説明

光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置

【課題】冷却ローラの表面への添加剤付着による汚れを防止し、フィルム表面が白濁する汚れの発生を抑制した光学フィルムの製造方法、該製造方法で製造された光学フィルム、該光学フィルムを保護フィルムに用いた偏光板及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】一つの添加剤の融点をMpとしたとき、フィルムが最初に接触する第1冷却ロール5に接触している間のフィルムの温度が、Mp+3℃以上であり、第1冷却ロール5を離れて、次に接触する第2冷却ロール7に接触している間のフィルムの温度が、Mp−3℃以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法、光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ、TV等の画像表示装置には、光学フィルムが多く用いられている。例えば、液晶画像表示装置(LCD)に用いられる液晶セルの両側に設けられている偏光板には、偏光子の両面に貼り付けられる保護フィルムとして用いられている。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、LCDにおいては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。よって、偏光子の両面に貼り付けられる保護フィルムに要求される光学性能も高くなってきている。
【0003】
このような光学フィルムは、これまで、専ら溶液流延法によって製造されてきた。溶液流延法とは、樹脂を溶媒に溶解した溶液を流延してフィルム形状を得た後、溶媒を蒸発・乾燥させてフィルムを得るといった製膜方法である。溶液流延法で製膜したフィルムは平面性が高いため、これを用いてムラのない高画質な画像表示装置を得ることができる。
【0004】
しかし溶液流延法は多量の有機溶媒を必要とし、環境負荷が大きいことも課題となっていた。そこで近年光学フィルムの製造方法として、樹脂を溶融して製膜する溶融流延法の試みが行われている。
【0005】
例えば、保護フィルムに用いられるセルロースアシレートフィルムの場合について見てみると、主要な樹脂としてのセルロールアシレートを溶融して製膜している。セルロールアシレートの溶融物には、製膜性改良や偏光板の保護フィルムとしての特性改良のためにいろいろな添加剤が加えられている。例えば、可塑剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤、マット剤等を加え、フィルム特性の改良を行っている。
【0006】
しかし、このような光学フィルムの構成材料を高温で溶融し、流延ダイのリップ部から冷却ロール上に押し出して冷却固化し、フィルムを製造する溶融流延法を用いた場合、構成材料に含まれる添加剤が、冷却ロールの表面に付着して汚れとなり、フィルム表面に転移して表面が白濁するという問題が発生した。
【0007】
このような問題に対して、特許文献1においては、冷却ロールの表面に付着した汚れを清掃する方法をして、繊維のシート状集合体を冷却ロールに接触させて除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−129866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法を用いても十分に汚れを無くすことができず、フィルムの表面に白濁した汚れが発生するという問題があった。
【0010】
よって、本発明の目的は、冷却ローラの表面への添加剤付着による汚れを防止し、フィルム表面が白濁する汚れの発生を抑制した光学フィルムの製造方法、該製造方法で製造された光学フィルム、該光学フィルムを保護フィルムに用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は、以下の手段により解決することができる。
【0012】
1.樹脂と、該樹脂のガラス転移温度よりも低い温度の融点を有する添加剤との混合物とを溶融して流延ダイよりフィルム状に押出す押出工程と、該押出工程で押し出された前記樹脂を溶融したフィルムを複数の冷却ロールにより冷却固化させる冷却工程とを備えた光学フィルムの製造方法において、
前記添加剤のうち少なくとも一つの添加剤の融点をMpとしたとき、
前記押出工程で押し出されたフィルムが最初に接触する第1冷却ロールに接触している間の前記フィルムの温度が、Mp+3℃以上であり、
前記第1冷却ロールを離れて、次に接触する第2冷却ロールに接触している間の前記フィルムの温度が、Mp−3℃以下であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0013】
2.前記第1冷却ロールと前記第2冷却ロールとの間に冷却手段を備え、
該冷却手段が、前記第1冷却ロールから離間し、前記第2冷却ロールに接触するまでの前記フィルムを冷却することを特徴とする前記1に記載の光学フィルムの製造方法。
【0014】
3.前記冷却手段は、
冷却風を前記フィルムの表面に送風する手段であることを特徴とする前記2に記載の光学フィルムの製造方法。
【0015】
4.前記添加剤が、ベンゾトリアゾール系化合物であることを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0016】
5.前記樹脂が、セルロースエステル又はシクロオレフィン樹脂であることを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0017】
6.前記1から5の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
【0018】
7.前記6に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして有していることを特徴とする偏光板。
【0019】
8.前記7に記載の偏光板を有していることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、流延ダイから押し出され、第1冷却ロールと接触している間のフィルムの温度が、添加剤の融点Mp+3℃以上で、第2冷却ロールと接触している間のフィルムの温度が、添加剤の融点Mp−3℃以下の温度としたので、第1冷却ロール及び第2冷却ロールへの添加剤付着が抑制される。よって、フィルム表面が白濁する汚れの発生を抑制した光学フィルムの製造方法、該製造方法で製造された光学フィルム、該光学フィルムを保護フィルムに用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の全体構成を示す概略フローシートである。
【図2】冷却ロール周辺の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の光学フィルムの製造方法について、実施形態を用いて説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の全体構成を示す概略フローシートである。押出工程として、原料樹脂などのフィルム構成材料を混合した後、押出し機1を用いて、流延ダイ4から第1冷却ロール5上に溶融したフィルム構成材料を押し出し、冷却工程として、第1冷却ロール5の表面に接触させるとともに、さらに、第2冷却ロール7、第3冷却ロール8の合計3本の冷却ロールの表面に順に接触させて、冷却固化してフィルム10とする。ついで、剥離工程として、剥離ロール9によってフィルム10を剥離し、ついで延伸工程として、縦延伸装置12aによりロール間の速度差によって縦延伸を行い、その後、横延伸装置12bによりフィルムの両端部を把持して幅方向に延伸し、その後、巻き取り工程として、巻取り装置16により巻き取る。
【0024】
本発明の光学フィルムの製造方法においては、樹脂と、該樹脂のガラス転移温度よりも低い温度の融点を有する添加剤との混合物とを溶融して流延ダイよりフィルム状に押出す押出工程と、該押出工程で押し出された前記樹脂を溶融したフィルムを複数の冷却ロールにより冷却固化させる冷却工程とを備え、樹脂のガラス転移温度よりも低い温度の融点を有する添加剤のうち少なくとも一つの添加剤の融点をMp(以後、添加剤の融点Mpと呼ぶ。)としたとき、押出工程で押し出されたフィルムが最初に接触する第1冷却ロールに接触している間のフィルムの温度が、Mp+3℃以上であり、第1冷却ロールを離れて、次に接触する第2冷却ロールに接触している間のフィルムの温度が、Mp−3℃以下であることを特徴とするものである。
【0025】
図2は、本実施形態の冷却ロール周辺の概略断面図であり、流延ダイ4から押し出されたフィルム10が第1冷却ロールに接触した後、タッチロール6と第1冷却ロール5とで挟圧される。このフィルム10が第1冷却ロールに接触している間のフィルム10の温度は、添加剤の融点Mpよりも3℃以上高い温度に設定されている。その後、第1冷却ロール5を離れて、第2冷却ロール7に接触するまでの間で、冷却手段である冷却風送風ノズル17より、フィルム幅全域に冷却風を当てて、フィルム10が第2冷却ロール7に接触している間のフィルム10の温度が、添加剤の融点Mpよりも3℃以上低い温度になるように調整される。その後、フィルム10は、更に第3冷却ロール8で冷却されて、剥離ロール9で剥離され、後段の工程に搬送される。本実施形態では、タッチロール6を用いて、フィルム10を挟圧して、表面を平坦になる用にしているが、特にタッチロール6は、無くても良い。また、冷却ロールを3本供えているが、特に3本に限定するものではない。
【0026】
冷却風送風ノズル17は、フィルム10幅全域に渡る開口部を有し、この開口部から所定の温度に調整された気体を所定の風速でフィルム10の表面に当てるものであり、図では紙面上部から当てているが、紙面下部の方からフィルム10に当てるようにしても良い。
【0027】
このようにフィルム10が冷却ロールに接触する際に、フィルム10の温度を、第1冷却ロール5に接触している間は添加剤の融点Mp+3℃以上、第1冷却ロール5を離れて、次の第2冷却ロール7に接触している間はMp−3℃以下の温度にすることにより、フィルム10と接触する第1冷却ロール5及び第2冷却ロール7の表面に添加剤が転移しにくくなり、表面を汚しにくくなる。これは、フィルム10の温度が添加剤の融点Mp+3℃未満で、且つ、Mp−3℃を超える範囲では、添加剤の粘性が冷却ロールの表面に転移しやすい粘性を示す状態にあるためと考えられ、Mp+3℃以上の温度では、添加剤は液状で低粘性な状態になって、冷却ロール表面に付着しにくく、また、Mp−3℃以下では、固体状で高粘性な状態になって、冷却ロール表面に付着しにくいと考えられる。
【0028】
よって、冷却ロールの表面への添加剤の転移による汚れが抑制され、冷却ロールの表面を清掃する時間間隔を長くすることができ、生産性を上げることができるとともに、表面の汚れのない、高品質な光学フィルムを製造することができる。
【0029】
また、図2のように、削除第1冷却ロール5に接触している間のフィルム10の温度を、添加剤の融点Mp+3℃以上となるように、第1冷却ロール5の表面温度を制御手段で制御し、また、冷却手段である冷却風送風ノズル17によりフィルム10の温度をMp−3℃にした後、第2冷却ロール7とフィルム10が接触している間のフィルム10の温度をMp−3℃以下になるように、第2冷却ロール7の表面温度を制御手段で制御している。
【0030】
また、フィルム10の冷却手段に冷却風を用いるのが、フィルムを所定温度まで容易に冷却できるので好ましいが、特に冷却風に限定するものではなく、冷却された部屋を通過させることにより、フィルム10を冷却するようにしても良い。
【0031】
本発明の樹脂のガラス転移温度よりも低い温度の融点を有する添加剤とは、フィルム10が含有するものであれば良いが、特に、冷却ロールとフィルム10が接触して、冷却ロールの表面を、主に汚す添加剤であれば、本発明の効果が顕著に表れて好ましい。具体的には、低分子量の紫外線吸収剤を上げることができる。その中でも、特に、ベンゾトリアゾール系化合物を上げることができる。ベンゾトリアゾール系化合物についての詳細は、後述する。
【0032】
また、本発明の光学フィルムに用いる樹脂としては、特に限定するものではないが、セルロースエステル又はシクロオレフィン樹脂であることが、本発明の効果が顕著に表れて好ましい。
【0033】
以下、本発明の光学フィルムの製造方法について、本発明に好ましく用いられるセルロースエステルフィルム及びシクロオレフィン樹脂フィルムの製造を例に詳細に説明する。
(セルロースエステルフィルム)
まず、セルロースエステルフィルムの構成材料について説明する。
(セルロースエステル)
セルロースエステルとしては、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特に炭素数が6以下の低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0034】
水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。さらに別の置換基が置換してもよい。同じ置換度である場合、前記炭素数が多いと複屈折性が低下するため、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。前記セルロースエステルとしての炭素数が2〜4であることが好ましく、炭素数が2〜3であることがより好ましい。
【0035】
具体的には、セルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルを用いることができる。
【0036】
なお、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。本発明において好ましく用いられるセルロースエステルとしては、特にセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレートが好ましく用いられる。
【0037】
本発明に好ましいセルロースアセテートフタレート以外のセルロースエステルとしては、下記式(1)および(2)を同時に満足するものが好ましい。
【0038】
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦Y≦1.5
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基、もしくはその混合物の置換度である。
【0039】
また、目的に叶う光学特性を得るために置換度の異なる樹脂を混合して用いても良い。混合比としては100:0〜50:50(質量比)が好ましい。
【0040】
この中で特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。セルロースアセテートプロピオネートでは、1.0≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦1.5、2.0≦X+Y≦3.0であることが好ましい。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0041】
本発明に用いられるセルロースエステルの重量平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに75000〜280000のものが好ましく用いられる。
【0042】
次に、セルロースエステルフィルムに含有させる添加剤について説明する。
(可塑剤)
セルロースエステルフィルムに含有させる可塑剤としては、下記のものが挙げられる。
【0043】
多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤はセルロースエステルと親和性が高く好ましい。
【0044】
多価アルコールエステル系の一つであるエチレングリコールエステル系の可塑剤:具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ−4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造が、樹脂の一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0045】
多価アルコールエステル系の一つであるグリセリンエステル系の可塑剤:具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン−4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン−3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造が樹脂の一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0046】
その他の多価アルコールエステル系の可塑剤としては、具体的には特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
【0047】
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更に多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、樹脂の一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0048】
上記多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤の中では、アルキル多価アルコールアリールエステルが好ましく、具体的には上記のエチレングリコールジベンゾエート、グリセリントリベンゾエート、ジグリセリンテトラベンゾエート、特開2003−12823号公報の段落32記載例示化合物16が挙げられる。
【0049】
多価カルボン酸エステル系の一つであるジカルボン酸エステル系の可塑剤:具体的には、ジドデシルマロネート(C1)、ジオクチルアジペート(C4)、ジブチルセバケート(C8)等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ−4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ−2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ−4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、樹脂の一部、或いは規則的に樹脂へペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0050】
その他の多価カルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的にはトリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ−3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ−4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルトキシレート、ヘキサ−4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また1置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が樹脂の一部、或いは規則的に樹脂へペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0051】
上記多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の中では、ジアルキルカルボン酸アルキルエステルが好ましく、具体的には上記のジオクチルアジペート、トリデシルトリカルバレートが挙げられる。
【0052】
更にリン酸エステル系可塑剤、炭水化物エステル系可塑剤、樹脂可塑剤等が挙げられる。
【0053】
リン酸エステル系の可塑剤:具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等のリン酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等のリン酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
【0054】
またエチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸エステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
【0055】
更にリン酸エステルの部分構造が、樹脂の一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、リン酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
【0056】
次に、炭水化物エステル系可塑剤について説明する。炭水化物とは、糖類がピラノース又はフラノース(6員環又は5員環)の形態で存在する単糖類、二糖類又は三糖類を意味する。炭水化物の非限定的例としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、セロビオース、マンノース、キシロース、リボース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、ソルボース、セロトリオース及びラフィノースなどが挙げられる。炭水化物エステルとは、炭水化物の水酸基とカルボン酸が脱水縮合してエステル化合物を形成したものを指し、詳しくは、炭水化物の脂肪族カルボン酸エステル、或いは芳香族カルボン酸エステルを意味する。脂肪族カルボン酸として、例えば酢酸、プロピオン酸等を挙げることができ、芳香族カルボン酸として、例えば安息香酸、トルイル酸、アニス酸等を挙げることができる。炭水化物は、その種類に応じた水酸基の数を有するが、水酸基の一部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成しても、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成してもよい。本発明においては、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成するのが好ましい。
【0057】
炭水化物エステル系可塑剤として、具体的には、グルコースペンタアセテート、グルコースペンタプロピオネート、グルコースペンタブチレート、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエート等を好ましく挙げることができ、この内、サッカロースオクタアセテートがより好ましい。
【0058】
樹脂可塑剤:具体的には、脂肪族炭化水素系樹脂、脂環式炭化水素系樹脂、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの共重合体(例えば、共重合比1:99〜99:1の間の任意の比率)等のアクリル系樹脂、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は1,000〜500,000程度が好ましく、特に好ましくは、5000〜200000である。1000以下では揮発性に問題が生じ、500000を超えると可塑化能力が低下し、セルロースエステルフィルムの機械的性質に悪影響を及ぼす。これら樹脂可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記樹脂を2種以上併用して用いてもよい。
【0059】
なお本発明のセルロースエステルフィルムは、着色すると光学用途として影響を与えるため、好ましくは黄色度(イエローインデックス、YI)が3.0以下、より好ましくは1.0以下である。黄色度はJIS−K7103に基づいて測定することができる。
【0060】
可塑剤は、前述のセルロースエステル同様に、製造時から持ち越される、或いは保存中に発生する残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去する事が好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸、及び水としては、0.01〜100ppmであることが好ましく、セルロース樹脂を溶融製膜する上で、熱劣化を抑制でき、製膜安定性、フィルムの光学物性、機械物性が向上する。
(酸化防止剤)
セルロースエステルは、溶融製膜が行われるような高温環境下では熱だけでなく酸素によっても分解が促進されるため、本発明のセルロースエステルフィルムにおいては安定化剤として酸化防止剤を使用することも好ましい。
【0061】
本発明において有用な酸化防止剤としては、酸素による溶融成形材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも有用な酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でも、特にフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、ラクトン系化合物が好ましい。
【0062】
ヒンダードアミン化合物(HALS)としては、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が好ましい。市販品としては、LA52(旭電化社製)を挙げることができる。
【0063】
ラクトン系化合物としては、特開平7−233160号公報、特開平7−247278号公報記載の化合物が好ましい。
【0064】
これらの安定剤は、それぞれ1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、セルロースエステル100質量部に対して、通常0.001〜10.0質量部、好ましくは0.01〜5.0質量部、更に好ましくは、0.1〜3.0質量部である。
【0065】
これらの化合物を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、溶融成型時の熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。
【0066】
酸化防止剤の添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜3質量部である。
(酸掃去剤)
酸掃去剤とは製造時から持ち込まれるセルロースエステル中に残留する酸(プロトン酸)をトラップする役割を担う剤である。また、セルロースエステルを溶融すると樹脂中の水分と熱により側鎖の加水分解が促進し、CAPならば酢酸やプロピオン酸が生成する。酸と化学的に結合できればよく、エポキシ、3級アミン、エーテル構造等を有する化合物が挙げられるが、これに限定されるものでない。
【0067】
具体的には、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸掃去剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸掃去剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニル樹脂組成物において、及び塩化ビニル樹脂組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。
(紫外線吸収剤)
外線吸収剤は、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。
【0068】
また、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2003−113317号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0069】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5′−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0070】
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバ・ジャパン社製)、LA31(旭電化社製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。
【0071】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
本発明においては、紫外線吸収剤は0.1〜5質量%添加することが好ましく、さらに0.2〜3質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
【0073】
またこれらのベンゾトリアゾール構造やトリアジン構造が、樹脂の一部、あるいは規則的に樹脂へペンダントされていてもよく、可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤等の他の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0074】
従来公知の紫外線吸収性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、RUVA−93(大塚化学製)を単独重合させた樹脂及びRUVA−93と他のモノマーとを共重合させた樹脂等が挙げられる。具体的には、RUVA−93とメチルメタクリレートを3:7の比(質量比)で共重合させたPUVA−30M、5:5の比(質量比)で共重合させたPUVA−50M等が挙げられる。更には、特開2003−113317号公報に記載の樹脂等が挙げられる。
(粘度低下剤)
溶融粘度を低減する目的として、水素結合性溶媒を添加する事ができる。水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることができるような有機溶媒、すなわち、結合モーメントが大きく、かつ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列できるような有機溶媒をいう。これらは、セルロース樹脂の分子間水素結合よりもセルロースとの間で強い水素結合を形成する能力を有するもので、本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロース樹脂単独のガラス転移温度よりも、水素結合性溶媒の添加によりセルロース樹脂組成物の溶融温度を低下する事ができる、または同じ溶融温度においてセルロース樹脂よりも水素結合性溶媒を含むセルロース樹脂組成物の溶融粘度を低下する事ができる。
【0075】
水素結合性溶媒としては、例えば、アルコール類:例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、グリセリン等、ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン等、カルボン酸類:例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等、エーテル類:例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等、ピロリドン類:例えば、N−メチルピロリドン等、アミン類:例えば、トリメチルアミン、ピリジン等、等を例示することができる。これら水素結合性溶媒は、単独で、又は2種以上混合して用いることができる。これらのうちでも、アルコール、ケトン、エーテル類が好ましく、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、オクタノール、ドデカノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランが好ましい。さらに、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランのような水溶性溶媒が特に好ましい。ここで水溶性とは、水100gに対する溶解度が10g以上のものをいう。
(リターデーション制御剤)
セルロースエステルフィルムにおいて配向膜を形成して液晶層を設け、セルロースエステルフィルムと液晶層由来のリターデーションを複合化して光学補償能を付与した偏光板加工を行ってもよい。リターデーションを制御するために添加する化合物は、欧州特許第911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション制御剤として使用することもできる。また2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物が特に好ましい。
(マット剤)
セルロースエステルフィルムには、滑り性を付与するためにマット剤等の微粒子を添加することができ、微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。マット剤はできるだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
【0076】
表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の二次粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の二次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、セルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させる為に好ましく用いられる。微粒子のセルロースエステル中の含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。
【0077】
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
【0078】
上記マット剤として用いられるフィルム中の微粒子の存在は、別の目的としてフィルムの強度向上のために用いることもできる。また、フィルム中の上記微粒子の存在は、本発明のセルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステル自身の配向性を向上することも可能である。
(高分子材料)
セルロースエステルフィルムはセルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーを適宜選択して混合してもよい。前述の高分子材料やオリゴマーはセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合する目的は、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上するために行う意味を含んでいる。
【0079】
このようにセルロースエステルフィルムの原料樹脂に各種の添加剤を加えたものを図1に示す溶融流延法を用いた製膜装置により製膜し、セルロースエステルフィルムを製造する。
(押出工程)
原材料となるセルロース樹脂と、その他必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましい。混合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー一般的な混合機を用いることができる。混合したフィルム構成材料を押出し機1を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルター2などで濾過し、異物を除去する。可塑剤などの添加剤を予め混合しない場合は、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー3などの混合装置を用いることが好ましい。
【0080】
押出し機1から押し出され、金属フィルター2でろ過されたフィルム構成材料は、流延ダイ4に送られ、流延ダイ4のスリットからフィルム状に押し出される。
(冷却工程)
押出工程で流延ダイ4から押し出されたフィルム状の樹脂は、第1冷却ローラ5とタッチロール6とに挟圧されて、冷却されると共に表面が平坦化される。
【0081】
タッチロール6は、可撓性の金属スリーブの内部に弾性ローラを配したものである。タッチロール6が第1冷却ロール5に向けて押圧されると、弾性ローラが金属スリーブを第1冷却ロール5に押しつけ、金属スリープ及び弾性ローラは第1冷却ロール5の形状になじんだ形状に対応しつつ変形し、第1冷却ロールとの間にニップを形成する。金属スリーブの内部で弾性ローラとの間に形成される空間には、冷却液が流される。このタッチロール6は不図示の付勢手段により第1冷却ロール5に向けて付勢される。タッチロール6によってダイラインのノイズを良好に解消するためには、タッチロール6がフィルムを挟圧するときのフィルムの粘度が適切な範囲であることが重要となる。また、セルロース樹脂は温度による粘度の変化が比較的大きいことが知られている。従って、タッチロール6がフィルムを挟圧するときの粘度を適切な範囲に設定するためには、タッチロール6がフィルムを挟圧するときのフィルムの温度を適切な範囲に設定することが重要となる。それでフィルム10のガラス転移温度をTgとしたとき、フィルム10がタッチロール6に挟圧される直前のフィルム10の温度Tを、Tg+80℃<T<Tg+140℃を満たすように設定すればよい。フィルム温度TがTgよりも低いとフィルムの粘度が高すぎて、ダイラインを矯正できなくなる。逆に、フィルムの温度TがTg+140℃よりも高いと、フィルム表面とロールが均一に接着せず、やはりダイラインを矯正することができない。好ましくはTg+100℃<T<Tg+130℃、さらに好ましくはTg+110℃<T<Tg+130℃である。タッチロール6がフィルムを挟圧するときのフィルムの温度を適切な範囲に設定するには、流延ダイ4から押し出された溶融物が第1冷却ロール5に接触する位置P1から第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップの、第1冷却ロール5の回転方向に沿った長さLを調整すればよい。
【0082】
第1ロール5、第2冷却ロール7、第3ロール8に好ましい材質は、炭素鋼、ステンレス鋼、樹脂、などが挙げられる。また、表面精度は高くすることが好ましく表面粗さとして0.3S以下、より好ましくは0.01S以下とする。
【0083】
流延ダイ4からフィルム10は、第1ロール(第1冷却ロール)5、第2冷却ロール7、及び第3冷却ロール8に順次密着させて搬送しながら冷却固化させ、未延伸のフィルム10を得る。
【0084】
第1ロール5、第2冷却ロール7、第3ロール8のそれぞれの表面温度は、冷却ロールの内部に水や油などの熱媒体を流すことにより調整することができる。
【0085】
フィルム10に添加される添加剤の中の、冷却ロールに転移しやすい紫外線吸収剤の融点をMpとすると、Mpよりも高い温度で溶融され押し出されたフィルム10が第1冷却ロール5と接触している間の温度をMp+3℃より高い温度に維持するために、第1冷却ロール5の表面温度は、Mp+3℃以上の温度に調整される。このようにすることで、フィルム10と第1冷却ロール5とが接触している間のフィルム10の温度を添加剤の融点Mpより3℃以上高くすることができ、添加剤が第1冷却ロール5の表面に転移して汚す程度を抑制することができる。
【0086】
次に第1冷却ロール5の表面から離れたフィルム10は、第2冷却ロール7に接触する前に、冷却手段である冷却風送風ノズル17により冷却風を受けて、フィルム10の温度がMp−3℃以下になるように冷却される。
【0087】
また、第2冷却ロール7の表面温度は、フィルム10が接触している間、フィルム10の温度がMp−3℃以下を維持するように、調整される。このようにすることで、添加剤が第2冷却ロール5の表面に転移して汚す程度を抑制することができる。
【0088】
第3冷却ロール8の表面温度は、第2冷却ロールの表面温度より低い、所定の温度に調整すればよく、第3冷却ロール8と接触しているフィルム10の温度は添加剤の融点Mp−3℃以下になっている。
(剥離工程)
次に、第3冷却ロール8で所定温度に冷却されたフィルム10は、剥離工程として、剥離ロール9によって第3冷却ロール8から剥離される。
(延伸工程)
冷却固化され剥離された未延伸のフィルム10は、ダンサーロール(フィルム張力調整ロール)11を経て縦延伸機12aに導き、そこで縦延伸される。続いて横延伸機12bに導き、そこでフィルム10を横方向(幅方向)に延伸する。この延伸により、フィルム中の分子が配向される。
【0089】
フィルムを縦延伸する方法は、2本のロール間の速度差により延伸する方法を好ましく用いることができる。
【0090】
フィルムを幅方向に延伸する方法は、公知のテンターなどを好ましく用いることができる。
【0091】
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とする光学フィルムに要求される特性を有するように適宜調整すればよい。
【0092】
光学フィルムとして位相差フィルムを製造し、さらに偏光板保護フィルムの機能を複合させる場合、屈折率制御を行う必要が生じるが、その屈折率制御は延伸操作により行うことが可能であり、また延伸操作が好ましい方法である。以下、その延伸方法について説明する。
【0093】
位相差フィルムの延伸工程において、セルロース樹脂の1方向に1.0〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで、必要とされるリターデーションRo及びRtを制御することができる。ここで、Roとは面内リターデーションを示し、面内の長手方向MDの屈折率と幅方向TDの屈折率との差に厚みを乗じたもの、Rtとは厚み方向リターデーションを示し、面内の屈折率(長手方向MDと幅方向TDの平均)と厚み方向の屈折率との差に厚みを乗じたものである。
【0094】
延伸は、例えばフィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅方向に対して、逐次または同時に行うことができる。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となりフィルム破断が発生してしまう場合がある。
【0095】
互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率nx、ny、nzを所定の範囲に入れるために有効な方法である。ここで、nxとは長手MD方向の屈折率、nyとは幅手TD方向の屈折率、nzとは厚み方向の屈折率である。
【0096】
例えば溶融流延方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、nzの値が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制、あるいは幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅方向で屈折率に分布が生じることがある。この分布は、テンター法を用いた場合に現れることがあり、フィルムを幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅方向の位相差の分布を少なくできる。
【0097】
互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。位相差フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
【0098】
セルロース樹脂フィルムの膜厚変動は、±3%、さらに±1%の範囲とすることが好ましい。
(巻き取り工程)
延伸工程の後、フィルムの端部をスリッター13により製品となる幅にスリットして裁ち落とし、エンボスリング14及びバックロール15よりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施す。その後、巻き取り工程として、巻取り機16によって巻き取り、セルロースアシレートフィルム(元巻き)Fを得る。ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、フィルム製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
〈シクロオレフィン樹脂フィルム〉
まず、シクロオレフィン樹脂フィルムの構成材料について説明する。
【0099】
本発明に用いられるシクロオレフィン樹脂は脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。
【0100】
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合または共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好適である。
【0101】
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
【0102】
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cmの重合圧力で重合させる。
【0103】
本発明に用いるシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合または共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
【0104】
或いは、シクロオレフィン樹脂として、下記のノルボルネン系樹脂も挙げられる。ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好ましく利用出来るが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
本発明においては、前記ノルボルネン系樹脂の中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0106】
【化1】

【0107】
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
【0108】
また、前記ノルボルネン系樹脂の中でも、下記構造式(V)または(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
【0109】
【化2】

【0110】
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
【0111】
ここで、上記A、B、C及びDは特に限定されないが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、または、少なくとも2価の連結基を介して有機基が連結されてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、AまたはBとCまたはDは単環または多環構造を形成してもよい。ここで、上記少なくとも2価の連結基とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子に代表されるヘテロ原子を含み、例えばエーテル、エステル、カルボニル、ウレタン、アミド、チオエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記連結基を介し、上記有機基は更に置換されてもよい。
【0112】
また、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
【0113】
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、質量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0114】
合成した樹脂の分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加反応により飽和させる場合には、耐光劣化や耐候劣化性などの観点から、水素添加率を90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上とする。
【0115】
この他、本発明で用いられるシクロオレフィン樹脂としては、特開平5−2108号公報段落番号[0014]〜[0019]記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂、特開2001−277430号公報段落番号[0015]〜[0031]記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、特開2003−14901号公報段落番号[0008]〜[0045]記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、特開2003−139950号公報段落番号[0014]〜[0028]記載のノルボルネン系樹脂組成物、特開2003−161832号公報段落番号[0029]〜[0037]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−195268号公報段落番号[0027]〜[0036]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−211589号公報段落番号[0009]〜[0023]脂環式構造含有重合体樹脂、特開2003−211588号公報段落番号[0008]〜[0024]記載のノルボルネン系重合体樹脂若しくはビニル脂環式炭化水素重合体樹脂などが挙げられる。
【0116】
具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
【0117】
本発明で使用されるシクロオレフィン樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
【0118】
また、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.01〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時の樹脂の分解や着色を効果的に防止することが出来る。
【0119】
シクロオレフィン樹脂フィルムには、フィルムの特性を改良するために、セルロースエステルフィルムと同様に種々の添加剤を含有させている。
【0120】
このようなシクロオレフィン樹脂フィルムの構成材料を用いたシクロオレフィン樹脂フィルムの製造方法については、セルロースエステルフィルムと同様であるので、ここでは説明を省く。
【0121】
以上のように本発明の光学フィルムの製造方法を用いることにより、フィルムに添加された添加剤が、冷却ロールに転移しにくくなり、冷却ロール表面を汚す程度を抑制することができる。よって、冷却ロール表面の清掃回数を少なくすることができ、また、表面白濁のない品質の高い光学フィルムを製造できる。よって、本発明の光学フィルムを偏光板用の保護フィルムとして偏光板に用いることで、表示品質の高い液晶表示装置を得ることができる。
【0122】
また、本発明の光学フィルムの製造方法を用いて製造した光学フィルムは、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機EL表示装置等の各種表示装置に用いることができ、偏向板用の保護フィルムの他に位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルムとして用いることもできる。
【0123】
次に、本発明の光学フィルムを保護フィルムとして用いた偏光板及び該偏光板を用いた液晶表示装置について説明する。
(偏光板)
本発明の光学フィルムを偏光板用の保護フィルムとして用いる場合、偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明の光学フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
【0124】
もう一方の面には本発明の光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0125】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
【0126】
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
【0127】
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体または架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
【0128】
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
【0129】
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。
【0130】
また上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
(液晶表示装置)
本発明の光学フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することが出来るが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明に係る偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
【0131】
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。
【実施例】
【0132】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜3)
(ペレットの作成)
セルロースアセテートプロピオネート 100質量部
(アセチル基の置換度1.6、プロピオニル基の置換度1.2、数平均分子量86,000、温度100℃で3時間乾燥)
ペンタエリスリトールテトラベンゾエート 8.0質量部
IRGANOX1010(チバ・ジャパン(株)製) 0.50質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.20質量部
GSY−P101(堺化学工業(株)製) 0.25質量部
上記材料に、マット剤としてシリカ粒子(アエロジルR972V(日本アエロジル社製))0.05質量部、紫外線吸収剤として、TINUVIN928(融点Mp:116℃、チバ・ジャパン社製)0.5質量部を加え、窒素ガスを封入したV型混合機で30分混合した後、ストランドダイを取り付けた2軸押し出し機(PCM30(株)池貝社製)を用いて240℃で溶融させ、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作製した。この時のせん断速度は、25(/s)に設定した。
(フィルムの作製)
フィルムの製造は、図1に示す製造装置で行った。また、本実施例では、タッチロール6は使用しなかった。
【0133】
作製したペレット(水分率50ppm)を、1軸押出機において溶融させ、リーフディスク型金属フィルターを用いて加圧ろ過を行った。
【0134】
次に、流延ダイから溶融温度250℃でフィルム状に第1冷却ロール5上に溶融押し出しをした。第1冷却ロール5の表面温度は、樹脂であるセルロースアセテートプロピオネートのガラス転移温度174℃よりも低い温度の融点を有する添加剤の一つである紫外線吸収剤(TINUVIN928)の融点Mp+3℃より高い温度とした。次に、第1冷却ロール5から剥離したフィルム10に、冷却風送風ノズル17から冷却風を当て、フィルム10の温度を添加剤である紫外線吸収剤(TINUVIN928)の融点Mp−3℃より低い温度とした。その後、第2冷却ロール7に接触させ、フィルム10を添加剤である紫外線吸収剤(TINUVIN928)の融点Mp−3℃より低い温度に冷却し、更に第3冷却ロールで所定の温度に冷却した後、剥離ロール9で剥離した。
【0135】
第1冷却ロール5、第2冷却ロール7及び第3冷却ロール8は直径40cmの炭素鋼製とし、表面にハードクロムメッキを施した。又、内部には温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて、ロール表面温度を制御した。
【0136】
第1冷却ロール5に接触する直前のフィルム温度Tf1(℃)、第1冷却ロール5の表面温度Tr1(℃)、冷却風送風ノズル17で冷却され第2冷却ロールに接触する直前のフィルム温度Tf2(℃)、第2冷却ロール7の表面温度Tr2をそれぞれ表1に示し、実施例1〜3の光学フィルムの製造条件とした。
【0137】
製膜スピードは、20m/minとした。また融点の測定は、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に基づき、示差走査熱量測定器セイコーインスツルメンツ(株)製DSC−6600を用い、DSCの測定パンに試料を10mg入れ、これを窒素気流中で10℃/分で30℃から200℃まで昇温し、現れた吸熱ピークの頂点における温度を融点とした。
【0138】
得られたフィルムを延伸装置であるテンターに導入し、巾方向に160℃で1.3倍延伸し、ロール状に巻きとって光学フィルムを作製した。
(比較例1)
比較例1としては、実施例1において、第1冷却ロール5の表面温度を添加剤である紫外線吸収剤(TINUVIN928)の融点Mp+3℃より低い、118℃とした他は、実施例1と同様にした。
(比較例2)
比較例2としては、実施例1において、冷却風送風ノズル17で、フィルム10を冷却した後のフィルム10の温度を紫外線吸収剤(TINUVIN928)の融点Mp+3℃未満で、Mp−3を越える範囲となる、116℃とした他は、実施例1と同様にした。
(比較例3)
比較例3としては、実施例1において、第1冷却ロール5の表面温度を添加剤である紫外線吸収剤(TINUVIN928)の融点Mp−3℃より低い、110℃とし、第2冷却ロール7の表面温度を紫外線吸収剤(TINUVIN928)の融点Mp−3℃より高い、114℃とした他は、実施例1と同様にした。
【0139】
第1冷却ロール5、第2冷却ロール7の表面温度は、ロールにフィルム10が最初に接する位置から回転方向に対して90°手前の位置のロール表面の温度を非接触温度計を用いて幅方向に10点測定した平均値を各ロールの表面温度とした。また、第1冷却ロール5及び第2冷却ロール7に接触する直前のフィルム温度も非接触温度計で幅方向に10点測定し、その平均値をフィルムの温度とした。
(評価)
光学フィルムを図1の製造装置で連続して作製し、目視によりフィルム表面の白濁状態を観察し、白濁が観察されるまでの連続製膜時間で評価した。評価ランクは、50時間を超えるものを○、50時間以下を×とした。50時間以下になると、装置を頻繁に止めて、冷却ロールの表面を清掃する必要があり、生産性が極端に落ちて製造装置としては問題がある。
【0140】
評価結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1の結果から、第1冷却ロール5がフィルム10と接触している間のフィルム10の温度を添加剤の融点Mp+3℃以上、且つ、第2冷却ロール7とフィルム10とが接触している間のフィルム10の温度を添加剤の融点Mp−3℃以下の温度とすることにより、第1冷却ロール5及び第2冷却ロール7の表面の汚れが少なく、光学フィルムの表面の白濁の発生を抑制できることがわかる。
(偏光子の作製)
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に搬送方向に延伸して偏光子を作製した。
【0143】
偏光子の両側に実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムを、アルカリケン化処理面を偏光子側とし完全鹸化型ポリビニルアルコール5質量%水溶液を接着剤として両面から貼合し、偏光板用保護フィルムが貼合された偏光板を作製した。
(液晶表示装置としての特性評価)
32型TFT型カラー液晶ディスプレイベガ(ソニー社製)の偏光板を剥がし、上記で作製した各々の偏光板を液晶セルのサイズに合わせて断裁した。液晶セルを挟むようにして、前記作製した偏光板2枚を偏光板の偏光軸がもとと変わらないように互いに直交するように貼り付け、32型TFT型カラー液晶ディスプレイを作製し、セルロースアシレートフィルムの偏光板としての特性を評価したところ、本発明の光学フィルムであるセルロースアシレートフィルムから作製した偏光板は、白濁が無く、優れた表示性を示した。これにより、画像表示装置用の偏光板として優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0144】
1 押出し機
2 フィルター
3 スタチックミキサー
4 流延ダイ
5 第1冷却ロール
6 タッチロール
7 第2冷却ロール
8 第3冷却ロール
9 剥離ロール
11、13、14、15 搬送ロール
12a 縦延伸装置
12b 横延伸装置
10 フィルム
16 巻取り装置
17 冷却風送風ノズル17

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、該樹脂のガラス転移温度よりも低い温度の融点を有する添加剤との混合物とを溶融して流延ダイよりフィルム状に押出す押出工程と、該押出工程で押し出された前記樹脂を溶融したフィルムを複数の冷却ロールにより冷却固化させる冷却工程とを備えた光学フィルムの製造方法において、
前記添加剤のうち少なくとも一つの添加剤の融点をMpとしたとき、
前記押出工程で押し出されたフィルムが最初に接触する第1冷却ロールに接触している間の前記フィルムの温度が、Mp+3℃以上であり、
前記第1冷却ロールを離れて、次に接触する第2冷却ロールに接触している間の前記フィルムの温度が、Mp−3℃以下であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1冷却ロールと前記第2冷却ロールとの間に冷却手段を備え、
該冷却手段が、前記第1冷却ロールから離間し、前記第2冷却ロールに接触するまでの前記フィルムを冷却することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記冷却手段は、
冷却風を前記フィルムの表面に送風する手段であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記添加剤が、ベンゾトリアゾール系化合物であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂が、セルロースエステル又はシクロオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして有していることを特徴とする偏光板。
【請求項8】
請求項7に記載の偏光板を有していることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−228305(P2010−228305A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78725(P2009−78725)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】