説明

光学ローパスフィルタ

【課題】特定の複屈折特性をもつ複屈折板や、任意の偏光特性を与えうる波長板を使用し、必要に応じてIRカット機能を有する複屈折板や波長板を使用することで、工業的に安価で特性が良好な光学ローパスフィルタを提供する。
を提供する。
【解決手段】複屈折板および波長板を含む部品からなる光学ローパスフィルタにおいて、上記の複屈折板、波長板が環状オレフィン系樹脂を含む材料からなり、かつ必要に応じて、複屈折板または波長板の少なくともいずれか一つがIRカット機能を有する光学ローパスフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光・電気変換手段を有するビデオカメラやデジタルスチルカメラあるいはスキャナーなどの固体撮像装置に使用する光学ローパスフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオカメラやデジタルスチルカメラあるいはスキャナーなどの撮像装置には、固体撮像装置が広く用いられている。係る固体撮像装置の光電変換素子を使用する場合、ナイキスト限界を越えた空間周波数成分は折り返し歪みを発生するため、予め光学ローパスフィルタで係る歪みを除去する必要がある。この光学ローパスフィルタとしては、通常、複屈折板と波長板を組み合わせたものが使用されており、係る複屈折板としては、水晶フィルタを用いたものや(特開平3−158089号公報)、ニオブ酸リチウムやルチルなどを用いたもの(特開平8−86980号公報)が提案されている。しかし、いずれも無機系の鉱物結晶を原材料として使用するため、加工が難しい、あるいは物質固有の結晶構造で複屈折性が決定されるために任意の複屈折のものを得ることが困難など、製造上の問題を有しているほか、高価であるという問題がある。一方、光学ローパスフィルタに使用される波長板も、従来は水晶を原材料としその結晶軸を考慮してカットすることにより製造されることが一般的であり、厚みの制御や位相差値の制御を行う上で制約が多いほか、高価であるという問題がある。
【0003】
また、光電変換素子の光の波長に対する感度を補正するために、光の波長で異なる特性を示す波長板を使用したり(特表昭61−501798号公報)、別途新たにIRカット機能を有すIRカットフィルタを貼り合わせて使用する方法(特開平11−282047号公報)が提案されている。しかし、特定波長に対応した波長板を製造するために従来の水晶を原材料として使用すると、複数の波長板を組み合わせる必要があるため小型化が難しく、また、IRカットフィルタを新たに貼付する方法では工程が増えることでコストが上がるとともに歩留まりが低下する問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、特定の複屈折特性をもつ複屈折板や、任意の偏光特性を与えうる波長板を使用し、必要に応じてIRカット機能を有する複屈折板や波長板を使用することで、工業的に安価で特性が良好な光学ローパスフィルタを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、複屈折板および波長板を含む部品からなる光学ローパスフィルタにおいて、上記複屈折板と波長板の少なくとも一方が環状オレフィン系樹脂を含む材料からなる光学ローパスフィルタが、従来の水晶製部品を使用したローパスフィルタと同等の特性を示し、かつ、製造が容易でしかも小型化が可能であり必要に応じてIRカット機能を付与することもでき、さらにコストを大幅に低減できることを見出し本発明の完成に至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下に詳細に説明する。
本発明において、光学ローパスフィルタの複屈折板あるいは波長板に使用する位相差フィルムは、特に限定されるものではなく、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂などの高分子からなるフィルムを延伸したものを、平坦性、定形性維持のためガラス基板に接着したり、2枚のガラス基板で挾持したものが使用できる。しかしながら、環状オレフィン系樹脂を含む材料からなる透明樹脂フィルムを延伸して得られる位相差フィルムを用いることが、得られる波長板が、耐熱性や位相差の安定性の面で特に優れたものとなるので好ましい。
ここで、環状オレフィン系樹脂としては、次のような(共)重合体が挙げられる。
▲1▼下記一般式(1)で表される特定単量体の開環重合体。
▲2▼下記一般式(1)で表される特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体。
▲3▼上記▲1▼または▲2▼の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体。
▲4▼上記▲1▼または▲2▼の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体。
▲5▼下記一般式(1)で表される特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体。
▲6▼下記一般式(1)で表される特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体。
【0007】
【化1】



【0008】
〔式中、R〜R4 は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていてもよい。RとRまたはR3 とRは、一体化して2価の炭化水素基を形成しても良く、RまたはRとRまたはRとは互いに結合して、単環または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。〕
【0009】
<特定単量体>
上記特定単量体の具体例としては、次のような化合物が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−8−デセン、
トリシクロ[6.2.1.02,7]−3−ウンデセン、
【0010】
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,1]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.1,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.1,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,1]−3−ドデセン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,1]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.1,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.1,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,1]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.1,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
などを挙げることができる。
これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0011】
特定単量体のうち好ましいのは、上記一般式(1)中、RおよびRが水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、さらに好ましくは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基、特に好ましくは水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基であり、RおよびRが水素原子または一価の有機基であって、RおよびRの少なくとも一つは水素原子および炭化水素基以外の極性を有する極性基を示であり、mは0〜3の整数、pは0〜3の整数であり、より好ましくはm+p=0〜4、さらに好ましくは0〜2、とくに好ましくはm=1、p=0であるものである。
上記特定単量体の極性基としては、ハロゲン、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、アシル基、シリル基、アルコキシシリル基、アリロキシシリル基などが挙げられる。これらの中では、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基が好ましい。
また、これら極性基は、炭素数1〜10のアルキレン基、あるいは酸素原子、窒素原子、イオウ原子を含む連結基を介して結合していてもよい。
【0012】
特定単量体のうち、特に、RよびRの少なくとも一つが式−(CHCOORで表される極性基である単量体は、得られる環状オレフィン系樹脂が高いガラス転移温度と低い吸湿性、各種材料との優れた密着性を有するものとなる点で好ましい。上記の特定の極性基にかかる式において、Rは、通常、炭素原子数1〜12、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2の炭化水素基であり、アルキル基であることが特に好ましい。また、nは、通常、0〜5であるが、nの値が小さいものほど、得られる環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くなるので好ましく、さらにnが0である特定単量体は、その合成が容易である点で、また、得られる環状オレフィン系樹脂がガラス転移温度の高いものとなる点で好ましい。
【0013】
さらに、特定単量体は、上記一般式(1)においてRまたはRの少なくとも1つがアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、さらに好ましくは1〜2のアルキル基、特にメチル基であることが好ましく、特にこのアルキル基が上記の式−(CHCOORで表される特定の極性基が結合した炭素原子と同一の炭素原子に結合されていることが好ましい。また、一般式(1)においてp=0、m=1である特定単量体は、ガラス転移温度の高い環状オレフィン系樹脂が得られる点で好ましい。
これらのうち、得られる開環重合体の耐熱性の面と、本発明の波長板として使用する時の複数枚貼り合わせる際の貼り合わせ前後における位相差の変化を極力抑えられる点から、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンが好ましい。
【0014】
<共重合性単量体>
共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましいのは5〜12である。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
特定単量体/共重合性単量体の好ましい使用範囲は、重量比で100/0〜50/50であり、さらに好ましくは100/0〜60/40である。
【0015】
<開環重合触媒>
本発明において、▲1▼特定単量体の開環重合体、および▲2▼特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体を得るための開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えば、Mg、Caなど)、IIB族元素(例えば、Zn、Cd、Hgなど)、IIIA族元素(例えば、B、Alなど)、IVA族元素(例えば、Si、Sn、Pbなど)、あるいはIVB族元素(例えば、Ti、Zrなど)の化合物であって、少なくとも1つの該元素−炭素結合あるいは該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。また、この場合に触媒の活性を高めるために、後述の(c)添加剤が添加されたものであってもよい。
【0016】
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl 、MoCl 、ReOCl などの特開平1−132626号公報第8頁左下欄第6行〜第8頁右上欄第17行に記載の化合物を挙げることができる。
(b)成分の具体例としては、n−CLi、(C Al、(C AlCl、(C1.5AlCl1.5、(C)AlCl、メチルアルモキサン、LiHなど特開平1−132626号公報第8頁右上欄第18行〜第8頁右下欄第3行に記載の化合物を挙げることができる。
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、さらに特開平1−132626号公報第8頁右下欄第16行〜第9頁左上欄第17行に示される化合物を使用することができる。
【0017】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体とのモル比で「(a)成分:特定単量体」が、通常、1:500〜1:50,000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:10,000となる範囲とされる。
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で(a):(b)が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲とされる。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で(c):(a)が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲とされる。
【0018】
<重合反応用溶媒>
開環重合反応において用いられる溶媒(分子量調節剤溶液を構成する溶媒、特定単量体および/またはメタセシス触媒の溶媒)としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素、クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどの、ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリールなどの化合物、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類などを挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒の使用量としては、「溶媒:特定単量体(重量比)」が、通常、1:1〜10:1となる量とされ、好ましくは1:1〜5:1となる量とされる。
【0019】
<分子量調節剤>
得られる開環(共)重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節する。
ここに、好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
分子量調節剤の使用量としては、開環重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルとされる。
【0020】
▲2▼開環共重合体を得るには、開環重合工程において、特定単量体と共重合性単量体とを開環共重合させてもよいが、さらに、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン化合物、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖に炭素−炭素間二重結合を2つ以上含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に特定単量体を開環重合させてもよい。
【0021】
以上のようにして得られる開環(共)重合体は、そのままでも用いられるが、これをさらに水素添加して得られた▲3▼水素添加(共)重合体は、耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
<水素添加触媒>
水素添加反応は、通常の方法、すなわち開環重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が挙げられる。
【0022】
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は、粉末でも粒状でもよい。
【0023】
これらの水素添加触媒は、開環(共)重合体:水素添加触媒(重量比)が、1:1×10−6〜1:2となる割合で使用するとされる。
このように、水素添加することにより得られる水素添加(共)重合体は、優れた熱安定性を有するものとなり、成形加工時や製品としての使用時の加熱によっても、その特性が劣化することはない。ここに、水素添加率は、通常、50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0024】
上記のようにして得られた開環(共)重合体には、公知の酸化防止剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−ジオキシ−3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン;紫外線吸収剤、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどを添加することによって安定化することができる。また、加工性を向上させる目的で、滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0025】
また、水素添加(共)重合体の水素添加率は、500MHz、H−NMRで測定した値が50%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れたものとなり、本発明の波長板として使用した場合に長期にわたって安定した特性を得ることができる。
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂は、そのゲル含有量が5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。
ここで、ゲル含有量は、以下のようにして測定することができる。
環状オレフィン系樹脂を秤量し、その値をmとする。次いで、秤量した環状オレフィン系樹脂を良溶媒に溶解し、この溶液を0.1μmのメンブレンフィルターによりろ過し、メンブレンフィルター上に捕集された環状オレフィン系樹脂の量を測定し、その値をmとする。そして、下記式;
ゲル含有量(重量%)=(m /m )×100
によりゲル含有量を求める。
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂のゲル含有量が5重量%を超える場合には、係る樹脂から得られるフィルムの平滑性に問題が生じたり、延伸して位相差フィルムとした際に、位相差ムラなどの光学的な欠陥の原因となったりすることがある。
【0026】
また、本発明の環状オレフィン系樹脂として、▲4▼上記▲1▼または▲2▼の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体も使用できる。
<フリーデルクラフト反応による環化>
▲1▼または▲2▼の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化する方法は特に限定されるものではないが、特開昭50−154399号公報に記載の酸性化合物を用いた公知の方法が採用できる。酸性化合物としては、具体的には、AlCl、BF、FeCl、Al、HCl、CHClCOOHなどのルイス酸やブレンステッド酸などが用いられる。
環化された開環(共)重合体は、▲1▼または▲2▼の開環(共)重合体と同様に水素添加できる。
【0027】
さらに、本発明の環状オレフィン系樹脂として、▲5▼上記特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体も使用できる。
<不飽和二重結合含有化合物>
不飽和二重結合含有化合物としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテンなど、好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のオレフィン系化合物を挙げることができる。
特定単量体/不飽和二重結合含有化合物の好ましい使用範囲は、重量比で90/10〜40/60であり、さらに好ましくは85/15〜50/50である。
【0028】
本発明において、▲5▼特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体を得るには、通常の付加重合法を使用できる。
<付加重合触媒>
上記▲5▼飽和共重合体を合成するための触媒としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびバナジウム化合物から選ばれた少なくとも一種と、助触媒としての有機アルミニウム化合物とが用いられる。
ここで、チタン化合物としては、四塩化チタン、三塩化チタンなどを、またジルコニウム化合物としてはビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどを挙げることができる。
【0029】
さらに、バナジウム化合物としては、一般式
VO(OR)、またはV(OR)
〔ただし、Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子であって、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦(a+b)≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦(c+d)≦4である。〕
で表されるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与付加物が用いられる。
上記電子供与体としては、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物、アルコキシシランなどの含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアナートなどの含窒素電子供与体などが挙げられる。
【0030】
さらに、助触媒としての有機アルミニウム化合物としては、少なくとも1つのアルミニウム−炭素結合あるいはアルミニウム−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも一種が用いられる。
上記において、例えばバナジウム化合物を用いる場合におけるバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物の比率は、バナジウム原子に対するアルミニウム原子の比(Al/V)が2以上であり、好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜20の範囲である。
【0031】
付加重合に使用される重合反応用溶媒は、開環重合反応に用いられる溶媒と同じものを使用することができる。また、得られる▲5▼飽和共重合体の分子量の調節は、通常、水素を用いて行われる。
【0032】
さらに、本発明の環状オレフィン系樹脂として、▲6▼上記特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体も使用できる。
<ビニル系環状炭化水素系単量体>
ビニル系環状炭化水素系単量体としては、例えば、4−ビニルシクロペンテン、2−メチルー4−イソプロペニルシクロペンテンなどのビニルシクロペンテン系単量体、4−ビニルシクロペンタン、4−イソプロペニルシクロペンタンなどのビニルシクロペンタン系単量体などのビニル化5員環炭化水素系単量体、4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセンなどのビニルシクロヘキセン系単量体、4−ビニルシクロヘキサン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキサンなどのビニルシクロヘキサン系単量体、スチレン、α―メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−フェニルスチレン、p−メトキシスチレンなどのスチレン系単量体、d−テルペン、1−テルペン、ジテルペン、d−リモネン、1−リモネン、ジペンテンなどのテルペン系単量体、4−ビニルシクロヘプテン、4−イソプロペニルシクロヘプテンなどのビニルシクロヘプテン系単量体、4−ビニルシクロヘプタン、4−イソプロペニルシクロヘプタンなどのビニルシクロヘプタン系単量体などが挙げられる。好ましくは、スチレン、α−メチルスチレンである。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0033】
<シクロペンタジエン系単量体>
本発明の▲6▼付加型(共)重合体の単量体に使用されるシクロペンタジエン系単量体としては、例えばシクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン、5,5−メチルシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンである。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0034】
上記特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体は、上記▲5▼特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体と同様の付加重合法で得ることができる。
また、上記付加型(共)重合体の水素添加(共)重合体は、上記▲3▼開環(共)重合体の水素添加(共)重合体と同様の水添法で得ることができる。
【0035】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂の好ましい分子量は、固有粘度〔η〕inh で0.2〜5dl/g 、さらに好ましくは0.3〜3dl/g 、特に好ましくは0.4〜1dl/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は8,000〜300,000、さらに好ましくは10,000〜100,000、特に好ましくは12,000〜80,000であり、重量平均分子量(Mw)は20,000〜500,000、さらに好ましくは30,000〜350,000、特に好ましくは40,000〜250,000の範囲のものが好適である。
固有粘度〔η〕inhまたは重量平均分子量が上記範囲にあることによって、環状オレフィン系樹脂の成形加工性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性と、本発明の光学ローパスフィルタとして使用したときの特性の安定性とのバランスが良好となる。
上記のごとく得られる開環重合体または水添物の23℃における飽和吸水率は、好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%の範囲にある。飽和吸水率がこの範囲内であると、複屈折性や位相差が均一であり、得られる環状オレフィン系樹脂フィルムとガラス基板などとの密着性が優れ、使用途中で剥離などが発生せず、また、酸化防止剤などとの相溶性にも優れ、多量に添加することも可能となる。なお、上記の飽和吸水率はASTM D570に従い、23℃水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより得られる値である。
飽和吸水率が0.05重量%未満であると、ガラス基板や透明支持体との密着性が乏しくなり、剥離を生じやすくなり、一方2重量%を超えると、環状オレフィン系樹脂フィルムが吸水により寸法変化を起こしやすくなる。
【0036】
本発明おいては、光弾性係数(C)が0〜100(×10−12Pa−1)であり、かつ応力光学係数(C)が1,500〜4,000(×10−12Pa−1)であるような環状オレフィン系樹脂が好適に使用される。
光弾性係数(C)および応力光学係数(C)については、種々の文献(Polymer Journal,Vol.27,No,9 p943−950(1995),日本レオロジー学会誌,Vol.19,No.2, p93−97(1991),光弾性実験法,日刊工業新聞社,昭和50年第7版)に記載されており、前者がポリマーのガラス状態での応力による位相差の発生程度を表すのに対し、後者は流動状態での応力による位相差の発生程度を表す。
光弾性係数(C)が大きいことは、ポリマーをガラス状態下で使用した場合に外的因子または自らの凍結した歪みから発生した歪みから発生する応力などにおいて敏感に位相差を発生しやすくなってしまうことを表し、例えば本発明のように、積層した際の貼り合わせ時の残留歪みや、温度変化や湿度変化などにともなう材料の収縮により発生する微小な応力によって不必要な位相差変化を発生しやすいことを意味する。このことからできるだけ光弾性係数(C)は小さい程よい。
一方、応力光学係数(C)が大きいことは、環状オレフィン系樹脂フィルムに位相差の発現性を付与する際に少ない延伸倍率で所望の位相差を得られるようになったり、大きな位相差を付与しうる位相差フィルムを得やすくなったり、同じ位相差を所望の場合には応力光学係数(C)が小さいものと比べてフィルムを薄肉化できるという大きなメリットがある。
以上のような見地から、光弾性係数(C)は、通常、0〜100(×10−12Pa)、好ましくは0〜80(×10−12Pa−1)、さらに好ましくは0〜50(×10−12Pa−1)、より好ましくは0〜30(×10−12Pa−1)、特に好ましくは0〜20(×10−12Pa−1)である。光弾性係数が100(×10−12Pa)を超えた場合には、貼り合わせ時に発生する応力、使用する際の環境変化などによって位相差が変化してしまうため好ましくない。
また、応力光学係数(C)としては、好ましくは1,500〜4,000(×10−1Pa−1)、さらに好ましくは1,700〜4,000(×10−12Pa−1)、特に好ましくは2,000〜4,000(×10−12Pa−1)のものが好適に使用される。応力光学係数(C)が1,500(×10−12Pa−1)未満では所望の位相差を発現させる際の延伸時に複屈折性や位相差のムラが発生しやすくなり、一方4,000(×10−12Pa−1)を超える場合には延伸時の延伸倍率コントロールがしにくくなる問題が発生することがある。
【0037】
本発明に使用される環状オレフィン系樹脂の水蒸気透過度は、40℃、90%RHの条件下で25μm厚のフィルムとしたときに、通常、20〜1,000g/m・24hrであり、好ましくは30〜800g/m・24hrであり、さらに好ましくは40〜500g/m・24hrである。水蒸気透過度を本範囲とすることで、ローパスフィルタを製造する際に使用した接着剤や粘着剤の吸水(湿)が適度に制御されて後工程や使用時の膨れ、剥がれなどを好適に防ぐことが可能となることから好ましい。
【0038】
本発明に使用される環状オレフィン系樹脂は、上記のような▲1▼、▲2▼開環(共)重合体、▲3▼、▲4▼水素添加(共)重合体、▲5▼飽和共重合体、または▲6▼付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体より構成されるが、これに公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加してさらに安定化することができる。また、加工性を向上させるために、滑剤などの従来の樹脂加工において用いられる添加剤を添加することもできる。
【0039】
本発明に使用される環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、好ましくは100〜350℃、さらに好ましくは110〜250℃、特に好ましくは120〜200℃である。Tgが100℃未満の場合は、光源やその隣接部品からの熱により、光学ローパスフィルタとして使用したときの特性変化が大きくなり好ましくない。一方、Tgが350℃を超えると、延伸加工などTg近辺まで加熱して加工する場合に樹脂が熱劣化する可能性が高くなり好ましくない。
【0040】
本発明の光学ローパスフィルタに用いられる環状オレフィン系樹脂フィルムは、上記の環状オレフィン系樹脂を溶融成形法あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)などによりフィルムもしくはシートとすることで得ることができる。このうち、膜厚の均一性および表面平滑性が良好になる点から溶剤キャスト法が好ましい。
溶剤キャスト法により環状オレフィン系樹脂フィルムを得る方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を適用すればよいが、例えば、本発明の環状オレフィン系樹脂を溶媒に溶解または分散させて適度の濃度の液にし、適当なキャリヤー上に注ぐかまたは塗布し、これを乾燥した後、キャリヤーから剥離させる方法が挙げられる。
【0041】
以下に、溶剤キャスト法により環状オレフィン系樹脂フィルムを得る方法の諸条件を例示するが、本発明は係る諸条件に限定されるものではない。
環状オレフィン系樹脂を溶媒に溶解または分散させる際には、該樹脂の濃度を、通常は0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは10〜35重量%にする。該樹脂の濃度を上記未満にすると、フィルムの厚みを確保することが困難になる、また、溶媒蒸発にともなう発泡などによりフィルムの表面平滑性が得にくくなるなどの問題が生じる。一方、上記を超えた濃度にすると、溶液粘度が高くなりすぎて得られる環状オレフィン系樹脂フィルムの厚みの均一性や表面平滑性に問題が生じることがあり好ましくない。
なお、室温での上記溶液の粘度は、通常は1〜1,000,000mPa・s、好ましくは10〜100,000mPa・s、さらに好ましくは100〜50,000mPa・s、特に好ましくは1,000〜40,000mPa・sとされる。
【0042】
使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノールなどのセロソルブ系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒、シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1,2−ジメチルシクロヘキサンなどのシクロオレフィン系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、1−ペンタノール、1−ブタノールなどのアルコール系溶媒を挙げることができる。
【0043】
また、上記以外でも、SP値(溶解度パラメーター)が、通常、10〜30(MPa1/)、好ましくは10〜25(MPa1/2)、さらに好ましくは15〜25(MPa/2)、特に好ましくは15〜20(MPa1/2)の範囲の溶媒を使用することにより、表面均一性と光学特性の良好な環状オレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。
【0044】
上記溶媒は、単独で若しくは複数を混合して使用することができる。その場合には、混合系としたときのSP値の範囲を上記範囲内とすることが好ましい。このとき、混合系でのSP値の値は、重量比で予測することができ、例えば二種の混合ではそれぞれの重量分率をW1,W2、SP値をSP1,SP2とすると混合系のSP値は下記式:
SP値=W1・SP1+W2・SP2
により計算した値として求めることができる。
【0045】
環状オレフィン系樹脂フィルムを溶剤キャスト法により製造する方法としては、上記溶液をダイスやコーターを使用して金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、テフロンベルトなどの基材の上に塗布し、その後溶剤を乾燥して基材よりフィルムを剥離する方法が一般に挙げられる。また、スプレー、ハケ、ロールスピンコート、デッピングなどで溶液を基材に塗布し、その後溶剤を乾燥して基材よりフィルムを剥離することにより製造することもできる。なお、繰り返し塗布することで厚みや表面平滑性などを制御してもよい。
【0046】
上記溶剤キャスト法の乾燥工程については、特に制限はなく一般的に用いられる方法、例えば多数のローラーを介して乾燥炉中を通過させる方法などで実施できるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴い気泡が発生すると、フィルムの特性を著しく低下させるので、これを避けるために、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程での温度あるいは風量を制御することが好ましい。
【0047】
また、環状オレフィン系樹脂フィルム中の残留溶媒量は、通常は10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。ここで、残留溶媒量が10重量%以上であると、実際に使用したときに経時による寸法変化が大きくなり好ましくない。また、残留溶媒によりTgが低くなり、耐熱性も低下することから好ましくない。
【0048】
なお、後述する延伸工程を好適に行うためには、上記残留溶媒量を上記範囲内で適宜調節する必要がある場合がある。具体的には、延伸配向時の複屈折性や位相差を安定して均一に発現させるために、残留溶媒量を通常は10〜0.1重量%、好ましくは5〜0.1重量%、さらに好ましくは1〜0.1重量%にすることがある。溶媒を微量残留させることで、延伸加工が容易になる、あるいは複屈折性や位相差の制御が容易になる場合がある。
【0049】
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの厚さは、通常は0.1〜3,000μm、好ましくは0.1〜1,000μm、さらに好ましくは1〜500μm、最も好ましくは5〜300μmである。0.1μm未満の厚みの場合実質的にハンドリングが困難となる。一方、3,000μmを超える場合、ロール状に巻き取ることが困難になるとともに、光の透過率が低下することがあるので好ましくない。
【0050】
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの厚み分布は、通常は平均値に対して±20%以内、好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動は、通常は10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下であることが望ましい。かかる厚み制御を実施することにより、延伸配向した際の複屈折性や位相差のムラを防ぐことができ、また、本発明の光学ローパスフィルタとしたときに収差特性や、光の分離特性が良好となることから好ましい。
【0051】
本発明の光学ローパスフィルタの複屈折板や波長板に使用される位相差フィルムには、上記方法によって得た環状オレフィン系樹脂フィルムを延伸加工したものが好適に使用される。具体的には、公知の一軸延伸法あるいは二軸延伸法により製造することができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、円周の異なるロールを利用する縦一軸延伸法などあるいは横一軸と縦一軸を組合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法などを用いることができる。
【0052】
一軸延伸法の場合、延伸速度は、通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
二軸延伸法の場合、同時2方向に延伸を行う場合や一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する場合がある。これらの場合、2つの延伸軸の交わり角度は、通常は120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよく、通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
【0053】
延伸加工温度は、特に限定されるものではないが、本発明の環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、通常はTg±30℃、好ましくはTg±10℃、さらに好ましくはTg−5〜Tg+10℃の範囲である。上記範囲内とすることで、複屈折性や位相差のムラの発生を抑えることが可能となり、また、複屈折性を支配する屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
【0054】
延伸倍率は、所望する特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は1.01〜10倍、好ましくは1.1〜5倍、さらに好ましくは1.1〜3倍である。延伸倍率が10倍を超える場合、位相差の制御が困難になる場合がある。
【0055】
延伸したフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分、さらに好ましくは1分〜60分静置されることが好ましい。これにより、複屈折性や位相差特性の経時変化が少なく安定した位相差フィルムが得られる。
【0056】
また、厚み方向の屈折率や光軸を制御する目的で、上記のフィルム延伸方法に加えて、延伸後のフィルム表面に、例えばポリエチレン製やポリプロピレン製、ポリエチレンテレフターレートなどの公知の収縮フィルムを貼って加熱処理する工程を行うことも有用である。本収縮フィルムを貼付した後の加熱処理により、一旦延伸配向した高分子の分子鎖が特定方向に縮められることになり、厚み方向の屈折率や厚み方向の光軸の傾きなどを制御することができる。このとき、フィルムの片面または両面に収縮フィルムを貼ることができ、また、両面貼る場合には各面に貼るフィルムの収縮率が異なるものを好適に使用できる。そうすることで、厚み方向の光軸の傾きを制御することが可能である。
【0057】
また、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの線膨張係数は、温度20℃から100℃の範囲において、好ましくは1×10−4(1/℃)以下であり、さらに好ましくは9×10−5(1/℃)以下であり、特に好ましくは8×10−5(1/℃)以下であり、最も好ましくは7×10−5(1/℃)以下である。また、延伸した場合には、延伸方向とそれに垂直方向の線膨張係数差が好ましくは5×10−5(1/℃)以下であり、さらに好ましくは3×10−5(1/℃)以下であり、特に好ましくは1×10−5(1/℃)以下である。線膨張係数を上記範囲内とすることで、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムからなる位相差フィルムを使用して本発明の光学ローパスフィルタとしたときに、使用時の温度あるいは湿度の影響による微少な変形や応力変化に起因する位相差変化などに伴う特性の変化が抑えられ、本発明の光学ローパスフィルタとして使用したときに長期の特性の安定が得ることができる。
【0058】
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向し透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、延伸前のフィルムの位相差値と延伸倍率、延伸温度、延伸配向後のフィルムの厚さにより制御することができる。ここで、位相差は複屈折光の屈折率差(△n)と厚さ(d)の積(△nd)で定義される。
延伸前のフィルムが一定の厚さの場合、延伸倍率が大きいフィルムほど位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差値の位相差フィルムを得ることができる。
【0059】
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂フィルムからなる位相差フィルムの光線波長550nmにおける位相差値は、通常、10〜10,000nm、好ましくは50〜8,000nm、さらに好ましくは80〜3,000nm、特に好ましくは100〜1,000nmである。位相差値が10nm未満の場合、光学ローパスフィルタの部品として使用するには位相差値が小さすぎて不適であり、一方、10,000nmを超える場合、延伸加工により精度よく位相差値を制御することが困難になる場合がある。
【0060】
なお、上記位相差フィルムは、1枚単独で使用してもよいが、2枚以上を積層して使用することも可能である。また、積層にあたっては、位相差フィルムの間にガラス基板などの透明支持体を挟んでもよく、逆に、位相差フィルムを複数の透明支持体に挟んでもよい。もちろん、位相差フィルム1枚単独で使用する場合においても係る透明支持体と積層してもよいことは言うまでもないことであり、透明支持体と積層することで、熱や湿度による寸法または形状の変化を抑制でき、耐久性が優れたものとなる。
位相差フィルムを複数枚積層して使用する際の積層枚数については特に限定されないが、積層枚数が多くなると、各位相差フィルムの光軸の角度を調整して積層することが難しくなり、また、厚みも増すため、通常、2〜10枚、好ましくは2〜5枚、さらに好ましくは2〜3枚である。
【0061】
本発明において、上記透明支持体としては有機材料および/または無機材料からなるものが使用できるが、無機材料からなる場合が好ましく、透明性などの光学特性と波長板としての長期安定性の面からガラスが特に好ましい。一方、有機材料を使用する場合には、連続使用可能温度(1,000時間以上曝されても変形や着色が発生しない温度)が、通常は100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、水蒸気透過度が40℃、90%RH、25μm厚の条件下で、通常は20g/m・24hr以下、好ましくは10g/m・24hr以下、さらに好ましくは5g/m・24hr以下のものが好適に使用される。連続使用可能温度や水蒸気透過度が上記範囲外の場合、波長板として長期にわたり使用した時に、特性の高度な安定性が得にくくなる。
なお、上記透明支持体は、同一もしくは異種の透明材料を組み合わせて得られたもの、例えば、ガラス表面に蒸着、スパッタリングあるいはコーティングなどの方法で無機酸化物層や有機材料層を設けたものであってもよい。
【0062】
また、透明支持体の屈折率と接着層との屈折率差は、好ましくは0.20以内、さらに好ましくは0.15以内、特に好ましくは0.10以内、最も好ましくは0.05以内であり、また、透明支持体と本発明の樹脂フィルムとの屈折率差は、好ましくは0.20以内、さらに好ましくは0.15以内、特に好ましくは0.10以内、最も好ましくは0.05以内である。屈折率差を本範囲内とすることで、透過光の反射によるロスを最小限に抑えることができ好ましい。
【0063】
本発明において透明支持体の形状は特に限定されるものではなく、平板状であっても回折格子形状やプリズム形状など光学的な機能を有する形状であってもよい。また、厚さは、通常、0.01〜5mm、好ましくは0.05〜3mm、さらに好ましくは0.05〜1mmである。0.01mm未満であると、剛性が不足するとともにハンドリング性に劣り、一方、5mmを超えると波長板としての厚さが大きくなり、光学ローパスフィルタの小型化が難しくなる。
【0064】
本発明において位相差フィルムどうしを積層したり、透明支持体に積層するための粘着剤や接着剤としては、光学用のものであれば公知のものが使用でき、具体的には天然ゴム系、合成ゴム系、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー系、ポリビニルエーテル系、アクリル系、変性ポリオレフィン系の粘着剤、およびこれらにイソシアナートなどの硬化剤を添加した硬化型粘接着剤、ポリウレタン系樹脂溶液とポリイソシアナート系樹脂溶液を混合するドライラミネート用接着剤、合成ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などが挙げられる。
また、形態で分類するならば、溶剤型、水分散型、無溶剤型何れでもよく、硬化方法で分類するならば、2液混合熱硬化型、1液熱硬化型、溶媒乾燥型、紫外線などの放射線硬化型などの公知のものが挙げられる。これらの中で、アクリル系の紫外線硬化型の接着剤が好ましく、特に無溶剤型のものは位相差ムラが生じにくく好ましい。
【0065】
本発明においては位相差フィルムまたは透明支持体の片面または両面に、反射防止膜を形成してもよく、係る反射防止膜を形成する方法としては、例えば、蒸着やスパッタにより金属酸化物の透明皮膜を設ける公知の方法が挙げられる。このようにして設けられる反射防止層は、係る金属酸化物の多層膜となっていることが、広い波長領域にわたって低い反射率を得られるので好ましい。
また、フッ素系共重合体などの屈折率が位相差フィルムもしくは透明基材よりも低い透明有機材料を有機溶媒に溶解し、その溶液をバーコーター、スピンコーターあるいはグラビアコーターなどを用いて、位相差フィルムや透明基材の上に塗布し、加熱・乾燥(硬化)させることにより反射防止層を設ける方法も挙げられる。なお、この場合、係る反射防止層と位相差フィルムもしくは透明基材との間に、位相差フィルムもしくは透明基材よりも屈折率の高い透明材料層を設けておくと、反射率をより低減できる。
【0066】
また、本発明に使用される位相差フィルム中の異物数としては可能な限り少ない方がよく、平均粒径10μm以上のものが、通常、10(個/mm)以下、好ましくは5(個/mm)以下、さらに好ましくは1(個/mm)以下である。10μm以上の異物が位相差フィルム中に10(個/mm)を超えた数だけ存在すると、画素抜けが発生して好ましくない。
ここで、波長板中の異物とは、光の透過を低下させるものやその異物の存在により光の進行方向を大きく変えるものが含まれる。前者の例としては塵や埃、樹脂の焼けや金属粉末、鉱物などの粉末などが挙げられ、後者の例としては他樹脂のコンタミや屈折率が異なる透明物質などが挙げられる。
【0067】
[複屈折板]
本発明の光学ローパスフィルタに使用される複屈折板について説明する。本発明に使用される複屈折板は、前述の様に、特に限定されるものではなく、公知の複屈折性を備える雲母、石英、水晶、方解石、LiNbO3 、LiTaO3 などの単結晶から形成されるものに加え、ガラス基板などの下地基板に対して斜め方向から無機材料を蒸着することにより得られる下地基板の表面に複屈折膜を有するもの、複屈折性を有するLB(Langmuir−Blodget)膜を有するものや、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂などの高分子フィルムを延伸し配向させた位相差フィルムを、単独で、もしくは平坦性や定形性維持のためガラス基板に接着したものが使用される。これらのうち、製造の容易さやコストの面で高分子フィルムを延伸し配向させた位相差フィルムが好ましく、特に、光学特性の制御面や安定性面、ならびにガラスと貼り合わせたときの密着性や耐久性などの面から、環状オレフィン系樹脂を含むフィルムを延伸したものが好適に使用される。
【0068】
複屈折板の果たす役割は、公知の文献、例えば、高純度シリカの応用技術〔1991年(株)シーエムシー社発行、p78〜91〕や固体撮像素子の基礎(1999年日本理工出版会発行、p55〜61)、特開昭58−198978号公報、特開平8−86980号公報などに詳細に既述されているが、概略を述べると、材料の持つ複屈折性により、複屈折板に入射された光束を正常光と異常光に分離するものである。複屈折板に要求される特性としては、光線透過率など種々あるが、最も重要な特性はこの分離特性であり、材料の複屈折性が支配するものである。例えば、複屈折板の厚さをtとすると、正常光と異常光との間の光路シフト量dは、次式(a)で表される。
d=t×tanθ  … (a)
[ただし、tanθ=(ne−no)×tanβ/(ne+(no×tanβ)):ここで、neは異常光線の屈折率、noは常光線の屈折率、θは最大分離角であり、tanβがne/noの時にdは最大となる。]
このことから、屈折率の異方性(neとnoとの差)の影響を大きく受け、この差が大きいほど光路シフト量が増えて厚みが減らせることから好ましいが、他特性などとのバランスも重要である。本発明の複屈折板として、高分子フィルムを延伸配向させた位相差フィルムを使用すると、屈折率の異方性と厚みを任意に制御でき、また加工コストを低減できるので好ましい、特に、環状オレフィン系樹脂製の位相差フィルムを使用すると、熱や湿度に対する耐久性に優れたものとなるため好ましい。
【0069】
[波長板]
本発明の光学ローパスフィルタに使用される波長板について説明する。本発明に使用される波長板は、前述の様に、特に限定されるものではなく、公知の複屈折性を備える雲母、石英、水晶、方解石、LiNbO3、LiTaO3などの単結晶から形成される波長板に加え、ガラス基板などの下地基板に対して斜め方向から無機材料を蒸着することにより得られる下地基板の表面に複屈折膜を有する波長板、複屈折性を有するLB(Langmuir−Blodget)膜を有する波長板や、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂などの高分子フィルムを延伸し配向させた位相差フィルムが使用される。これらのうち、製造の容易さやコストの面で高分子フィルムを延伸し配向させた位相差フィルムが好ましく、特に、光学特性の制御面や安定性面、ならびにガラスと貼り合わせたときの密着性や耐久性などの面から、環状オレフィン系樹脂を含むフィルムを延伸したものが好適に使用される。
【0070】
波長板の果たす役割は、上記公知の文献などに詳細に既述されているが、概略を述べると、複屈折板によって直線偏光(正常光と異常光)となった入射光を円偏光に変換する、いわゆる1/4波長板としての機能を発現するものである。すなわち、2枚の複屈折板の間に波長板を設けると、第一の複屈折板によって直線偏光に変換された入射光が波長板により再度円偏光に変換されて第二の複屈折板に入射するため、高次の偏光分離が可能となる。
このことから、本発明の波長板に求められる位相差値は、通常、可視光範囲において(X+1/4)λ[ここで、Xは0または1以上の整数、λは光の波長]であることが理想的には好ましいが、現実的には下記式(b)で表される波長依存性の値が(0.20〜0.30)+Xであることが好ましく、さらに好ましくは(0.22〜0.28)+X、特に好ましくは(0.24〜0.26)+Xである。なお、ここでXは0または1以上の整数を表すが、X=0の場合が、製造しやすいので好ましい。
Re(λ)/λ   ……(b)
[式中、λは光線波長、Re(λ)は当該光線波長におけるnmで表された位相差値]
なお、上記で示した位相差値の波長依存性は、光学ローパスフィルタやそれを用いる光学系の設計により適宜最適化されるため、具体的な特性は上記範囲に限定されるものではない。
【0071】
本発明で使用される波長板は、好適には上記の位相差フィルム複数枚を、それぞれの光軸が交差するように、もしくは全部または一部の光軸が平行に重なるように積層したものが用いられる。それにより、任意の光線波長に対する位相差値を制御でき、広い波長域にわたり所定の位相差値を示すことが可能となる。
このときの貼り合わせ角度は、使用する位相差フィルムの位相差値と求められる光学特性とにより適宜選択されるが、例えば、上記の式(b)で表される値を上述の範囲とするためには、光線波長550nmにおける位相差値が、100〜150nmのものと250〜300nmの位相差フィルムを各1枚組み合わせて使用することが好ましく、各位相差フィルムの光軸の貼り合わせ角度としては、通常、10〜90度、好ましくは30〜80度、さらに好ましくは50〜70度である。
【0072】
またさらに、上記の式(b)で表される値を上述の範囲とするためには、光線波長550nmにおける位相差が400〜700nmのものと100〜200nmまたは300〜600nmの位相差フィルムを組み合わせて使用しても良く、各位相差フィルムの光軸の貼り合わせ角度は、通常、10〜90度、好ましくは30〜80度、さらに好ましくは30〜70度である。
【0073】
本発明の光学ローパスフィルタに使用される複屈折板および/または波長板は、必要に応じてその一部または全部に赤外線(IR)カット機能を付与しても良い。複屈折板および/または波長板が係る機能を有することで、従来、IRカット機能を付与したガラス板(例えば銅イオンを含ませたもの)などを別途貼り合わせる工程が必要であったのに対し、係る工程が不要となり工程および部品の簡略化を行うことができる。
IRカット機能を付与する方法としては、該波長範囲の光を透過させない公知の顔料、染料、色素、金属などを含有させたり、その表面に塗布したりすることが挙げられる。例えば、近赤外線吸収剤として、シアニン系、ピリリウム系、スクワリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系、フタロシアニン系、ジチオール金属錯体、ナヒトキノン系、アントアキノン系、インドフェノール系、アジ系などの公知の化合物や、銅イオンやネオジムイオン、プラセオジムイオン、エルビウムイオン、ホルミウムイオンなどの金属イオンを挙げることができる。
また、ノイズの低減などの必要に応じて所望する波長以外の光の透過を遮断もしくは低下させるために、公知の着色剤などを用いた着色が施されたものであっても良い。
【0074】
本発明の光学ローパスフィルタは、固体撮像装置、特にカラー画像を処理する機器(ビデオカメラ、テレビカメラ、デジタルカメラ、カラーコピー機、カラーファックス機、カラースキャナーなど)に好適に使用される。
【0075】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り重量部および重量%である。また、実施例中の各種の測定は、次のとおりである。
【0076】
固有粘度(〔η〕inh )
溶媒にクロロホルムを使用し、0.5g/dlの重合体濃度で30℃の条件下、ウベローデ粘度計にて測定した。
ゲル含有量
25℃の温度で、水素添加(共)重合体50gを1%濃度になるようにクロロホルムに溶解し、この溶液をあらかじめ重量を測定してある孔径0.5μmのメンブランフィルター〔アドバンテック東洋(株)〕を用いてろ過し、ろ過後のフィルターを乾燥後、その重量の増加量からゲル含有量を算出した。
【0077】
水素化率
水素添加単独重合体の場合には、500MHz、H−NMRを測定し、エステル基のメチル水素とオレフィン系水素のそれぞれの吸収強度の比、またはパラフィン系水素とオレフィン系水素のそれぞれの吸収強度の比から水素化率を測定した。また、水素添加共重合体の場合には、重合後の共重合体の 1H−NMR吸収と水素化後の水素添加共重合体のそれを比較して算出した。
ガラス転移温度
走査熱量計(DSC)により、チッ素雰囲気下において、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0078】
フィルムの厚み
キーエンス(株)製、レーザーフォーカス変位計、LT−8010を用い、測定した。
位相差値
王子計測機器(株)製、KOBRA−21ADHを用い、波長480、550、590、630、750nmで測定し、当該波長以外の部分については上記波長での位相差値を用いてコーシー(Cauchy)の分散式を用いて算出した。
光線透過率
日立製作所製 Spectrophotometer U−4000型分光光度計を用い、波長別光線透過率の測定を行った。
全光線透過率
スガ試験機社製ヘイズメーター:HGM−2DP型を使用して測定した。
【0079】
<合成例1>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(特定単量体)250部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)27部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)750部とを窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/1)のトルエン溶液0.62部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/1)3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)は0.62dl/gであった。
このようにして得られた開環重合体溶液4,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C 0.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(特定の環状オレフイン系樹脂)樹脂Aを得た。
このようにして得られた水素添加重合体についてH−NMRを用いて水素添加率を測定したところ99.9%であった。また、当該樹脂についてDSC法によりガラス転移温度(Tg)を測定したところ165℃であった。また、当該樹脂について、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は42,000、重量平均分子量(Mw)は180,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.29であった。また、当該樹脂について、23℃における飽和吸水率を測定したところ0.3%であった。また、SP値を測定したところ、19(MPal/2)であった。また、当該樹脂について、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh)を測定したところ0.67dl/gであった。
また、ゲル含有量は0.4%であった。
【0080】
<合成例2>
特定単量体として8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1,5.17,10]−3−ドデセン225部とビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン25部とを使用し1−ヘキセン(分子量調節剤)の添加量を43部としたこと以外は、合成例1と同様にして水素添加重合体を得た。得られた水素添加重合体〔以下樹脂Bという。〕の水素添加率は99.9%であった。
【0081】
<合成例3>
特定単量体として8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1,5.17,10]−3−ドデセン215部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン35部とを使用し1−ヘキセン(分子量調節剤)の添加量を18部としたこと以外は、合成例1と同様にして水素添加重合体を得た。得られた水素添加重合体〔以下樹脂Cという。〕の水素添加率は99.9%であった。
【0082】
<フィルム製造例1>
合成例1で得られた樹脂Aをトルエンに30%濃度(室温での溶液粘度は30000mPa・s)になるように溶解し、井上金属工業(株)製、INVEXラボコーターを用い、アクリル酸系で親水化(易接着)の表面処理した厚さ100μmのPETフィルム〔東レ(株)製、ルミラU94〕に、乾燥後のフィルム厚みが100μmになるように塗布し、これを50℃で一次乾燥の後、90℃で二次乾燥を行った。PETフィルムより剥がした樹脂フィルムAを得た。得られたフィルムの残留溶媒量は、0.5%であった。
このフィルムを次の方法により光弾性係数(C)および応力光学係数(C)を求めた。具体的には、光弾性係数(C)は短冊状のフィルムサンプルに室温(25℃)で数種類の一定荷重を加え、発生する位相差とそのときサンプルが受けた応力とから計算した。応力光学係数(C)については、フィルム状サンプルを用いてTg以上にて数種類の一定荷重をかけて数パーセント伸びた状態でゆっくりと冷やして室温まで戻した後に発生した位相差を測定してかけた応力とから計算した。結果は、それぞれC=4(×10−1Pa−1),C=1,750(×10−12Pa−1) であった。樹脂フィルムAの特性値を表1に示した。
【0083】
この樹脂フィルムAをテンター内で、Tg+5℃である170℃に加熱し、延伸速度400%/分、延伸倍率を2.5倍として延伸した後、110℃の雰囲気下で2分間この状態を保持しながら冷却し、室温へとさらに冷却して取り出したところ、波長550nmで550nmの位相差を持つ環状オレフィン系樹脂からなる位相差フィルムA−1を得ることができた。
また、上記の延伸方法において延伸倍率を2.1倍とし、波長550nmで410nmの位相差を持つ環状オレフィン系樹脂からなる位相差フィルムA−2を得ることができた。
【0084】
<実施例1:波長板>
上記の位相差フィルムA−1およびA−2各1枚を、屈折率1.52、厚さ0.2mmのガラス板(BK7使用)の両面に、各々の光軸(貼合角)が65度になるように、厚さ10μmのアクリル系接着剤を用いて積層し、波長板Aを得た。この波長板Aに波長400〜750nmの範囲の直線偏光を位相差フィルムA−1の光軸に対して25度の傾き(偏光方位角)で垂直入射したところ、出射光はいずれも楕円率0.98以上の良好な円偏光となり、波長400〜750nmの範囲において良好な1/4波長板として機能することが明らかとなった。
なお、波長板A中の10μm以上の異物数を、光学偏光顕微鏡(株式会社ニコン製, OPTIPHOT2−POL,対物レンズ:20倍 接眼レンズ:10倍)を用い、透過光により観察した結果、10個/mm以下であった。
【0085】
<フィルム製造例2>
合成例2で得られた樹脂Bを使用し、厚みを200μmにした以外はフィルム製造例1と同様にして樹脂フィルムBを得た。得られた樹脂フィルムBの残留溶媒量は、0.8%であり、光弾性係数(C)および応力光学係数(C)はそれぞれC=6(×10−1Pa−1),C=2,000(×10−12Pa−1)であった。樹脂フィルムBの特性値を表1に示した。
【0086】
<実施例2:複屈折板>
樹脂フィルムBを用い、延伸条件を延伸倍率3.5倍、加熱温度145℃としたこと以外はフィルム製造例1と同様にして環状オレフィン系樹脂フィルムBを得た。この環状オレフィン系樹脂フィルムBの位相差は、波長550nmで1,500nmであった。この位相差フィルムBの両面にステンレス製の鏡面板AおよびBを貼り合わせ、鏡面板Aを室温に保ちながら鏡面板Bのみを140℃とし、同時に傾斜角度が50度になるようにしてせん断変形を加え、約1分の後に鏡面板Aを外し、樹脂フィルムBの鏡面板A側の表面温度が100℃以下であることを確認した後、次いで鏡面板Bを剥離した。こうすることで、厚み方向の光軸が45度傾斜したn0が1.522、neが1.512の厚み100μmの複屈折板B−1を得た。
式(a)を用い、上記複屈折板Bのシフト量を計算したところ、6.5μmとなった。また、この複屈折板B−1を2枚もちいて波長板製造例と同様にして厚み方向の光軸が平行になるようにしてガラス板に貼り合わせ、シフト量が13μmの複屈折板B−2を得た。
なお、複屈折板中の10μm以上の異物数を、光学偏光顕微鏡(株式会社ニコン製, OPTIPHOT2−POL,対物レンズ:20倍 接眼レンズ:10倍)を用い、透過光により観察した結果、10個/mm以下であった。
【0087】
<フィルム製造例3>
合成例3で得られた樹脂Cを使用し、IRカットのために塩化銅を樹脂C 100部あたり1部を溶液に添加した以外はフィルム製造例1と同様にして樹脂フィルムCを得た。この得られた樹脂フィルムCの残留溶媒量は、0.5%であり、光弾性係数(C)および応力光学係数(C)はそれぞれC=9(×10−12Pa−1),C=2,350(×10−12Pa−1)であった。また、この樹脂フィルムCの分光透過率を測定したところ、波長750nmの光の透過率は約20%であり、波長800nm以上の光の透過率は実質的に0%であった。
樹脂フィルムCの特性値を表1に示した。
【0088】
このIRカット機能を有する樹脂フィルムCを用いて、延伸条件を延伸倍率1.2倍、加熱温度130℃とした以外はフィルム製造例1と同様にして環状オレフィン系樹脂からなる位相差フィルムC−1を得た。この位相差フィルムC−1の位相差は波長550nmで275nmであり、フィルム厚みは89.5μmであった。
また、延伸倍率を1.1倍にして、波長550nmで135nmの位相差を持つ95μm厚みの環状オレフィン系樹脂からなる位相差フィルムC−2を得ることができた。
【0089】
<実施例3:IRカット機能付き波長板>
上記の位相差フィルムC−1およびC−2各1枚を、前述の波長板製造例と同様にして屈折率1.52、厚さ0.2mmのガラス板の両面に、各々の光軸(貼合角)が65度になるように、厚さ10μmのアクリル系接着剤を用いて積層し、波長板Cを得た。この波長板Cに波長400〜750nmの範囲の直線偏光を位相差フィルムC−1の光軸に対して25度の傾き(偏光方位角)で垂直入射したところ、出射光はいずれも楕円率0.98以上の良好な円偏光となり、波長400〜750nmの範囲において良好な1/4波長板として機能することが明らかとなった。
なお、波長板C中の10μm以上の異物数を、同様にして光学偏光顕微鏡(株式会社ニコン製, OPTIPHOT2−POL,対物レンズ:20倍 接眼レンズ:10倍)を用い、透過光により観察した結果、10個/mm以下であった。
【0090】
<実施例4:環境試験>
波長板A、Cならびに複屈折板Bを、温度90℃、湿度90%の環境下に3000時間放置し、特性の変化を調べた。結果は、良好な初期特性に加えて、3000時間後でも初期特性に対して変化率はいずれも5%以内であり、良好な安定性を示すことが分かった。
【0091】
<比較例1>
出光石油化学(株)製ポリカーボネートA2700を原料とし、溶媒を塩化メチレンとした以外はフィルム製造例1と同様にして、ポリカーボネートフィルムを得た(表1)。さらに、このフィルムをテンター内で、Tg+5℃である160℃に加熱し、延伸速度400%/分で1.1倍に延伸した後、110℃の雰囲気下で2分間この状態を保持しながら冷却し、室温へとさらに冷却して取り出したところ、波長550nmで275nmの位相差を持つ95μm厚みのポリカーボネート製位相差フィルムD−1を得ることができた。また、延伸倍率を1.05倍として同様に135nmの位相差を持つ97μm厚みのポリカーボネート製位相差フィルムD−2を得た。これらの位相差フィルムを各々の光軸(貼合角)が65度とした他は実施例1と同様に貼り合わせてポリカーボネート製の波長板Dを得た。
この波長板Dに波長400〜750nmの範囲の直線偏光を位相差フィルムD−1の光軸に対して25度の傾き(偏光方位角)で垂直入射したところ、出射光はいずれも楕円率0.93以上であったが、上述の環境試験を行ったところ、初期特性に対する変化率が10%と大きく変化した。
【0092】
【表1】



【0093】
【発明の効果】
本発明の波長板ならびに複屈折板は、高い耐熱性、低い吸湿性、各種材料との高い密着性、および安定な位相差値を有する環状オレフィン系樹脂フィルムを使用するため、安価で長期にわたり高性能の波長板および複屈折板であり、本発明の波長板、複屈折板を使用すると安価で長期にわたり高性能の光学ローパスフィルタを製造することができ、本発明の波長板ならびに複屈折板を使用した光学ローパスフィルタは、前述のように所望の複屈折特性や波長板特性、ならびに容易にIRカット機能を付与できることから、固体撮像装置、特にカラー画像を処理する機器(ビデオカメラ、テレビカメラ、デジタルカメラ、カラーコピー機、カラーファックス機、カラースキャナーなど)に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折板および波長板を含む部品からなる光学ローパスフィルタにおいて、上記の波長板が環状オレフィン系樹脂を含む材料からなることを特徴とする光学ローパスフィルタ。
【請求項2】
複屈折板および波長板を含む部品からなる光学ローパスフィルタにおいて、上記の複屈折板が環状オレフィン系樹脂を含む材料からなることを特徴とする光学ローパスフィルタ。
【請求項3】
複屈折板または波長板の少なくともいずれか一つが、IRカット機能を有する請求項1または2いずれかに記載の光学ローパスフィルタ。

【公開番号】特開2004−61829(P2004−61829A)
【公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−219646(P2002−219646)
【出願日】平成14年7月29日(2002.7.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】