を有する単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0047】
このような架橋点を有する単量体を使用する場合には架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤を架橋点に反応させてポリマーを架橋させることにより凝集力を確保できる。架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、金属塩、金属水酸化物、金属キレート、ポリイソシアネート、カルボキシ基含有ポリマー、酸無水物、ポリアミン等が挙げられ、架橋点となりうる官能基の種類に応じて適宜選択される。
【0048】
アクリル系粘着剤は、酸価が7mgKOH/g以下であることが好ましい。なお、酸価が0mgKOH/gであってもよい。好ましい酸価は、0〜4mgKOH/gである。アクリル系粘着剤の酸価が7mgKOH/g以下であると、耐湿試験後の変色を抑えることができる。ここでいう酸価とは、指示薬としてフェノールフタレインを用いたアルコール性水酸化カリウム(KOH)の滴定により求められる値である。
【0049】
アクリル系粘着剤の酸価を7mgKOH/g以下にするには、アクリル系単量体を重合する際に酸価が上記範囲になるようにアクリル酸の共重合量を調整すればよい。酸価が7mgKOH/g以下のアクリル系粘着剤は市販されており、その中から適宜選択して用いることができる。例えば、商品名:「NCK101」東洋インキ社製(酸価=0mgKOH/g)、商品名:「EXK04−488」東洋インキ社製(酸価:6.2mgKOH/g)等が挙げられる。
【0050】
また、アクリル系粘着剤のガラス転移温度(Tg)は、−40〜40℃であることが好ましく、より好ましくは−30〜10℃である。
【0051】
色調補正色素は、可視光の特定波長域の一部を吸収し、透過可視光の色調を改善する。色調補正色素としては、例えば、アゾ系、縮合アゾ系、ジイモニウム系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、メチン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ピロール系、チオインジゴ系、ポルフィリン系、テトラアザポルフィリン系等の周知の有機顔料および有機染料、無機顔料が挙げられる。
【0052】
色調補正色素の中でも、耐光性が良好であるとともに粘着剤との相溶性または分散性が良好な色素、例えば、アンスラキノン系色素、キノフタロン系色素、およびテトラアザポルフィリン系色素から選ばれる1種、または2種以上を適宜組み合わせて用いることが好ましい。アンスラキノン系色素、およびテトラアザポルフィリン系色素から選ばれる1種、または2種以上を適宜組み合わせて用いることがより好ましい。
【0053】
「アンスラキノン系色素」
アンスラキノン系色素としては、例えば下記一般式(1)、(2)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0054】
【化1】

【0055】
式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、シアノ基、ベンジル基、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜12のアルコキシル基、−CO−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)、−S−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)または−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基または、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基。)のいずれかである。
【0056】
式(1)で表される化合物のうち、Rは−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基または、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基。)であることが好ましい。また、R、R、R、およびRは、前記4つの基のうち1つが水酸基、フェニル基および1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基から選ばれる1つであり、残りの3つの基が水素原子であることが好ましい。R、R、Rは水素原子であることが好ましい。置換基が前記である化合物であると、溶剤への溶解性が優れるので好ましい。
【0057】
【化2】

【0058】
式中、R〜R22は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、シアノ基、ベンジル基、炭素数1〜12のアルキル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているアルコキシル基、−CO−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)、−S−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)または−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基または、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基。)のいずれかである。
【0059】
アンスラキノン系色素としては、式(1)で表される化合物が溶剤への溶解性の観点で好ましい。式(1)で表されるアンスラキノン系色素として、例えば、日本化薬社製の商品名「カヤセットViolet A−R」、「カヤセットBlue N」、「カヤセットBlue FR」、「カヤセットGreen A−B」等が挙げられる。
【0060】
「テトラアザポルフィリン系色素」
また、テトラアザポルフィリン系色素としては式(3)で表される構造を有することが好ましい。
【0061】
【化3】

【0062】
式中、R23〜R30は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、シアノ基、ベンジル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているベンジル基、フェニル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基、炭素数1〜10のアルキル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基または1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかである。
は、Cu、Ni、Zn、Pd、Pt、VO、CoおよびMgのいずれかである。
23〜R30は、炭素数1〜6のアルキル基が、溶剤への溶解性の観点で好ましい。Mは、CuまたはVOが好ましい。
【0063】
式(3)で表されるテトラアザポルフィリン系色素としては、例えば、山田化学社製の商品名「TAP−2」「TAP−18」「TAP−45」等が挙げられる。
【0064】
テトラアザポルフィリン系色素は、プラズマディスプレイパネルが発する波長590nm付近のオレンジ色の不要光を効率的に吸収できるため好ましく使用できる。また、耐久性の観点からは、アンスラキノン系色素が好ましい。テトラアザポルフィリン系色素およびアンスラキノン系色素を組み合わせて用いることがより好ましい。
【0065】
色調補正色素の含有量は、粘着剤100質量部に対し、0.001〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましい。色調補正色素の含有量を0.001質量部以上とすることで色調補正機能を充分に発揮でき、20質量部以下とすることで耐久性の低下を抑制できる。
【0066】
近赤外線吸収色素としては、ポリメチン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アミニウム系色素、イモニウム系色素、ジイモニウム系色素、アンスラキノン系色素、ナフトキノン系色素、インドールフェノール系色素、アゾ系色素、トリアリルメタン系色素、酸化タングステン系色素等が挙げられる。熱線吸収や電子機器のノイズ防止の用途には、最大吸収波長が750〜1100nmである近赤外線吸収色素が好ましく、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、酸化タングステン系色素が特に好ましい。
【0067】
近赤外線吸収色素は1種類でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。近赤外線吸収色素の耐久性の観点から、1種類のみまたは2種以上のフタロシアニン系色素を組み合わせて用いることが好ましい。また、耐久性の観点に加え、近赤外線を充分にかつ効率的に吸収できることから、2種以上のフタロシアニン系色素を組み合わせて用いることがより好ましい。また、ジイモニウム系色素も近赤外線を効率的に吸収できることから好ましい。
【0068】
「ジイモニウム系色素」
ジイモニウム系色素は、下記一般式(4)で表される化合物である。
【0069】
【化4】

【0070】
式中、R31〜R38は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アルケニル基、置換基を有するアルケニル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキニル基または置換基を有するアルキニル基を表し、Zは陰イオンを表す。
【0071】
31〜R38において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、第三ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、または第三オクチル基等が挙げられる。該アルキル基はアルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホ基、またはカルボキシル基等の置換基を有してもよい。
【0072】
アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、またはオクテニル基等が挙げられる。該アルケニル基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
【0073】
アリール基としては、ベンジル基、p−クロロベンジル基、p−メチルベンジル基、2−フェニルメチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、α−ナフチルメチル基、またはβ−ナフチルエチル基等が挙げられる。該アリール基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
【0074】
アルキニル基としては、プロピニル基、ブチニル基、2−クロロブチニル基、ペンチニル基、またはヘキシニル基等が挙げられる。該アルキニル基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
【0075】
31〜R38は、n−ブチル基またはイソブチル基が好ましい。n−ブチル基またはイソブチル基であることで、湿気に対する耐久性が優れるため好ましい。特にイソブチル基が好ましい。
【0076】
は、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、P−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酢酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、(RSOまたは(RSO[Rは炭素数1〜4のフルオロアルキル基を表す]等の陰イオンを表す。
【0077】
これらの陰イオンのうち、過塩素酸イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、(RSO、(RSO等が好ましく、特に(RSO、(RSOが熱安定性に最も優れるため好ましい。
【0078】
「フタロシアニン系色素」
フタロシアニン系色素としては、フタロシアニン骨格(下記化学式(5)参照)を有する化合物であれば特に制限されない。式(5)中のMは、Cu、Ni、Zn、Pd、Pt、VO、CoおよびMgのいずれかであり、CuまたはVOが好ましい。フタロシアニン系色素の中でも、粘着剤組成物の近赤外線吸収性が高くなることから、800〜1100nmに極大吸収波長を有する近赤外線吸収色素が好ましい。800〜1100nmに極大吸収波長を有するフタロシアニン系色素としては、例えば、日本触媒社製、商品名「イーエクスカラーIR−12」、商品名「イーエクスカラーIR−14」、商品名「TX−EX−906B」、商品名「TX−EX−910B」)等の市販品が挙げられる。
【0079】
【化5】

【0080】
「酸化タングステン系色素」
酸化タングステン系色素は、W(ただし、2.2≦s/r≦2.999である。)で表される酸化タングステン微粒子、またはA(ただし、AはH、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される元素、0.001≦t/u≦1.1、2.2≦v/u≦3.0である。)で表される複合タングステン酸化物微粒子が好ましい。
【0081】
近赤外線吸収色素の含有量は、粘着剤100質量部に対し、0.001〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましい。近赤外線吸収色素の含有量を0.001質量部以上とすることで、近赤外線吸収機能を充分に発揮させることができ、20質量部以下とすることで、耐久性の低下を抑制できる。
【0082】
光安定剤としては、公知の光安定剤を用いることができ、特にジチオール錯体系の光安定剤が好適に用いられる。
【0083】
「ジチオール錯体」
ジチオール錯体とは、金属原子にジチオールが、チオール基を構成する硫黄原子を介して配位した化合物であり、例えば、式(6)で表される化合物が好適なものとして挙げられる。
【0084】
【化6】

【0085】
式中、R39〜R58はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアリール基、炭素数1〜20のアラルキル基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表し、Mは、銅、ニッケル、白金またはパラジウムを表す。
【0086】
ジチオール錯体として具体的には、市販品として、住友精化社製、商品名「EST−3」(ジチオール銅錯体、ビス(4−ピペリジルスルホニル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’)銅−テトラ−nブチルアンモニウム)、商品名「EST−5」(ジチオール銅錯体、ビス(4−モルフォリノスルフォニル−1,2−ジチオフェノレート)銅−テトラ−n−ブチルアンモニウム)、商品名「EST−5Ni」(ジチオールニッケル錯体、ビス(4−モルフォリノスルフォニル−1,2−ジチオフェノレート)ニッケル−テトラ−n−ブチルアンモニウム)、和光純薬社製、商品名「ビス(ジブチルジチオカルバミン酸)ニッケル(II)」等が挙げられる。ジチオール錯体の中でも、耐久性がより高くなることから、ジチオール銅錯体およびジチオールニッケル錯体が好ましい。
【0087】
上記ジチオール錯体によれば、自身の安定性に優れ、色素、特にフタロシアニン系色素に対するクエンチャー効果、すなわちフタロシアニン系色素の光に対する安定性を向上させる効果に優れるために好ましい。
【0088】
光安定剤としてのジチオール錯体の含有量は、粘着剤100質量部に対し、0.001〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましく、0.05〜5質量部がさらに好ましい。光安定剤としてのジチオール錯体の含有量を0.001質量部以上とすることで、安定化機能を充分に発揮でき、20質量部以下とすることで、耐久性の低下を抑制でき、光学フィルタに求められる他の物性も確保できる。
【0089】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、オキザニリド系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤等が好ましく挙げられる。
【0090】
紫外線吸収剤としては、例えば式(7)で表されるトリアジン化合物が好ましい。式(7)で表されるトリアジン化合物を用いることにより、色素含有粘着剤層3における色素の劣化を抑制し、耐久性を向上できる。
【0091】
【化7】

【0092】
式中、R59は水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、シアノ基、ベンジル基、炭素数1〜12のアルキル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子で置換された炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子で置換されたフェニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子で置換された炭素数1〜12のアルコキシル基、−CO−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)、−O−CH(R)−CO−O−R(ただしRは、炭素数1〜12のアルキル基、Rは炭素数1〜20のアルキル基)、−S−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)または−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基または、基中の1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基。)のいずれかである。R60〜R70は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、シアノ基、ベンジル基、炭素数1〜12のアルキル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているアルコキシル基、−CO−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)、−S−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)または−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基、または1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基。)のいずれかである。a、bはそれぞれ独立に、0〜3の整数である。
【0093】
a、bはそれぞれ独立に、1または2が好ましく、a=1、b=1が最も好ましい。R59は、炭素数4〜10のアルキル基、1以上の水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換された炭素数4〜10のアルキル基、炭素数4〜10のアルコキシル基、1以上の水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換された炭素数4〜10のアルコキシル基、−CO−R(ただし、Rは炭素数4〜8のアルキル基である。)、−O−CH(R)−CO−O−R(ただしRは、炭素数4〜10のアルキル基、Rは炭素数4〜10のアルキル基)のいずれかであることが、有機溶剤への溶解性の点で好ましい。特に、R59は−O−CH(R)−CO−O−Rが好ましく、Rの炭素数は1〜6が好ましく、Rの炭素数は6〜18がより好ましい。R59が前記式の基であることで、トリアジン化合物の有機溶剤への溶解性が良好になるため好ましい。またRの炭素数が前記範囲であることで、有機溶剤への溶解性がさらに良好になるため好ましい。
【0094】
60〜R70は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、1以上の水素原子がフッ素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、1以上の水素原子がフッ素原子または塩素原子に置換されているアルコキシル基、−CO−R(ただし、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)のいずれかであることが、有機溶剤への溶解性の点で好ましい。R60〜R70は、それぞれ独立に水素原子および炭素数1〜4のアルキル基のいずれかであると、有機溶剤への溶解性が良好になるためより好ましい。
【0095】
紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤100質量部に対し、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましい。紫外線吸収剤の含有量を0.1質量部以上とすることで、紫外線吸収機能を充分に発揮でき、30質量部以下とすることで、光学フィルタ1に求められる他の物性を確保できる。
【0096】
色素含有粘着剤層3は、粘着剤、色調補正色素、近赤外線吸収色素、光安定剤、および紫外線吸収剤等を有機溶剤に溶解させて色素含有粘着剤組成物を調製し、これを公知の機能フィルム等に塗工し、乾燥させることにより形成できる。なお、色素含有粘着剤組成物には、必要に応じて、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等を含有させてもよい。
【0097】
有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール等のアルコール系、ヘキサン等の炭化水素系、および、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、必要に応じて適宜混合して用いてもよい。
【0098】
塗工方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、コンマコーター法等のコーティング法を採用できる。
【0099】
色素含有粘着剤層3の厚さは、0.3〜100μmが好ましく、0.5〜50μmがより好ましい。0.3μm以上とすることで、近赤外線吸収能等を充分に発揮でき、100μm以下とすることで成形時の有機溶剤の残留を低減できる。
【0100】
紫外線吸収反射防止フィルム4は、紫外線吸収フィルム7の前面側に反射防止層8を有する。本発明の光学フィルタ1については、色素含有粘着剤層3の前面側に紫外線吸収フィルム7、すなわち紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を配置することで、色素含有粘着剤層3に光安定剤および紫外線吸収剤を含有させることと併せて、色素含有粘着剤層3における色素の劣化を効果的に抑制できる。
【0101】
紫外線吸収フィルム7は、紫外線吸収剤を含有するフィルム状のものであれば特に限定されない。紫外線吸収剤としては、色素含有粘着剤層3に含有される紫外線吸収剤と同様のものが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、オキザニリド系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収フィルム7に含有される紫外線吸収剤は、色素含有粘着剤層3に含有される紫外線吸収剤と同一であってもよく、異なってもよい。
【0102】
紫外線吸収フィルム7の紫外線吸収剤以外の構成材料としては樹脂材料が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、セロファン等が挙げられる。
【0103】
紫外線吸収剤の含有量は、樹脂材料100質量部に対し、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましい。紫外線吸収剤の含有量を0.1質量部以上とすることで、紫外線吸収機能を充分に発揮でき、30質量部以下とすることで、光学フィルタ1に求められる他の物性を確保できる。
【0104】
紫外線吸収フィルム7は、その主原料となる樹脂材料中に紫外線吸収剤を混合し、この紫外線吸収剤を含有する樹脂材料をフィルム状に成形することにより製造できる。紫外線吸収フィルム7の厚さは、25〜400μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。厚さを25μm以上とすることで、紫外線吸収機能を十分に発揮でき、400μm以下とすることで、光学フィルタ1の全体の厚みを抑制できる。
【0105】
反射防止層8としては、屈折率の低い無機化合物と屈折率の高い無機化合物とを交互に積層した積層体や、屈折率の低い無機化合物からなる層、屈折率の低い樹脂からなる層が挙げられる。屈折率の低い樹脂としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂等が挙げられる。屈折率の低い無機化合物としては、二酸化珪素等が挙げられる。
【0106】
紫外線吸収反射防止フィルム4としては、市販されているものを使用することができ、例えば日油社製の商品名「RL1710UV」等を用いることができる。
【0107】
このような光学フィルタ1は、例えば以下のようにして製造できる。まず、コントラスト向上フィルム2および紫外線吸収反射防止フィルム4を製造するとともに、色素含有粘着剤層3となる色素含有粘着剤組成物を調製する。そして、紫外線吸収反射防止フィルム4の画像表示部側となる表面に色素含有粘着剤組成物を塗工し、乾燥させて色素含有粘着剤層3を形成した後、この色素含有粘着剤層3を利用してコントラスト向上フィルム2に紫外線吸収反射防止フィルム4を貼り合わせる。このようにして、コントラスト向上フィルム2と紫外線吸収反射防止フィルム4とが色素含有粘着剤層3によって貼り合わされた光学フィルタ1を製造できる。
【0108】
一般に、光学フィルタは、画像表示部の前面側に配置されるために無彩色が好まれる。JIS Z 8701−1999に従い計算されたC光源基準において、無彩色に対応する色度座標は、(x,y)=(0.310,0.316)であることから、本発明の光学フィルタ1は、色度座標(x,y)=(0.310±0.100,0.316±0.100)であることが好ましい。光学フィルタ1の色度座標を前記の値にする方法としては、例えば、粘着剤に含有させる色調補正色素や近赤外線吸収色素の種類および含有量を適宜選定した上で、その色度に応じて使用するフィルム等の種類を選択する方法が挙げられる。
【0109】
また、一般に、光学フィルタの視感平均透過率は、25%以上が好ましく、45%以上がより好ましい。本発明の光学フィルタ1の視感平均透過率を45%以上にする方法としては、例えば、使用するフィルム等として透明性の高いものを選択する方法、粘着剤に含有させる色調補正色素や近赤外線吸収色素の種類および含有量を適宜選定する方法が挙げられる。光学フィルタ1の視感平均透過率は、80%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、95%以下が最も好ましい。なお、透過率が高くなるとコントラストが低下することがあるため、実際には視感平均透過率は20〜70%が好ましく、30〜60%がより好ましい。
【0110】
本発明の画像表示装置は、画像表示部の前面側に本発明の光学フィルタ1を有する。画像表示装置としては、プラズマパネル表示装置が好適なものとして挙げられ、必ずしもこのようなものに限定されず、例えば、陰極線管表示装置、液晶表示装置、電場発光表示装置等であってもよい。この場合、光学フィルタ1は、画像表示部の前面側に設置すればよく、画像表示部から離して設置してもよく、画像表示部に直接貼り付けてもよい。
【0111】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は上記した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上記した実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0112】
例えば、本発明の光学フィルタ1は、コントラスト向上フィルム2を有し、その前面側に色素含有粘着剤層3が接触して配置されることが、積層数が少なくできるため好ましい。また、色素含有粘着層3はコントラスト向上フィルム2の前面(人側)に配置されるのが、見た目がよく、色見もよく(色が引き締まって見える)、CRFの凸凹感や欠点が目立たないことから好ましい。
【0113】
コントラスト向上フィルム2と色素含有粘着剤層3とは必ずしも接触している必要はない。また、コントラスト向上フィルム2は必ずしも設けられていなくてもよく、ガラス基板や透明樹脂フィルム等の透明基材の前面側に色素含有粘着剤層3が接触して配置されていてもよい。
【0114】
また、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層としては、紫外線吸収反射防止フィルム4の紫外線吸収フィルム7が好ましいが、紫外線吸収フィルム7は必ずしも紫外線吸収反射防止フィルム4に設けられたものである必要はなく、他の機能フィルムに設けられたものであってもよく、また必ずしもフィルム状である必要はなく、コーティング法等によって形成された塗工層であってもよい。
【0115】
さらに、本発明の光学フィルタ1には、必要に応じて、かつ本発明の趣旨に反しない限度において、コントラスト向上フィルム2や紫外線吸収反射防止フィルム4以外の各種の支持フィルムや機能フィルム、これらの支持フィルムや機能フィルムを貼り合わせるための粘着剤層等を設けることができる。機能フィルムとしては、例えば電磁波遮蔽フィルム等が挙げられる。本発明の光学フィルタ1は、少なくとも所定の色素含有粘着剤層3とその前面側に配置される所定の紫外線吸収層とを有するものであればよい。
【実施例】
【0116】
以下、本発明の光学フィルタについて、実施例を参照してより具体的に説明する。
例1〜4は実施例、例5〜7は比較例。
【0117】
(例1)
まず、以下に示すようにコントラスト向上フィルム2を製造した。
透明支持体5として両面易接着処理された厚さ100μmの帯状のPETフィルム(東洋紡績社製、商品名「A4300」)を準備し、その上にウレタンアクリレートプレポリマーからなる紫外線硬化性プレポリマーおよび光重合開始剤を含む透光性領域形成用組成物を厚さ89μmとなるように塗布した。
【0118】
この塗布層の表面に金属製賦形型ロールを押し当て、暗色部6bを形成するための溝部を刻設しながら背面から紫外線を照射して透光性領域形成用組成物を硬化させて透光性領域6aを形成した。なお、溝部は、断面形状を略台形状とし、開口部側の幅を10μm、底部側の幅を7μm、深さを69μmとし、51μmのピッチで形成した。賦形型ロールは、溝部に対応する凸部を円周方向に有するものであり、上記した透光性領域形成用組成物を塗布した帯状のPETフィルム上でその長手方向に回転させることで溝部を形成できる。
【0119】
一方、透明アクリル系の紫外線硬化性プレポリマー100質量部中に、最小粒径が2μmかつ最大粒径が3μmの黒い球状ビーズ状粒子の50質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」)の2質量部を混合して液状の暗色部形成用組成物を調製した。
【0120】
この暗色部形成用組成物を主として上記した透光性領域6a間の溝部に塗工し、ドクターブレードでワイピングした。ワイピングに際しては、同時に背面から紫外線を照射して暗色部形成用組成物を硬化させた。なお、ワイピングは、透光性領域6aの平坦部とドクターブレードとの隙間を1.5μmとして、2回繰り返して行った。これにより、溝部に暗色部6bを形成するとともに、透光性領域6aの平坦部上には樹脂成分のみを厚さ1.5μmで残留させ、上記した紫外線の照射により硬化させて厚さ1μmの透明保護層を形成し、コントラスト向上層6を形成し、コントラスト向上フィルム2を製造した。なお、[樹脂部(暗色部6b、透明保護層中)の屈折率]−[球状ビーズの屈折率]=−0.003であった。また、暗色部6bの表面には、溝部に向かって窪んだような凹部が形成されており、その深さは透明保護層の表面から3μmであった。
【0121】
次に、上記したコントラスト向上フィルム2を用いて光学フィルタ1を作製した。
まず、MEK(メチルエチルケトン)の6質量部にジチオール錯体系の光安定剤(和光純薬社製、商品名「ビス(ジブチルジチオカルバミン酸)ニッケルII」)の0.0659質量部、紫外線吸収剤(Ciba社製、商品名「TINUVIN 479」)の1.69質量部、色調補正色素としてテトラアザポルフィリン化合物(山田化学社製、商品名「TAP18」)の0.0150質量部を添加し、ミキサーで10分撹拌して溶解させた。この溶液にアクリル系粘着剤(東洋インキ社製、商品名「NCK101」、酸価;0mgKOH/g、Tg:−20℃)の30質量部および架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートHL」)の0.35質量部を添加し、さらにミキサーで10分撹拌して溶解させて色素含有粘着剤組成物を調製した。
【0122】
PETフィルムの表面にシリコーン樹脂層を形成したセパレーター上に、上記した色素含有粘着剤組成物をアプリケーターによって塗布し、100℃のオーブンで5分乾燥させて厚さ25μmの色素含有粘着剤層3を形成した。この色素含有粘着剤層3を有するセパレーターを紫外線吸収反射防止フィルム4(日油社製、商品名「RL1710UV」、紫外線吸収フィルム7の部分の厚さ100μm)にラミネートして色素含有粘着剤層3を有する紫外線吸収反射防止フィルム4を得た。その後、セパレーターを剥がし、コントラスト向上フィルム2のコントラスト向上層6にラミネートして光学フィルタ1を作製した。
【0123】
(例2)
色調補正色素としてのテトラアザポルフィリン化合物を近赤外線吸収色素としてのフタロシアニン化合物(日本触媒社製、商品名「イーエクスカラーIR−12」)に変更した以外は、例1と同様にして光学フィルタ1を作製した。
【0124】
(例3)
コントラスト向上フィルム2をPETフィルムに変更した以外は、例1と同様にして光学フィルタ1を作製した。すなわち、PETフィルム(東洋紡績社製、商品名「A4300」)上に例1と同様の色素含有粘着剤層3を有する紫外線吸収反射防止フィルム4をラミネートして光学フィルタ1を作製した。
【0125】
(例4)
コントラスト向上フィルム2をガラス基板に変更した以外は、例1と同様にして光学フィルタ1を作製した。すなわち、ガラス基板上に例1と同様の色素含有粘着剤層3を有する紫外線吸収反射防止フィルム4をラミネートして光学フィルタ1を作製した。
【0126】
(例5)
色素含有粘着剤組成物の調製で紫外線吸収剤(Ciba社製、商品名「TINUVIN 479」)を含有させなかったこと以外は、例1と同様にして光学フィルタ1を作製した。
【0127】
(例6)
紫外線吸収反射防止フィルム4(日油社製、商品名「RL1710UV」)をPETフィルム(東洋紡績社製、商品名「A4300」)に変更した以外は、例1と同様にして光学フィルタ1を作製した。
【0128】
(例7)
色素含有粘着剤組成物の調製でジチオール錯体系の光安定剤(和光純薬社製、商品名「ビス(ジブチルジチオカルバミン酸)ニッケルII」)を含有させなかったこと以外は、例1と同様にして光学フィルタ1を作製した。
【0129】
次に、例1〜7の光学フィルタ1について、以下に示す方法により、耐熱性、および耐光性を評価した。結果を表1に示す。
【0130】
(耐熱性)
各光学フィルタ1から20×20mm角の試験片を切り出し、分光光度計(島津製作所社製、SolidSpec−3700)を用いて380〜1300nmの範囲でスペクトルを測定し、JIS Z8701−1999に準じて視感平均透過率Tv、色度座標(x、y)を算出した。そして、恒温器(ヤマト社製、商品名「DS−44」)を用い、温度を80℃に設定して96時間高温放置後、再びスペクトルを測定し、視感平均透過率Tv、色度座標(x、y)を算出し、高温放置前後の変化量(ΔTv、Δx、Δy)を求めた。表中、試験前後の変化量がすべて5%未満であるものを「〇」、いずれか1つでも5%以上10%未満となるものを「△」、いずれか1つでも10%以上となるものを「×」で示した。
【0131】
(耐光性)
耐熱性の評価と同様にして、視感平均透過率Tv、色度座標(x、y)を求めた。その後、耐光性試験機(スガ試験機社製、商品名「キセノンウェザーメーター X25」)を用い、380nm以上の光を100MJ/cm照射後、再び視感平均透過率Tv、色度座標(x、y)を求め、照射前後の変化量(ΔTv、Δx、Δy)を求めた。表中、試験前後の変化量がすべて5%未満であるものを「〇」、いずれか1つでも5%以上10%未満となるものを「△」、いずれか1つでも10%以上となるものを「×」で示した。
【0132】
【表1】

【0133】
色素含有粘着剤層3に光安定剤および紫外線吸収剤を含有させるとともに、その前面側に紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を設けた例1〜4の光学フィルタ1によれば、特に耐光性試験による光学特性の変化が抑制され、耐久性に優れていることが認められる。一方、色素含有粘着剤層3における光安定剤あるいは紫外線吸収剤、または紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層のいずれかを欠く例5〜7の光学フィルタ1によれば、耐光性試験による光学特性の変化が大きいことが認められる。
【符号の説明】
【0134】
1…光学フィルタ、2…コントラスト向上フィルム、3…色素含有粘着剤層、4…紫外線吸収反射防止フィルム、5…透明支持体、6…コントラスト向上層、6a…透光性領域、6b…暗色部、7…紫外線吸収フィルム(紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層)、8…反射防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置における画像表示部の前面側に配置される光学フィルタであって、
色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも一方の色素、光安定剤、ならびに紫外線吸収剤を含有する色素含有粘着剤層と、
前記色素含有粘着剤層の前面側に配置される紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層と
を有することを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
画像表示装置における画像表示部の前面側に配置される光学フィルタであって、
透光性領域および暗色部を有するとともに前記透光性領域および暗色部の少なくとも一方が紫外線硬化性樹脂および光重合開始剤を含有する組成物の硬化物からなるコントラスト向上層と、
前記コントラスト向上層の前面側に前記コントラスト向上層と接触して配置され、色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも一方の色素、光安定剤、ならびに紫外線吸収剤を含有する色素含有粘着剤層と、
前記色素含有粘着剤層の前面側に配置される紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層と
を有することを特徴とする光学フィルタ。
【請求項3】
前記光安定剤は、ジチオール錯体系の光安定剤であることを特徴とする請求項1または2記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記色素含有粘着剤層の前面側に紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルムを有し、前記紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルムが前記紫外線吸収層を兼ねることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記色素含有粘着剤層の前面側に、紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルム上に反射防止層が形成された紫外線吸収反射防止フィルムを有し、前記紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルムが前記紫外線吸収層を兼ねることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【請求項6】
画像表示部の前面側に光学フィルタが配置された画像表示装置であって、
前記光学フィルタが請求項1乃至5のいずれか1項記載の光学フィルタであることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−247501(P2012−247501A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117308(P2011−117308)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】