説明

光学フィルム、偏光板、画像表示装置、及び光学フィルムの製造方法

【課題】漆黒感に優れた高コントラストな防眩フィルムを提供する。
【解決手段】透明支持体2上に防眩層3を有する光学フィルム1であって、前記防眩層は、塗布組成物を、前記透明支持体上に塗布し、乾燥して、硬化させてなるものであり、前記防眩層の膜厚が2.0〜6.0μmであり、前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の平均傾斜角θが0.15〜1.50度であり、前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の凹凸波形をフーリエ変換によって算出した波長100μmにおける振幅が0.0010〜0.0050μmであり、前記防眩層内での樹脂粒子4は、前記透明支持体に鉛直な方向の断面写真において互いに接触している樹脂粒子が30%未満であり、かつ前記透明支持体に鉛直な方向に投影した場合に、25%以上の樹脂粒子が互いに上下に重なりあって存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、偏光板、画像表示装置、及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために、ディスプレイの表面には、防眩フィルムや防眩性反射防止フィルムなどの光学フィルムが使用される。オフィスや家庭環境での使用が広がっており、室内の蛍光灯や視聴者の像がディスプレイ表面に写りこむことを防止する防眩性の向上と、表示コントラストの更なる向上が要求されている。
【0003】
防眩フィルムにおいては、防眩層に透光性粒子を添加することで、防眩層表面に凹凸を持たせて光の散乱(表面散乱性)を起こさせる防眩機能と、透光性粒子と防眩層中の透光性樹脂との屈折率差から生ずる光の散乱機能(内部散乱性)とが一般的に用いられる。
表面散乱性による防眩機能を付与する場合は、一方でその表面散乱性により画像表示面が白茶けて見え、黒締り感(漆黒感)が低下する、表面凹凸によるレンズ効果によって引き起こされるギラツキが悪化するなどの問題が発生する。
内部散乱性はギラツキ改良、コントラストの視野角特性改良などの目的で用いられるが、大きすぎると、表示コントラストが低下してしまう。一方、内部散乱性が小さいと表面凹凸のレンズ効果で発生するギラツキを打ち消しきれないという、ジレンマにあった。
【0004】
特許文献1には、微粒子の平均粒径が6μm〜15μmの範囲の大きな粒子を用い15μm〜35μmという厚い防眩層の膜厚とし、特定の大きなサイズの微粒子の緩やかな曲面を利用した緩やかな表面凹凸形状を有する防眩性ハードコートフィルムが開示されている。しかしながら、大きな粒子を用いた膜厚の厚い光学フィルムであるため、塗布液での粒子の沈降、塗工や乾燥工程への負荷、得られる光学フィルムの膜厚が厚いなどの問題を有していた。
また、特許文献2には、特許文献1のような厚い防眩層膜厚を採用しなくても、白茶けやシンチレーションなどの弊害なく防眩性を達成する技術として、微粒子と層状無機化合物を用いることで微粒子の50%以上を互いに2個凝集させることにより達成する防眩フィルムが開示されている。しかしながらこの方法では、微粒子を凝集させて用いるため、用いる粒子は互いに凝集的な性質を持つ主として高屈折率の微粒子にならざるを得ず、防眩層のヘイズを低くすることが困難でコントラストが低下し易いという弊害があった。また、微粒子を凝集させて用いるため、微粒子や層状無機化合物の添加量が多く必要であり、塗膜の脆性が懸念されたり、材料コストが上昇するなどの課題を有していた。
この様に従来の防眩層の設計では、漆黒感や高コントラストを十分に満足する防眩フィルムは得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−41533号公報
【特許文献2】特開2011−197330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、漆黒感に優れた高コントラストな防眩フィルムを提供することを目的とする。更に、そのような防眩フィルムを用いた偏光板、及び画像表示装置を提供することを目的とする。また、該防眩フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の手段により前記課題を解決した。
【0008】
[1]
透明支持体上に防眩層を有する光学フィルムであって、
前記防眩層は、少なくとも下記(A)〜(D)を含有する塗布組成物を、前記透明支持体上に塗布し、乾燥して、硬化させてなるものであり、
前記防眩層の膜厚が2.0〜6.0μmであり、
前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の平均傾斜角θが0.15〜1.50度であり、
前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の凹凸波形をフーリエ変換によって算出した波長100μmにおける振幅(A100)が0.0010〜0.0050μmであり、
前記防眩層内での下記(A)成分の樹脂粒子は、前記透明支持体に鉛直な方向の断面写真において互いに接触している樹脂粒子が30%未満であり、かつ前記透明支持体に鉛直な方向に投影した場合に、25%以上の樹脂粒子が互いに上下に重なりあって存在している、光学フィルム。
(A)平均粒子サイズが1.0〜4.5μmの樹脂粒子
(B)分子内に少なくとも2個以上の硬化性官能基を有する硬化性化合物
(C)長軸長さが20nm以上300nm未満で、かつアスペクト比が2〜300である層状無機化合物
(D)揮発性有機溶剤
[2]
前記塗布組成物中、(B)成分の硬化性化合物100質量部あたり、(A)成分の樹脂粒子量が1質量部以上8質量部未満であり、(C)成分の層状無機化合物が0.1質量部以上2質量部未満であり、
前記防眩層に存在する(C)成分が、(A)成分の樹脂粒子の間に偏析し、防眩層における(C)成分の平均濃度に対して、1つの樹脂粒子に対して最も近接した2つの樹脂粒子との間に存在する(C)成分の濃度が1.1〜10.0倍である、上記[1]に記載の光学フィルム。
[3]
[防眩層の膜厚T]/[(A)成分の樹脂粒子の平均粒子サイズR]の比率T/Rの値が2.0〜5.0である、上記[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4]
前記(A)成分の樹脂粒子の平均粒子サイズが1.0μm以上2.0μm未満である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[5]
前記(A)成分の樹脂粒子の屈折率と、前記防眩層から(A)成分の樹脂粒子を除いた層の屈折率との屈折率差の絶対値が0.000〜0.030であり、かつ光学フィルムのヘイズが5.0%以下である、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[6]
前記(C)成分の層状無機化合物が、有機カチオンで修飾されている層状粘土化合物である、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[7]
前記(B)成分の硬化性化合物が、5官能以上10官能以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーと1官能以上4官能以下の(メタ)アクリレートモノマーの混合物である、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[8]
前記透明支持体の膜厚が20〜70μmである、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[9]
前記防眩層の上に、屈折率1.20〜1.49の低屈折率層が積層されてなる、上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[10]
前記(D)成分の揮発性有機溶媒が、沸点が100℃未満の少なくとも1種の溶媒と、沸点が100℃以上の少なくとも1種の溶媒とを含有する、上記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[11]
前記(D)成分の揮発性有機溶媒が、脂肪族アルコール、脂肪族エステル、脂肪族ケトン、及び脂肪族エーテルから選ばれる少なくとも2種の溶媒である、上記[10]に記載の光学フィルム。
[12]
偏光膜と、該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムとを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が、上記[1]〜[11]のいずれか一項に記載された光学フィルムである、偏光板。
[13]
表示画面の視認側に、上記[1]〜[11]のいずれか一項に記載の光学フィルム、又は上記[12]に記載の偏光板を有する、画像表示装置。
[14]
透明支持体上に防眩層を有する光学フィルムの製造方法であって、
少なくとも下記(A)〜(D)を含有する塗布組成物を、前記透明支持体上に塗布し、乾燥して、硬化させて前記防眩層を形成する工程を有し、
前記防眩層の膜厚が2.0〜6.0μmであり、
前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の平均傾斜角θが0.15〜1.50度であり、
前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の凹凸波形をフーリエ変換によって算出した波長100μmにおける振幅(A100)が0.0010〜0.0050μmであり、
前記防眩層内での下記(A)成分の樹脂粒子は、前記透明支持体に鉛直な方向の断面写真において互いに接触している樹脂粒子が30%未満であり、かつ前記透明支持体に鉛直な方向に投影した場合に、25%以上の樹脂粒子が互いに上下に重なりあって存在している、光学フィルムの製造方法。
(A)平均粒子サイズが1.0〜4.5μmの樹脂粒子
(B)分子内に少なくとも2個以上の硬化性官能基を有する硬化性化合物
(C)長軸長さが20nm以上300nm未満で、かつアスペクト比が2〜300である層状無機化合物
(D)揮発性有機溶剤
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高コントラストでかつ漆黒感に優れた光学フィルムを提供することができる。更に、そのような防眩フィルムを用いた偏光板、及び画像表示装置を提供することができる。また、樹脂粒子に起因する点欠陥などの故障の発生頻度が低減された、高コントラストでかつ漆黒感に優れた光学フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の光学フィルムの一例の断面を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の光学フィルムの一例の断面を示す模式図である。
【図3】図2は、本発明の光学フィルムの一例の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は、特に断りのない限り、「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
【0012】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、 透明支持体上に防眩層を有する光学フィルムであって、
前記防眩層は、少なくとも下記(A)〜(D)を含有する塗布組成物を、前記透明支持体上に塗布し、乾燥して、硬化させてなるものであり、
前記防眩層の膜厚が2.0〜6.0μmであり、
前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の平均傾斜角θが0.15〜1.50度であり、
前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の凹凸波形をフーリエ変換によって算出した波長100μmにおける振幅(A100)が0.0010〜0.0050μmであり、
前記防眩層内での下記(A)成分の樹脂粒子は、前記透明支持体に鉛直な方向の断面写真において互いに接触している樹脂粒子が30%未満であり、かつ前記透明支持体に鉛直な方向に投影した場合に、少なくとも25%以上の樹脂粒子が互いに上下に重なりあって存在している、光学フィルムである。
(A)平均粒子サイズが1.0〜4.5μmの樹脂粒子
(B)分子内に少なくとも2個以上の硬化性官能基を有する硬化性化合物
(C)長軸長さが20nm以上300nm未満で、かつアスペクト比が2〜300である層状無機化合物
(D)揮発性有機溶剤
【0013】
上記構成により、十分な防眩性を付与しつつ、高コントラストで漆黒感に優れた薄層の光学フィルムを得ることができる。また、本発明では、防眩層の膜厚が薄くても、樹脂粒子に起因するブツ故障の抑制された光学フィルムを得ることができる。
【0014】
本発明の光学フィルムの防眩層内では、平均粒子サイズが1.0〜4.5μmの樹脂粒子は、支持体に鉛直な方向の断面において互いに接触している粒子が30%未満であり、かつ透明支持体に鉛直な方向に投影した場合に、25%以上の粒子が互いに上下に重なりあって存在していることを特徴とする。図1は本発明の防眩層中の樹脂粒子の状態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明の光学フィルム1は、光透過性基材(透明支持体)2の少なくとも一方の面上に形成された防眩層3中に樹脂粒子4を含有し、該樹脂粒子のうち互いに接触している樹脂粒子の割合が30%未満である。別の言い方では互いに接触していない樹脂粒子の割合が70%以上である。
本発明において樹脂粒子の防眩層内での存在状態の観察は以下のようにして行なった。光学フィルムを支持体に対して鉛直方向に切断し断面を形成した。この際透過型電子顕微鏡で断面を観察するために厚さ50nmの切片を作製した。その断面の防眩層部分を透過型電子顕微鏡を用いて1.5万倍の断面写真を撮影した。視野中の200個の樹脂粒子を観察し、隣接樹脂粒子との接触の有無を観察した。写真内で樹脂粒子の表面が互いに接しているもの及び粒子表面間の距離が樹脂粒子の平均粒子サイズの3%未満のものは接触している粒子としてカウントした。また、図1に示すように該断面写真上で樹脂粒子を透明支持体に鉛直な方向に投影し、樹脂粒子が防眩層の上下方向で互いに重なり合って存在している個数をカウントした。図1の模式図を例にとれば、3つの樹脂粒子のうち接触している樹脂粒子はなく、上下方向に重なって存在している樹脂粒子は2つであることを示している。
本発明においては、断面写真において、樹脂粒子は過度に他の樹脂粒子に接することなく存在することが必要であり、互いに接触している樹脂粒子の割合は30%未満であり、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは12%以下、最も好ましくは12%以下3%以上である。また、樹脂粒子の上下方向での重なりは25%以上が好ましく、より好ましくは30%以上85%以下、更に好ましくは35%以上80%以下、最も好ましくは40%以上75%以下である。この範囲の存在状態にすることで本発明の表面形状を達成し、防眩性を付与しつつ、漆黒感に優れた光学フィルムが得られる。樹脂粒子の凝集が多くなると、防眩層表面の傾斜角の高い成分が増加し漆黒感が悪化し易くなる。
【0015】
本発明においては、防眩層に存在する(C)成分の層状無機化合物が、(A)成分の樹脂粒子の間に偏析していることが好ましく、防眩層中の全層平均濃度に対して近接2樹脂粒子間に存在する濃度が1.1〜10.0倍であることが好ましい。図2及び図3に模式図を示す。
本発明において層状無機化合物の偏析は以下のようにして決定した。上記の樹脂粒子凝集の観察に用いた1.5万倍の透過型電子顕微鏡写真を用い、防眩層の断面の幅方向に100μmの範囲で層状無機化合物の個数(N)をカウントした。樹脂粒子の内部には無機層状化合物は侵入しないため、樹脂粒子の存在しないモノマーの硬化した部分の面積(S)を求め、N/Sの値を算出し防眩層中の全層平均濃度とした(図2)。また、その幅方向100μmの範囲のなかで、任意の1つの樹脂粒子に対して最も近くに存在する2つの樹脂粒子を選出し、それらの樹脂粒子の間で外径をつなぐ線分を引いた。幅方向に100μmの範囲の全ての樹脂粒子について、樹脂粒子自身とその線分で囲まれた領域の面積(Sp)および、その領域内に存在する層状無機化合物の個数(Np)を求めた。これら値を合計してNp/Spの値を算出し、樹脂粒子間の層状化合物の濃度を算出した(図3)。防眩層中の全層平均濃度に対する近接2樹脂粒子間に存在する濃度の比率[(Np/Sp)/(N/S)]の値は、1.1〜8.0が好ましく、1.2〜5.0が更に好ましく、最も好ましくは1.3〜4.0である。層状無機化合物が樹脂粒子の近傍に偏析していることで、防眩層内で樹脂粒子間が必要以上に接触するのを防ぎ、かつ適度に層内で上下方向に存在するのに有効に作用しているものと推定される。
【0016】
以下、防眩層を形成するための塗布組成物に用いる各成分等について説明する。
【0017】
[(A)平均粒子サイズが1.0〜4.5μmの樹脂粒子]
本発明における防眩層を形成するために用いる塗布組成物中には、平均粒子サイズが1.0〜4.5μmの樹脂粒子を使用する。この樹脂粒子は防眩層中で特殊な存在状態を示し、厚みが2.0〜6.0μmの防眩層で適度な表面形状を形成するために用いられる。本発明における樹脂粒子の平均粒子サイズは1.0〜4.5μmであり、好ましくは1.0〜3.0μm、更に好ましくは1.0〜2.5μm、最も好ましくは1.0μm以上2.0μm未満である。
防眩層の表面形状を、本発明の特定の範囲に調整する手段として、平均粒径が互いに異なる2種以上の粒子を使用することもできる。
【0018】
本発明においては、[防眩層の膜厚T]/[(A)成分の樹脂粒子の平均粒子サイズR]の比率T/Rの値が2.0〜5.0であることが、本発明の防眩層内での樹脂粒子の存在状態を実現するために好ましく、更に好ましくは2.2〜4.0、最も好ましくは2.3以上3.5未満である。T/Rの値が2.0以上であれば防眩層の表面が樹脂粒子により直接的に形状の影響を受けにくく傾斜角の高い成分が発生しにくくなり漆黒感が向上し、極低頻度で存在する粗大粒子による塗布面状故障を起こしにくい。T/Rの値が5.0以下であれば防眩層の表面形状に影響を与えるためには数多くの樹脂粒子が凝集する必要がなく、凝集制御が容易である。
【0019】
樹脂粒子の粒径の測定方法は、粒子の粒径を測る測定方法であれば、任意の測定方法が適用できるが、粒子の粒度分布をコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算して得られた粒子分布から算出する方法や、透過型電子顕微鏡(倍率1.5万〜15万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒径とする方法がある。
本発明における樹脂粒子は、球状粒子であることが好ましい。本発明の目的を満たすものであれば、不定形の球状でない粒子でも構わない。不定形粒子の場合の粒子サイズは、球相当の直径を用いて表現する。
【0020】
また、樹脂粒子は、バインダーとの屈折率差を制御することで内部散乱性を付与することができる。但し、屈折率差を大きくしすぎるとコントラストの低下を伴ってしまうため、樹脂粒子を除く防眩層のバインダー成分との屈折率との差の絶対値を0.050以下に設計することが好ましく、更に好ましくは0.000以上0.030以下であり、特に好ましくは0.000以上0.020以下であり、最も好ましいのは0.000以上0.010以下である。この領域内に設計することで、高いコントラストを得ることができる。なお、本発明において2種以上の樹脂粒子を用いる場合、屈折率は同じであっても、異なっていても良い。
【0021】
樹脂粒子の屈折率は、ヨウ化メチレン、1,2−ジブロモプロパン、n−ヘキサンから選ばれる任意の屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性樹脂粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。
【0022】
樹脂粒子の具体例としては、例えば架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋メチルメタアクリレート−メチルアクリレート共重合粒子、架橋アルキルアクリレート−スチレン共重合粒子、架橋アルキルメタアクリレート−スチレン共重合粒子、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子等の樹脂粒子が挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子等が好ましい。さらにはこれらの樹脂粒子の表面にフッ素原子、シリコン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、燐酸基等を含む化合物を化学結合させた表面修飾粒子やシリカやジルコニアなどのナノサイズの無機微粒子を表面に結合した粒子も例に挙げられる。
なかでも、防眩層中でのバインダー成分との屈折率差の絶対値を調節するために、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子、架橋アルキルアクリレート−スチレン共重合粒子、架橋アルキルメタアクリレート−スチレン共重合粒子が好ましい。
本発明において用いられる樹脂粒子は1種で十分表面形状の制御が可能であるが、2種以上用いることを妨げるものではない。本発明において、樹脂粒子を複数種用いる場合には、樹脂粒子を形成するモノマー組成を変えずに粒子サイズのみの異なるものを用いることが粒子間の相互作用の変化が少なく表面形状の制御が容易であり好ましい。
【0023】
樹脂粒子の含有量は、防眩性付与と漆黒感の観点から、防眩層用塗布組成物の(B)成分である硬化性化合物100質量部あたり1.0質量部以上8.0質量部未満が好ましく、1.0質量部〜6.0質量部がより好ましく、最も好ましくは2.0質量部〜5.5質量部である。平均粒子サイズが1.0〜4.5μmの樹脂粒子を、従来技術よりも少ない使用量にすることで、防眩層内で必要以上に樹脂粒子同士を接触させることなく、上下方向に重なりをもって配置させることにより本発明の防眩層における表面形状が実現できる。
【0024】
[(B)分子内に少なくとも2個以上の硬化性官能基を有する硬化性化合物]
本発明における防眩層形成用塗布組成物は硬化性化合物を含有する。該硬化性化合物は硬化後に透光性樹脂となり、防眩層を構成するマトリックスを形成する樹脂バインダーの働きをする。該硬化性化合物が有する硬化性官能基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、エポキシ基などが挙げられる。
該硬化性化合物としては、電離放射線硬化性化合物、熱硬化性化合物などが挙げられるが、電離放射線硬化性化合物であることが好ましい。
該硬化性化合物としては、下記に述べるエチレン性不飽和モノマーであることが好ましい。
【0025】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、(メタ)アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA、同PET−30、新中村化学工業(株)NKエステル A−TMMT、同A−TMPT、A−DPH等を挙げることができる。硬化収縮を低減してカールを抑制する観点からはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド、カプロラクトン付加して架橋点間距離を広げることが好ましく、例えば、エチレンオキサイド付加したトリメチロールプロパントリアクリレート(例えば大阪有機化学社製ビスコートV#360)、グリセリンプロピレンオキサイド付加トリアクリレート(例えば大阪有機化学社製V#GPT)、カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば日本化薬製DPCA−20、120)などが好ましく用いられる。2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーは2種以上併用することも好ましい。
【0026】
上記以外の2個以上の硬化性官能基を有する硬化性化合物としては、2個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂および多価アルコール等の、多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等も挙げられる。これらのオリゴマー又はプレポリマーは2種以上併用してもよい。
なかでも、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートを使用することが好ましい。
【0027】
ウレタンアクリレートは、TDI、MDI、HDI、IPDI、HMDI等のジイソシアナートとポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオール、エトキシ化ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールSスピログリコール、カプロラクトン変性ジオール、カーボネートジオール等のポリオール、および2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレートを反応させて得られるモノマー、オリゴマーであり、特開2002−265650公報や、特開2002−355936号公報、特開2002−067238号公報等に記載の多官能ウレタンモノマーを挙げることができる。具体的なウレタンアクリレートとしては、TDIとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物、IPDIとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物、HDIとペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)との付加物、TDIとPETAとの付加物を作り残ったイソシアナートとドデシルオキシヒドロキシプロピルアクリレートを反応させた化合物、6,6ナイロンとTDIの付加物、ペンタエリスリトールとTDIとヒドロキシエチルアクリレートの付加物等をあげることができるがこれに限定されるものではない。
【0028】
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、荒川化学工業(株)製 商品名:ビームセット102、502H、505A−6、510、550B、551B、575、575CB、EM−90、EM92、サンノプコ(株)製 商品名:フォトマー6008、6210、新中村化学工業(株)製 商品名:NKオリゴU−2PPA、U−4HA、U−6HA、H−15HA、UA−32PA、U−324A、U−4H、U−6H、東亜合成(株)製 商品名:アロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960、共栄社化学(株)製 商品名:AH−600、AT606、UA−306H、日本化薬(株)製 商品名:カヤラッドUX−2201、UX−2301、UX−3204、UX−3301、UX−4101、UX−6101、UX−7101、日本合成化学工業(株)製 商品名:紫光UV−1700B、UV−3000B、UV−6100B、UV−6300B、UV−7000、UV−2010B、根上工業(株)製 商品名:アートレジンUN−1255、UN−5200、HDP−4T、HMP−2、UN−901T、UN−3320HA、UN−3320HB、UN−3320HC、UN−3320HS、H−61、HDP−M20、ダイセルユーシービー(株)製 商品名:Ebecryl 6700、204、205、220、254、1259、1290K、1748、2002、2220、4833、4842、4866、5129、6602、8301等を挙げることができる。
【0029】
ポリエステルアクリレートは、ポリオールと二塩基酸より合成したポリエステル骨格に残ったヒドロキシ基に、(メタ)アクリル酸を縮合してアクリレートにしたものである。具体的には、無水フタル酸/プロピオンオキサイド/アクリル酸の反応物、アジピン酸/1,6−ヘキサンジオール/アクリル酸の反応物、トリメリット酸/ジエチレングリコール/アクリル酸の反応物等をあげることができるがこれらに限定されるものではない。
【0030】
エポキシアクリレートは、エポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応により合成され、代表的なエポキシアクリレートは、エポキシ基を有する化合物により、ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールF型、エポキシ化油型、フェノールのノボラック型、脂環型に分類される。具体的な例としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの付加物にアクリル酸を反応させたアクリレート、フェノールノボラックにエピクロロヒドリンを反応させ、アクリル酸を反応させたアクリレート、ビスフェノールSとエピクロロヒドリンの付加物にアクリル酸を反応させたアクリレート、ビスフェノールSとエピクロロヒドリンの付加物にアクリル酸を反応させたアクリレート、エポキシ化大豆油にアクリル酸を反応させたアクリレート等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
2個以上のエチレン性不飽和基を有する硬化性化合物としては、層の屈折率を制御するために、屈折率の異なるモノマーを用いることが出来る。特に高屈折率モノマーの例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が含まれる。
また、例えば特開2005−76005号、同2005−36105号に記載されたデンドリマーや、例えば特開2005−60425号の各公報記載のようなノルボルネン環含有モノマーを用いることもできる。
【0032】
これらのエチレン性不飽和基を有する硬化性化合物の重合は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有する硬化性化合物、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤、樹脂粒子、分散溶媒、必要に応じて無機フィラー、塗布助剤、その他の添加剤等を含有する塗布液を調製し、該塗布液を透明基材上に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化して防眩層を形成する。電離放射線硬化と熱硬化を合わせて行うことも好ましい。光及び熱重合開始剤としては市販の化合物を利用することができる。
【0033】
本発明において用いられる硬化性化合物は5官能以上10官能以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーと1官能以上4官能以下の(メタ)アクリレートモノマーの混合物であることが好ましい。このように少なくとも2種類のモノマーを用いることで、塗布組成物の粘度を好適な範囲に設定することができ、樹脂粒子を好適な配置にすることが容易となる。
硬化性化合物の含有量は、防眩層の膜強度の観点から、防眩層を形成するための塗布組成物の全固形分に対して60〜99質量%が好ましく、70〜97質量%がより好ましく、80〜95質量%が更に好ましい。
【0034】
本発明において、樹脂粒子を除く防眩層の屈折率は1.46〜1.65であることが好ましく、1.49〜1.60であることがより好ましく、1.49〜1.53であることが特に好ましい。屈折率をこの範囲にすることで、塗布ムラ、干渉ムラを目立ちにくくし、硬度の高い防眩層を得ることができる。
ここで、該樹脂粒子を除く防眩層の膜の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。
防眩層を高屈折率にするには、上記モノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0035】
[(C)層状無機化合物]
本発明における防眩層形成用組成物には、層状無機化合物であって、長軸長さが20nm以上300nm未満、かつアスペクト比が2〜300であるものを用いる。
本発明においては、層状無機化合物の長軸長さ及びアスペクト比は、以下のようにして求めた。光学フィルムを支持体に対して法線方向に切断し、厚さ50nmの切片を作製した。その断面の防眩層部分を透過型電子顕微鏡を用いて15万倍の写真を撮影した。層状無機化合物に互いに直交する2軸(x軸、y軸)を適用し、最も長い方向をx軸とし、x軸に沿って長さを測定し長軸長さとした。またx軸と直交する方向のy軸を定め、y軸に沿って最も長い長さを短軸長さとした。ここでy軸に沿って最も短い長さを短軸長さとしない理由は、化合物末端のごく一部で非常に薄い結晶になっている場合もあるため、最も短い長さを採用することは層状化合物の状態の表現に適切でないからである。本発明において、[長軸長さ]/[短軸長さ]の比率を層状無機化合物のアスペクト比と定義する。視野中の100個の層状無機化合物を観察してその平均値を求めた。
本発明における層状無機化合物は、長軸長さが20nm以上300nm未満であり、好ましくは40〜280nmであり、更に好ましくは50〜250nm、最も好ましくは50〜220nmである。また、アスペクト比は2〜300であり、好ましくは5〜200であり、更に好ましくは5〜100であり、最も好ましくは5〜50である。この範囲にすることで、併用する樹脂粒子の存在状態を制御でき、層状化合物に起因する不要な内部散乱を低減でき、コントラスト向上に有効である。
【0036】
層状無機化合物としては特に制限はないが、タルク、雲母、長石、カオリナイト(カオリンクレー)、パイロフィライト(ろう石クレー)、セリサイト(絹雲母)、ベントナイト、スメクタイト・バーミキュライト類(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイトなど)、有機ベントナイト、有機スメクタイトなどが挙げられる。
これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。市販されている層状化合物としてはとしては、例えば、無機化合物としては、クラウンクレー、バーゲスクレー#60、バーゲスクレーKF、オプチホワイト(以上、白石工業(株)製)、カオリンJP−100、NNカオリンクレー、STカオリンクレー、ハードシル(以上、土屋カオリン工業(株)製)、ASP−072、サテントンプラス、トランスリンク37、ハイドラスデラミNCD(以上、エンジェルハード(株)製)、SYカオリン、OSクレー、HAクレー、MCハードクレー(以上、丸尾カルシウム(株)製)、ルーセンタイトSWN、ルーセンタイトSAN、ルーセンタイトSTN、ルーセンタイトSEN、ルーセンタイトSPN(以上コープケミカル社製)、スメクトン(クニミネ工業社製)、ベンゲル、ベンゲルFW、エスベン、エスベン74、オルガナイト、オルガナイトT(以上、ホージュン(株)製)、穂高印、オルベン、250M、ベントン34、ベントン38(以上、ウイルバー・エリス社製)、ラポナイト、ラポナイトRD、ラポナイトRDS(以上、日本シリカ工業(株)製)などが挙げられる。これらのなかから、目的のアスペクト比およびサイズのものを選択して使用することができる。これら化合物は溶媒に分散されていてもかまわない。
【0037】
本発明の光学フィルムにおいては、層状無機化合物のなかでも、xM(I)O・ySiOで表される珪酸塩化合物(酸化数が2,3であるM(II)O、M(III)に相当するものもある。x、yは正の数を表す)であり、更に好ましい化合物としてはヘクトライト、ベントナイト、スメクタイト、バーミキュライトなどの膨潤性層状粘土鉱物である。
特に好ましくは、有機カチオンで修飾された層状粘土化合物(珪酸塩化合物のナトリウムなどの層間陽イオンを有機カチオン化合物で交換したもの)が好適に使用でき、例えば、珪酸ナトリウム・マグネシウム(ヘクトライト)のナトリウムイオンを次のようなアンモニウムイオンで交換したものが挙げられる。
アンモニウムイオンの例としては、炭素数6から18のアルキル鎖を有するモノアルキルトリメチルアンモニウムイオン、ジアルキルジメチルアンモニウムイオン、トリアルキルメチルアンモニウムイオン、オキシエチレン鎖が4から18であるジポリオキシエチレンヤシ油アルキルメチルアンモニウムイオン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ヤシ油アルキルメチルアンモニウムイオン、オキソプロピレン鎖が4から25であるポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウムイオンなどが挙げられる。これらアンモニウムイオンは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
珪酸ナトリウム・マグネシウムのナトリウムイオンをアンモニウムイオンで交換した有機カチオンで修飾珪酸塩鉱物の製造方法としては、珪酸ナトリウム・マグネシウムを水に分散させ十分撹拌した後、16時間以上放置し、4質量%の分散液を調整する。この分散液を撹拌しながら、所望のアンモニウム塩を珪酸ナトリウム・マグネシウムに対して30質量%〜200質量%添加する。添加後、陽イオン交換が起こり、層間にアンモニウム塩を含んだヘクトライトは水に不溶となり沈殿するので、沈殿を濾取し、乾燥することで得られる。調整の際、分散を速めるために加熱してもよい。
アルキルアンモニウム変性珪酸塩鉱物の市販品としては、ルーセンタイトSAN、ルーセンタイトSAN−316、ルーセンタイトSTN、ルーセンタイトSEN、ルーセンタイトSPN(以上コープケミカル社製)などが挙げられ、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明において、(C)成分の層状無機化合物は、(B)成分の硬化性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下で使用することが好ましく、0.1質量部以上2質量部未満で使用することがより好ましく、0.2質量部以上1.8質量部以下で使用することが更に好ましい。特に2質量部未満で使用することで、層状化合物が樹脂粒子の間に偏析し、本発明における防眩層内での樹脂粒子の存在状態を制御しやすい。
【0039】
[(D)揮発性有機溶剤]
本発明の防眩フィルムを形成するための塗布組成物には揮発性有機溶媒が含まれる。該溶媒としては、各成分を溶解または分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶媒が使用できる。
溶媒は1種でも、2種類以上のものを混合して用いることもできる。乾燥過程で塗膜中の溶媒組成が変化し、それに伴い樹脂粒子や層状無機化合物の存在状態を変化させるために、沸点の異なる2種以上の溶媒を用いることが好ましく、常圧における沸点が100℃未満の溶剤と100℃以上の溶剤を併用することも好ましい。
【0040】
沸点が100℃未満の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル(90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)、炭酸ジメチル(90.4℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトン(MEK)と同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0041】
沸点が100℃以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(メチルイソブチルケトン(MIBK)と同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
【0042】
本発明の防眩層を形成するために用いられる塗布組成物は、前記(A)、(B)、(C)成分を必須成分とするものであるが、(A)成分の樹脂粒子および(C)成分の層状無機化合物は、予め上記溶媒に分散した分散液を調製し、後に(B)成分やその他添加剤を混合することが好ましい。(A)成分や(C)成分を予め分散液にしておくことで、塗布組成物調製時の溶解不良や不溶な凝集を防ぐことができる。
本発明の防眩層を形成するために用いられる塗布組成物の固形分濃度は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
[有機高分子増粘剤]
本発明における防眩層を形成するための硬化性組成物は、有機高分子増粘剤を含むことができる。
ここでいう増粘剤とは、それを添加することにより液の粘度が増大するものを意味し、添加することにより塗布液の粘度が上昇する大きさとして好ましくは1〜50mPa・sであり、更に好ましくは5〜15mPa・sである。
【0044】
本発明では有機高分子増粘剤としてセルロースエステルが好ましい。中でも、セルロースアセテートブチレートが特に好ましい。有機高分子増粘剤の例としては以下のものが挙げられる。
【0045】
ポリ−ε−カプロラクトン
ポリ−ε−カプロラクトン ジオール
ポリ−ε−カプロラクトン トリオール
ポリビニルアセテート
ポリ(エチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン グルタレート)
ポリ(1,4−ブチレン スクシネート)
ポリ(1,4−ブチレン テレフタレート)
ポリ(エチレンテレフタレート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレン グルタレート)
ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)
ポリ(ネオペンチルグリコール セバケート)
ポリ(1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(1,3−プロピレン グルタレート)
ポリビニルブチラール
ポリビニルホルマール
ポリビニルアセタール
ポリビニルプロパナール
ポリビニルヘキサナール
ポリビニルピロリドン
ポリアクリル酸エステル
ポリメタクリル酸エステル
セルロースアセテート
セルロースプロピオネート
セルロースアセテートブチレート
【0046】
有機高分子増粘剤の分子量は数平均分子量で0.3万〜40万が好ましく、0.4万〜30万がより好ましく、0.5万〜20万が特に好ましい。
有機高分子増粘剤の添加量は防眩層を形成するための硬化性組成物の全固形分に対して0.5〜10質量%が好ましく、1.0〜7.0質量%がより好ましく、2.0〜5.0質量%が特に好ましい。
【0047】
[光重合開始剤]
本発明における硬化性化合物(例えば、エチレン性不飽和基を有するモノマー)の重合は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤、および粒子、必要に応じて無機フィラー、塗布助剤、その他の添加剤、有機溶媒等を含有する塗布液を調製し、該塗布液を透明支持体上に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化して防眩層を形成する。電離放射線硬化と熱硬化を合わせて行うことも好ましい。光及び熱重合開始剤としては市販の化合物を利用することができ、それらは、「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)や、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のカタログに記載されている。光重合開始剤は2種以上を併用することもできる。
光重合開始剤は、防眩層を形成するための硬化性組成物における硬化性樹脂化合物100質量部に対して、総量として0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましく、1〜6質量部の範囲で使用することが最も好ましい。
【0048】
本発明における光重合開始剤としては、具体的にはアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号等)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。それに加えて、ホスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いることも防眩層の内部の硬化を進める上で好ましい。本発明におけるホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、光吸収時にn−π*遷移を起こし、フォトブリーチング効果を持つものが好ましく、具体的には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドが好ましく挙げられる。
【0049】
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、BASF製のイルガキュア(651,184,500,819,907,369,1173,1870,2959,4265,4263,127など)、DAROCUR(TPO,1173)、サートマー社製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT)等及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0050】
[界面活性剤]
本発明における防眩層を形成するための硬化性組成物には、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を含有することが好ましい。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いることができる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることができる。
【0051】
フッ素系の界面活性剤の好ましい例としては、フルオロ脂肪族基含有共重合体(以下、「フッ素系ポリマー」と略記することもある)が挙げられ、該フッ素系ポリマーは、下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位を含む、あるいは(i)のモノマーに相当する繰り返し単位とさらに下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位とを含む、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が有用である。
【0052】
(i)下記一般式イで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
一般式イ
【0053】
【化1】

【0054】
一般式イにおいてR11は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R12)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは2〜4の整数を表す。R12は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Xは酸素原子が好ましい。
【0055】
(ii)前記(i)と共重合可能な下記一般式ロで示されるモノマー
一般式ロ
【0056】
【化2】

【0057】
一般式ロにおいて、R13は水素原子またはメチル基を表し、Yは酸素原子、イオウ原子または−N(R15)−を表し、R15は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Yは酸素原子、−N(H)−、および−N(CH)−が好ましい。
14は置換基を有しても良い炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。R14のアルキル基の置換基としては、水酸基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等があげられるがこの限りではない。炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、直鎖及び分岐してもよいブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基、等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
【0058】
本発明で用いられるフッ素系ポリマーに用いられるこれらの一般式イで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該フッ素系ポリマーの各単量体に基づいて10モル%以上であり、好ましくは15〜70モル%であり、より好ましくは20〜60モル%の範囲である。
【0059】
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、5,000〜80,000がより好ましい。更に、本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい添加量は、塗布液100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.005〜3質量部の範囲であり、より好ましくは0.01〜1質量部の範囲である。フッ素系ポリマーの添加量が0.001質量部以上であればフッ素系ポリマーを添加した効果が充分得られ、また5質量部以下であれば、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、塗膜としての性能(例えば反射率、耐擦傷性)に悪影響を及ぼしたり、といった問題が生じない。
【0060】
[無機フィラー]
本発明の防眩層には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の透光性樹脂粒子に加えて、屈折率の調整、膜強度の調整、硬化収縮減少、さらに低屈折率層を設けた場合の反射率低減の目的に応じて、無機フィラー使用することもできる。例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する酸化物からなり、一次粒子の平均粒子径が、一般に0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下1nm以上である微細な高屈折率無機フィラーを含有することも好ましい。
透光性粒子との屈折率差を調整するために、マトリックスの屈折率を低くする必要が生じた場合は、無機フィラーとして、シリカ微粒子、中空シリカ微粒子等の微細な低屈折率無機フィラーを用いることができる。好ましい粒径は、前記の微細な高屈折率無機フィラーと同じである。
無機フィラーは、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
無機フィラーの添加量は、防眩層の全固形分中の3〜90質量%の範囲で用いることができる。
なお、無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分短いために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質の性質を有する。
【0061】
以下本発明における防眩層および光学フィルムの物性について説明する。
本発明の光学フィルムの防眩層は膜厚が2.0〜6.0μmである。好ましくは2.0μm以上5.0μm未満であり、更に好ましくは2.5μm以上5.0μm未満であり、最も好ましくは3.0μm以上4.5μm未満である。この範囲の膜厚にすることで、防眩層の硬化性化合物の硬化収縮に伴う光学フィルムのカールを低減できる。特に透明支持体の膜厚が80μm未満の場合に有効で、支持体膜厚が薄くなるほど効果が大きい。
本発明において防眩層の膜厚とは、防眩層の成分のみが存在している層の膜厚を表す。支持体が熱可塑性樹脂からなる場合には、防眩層の成分が支持体に染込んでいたり、支持体を形成する熱可塑性樹脂成分と防眩層成分が混合層を形成することがある。このような層の存在は、光学フィルムの断面の反射型または透過型の電子顕微鏡観察、または飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で分析することにより確認できる。このような場合は、防眩層の膜厚にはこの染込み層や混合層の膜厚を含まないものとする。
【0062】
本発明においては、[防眩層の膜厚T]/[樹脂粒子の平均粒子サイズR]の比率T/Rの値が2.0〜5.0であることが、本発明における防眩層内での樹脂粒子の存在状態を実現するために好ましく、更に好ましくは2.2〜4.0、最も好ましくは2.3以上3.5未満である。数値の技術的背景については、(A)成分の樹脂粒子の頁で述べた通りである。
【0063】
本発明の光学フィルムは、防眩層が形成された側の光学フィルム表面の平均傾斜角θが0.15〜1.50度である。平均傾斜角は、更に好ましくは0.20〜1.00度、最も好ましくは0.30〜0.95度である。平均傾斜角が1.50度より大きいと白茶け感が強くなり明室コントラストが悪化し、0.15度より小さいと映り込みが悪化する。
【0064】
本発明において、平均傾斜角度は以下の方法で決定される。すなわち、面積が0.5乃至2平方マイクロメートルである三角形の頂点を透明支持体面に仮定し、その点から鉛直上向きに伸ばした3つの垂線がフィルム表面と交わる3点によって形成される三角形の面の法線が、透明支持体から鉛直上向きに伸ばした垂線となす角を表面の傾斜角度とし、透明支持体上で250000平方マイクロメートル(0.25平方ミリメートル)以上の面積を該三角形に分割して測定した時の全測定点の平均値を平均傾斜角度として算出する。
【0065】
ギラツキ抑制と防眩性を両立させるために、光学フィルムの表面(透明支持体に対して防眩層を有する側の光学フィルム表面)を光干渉方式の非接触表面形状計測で測定し、得られた凹凸波形をフーリエ変換によって算出した、波長50μmにおける振幅(A50)が0.0010〜0.0050μmにすることが好ましく、波長100μmにおける振幅(A100)が0.0010μm〜0.0050μmにすることが必要である。波長50μmにおける振幅(A50)は0.0015〜0.0040μmが更に好ましく、0.0015〜0.0030μmが最も好ましい。波長100μmにおける振幅(A100)は0.0010μm〜0.0040μmが好ましく、0.0010〜0.0035μmが更に好ましい。
波長50μmにおける振幅(A50)を0.001〜0.0050μmにすることによって、良好な防眩性を得ることができる。また、波長100μmにおける振幅(A100)を0.0010〜0.0050μm以下にすることによって、ギラツキを抑制することができる。
光干渉方式での非接触表面形状計測によるこれら振幅は、特に限定はされないが、例えばMicromap、Vertscan2.0、Vertscan3.0((株)菱化システム)製)等によって測定し、フーリエ変換により算出することができる。
波長100μmにおける振幅を0.0050μm以下、好ましくは0.0040μm以下にすることがギラツキ抑制に効果的であるのは、液晶パネルのR、G、B各画素のサイズがおよそ数十μm程度であるため、100μm程度のサイズの凹凸が画素と干渉してギラツキを悪化させていると考えられる。そのため、ギラツキを発生させるサイズ(波長100μm)の凹凸高さを抑え、小サイズ(波長50μm)の凹凸によって防眩性を付与することによって、ギラツキ抑制と防眩性を両立できることを見出した。従来、表面の凹凸形状の一般的な指標として用いてきたRa(表面粗さ)やSm(凹凸平均間隔)は、凹凸形状の平均値であるため、ギラツキを表す指標としては不十分であると考えられ、本指標を用いて表面形状を設計することによって、ギラツキ抑制と防眩性の両立が可能となった。
【0066】
本発明の光学フィルムは、ヘイズ(全ヘイズ)が5.0%以下であることが好ましい。本発明においてヘイズは以下の手順で測定することができる。
(1)JIS−K7136に準じてフィルムのヘイズ値(H)(全ヘイズ)を測定する。
(2)フィルムの低屈折率層側の表面および裏面にシリコーンオイルを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板とフィルムを光学的に密着させ、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出する。
(3)上記(1)で測定した全ヘイズ(H)から上記(2)で算出した内部ヘイズ(Hi)を引いた値をフィルムの表面ヘイズ(Hs)として算出する。
【0067】
本発明の光学フィルムは、ヘイズ(全ヘイズ)が5.0%以下であることが好ましい。そのうち光学フィルムの内部散乱に起因する内部ヘイズが0〜5.0%であることが好ましく、更に好ましくは0%〜4.0%であり、最も好ましくは0.1〜2.5%である。光学フィルムの内部ヘイズが大きすぎると正面コントラストが低下する。また、本発明の算出方法により求めた表面ヘイズは、−2.0〜5.0%であることが好ましく、更に好ましくは−1.0〜3.0%、最も好ましくは0.0〜2.5%である。
また、本発明においては、後述するように本発明の防眩層に加えて他の光学機能層を積層することができ、意図的に内部散乱性を持たせるような場合には、積層光学フィルム全体としての内部ヘイズは5.0%を越える光学フィルムを設計することを妨げるものではない。
【0068】
本発明の光学フィルムは、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.02〜0.15μmであることが好ましく、更に好ましくは0.03〜0.10μm、最も好ましくは0.03〜0.09である。Raが大きすぎると明室コントラストが悪化し、Raが小さすぎると映り込みが悪化する。10点平均粗さRzがRaの3〜10倍程度であることが好ましい。平均山谷距離Smが好ましくは20〜200μm、更に好ましくは30〜120μm、最も好ましくは30〜100μmである。中心線平均粗さ(Ra)および平均山間隔(Sm)はJIS−B0601:2001に準じて測定できる。
また、本発明の光学フィルムの光沢度の好ましい範囲は、60度光沢度は70〜100%が好ましく、更に好ましくは80〜95%、最も好ましくは80〜90%であり、20度光沢度は20〜80%が好ましく、更に好ましくは25〜70%である。光沢度はJIS−Z8741に準拠して測定できる。
【0069】
[光学フィルムの構成]
本発明の光学フィルムは、最も単純な構成では、透明支持体上に防眩層を塗設した構成である。
本発明の光学フィルムの好ましい層構成の例を下記に示すが、特にこれらの層構成のみに限定されるわけではない。
・支持体/防眩層
・支持体/ハードコート層/防眩層
・支持体/防眩層/ハードコート層
・支持体/防眩層/低屈折率層
・支持体/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
・支持体/防眩層/ハードコート層/低屈折率層
【0070】
[低屈折率層]
本発明では、防眩層の上に低屈折率層を形成することもできる。低屈折率層は防眩層よりも低い屈折率を有し、厚さは50〜200nmであることが好ましく、70〜150nmであることがさらに好ましく、80〜120nmであることが最も好ましい。
【0071】
低屈折率層の屈折率は、直下の層の屈折率より低く、1.20〜1.55であることが好ましく、1.25〜1.46であることがより好ましく、1.30〜1.40であることが特に好ましい。低屈折率層は低屈折率層形成用の硬化性組成物を硬化して得ることが好ましい。
好ましい低屈折率層の硬化性物組成の態様としては、
(1)架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物を含有する組成物、
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物、
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと無機微粒子(特に中空構造を有する無機微粒子が好ましい。)を含有する組成物、
などが挙げられる。
(1)及び(2)に関しても、無機微粒子を含有することが好ましく、さらに屈折率の低い中空構造を有する無機微粒子用いると、低屈折率化や無機微粒子添加量と屈折率の調整などの観点で特に好ましい。
【0072】
(1)架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物
架橋性または重合性の官能基を有する含フッ素化合物としては、含フッ素モノマーと架橋性または重合性の官能基を有するモノマーの共重合体を挙げることができる。これら含フッ素ポリマーの具体例は、特開2003−222702号公報、特開2003−183322号公報等に記載されている。
【0073】
上記のポリマーに対しては特開2000−17028号公報に記載のごとく適宜重合性不飽和基を有する硬化剤を併用してもよい。また、特開2002−145952号に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有する化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、上記の防眩層の硬化性樹脂化合物として説明した2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。また、特開2004−170901号公報に記載のオルガノランの加水分解縮合物も好ましく、特に(メタ)アクリロイル基を含有するオルガノシランの加水分解縮合物が好ましい。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
【0074】
ポリマー自身が単独で十分な硬化性を有しない場合には、架橋性化合物を配合することにより、必要な硬化性を付与することができる。例えばポリマー本体に水酸基含有する場合には、各種アミノ化合物を硬化剤として用いることが好ましい。架橋性化合物として用いられるアミノ化合物は、例えば、ヒドロキシアルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上含有する化合物であり、具体的には、例えば、メラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。これら化合物の硬化には、有機酸又はその塩を用いるのが好ましい。
【0075】
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物
含フッ素のオルガノシラン化合物の加水分解縮合物を主成分とする組成物も屈折率が低く、塗膜表面の硬度が高く好ましい。フッ素化アルキル基に対して片末端又は両末端に加水分解性のシラノールを含有する化合物とテトラアルコキシシランの縮合物が好ましい。具体的組成物は、特開2002−265866号公報、特許317152号公報に記載されている。
【0076】
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物
更に別の好ましい態様として、低屈折率の粒子とバインダーからなる低屈折率層が挙げられる。低屈折率粒子としては、有機でも無機でも良いが、内部に空孔を有する粒子が好ましい。中空粒子の具体例は、特開2002−79616号公報に記載のシリカ系粒子に記載されている。粒子屈折率は1.15〜1.40が好ましく、1.20〜1.30が更に好ましい。バインダーとしては、上記防眩層の頁で述べた二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。
【0077】
本発明に用いられる低屈折率層用の組成物には、前述の光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。ラジカル重合性化合物を含有する場合には、該化合物に対して1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部の重合開始剤を使用できる。
【0078】
本発明に用いられる低屈折率層には、無機粒子を併用することができる。耐擦傷性を付与するために、低屈折率層の厚みの15%〜150%、好ましくは30%〜100%、更に好ましくは45%〜60%の粒径を有する微粒子を使用することができる。
【0079】
本発明の低屈折率層には、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のポリシロキサン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することができる。
【0080】
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、反応性基含有ポリシロキサン{例えば“ KF−100T”,“X−22−169AS”,“KF−102”,“X−22−3701IE”,“X−22−164B”,“X−22−5002”,“X−22−173B”,“X−22−174D”,“X−22−167B”,“X−22−161AS”(商品名)、以上、信越化学工業(株)製;“AK−5”,“AK−30”,“AK−32”(商品名)、以上東亜合成(株)製;、「サイラプレーンFM0725」,「サイラプレーンFM0721」(商品名)、以上チッソ(株)製等}を添加するのも好ましい。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。
【0081】
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば−CFCF,−CH(CFH,−CH(CFCF,−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF,CHCF(CF,CH(CH)CFCF,CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCHOCHCFCF,CHCHOCHH,CHCHOCHCH17,CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0082】
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833、オプツールDAC(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300、MCF−323(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらのポリシロキサンフッ素系化合物やポリシロキサン構造を有する化合物は低屈折率層全固形分の0.1〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
【0083】
[ハードコート層]
本発明の光学フィルムには、フィルムの物理的強度を更に付与するために、防眩層に加えてハードコート層を設けることができる。ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
【0084】
光学フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、更に好ましくは2μm〜10μm、最も好ましくは3μm〜7μmである。また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0085】
ハードコート層は、電離放射線硬化性樹脂化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明プラスチックフィルム基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましく、上記の防眩層の硬化性樹脂化合物として説明した2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。
【0086】
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。
【0087】
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、高屈折率モノマー又は無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。
【0088】
[透明支持体]
本発明における透明支持体としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートやなど、特に限定は無い。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム等が使用できる。
【0089】
その中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であり、偏光板の保護フィルムとして一般に用いられているセルロースアシレートフィルムが好ましく、セルローストリアセテートフィルムが更に好ましい。又、透明基材の厚さは通常15μm〜1000μm程度とする。本発明においては、透明支持体がセルロースエステル系フィルムが好ましく、かつ該セルロースエステル系フィルムの膜厚が20〜70μmである事が好ましい。セルロースエステル系フィルムの膜厚は30〜60μm以下が更に好ましい。
【0090】
本発明ではセルロースアシレートフィルムに、酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。
酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算に従う。セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。
また、本発明に使用するセルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることが更に好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
【0091】
一般に、セルロースアシレートの2,3,6位の水酸基は全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ましく、更には33%以上、特に34%以上であることが好ましい。更にセルロースアシレートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
本発明ではセルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落「0043」〜「0044」[実施例][合成例1]、段落「0048」〜「0049」[合成例2]、段落「0051」〜「0052」[合成例3]に記載の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
【0092】
透明支持体にセルロースアシレートフィルムを用いる場合には、支持体の脆性、加工適性、水分透過性、光学特性などの制御のために、公知の可塑剤を使用することができる。好ましい可塑剤としては、例えば、特開2010−242050号公報(芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジカルボン酸と、平均炭素数が2.0以上3.0以下の脂肪族ジオールと、モノカルボン酸とを含む混合物から得られ、両末端がモノカルボン酸エステル誘導体からなる重縮合エステル)、国際公開特許WO2009−031464号公報(フラノース構造もしくはピラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下結合した化合物をエステル化したエステル化化合物)、特許第4228809号公報(多価アルコールエステル系化合物)、特開2007−003767号公報(芳香族を含むポリエステル可塑剤)等が挙げられる。
【0093】
本発明では、ポリエチレンテレフタレートフィルムも、透明性、機械的強度、平面性、耐薬品性及び耐湿性共に優れており、その上安価であり好ましく用いられる。透明プラスチックフィルムとその上に設けられるハードコート層との密着強度をより向上させるため、透明プラスチックフィルムは易接着処理が施されたされたものであることが更に好ましい。市販されている光学用易接着層付きPETフィルムとしては東洋紡績社製コスモシャインA4100、A4300等が挙げられる。
【0094】
[塗布方式]
本発明の光学フィルムの各層は以下の塗布方法により形成することができるが、この方法に制限されない。ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法やエクストルージョンコート法(ダイコート法)(特開2003−164788号明細書参照)、マイクログラビアコート法等の公知の方法が用いられ、その中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましい。
2層以上を同時に塗設する場合は、一つの塗布装置で2層以上を同時に塗設する方法(特許4277465号、特開2007−164166号、特開2003−260400号、特開平7−108213号、特開2007−121426号明細書参照)が好ましく、特開2003−260400号記載のスロットダイコーターを用いることが特に好ましい。
【0095】
[乾燥、硬化条件]
本発明における防眩層など塗布により層形成する場合の、乾燥、硬化方法に関して、好ましい例を以下に述べる。
本発明では、電離放射線による照射と、照射の前、照射と同時又は照射後の熱処理とを組み合わせることにより、硬化することが有効である。本発明の防眩層は、樹脂粒子成分および層状無機化合物の相互作用により、防眩層内で好適な樹脂粒子の存在状態が形成されるものである。電離放射線硬化性モノマーを硬化する前/及びまたは硬化中に熱処理を行なうことで、樹脂粒子や層状無機化合物の相互作用を強化することができ状態を制御することができる。
本発明においては、熱処理は、防眩フィルムの支持体、防眩層を含めた構成層を損なうものでなければ特に制限はないが、好ましくは40〜150℃、更に好ましくは50〜130℃、最も好ましくは60〜110℃である。また、塗布後20秒以内に固形分濃度を70質量%以上にすることが好ましく、80質量%以上にすることが更に好ましい。
【0096】
熱処理に要する時間は、使用成分の分子量、その他成分との相互作用、粘度などにより異なるが、10秒〜10分、好ましくは15秒〜5分、最も好ましくは15秒〜3分である。
【0097】
電離放射線の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が広く用いられる。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm〜1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して各層を硬化するのが好ましい。照射の際には、前記エネルギーを一度に当ててもよいし、分割して照射することもできる。特に塗膜の面内での性能ばらつきを少なくする点や、面状、表面のざらつき感を良化させるという観点からは、2回以上に分割して照射することが好ましく、初期に150mJ/cm以下の低照射量の紫外光を照射し、その後、50mJ/cm以上の高照射量の紫外光を照射し、かつ初期よりも後期の方で高い照射量を当てることが好ましい。
【0098】
[偏光板]
本発明の防眩フィルムは、偏光膜とその両側に配置された保護フィルムとからなる偏光板の、その保護フィルムの一方又は両方に使用して、防眩性を有する偏光板とすることができる。
【0099】
一方の保護フィルムとして本発明の防眩フィルムを用い、他方の保護フィルムには、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよいが、その他方の保護フィルムには、溶液製膜法で製造され、かつ10〜100%の延伸倍率でロールフィルム形態における幅方向に延伸したセルロースアセテートフィルムを用いることが好ましい。
【0100】
また、偏光膜の2枚の保護フィルムのうち、本発明の防眩フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい態様である。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されている光学補償フィルムが好ましい。
【0101】
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
【0102】
また偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作製される。
すなわち、連続的に供給されるポリビニルアルコール系フィルムなどのポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸して、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内で、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するように、フィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0103】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落番号0020〜0030に詳しい記載がある。
【0104】
[画像表示装置]
本発明の防眩フィルム又は偏光板は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に用いることができる。
【実施例】
【0105】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0106】
(防眩層用塗布液の調製)
以下の表1に示す組成となるように各成分をMIBKとMEKとの混合溶媒と混合した。孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層用塗布液A101〜A117を調製した。表1中の数値は、各成分の溶媒を除く「質量部」を表す。塗布液中でこれら溶媒を除く成分は35質量%となるようにし、溶媒組成はMIBK/MEK=70/30(質量比)となるように調整した。尚、塗布液の調製に際して、樹脂粒子および層状無機化合物は分散液の状態で添加した。
【0107】
(樹脂粒子分散液の調製)
透光性樹脂粒子の分散液は、攪拌しているMIBK(メチルイソブチルケトン)溶液中に透光性樹脂粒子を分散液の固形分濃度が30質量%になるまで徐々に加え、30分間攪拌して調製した。
【0108】
(層状無機化合物分散液の調製)
層状無機化合物の分散液は、最終的に防眩層用塗布液に使用される全てのMEK(メチルエチルケトン)を用い、MEK中に攪拌しながら層状無機化合物を徐々に加え、30分間攪拌して調製した。
【0109】
【表1】

【0110】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
A−DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔新中村化学工業(株)製〕
ビスコート360:トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製〕
PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
UV1700B:10官能ウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製)
樹脂粒子は、積水化成品工業(株)製の以下の粒子である。
A:2μm架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.520)
B:1.5μm架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.520)
C:1.5μm架橋アクリル粒子(屈折率1.500)
D:5μm架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.520)
E:2μm架橋スチレン粒子(屈折率1.590)
F:0.4μm架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.520)
G:2.7μm架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.520)
層状無機化合物は、コープケミカル(株)製の以下の化合物である。
STN:有機修飾スメクタイト(ルーセンタイトSTN 商品名)
SAN:有機修飾スメクタイト(ルーセンタイトSAN 商品名)
SPN:有機修飾スメクタイト(ルーセンタイトSPN 商品名)
MEK−ST:シリカ分散液(平均粒子径約15nmの球状シリカ粒子のMEK分散液、固形分濃度30質量%、[日産化学工業株式会社製])
Disperbyk−166(商品名)(アミン価20KOH/g、ビックケミー製の高分子化合物)
Irgacure 907:アセトフェノン系光重合開始剤[BASF製]
SP−13:以下のフッ素系界面活性剤
【0111】
【化3】

【0112】
(防眩層の塗設)
60μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルムをロール形態で巻き出して、防眩層用塗布液A101〜A117を使用し、防眩フィルム試料101〜117を作製した。
具体的には、特開2006−122889号公報実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で各塗布液を塗布し、80℃で150秒乾燥の後、更に窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量180mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させて防眩層を形成した後、巻き取った。
【0113】
(防眩フィルムの鹸化処理)
得られた防眩フィルム101〜117を次の条件で鹸化処理・乾燥した。
アルカリ浴:1.5mol/dm水酸化ナトリウム水溶液、55℃で120秒。
第1水洗浴:水道水、60秒。
中和浴:0.05mol/dm硫酸、30℃−20秒。
第2水洗浴:水道水、60秒。
乾燥:120℃、60秒。
【0114】
(フロント用偏光板の作製)
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルムと、防眩フィルム101〜117の鹸化処理済みの各々のフィルムとを、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させて延伸して作製した偏光子の両面に接着、保護してフロント用偏光板を作製した。なお、防眩フィルム101〜117の透明支持体であるトリアセチルセルロースフィルム側と偏光子とを接着させた。
【0115】
(リア用偏光板の作製)
防眩フィルムを下記に示す光学補償フィルムに変更したこと以外は、前記フロント用偏光板と同様にして、リア用偏光板を作製した。
【0116】
(光学補償フィルムの作製)
下記の組成の内層用及び外層用ドープをそれぞれ調製した。
内層用ドープの組成:
セルロースアセテートC−1 100質量部
(アセチル置換度2.81、数平均分子量88000)
下記レターデーション発現剤 7質量部
【0117】
【化4】

【0118】
下記の重合体P−2 9.0質量部
下記染料(ブルーイング染料) 0.000078質量部
【0119】
【化5】


【0120】
ジクロロメタン 423.9質量部
メタノール 63.3質量部
【0121】
外層用ドープの組成:
セルロースアセテートC−1 100質量部
(アセチル置換度2.81、数平均分子量88000)
前記レターデーション発現剤 7質量部
下記の重合体P−2 9.0質量部
前記染料(ブルーイング染料) 0.000078質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子 0.14質量部
(「AEROSIL R972」日本アエロジル(株)製)
ジクロロメタン 424.5質量部
メタノール 63.4質量部
【0122】
重合体P−2:TPA/PA/SA/AA(=45/5/30/20(モル%))のジカルボン酸残基と、エチレングリコール(100モル%)のジオール残基とからなる重縮合体であって、両末端がアセチルエステル残基で封止されている、数平均分子量が900の重縮合体(ここで、TPAはテレフタル酸、PAはフタル酸、SAはセバシン酸、AAはアジピン酸である。)
【0123】
上記組成の外層及び内層ドープ液をバンド流延装置を用い、支持体面側外層、内層、空気界面側外層の3層構造となるように、2000mm幅でステンレスバンド支持体上に均一に同時積層共流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が40質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離の際に張力をかけて縦(MD)延伸倍率が1.02倍となるように延伸し、ついで、テンターで両端部を把持し、幅手(TD)方向の延伸倍率が1.22倍となるように、45%/分の速度で横方向に延伸(横延伸)した。延伸開始時の残留溶剤量は30質量%であった。延伸後に搬送しながら115℃の乾燥ゾーンで35分間乾燥させた。乾燥後に1340mm幅にスリットし、各層の膜厚比が支持体面側外層:内層:空気界面側外層=3:94:3で、総膜厚60μmのセルロースアシレート光学補償フィルムを得た。
【0124】
(液晶表示装置の作製)
VA型液晶表示装置(LC−32DZ3 シャープ社(製))に設けられているフロント、及びリアの偏光板及び位相差膜を剥がし、代わりに上記で作製したそれぞれの偏光板を、フロントはトリアセチルセルロースフィルムが、リアは光学補償フィルムが液晶セル側になるように配置し、透過軸が製品に貼られていた偏光板と一致するように貼り付けて、防眩フィルムを有する液晶表示装置を作製した。
【0125】
(防眩フィルム及び液晶表示装置の評価)
得られた防眩フィルム及び液晶表示装置に対して、以下の評価を行った。
<1>防眩層の膜厚
得られた防眩フィルムを支持体の鉛直な方向にミクロトームを用いて切断した。走査型電子顕微鏡にて切断面を観察し、防眩層の膜厚を測定した。
【0126】
<2>防眩層内での樹脂粒子の存在状態
本文に記載の方法に従い、防眩フイルムを支持体に対して法線方向に切断し、厚さ50nmの切片を作製した。その断面の防眩層部分を透過型電子顕微鏡を用いて1.5万倍の写真を撮影した。視野中の200個の樹脂粒子を観察し、隣接樹脂粒子との接触の有無を観察した。互いに接している粒子の割合(接触率)を百分率で求めた。
また、該切片写真上で樹脂粒子を透明支持体に鉛直な方向に投影し、樹脂粒子が防眩層の上下方向で互いに重なり合って存在している個数をカウントし、重なり合っている割合を百分率で求めた。
【0127】
<3>防眩層内での層状無機化合物の存在状態
本文に記載の方法に従い、防眩層中の全層平均濃度に対する最近接の2樹脂粒子間に存在する濃度の相対比率(局在比)を算出した。この数値が高い程、近接2樹脂粒子間に層状無機化合物が局在化していることを示す。
【0128】
<4>防眩層表面の傾斜角
マイクロマップ社(米国)製SXM520−AS150型を用い、防眩フィルムの硬化層の表面(光透過性基材とは反対側の表面)を測定した。光源には中心波長560nmの干渉フィルターを挿入したハロゲンランプを使用した。対物レンズの倍率は10倍であり、画素数640×480の2/3インチのCCDによりデータを取り込んだ。これより、縦及び横方向の測定ピッチは1.3マイクロメートルであり、傾斜角度の測定単位は0.8平方マイクロメートル、測定範囲は500000平方マイクロメートル(0.5平方ミリメートル)となった。測定単位である3点の高さデータから傾斜角度を算出して、前記測定範囲での平均傾斜角を求めた。
【0129】
<5>表面形状A100(波長100μmの振幅)
Vertscan2.0(レンズ倍率10倍)にて、防眩フィルム表面の凹凸形状を測定し、得られた凹凸プロファイルを高速フーリエ変換することで、波長100μmの振幅を算出した。
【0130】
<6>ヘイズ、内部ヘイズ
[1]JIS−K7136に準じて、得られた防眩フィルムの(全)ヘイズ値(H)(%)を測定した。装置には日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH2000を用いた。
[2]防眩フィルムの表面及び裏面に顕微鏡用イマージョンオイル(ニコン(株)製イマージョンオイルTYPE A、屈折率n=1.515)を数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S9111、MATSUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られた防眩フィルムを密着した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(%)とした。
【0131】
<7>暗室コントラスト
作製した防眩フィルムを、液晶テレビ(LC−32DZ3 シャープ社(製))に実装し、測定機(TOPCON SR−UL1R)を用いた。防眩層を設けていないトリアセチルセルロースフィルムを用いて測定した際の値を100とし、各防眩フィルムでのコントラスト値を算出し、以下の基準で評価した。
A:97以上
B:95以上97未満
C:93以上95未満
D:93未満
【0132】
<8>漆黒感
一般的にTVを用いる一般家庭環境下(約200Lx)にてパネルを黒表示にて駆動させて、漆黒感を目視にて以下の判定基準にて確認した。C以上を合格とした。
A:黒の程度が非常に良好である。
B:黒の程度が良好である。
C:若干白っぽさを感じるが許容内である。
D:白ボケが発生している。
<9>防眩性
作製した防眩フィルムを、液晶テレビ(LC−32DZ3 シャープ社(製))に実装し、黒表示における蛍光灯の写り込み程度を下記基準で目視評価した。
A:蛍光灯の形がボケており、ボケの変化が非常に滑らかである。
B:蛍光灯の形はボケているが、ボケの変化がやや急である。
C:蛍光灯の形はボケているが、形がやや気になる。
D:蛍光灯の写り込みが気になる。
【0133】
以下の表2に防眩フィルムおよびそれを用いた偏光板および画像表示装置の評価結果を記載する。
【0134】
【表2】

【0135】
表2に示すように、本発明の特定の粒子サイズの樹脂粒子と層状化合物を併用し、特定の防眩層の膜厚にすることで、防眩層内での樹脂粒子の存在状態を制御でき、防眩性と漆黒感を両立する防眩フィルムを得ることができる。
樹脂粒子サイズ又は防眩層膜厚/粒子サイズ比(T/R)が、本発明の範囲を満たさない試料(No.107,108)は、防眩層表面の平均傾斜角が本発明の範囲を満たさず、性能不十分であった。また、防眩層内で樹脂粒子の接触率の高い試料(No.114)は、防眩層表面の平均傾斜角が大きくなり、漆黒感が不十分となった。
尚、試料No.101〜117の防眩層の硬化性モノマーの硬化後の屈折率は1.520〜1.530の範囲にあった。また、各試料で層状無機化合物の防眩層内での長軸長さは150〜220nm、アスペクト比は8〜12の範囲にあった。
【0136】
また、防眩フィルム101〜117に下記に示す方法で低屈折率層を塗設した。その結果、本発明の防眩フィルムを用いると、防眩性、コントラストを維持したまま、より優れた漆黒感を実現できることを確認した。
【0137】
[低屈折率層の塗設]
(無機粒子分散液(B−1)の調製)
特開2002−79616号公報の調製例4から調製時の条件を変更して、内部に空洞を有するシリカ微粒子を作製した。これを水分散液状態からメタノールに溶媒置換した。最終的に固形分濃度が20質量%になるように調節して、平均粒子径45nm、シェル厚み約7nm、シリカ粒子の屈折率1.30の粒子が得られた。これを分散液(B)とする。
前記分散液(B)の500質量部に対してアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン15質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5質量部加え混合した後に、イオン交換水を9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加した。さらに総液量がほぼ一定になるようにMEKを添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換し、最終的に固形分濃度が20質量%になるように調節して分散液(B−1)を調製した。
【0138】
(低屈折率層用塗布液の調製)
含フッ素ポリマー(P−12:含フッ素共重合体、特開2007−293325号公報の例示化合物)を7.6g、DPHAを1.4g、分散液(B−1)を24g、光重合開始剤(イルガキュア907)0.46g、メチルエチルケトン150g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40gを添加、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0139】
(低屈折率層の塗設)
上記防眩層を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出して、上記低屈折率層用塗布液を前記のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、90℃で75秒間乾燥の後、窒素パージ下酸素濃度0.01〜0.1%で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量240mJ/cmの紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取り、低屈折率層を有する防眩フィルムを作製した。低屈折率層の屈折率は1.35であった。
【符号の説明】
【0140】
1 光学フィルム
2 光透過性基材
3 防眩層
4 樹脂粒子
5 層状無機化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に防眩層を有する光学フィルムであって、
前記防眩層は、少なくとも下記(A)〜(D)を含有する塗布組成物を、前記透明支持体上に塗布し、乾燥して、硬化させてなるものであり、
前記防眩層の膜厚が2.0〜6.0μmであり、
前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の平均傾斜角θが0.15〜1.50度であり、
前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の凹凸波形をフーリエ変換によって算出した波長100μmにおける振幅(A100)が0.0010〜0.0050μmであり、
前記防眩層内での下記(A)成分の樹脂粒子は、前記透明支持体に鉛直な方向の断面写真において互いに接触している樹脂粒子が30%未満であり、かつ前記透明支持体に鉛直な方向に投影した場合に、25%以上の樹脂粒子が互いに上下に重なりあって存在している、光学フィルム。
(A)平均粒子サイズが1.0〜4.5μmの樹脂粒子
(B)分子内に少なくとも2個以上の硬化性官能基を有する硬化性化合物
(C)長軸長さが20nm以上300nm未満で、かつアスペクト比が2〜300である層状無機化合物
(D)揮発性有機溶剤
【請求項2】
前記塗布組成物中、(B)成分の硬化性化合物100質量部あたり、(A)成分の樹脂粒子量が1質量部以上8質量部未満であり、(C)成分の層状無機化合物が0.1質量部以上2質量部未満であり、
前記防眩層に存在する(C)成分が、(A)成分の樹脂粒子の間に偏析し、防眩層における(C)成分の平均濃度に対して、1つの樹脂粒子に対して最も近接した2つの樹脂粒子との間に存在する(C)成分の濃度が1.1〜10.0倍である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
[防眩層の膜厚T]/[(A)成分の樹脂粒子の平均粒子サイズR]の比率T/Rの値が2.0〜5.0である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記(A)成分の樹脂粒子の平均粒子サイズが1.0μm以上2.0μm未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記(A)成分の樹脂粒子の屈折率と、前記防眩層から(A)成分の樹脂粒子を除いた層の屈折率との屈折率差の絶対値が0.000〜0.030であり、かつ光学フィルムのヘイズが5.0%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記(C)成分の層状無機化合物が、有機カチオンで修飾されている層状粘土化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記(B)成分の硬化性化合物が、5官能以上10官能以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーと1官能以上4官能以下の(メタ)アクリレートモノマーの混合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記透明支持体の膜厚が20〜70μmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記防眩層の上に、屈折率1.20〜1.49の低屈折率層が積層されてなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記(D)成分の揮発性有機溶媒が、沸点が100℃未満の少なくとも1種の溶媒と、沸点が100℃以上の少なくとも1種の溶媒とを含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記(D)成分の揮発性有機溶媒が、脂肪族アルコール、脂肪族エステル、脂肪族ケトン、及び脂肪族エーテルから選ばれる少なくとも2種の溶媒である、請求項10に記載の光学フィルム。
【請求項12】
偏光膜と、該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムとを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が、請求項1〜11のいずれか一項に記載された光学フィルムである、偏光板。
【請求項13】
表示画面の視認側に、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学フィルム、又は請求項12に記載の偏光板を有する、画像表示装置。
【請求項14】
透明支持体上に防眩層を有する光学フィルムの製造方法であって、
少なくとも下記(A)〜(D)を含有する塗布組成物を、前記透明支持体上に塗布し、乾燥して、硬化させて前記防眩層を形成する工程を有し、
前記防眩層の膜厚が2.0〜6.0μmであり、
前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の平均傾斜角θが0.15〜1.50度であり、
前記防眩層が形成された側の光学フィルム表面の凹凸波形をフーリエ変換によって算出した波長100μmにおける振幅(A100)が0.0010〜0.0050μmであり、
前記防眩層内での下記(A)成分の樹脂粒子は、前記透明支持体に鉛直な方向の断面写真において互いに接触している樹脂粒子が30%未満であり、かつ前記透明支持体に鉛直な方向に投影した場合に、25%以上の樹脂粒子が互いに上下に重なりあって存在している、光学フィルムの製造方法。
(A)平均粒子サイズが1.0〜4.5μmの樹脂粒子
(B)分子内に少なくとも2個以上の硬化性官能基を有する硬化性化合物
(C)長軸長さが20nm以上300nm未満で、かつアスペクト比が2〜300である層状無機化合物
(D)揮発性有機溶剤

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−105160(P2013−105160A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251142(P2011−251142)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】