説明

光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び3D画像表示システム

【課題】干渉ムラが軽減された光学フィルムの提供。
【解決手段】膜厚が10μm〜150μmの透明フィルム、該透明フィルムの一方の面上に透明フィルム側から、第1の層及び第2の層を有する光学フィルムであって、
面内の平均屈折率の大きさが
第2の層>第1の層>透明フィルム
を満足し、且つ第1の層と第2の層の面内平均屈折率差、及び第1の層と透明フィルムの面内平均屈折率差が、それぞれ0.02以上の関係を満足し、前記第1の層の光学膜厚Dが、270×N−150−75nm≦D≦270×N−150+75nm(1≦N≦8を満たす自然数)を満足する光学フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元(3D)画像表示装置において視認側表面に配置される光学フィルムの微細干渉ムラを軽減する技術に関し、並びにそれを利用した、偏光板、画像表示装置、及び3D画像表示システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネルの視認側前方にλ/4板を有する、3D画像表示装置が提案されている。λ/4板は、偏光膜とともに、表示パネルの視認側表面に配置され、円偏光画像を形成するのに利用される。当該λ/4板については、その面内遅相軸を、偏光膜の吸収軸との関係で、特定の方向に制御する必要があり、また、パッシブ眼鏡方式では、面内遅相軸が互いに直交するパターンが交互に配置されたパターンλ/4板を利用する必要がある。前記λ/4板を、液晶組成物を利用して作製できれば、面内遅相軸の制御が容易であり、有利である。液晶化合物を利用して形成される位相差層の面内遅相軸については、配向膜を利用して制御するのが一般的である。
【0003】
ところで、透明フィルムからなる支持体上に、配向膜、及び液晶化合物を利用して形成された位相差層を有する光学フィルムは、従来、主には、液晶表示装置の光学補償フィルムとして広く利用されている。光学補償フィルムは、液晶セルと偏光膜との間に配置されるので、光学補償フィルムとしての利用においては、配向膜と位相差層との界面に干渉があっても、それが表示性能に影響することはない。よって、従来、当該構成の光学補償フィルムについては、配向膜と位相差層との界面における干渉の問題について、ほとんど検討されていなかったのが実状である。しかし、上記利用形態、即ち、表示パネルの視認側であって、偏光膜のさらに外側に配置される態様では、配向膜と位相差層との界面に屈折率差に起因する干渉があると、それが表示性能に影響することが懸念される。
【0004】
一般的に、複数の光学薄膜の積層体には、干渉ムラが生じることが知られているが、この干渉ムラは、各光学薄膜の厚みを均一にしてムラをなくすことで、又は界面の屈折率差を小さくすることで軽減できる。しかし、厚みムラを完全になくすことは技術的に実現困難であるし、また屈折率差を小さくすることも、使用可能な材料の選択の幅を狭めるので、実現は困難である。表面や内部に光散乱層を配置することで軽減することができるが、画像表示装置の視認側に光散乱層を配置すると、画像表示面のクリア感が損なわれ、また画像コントラストの低下などの問題もある。
【0005】
一方、液晶表示装置の液晶セル内には、ガラス基板の内面に、画素電極層、配向膜、液晶層、カラーフィルタ層等、多数の光学薄膜が積層されているので、セルギャップや液晶層の厚みムラに起因して、干渉ムラが生じることが知られている。これを解決する手段も提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−166915号公報
【特許文献2】特開2000−231109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が実際に、複数の光学薄膜を有する光学フィルムを、表示パネルの外側であって、偏光膜のさらに外側に配置して観察したところ、従来知られていなかった、黒表示時に又は電源OFF時に、人間の眼で認識できる、細かいちらつきが発生することがわかった。このちらつきは、光学フィルムが有する複数の光学薄膜の界面で生じている数nm周期の干渉にムラがあることに起因するものであり、上記特許文献1及び2で解決している干渉ムラとは、異なるものである。
【0008】
本発明は、上記諸問題に鑑みなされたものであって、複数の光学薄膜を有する光学フィルムの微細な干渉ムラを軽減することを課題とする。
特に本発明は、微細な干渉ムラの発生が軽減された、3D画像表示装置の視認側表面に配置される光学フィルム、並びにそれを有する偏光板、画像表示装置、及び3D画像表示システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 膜厚が10μm〜150μmの透明フィルム、該透明フィルムの一方の面上に透明フィルム側から、第1の層及び第2の層を有する光学フィルムであって、
面内の平均屈折率の大きさが
第2の層>第1の層>透明フィルム
を満足し、且つ第1の層と第2の層の面内平均屈折率差、及び第1の層と透明フィルムの面内平均屈折率差が、それぞれ0.02以上の関係を満足し、
前記第1の層の光学膜厚Dが、
270×N−150−75nm≦D≦270×N−150+75nm(1≦N≦8を満たす自然数)
を満足する光学フィルム。
[2] 第1の層が配向膜であり、及び第2の層が液晶化合物を含む位相差層である[1]の光学フィルム。
[3] 透明フィルムの他方の面上に少なくとも1層のハードコード層を有する[1]又は[2]の光学フィルム。
[4] 膜厚が10μm〜150μmの透明フィルム、該透明フィルムの一方の面上に透明フィルム側から、配向膜、及び膜厚0.5μm〜4μmの液晶化合物を含む位相差層を、他方の面上に少なくとも1層のハードコート層を有する光学フィルムであって、
面内の平均屈折率の大きさが
位相差層>配向膜>透明フィルム、
を満足し、且つ位相差層と配向膜の面内平均屈折率差が、及び配向膜と透明フィルムの面内平均屈折率差がそれぞれ、0.02以上の関係を満足し、
前記配向膜の光学膜厚Dが
1200−75nm≦D≦1200+75nm
である光学フィルム。
[5] 前記透明フィルムが、セルロースアシレートフィルム又は環状オレフィン系ポリマーフィルムである[1]〜[4]のいずれかの光学フィルム。
[6] 前記ハードコード層の前記透明フィルムの反対側面上に、前記透明フィルムより屈折率の低い低屈折率層を有する[3]〜[5]のいずれかの光学フィルム。
[7] 前記ハードコード層と前記低屈折率層との間に、前記透明フィルムより屈折率の高い少なくとも1層の高屈折率層を有する[6]の光学フィルム。
[8] 550nmにおける面内レターデーションRe(550)が80〜200nmであり、波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションRth(550)が−100〜200nmである[1]〜[7]のいずれかの光学フィルム。
[9] 前記液晶化合物が円盤状液晶化合物又は棒状液晶化合物である[2]〜[8]のいずれかの光学フィルム。
[10] 前記液晶化合物を含む位相差層が、面内遅相軸及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1及び第2の位相差領域が交互に配置されたパターン位相差層である[2]〜[9]のいずれかの光学フィルム。
[11] [1]〜[10]のいずれかの光学フィルムと、偏光膜とを少なくとも有する偏光板。
[12] 前記光学フィルムが有する第2の層が位相差層であり、該位相差層の面内遅相軸と、前記偏光膜の吸収軸とが45°で交差する[11]の偏光板。
[13] 表示パネルと、その視認側表面に配置される[11]又は[12]の偏光板とを有する画像表示装置。
[14] [13]の画像表示装置と、
該画像表示装置に表示される映像を透過して、3D画像として視認させるための偏光膜とを少なくとも有する3D画像表示システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の光学薄膜を有する光学フィルムの微細な干渉ムラを軽減することができる。
特に本発明によれば、微細な干渉ムラの発生が軽減された、3D画像表示装置の視認側表面に配置される光学フィルム、並びにそれを有する偏光板、画像表示装置、及び3D画像表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光学フィルムの一例の断面模式図である。
【図2】本発明の画像表示装置の一例の断面模式図である。
【図3】本発明の光学フィルムの他の例の断面模式図である。
【図4】本発明の光学フィルムの他の例の断面模式図である。
【図5】本発明の偏光板の例について、光学フィルム及び偏光膜の軸の関係を示す模式図である。
【図6】本発明の偏光板の他の例について、光学フィルム及び偏光膜の軸の関係を示す模式図である。
【図7】本発明の作用を説明するために用いた模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0014】
【数1】

なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0015】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0016】
なお、本明細書では、「可視光」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明は、透明フィルム、該透明フィルムの一方の面上に透明フィルム側から、第1の層及び第2の層を有する光学フィルムであって、
面内の平均屈折率の大きさが
第2の層>第1の層>透明フィルム
の関係を満足し、且つ第1の層と第2の層の面内平均屈折率差、及び第1の層と透明フィルムの面内平均屈折率差が、それぞれ0.02以上を満足する透明フィルムに関する。
この様に、屈折率が異なる層が積層された構成の光学フィルムでは、層界面に干渉が発生する。画像表示装置の視認側表面であって、偏光膜のさらに外側に配置すると、数nm周期の干渉ムラが、黒表示時又は電源OFF時に微細なちらつきとなって、観察者に認識される。本発明では、前記第1の層の光学膜厚を、270×N−150±75nm(1≦N≦8を満たす自然数)の範囲内にすることで、数nm周期の干渉ムラを軽減している。
【0018】
なお、従来、透明フィルム上に、配向膜及び液晶化合物を利用して形成された位相差層を有する光学補償フィルムが液晶表示装置に広く利用されているが、この構成の光学補償フィルムにおいても、配向膜と位相差層との界面において干渉が発生している。しかし、光学補償フィルムは、液晶セルと偏光膜との間に配置されるものであるので、上記干渉ムラに起因するちらつきは発生しない。上記構成の光学フィルムを偏光膜のさらに視認側外側に配置すると、微細なちらつきが発生すること、その原因が、光学フィルムが有する層界面における数nm周期の干渉ムラに起因することは、本発明者がはじめて見出したことである。
【0019】
本発明者の種々の検討の結果、上記構成の光学フィルムであって、特に支持体として利用される透明フィルムの膜厚が10〜150μmであり、且つ第1の膜厚が0.05〜1.4μm程度であり、且つ第2の層の膜厚が0.5〜4μm程度で比較的光学薄膜としては厚みが大きい層である場合に、数nm周期で反射率の強度が変化することがわかった。さらに検討した結果、この現象は、図7に模式的に示す通り、複数の干渉の重ねあわせによって生じる干渉のうねりに強弱があることによるものであり、このうねりの強弱が、画面上のちらつきとなって認識されていることがわかった。さらに検討した結果、これらのちらつきは、照明等として用いられている三波長光源等の複数の輝線を含む光源下で特に顕著になるとの知見を得、この知見に基づきさらに検討した結果、第1の層の光学膜厚を所定の範囲内にすることで、干渉のうねりの弱くなる位置を光源の輝線と一致させることができ、それにより、干渉うねりの強弱の程度を軽減できること、その結果、人間の眼が認識できるちらつきの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0020】
具体的には、本発明では、第1の層の光学膜厚を、270×N−150±75nm(1≦N≦8を満たす自然数)の範囲内にする。第1の層の光学膜厚が270×N−150nmであると、光源の輝線とほぼ一致し、±75nmの範囲内のズレであれば、人間の眼が認識できる程度のばらつきは発生しない。誤差はより少ないのが好ましく、±50nmの範囲内であるのが好ましく、±25nmの範囲内であるのがより好ましい。
【0021】
第1の層の光学膜厚Dが、270×N−150±75nm(1≦N≦8を満たす自然数)の範囲内であるとは、
270×N−150−75nm≦D≦270×N−150+75nm
を満足することを意味し、即ち、
270×N−225nm≦D≦270×N−75nm
を満足することを意味する。
上記関係式は、Nが1〜8の自然数で満足されるので、即ち、第1の層の光学膜厚Dは、下記表に示す範囲内になる。誤差が±50nm、及び±25nmである場合についても、合せて示す。
【0022】
【表1】

【0023】
中でも、製造の安定性やコストの観点から、Nが3〜6であるのが好ましく、Nが5であるのがより好ましい。また、第1の層の光学膜厚Dは、1200±75nmの範囲内であるのが好ましく、1200±50nmの範囲内であるのがより好ましく、1200±25nmの範囲内であるのがさらに好ましい。
【0024】
本発明の光学フィルムは、面内の平均屈折率の大きさが
第2の層>第1の層>透明フィルム
の関係を満足し、且つ第1の層と第2の層の面内平均屈折率差、及び第1の層と透明フィルムの面内平均屈折率差がそれぞれ0.02以上の関係を満足する。これらの関係を満足する限り特に制限はない。第1の層と第2の層の面内平均屈折率、及び第1の層と透明フィルムの面内平均屈折率差は、それぞれ0.03以上であるのが好ましい。第1の層の面内平均屈折率が、第2の層及び透明フィルムそれぞれの面内平均屈折率の中間値であると、干渉ムラの軽減効果がより高められるので好ましい。第1の層が配向膜である態様では、主成分ポリマーの種類にもよるが、一般的には、面内の平均屈折率は、1.48〜1.6程度である。従って、第1の層が配向膜である態様では、Nが1〜8において、光学膜厚Dが上記範囲となるためには、第1の層の厚みは、30〜1400nm程度になる。但し、この範囲に限定されるものではない。
なお屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを用いて測定することができる。
【0025】
第2の層の面内の平均屈折率についても、上記関係式を満足する限り、特に制限はない。液晶化合物の種類にもよるが、一般的に、円盤状及び棒状液晶の配向を固定して形成される位相差層の面内平均屈折率は、1.5〜1.65程度である。また、透明フィルムに用いられるポリマーフィルム等の面内平均屈折率は、一般的には、1.47〜1.6程度である。
【0026】
上記した通り、本発明の光学フィルムが有する透明フィルムの厚みは、10〜150μmであるのが好ましく、10〜85μmであるのがより好ましい。厚みが上記範囲であると、本発明の効果がより顕著になる。
【0027】
上記した通り、本発明の光学フィルムが有する第2の層の厚みは、光学特性の観点から0.5〜4μmであるのが好ましく、0.9〜1.8μmであるのがより好ましい。
【0028】
本発明の光学フィルムの一例の断面模式図を図1に示す。なお、各層の相対的関係については、実際の相対的関係が反映されているわけではない。他の図についても同様である。
図1に示す光学フィルム1は、透明フィルム10の一方の面上に、配向膜12及び配向状態に固定された液晶化合物を含有する位相差層14を有する。図1に示す例では、配向膜12が第1の層に、位相差層14が第2の層にそれぞれ相当する。
【0029】
光学フィルム1は、図2に示す様に、直線偏光膜16とともに、表示パネル18の視認側表面に配置される。偏光膜16と貼合する際は、図2に示す様に、位相差層14の表面を偏光膜16の表面と貼合してもよい。また、表示パネル18が液晶パネル等であって、その視認側表面に偏光膜を有する態様では、偏光膜16はなくてもよい。また、表示パネル18が液晶パネル等であって、その視認側表面に偏光膜を有する場合に、別途偏光膜16を光学フィルムとともに配置する態様では、表示パネルが有する視認側表面の偏光膜の吸収軸と、別途配置する偏光膜16の吸収軸とを互いに平行にして配置する。
【0030】
光学フィルム1は、主には位相差層14の光学特性、及び必要により透明フィルム10の光学特性がさらに組み合わされて、λ/4板として機能する。光学フィルム1の面内遅相軸は、偏光膜16の吸収軸と45°で交差させて配置され、光学フィルム1は、偏光膜16と組み合わせされることで、円偏光板として機能する。表示パネル18は、後方に配置されている光源(図示しない)から入射する光の透過率を制御することで画像を表示し、当該画像は、その視認側表面に配置される偏光膜16及び光学フィルム1によって、円偏光画像に変換される。円偏光画像を、アクティブ方式又はパッシブ方式の円偏光眼鏡を介して、観察者が観察し、3D画像として認識する。
【0031】
光学フィルム1の構成部材である透明フィルム10、配向膜12及び位相差層14の面内の平均屈折率は、
位相差層14<配向膜12<透明フィルム10
の関係を満足しているので、位相差層14と配向膜12との界面で干渉が起こり、その干渉が複数組み合わされることで、数nmの周期の干渉のうねりが生じる。これが、黒表示時又は電源Off時に微細なちらつきとなって観察者に認識される。光学フィルム1では、配向膜12の光学膜厚が、270×N−150±75nm(1≦N≦8を満たす自然数)の範囲内になっているので、干渉の強弱のうねりの弱くなる位置が、照明として用いられている三波長光源の輝線とほぼ一致している。それにより、干渉のうねりの強弱の程度が軽減され、微細なちらつきが生じるのを抑制することができる。
【0032】
図3及び図4に、本発明の光学フィルムの他の例の断面模式図を示す。なお、図1中に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図3に示す光学フィルム1’は、透明フィルム10の裏面(即ち、配向膜12及び位相差層14が配置されていない側の面)に、ハードコート層20を有する例である。図4に示す光学フィルム1”は、ハードコート層20のさらに外側表面に、低屈折率層22を有する例である。光学フィルム1’及び1”を偏光膜とともに表示パネルの視認側表面に配置する場合は、図2に示す通り、位相差層14の表面を偏光膜の表面と貼合して積層する。
【0033】
光学フィルム1’及び1”は、ハードコート層20を有するので、外部からの物理的衝撃に対する耐性が改善されている。また、光学フィルム1”は、さらに低屈折率層22を有しているので、外光の映り込みを軽減することができ、画像表示性能のさらなる改善に寄与する。反射防止性の表面フィルムを得るための光学設計から、光学フィルム1’及び1”において、ハードコート層20と透明フィルム10の面内の平均屈折率の関係は
ハードコート層20>透明フィルム10
を満足するのが好ましく、また光学フィルム1”において、ハードコート層20と低屈折率層22の面内の平均屈折率の関係は、
ハードコート層20>低屈折率層22
を満足するのが好ましい。
【0034】
光学フィルム1’及び1”の好ましい例は、透明フィルム10の膜厚が10μm〜150μmであり、位相差層14の膜厚が0.5μm〜4μmであり、ハードコート層及び低屈折率層の膜厚が0.4〜35μmであり、面内の平均屈折率の関係が、
位相差層14>配向膜12>透明フィルム10
を満足し、且つ位相差層14と配向膜12の面内平均屈折率差、及び配向膜12と透明フィルムの面内平均屈折率差が、それぞれ0.02以上の関係を満足し、及び
配向膜12の光学膜厚が1200nm±75nm(より好ましくは、1200nm±50nm、さらに好ましくは、1200nm±25nm)の範囲内である例である。この例では、ハードコード層20>透明フィルム10
の関係を満足するのが好ましい。
【0035】
図1〜図4中、位相差層14は、単独で又は透明フィルム10とともに、λ/4層としての光学特性を示すのが好ましい。アクティブ円偏光眼鏡方式に利用される態様では、位相差層14は、一様な位相差層であり、図5(a)及び(b)に示す通り、その面内遅相軸aを、偏光膜16の吸収軸pと直交にして配置する。図5の左右方向を表示面左右方向とした場合に、図5(a)に示す様に、位相差層14の面内遅相軸aが画面45°(又は135°)の方向であって、偏光膜16の吸収軸pを画面左右方向又は上下方向にしてもよいし、また、図5(b)に示す様に、位相差層14の面内遅相軸aが画面左右方向(又は上下方向)であって、偏光膜16の吸収軸pを画面45°方向又は135°方向にしてもよい。
【0036】
また、パッシブ円偏光眼鏡方式に利用される態様では、位相差層14は、パターンλ/4層であるのが好ましい。一例は、図6(a)及び(b)に示す様に、互いに面内遅相軸が直交し、且つ面内レターデーションがλ/4である第1及び第2の位相差領域14a及び14bのストライプ状のパターンが、交互に配置されたパターンλ/4層である。各位相差領域14a及び14bのそれぞれの面内遅相軸a及びbの方向は、図6(a)に示す様に、表示面左右方向に対して±45°の方向であっても、図6(b)に示す様に、表示面左右方向に対して、それぞれ0°及び90°の方向であってもよい。アクティブ円偏光眼鏡方式と同様、図6(a)及び(b)に例示する様に、偏光膜16とは、その面内遅相軸a及びbを、偏光膜16の吸収軸pと直交にして配置する。
【0037】
本発明は、本発明の光学フィルムと偏光膜とを有する偏光板にも関する。図2に示す様に、該偏光板は、表示パネルの視認側表面に、偏光膜を表示パネル側にして配置される。当該偏光板は、円偏光板、楕円偏光板、及び直線偏光板のいずれであってもよい。3D画像表示装置に利用する態様では、円偏光板が好ましく、本発明の光学フィルムはλ/4板であるのが好ましい。
【0038】
本発明は、本発明の光学フィルムと、表示パネルとを少なくとも有する画像表示装置にも関する。本発明の光学フィルムが位相差板である態様では、図2に示す様に、直線偏光膜とともに、表示パネルの視認側表面に配置され、表示パネルが表示する画像を、円偏光又は楕円偏光画像に変換する。観察者は、これらの円偏光又は楕円偏光画像を、アクティブ方式の偏光眼鏡(例えば円偏光眼鏡)等の偏光板を介して観察し、立体画像として認識する。又は、本発明の光学フィルムが、パターン位相差板である態様では、図2に示す様に、直線偏光膜とともに、表示パネルの視認側表面に配置され、表示パネルが表示する画像を、右眼用及び左眼用の互いに逆向きの円偏光又は楕円偏光画像に変換する。観察者は、これらの円偏光又は楕円偏光画像を、パッシブ方式の偏光眼鏡(例えば円偏光眼鏡)等の偏光板を介して観察し、立体画像として認識する。
【0039】
本発明では、表示パネルについてはなんら制限はない。例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであっても、プラズマディスプレイパネルであってもよい。いずれの態様についても、種々の可能な構成を採用することができる。また、液晶パネル等は、視認側表面に画像表示のための偏光膜を有するので、本発明の光学フィルムを単独で、液晶パネルの視認側表面に配置されている偏光膜の表面に積層してもよい。
【0040】
表示パネルの一例は、透過モードの液晶パネルであり、一対の偏光膜とその間に液晶セルとを有する。偏光膜のそれぞれと液晶セルとの間には、通常、視野角補償のための位相差フィルムが配置される。液晶セルの構成については特に制限はなく、一般的な構成の液晶セルを採用することができる。液晶セルは、例えば、対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。液晶セルの駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。
【0041】
本発明は、本発明の立体画像表示装置と、該立体用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システムにも関する。立体用画像表示装置の視認側外側に配置される前記偏光板の一例は、観察者が装着する偏光眼鏡である。観察者は、立体画象表示装置が表示する右眼用及び左眼用の偏光画像を円偏光又は直線偏光眼鏡を介して観察し、立体画像として認識する。偏光眼鏡はアクティブ方式であってもパッシブ方式であってもよい。
【0042】
以下、本発明の光学フィルムの作製に用いられる種々の部材等について詳細に説明する。
本発明の光学フィルムは、透明フィルムの一方の面上に、第1の層及び第2の層を有し、面内の平均屈折率の大きさが
第2の層>第1の層>透明フィルム、
を満足し、且つ第1の層と第2の層の面内平均屈折率差、及び第1の層と透明フィルムの面内平均屈折率差がそれぞれ0.02以上を満足する光学フィルムである。第1の層及び第2の層は、屈折率に関して上記関係を満足する限り特に制限はない。本発明の効果は、第1の膜厚が0.05〜1.4μm程度、第2の層の膜厚が0.5〜4μm程度の態様において効果がある。前記範囲の厚みの層は、有機材料の塗布により安定的に形成できるので、第1及び第2の層は、塗布により形成された有機材料を含む層であるのが好ましい。
【0043】
本発明の光学フィルムの一態様は、透明フィルムの一方の面上に、第1の層として配向膜、及び第2の層として、配向状態に固定された液晶化合物を含有する位相差層を有する態様である。この態様の光学フィルムは、位相差層の光学特性、又は位相差層と透明フィルムの光学特性の組み合わせに基づく光学特性を示す。用途に応じて、好ましい光学特性は異なるが、表示パネルの視認側表面に偏光膜とともに配置されて、円偏光板又は楕円偏光板として機能するためには、Re(550)は80〜200nmであり、且つRth(550)は−100〜200nmであるのが好ましい。特に円偏光板として機能するためには、本発明の光学フィルムはλ/4板であるのが好ましく、当該態様では、Re(550)は115〜160nm、且つRth(550)は−50〜100nmであるのが好ましい。
【0044】
<透明フィルム>
本発明の光学フィルムが有する、透明フィルムの厚みが、10〜150μmであると、本発明の効果が特に顕著になるので好ましい。より好ましくは、10〜85μmである。透明フィルムの光学特性については特に制限はない。用途に応じて、種々の光学特性のフィルムを用いることができる。低レターデーションのポリマーフィルムを用いてもよく、具体的には、Reの絶対値が50nm以下のフィルムを用いてもよい。勿論、透明フィルムとして、位相差フィルムを用いてもよい。
【0045】
本発明に使用可能な透明フィルムを形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0046】
また、前記フィルムの材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0047】
また、前記フィルムの材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。
【0048】
前記透明フィルムの製法については特に制限はなく、溶液製膜法であっても溶融製膜法であってもよい。また、レターデーションの調整のために延伸処理が施された延伸フィルムを用いてもよい。
【0049】
上記例示されたポリマーフィルムの面内の平均屈折率は、一般的には1.47〜1.6程度である。
【0050】
<第1の層>
本発明の光学フィルムの一態様は、第1の層として、配向膜を有する。配向膜の材料については特に制限はないが、ポリマー等の有機材料を主成分として含む配向膜が好ましい。配向膜の材料の例には、変性又は未変性のポリビニルアルコール、アクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマーが含まれる。これらの材料を主成分として含む層は、面内の平均屈折率が1.48〜1.62程度であり、膜厚を0.05μm〜1.4μm程度で形成すれば、本発明において第1の層に要求される条件を満足する光学膜厚の範囲内となる。上記範囲の膜厚の層は、塗布により安定的に形成することができる。
【0051】
<第2の層>
本発明の光学フィルムの一態様は、第2の層として、液晶化合物を含有する位相差層を有する。液晶化合物は配向状態に固定されているのが好ましい。一例は、重合性液晶化合物を含有する重合性組成物の配向を、重合反応により硬化させて形成される位相差層である。当該位相差層は、液晶化合物の配向に由来する位相差を示す。
【0052】
使用する液晶化合物については特に制限はない。液晶化合物は、その分子の形状に応じて、棒状液晶化合物及び円盤状液晶化合物に分類される。本発明では、いずれを用いてもよい。例えば、棒状液晶化合物については、その長軸を層面に対して水平にして配向させ、その状態に固定することで、及び円盤状液晶化合物については、その円盤面を層面に対して垂直にして配向させ、その状態に固定することで、λ/4層等、Reが任意の範囲の位相差層を形成することができる。
【0053】
液晶化合物を利用して形成される位相差層の面内遅相軸は、第1の層として形成される配向膜に対して施された配向処理の方向によって制御することができる。一例は、配向膜の表面に施されるラビング処理であり、一般的には、液晶化合物の分子は、その長軸を、当該ラビング処理の方向に水平に又は直交にして配向する。また、他の例は、光配向膜に対する光照射処理である。照射される光の偏光方向に応じて、又は光照射の方向に応じて、配向能が発現された光配向膜を利用して、液晶化合物の配向を制御し、遅相軸を所望の方向に制御してもよい。また、液晶化合物とともに添加剤として配向制御剤を使用して、配向制御剤によって、液晶化合物の配向を制御してもよい。これらについては、従来、光学補償フィルムの作製や、液晶セルの液晶層の作製に利用されている技術を、種々利用することができる。
【0054】
第2の層は、パターン位相差層であってもよく、その態様では、第1の層である配向膜についても、マスクラビングや、マスク露光処理された、パターン配向膜を利用するのが好ましい。また、パターン印刷等の技術を利用して、パターン位相差層を形成してもよい。
【0055】
液晶化合物の配向を固定してなる層は、面内の平均屈折率が1.5〜1.65程度であり、透明フィルム及び第1の層として形成される配向膜との関係で、面内の平均屈折率が上記関係を満足するものは種々存在する。
【0056】
第2の層の厚みが、0.5〜4μmであると、本発明の効果が顕著になるので好ましく、
0.9〜1.8μmであるのがより好ましい。この範囲の膜厚の層は、液晶組成物を塗布することにより安定的に形成することができる。
【0057】
<表面層>
本発明の光学フィルムは、透明フィルムの他方の面(即ち、第1の層及び第2の層が配置されていない側の面)上に、1以上のハードコート層を有していてもよい。但し、透明フィルムの他方の面上に配置される層の面内屈折率が、反射防止性の表面フィルムを得るための光学設計から
ハードコート層>透明フィルム
の関係を満足するのが好ましい。ハードコート層の面内の平均屈折率は、一般的には、1.48〜2程度である。
【0058】
また、ハードコート層の厚みは、充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚みは、0.4〜35μmであるのが好ましく、5〜20μmであるのがより好ましい。
【0059】
本発明の光学フィルムは、前記ハード層のさらに外側表面上に、ハードコート層と比較して、面内の平均屈折率が小さい、低屈折率層を有していてもよい。低屈折率層を積層することで、外光の映り込みを軽減でき、表示性能をより改善できるので好ましい。低屈折率層の面内の平均屈折率が、1.3〜1.47程度であると、この効果を得ることができる。但し、この範囲に限定されるものではない。
【0060】
低屈折率層のみを塗設した構成であっても反射率を低下させることができるが、さらに、屈折率の高い高屈折率層と、屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて反射防止性を高めてもよい。構成例としては、ハードコート層側から順に、高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(下層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に有することが好ましく、例えば、特開平8−122504号公報、特開平8−110401号公報、特開平10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の構成が挙げられる。また、膜厚変動に対するロバスト性に優れる3層構成の反射防止フィルムは特開2008−262187号公報に記載されている。上記3層構成の反射防止フィルムは、画像表示装置の表面に設置した場合、反射率の平均値を0.5%以下とすることができ、映り込みを著しく低減することができ、立体感に優れる画像を得ることができる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層、帯電防止性のハードコート層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報、特開2007−264113号公報等)等が挙げられる。
【0061】
ハードコート層や低屈折率層を有する場合の具体的な層構成の例を以下に示す。
・ハードコート層
・低屈折率層
・ハードコート層/低屈折率層
・ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
・ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
【0062】
<偏光膜>
本発明では、偏光膜として、一般的な直線偏光膜を用いることができる。偏光膜は延伸フィルムからなっていても、塗布により形成される層であってもよい。前者の例には、ポリビニルアルコールの延伸フィルムをヨウ素又は二色性染料等で染色したフィルムが挙げられる。後者の例には、二色性液晶性色素を含む組成物を塗布して、所定の配向状態に固定した層が挙げられる。
なお、本明細書では、「偏光膜」という場合は、直線偏光膜を意味するものとする。
【0063】
<液晶セル>
本発明の画像表示装置に利用される液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【0064】
<立体画像表示システム用偏光板>
本発明の立体画像表示システムでは、特に3D映像とよばれる立体画像を視認者に認識させるため、偏光板を通して画像を認識する。偏光板の一態様は、偏光眼鏡である。本発明の光学フィルムが、λ/4板であって、偏光膜とともに円偏光画像を形成する態様では、円偏光眼鏡を用いる。円偏光眼鏡はアクティブ方式のシャッター眼鏡であっても、パッシブ方式の眼鏡であってもよい。
【実施例】
【0065】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0066】
実施例及び比較例において、Re(550)、及びRth(550)は、特に断りがない限り、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値である。屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価した。
【0067】
(実施例1〜37及び比較例1〜26の光学フィルムの作製)
<液晶性化合物を含む光学異方性層の形成>
<<アルカリ鹸化処理>>
セルロースアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム社製)を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した
(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0068】
<アルカリ溶液組成>
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
【0069】
<配向膜の形成>
上記のように鹸化処理した長尺状のセルロースアセテートフィルムに、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥し、下記表に記載の厚さの配向膜をそれぞれ形成した。配向膜の平均屈折率は1.53であった。
なお、配向膜の厚みは、配向膜形成時のワイヤーバー種及び塗布液の濃度を適宜調整することで、下記表に記載の厚さに調整した。
【0070】
────────────────────────────────────
配向膜塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
光重合開始剤(イルガキュア2959、チバ・ジャパン製) 0.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0071】
【化1】

【0072】
<ディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層の形成>
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は時計回りに45°の方向とした。
【0073】
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液Aを上記作製した配向膜上にワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し厚さ1.6μmの光学異方性層を形成した。光学異方性層の平均屈折率は1.6であった。
【0074】
────────────────────────────────────
光学異方性層塗布液(A)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――───
下記のディスコティック液晶化合物 91質量部
アクリレートモノマー *1 5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 0.5質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.2質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP3) 0.1質量部
メチルエチルケトン 189質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――───
*1:アクリレートモノマーは、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)を使用した。
【0075】
【化2】

【0076】
作製した光学フィルムは、550nmにおけるRe(550)が125nm、Rth(550)が−3nmであった。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は反時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶の分子が、その円盤面をフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
【0077】
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液(固形分濃度58質量%)を調製した。
溶剤 酢酸メチル 36.2質量部
溶剤 メチルエチルケトン 36.2質量部
(a)モノマー:PETA 77.0質量部
(b)モノマー:ウレタンモノマー 20.0質量部
光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
3.0質量部
レベリング剤(SP-13) 0.02質量部
【0078】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
【0079】
【化3】

【0080】
【化4】

【0081】
【化5】

【0082】
(低屈折率層用塗布液の調製)
各成分を下記の割合で混合し、MEK/MMPG−ACの85/15混合物(質量比)に溶解して固形分5質量%の低屈折率層塗布液を調製した。
低屈折率層塗布液の組成
下記のパーフルオロオレフィン共重合体 15質量部
DPHA 7質量部
ディフェンサMCF−323 5質量部
下記の含フッ素重合性化合物 20質量部
中空シリカ粒子固形分として 50質量部
イルガキュア127 3質量部
【0083】
使用した化合物を以下に示す。
【0084】
【化6】

【0085】
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
ディフェンサMCF−323:フッ素系界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製
イルガキュア127:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製
中空シリカ:中空シリカ粒子分散液(平均粒子サイズ45nm、屈折率1.25、表面をアクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理、MEK分散液濃度20%)
MEK:メチルエチルケトン
MMPG−Ac:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0086】
(ハードコート層及び低屈折率層の形成)
上記光学フィルムの光学異方性層が塗設されていない側の支持体表面に、前記ハードコート層用塗布液をダイコーターを用いて塗布した(固形分塗布量:12g/m2)。100℃で60秒乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層付き光学フィルムを作製した。このハードコート層の上に、上記低屈折率層用塗布液を塗布した。低屈折率層の乾燥条件は70℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量300mJ/cm2の照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.34、膜厚は95nmであった。なお、使用したセルロールアシレートフィルム「TD80UL」の40℃90%RHでの24時間あたりの透湿量は、430g/m2/dayであった。
【0087】
この様にして、下記表に示す通り、配向膜の厚みがそれぞれ異なる実施例1〜37及び比較例1〜26の光学フィルムをそれぞれ作製した。
【0088】
(実施例38、比較例27及び比較例30の光学フィルムの作製)
実施例21、比較例11及び比較例16の光学フィルムそれぞれの作製において、それぞれハードコート層を形成した後、上記中屈折率層用塗布液Mn−1を塗布した。乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。中屈折率層の屈折率は1.62、膜厚は60nmであった。
続いて、形成した中屈折率層の上に、上記高屈折率層用塗布液Hn−1を塗布した。乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。高屈折率層の屈折率は1.72、膜厚は110nmであった。
続いて、形成した高屈折率層の上に、上記と同様にして低屈折率層用塗布液を塗布し、低屈折率層を形成した。以上のように、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された、実施例38、比較例27及び比較例30の光学フィルムをそれぞれ作製した。
【0089】
(実施例39、比較例28及び比較例31の光学フィルムの作製)
実施例21、比較例11及び比較例16の光学フィルムそれぞれの作製において、それぞれハードコート層を形成した状態のフィルムを、実施例39、比較例28及び比較例31の光学フィルムとした。
【0090】
(実施例40、比較例29及び比較例32の光学フィルムの作製)
実施例21、比較例11及び比較例16の光学フィルムそれぞれの作製において、それぞれ光学異方性層を形成した状態の光学フィルムを、実施例40、比較例29及び比較例32の光学フィルムとした。
【0091】
(実施例41の光学フィルムの作製)
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT1)の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、固形分濃度22質量%のセルロースアセテート溶液(ドープA)を調製した。
[セルロースアセテート溶液(ドープA)の組成]
アセチル置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
紫外線吸収剤(チヌビン328 チバ・ジャパン製) 0.9質量部
紫外線吸収剤(チヌビン326 チバ・ジャパン製) 0.2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
【0092】
上記ドープAに平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)をセルロースアセテート100質量部に対して0.02質量添加したマット剤入りドープBを調製した。ドープBはドープAと同じ溶剤組成で固形分濃度が19質量%になるように調節した。
【0093】
ドープAを主流とし、マット剤入りドープBを最下層及び最上層になるようにして、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムをはがし140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフィルムT1を作製した。マット剤入りの最下層及び最上層はそれぞれ厚みが3μmに、主流は厚みが144μmになるように流量を調節した。
【0094】
得られた長尺状のセルロースアセテートフィルムT1の幅は2300mmであり、厚さは150mであった。また、波長550nmにおける面内レターデーション(Re)は6nm、厚さ方向のレターデーション(Rth)は88nmであった。
【0095】
実施例21の光学フィルムの作製において、セルロースアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム社製)をセルロースアセテートフィルムT1とした以外は、実施例21の光学フィルムと同様にして、実施例41の光学フィルムを作製した。
【0096】
(実施例42〜46の光学フィルムの作製)
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT2〜T4)の作製>
セルロースアセテートフィルムT1の作製において、主流の厚みを34μm〜94μmに調整した以外は、セルロースアセテートフィルムT1と同様にして、セルロースアセテートフィルムT2〜T4をそれぞれ作製した。
【0097】
得られたセルロースアセテートフィルムT2〜T4の厚さは40〜100μmであった。また、波長550nmにおける面内レターデーション(Re)は125nm、厚さ方向のレターデーション(Rth)は21〜57nmであった。
【0098】
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT5、T6)の作製>
セルロースアセテートフィルムT1の作製において、セルロースアセテート溶液(ドープA)をガラス板上に厚みが10μm〜20μmになるようにダイコーターを用いて塗布した以外は、セルロースアセテートフィルムT1と同様にして、セルロースアセテートフィルムT5及びT6をそれぞれ作製した。
【0099】
実施例41の光学フィルムの作製において、セルロースアセテートフィルムT1をセルロースアセテートフィルムT2〜T6とした以外は、実施例41の光学フィルムと同様にして、実施例42〜46の光学フィルムをそれぞれ作製した。
【0100】
(比較例33〜38の光学フィルムの作製)
実施例41〜46の光学フィルムそれぞれの作製において、配向膜の厚みを695μmにした以外は、実施例41〜46の光学フィルムと同様にして、比較例33〜38の光学フィルムをそれぞれ作製した。
【0101】
(比較例39〜44の光学フィルムの作製)
実施例41〜46の光学フィルムそれぞれの作製において、配向膜の厚みを870μmにした以外は、実施例41〜46の光学フィルムと同様にして、比較例39〜44の光学フィルムをそれぞれ作製した。
【0102】
(実施例47の光学フィルムの作製)
市販のセルロースアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム社製)をアルカリ溶液でケン化後、このフィルム上に下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで膜厚が785nmになるように塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜に長手方向に対して、45°方向にラビング処理を施して配向膜を形成した。なお、ケン化は、実施例1の光学フィルム作製時と同様の処理にて行った。
【0103】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0104】
【化7】

【0105】
次に、下記の組成の光学異方性層塗布液を、ワイヤーバーで塗布した。
────────────────────────────────────
光学異方性層塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の棒状液晶性化合物 1.8g
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 0.2g
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 0.06g
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.02g
メチルエチルケトン 3.9g
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0106】
【化8】

【0107】
これを125℃の恒温槽中で3分間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。次に、120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間UV照射し棒状液晶性化合物を架橋した。UV硬化時の温度を80℃として、光学異方性層を得た。光学異方性層の厚さは、1.81μm、光学異方性層の平均屈折率は1.55であった。その後、室温まで放冷した。このようにして、実施例47の光学フィルムを製作した。形成した光学異方性層の状態を調べ、塗布ムラ(塗布液が配向膜にはじかれて生じたムラ)や配向の乱れがないことを確認した。
実施例47の光学フィルムは、550nmにおけるRe(550)が125nm、Rth(550)が95nmであった。
【0108】
(比較例45及び46の光学フィルムの作製)
実施例47の光学フィルムの作製において、配向膜の厚みを695nm、及び875nmにそれぞれ変更した以外は、実施例47の光学フィルムの作製と同様にして、比較例45及び46の光学フィルムをそれぞれ作製した。
【0109】
(比較例47の光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、特開2002−98828号公報の記載に従って配向膜の屈折率1.49、配向膜の膜厚が800nmになるように配向膜を形成した以外は同様にして、比較例47の光学フィルムを作製した。
【0110】
(実施例48の光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、特開2002−98828号公報の記載に従って配向膜の屈折率1.5、配向膜の膜厚が800nmになるように配向膜を形成した以外は同様にして、実施例48の光学フィルムを作製した。
【0111】
(実施例49の光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、特開2002−98828号公報の記載に従って配向膜の屈折率1.51、配向膜の膜厚が800nmになるように配向膜を形成した以外は同様にして、実施例49の光学フィルムを作製した。
【0112】
(実施例50の光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、特開2002−98828号公報の記載に従って配向膜の屈折率1.54、配向膜の膜厚が780nmになるように配向膜を形成した以外は同様にして、実施例50の光学フィルムを作製した。
【0113】
(実施例51の光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、特開2002−98828号公報の記載に従って配向膜の屈折率1.57、配向膜の膜厚が760nmになるように配向膜を形成した以外は同様にして、実施例51の光学フィルムを作製した。
【0114】
(実施例52の光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、特開2002−98828号公報の記載に従って配向膜の屈折率1.58、配向膜の膜厚が760nmになるように配向膜を形成した以外は同様にして、実施例52の光学フィルムを作製した。
【0115】
(比較例48の光学フィルムの作製)
実施例1の光学フィルムの作製において、特開2002−98828号公報の記載に従って配向膜の屈折率1.59、配向膜の膜厚が760nmになるように配向膜を形成した以外は同様にして、比較例48の光学フィルム100を作製した。
【0116】
(実施例53の光学フィルムの作製)
(粘着剤層Aの作製)
以下の手順に従い、下記表のアクリレート系ポリマーを調製した。
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル100質量部、アクリル酸3質量部、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部を酢酸エチルと共に加えて固形分濃度30%とし窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させ、アクリレート系重合体溶液を得た。また、同様の操作にて、ブチルアクリレート、アクリル酸、ベンジルアクリレートを平均屈折率が1.53となるようにアクリレート系ポリマーを調整した。
【0117】
次に得られたアクリレート系ポリマーを、以下の手順に従い、粘着剤層Aを作製した。
アクリレート系ポリマー固形分100部あたり2部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートL)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1部、を加えシリコーン系剥離剤で表面処理したセパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布し150℃で3時間乾燥させ、粘着剤層Aを得た。粘着剤層の膜厚は20μmであった。
【0118】
(ハードコート層及び低屈折率層の形成)
ガラス板上に、実施例1の光学フィルム作製に使用したハードコート層用塗布液をダイコーターを用いて塗布した(固形分塗布量:12g/m2)。100℃で60秒乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層(反射防止層)付きガラス板を作製した。このハードコート層の上に、実施例1の光学フィルム作製に使用した低屈折率層用塗布液を塗布した。低屈折率層の乾燥条件は70℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量300mJ/cm2の照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.34、膜厚は95nmであった。以上のように、ハードコート層、低屈折率層がこの順で積層されたガラス板を作製した。
【0119】
(配向膜及び光学異方性層の形成)
特開2002−98828号公報の記載に従って配向膜の屈折率1.56、配向膜の膜厚が770nmとなるように配向膜をガラス基板上に形成した。その後、実施例1の光学フィルムの作成時と同様にして、配向膜上に光学異方性層を形成した。
【0120】
ガラス板上に形成したハードコート層、低屈折率層をガラスから剥離した。この層を上記粘着剤Aを用いて、市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14」((株)オプテス製)に貼合した。その後、ガラス板上に形成した配向膜、光学異方性層をガラスから剥離し、ハードコート層、低屈折率層を貼合した反対側の面に、上記粘着剤A用いて、ノルボルネン系ポリマーフィルムに貼合し、実施例53の光学フィルムの作製を作製した。
実施例53の光学フィルムの層構成は、低屈折率層/ハートコート層/粘着剤層/ノルボルネン系ポリマーフィルム/粘着剤層/配向膜/位相差層という構成を有している。
【0121】
(比較例49の光学フィルムの作製)
実施例53の光学フィルムの作製において、塗布条件を調整することで、配向膜の膜厚を680nmにいた以外は、実施例53の光学フィルムの作製と同様にして、比較例49の光学フィルムを作製した。
【0122】
(比較例50の光学フィルムの作製)
実施例53の光学フィルムの作製において、塗布条件を調整することで、配向膜の膜厚を850nmにした以外は、実施例53の光学フィルムの作製と同様にして、比較例50の光学フィルムを作製した。
【0123】
(画像表示装置用偏光板の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
アルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 Re(550)=50nm、Rth(550)=125nm)を用意し、片面を前記VA用位相差フィルムで、もう片面を作製した実施例又は比較例の各光学フィルムを、粘着剤及び接着剤を用いて貼合し、画像表示装置用偏光板を作製した。
なお、各光学フィルムの光学異方性層を偏光膜側にして貼合した。
【0124】
(画像表示装置の作製)
SAMSUNG社製UN40C7000WFを用意し、フロント偏光板をはがし、作製した画像表示装置用偏光板のVA用位相差フィルムを液晶セル側にして粘着剤及び接着剤を用いて貼合した。
【0125】
(微細干渉ムラの評価)
作製した各画像表示装置について、微細干渉ムラを、以下の方法により6段階評価した。
各表示装置の正面から三波長蛍光灯(ナショナルパルック蛍光灯FL20SS・EX−D/18)でサンプルを照らし、干渉ムラを観察し、下記の基準により評価した。
6 :微細干渉ムラが全く見えない
5 :微細干渉ムラがほとんど見えない
4 :微細干渉ムラが部分的に弱く見える所がある
3 :微細干渉ムラが弱く見える(ここまでが実用上の許容レベル)
2 :微細干渉ムラが見える(実用不可のレベル)
1 :微細干渉ムラが強く見える
【0126】
結果を下記表に示す。なお、下記表中、「屈折率」は、「面内平均屈折率」を意味する。また、表中、「円盤状」は、上記所定の円盤状液晶化合物を、「棒状」は、上記所定の棒状液晶化合物を意味する。また、光学膜厚の欄の括弧内に、上記関係式を満足するNの値を示す。
【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
【表7】

【0133】
【表8】

【0134】
【表9】

【符号の説明】
【0135】
1、1’、1” 光学フィルム
10 透明フィルム
12 配向膜
14 位相差層
16 偏光膜
18 表示パネル
20 ハードコート層
22 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜厚が10μm〜150μmの透明フィルム、該透明フィルムの一方の面上に透明フィルム側から、第1の層及び第2の層を有する光学フィルムであって、
面内の平均屈折率の大きさが
第2の層>第1の層>透明フィルム
を満足し、且つ第1の層と第2の層の面内平均屈折率差、及び第1の層と透明フィルムの面内平均屈折率差が、それぞれ0.02以上の関係を満足し、
前記第1の層の光学膜厚Dが、
270×N−150−75nm≦D≦270×N−150+75nm(1≦N≦8を満たす自然数)
を満足する光学フィルム。
【請求項2】
第1の層が配向膜であり、及び第2の層が液晶化合物を含む位相差層である請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
透明フィルムの他方の面上に少なくとも1層のハードコード層を有する請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
膜厚が10μm〜150μmの透明フィルム、該透明フィルムの一方の面上に透明フィルム側から、配向膜、及び膜厚0.5μm〜4μmの液晶化合物を含む位相差層を、他方の面上に少なくとも1層のハードコート層を有する光学フィルムであって、
面内の平均屈折率の大きさが
位相差層>配向膜>透明フィルム、
を満足し、且つ位相差層と配向膜の面内平均屈折率差が、及び配向膜と透明フィルムの面内平均屈折率差がそれぞれ、0.02以上の関係を満足し、
前記配向膜の光学膜厚Dが
1200−75nm≦D≦1200+75nm
である光学フィルム。
【請求項5】
前記透明フィルムが、セルロースアシレートフィルム又は環状オレフィン系ポリマーフィルムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記ハードコード層の前記透明フィルムの反対側面上に、前記透明フィルムより屈折率の低い低屈折率層を有する請求項3〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記ハードコード層と前記低屈折率層との間に、前記透明フィルムより屈折率の高い少なくとも1層の高屈折率層を有する請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項8】
550nmにおける面内レターデーションRe(550)が80〜200nmであり、波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションRth(550)が−100〜200nmである請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記液晶化合物が円盤状液晶化合物又は棒状液晶化合物である請求項2〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記液晶化合物を含む位相差層が、面内遅相軸及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1及び第2の位相差領域が交互に配置されたパターン位相差層である請求項2〜9のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光膜とを少なくとも有する偏光板。
【請求項12】
前記光学フィルムが有する第2の層が位相差層であり、該位相差層の面内遅相軸と、前記偏光膜の吸収軸とが45°で交差する請求項11に記載の偏光板。
【請求項13】
表示パネルと、その視認側表面に配置される請求項11又は12の偏光板とを有する画像表示装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像表示装置と、
該画像表示装置に表示される映像を透過して、3D画像として視認させるための偏光膜とを少なくとも有する3D画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−237928(P2012−237928A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108101(P2011−108101)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】