説明

光学式エンコーダ

【課題】受光素子に十分な光量を確保させることができ、小型化することができる光学式エンコーダの提供。
【解決手段】光学式エンコーダ1は、目盛り21を有するスケール2と、スケール2に光を出射する光源31、光源31から出射される光をスケール2に伝達するスケール側レンズ32、及びスケール側レンズ32を介してスケール2にて反射される光を受光する受光素子33を有するヘッド3とを備える。光源31は、スケール側レンズ32、及び受光素子33の間に配設されるとともに、光源31と、スケール側レンズ32との間の距離は、スケール側レンズ32の焦点距離fsとされている。光源31の光軸Lsrcは、目盛り21の読取方向では、スケール側レンズ32の光軸Lsと一致し、目盛り21の直交方向では、スケール側レンズ32の光軸Lsから所定距離Dだけ離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、格子状の目盛りを有するスケールと、このスケールに光を出射する光源、及びスケールにて反射される光を受光する受光素子を有するヘッドとを備え、受光素子にて受光される光に基づいて、スケールに対するヘッドの位置を測定する光学式エンコーダが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献1に記載の光学式エンコーダは、目盛り板(スケール)と、発光ダイオード(光源)、対物レンズ、及び受光部(受光素子)を有する反射型光学読取器(ヘッド)とを備えている。また、反射型光学読取器は、発光ダイオードと、対物レンズとの間に配設されるハーフミラーを備え、発光ダイオードから出射され、対物レンズを介して目盛り板に向かう光の光路と、目盛り板にて反射され、対物レンズを介して受光部に向かう光の光路とを分離している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の光学式エンコーダでは、受光部は、ハーフミラーを介した光を受光することになるので、十分な光量を確保することができないという問題がある。また、十分な光量を確保するために、発光ダイオードから出射される光の光量を大きくすると、発光ダイオードの消費電力が大きくなり、ひいては発光ダイオードの寿命が短くなるという問題がある。
これに対して、特許文献2に記載の光電式エンコーダ(光学式エンコーダ)は、スケールと、光源、レンズ、及び受光素子とを備えている。また、光電式エンコーダは、スケール、レンズ、及び受光素子をシャインプルーフの関係となるように配設することによって、光源から出射され、スケールに向かう光の光路と、スケールにて反射され、レンズを介して受光素子に向かう光の光路とを分離するとともに、受光素子に十分な光量を確保させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−307440号公報
【特許文献2】特開2006−284564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の光電式エンコーダでは、スケール、及び受光素子を平行に配設することができないので、光電式エンコーダが大型化するという問題がある。
また、特許文献2の第5実施形態に記載の光電式エンコーダでは、スケール、及び受光素子の間に4つのレンズを配設することによって、スケール、及び受光素子を平行に配設している。しかしながら、この光電式エンコーダでは、スケール、及び受光素子の間に4つのレンズを配設するので、光電式エンコーダが大型化するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、受光素子に十分な光量を確保させることができ、小型化することができる光学式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学式エンコーダは、格子状の目盛りを有するスケールと、前記スケールに光を出射する光源、及び前記スケールと平行に配設され、前記スケールにて反射される光を受光する受光素子を有するヘッドとを備え、前記受光素子にて受光される光に基づいて、前記スケールに対する前記ヘッドの位置を測定する光学式エンコーダであって、前記ヘッドは、前記光源から出射される光を前記スケールに伝達するとともに、前記スケールにて反射される光を前記受光素子に伝達するスケール側レンズを備え、前記光源は、前記スケール側レンズ、及び前記受光素子の間に配設されるとともに、前記光源と、前記スケール側レンズとの間の距離は、前記スケール側レンズの焦点距離とされ、前記光源の光軸は、前記目盛りの読取方向では、前記スケール側レンズの光軸と一致し、前記目盛りの読取方向と直交する直交方向では、前記スケール側レンズの光軸から所定距離だけ離間していることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、光源の光軸は、目盛りの読取方向と直交する直交方向(以下、目盛りの直交方向とする)では、スケール側レンズの光軸から所定距離だけ離間しているので、光源から出射される光のうち、目盛りの直交方向における光源側の光は、目盛りの直交方向における光源側のスケール側レンズを介してスケールに伝達される。そして、この光は、スケールにて反射され、目盛りの直交方向における光源とは反対側のスケール側レンズを介して受光素子に受光される。したがって、本発明によれば、光源から出射され、スケールに向かう光の光路と、スケールにて反射され、スケール側レンズを介して受光素子に向かう光の光路とをハーフミラーを用いることなく分離することができるので、受光素子に十分な光量を確保させることができる。
【0009】
また、スケール、及び受光素子は、平行に配設され、スケール、及び受光素子の間には、1つのスケール側レンズを配設している。そして、光源は、スケール側レンズ、及び受光素子の間に配設されるので、光学式エンコーダを小型化することができる。
さらに、光源と、スケール側レンズとの間の距離は、スケール側レンズの焦点距離とされているので、光学式エンコーダは、目盛りの読取方向では、物体(スケール)側テレセントリック光学系を構成することができ、焦点深度を大きくすることができる。したがって、スケール、及びヘッドの間隔の許容量を大きくすることができる。
【0010】
本発明では、前記所定距離は、前記目盛りの読取方向と直交する直交方向における前記光源の幅の1/2以上であることが好ましい。
【0011】
ここで、目盛りの直交方向における光源の光軸と、スケール側レンズの光軸との間の所定距離を、目盛りの直交方向における光源の幅の1/2未満とすると、目盛りの直交方向では、光源の一部は、スケール側レンズの光軸からはみ出すことになり、受光素子にて受光されなくなるので、光源から出射される光の利用効率は低下する。
これに対して、本発明によれば、目盛りの直交方向における光源の光軸と、スケール側レンズの光軸との間の所定距離は、目盛りの直交方向における光源の幅(開口数)の1/2以上であるので、光源から出射される光の利用効率を向上させることができる。
【0012】
本発明では、前記ヘッドは、前記スケールにて反射され、前記スケール側レンズを介した光を通過させるアパーチャを備え、前記アパーチャと、前記スケール側レンズとの間の距離は、前記スケール側レンズの焦点距離とされ、前記目盛りの読取方向と直交する平面内では、前記アパーチャの光軸と、前記光源の光軸とは、前記スケール側レンズの光軸を中心とした線対称の関係であることが好ましい。
【0013】
ここで、光源の幅や位置を設計することのみで本発明の光学式エンコーダを構成すると、光源の位置ずれの影響によって、光学式エンコーダの光学系の性能が変化してしまう場合があるという問題がある。
本発明によれば、光学式エンコーダは、スケールにて反射され、スケール側レンズを介した光を通過させるアパーチャを備えるので、アパーチャの幅や位置を設計することで光源の幅や位置を設計する場合と同様の光学系を構成することができる。また、アパーチャの設計や位置決めは、光源の設計や位置決めと比較して容易であるので、光学式エンコーダの光学系の性能が変化してしまうことを抑制することができる。
【0014】
本発明では、前記ヘッドは、前記アパーチャと、前記受光素子との間に配設される受光素子側レンズを備え、前記アパーチャと、前記受光素子側レンズとの間の距離は、前記受光素子側レンズの焦点距離とされ、前記受光素子側レンズの光軸は、前記スケール側レンズの光軸と一致していることが好ましい。
このような構成によれば、光学式エンコーダは、目盛りの読取方向では、両側テレセントリック光学系を構成することができ、焦点深度を大きくすることができる。したがって、受光素子、及び受光素子側レンズの間隔の許容量も大きくすることができる。
【0015】
本発明では、前記ヘッドは、前記アパーチャと、前記受光素子との間に配設される受光素子側レンズを備え、前記アパーチャと、前記受光素子側レンズとの間の距離は、前記受光素子側レンズの焦点距離とされ、前記受光素子側レンズの光軸は、前記目盛りの読取方向では、前記スケール側レンズの光軸と一致し、前記目盛りの読取方向と直交する直交方向では、前記スケール側レンズの光軸から前記所定距離の2倍の距離だけ離間していることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、光学式エンコーダは、目盛りの読取方向では、両側テレセントリック光学系を構成することができる。したがって、受光素子、及び受光素子側レンズの間隔の許容量も大きくすることができる。
また、目盛りの直交方向では、スケール側レンズ、及び受光素子側レンズの光軸は、アパーチャの光軸から両側に所定距離だけ離間することになるので、アパーチャを通過する光は、スケール側レンズ、及び受光素子側レンズの同一の形状を有する位置を透過する。したがって、光学式エンコーダは、レンズ収差による影響を低減することができ、適切な測定をすることができる。
【0017】
本発明では、前記ヘッドは、2つの前記光源と、2つの前記スケール側レンズと、2つの前記アパーチャとを備え、前記目盛りの読取方向と直交する平面内では、前記各光源、前記各スケール側レンズ、及び前記各アパーチャの光軸は、それぞれ受光素子側レンズの光軸を中心とした線対称の関係であることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、2つの目盛りにて反射される光を1つの受光素子で受光することができる。したがって、例えば、スケール、及びヘッドの移動量を検出するための目盛りと、スケール、及びヘッドの原点を検出するための目盛りとの2つの目盛りを1つの受光素子で受光するように光学式エンコーダを構成することができ、2つの受光素子で受光するように光学式エンコーダを構成する場合と比較して部品点数を削減することができる。
【0019】
本発明では、前記光源は、光を出射する発光体と、前記発光体から出射される光の光路後段に配設され、前記発光体から出射される光を拡散させる拡散板とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、光源の幅は、拡散板の幅に置き換えることができるので、光学式エンコーダの設計を容易にすることができる。
【0020】
本発明では、前記光源は、光を出射する発光体と、前記発光体から出射される光の光路後段に配設される発光体用レンズとを備え、前記スケール側レンズと、前記発光体用レンズとでケーラー照明を構成することが好ましい。
このような構成によれば、光源から出射され、スケール側レンズを介してスケールに向かう光のむらを低減することができ、適切な測定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学式エンコーダを示す模式図。
【図2】前記実施形態における光学式エンコーダを目盛りの直交方向に沿って見た模式図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る光学式エンコーダを目盛りの読取方向に沿って見た模式図。
【図4】前記実施形態における光学式エンコーダを目盛りの直交方向に沿って見た模式図。
【図5】本発明の第3実施形態に係る光学式エンコーダを目盛りの読取方向に沿って見た模式図。
【図6】前記実施形態における光学式エンコーダを目盛りの直交方向に沿って見た模式図。
【図7】本発明の第4実施形態に係る光学式エンコーダを目盛りの読取方向に沿って見た模式図。
【図8】本発明の第5実施形態に係る光学式エンコーダを目盛りの読取方向に沿って見た模式図。
【図9】本発明の第6実施形態に係る光学式エンコーダの光源を示す模式図。
【図10】本発明の第7実施形態に係る光学式エンコーダの光源を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学式エンコーダ1を示す模式図である。なお、図1では、紙面垂直方向の軸をX軸とし、左右方向の軸をY軸とし、上下方向の軸をZ軸としている。
光学式エンコーダ1は、図1に示すように、X軸方向に沿って読み取り可能な格子状の目盛り21を有するスケール2と、スケール2に光を出射する光源31、光源31から出射される光をスケール2に伝達するスケール側レンズ32、及びスケール2と平行に配設され、スケール側レンズ32を介してスケール2にて反射される光を受光する受光素子33を有するヘッド3とを備え、受光素子33にて受光される光に基づいて、スケール2に対するヘッド3の位置を測定するものである。すなわち、スケール側レンズ32は、スケール2にて反射される光を受光素子33に伝達している。
スケール2は、X軸方向を長手方向とし、Y軸方向を短手方向とする矩形板状に形成されている。なお、図1は、光学式エンコーダ1を目盛り21の読取方向に沿って見た図である。
【0023】
図2は、光学式エンコーダ1を目盛り21の直交方向に沿って見た模式図である。なお、目盛り21の直交方向は、目盛り21の読取方向と直交する方向(Y軸方向)である。
光源31は、図1,2に示すように、スケール側レンズ32、及び受光素子33の間に配設されるとともに、光源31と、スケール側レンズ32との間の距離は、スケール側レンズ32の焦点距離fsとされている。
光源31の光軸Lsrcは、目盛り21の読取方向では、スケール側レンズ32の光軸Lsと一致し(図2参照)、目盛り21の直交方向では、スケール側レンズ32の光軸Lsから所定距離Dだけ離間している(図1参照)。ここで、所定距離Dは、目盛り21の直交方向における光源31の幅Wsrcy(開口数)の1/2以上に設定されている。
【0024】
光源31の光軸Lsrcは、目盛り21の直交方向では、スケール側レンズ32の光軸Lsから所定距離Dだけ離間しているので、光源31から出射される光のうち、目盛り21の直交方向における光源31側の光は、図1に示すように、目盛り21の直交方向における光源31側のスケール側レンズ32を介してスケール2に伝達される。そして、この光は、スケール2にて反射され、目盛り21の直交方向における光源31とは反対側のスケール側レンズ32を介して受光素子33に受光される。
なお、図1,2では、受光素子33に受光される光の光路を実線で示し、他の光の光路を省略している。以下の図面においても同様である。
【0025】
また、光源31と、スケール側レンズ32との間の距離は、スケール側レンズ32の焦点距離fsとされているので、光学式エンコーダ1は、目盛り21の読取方向では、図2に示すように、物体(スケール2)側テレセントリック光学系を構成することができ、焦点深度を大きくすることができる。
具体的に、目盛り21の読取方向における光源31の幅をWsrcxとし、スケール2の目盛り21からスケール側レンズ32までの距離をDsとし(図示略)、スケール側レンズ32から受光素子33までの距離をDpとすると(図示略)、スケール側レンズ32の開口数NAは、以下の式(1)で表すことができる。
【0026】
【数1】

【0027】
また、光源31から出射される光の波長をλとすると、光学式エンコーダ1の焦点深度DOFは、以下の式(2)で表すことができる。
【0028】
【数2】

【0029】
したがって、光源31の幅Wsrcxを小さくするに従って焦点深度DOFを大きくすることができる。
【0030】
このような本実施形態によれば以下の効果がある。
(1)光学式エンコーダ1は、光源31から出射され、スケール2に向かう光の光路と、スケール2にて反射され、スケール側レンズ32を介して受光素子33に向かう光の光路とをハーフミラーを用いることなく分離することができるので、受光素子33に十分な光量を確保させることができる。
(2)スケール2、及び受光素子33は、平行に配設され、スケール2、及び受光素子33の間には、1つのスケール側レンズ32を配設している。そして、光源31は、スケール側レンズ32、及び受光素子33の間に配設されるので、光学式エンコーダ1を小型化することができる。
【0031】
(3)光学式エンコーダ1は、目盛り21の読取方向では、物体(スケール2)側テレセントリック光学系を構成することができ、焦点深度を大きくすることができる。したがって、スケール2、及びヘッド3の間隔の許容量を大きくすることができる。
(4)目盛り21の直交方向における光源31の光軸Lsrcと、スケール側レンズ32の光軸Lsとの間の所定距離Dは、目盛り21の直交方向における光源31の幅Wsrcyの1/2以上であるので、光源31から出射される光の利用効率を向上させることができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る光学式エンコーダ1Aを目盛り21の読取方向に沿って見た模式図である。図4は、光学式エンコーダ1Aを目盛り21の直交方向に沿って見た模式図である。
前記第1実施形態では、光学式エンコーダ1は、光源31、スケール側レンズ32、及び受光素子33を有するヘッド3を備えていた。これに対して、本実施形態では、光学式エンコーダ1Aは、図3,4に示すように、光源31、スケール側レンズ32、及び受光素子33の他、アパーチャ34を有するヘッド3Aを備えている点で異なる。
【0033】
アパーチャ34は、スケール2にて反射され、スケール側レンズ32を介した光を通過させるものであり、アパーチャ34と、スケール側レンズ32との間の距離は、スケール側レンズ32の焦点距離fsとされている。
また、目盛り21の読取方向と直交する平面(紙面)内では、アパーチャ34の光軸Laと、光源31の光軸Lsrcとは、スケール側レンズ32の光軸Lsを中心とした線対称の関係である。すなわち、アパーチャ34の光軸Laは、目盛り21の読取方向では、スケール側レンズ32の光軸Lsと一致し(図4参照)、目盛り21の直交方向では、スケール側レンズ32の光軸Lsから所定距離Dだけ離間している(図3参照)。
【0034】
ここで、目盛り21の直交方向におけるアパーチャ34の幅Wayは(図3参照)、目盛り21の直交方向における光源31の位置決め誤差をδだけ許容するように、以下の式(3)に示すように設定する。
【0035】
【数3】

【0036】
このような設定によれば、目盛り21の直交方向における光源31の位置決めに誤差を生じた場合であってもδ以下の誤差であれば光源31から出射される光をアパーチャ34にて制限することができる。したがって、光源31の位置ずれの影響によって、光学式エンコーダ1Aの光学系の性能が変化してしまうことを抑制することができる。
【0037】
また、アパーチャ34と、スケール側レンズ32との間の距離は、スケール側レンズ32の焦点距離fsとされているので、光学式エンコーダ1Aは、目盛り21の読取方向では、図4に示すように、物体(スケール2)側テレセントリック光学系を構成することができ、焦点深度を大きくすることができる。
具体的に、目盛り21の読取方向におけるアパーチャ34の幅をWaxとし、スケール2の目盛り21からスケール側レンズ32までの距離をDsとし(図示略)、スケール側レンズ32から受光素子33までの距離をDpとすると(図示略)、スケール側レンズ32の開口数NAは、以下の式(4)で表すことができる。
【0038】
【数4】

【0039】
また、光源31から出射される光の波長をλとすると、光学式エンコーダ1Aの焦点深度DOFは、以下の式(5)で表すことができる。
【0040】
【数5】

【0041】
したがって、アパーチャ34の幅Waxを小さくするに従って焦点深度DOFを大きくすることができる。
【0042】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(5)光学式エンコーダ1Aは、スケール2にて反射され、スケール側レンズ32を介した光を通過させるアパーチャ34を備えるので、アパーチャ34の幅や位置を設計することで光源31の幅や位置を設計する場合と同様の光学系を構成することができる。
(6)アパーチャ34の設計や位置決めは、光源31の設計や位置決めと比較して容易であるので、光学式エンコーダ1Aの光学系の性能が変化してしまうことを抑制することができる。
【0043】
〔第3実施形態〕
図5は、本発明の第3実施形態に係る光学式エンコーダ1Bを目盛り21の読取方向に沿って見た模式図である。図6は、光学式エンコーダ1Bを目盛り21の直交方向に沿って見た模式図である。
前記第2実施形態では、光学式エンコーダ1Aは、光源31、スケール側レンズ32、受光素子33、及びアパーチャ34を有するヘッド3Aを備えていた。これに対して、本実施形態では、光学式エンコーダ1Bは、図5,6に示すように、光源31、スケール側レンズ32、受光素子33、及びアパーチャ34の他、受光素子側レンズ35を有するヘッド3Bを備えている点で異なる。
【0044】
受光素子側レンズ35は、アパーチャ34と、受光素子33との間に配設され、アパーチャ34と、受光素子側レンズ35との間の距離は、受光素子側レンズ35の焦点距離fpとされている。
また、受光素子側レンズ35の光軸Lpは、スケール側レンズ32の光軸Lsと一致している。
【0045】
このような本実施形態においても、前記第2実施形態と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(7)光学式エンコーダ1Bは、目盛り21の読取方向では、両側テレセントリック光学系を構成することができ、焦点深度を大きくすることができる。したがって、受光素子33、及び受光素子側レンズ35の間隔の許容量も大きくすることができる。
【0046】
〔第4実施形態〕
図7は、本発明の第4実施形態に係る光学式エンコーダ1Cを目盛り21の読取方向に沿って見た模式図である。
前記第3実施形態では、光学式エンコーダ1Bは、ヘッド3Bを備え、ヘッド3Bの受光素子側レンズ35の光軸Lpは、スケール側レンズ32の光軸Lsと一致していた。これに対して、本実施形態では、光学式エンコーダ1Cは、図7に示すように、ヘッド3Cを備え、ヘッド3Cの受光素子側レンズ35の光軸Lpは、目盛り21の読取方向では、スケール側レンズ32の光軸Lsと一致し、目盛り21の直交方向では、スケール側レンズ32の光軸Lsから所定距離Dの2倍の距離だけ離間している点で異なる。
【0047】
このような本実施形態においても、前記第3実施形態と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(8)目盛り21の直交方向では、スケール側レンズ32、及び受光素子側レンズ35の光軸Ls,Lpは、アパーチャ34の光軸Laから両側に所定距離Dだけ離間することになるので、アパーチャ34を通過する光は、スケール側レンズ32、及び受光素子側レンズ35の同一の形状を有する位置を透過する。したがって、光学式エンコーダ1Cは、レンズ収差による影響を低減することができ、適切な測定をすることができる。
【0048】
〔第5実施形態〕
図8は、本発明の第5実施形態に係る光学式エンコーダ1Dを目盛り21の読取方向に沿って見た模式図である。
前記第4実施形態では、光学式エンコーダ1Cは、ヘッド3Cを備え、ヘッド3Cは、光源31、スケール側レンズ32、及びアパーチャ34を各1つ有していた。これに対して、本実施形態では、光学式エンコーダ1Dは、図8に示すように、ヘッド3Dを備え、ヘッド3Dは、光源31、スケール側レンズ32、及びアパーチャ34を各2つ有している点で異なる。なお、2つのアパーチャ34は、1つの部材に形成されている。
【0049】
また、前記第4実施形態では、光学式エンコーダ1Cは、格子状の目盛り21を有するスケール2を備えていた。これに対して、本実施形態では、格子状の2つの目盛り21を有するスケール2Dを備えている点で異なる。
さらに、本実施形態では、目盛り21の読取方向と直交する平面(紙面)内では、各光源31、各スケール側レンズ32、及び各アパーチャ34の光軸Lsrc,Ls,Laは、受光素子側レンズ35の光軸Lpを中心とした線対称の関係である。
【0050】
このような本実施形態においても、前記第4実施形態と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(9)光学式エンコーダ1Dは、2つの目盛り21にて反射される光を1つの受光素子33で受光することができるので、2つの受光素子で受光するように光学式エンコーダを構成する場合と比較して部品点数を削減することができる。
【0051】
〔第6実施形態〕
図9は、本発明の第6実施形態に係る光学式エンコーダ1Eの光源31Eを示す模式図である。
前記各実施形態では、光学式エンコーダ1〜1Dは、光源31を備えていた。これに対して、本実施形態では、光学式エンコーダ1Eは、図9に示すように、光源31Eを備え、光源31Eは、光を出射する発光体311と、発光体311から出射される光の光路後段に配設され、発光体311から出射される光を拡散させる拡散板312とを備えている点で異なる。
なお、図示は省略するが、拡散板312におけるスケール側レンズ32側(図9中下方側)の面と、スケール側レンズ32との間の距離は、スケール側レンズ32の焦点距離fsとされている。
【0052】
このような本実施形態においても、前記5実施形態と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(10)光源31Eの幅は、拡散板312の幅に置き換えることができるので、光学式エンコーダ1Eの設計を容易にすることができる。
【0053】
〔第7実施形態〕
図10は、本発明の第7実施形態に係る光学式エンコーダ1Fの光源31Fを示す模式図である。
前記第1実施形態から前記第5実施形態では、光学式エンコーダ1〜1Dは、光源31を備えていた。これに対して、本実施形態では、光学式エンコーダ1Fは、図10に示すように、光源31Fを備え、光源31Fは、光を出射する発光体311と、発光体311から出射される光の光路後段に配設される発光体用レンズ313とを備え、スケール側レンズ32と、発光体用レンズ313とでケーラー照明を構成する点で異なる。
【0054】
このような本実施形態においても、前記第5実施形態と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(11)光源31Fから出射され、スケール側レンズ32を介してスケール2に向かう光のむらを低減することができ、適切な測定をすることができる。
【0055】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、所定距離Dは、目盛り21の直交方向における光源31,31E,31Fの幅Wsrcyの1/2以上としていたが、これ以下であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、光学式エンコーダに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1〜1F…光学式エンコーダ
2,2D…スケール
3〜3D…ヘッド
31,31E,31F…光源
32…スケール側レンズ
33…受光素子
34…アパーチャ
35…受光素子側レンズ
311…発光体
312…拡散板
313…発光体用レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状の目盛りを有するスケールと、前記スケールに光を出射する光源、及び前記スケールと平行に配設され、前記スケールにて反射される光を受光する受光素子を有するヘッドとを備え、前記受光素子にて受光される光に基づいて、前記スケールに対する前記ヘッドの位置を測定する光学式エンコーダであって、
前記ヘッドは、
前記光源から出射される光を前記スケールに伝達するとともに、前記スケールにて反射される光を前記受光素子に伝達するスケール側レンズを備え、
前記光源は、前記スケール側レンズ、及び前記受光素子の間に配設されるとともに、前記光源と、前記スケール側レンズとの間の距離は、前記スケール側レンズの焦点距離とされ、
前記光源の光軸は、前記目盛りの読取方向では、前記スケール側レンズの光軸と一致し、前記目盛りの読取方向と直交する直交方向では、前記スケール側レンズの光軸から所定距離だけ離間していることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記所定距離は、前記目盛りの読取方向と直交する直交方向における前記光源の幅の1/2以上であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記ヘッドは、
前記スケールにて反射され、前記スケール側レンズを介した光を通過させるアパーチャを備え、
前記アパーチャと、前記スケール側レンズとの間の距離は、前記スケール側レンズの焦点距離とされ、
前記目盛りの読取方向と直交する平面内では、前記アパーチャの光軸と、前記光源の光軸とは、前記スケール側レンズの光軸を中心とした線対称の関係であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項4】
請求項3に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記ヘッドは、
前記アパーチャと、前記受光素子との間に配設される受光素子側レンズを備え、
前記アパーチャと、前記受光素子側レンズとの間の距離は、前記受光素子側レンズの焦点距離とされ、
前記受光素子側レンズの光軸は、前記スケール側レンズの光軸と一致していることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項5】
請求項3に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記ヘッドは、
前記アパーチャと、前記受光素子との間に配設される受光素子側レンズを備え、
前記アパーチャと、前記受光素子側レンズとの間の距離は、前記受光素子側レンズの焦点距離とされ、
前記受光素子側レンズの光軸は、前記目盛りの読取方向では、前記スケール側レンズの光軸と一致し、前記目盛りの読取方向と直交する直交方向では、前記スケール側レンズの光軸から前記所定距離の2倍の距離だけ離間していることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項6】
請求項5に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記ヘッドは、
2つの前記光源と、2つの前記スケール側レンズと、2つの前記アパーチャとを備え、
前記目盛りの読取方向と直交する平面内では、前記各光源、前記各スケール側レンズ、及び前記各アパーチャの光軸は、それぞれ受光素子側レンズの光軸を中心とした線対称の関係であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光学式エンコーダにおいて、
前記光源は、
光を出射する発光体と、
前記発光体から出射される光の光路後段に配設され、前記発光体から出射される光を拡散させる拡散板とを備えることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光学式エンコーダにおいて、
前記光源は、
光を出射する発光体と、
前記発光体から出射される光の光路後段に配設される発光体用レンズとを備え、
前記スケール側レンズと、前記発光体用レンズとでケーラー照明を構成することを特徴とする光学式エンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−209286(P2011−209286A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73150(P2011−73150)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【分割の表示】特願2010−74847(P2010−74847)の分割
【原出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】