説明

光学反射素子ユニット

【課題】本発明は、光学反射素子のパッケージの気密性を向上させることを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため本発明は、ミラー部6およびこのミラー部6を振動させる駆動部7、9を有する光学反射素子5と、この光学反射素子5を内包するとともに、ミラー部6の上方に開口部20を有するパッケージ12と、このパッケージ12の開口部20上を覆い、上側が凸となる湾曲形状の光透過部13とを備え、パッケージ12は、開口部20の周縁からパッケージ12の上方へ突出する突起部21を有し、光透過部13は、突起部21の外側に載置され、光透過部13と突起部21との隙間には、シール材23が挿入されているものとした。これにより本発明は、光透過部13とパッケージ12との接合強度が高まり、結果としてパッケージ12の気密性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置などに用いられる光学反射素子ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図7の光学反射素子ユニット1は、ミラー部およびこのミラー部を振動させる駆動部を有する光学反射素子2と、この光学反射素子2を内包するパッケージ3と、このパッケージ3と接合され、ミラー部上方を覆う光透過部4とを備えている。この光学反射素子2は、圧電素子や電磁コイルなどで振動させたミラー部に光を入射し、反射させることによって光を走査でき、例えばスクリーン等の走査面上に画像を投影することができる。そして光学反射素子2は、ミラー部を塵埃や湿気などから保護するため、パッケージ3と光透過部4とで封止される。
【0003】
この出願に類似する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2003−75618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで光透過部4は、その端部を樹脂などのシール材でパッケージ3と接合することができる。しかし光透過部4を湾曲形状とした場合、パッケージ3の気密性が低下することがある。
【0005】
その理由は、光透過部4とパッケージ3との接合強度が低くなるからである。
【0006】
すなわち、光透過部4を湾曲形状とし、外方へ突出させると、外圧を受けた際に端部に内向きの負荷が掛かり、光透過部4がパッケージ3から外れたり位置ずれしたりしやすくなる。そしてその結果、パッケージ3の気密性が低下することになる。
【0007】
そこで本発明は、湾曲形状の光透過部を用いた場合にも、パッケージの気密性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そしてこの目的を達成するために本発明は、ミラー部およびこのミラー部を振動させる駆動部を有する光学反射素子と、この光学反射素子を内包するとともに、ミラー部の上方に開口部を有するパッケージと、このパッケージの開口部上を覆い、上側が凸となる湾曲形状の光透過部とを備え、パッケージは、開口部の周縁からパッケージの上方へ突出する突起部を有し、光透過部は、突起部の外側に載置され、光透過部と突起部との隙間には、シール材が挿入されているものとした。
【発明の効果】
【0009】
これにより本発明は、湾曲形状の光透過部を用いた場合に、パッケージの気密性を向上させることができる。
【0010】
その理由は、パッケージの開口部に外圧を受けた時、外圧によってシール材の気密性が保たれるため、光透過部とパッケージとの接合強度がより高まるからである。
【0011】
すなわち本発明は、光透過部が外圧を受けても、シール材を介して突起部で内側から支持することができる。
【0012】
したがって、光透過部とパッケージとの接合強度が高まり、結果としてパッケージの気密性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
図1に示すように、本実施の形態における光学反射素子5は、ミラー部6と、このミラー部6を介して対向するとともに、このミラー部6の端部とそれぞれ連結された一対の駆動部7と、これらの駆動部7と連結され、これらの駆動部7およびミラー部6の外周を囲む枠体8と、この枠体8を介して対向するとともに、この枠体8とそれぞれ連結された一対の駆動部9と、これらの駆動部9と連結されるとともに、これらの駆動部9および枠体8の外周を囲う枠形状の支持体10とを備えている。
【0014】
さらに、駆動部7は、その中心軸S1に垂直な複数の振動板7A〜7Dが、同一平面上で折り返し連結されたミアンダ形状である。
【0015】
また駆動部9は、その中心軸S2に垂直な複数の振動板9A〜9Eが、同一平面上で折り返し連結されたミアンダ形状である。
【0016】
なお、中心軸S1と中心軸S2とは、ミラー部6の重心で直交する関係にある。そして対となる駆動部7は、中心軸S2に対して線対称形であり、対となる駆動部9は、中心軸S1に対して線対称形である。
【0017】
また本実施の形態では、駆動部7および駆動部9は圧電駆動するものであり、複数の振動板7A〜7D、振動板9A〜9E上には、それぞれ下部電極層、圧電体層、上部電極層からなる圧電素子(図示せず)を配置した。そして例えば振動板7A〜7Dの圧電素子に、交互に逆位相の交流電圧を印加すれば、振動板7A〜7Dはそれぞれ逆方向に撓み振動し、図2のように中心軸S1を中心に変位が蓄積され、図1のミラー部6を大きく反復回転振動させることができる。同様に、振動板9A〜9Eを変位させることによって、中心軸S2を中心に、枠体8およびミラー部6を反復回転振動させることができる。
【0018】
なお本実施の形態では、ミラー部6のサイズは1mm×1mm程度とした。そして駆動部7と駆動部9とは、それぞれ異なる共振駆動周波数を有し、その周波数比は10倍〜100倍程度である。例えば本実施の形態では、駆動部7の共振周波数が10kHz、駆動部9の共振周波数が200Hz程度である。
【0019】
次に、上記光学反射素子5を用いた光学反射素子5ユニットについて説明する。
【0020】
図3、図4に示すように、本実施の形態の光学反射素子ユニット11は、上記光学反射素子5がパッケージ12と光透過部13とで気密封止されたものである。光透過部13は、ガラスなどの透明な材料で形成される。このパッケージ12内は、ミラー部6への質量負荷を防ぎ、Q値を高めるため、真空に保つか、あるいはHeガスなどの軽い気体が充填されていることが望ましい。
【0021】
そしてこのパッケージ12は、平板状の底部14と、この底部14上に配置された、可動用スペーサ15と、この可動用スペーサ15上に設けられた素子用スペーサ16と、底部14上に接合され、光学反射素子5の上方に空間を設けるように形成された蓋部17とを備えている。
【0022】
本実施の形態では、蓋部17と底部14とは金属で形成され、溶接によって接合されている。これにより、蓋部17と底部14との密着性を高め、パッケージ12の気密性を高めることができる。
【0023】
ここで図3に示すように、可動用スペーサ15には、光学反射素子5のミラー部6、駆動部(図1の7)、枠体(図1の8)、駆動部(図1の9)のそれぞれの変位駆動が可能なキャビティ18が設けられている。
【0024】
また素子用スペーサ16には、前述のキャビティ18の上方位置に、光学反射素子5をはめ込めるようなキャビティ19が設けられている。このキャビティ19は、キャビティ18よりも大きい。
【0025】
また蓋部17は、ミラー部6の上方に相当する位置に、開口部20(孔)が設けられ、開口部20の周縁がパッケージ12の上方へ盛り上がるように突出している。すなわち開口部20の周縁一帯には、環状の突起部21が形成されている。
【0026】
そして開口部20の上方には、上側が凸となる湾曲形状の光透過部13が被せられている。この光透過部13の構成について、以下に説明する。
【0027】
すなわち本実施の形態における光透過部13は、図3に示すように、その表面13Aおよび裏面13Bが、ミラー部6の反射面6Aに中心点22を有する球面の一部で構成されるものである。図3に示す中心点22から光透過部13の表面13Aの任意の点までの半径r、r、rは等しい。
【0028】
このように、光透過部13をミラー部6に中心点22を有する球面の一部で構成することにより、光源をいずれの場所においても、光源から入射した光は、光透過部13の裏面13Bに対してもほぼ垂直に入射し、光をこの裏面13Bからミラー部6側に向って殆ど屈折させずに直進して出射させることが出来る。そしてその結果、スクリーン等の走査面上にドットがぶれて表示されるのを防ぎ、描画精度を高めることができる。
【0029】
なおこの中心点22は、ミラー部6の反射面6Aに形成することが好ましいが、少なくともミラー部6に配置することで、光学反射素子ユニット11の描画精度を向上させることができる。またミラー部6の中心をターゲットに直進光を照射することが多いため、中心点22は、ミラー部6の中心に設けることが好ましい。
【0030】
そして本実施の形態では、この湾曲形状の光透過部13は、前述の突起部21の外側に載置され、光透過部13と突起部21との隙間には、シール材23が挿入されている。このシール材23は、弾性の高い樹脂あるいはゴムなどが好ましい。
【0031】
このように光透過部13をパッケージ12と接合することによって、パッケージ12の気密性を向上させることができる。
【0032】
その理由を以下に説明する。
【0033】
すなわち、光透過部13の端部を接着剤等で接合しただけでは、光透過部13が外圧を受けた際に、光透過部13の端部に内向きの負荷が掛かり、光透過部13がパッケージ12から外れたり位置ずれしたりしやすくなる。ここでパッケージ12の内部は、真空にすることによって、光学反射素子5のQ値を高めることができるが、その場合、光透過部13は外方から内向きに大きな圧力がかかり、より位置ずれや脱離を起こしやすくなる。そしてその結果、パッケージ12の気密性が低下し、Q値が低下したり、塵埃、異物などが混入したりして素子の特性を悪化させてしまう。
【0034】
これに対し本実施の形態では、光透過部13の内側に突起部21を設け、シール材23を介して光透過部13を支持することができるため、光透過部13とパッケージ12との接合強度が高まり、結果としてパッケージ12の気密性を向上させることができる。またシール材23を、突起部21や光透過部13と比較して弾性の小さい(軟らかい)材料とすることにより、内向きに外圧がかかっても、光透過部13と突起部21との隙間を埋めるようにシール材23が弾性変形し、光透過部13と突起部21とを密着封止させることができる。
【0035】
本実施の形態では、光透過部13と突起部21の隙間にシール材23を充填できるため、光透過部13にシール材23が付着する面積を大きくすることができ、パッケージ12の気密性向上に寄与する。
【0036】
さらに本実施の形態では、光透過部13が湾曲していても、パッケージ12と高い密着力で接合することができるため、光透過部13を必要な領域にのみ配置することができる。すなわち光透過部13を半球形状よりも中心角の小さい扇形にすることができ、光透過部13を小さくすることができる。ここで光透過部13は、ガラス等の機械的強度が低い材料で構成されることが多いが、パッケージ12と組み合わせることによって光透過部13の面積を小さくでき、ユニット全体の強度を高めることができる。さらに光学的に設計された光透過部13は高価であるが、面積が小さいためコストを下げることができる。
【0037】
また図3に示すように光透過部13は、光学反射素子5の水平面に対して垂直な断面において、その一端13Cとミラー部6の中心点22とを結ぶ直線と、他端13Dと中心点22とを結ぶ直線との成す角が120度以下となるように形成する事が好ましい。
【0038】
その理由は、不要な光の入射及び出射を極力低減するためである。
【0039】
すなわち光透過部13には、光源からの光を入射および出射させなければならないが、それ以外の不要な光が入・出射すると、光学反射素子5の描画精度が低下する原因となる。したがって本実施の形態では、光透過部13を、中心角の小さい扇形とすることによって、光源光の入・出射に必要最低限の大きさとし、描画精度を高めることができた。
【0040】
またパッケージ12の内壁であって、光学反射素子5の表面(反射面側)と対向する領域は、粗面化する事が好ましい。すなわち本実施の形態では、少なくとも図3に示す蓋部17の裏面17Aは粗面化する事が好ましい。なお本実施の形態では、蓋部17は金属で形成しているが、ミラー部6よりも粗面化した。具体的には、平面粒疎度が1μm〜100μm程度の粗面化が適している。
【0041】
このように粗面化することによって、パッケージ12内に不要な光が発生した場合も、裏面17A上で分散されるため、光透過部13から出射しても走査面上の大きなノイズとはなりにくく、描画精度を向上させることができる。ここで蓋部17を金属で加工する場合、一般に反射率が高くなることから、粗面化により不要な反射光を分散させることは非常に有用である。
【0042】
なお本実施の形態では、蓋部17は平面が多いため、湾曲している光透過部13自体の裏面13Bを粗面化するよりも加工しやすいと言う利点がある。
【0043】
図5は本実施の形態の別の例のパッケージ12を示すものであり、シール材23が凹部24を有する構造とした。この凹部24に光透過部13の端部を挿入することにより、光透過部13の端部を内外から保持する事ができ、パッケージ12との接合強度が高まる。
【0044】
また凹部24の開口径を光透過部13の端部の直径よりもやや小さくすることによって、光透過部13の端部が抜け難くなり、パッケージ12の気密性をより高めることができる。
【0045】
図6は、更に別の例のパッケージ12を示すものであり、シール材23が、光透過部13の端部を挿入するための凹部24を有する構造であって、さらにこのシール材23が突起部21の上端から内壁を経てパッケージ12の内壁(蓋部17の裏面17A)に至るまで回り込んで付着している。
【0046】
このように形成することによって、例えば光透過部13の端部の外側で、シール材23が上方へ(矢印25方向)持ち上がり剥離しかけても、このシール材23は突起部21の内側の上端部21Aが支点となって、突起部21の内側の下端部21Bには、外方へ(矢印26方向)と力が働くことになる。したがって、シール材23の剥離を抑制することができ、結果として光透過部13とパッケージ12との接合強度をより高めることができる。
【0047】
なお、本実施の形態においても、蓋部17の裏面17Aを粗面化しておけば、シール材23の接着面積を増やすことができ、接合強度の向上に寄与する。
【0048】
なお本実施の形態では、図1に示すように駆動部7、9はミアンダ形としたが、その他カンチレバー形や十字形、音叉形の駆動部でもよい。また駆動部7、9は、それぞれ圧電駆動方式以外にも、静電駆動方式や電磁駆動方式にも応用ができる。また本実施の形態の光学反射素子5は、それぞれ中心軸S1、S2の異なる駆動部7、9を用いたため、ミラー部6は二軸駆動するが、例えば駆動部7のみを用いて一軸駆動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の光学反射素子は、プロジェクタ、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイなどの小型画像投影装置や、レーザープリンタ、電子写真装置の小型化かつ高精度化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1における光学反射素子の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における光学反射素子の動作を示す側面図
【図3】本発明の実施の形態1における光学反射素子ユニットの断面図
【図4】同光学反射素子ユニットの斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における別の例の光学反射素子ユニットの断面図
【図6】本発明の実施の形態1における別の例の光学反射素子ユニットの断面図
【図7】従来の光学反射素子ユニットの断面図
【符号の説明】
【0051】
5 光学反射素子
6 ミラー部
6A 反射面
7 駆動部
7A〜7D 振動板
8 枠体
9 駆動部
9A〜9E 振動板
10 支持体
11 光学反射素子ユニット
12 パッケージ
13 光透過部
13A 表面
13B 裏面
13C 一端
13D 他端
14 底部
15 可動用スペーサ
16 素子用スペーサ
17 蓋部
17A 裏面
18 キャビティ
19 キャビティ
20 開口部
21 突起部
21A 上端部
21B 下端部
22 中心点
23 シール材
24 凹部
25 矢印
26 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー部およびこのミラー部を振動させる駆動部を有する光学反射素子と、
この光学反射素子を内包するとともに、前記ミラー部の上方に開口部を有するパッケージと、
このパッケージの前記開口部上を覆い、上側が凸となる湾曲形状の光透過部とを備え、
前記パッケージは、
前記開口部の周縁から前記パッケージの上方へ突出する突起部を有し、
前記光透過部は、前記突起部の外側に載置され、
前記光透過部と前記突起部との隙間には、シール材が挿入されている光学反射素子ユニット。
【請求項2】
前記シール材は凹部を有し、
この凹部に前記光透過部の端部が挿入されている請求項1に記載の光学反射素子ユニット。
【請求項3】
前記シール材は前記突起部の内壁を覆い、前記パッケージの内壁に至るまで形成された請求項2に記載の光学反射素子ユニット。
【請求項4】
前記光学反射素子の水平面に対して垂直な断面において、
前記光透過部は、
その一端と前記ミラー部の中心とを結ぶ直線と、他端と前記ミラー部の中心とを結ぶ直線との成す角が、120度以下となるように形成された請求項1に記載の光学反射素子ユニット。
【請求項5】
前記パッケージの内壁の、前記光学反射素子の表面と対向する領域は、前記ミラー部よりも粗面化されている請求項1に記載の光学反射素子ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−122412(P2010−122412A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295214(P2008−295214)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】