説明

光学フィルム

【課題】耐熱性が良好で、耐溶剤性等物性のバランスに優れた光学フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】メタアクリル酸アルキルエステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の重量比が95/5〜99.9/0.1であるメタクリル系樹脂(B)を、イミド化剤で処理して得られるイミド化メタクリル系樹脂組成物を含有することを特徴とする光学フィルムで目的の組成物が提供される。本発明により得られる光学フィルムは耐熱性及び耐溶剤性など物性のバランスに優れた光学フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性・耐熱性に優れたイミド化メタアクリル系樹脂組成物を含有する光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコン、ワードプロセッサ、携帯電話、携帯情報端末等に代表されるように、近年、電子機器はますます小型化している。上記例示した電子機器のように表示装置を備える電子機器では、軽量かつコンパクトという特長を生かした液晶表示装置が多く用いられている。
【0003】
これら液晶表示装置には、その表示品位を保つために偏光フィルム等の各種フィルムが用いられている。さらに、これら液晶表示装置では、携帯情報端末や携帯電話向けに、該液晶表示装置をさらに軽量化するため、ガラス基板の代わりに樹脂フィルムまたはシート(以下、特別に記載しない限り、シートおよびフィルムの区別は行わず、フィルムと記載する)を用いた液晶表示装置も実用化されている。
【0004】
この場合、上記樹脂フィルムは、偏光を扱うため、光学的に透明であり、かつ複屈折が小さく、さらに、光学的に均質であることが求められる。つまり、液晶表示装置において、ガラス基板の代わりに用いられる樹脂フィルムには、複屈折と厚みとの積で表される位相差が小さいことが要求されることに加えて、外部の応力等によりフィルムの位相差が変化しにくいことが要求される。
【0005】
また、カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種撮影装置、CDやDVD等の光ピックアップ装置、プロジェクター等のOA機器等では、従来ガラスレンズが用いられていた。しかし、近年、これらの機器に用いられるレンズは、軽量化を目的として、樹脂レンズへの置き換えが進んでいる。
【0006】
このような樹脂レンズは、温度や湿気等の使用環境による歪みによる焦点距離のズレの発生や射出成形等の加工時の応力発生等による位相差の影響を受けやすい。そのため、樹脂レンズにおいても、液晶表示装置等に用いられる樹脂フィルムと同様に、外部応力により位相差が変化しにくいことが要求されている。
【0007】
ところで、液晶表示装置においては、上記樹脂フィルムとして、非晶性の熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが好適に用いられている。より具体的には、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のエンジニアリングプラスチックスや、トリアセチルセルロース等のセルロース類のプラスチックからなる樹脂フィルムを挙げることをできる。
【0008】
ポリメタクリル酸メチルを代表とする種々の透明樹脂は、ガラスと比較して成形性、加工性が良好で、割れにくい、さらに軽量、安価という特徴などから、液晶ディスプレイや光ディスク、ピックアップレンズなどへの展開が検討され、一部実用化されている。
【0009】
自動車用ヘッドランプカバーや液晶ディスプレイ用部材など、用途の拡大に従って、透明樹脂には耐熱性も求められるようになっている。ポリメタクリル酸メチルやポリスチレンは透明性が良好であり、価格も比較的安価である特徴を有しているものの、耐熱性が低いため、このような用途においては適用範囲が制限されている。
【0010】
そのためポリメタクリル酸メチルの耐熱性を改善する方法として、ポリメチルメタクリレートやポリメチルメタクリレート−スチレン共重合体に一級アミンを処理して、イミド化することで耐熱性を向上させるという技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これらのポリメチルメタクリレート等に一級アミンを処理して得られるイミド樹脂は透明性や耐熱性が良好であり、各種用途、例えば光学用途などで有効に使用できる可能性がある。しかしながら、このようにして得られたイミド化樹脂は、一般に耐熱性を上げると位相差が発現しやすくなり、光学用途では問題となることがあった。
【0011】
このような問題を回避する方法として、特定のスチレン量を有するポリメチルメタクリレート−スチレン共重合体に一級アミンを処理して、イミド化する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。本方法を用いると、イミド樹脂中のスチレン含量を調節することで、位相差を調整することが可能であり、ポリメチルメタクリレート−スチレン共重合体を原料として用いることで、偏光子保護フィルム及び位相差フィルム等の光学フィルムを製造できる。また、スチレンを含有しない、ポリメチルメタクリレートを一級アミンで処理して、イミド化する方法も提案されている(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,246,374号公報
【特許文献2】再公表特許WO2005/054311号公報
【特許文献3】WO2005/108438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、液晶表示装置などに用いられる光学フィルムは、ハードコート等の表面処理をする必要があることから耐溶剤性が求められている。特許文献5記載の方法で、グルタルイミドを含有する樹脂を製造すると、光学フィルムとした際、樹脂の耐溶剤性についてさらなる改善が求められていた。また、特許文献6のように、市販のポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体)を使用すると、イミド化時に分解が起こる場合があり、改善の余地があった。
【0014】
本発明は、耐熱性が良好で、耐溶剤性等物性のバランスに優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、メタアクリル酸アルキルエステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の重量比が95/5〜99.9/0.1であるメタクリル系樹脂を、イミド化剤で処理して得られるイミド化メタクリル系樹脂組成物が、上記目的を達成することを見いだし、発明を完成するに至った。
【0016】
即ち本発明は以下に関する。
【0017】
(i)イミド化メタクリル系樹脂100重量%中、一般式(1)で表される単位を15〜90重量%、芳香族ビニル単位を0.1〜5重量%含有するイミド化メタクリル系樹脂組成物を含有することを特徴とする光学フィルム。
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
(ii)メタアクリル酸アルキルエステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の重量比が95/5〜99.9/0.1であるメタクリル系樹脂(B)を、イミド化剤で処理して得られるイミド化メタクリル系樹脂組成物を含有することを特徴とする光学フィルム。
【0020】
(iii) (i)または(ii)記載の光学フィルムを用いることを特徴とする偏光子保護フィルム。
【0021】
(iv)前記式(1)で表される単位を15〜50重量%含有することを特徴とする光学フィルムを用いることを特徴とする(iii)記載の偏光子保護フィルム。
【0022】
(v)(i)または(ii)記載の光学フィルムを用いることを特徴とする位相差フィルム。
【0023】
(vi)前記式(1)で表される単位を40〜90重量%含有することを特徴とする(v)記載の位相差フィルム。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、耐熱性が良好で、耐溶剤性等物性のバランスに優れ、かつ、異物などの欠陥の少ない光学フィルムを提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
本発明は、メタアクリル酸アルキルエステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の重量比が95/5〜99.9/0.1であるメタクリル系樹脂(B)を、イミド化剤で処理して得られるイミド化メタクリル系樹脂組成物を含むことを特徴とする光学フィルムに関する。
【0027】
まず、本発明のイミド化メタクリル系樹脂組成物について説明する。
【0028】
イミド化メタクリル系樹脂組成物は、メタアクリル酸アルキルエステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の重量比が95/5〜99.9/0.1であるメタクリル系樹脂(B)を、イミド化剤で処理することにより得られるイミド化メタクリル系樹脂が主成分である。本明細書では特に断りのない限り、イミド化メタクリル系樹脂に添加剤などを配合したものをイミド化メタクリル系樹脂組成物と称する。イミド化メタクリル系樹脂組成物中のイミド化メタクリル系樹脂の割合は80〜100重量%であることが好ましく、90〜100重量%であることが好ましく、95〜100重量%であることが更に好ましい。
【0029】
(1)メタクリル系樹脂
本発明で用いられるメタクリル系樹脂(B)について、以下に詳述する。
【0030】
本発明で用いられるメタクリル系樹脂(B)は、メタクリル酸アルキルエステル単位を主成分とし、メタアクリル酸アルキルエステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の重量比が95/5〜99.9/0.1であるこのようなメタクリル系樹脂(B)は、原料となる単量体単位100重量%中、メタアクリル酸アルキルエステル単量体単位95〜99.9重量%と芳香族ビニル単量体単位5〜0.1重量%を含有する単量体混合物(A)を重合して得られる。
【0031】
本発明の単量体混合物(A)を構成するメタクリル酸アルキルエステル単量体単位としては、重合反応性やコストの点から、アルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等があげられ、これらの単量体は単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。これらのうち、コスト、物性の面からメタクリル酸メチルが好ましい。
【0032】
本発明の単量体混合物(A)を構成する芳香族ビニル単量体単位としては、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体があげられ、これらの単量体は単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。これらのうち、コスト、物性の面からスチレンが好ましい。
【0033】
また、本発明の単量体混合物(A)には、必要に応じて、これら単量体と共重合可能なエチレン系不飽和単量体等を共重合してもかまわない。
【0034】
本発明において用いられるメタクリル系樹脂(B)の製造方法は特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などが適用可能であるが、光学分野に用いる場合、不純物が少ないとの観点から、塊状重合法、溶液重合法が特に好ましい。
【0035】
本発明において用いられるメタクリル系樹脂(B)の製造においては、必要に応じて、開始剤、連鎖移動剤、重合溶剤等が用いられる。これらに、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。
【0036】
製造方法の一例として、特開昭57−149311、特開昭57−153009、特開平10−152505、特開2004−27191などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
(2)イミド化剤
本発明で使用されるイミド化剤は、メタクリル系樹脂(B)をイミド化することができれば特に制限されず、WO2005/054311記載のものがあげられる。例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミンが挙げられる。また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素の如き加熱により、これらのアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。これらのイミド化剤のうち、コスト、物性の面からメチルアミン、シクロヘキシルアミン、アンモニアが好ましく、中でもメチルアミンが特に好ましい。また、常温にてガス状のメチルアミンなどは、メタノールなどのアルコール類に溶解させた状態で使用してもよい。
【0038】
(3)イミド化メタクリル系樹脂
本発明のイミド化メタクリル系樹脂は、メタクリル系樹脂(B)を、公知の技術を用いてイミド化することにより得ることができる。
【0039】
すなわち、(1)押出機などを用い、溶融状態にあるメタクリル系樹脂(B)をイミド化剤と反応させたり(連続式反応)、(2)メタクリル系樹脂(B)を溶解できる、イミド化反応に対して非反応性溶媒を用いて、溶液状態のメタクリル系樹脂(B)にイミド化剤と反応させる(バッチ式反応)こと等により、得られる。
【0040】
押出機を用いる場合は、例えば単軸押出機、二軸押出機あるいは多軸押出機等があげられるが、メタクリル系樹脂(B)に対するイミド化剤の混合を促進できる押出機として、特に二軸押出機が好ましい。二軸押出機には非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、噛合い型異方向回転式が含まれる。噛合い型同方向回転式は、高速回転が可能であり、メタクリル系樹脂(B)に対するイミド化剤の混合を促進できるので好ましい。これらの押出機は、単独で用いても、直列につないでも構わない。
【0041】
押出機中でイミド化を行う場合は、例えば、原料であるメタクリル系樹脂(B)を押出機の原料投入部から投入し、該樹脂を溶融させ、シリンダ内を充満させた後、添加ポンプを用いてイミド化剤を押出機中に注入することにより、押出機中でイミド化反応を進行させることができる。
【0042】
この場合、押出機中での反応ゾーンの温度(樹脂温度)を180℃〜270℃にて行うことが好ましく、さらに200〜250℃にて行うことがより好ましい。反応ゾーンの温度(樹脂温度)が180℃未満では、イミド化反応がほとんど進行せず、耐熱性が低下する傾向にある。反応ゾーン温度が270℃を超えると、樹脂の分解が著しくなることから、得られるイミド化メタクリル系樹脂組成物から形成しうるフィルムの耐折曲性が低下する傾向がある。ここで、押出機中での反応ゾーンとは、押出機のシリンダにおいて、イミド化剤の注入位置から樹脂吐出口(ダイス部)までの間の領域をいう。
【0043】
押出機の反応ゾーン内での反応時間を長くすることにより、イミド化をより進行させることができる。押出機の反応ゾーン内の反応時間は10秒より長くするのが好ましく、さらには30秒より長くするのがより好ましい。10秒以下の反応時間ではイミド化がほとんど進行しない可能性がある。
【0044】
押出機での樹脂圧力は、大気圧〜50MPaの範囲内とすることが好ましく、さらには1MPa〜30MPaの範囲内が好ましい。1MPa未満ではイミド化剤の溶解性が低く、反応の進行が抑えられる傾向がある。また、50MPa以上では通常の押出機の機械耐圧の限界を越えてしまい、特殊な装置が必要となりコスト的に好ましくない。
【0045】
また、押出機を使用する場合は、未反応のイミド化剤や副生物を除去するために、大気圧以下に減圧可能なベント口を装着することが好ましい。
【0046】
本発明のイミド化には、押出機の代わりに、例えば、住友重機械工業(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に使用できる。
【0047】
イミド化方法の具体例としては、例えば、特開2008−273140、特開2008−274187記載の方法など公知の方法をあげることができる。
【0048】
本発明のイミド化メタクリル系樹脂組成物を含有することを特徴とする光学フィルムは、イミド化メタクリル系樹脂中の一般式(1)で表される単位及び芳香族ビニル単位の含有量を調節することで、得られる光学フィルムの配向複屈折を調節することができる。
【0049】
【化2】

【0050】
ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。
【0051】
前記式(1)として好ましくはR1、R2が水素またはメチル基であり、R3が水素、メチル基、ブチル基、又はシクロヘキシル基である。R1がメチル基であり、R2が水素であり、R3がメチル基である場合が特に好ましい。
【0052】
イミド化メタクリル系樹脂中の一般式(1)で表される単位及び芳香族ビニル単位の含有量を調節することで、得られる光学フィルムの配向複屈折を調節するとは、つまり、イミド化メタクリル系樹脂のイミド化率と、メタクリル系樹脂(B)中の芳香族ビニル単量体単位の割合を制御する必要がある。すなわち、メタクリル系樹脂(B)中の芳香族ビニル単量体単位の割合が大きくなると、イミド化メタクリル系樹脂の配向複屈折は負の側へ大きくなり、一方、イミド化メタクリル系樹脂のイミド化率が大きくなると、配向複屈折は正の側へ大きくなる。ここで、イミド化率とは、イミド化メタクリル系樹脂中の全カルボニル基中、イミドカルボニル基の占める割合である。
【0053】
本発明において、メタクリル系樹脂(B)中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、0.1重量%以上、5重量%以下である。芳香族ビニル単量体単位が5重量%より多い場合、イミド化メタクリル系樹脂組成物の耐溶剤性が低下し、芳香族ビニル単量体単位が0.1重量%未満となると、イミド化反応の反応率が低くなり、イミド化メタクリル系樹脂組成物の耐熱性が低下する。
【0054】
本発明の、イミド化メタクリル系樹脂のイミド化率は、10〜80%が好ましく、20〜80%がより好ましい。イミド化率が10%未満であると、得られる成形体の耐熱性が低下する傾向があり、イミド化率が80%を越えると、得られる成形体の透明性および耐折曲性が悪化する傾向がある。
【0055】
上記したメタクリル系樹脂(B)中の芳香族ビニル単量体単位の含有量、及び、イミド化メタクリル系樹脂中のイミド化率は求められる光学フィルムの物性に応じて適宜設定することが可能である。
【0056】
また、イミド化反応時に副生成物として生じるイミド化メタクリル系樹脂中のカルボキシル基等は、必要に応じてエステル化剤などによりエステル基等に変換してもよい。これにより光学フィルムを製造する際の樹脂の発泡が低減できる。
【0057】
エステル化剤としては、例えば、ジメチルカーボネート、2,2−ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル−t−ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ−N−ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0058】
イミド化メタクリル系樹脂のガラス転移温度は110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が110℃未満であると、高温環境下での樹脂の溶融等により得られる成形体もしくはフィルムにゆがみなどが生じ易く、安定した光学的特性が得られない傾向がある。メタクリル系樹脂(B)をイミド化剤によりイミド化する際には、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤などの耐候性安定剤や、触媒、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤、抗菌・脱臭剤等を、単独または2種以上組み合わせて、本発明の目的が損なわれない範囲で添加してもよい。また、これらの添加剤は、イミド化メタクリル系樹脂組成物を成形加工する際に添加することも可能である。
【0059】
また、本発明のイミド化メタクリル系樹脂組成物には、必要に応じて、ポリグルタルイミド、無水グルタル酸樹脂、ラクトン環化メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を配合することも可能である。ブレンドの方法は特に限定されず、公知の方法を用いることが可能である。
【0060】
(4)光学フィルムの製造
本発明で得られるイミド化メタクリル系樹脂組成物は、通常公知の方法を用いて光学フィルムに成形することができる。例えば、通常の溶融押出法であるインフレーション法やTダイ押出法、あるいはカレンダー法、更には溶剤キャスト法等により良好に加工される。また、必要に応じて、イミド化メタクリル系樹脂組成物からフィルムを成形する際、フィルム両面をロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、特に、ガラス転移温度以上の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、表面性のより優れたフィルムを得ることも可能である。また、目的に応じて、フィルムの積層成形や二軸延伸によるフィルムの改質も可能である。
【0061】
(5)光学フィルムの性質
本発明の光学フィルムは、その配向複屈折に応じて、低配向複屈折性を有するものと、高配向複屈折性を有するものに分類することができる。
【0062】
以下に、低配向複屈折性を有する光学フィルムについて説明する。低配向複屈折性を有する光学フィルムの一例としては、偏光子保護フィルムがあげられる。
【0063】
低配向複屈折性を利用する場合、用途によっては、フィルムの面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが要求されることがある。すなわち、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、フィルムの厚さをdとすると、
面内位相差 Re=(nx−ny)×d
及び
厚み方向位相差 Rth=|(nx+ny)/2−nz|×d
(||は絶対値を表す)
がともに小さいことを意味している(理想となる、3次元方向について完全光学等方であるフィルムでは、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthともに0となる。)。
【0064】
低配向複屈折性を有する光学フィルムは、フィルムの面内位相差が10nm以下であり、かつ、厚み方向位相差が20nm以下であることが好ましい。フィルムの面内位相差は、より好ましくは5nm以下である。厚み方向位相差は、より好ましくは10nm以下である。フィルムの面内位相差が10nmを超えたり、或いは厚み方向位相差が20nmを超える偏光子保護フィルムを偏光板として使用した場合、液晶表示装置においてコントラストが低下するなどの問題が発生する場合がある。
【0065】
本発明のイミド化メタクリル系樹脂組成物は、グルタルイミド単位の含有量を調節する事で実質的に配向複屈折を有さない特徴を付与する事も可能である(尚、必要に応じ、特定の配向複屈折に調整して使用することも可能である。)。配向複屈折とは所定の温度、所定の延伸倍率で延伸した場合に発現する複屈折の事をいう。本明細書中では、特にことわりのない限り、光学フィルムを形成するイミド化メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度より5℃高い温度で、未延伸フィルムを縦一軸2倍延伸した場合に発現する複屈折の事をいうものとする。ここで、配向複屈折は、前述のnx、nyを用いて、△n=nx−ny=Re/dで定義され、位相差計により測定したReより算出する。
【0066】
配向複屈折の値としては、0〜0.2×10-3である事が好ましく、0〜0.1×10-3である事がより好ましい。配向複屈折が上記の範囲外の場合、環境の変化に対して、成形加工時に複屈折を生じやすく、安定した光学的特性を得る事が難しくなる。
【0067】
得られる光学フィルムが、上記配向複屈折値を有するように、メタクリル系樹脂(B)中の芳香族ビニル単量体単位の含量及びイミド化メタクリル系樹脂のイミド化率を適宜設定すればよいが、例えば、メタクリル系樹脂(B)中の芳香族ビニル単量体単位含量としては、前述のように0.1重量%以上、5重量%以下が好ましく、3重量%以上、5重量%以下が特に好ましい。
【0068】
芳香族ビニル単量体単位が5重量%を超えると、耐溶剤性が悪くなるだけでなく、メタクリル系樹脂(B)の重合時に発生するオリゴマー成分(低重合度成分)が増える場合がある。樹脂中のオリゴマー成分は製膜時のフィルム欠陥につながる場合が有り、好ましくない。
【0069】
また、イミド化メタクリル系樹脂中のイミド化率としては、10〜40%が好ましく、20〜30%が特に好ましい。
【0070】
この場合、光学フィルムを構成するイミド化メタクリル系樹脂100重量%中の前記式(1)で表される化合物の含有量は15〜50重量%であることが好ましく、25〜40重量%であることがさらに好ましい。芳香族ビニル単位は0.1重量%以上、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以上、5重量%以下であることがさらに好ましい。イミド化メタクリル系樹脂中のその他の成分としては、メタアクリル酸アルキルエステル単位であることが好ましいが、メタクリル酸単位や無水グルタル酸単位などの副生物はイミド化メタクリル系樹脂100重量%中、5重量%以下含有していてもよい。これらの副生物4重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがさらに好ましい。
【0071】
次に、高配向複屈折性を有する光学フィルムについて以下に説明する。高配向複屈折性を有する光学フィルムとしては、位相差フィルムがあげられる。
【0072】
本発明の高配向複屈折性を有する光学フィルムは、フィルムの面内位相差が20nm以上であり、かつ、厚み方向位相差が20nm以上であることが好ましい。フィルムの面内位相差は、より好ましくは30nm以上である。厚み方向位相差は、より好ましくは50nm以上である。フィルムの面内位相差が20nm以下の場合は、必要とする位相差を付与できないとの問題が発生する場合がある。
【0073】
配向複屈折の値としては、0.1×10-2以上である事が好ましく、0.2×10-2以上である事がより好ましい。配向複屈折が上記の範囲外の場合、光学フィルムとした際に、必要とする位相差を付与することが難しくなる。
【0074】
得られる光学フィルムが、上記配向複屈折値を有するように、メタクリル系樹脂(B)中の芳香族ビニル単量体単位の含量及びイミド化メタクリル系樹脂のイミド化率を適宜設定すればよいが、例えば、メタクリル系樹脂(B)中の芳香族ビニル単量体単位の含量としては、前述のように0.1重量%以上、5重量%以下が好ましく、0.1重量%以上、3重量%以下が特に好ましい。
【0075】
芳香族ビニル単量体単位が5重量%を超えると、耐溶剤性が悪くなるだけでなく、メタクリル系樹脂(B)の重合時に発生するオリゴマー成分(低重合度成分)が増える場合がある。。樹脂中のオリゴマー成分は製膜時のフィルム欠陥につながる場合が有り、好ましくない。
【0076】
また、イミド化メタクリル系樹脂中のイミド化率としては、30〜80%が好ましい。さらに好ましくは40〜80%である。
【0077】
この場合、光学フィルムを構成するイミド化メタクリル系樹脂100重量%中の前記式(1)で表される化合物の含有量は40〜90重量%であることが好ましく、45〜85重量%であることがさらに好ましい。芳香族ビニル単位は0.1重量%以上、5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上、3重量%以下であることがさらに好ましい。イミド化メタクリル系樹脂中のその他の成分としては、メタアクリル酸アルキルエステル単位であることが好ましいが、メタクリル酸単位や無水グルタル酸単位などの副生物はイミド化メタクリル系樹脂100重量%中、5重量%以下含有していてもよい。これらの副生物4重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがさらに好ましい。
【0078】
本発明のイミド化メタクリル系樹脂組成物から得られる光学フィルムは、上述した、偏光子保護フィルムや位相差フィルムなどに加えて、液晶用導光板などの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどに使用可能である。
【0079】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0080】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0081】
〔イミド化率の算出〕 生成物のペレットを塩化メチレンに溶解し、その溶液をSensIR Tecnologies社製TravelIRを用いて、室温にてIRスペクトルを測定した。
【0082】
得られたIRスペクトルより、1720cm-1のエステルカルボニル基に帰属される吸収強度(Absester)と、1660cm-1のイミドカルボニル基に帰属される吸収強度(Absimide)との比からイミド化率(Im%(IR))を求めた。
【0083】
なお、ここで、「イミド化率」とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
【0084】
〔スチレン量の算出〕 原料樹脂であるメタクリル系樹脂(B)(約10mg)を重クロロホルム(約4mL)に溶解し、その溶液をVarian社製NMR測定装置Gemini−300を用いて、1H−NMRスペクトルを測定した。
【0085】
得られた1H−NMRスペクトルより、δ=7.4〜6.8におけるスチレンユニットの芳香族由来のプロトンと、δ=3.8〜2.2におけるメタクリル酸メチルユニットのエステルに帰属されるプロトンの積分強度比から、スチレン量を決定した。
【0086】
[生成物のスチレン含量の算出]
上記で算出したイミド化率をIm%、原料のスチレン量をst%として、下記の数式(1)〜(3)より、一般式(1)で表される単位のモル%(Amol%)、メタアクリル酸アルキルエステル単量体単位(Bmol%)、芳香族ビニル単量体単位のモル%(Cmol%)を算出する。一般式(1)で表される単位の分子量をa g/mol、メタアクリル酸アルキルエステル単量体単位の分子量をb g/mol、芳香族ビニル単量体単位の分子量をc g/molとして、下記数式(4)より算出する。
【0087】
A=[(100−st)×Im/(20000−100×Im+st×Im)]×100 ・・・(1)
B=[(200×(100−st−Im)+2Im×st)/(20000−100×Im+st×Im)]×100・・・(2)
C=100−A−B・・・(3)
(生成物のスチレン含量)=(100×C×c)/(A×a+B×b+C×c)・・・(4)
【0088】
〔ガラス転移温度〕 生成物10mgを用いて、示差走査熱量計(DSC、株式会社島津製作所製DSC−50型)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定した。
【0089】
〔ヘーズ測定〕 JIS K 7136記載の方法に基づいて、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
【0090】
〔全光線透過率測定〕 JIS K 7361−1記載の方法に基づいて、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。〔面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rth測定〕 フィルムから、40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片を、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0゜で面内位相差Reを測定した。
【0091】
デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した試験片の厚みd、および、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製 3T)で測定した屈折率n、自動複屈折計で測定した波長590nm、面内位相差Reおよび40°傾斜方向の位相差値から3次元屈折率nx、ny、nz、を求め、厚み方向位相差 Rth=|(nx+ny)/2−nz|×d (||は絶対値を表す)を計算した。
【0092】
[配向複屈折] 上記の方法で測定した面内位相差Reを、温度23℃±2℃、湿度60%±5%において、ミツトヨ製デジマティックインジケーターを用いて測定した試験片の厚みで割った値を配向複屈折とした。
【0093】
〔酸価測定〕樹脂0.3gを塩化メチレン37.5mLに溶解し、さらにメタノール37.5mLを加えた。次に0.1mmol%の水酸化ナトリウム水溶液5mLとフェノールフタレインのエタノール溶液数滴を加えた。次に0.1mmol%の塩酸を用いて逆滴定を行い、中和に要する塩酸の量から酸価を求めた。
【0094】
〔耐溶剤性〕厚み30μm〜35μmのフィルムを巾方向20mm×長手方向50mmにフィルムを切り出し荷重15gの状態で酢酸エチル中に長手方向30mm浸漬し、破断するまでの時間により、耐溶剤性を求めた。
【0095】
〔実施例1〕 原料の樹脂としてメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(スチレン単量体単位3重量%)、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、イミド化メタクリル系樹脂を製造した。
【0096】
使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230〜250℃、スクリュー回転数は150rpmとした。メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(以下、「MS樹脂」ともいう)を2kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して8重量部のモノメチルアミン(三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド化メタクリル系樹脂(I)を得た。
【0097】
次いで、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機にて、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpmとした。ホッパーから得られたイミド化メタクリル系樹脂(I)を1kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して0.8重量部の炭酸ジメチルと0.2重量部のトリエチルアミンの混合液を注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、酸価を低減したイミド化メタクリル系樹脂(II)を得た。
【0098】
さらに、イミド化メタクリル系樹脂(II)を、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機に、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、供給量1kg/hrの条件で投入した。ベント口の圧力を−0.095MPaに減圧して再び未反応の副原料などの揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた脱揮したイミド樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド化メタクリル系樹脂(III)を得た。
【0099】
イミド化メタクリル系樹脂(III)について、上記の方法に従って、イミド化率、ガラス転移温度、および酸価を測定した。その結果、イミド化率は25%、ガラス転移温度は132℃、酸価は0.2mmol/gであった。
【0100】
得られたイミド化メタクリル系樹脂を、100℃で5時間乾燥後、40mmφ単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて240℃で押し出すことにより得られたシート状の溶融樹脂を冷却ロールで冷却して幅300mm、厚み130μmの未延伸フィルムを得た。
【0101】
このフィルムについて、上記の方法に従って、ヘーズ、全光線透過率を測定した。その結果、ヘーズは、0.31%、全光線透過率は91.0%であった。
【0102】
このフィルムについて、延伸倍率2倍、ガラス転移温度より5℃高い温度で一軸延伸(株式会社東洋精機製 二軸延伸装置 ×4HD)を行い、一軸延伸フィルムを作成した。この一軸延伸フィルムの配向複屈折は0.09×10-3であった。
【0103】
このフィルムについて、延伸倍率2 倍(縦・横)、ガラス転移温度より10 ℃ 高い温度で同時二軸延伸(株式会社東洋精機製 二軸延伸装置 X4HD)を行ない、二軸延伸フィルムを作成した。この二軸延伸フィルムのヘーズは、0.1%、全光線透過率は91.5%であった。また、面内位相差は0.5nm、厚み方向位相差は3nm、厚み34μmであった。得られた二軸延伸フィルムを、荷重15gをかけた状態で酢酸エチル中に浸漬させたところ、破断するまでの時間は400秒であった。
【0104】
〔実施例2〕 メチルアミンの注入量を16部とした以外は実施例1と同様の操作を行ない、イミド化メタクリル系樹脂(IV)を得た。
【0105】
イミド化メタクリル系樹脂(IV)について、上記の方法に従って、イミド化率、ガラス転移温度、および酸価を測定した。その結果、イミド化率は75%、ガラス転移温度は146℃、酸価は0.1mmol/gであった。
【0106】
得られたイミド化メタクリル系樹脂を、実施例1と同様の方法でフィルム化し、幅300mm、厚み130μmのフィルムを得た。
【0107】
このフィルムについて、上記の方法に従って、ヘーズ、全光線透過率を測定した。その結果、ヘーズは、0.31%、全光線透過率は91.0%であった。
【0108】
このフィルムについて、上記の方法に従って、配向複屈折を測定した。その結果、配向複屈折は0.33×10-2であった。
【0109】
このフィルムについて、延伸倍率縦1.5倍、横2倍、ガラス転移温度より5℃高い温度で逐次二軸延伸(株式会社東洋精機製 二軸延伸装置 X4HD)を行ない、二軸延伸フィルムを作成した。この二軸延伸フィルムのヘーズは、0.1%、全光線透過率は91.5%であった。また、面内位相差は50nm、厚み方向位相差は125nm、厚み52μmであった。
【0110】
実施例1と同様の方法で得た厚み130μmのフィルムについて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より10℃高い温度で同時二軸延伸(株式会社東洋精機製 二軸延伸装置X4HD)を行ない、二軸延伸フィルムを作成した。この二軸延伸フィルムの厚みは32μmであった。得られた二軸延伸フィルムを、荷重15gをかけた状態で酢酸エチル中に浸漬させたところ、破断するまでの時間は230秒であった。
【0111】
〔比較例1〕 原料樹脂としてスチレン量11重量%のメタクリル酸メチル−スチレン共重合体を用いることと、モノメチルアミンの注入量を16重量部にしたこと以外は実施例1(イミド化メタクリル系樹脂(III))と同様の操作を行ない、イミド化メタクリル系樹脂(V)を得た。
【0112】
イミド化メタクリル系樹脂(V)について、上記の方法に従って、イミド化率、ガラス転移温度、および酸価を測定した。その結果、イミド化率は70%、ガラス転移温度は140℃、酸価は0.2mmol/gであった。
【0113】
得られたイミド化メタクリル系樹脂(V)を実施例1と同様の方法でフィルム化、延伸し、一軸延伸フィルムおよび二軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムの配向複屈折は0.9×10-3であった。この二軸延伸フィルムのヘーズは、0.1%、全光線透過率は91.5%であった。また、面内位相差は0.7nm、厚み方向位相差は18nm、厚み35μmであった。得られた二軸延伸フィルムを、実施例1と同様の方法で酢酸エチル中に浸漬させたところ、破断するまでの時間は120秒であった。
〔比較例2〕
原料樹脂としてスチレン量22重量%のメタクリル酸メチル−スチレン共重合体を用いることと以外は、比較例1と同様の操作を行ない、イミド化メタクリル系樹脂(VI)を得た。
【0114】
イミド化メタクリル系樹脂(VI)について、上記の方法に従って、イミド化率、ガラス転移温度、および酸価を測定した。その結果、イミド化率は5%、ガラス転移温度は140℃、酸価は0.18mmol/gであった。
【0115】
得られたイミド化メタクリル系樹脂(VI)を実施例1と同様の方法でフィルム化、延伸し、一軸延伸フィルムおよび二軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムの配向複屈折は0.1×10-3であった。この二軸延伸フィルムのヘーズは、0.1%、全光線透過率は91.5%であった。また、面内位相差は0.6nm、厚み方向位相差は10nm、厚み33μmであった。得られた二軸延伸フィルムを、実施例1と同様の方法で酢酸エチル中に浸漬させたところ、破断するまでの時間は52秒であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミド化メタクリル系樹脂100重量%中、一般式(1)で表される単位を15〜90重量%、芳香族ビニル単位を0.1〜5重量%含有するイミド化メタクリル系樹脂組成物を含有することを特徴とする光学フィルム。
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
【請求項2】
メタアクリル酸アルキルエステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の重量比が95/5〜99.9/0.1であるメタクリル系樹脂(B)を、イミド化剤で処理して得られるイミド化メタクリル系樹脂組成物を含有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項3】
請求項1または2記載の光学フィルムを用いることを特徴とする偏光子保護フィルム。
【請求項4】
前記式(1)で表される単位を15〜50重量%含有することを特徴とする光学フィルムを用いることを特徴とする請求項3記載の偏光子保護フィルム。
【請求項5】
請求項1または2記載の光学フィルムを用いることを特徴とする位相差フィルム。
【請求項6】
前記式(1)で表される単位を40〜90重量%含有することを特徴とする請求項5記載の位相差フィルム。

【公開番号】特開2010−248501(P2010−248501A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69890(P2010−69890)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】