説明

光学モジュール及びイメージング装置

【課題】 所定の条件を満たす光のみを抽出できる光学モジュールやイメージング装置を提供する。
【解決手段】 上記課題は,1/4波長板部分(1)と−1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成された板状の第1の光学素子(4)と;1/4波長板部分(5)と,−1/4波長板部分(6)とが接合部分(7)を介して交互に形成された板状の第2の光学素子(8)とを具備し,前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とは平行であり,前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の−1/4波長板部分(6)とは空隙(9)を隔てて重なる光学モジュール(10),及びその光学モジュール(10)を具備するイメージング装置により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,光学モジュールやイメージング装置などに関する。より詳しく説明すると,本発明は,所定の位置にある光のみを効果的に抽出し,目的とする観測対象物をより鮮明に観測するための光学モジュール及びイメージング装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラなどのイメージング装置では,観測物に焦点を合わせることで,ある程度鮮明な像を得ることができる。しかし,通常のカメラでは,観測物に焦点を合わせた場合,観測物以外は単に焦点が合わないものとなるので,ぼやけた画像が得られることとなる。したがって,観測物以外のものに由来する光をカットして,観測物の像をより鮮明に得たいという要求がある。
【0003】
一方,特定の惑星の写真など,わずかな光のみを発する観測物の像をできる限り鮮明に得ることが望まれる。しかし,周囲の強力な光が,弱い光の観測物の像を得るための妨げとなる。よって,所定の条件を満たす光のみを抽出することができれば,所定の条件を満たさない光をカットし,所定の条件を満たす弱い光を発する観測物の像を鮮明に得ることができると考えられる。
【0004】
なお,特開2005-106627の図16には,対象物のあらゆる方向の傾きに関する情報を感度よく検出するために回折格子を2枚重ねたものが開示されている。しかし,特定の条件を満たす光を抽出するための光学素子を2枚重ねるものではなく,特定の条件を満たす光を効率的に抽出することはできない。
【特許文献1】特開2005-106627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は,特定の条件を満たす光を抽出するために用いることができる光学モジュールを提供することを目的とする。
【0006】
本発明は,上記の光学モジュールを有するイメージング装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は,基本的には,1/4波長板部分と-1/4波長板部分など透過する光の位相を変調する特定が異なる少なくとも2種類の部位を有する光学素子を2つ用意する。そして,それらを透過する光は,透過する経路により,光の位相が変調されるものと,一端変調された位相が戻るものができることに着目したものである。2つの光学素子の出力が偏光子へ導入されるようにしておくと,ある条件を満たす光のみが,2つの光学素子を透過し,さらに偏光子から出力されるように制御できるという知見に基づくものである。
【0008】
本発明の第1の側面は,入力された光の位相を,所定の条件に応じて制御するための光学モジュールに関する。図1は,本発明の光学モジュールの概略図である。図1(A)は本発明の光学モジュールの概略図を示し,図1(B)は本発明の光学モジュールの上面図を示す。なお,Fig.は,図を示す。図1(A)に示されるように,本発明の光学モジュールは,基本的には,以下の構成を有する。すなわち,1/4波長板部分(1)と-1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成された板状の第1の光学素子(4)と;1/4波長板部分(5)と-1/4波長板部分(6)とが接合部分(7)を介して交互に形成された板状の第2の光学素子(8)と;を具備し,前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とは平行であり,前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とは空隙(9)を隔てて重なり,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは前記空隙(9)を隔てて重なる光学モジュール(10)である。
【0009】
そして,1/4波長板部分や-1/4波長板部分は,透過する光の位相を所定量変化させるので,光学モジュールに入射した光が上記二つの光学素子(4,8)のどの部分を透過するかに応じて位相が変調されることとなる。これにより,所定の条件に応じて,光の位相変調を行うことができることとなる。そして,そのような位相変調を利用して,所定の条件を満たす光のみを所定の偏光面を有するように制御すれば,本発明の光学モジュールを透過した光を偏光子に導入することで,所定の条件を満たす光のみを抽出することができることとなる。
【0010】
本発明の第2の側面は,所定の条件を満たす光を効果的に抽出できるイメージング装置に関する。このイメージング装置は,基本的には,レンズ(21)と;前記レンズ(21)からの光が透過する光学モジュール(10)と;前記光学モジュール(10)へ入射する光の偏光面を調整するための第1の偏光子(22)と;前記光学モジュール(10)から出射する光を偏光分離するための第2の偏光子(23)と;前記第2の偏光子(23)から出射する光を検出するための光検出器(24)と;を具備し,前記光学モジュール(10)は,1/4波長板部分(1)と−1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成された板状の第1の光学素子(4)と;1/4波長板部分(5)と−1/4波長板部分(6)とが接合部分(7)を介して交互に形成された板状の第2の光学素子(8)と;を具備し,前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とは平行であり,前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の−1/4波長板部分(6)とは空隙(9)を隔てて重なり,前記第1の光学素子(4)の−1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは前記空隙(9)を隔てて重なる光学モジュールなどであるイメージング装置である。
【0011】
すなわち,第1の偏光子(22)で光の偏光面を調整し,前記光学モジュールで所定の条件を満たす光の位相を調整し,第2の偏光子(23)が光学モジュールによって変調されたある偏光面を有する光のみを透過させる。よって,本発明のイメージング装置によれば,所定の条件を満たす光を効果的に抽出し検出することができることとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,光が透過する波長板部分を制御することで,特定の条件を満たす光を抽出できる光学モジュールを提供できる。さらに,本発明によれば,そのような特定の条件(たとえば,測定物が特定の位置にあるという条件)を満たす光のみを抽出できるようなイメージング装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[光学モジュール]
本発明の第1の側面は,入力された光の位相を,所定の条件に応じて制御するための光学モジュールに関する。図1は,本発明の光学モジュールの概略図である。図1(A)は本発明の光学モジュールの概略図を示し,図1(B)は本発明の光学モジュール10の上面図を示す。図1(A)に示されるように,本発明の光学モジュール10は,基本的には,以下の構成を有する。すなわち,1/4波長板部分(1)と-1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成された板状の第1の光学素子(4)と;1/4波長板部分(5)と-1/4波長板部分(6)とが接合部分(7)を介して交互に形成された板状の第2の光学素子(8)と;を具備し,前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とは平行であり,前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とは空隙(9)を隔てて重なり,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは前記空隙(9)を隔てて重なる光学モジュール(10)である。
【0014】
そして,1/4波長板部分や-1/4波長板部分は,透過する光の位相を所定量変化させるので,光学モジュールに入射した光が上記二つの光学素子(4,8)のどの部分を透過するかに応じて位相が変調されることとなる。これにより,所定の条件に応じて,光の位相変調を行うことができることとなる。そして,そのような位相変調を利用して,所定の条件を満たす光のみを所定の偏光面を有するように制御すれば,本発明の光学モジュール(10)を透過した光を偏光子に導入することで,所定の条件を満たす光のみを抽出することができることとなる。以下,本発明の光学モジュールの各構成要素について説明する。
【0015】
本発明の光学モジュール(10)は,後述するように所定の位置に焦点があるような光のみを出力するか,そのような光のみを出力しないといった光抽出を行うためなどに用いることができる。すなわち,本発明の光学モジュール(10)は,たとえば,所定位置にある光を抽出する光フィルタなどとして利用されるものである。
【0016】
“光学素子”は,光の位相や光路などを調整するための素子である。本発明における第1の光学素子(4)と第2の光学素子(8)の素材は,公知の光学結晶やフォトニック結晶における素材を適宜利用できる。本発明における第1の光学素子(4)と第2の光学素子(8)の形状として,たとえば,それぞれが正方形状(又は長方形状)であるものがあげられる。なお,それらの形状は,同じであることが好ましい。第1の光学素子(4)と第2の光学素子(8)の大きさは,要求される性能や,波長板部分の数などに応じて適宜調整すればよい。具体的な光学素子(4,8)の面積として,1mm2〜100cm2があげられ,好ましくは3 mm2〜10
cm2であり,小型の光学機器に搭載するために0.5 cm2〜5 cm2好ましい。たとえば,本発明の光学モジュールを内視鏡などに用いる場合は,光学素子(4,8)の面積として,1mm2〜10cm2があげられ,好ましくは3 mm2〜5cm2であり,より好ましくは5 mm2〜2cm2である。また,具体的な光学素子(4,8)の厚さとして,1μm〜1mmがあげられ,好ましくは10μm〜0.1mmである。また空隙の長さ(9a)として,たとえば,1×10-2cm〜1cmがあげられ,5×10-2cm〜5×10-1cmであってもよい。
【0017】
“1/4波長板部分”及び“-1/4波長板部分”とは,それぞれ1/4波長板及び-1/4波長板として機能する部分を意味する。1/4波長板及び-1/4波長板の機能は,それぞれ公知である。すなわち,1/4波長板とは,入射光線に1/4波長の位相差(波長板の射出面において速いほうの成分に比べて遅いほうの成分が遅延する)を生じさせる機能を持った波長板である。一方,-1/4波長板とは,入射光線に-1/4波長の位相差を生じさせる機能を持った波長板である。 “1/4波長板部分”及び“-1/4波長板部分”は,1つずつ設けられてもよいし,たて及び横に交互に複数個(たとえば2個〜1×103個)設けられても良い。また,“1/4波長板部分”及び“-1/4波長板部分”は,それぞれストライプ状(四角形状,好ましくは長方形状)のものが,交互に並んで設けられても良い。
【0018】
上記のとおり,本発明の光学モジュール(10)は,1/4波長板部分(1)と‐1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成されるものである。1/4波長板部分(1)と‐1/4波長板部分(2)とは,それぞれ1又は複数の1/4波長板と‐1/4波長板を交互に並べたものであっても良いし,1又は複数の1/4波長板と‐1/4波長板とを融合させたものであっても良い。さらには,フォトニック結晶など,1/4波長板部分(1)と‐1/4波長板部分(2)とを有する結晶であってもよい。なお,本発明の光学モジュールの好ましい態様は,前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とがフォトニック結晶により構成される光学モジュールである。フォトニック結晶であれば,1/4波長板部分(1)と‐1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を含めて一体として得ることができるので,取り扱いが極めて容易となる。
【0019】
本発明の光学モジュールの好ましい態様は,図1(A)に示されるように,前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と‐1/4波長板部分(2)とは,それぞれ同一幅を有するストライプ状であり,前記第1の光学素子(4)にそれぞれ1個又は複数個設けられ;前記第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)と-1/4波長板部分(6)とは,それぞれ同一幅を有するストライプ状であり,前記第2の光学素子(8)にそれぞれ1個又は複数個設けられる光学モジュールである。
【0020】
上記の態様に係る光学モジュール(10)は,好ましくは,1/4波長板部分(5)と-1/4波長板部分(6)が複数個設けられるものであり,それぞれの具体的な個数として,2個〜1×103個があげられ,好ましくは5個〜1×102個である。このように,1/4波長板部分(5)と-1/4波長板部分(6)を複数個ずつ有することにより,本発明の光学モジュールが制御できる領域が広がることとなる。具体的には,本発明の光学モジュールが制御できる領域が,複数の波長板が並べられる方向に広がることとなる。
【0021】
本発明の光学モジュールの好ましい態様は,前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)との空隙の長さ(9a)が,1×10-2cm〜1cmのものである。
【0022】
なお,偏光子は,基本的には所定の透過軸方向の光を透過させるための素子である。偏光子として,公知の偏光子(偏光ビームスプリッターなどを含む)を適宜用いることができる。また,本発明の光学モジュールは,公知の光学機器に用いられる公知の要素を適宜採用することができる。
【0023】
[光学モジュールの動作及び利用例]
次に,本発明の光学モジュールの動作及び利用例を説明する。図2は,本発明の光学モジュールの動作を説明するための図である。この光学モジュールを含む光学装置(具体的には後述するイメージング装置など)は,図2に示されるように,観測対象物からの光が入射するレンズ(21)と,レンズ(21)からの光が入力する第1の偏光子(22)と,第1の偏光子(22)からの光が入射する光学モジュール(10)と,光学モジュール(10)からの光が入射する第2の偏光子(23)と,第2の偏光子(23)からの光が入力する光検出器(24)とを具備する。なお,図中符号25は任意のレンズを示す。また,図中Eは,偏光子の偏光面の例を示す。なお,レンズ(21)と,第1の偏光子(22)との位置関係は,図2に示されるものと逆であってもよい。図2において,光学モジュール(10)の第1の光学素子(4)及び第2の光学素子(8)は,それぞれ1箇所ずつの1/4波長板部分と-1/4波長板部分とを有している。しかしながら,光学モジュール(10)の第1の光学素子(4)及び第2の光学素子(8)は,たとえば図1に示されるように,複数箇所ずつ有していてもよい。この点は,以下の図においても同様である。なお,光検出器として,CCDなどのイメージセンサーがあげられる。
【0024】
この例では,第1のレンズ(21)および第1の偏光子(22)を透過した光は,第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)をそれぞれ透過する。そして,第2の光学素子(8)を透過した光の一部は,第2の偏光子(23)により偏光分離される。第2の偏光子(23)を透過した光は,第2のレンズ(25)により集光され,光検出器(24)により検出される。
【0025】
図3は,焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間の空隙になく,第2の光学素子より後方にある光の動作を説明するための図である。図3において,第1の偏光子(22)を通過した光は,その偏光面が調整されている。その偏光面は,たとえば,偏光子(23)を透過できる偏光面とπ/2ずれている。
【0026】
光(26)が第1のレンズ(21)に入射し,第1の光学素子(4)を透過する際,1/4波長板部分(1)を透過するので,位相がずれる。一方,光(26)は,第2の光学素子(8)を透過する際,-1/4波長板部分(6)を透過するので,1/4波長板部分(1)によってずれた位相が元に戻される。よって,光(26)は,第2の偏光子(23)を透過できないこととなる。これは,光(27)の場合も同様である。すなわち,図3に示されるように,焦点が,第1の光学素子(4)と第2の光学素子(8)との間の空隙になく,第2の光学素子(8)より後方にある場合は,第2の光学素子(8)から出力される光が,第2の偏光子(23)を透過できないこととなる。よって,そのような場合は,光検出器(24)によって検出されない。
【0027】
図4は,焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間にある光の動作を説明するための図である。図4において,第1の偏光子(21)を通過した光は,その偏光面が調整されている。その偏光面は,たとえば,第2の偏光子(23)を透過できる偏光面とπ/2ずれている。
【0028】
光(28)が第1のレンズ(21)に入射し,第1の光学素子(1)を透過する際,1/4波長板部分(1)を透過するので,所定量位相がずれる。さらに,光(28)は,第2の光学素子(8)を透過する際,1/4波長板部分(5)を透過するので,1/4波長板部分(1)によってずれた位相と同じだけ位相がずれる。よって,光(28)は,第2の偏光子(23)を透過できることとなる。これは,光(29)の場合も同様である。すなわち,焦点が第1の光学素子(4)と第2の光学素子(8)との間にある光は,第2の偏光子(23)から出力されることとなる。そして,第2の偏光子(23)から出力された光は,第2のレンズ(25)を介して光検出器によって検出される。
【0029】
図5は,焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間の空隙になく,第1の光学素子より前にある場合の光の動作を説明するための図である。図5において,第1のレンズ(21)に入射する光は,第1の偏光子(22)によりその偏光面が調整される。その偏光面は,たとえば,第2の偏光子(23)が透過する偏光面とπ/2ずれている。
【0030】
光(31)が第1のレンズ(21)に入射し,第1の光学素子(4)を透過する際,-1/4波長板部分(2)を透過するので,所定量位相がずれる。一方,光(31)は,第2の光学素子(8)を透過する際,1/4波長板部分(5)を透過するので,-1/4波長板部分(2)によってずれた位相が元とに戻される。よって,光(31)は,第2の偏光子(23)を透過できないこととなる。これは,光(32)の場合も同様である。すなわち,焦点(33)が第1の光学素子(4)より前にある光は,第2の偏光子(23)から出力されないこととなる。よって,そのような場合は,光検出器(24)によって検出されない。
【0031】
以上より,図2に示される光学装置を用いれば,その焦点が所定の位置(たとえば,第1の光学素子(4)の接合部分(3)と第2の光学素子(8)の接合部分(7)との間)となる光は,第2の偏光子(23)を透過するが,それ以外の光は第2の偏光子(23)を透過しないこととなる。これは,所定の位置に由来する光のみを抽出できることを意味する。よって,本発明の光学モジュールは,所定の条件を満たす光のみを抽出する光学装置などに好ましく用いられ得ることがわかる。より具体的には,観測対象物由来の光の焦点が,2つの接合部分(3,7)との間に位置するようにすれば,観測対象物以外の光を遮断することができるので,効果的に観測対象物を観測できる。なお,レンズ(21)に入射する光の焦点は,たとえば,レンズ(21)をその光軸がずれないようにしつつ,光学モジュール(10)との距離を調整することで,制御できる。
【0032】
[変形例とその動作]
これまで第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とは空隙(9)を隔てて重なり,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは前記空隙(9)を隔てて重なるものについて説明した。しかしながら,前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とが空隙(9)を隔てて重なり,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とが前記空隙(9)を隔てて重なるものであっても構わない。
【0033】
図6は,ある実施態様に係る光学モジュールの概略図である。図6(A)はある実施態様に係る光学モジュールの概略図を示し,図6(B)はその上面図を示す。図6に示されるように,この実施態様に係る光学モジュールは,1/4波長板部分(1)と-1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成された板状の第1の光学素子(4)と;1/4波長板部分(5)と-1/4波長板部分(6)とが接合部分(7)を介して交互に形成された板状の第2の光学素子(8)と;を具備し,前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とは平行であり,前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とが空隙(9)を隔てて重なり,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とが前記空隙(9)を隔てて重なる光学モジュールである。
【0034】
図7は,ある実施態様に係る光学モジュールを搭載した光学装置の例を説明するための図である。この光学装置は,第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とが空隙(9)を隔てて重なり,第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とが空隙(9)を隔てて重なる。すなわち,この光学装置は,レンズ(21)と;前記レンズ(21)からの光が透過する光学モジュール(10)と;前記光学モジュール(10)へ入射する光の偏光面を調整するための第1の偏光子(22)と;前記光学モジュール(10)から出射する光を偏光分離するための第2の偏光子(23)と;前記第2の偏光子(23)から出射する光を検出するための光検出器(24)と;を具備し,前記光学モジュール(10)は,1/4波長板部分(1)と-1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成された板状の第1の光学素子(4)と;1/4波長板部分(5)と-1/4波長板部分(6)とが接合部分(7)を介して交互に形成された板状の第2の光学素子(8)と;を具備し,前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とは平行であり,前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは空隙(9)を隔てて重なり,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とは前記空隙(9)を隔てて重なる光学モジュールである。この光学装置は,後述のように所定の条件を満たす光を抽出して検出できるので,たとえば,イメージング装置として機能する。
【0035】
この光学装置では,たとえば,第1の偏光子(22)と第2の偏光子(23)の偏光面を,紙面に垂直になるようにそろえればよい。そうすれば,これまで説明したと同様の原理により所定の条件を満たす光のみを抽出できる。すなわち,この場合,焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間にある光は,第1の光学素子及び第2の光学素子を透過する事で偏光面の位相が元に戻される。また,第1の光学素子より前に集光する光,及び第2の光学素子より後方に集光する光は偏光面の位相がπ/2ずれる。従って,第2の偏光子の偏光透過軸を第1の偏光子の偏光透過軸と揃えて配置することにより,先に説明した光学装置と同様にして所定の条件を満たす光を抽出できることとなる。
【0036】
また,1/4波長板部分と-1/4波長板部分の替わりに,1/2波長板部分(又は-1/2波長板部分)と,平坦な部分(位相変調を起こさない部分)とを用いるものは,本発明の光モジュールの上記とは別の実施態様である。この実施態様にかかる光学モジュールでは,たとえば,図1または図7における1/4波長板部分(1,5)の替わりに1/2波長板部分として,-1/4波長板部分(2,6)の替わりに平坦な部分とすればよい。たとえば,図1における1/4波長板部分(1,5)の替わりに1/2波長板部分とし,-1/4波長板部分(2,6)の替わりに平坦な部分とした場合は,第1の偏光子(22)と第2の偏光子(23)の偏光面を,たとえば紙面に垂直になるようにそろえればよい。そうすれば,これまで説明したと同様の原理により所定の条件を満たす光のみを抽出できる。の場合焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間にある光は,第1の光学素子及び第2の光学素子を透過する事で偏光面の位相が元に戻される。また,第1の光学素子より前に集光する光,及び第2の光学素子より後方に集光する光は偏光面の位相がπ/2ずれる。従って,第2の偏光子の偏光透過軸を第1の偏光子の偏光透過軸と揃えて配置することにより,先に説明した光学装置と同様にして所定の条件を満たす光を抽出できることとなる。
【0037】
以上,第1の光学素子(4)及び第2の光学素子(8)について,1/4波長板部分と-1/4波長板部分とをそれぞれ1つずつ有するものの動作について説明した。そして,第1の光学素子(4)及び第2の光学素子(8)について,1/4波長板部分と-1/4波長板部分とをそれぞれ複数有するものであれば,観測できる領域が2次元的に広がることとなる。また,第1のレンズ(21)を,各光学素子と近づけるか,または遠ざけることができるような可動装置を用いれば,レンズ(21)に入射する光の焦点位置を適宜調整できるので,観測できる対象の距離を適宜調整できることとなる。また,光学モジュール(10),又は光検出器(24)の位置をたとえば,光軸に対して水平移動できる可動装置を用いることで,観測できる対象を2次元的に広げることができることとなる。
【0038】
また図7における1/4波長板部分(1,5)の替わりに1/2波長板部分とし,-1/4波長板部分(2,6)の替わりに平坦な部分とした場合は,第1の偏光子(22)と第2の偏光子(23)の偏光面を,たとえば紙面に垂直になるようにそろえればよい。この場合,焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間にある光は,第1の光学素子及び第2の光学素子を透過する事で偏光面の位相がπ/2ずれる。一方,第1の光学素子より前に集光する光、及び第2の光学素子より後方に集光する光は偏光面の位相が元に戻される。従って、第2の偏光子の偏光透過軸を第1の偏光子の偏光透過軸と直交するように配置することにより,先に説明した光学装置と同様にして所定の条件を満たす光を抽出できることとなる。
【0039】
また,上記説明においては、第1の光学素子及び第2の光学素子の各部分を波長板部分としたが,本発明の光学モジュールの別の実施態様では,波長板部分の替わりに,偏光面の方位角を回転する旋光素子部分としても良い。たとえば,これまで説明した各光学モジュールにおける1/4波長板部分を+45度旋光素子部分とし,-1/4波長板部分を-45度旋光素子部分とすればよい。なお,各旋光素子部分は,透明基板上にポリイミド膜などの配向膜を形成し,配向膜の配向方向を適宜制御することによって形成すればよい。また,磁場を印加することにより透過する光を旋光させるファラデー素子を用いて,所定の部分に所定の磁場を印加することにより,各旋光素子部分としてもよい。
【0040】
たとえば,図1における光学モジュールにおける,1/4波長板部分を+45度旋光素子部分とし,-1/4波長板部分を-45度旋光素子部分とすればよい。この場合焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間にある光は、第1の光学素子及び第2の光学素子を透過する事で偏光面の方位角が90度ずれる。また、第1の光学素子より前に集光する光、及び第2の光学素子より後方に集光する光は偏光面の方位角が元に戻される。従って、第2の偏光子の偏光透過軸を第1の偏光子の偏光透過軸に直交して配置することにより,先に説明した光学装置と同様にして所定の条件を満たす光を抽出できることとなる。
【0041】
また,図7における光学モジュールにおける,1/4波長板部分を+45度旋光素子部分とし,-1/4波長板部分を-45度旋光素子部分とすればよい。この場合焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間にある光は、第1の光学素子及び第2の光学素子を透過する事で偏光面の方位角が元に戻される。また、第1の光学素子より前に集光する光、及び第2の光学素子より後方に集光する光は偏光面の方位角が90度ずれる。従って、第2の偏光子の偏光透過軸を第1の偏光子の偏光透過軸に揃えて配置することにより,先に説明した光学装置と同様にして所定の条件を満たす光を抽出できることとなる。
【0042】
[数学的解析]
次に,図1に示されるように,第1の光学素子(4)及び第2の光学素子(8)がそれぞれ,複数の波長板部分を有する場合に,光学モジュール(10)に入射する光がどのような影響を受けるかについて数学的に解析する。その上で,複数の波長板部分を有することにより,効果的に平面内の画像パタンを得ることができること,について説明する。以下の解析では,2枚の平行なスリット(長方形状)を透過する光の強度(結合効率)を解析している。また,以下では,第1の偏光子(22)を透過し,1/4波長板部分と-1/4波長板部分との接合部分を透過する光を,スリットを透過した光として近似している。
【0043】
図8は,数学的解析を説明するための光学装置の例を示す図である。すなわち,2つの光学素子(4,8)の中心を原点とし,1/4波長板部分(1)と−1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成される方向(紙面に平行で,光学素子に平行な方向)をX軸とし,紙面に垂直な方向をY軸とし,レンズ(21)の中心を通過し,接合部分(3)を通過する光の進行方向をZ軸とする。
【0044】
まず,スリットがひとつの系を用いて,各光学素子(4,8)における1/4波長板部分(1)と−1/4波長板部分(2)とがそれぞれ1つずつの系について検討する。図9は,解析系のパラメータを説明するための図である。図9に示されるように,2つの光学素子の間隔(9a)をDとし,スリットから出射する光の範囲を2θとした。図10は,焦点の空間的な位置を分類するための図である。
【0045】
焦点が図10のAの領域となる場合,光の結合効率(すなわち強度と相関がある光の取り出し効率と関連する値)をηとして,η=1-2|x|/[(Dtanθ){1-(2Z/D)2}]で表される。一方,焦点が図10のBの領域となる場合,光の結合効率ηは,η=1/2[1-2|x|/{Dtanθ(1+2|z|/D)}=1/2{1-2|x|/(Dtanθ+2tanθ|z|)}で表される。さらに,焦点が図10のCの領域となる場合,光の結合効率ηは,η=2|x|/[{Dtanθ{(2Z/D)2-1}}で表される。
【0046】
図11は,スリットがひとつの場合の,結合効率を示すグラフである。図11において,縦軸はz軸の位置を(D/2)で割った値であり,横軸はx軸の値をDtanθで割った値である。図11(A)は,縦軸及び横軸が-10〜10までの結合効率を示すグラフ(等高線図)である。図11(B) 縦軸及び横軸が-2〜2までの結合効率を示すグラフ(図11(A)の部分拡大図)である。
【0047】
図11から,撮影系の光源などの光が観測対象物によって反射された光が,レンズ(21)によって結像し,図10の各領域において焦点を結ぶとき,図10のAの領域のように2つの光学素子の結合部分の間に位置する領域については結合効率が高いことがわかる。更に,結合効率は,2つの光学素子(4,8)の結合部分を結ぶ軸上で最大となることがわかる。一方,その領域以外の部分に焦点を結ぶ光は,結合効率が低くなりほぼ消去されることがわかる。このように,本発明の光学モジュールは,Z軸方向に強い選択性を有することがわかる。一方,X軸方向には,結合効率が大きくなる領域が限られていることがわかる。すなわち,ある一定の結合効率を有するのは,Dtanθ(横軸メモリで-1〜1)程度の領域程度である。一方,Y軸方向については,上記のような選択性はない。よって,X方向に,スリットを多数設けることで(すなわちX方向に複数の1/4波長板部分と-1/4波長板部分を設けることで),面情報を得ることができるものと考えられる。
【0048】
図12は,3つのスリットを2Dtanθ周期で設けた場合の結合効率を示すグラフである。図12において,縦軸はz軸の位置を(D/2)で割った値であり,横軸はx軸の値をDtanθで割った値である。これは,第1の光学素子(4)及び第2の光学素子(8)がそれぞれ,2つの1/4波長板部分と-1/4波長板部分をもち,それらの結合部分が3箇所できるものに相当する。図12と図11(B)とを比較すると,図12に示されるように3つのスリットを有する光学装置は,スリットが1つの光学装置に比べて,結合効率が高い領域はZ軸方向については拡がらずX軸方向にスリットの周期毎に増えることがわかる。よって,スリットの数(従って,接合部分の数)を増やすことによって,一定のZ値の範囲内でXY面内の画像を得ることができるといえる。
【0049】
一方,x軸方向において,スリットの周期(従って接合部分の周期)程度の分解能を有する検出器によっても,所要の像分解度が得られないときは,たとえば,各スリットの周期毎に数列のピクセル列を設けて検出することにより,解像度の高い像を得ることができると考えられる。又,各列ごとに得られる平均光量が等しくない場合は,それを平均化するために,光源の位置を適宜走査すればよいと考えられる。
【0050】
[光学モジュールの製造方法]
次に,本発明の光学モジュールの製造方法について説明する。先に説明したとおり, 1/4波長板部分(1)と‐1/4波長板部分(2)とは,それぞれ1又は複数の1/4波長板と‐1/4波長板を交互に並べたものであっても良い。そのような場合,たとえば,同一形状の1/4波長板と‐1/4波長板をそれぞれ1又は複数個用意し,それらを交互に並べればよい。
【0051】
また,本発明の光学素子は,1又は複数の1/4波長板と‐1/4波長板とを融合させたものであっても良い。この場合,たとえば,同一形状の1/4波長板と‐1/4波長板をそれぞれ1又は複数個用意し,それらが交互になるようにして熱を加えて融合させればよい。光学モジュールの性能が劣化する可能性はあるが,複数の波長板を接着剤で融合してもよい。
【0052】
また,本発明の光学素子は,フォトニック結晶など,1/4波長板部分(1)と‐1/4波長板部分(2)とを有する結晶であってもよい。このようなフォトニック結晶は,公知のフォトニック結晶の製造方法に従って製造できる。フォトニック結晶の製造方法の例として,国際公開公報WO2004-008196号,又は特開2005-11/4704号公報に開示された方法があげられる。一方,より具体的な,フォトニック結晶の製造方法として,特開平10-335758号公報に開示される2次元的に周期的な凹凸をもつ基板の上に2種類以上の物質を周期的に順次積層し、その積層の中の少なくとも一部分にスパッタエッチングを単独で、または成膜と同時に用いることにより光学素子を製造する方法があげられる。
【0053】
[イメージング装置]
次に,本発明の第2の側面に係るイメージング装置について説明する。図13は,本発明のイメージング装置の概念図である。図13に示されるように,本発明のイメージング装置は,たとえば以下の構成を有する。すなわち,レンズ(21)と;前記レンズ(21)からの光が透過する光学モジュール(10)と;前記光学モジュール(10)へ入射する光の偏光面を調整するための第1の偏光子(22)と;前記光学モジュール(10)から出射する光を偏光分離するための第2の偏光子(23)と;前記第2の偏光子(23)から出射する光を検出するための光検出器(24)とを具備するイメージング装置である。なお,本発明のイメージング装置は,これまで説明した全ての態様における光学モジュール(10)を適宜採用することができる。また,イメージング装置は,通常外枠などを有するが,図13ではその外枠などを省略している。
【0054】
本発明のイメージング装置は,光学モジュールとして,これまで説明した光学モジュール(10)を適宜用いることができる。すなわち,本発明のイメージング装置に用いられる光学モジュールは,図1に示されるように,基本的には,1/4波長板部分(1)と−1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成された板状の第1の光学素子(4)と;1/4波長板部分(5)と−1/4波長板部分(6)とが接合部分(7)を介して交互に形成された板状の第2の光学素子(8)とを具備し,前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とは平行であり,前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の−1/4波長板部分(6)とは空隙(9)を隔てて重なり,前記第1の光学素子(4)の−1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは前記空隙(9)を隔てて重なる光学モジュールである。その他,本発明のイメージング装置は,光学機器などに用いられる公知の要素を適宜採用してもよい。
【0055】
本発明のイメージング装置は,たとえば,レンズ(21)に入射した光の偏光面が,第1の偏光子(22)により調整される。そして,偏光面が調整された光が,光学モジュール(10)に入射する。すると,先に説明したとおり,光学モジュール(10)を構成する2つの光学素子(4,8)のどの位置を透過したかにより,光学モジュール(10)を透過した光の偏光面が,制御される。そして,第2の偏光子(23)は,その制御された偏光面を有する光を透過させるか,又は透過させないような特性を有する。よって,光学モジュール(10)のどの位置を透過するか(どの波長板部分を透過するかの組み合わせ)によって,光が第2の偏光子(23)から出力される場合と,出力されない場合とに分けられる。よって,所定の条件を満たす光のみを抽出することができる。そして,そのように所定の条件を満たし,第2の偏光子(23)から出力される光は,光検出器(24)により検出される。これにより,所定の条件を満たす光が検出されるので,所定の条件を満たす(たとえば,所定の空間位置にある)観測物を観測できることとなる。以下,本発明のイメージング装置の各要素について説明する。
【0056】
イメージング装置は,観測物を観測するための装置である。イメージング装置として,カメラ,ビデオカメラ,望遠鏡,天体望遠鏡,光ピックアップ装置,又は光情報読取装置があげられる。
【0057】
レンズ(21)は,観測物から反射した光を捕集するためのものである。レンズ(21)として,カメラなどに用いられるフォーカスレンズがあげられる。なお,カメラのフォーカスレンズと同様,レンズ(21)は可動式であり焦点調整をすることができるものが好ましい。すなわち,イメージング装置の好ましい態様は,レンズ(21)の可動機構を具備し,焦点を調整できるものである。
【0058】
なお,レンズ(21)の焦点は,光学モジュール(10)に含まれる2つの光学素子(4,8)の間の空隙(9)に位置するように設定されることが好ましい。したがって,レンズ(21)として,集光した焦点が,光学素子(4,8)の間の空隙(9)に位置しうるような光学的特性を有するものを用いることが好ましい。特に,レンズ(21)として,レンズ(21)の定位置における焦点が,2つの光学素子(4,8)の間の空隙(9)の中心部分に位置するものが好ましい。このようなレンズ(21)は,レンズ(21)と,光学モジュール(10)との位置関係などにより適宜調整すればよい。
【0059】
第1の偏光子(22)は,偏光面を調整するための光学素子である。一方,第2の偏光子(23)は,所定の偏光面を有する光のみを透過させるように機能する光学素子である。第1の偏光子(22)及び第2の偏光子(23)として,公知の偏光子を適宜用いることができる。なお,第1の偏光子及び第2の偏光子は,たとえば,透過する偏光面がπ/2ずれるように設置されるものがあげられる。
【0060】
光検出器(24)は,光を検出できるものであれば特に限定されず,カメラや望遠鏡に用いられる公知の光検出器を適宜用いることができる。たとえば,イメージング装置がカメラやビデオである場合は,光検出器として,フォトダイオード,CCD,カメラの光検出部などがあげられる。一方,イメージング装置が,望遠鏡や天体望遠鏡などの場合は,肉眼により観測するための観測部があげられる。
【0061】
光検出器(24)は,好ましくは,複数の検出器により構成される。このような光検出器として,フォトダイオード又はCCDなどのイメージングセンサーがあげられる。フォトダイオード又はCCDの数は,たとえば,第1の光学素子(4)の1/4波長板部分と-1/4波長板部分の数の合計をS(Sは2より大きい)としたとき,S-1以上S+1以下であることが好ましい。特に,Sが5以上の場合,S-2以上S以下が好ましく,特に好ましいのはS-1である。すなわち,1/4波長板部分と-1/4波長板部分の接合部に対応した部分に相当するだけ光を観測できる検出器(たとえば,フォトダイオード又はCCDなど)があれば,複数の波長板における所定の条件を満たす光を検出できるからである。
【0062】
光検出器(24)は,特に,第1の光学素子(4)の1/4波長板部分と-1/4波長板部分の周期(従って,
1/4波長板部分又は-1/4波長板部分の幅)と,CCDなどのx軸方向の周期とが一致しているものが好ましい。なお,CCDなどのy軸方向の周期は,x軸方向の周期と同じであっても,短くてもよいし,長くてもよい。
【0063】
なお,複数の検出器は,たとえば,第1の光学素子および第2の光学素子の様々な部分を透過した光であって,所定の条件を満たし第2の偏光子から出力されたものを検出できるように,たとえば一列に設けられてもよい。なお,本発明のイメージング装置のある実施態様は,光検出器を移動させるための移動機構を具備し,光検出器が移動できるものである。すなわち,たとえば,複数の検出器が一列に並んでいる場合,その長軸方向又は単軸方向に,複数の光検出器が移動できるものがあげられる。このように,光検出器が移動できれば,少ない検出器であっても,効果的に,観測物の空間的イメージを取得できることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の光学モジュール及びイメージング装置は,たとえば,所定の位置にある光を抽出できるので,新たな写真装置やその光学部品などとして利用されうる。すなわち,本発明は,光学機器などの分野で好適に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は,本発明の光学モジュールの概略図である。図1(A)は本発明の光学モジュールの概略図を示し,図1(B)は本発明の光学モジュールの上面図を示す。
【図2】図2は,本発明の光学モジュールの動作を説明するための図である。
【図3】図3は,焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間の空隙になく,第2の光学素子と第2のレンズとの間にある光の動作を説明するための図である。
【図4】図4は,焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間にある光の動作を説明するための図である。
【図5】図5は,焦点が第1の光学素子と第2の光学素子との間の空隙になく,第1のレンズと第1の光学素子の間にある光の動作を説明するための図である。
【図6】図6は,ある実施態様に係る光学モジュールの概略図を示す。図6(A)はある実施態様に係る光学モジュールの概略図を示し,図6(B)はその上面図を示す。
【図7】図7は,ある実施態様に係る光学モジュールを搭載した光学装置の例を説明するための図である。
【図8】図8は,数学的解析を説明するための光学装置の例を示す図である。
【図9】図9は,解析系のパラメータを説明するための図である。
【図10】図10は,焦点の空間的な位置を分類するための図である。
【図11】図11は,スリットがひとつの場合の,結合効率を示すグラフである。図11において,縦軸はz軸の位置を(D/2)で割った値であり,横軸はx軸の値をDtanθで割った値である。図11(A)は,縦軸及び横軸が-10〜10までの結合効率を示すグラフ(等高線図)である。図11(B) 縦軸及び横軸が-2〜2までの結合効率を示すグラフ(図11(A)の部分拡大図)である。
【図12】図12は,3つのスリットを2Dtanθ周期で設けた場合の結合効率を示すグラフである。
【図13】図13は,本発明のイメージング装置の概念図である。
【符号の説明】
【0066】
1 1/4波長板部分
2 −1/4波長板部分
3 接合部分
4 第1の光学素子
5 1/4波長板部分
6 −1/4波長板部分
7 接合部分
8 第2の光学素子
9 第1の光学素子と第2の光学素子の間の空隙
9a 空隙の長さ
10 光学モジュール
21 第1のレンズ
22 第1の偏光子
23 第2の偏光子
24 光検出器
25 第2のレンズ
26 光
27 光
28 光
29 光
31 光
32 光
33 焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1/4波長板部分(1)と-1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成された板状の第1の光学素子(4)と;
1/4波長板部分(5)と-1/4波長板部分(6)とが接合部分(7)を介して交互に形成された板状の第2の光学素子(8)と;
を具備し,
前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とは平行であり,
前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とは空隙(9)を隔てて重なり,
前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは前記空隙(9)を隔てて重なる
光学モジュール。
【請求項2】
前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と−1/4波長板部分(2)とは,それぞれ同一幅を有するストライプ状であり,前記第1の光学素子(4)にそれぞれ1個又は複数個設けられ;
前記第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)と−1/4波長板部分(6)とは,それぞれ同一幅を有するストライプ状であり,前記第2の光学素子(8)にそれぞれ1個又は複数個設けられる
請求項1に記載の光学モジュール。
【請求項3】
前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)との空隙の長さ(9a)が,1×10-2cm〜1cmである請求項1に記載の光学モジュール。
【請求項4】
前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とがフォトニック結晶により構成される請求項1に記載の光学モジュール。
【請求項5】
「前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とは空隙(9)を隔てて重なり,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは前記空隙(9)を隔てて重なる」替わりに,
前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは空隙(9)を隔てて重なり,
前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とは前記空隙(9)を隔てて重なる
請求項1に記載の光学モジュール。
【請求項6】
前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)及び前記第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)の替わりに1/2波長板部分を具備し,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)及び前記第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)の替わりに透過する光の位相変調を起こさない部分を具備するか,又は
前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)及び前記第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)の替わりに1/2波長板部分を具備し,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)及び前記第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)の替わりに透過する光の位相変調を起こさない部分を具備する,
請求項1に記載の光学モジュール。
【請求項7】
前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)及び前記第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)の替わりに+45度施光素子部分を具備し,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)及び前記第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)の替わりに-45度施光素子部分を具備するか,又は
前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)及び前記第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)の替わりに+45度施光素子部分を具備し,前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)及び前記第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)の替わりに-45度施光素子部分を具備する,
請求項1に記載の光学モジュール。
【請求項8】
レンズ(21)と;
前記レンズ(21)からの光が透過する光学モジュール(10)と;
前記光学モジュール(10)へ入射する光の偏光面を調整するための第1の偏光子(22)と;
前記光学モジュール(10)から出射する光を偏光分離するための第2の偏光子(23)と;
前記第2の偏光子(23)から出射する光を検出するための光検出器(24)と;
を具備し,
前記光学モジュール(10)は,
1/4波長板部分(1)と−1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成された板状の第1の光学素子(4)と;
1/4波長板部分(5)と−1/4波長板部分(6)とが接合部分(7)を介して交互に形成された板状の第2の光学素子(8)と;
を具備し,
前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とは平行であり,
前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の−1/4波長板部分(6)とは空隙(9)を隔てて重なり,
前記第1の光学素子(4)の−1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは前記空隙(9)を隔てて重なる光学モジュールか,又は
1/4波長板部分(1)と-1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成された板状の第1の光学素子(4)と;
1/4波長板部分(5)と-1/4波長板部分(6)とが接合部分(7)を介して交互に形成された板状の第2の光学素子(8)と;
を具備し,
前記第1の光学素子(4)と前記第2の光学素子(8)とは平行であり,
前記第1の光学素子(4)の1/4波長板部分(1)と第2の光学素子(8)の1/4波長板部分(5)とは空隙(9)を隔てて重なり,
前記第1の光学素子(4)の-1/4波長板部分(2)と第2の光学素子(8)の-1/4波長板部分(6)とは前記空隙(9)を隔てて重なる
光学モジュールである,
イメージング装置。
【請求項9】
前記光学モジュール(10)は,1/4波長板部分(1)と−1/4波長板部分(2)とが接合部分(3)を介して交互に形成される方向へ移動するための可動機構を具備する,
請求項8に記載のイメージング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−183303(P2007−183303A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380643(P2005−380643)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年11月23日に社団法人応用物理学会の分科会である日本光学会の主催する「日本光学会年次学術講演会 OJ2005」(平成17年11月23日)にて発表 平成17年11月25日付け日本経済新聞にて発表
【出願人】(302060650)株式会社フォトニックラティス (22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】