説明

光学式エンコーダ

【課題】受光素子が十分な光量を得ることができる小型光学式エンコーダを提供すること。
【解決手段】光学式エンコーダ1はスケールトラック2’を有するスケール2と、スケールトラック2’に光を出射する光源31と、光源31からスケールトラック2’に出射される光を透過するスケール側レンズ32と、スケール側レンズ32を介してスケールトラック2’によって反射された光を受光する受光素子33とを有する読取ヘッド3とを有する。光源31は、スケール側レンズ32と受光素子33との間に配設される。光源31の光軸Lsrcは、スケール2の読取方向においてスケール側レンズ32の光軸と一致し、スケール2の読取方向に直交する方向において、スケール側レンズ32の光軸Lsから所定距離Dだけ離隔されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式エンコーダに関する。より具体的に、本発明は、主照明光線がエンコーダの読取方向に直交する方向にレンズ軸からオフセットされた光学式エンコーダの小型「軸ずれ」読取ヘッドに利用するのに適したレンズ設計及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、格子状又は縞状目盛りを有するスケールと、読取ヘッドとを有する光学式エンコーダが知られている。読取ヘッドは、スケールに光を出射する光源とスケールによって反射された光を受光する受光素子とを備え、スケールに対する読取ヘッドの位置を受光素子によって受光された光に基づき測定する。この光学式エンコーダの例は特許文献1及び特許文献2に開示される。
特許文献1に開示された光学式エンコーダは、目盛り(スケール)と、発光ダイオード(光源)、対物レンズ、及び受光部(受光素子)を有する反射型光学リ―ダ(読取ヘッド)とを備えている。加えて、この反射型光学リーダは、発光ダイオードと対物レンズとの間に、発光ダイオードから出射され対物レンズを介して目盛りに向けられる光の光路と、目盛りによって反射され対物レンズを介して受光素子に向けられた光の光路とが分離されるように配置されたハーフミラーを有する。
【0003】
特許文献1に開示される光学式エンコーダでは、受光部がハーフミラーを介して光を受けることとなるため、十分な光が得られない可能性がある。加えて、発光ダイオードから出射される光の量を増やして十分な量の光を得ようとすると、発光ダイオードの消費電力が増大し、発光ダイオードの寿命が短くなる。
これに対し、特許文献2に記載の光電式エンコーダ(光学式エンコーダ)は、スケールと、光源と、レンズと、受光素子とを備えている。この光電式エンコーダにおいては、光源から出射されスケールに向かう光の光路と、スケールによって反射され、レンズを介して受光素子に向かう光の光路とが分離され、スケール、レンズ、及び受光素子をシャインプルーフの関係に配設され、これによって、十分な光量の光が得られるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−307440号公報
【特許文献2】特開2006−284564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の光電式エンコーダでは、スケールと受光素子とを平行に配設することができない。従って、光電式エンコーダが大型化するという問題がある。
加えて、特許文献2の第5実施形態に記載の光電式エンコーダでは、4つのレンズをスケールと受光素子との間に配設することによって、スケールと受光素子とを平行に配設している。しかしながら、この光電式エンコーダでは、4つのレンズがスケールと受光素子との間に配設され得ることから、光電式エンコーダが大型化するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、受光素子に十分な光量とスケールトラックのクリアかつ歪みのない画像とを確保させて、高解像度測定を提供することができる小型光学式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる光学式エンコーダは、スケールの読取(すなわち測定)方向に沿って延設された一つ以上のスケールトラックを有する。このスケールトラックは、あるパターンの目盛りを有し、当業種では各種のパターンが公知である。スケールトラックは、例えば、格子状ないし縞状の目盛り、ないし絶対位置コードなどを有してよい。
光学式エンコーダは、スケールトラックに光を出射する光源を有する読取ヘッドを有してもよい。この読取ヘッドは、スケールと平行に配設されスケールによって反射された光を受光する受光素子とを備え、スケールに対する読取ヘッドの位置を受光素子によって受光された光に基づき測定し、読取ヘッドは、光源からスケールトラックに出射される光を透過しスケールトラックからスケールトラック画像光として受光素子に反射される光を透過するスケール側レンズを有する。この光源は、スケール側レンズの平面と受光素子の平面との間に配された光源平面に配置され、または光源平面を形成する。光源の中心は、スケール側レンズの光軸からスケールトラックの読取(すなわち測定)方向に直交する方向に照射軸ずれ距離Dsrc離間される。
【0008】
この構造では、光源の光軸がスケールトラックの読取方向に直交する方向(以下、スケールトラックに直交する方向とする)においてスケール側レンズの光軸から所定距離離隔されることから、光源から出射される光は、スケール側レンズの第1部分を通ってスケールトラックに透過され、この光は、スケールトラックによってスケールトラック画像光として反射され、スケールトラックに直交する方向にレンズ軸に対して第1部分と反対側のスケール側レンズの第2部分を通って受光素子によって受光される。
従って、本発明によれば、ハーフミラーを用いることなく、スケール側レンズを介して、光源から出射されスケールトラックに向かう光の光路をスケールによって反射され受光素子に向かう光の光路と離隔することができる。従って、受光素子が十分な光量を得ることができる。
加えて、スケールと受光素子とが平行に配設され、単一のスケール側レンズがスケールと受光素子との間に配設される。
光源が、スケール側レンズと受光素子との間に配設されることから、光学式エンコーダを小型化できる。
【0009】
本発明の各種実施形態において、光源、スケール側レンズ、スケール及び受光素子は、スケールトラックの読取方向に物体(スケール)側テレセントリック光学系を形成するように構成され配設され、これにより読取ヘッドの焦点深度を大きくする。従って、スケール及び読み取りヘッドの間で許容可能な間隔、すなわち「間隔公差」を大きくすることができる。
本発明のいくつかの実施形態において、読取ヘッドが、スケールによってスケールトラック画像光として反射されスケール側レンズの第2部分を受光素子に向けて通過した光を透過するスケール側レンズの平面と受光素子の平面との間のアパーチャ平面にある、またはアパーチャ平面を形成するアパーチャを有するのが好ましい。このアパーチャの中心は、スケール側レンズの光軸からスケールトラックの読取方向に直交する方向にアパーチャ軸ずれ距離Dap1だけ離間され、受光素子に到達するスケールトラック画像光の第1レンズ軸ずれ結像パスを規定する。アパーチャと光源とは、スケール側レンズの光軸と読取方向とを含む平面の反対側に配される。
ここで、本発明にかかる光学式エンコーダが光源の幅ないし位置のみに依存するよう構成される場合には、光学式エンコーダの光学系の性能が光源の位置ずれの影響によって変化するという問題がある。
【0010】
前記本発明の実施形態によれば、光学式エンコーダはスケールによって反射されスケール側レンズの第2部分を通過した光を透過するアパーチャを有することから、光源の幅ないし位置を設計することと同様に、アパーチャの幅ないし位置を設計することにより物体(スケール)側テレセントリック光学系を設けることが可能である。アパーチャの設計ないし位置決めは、光源の設計ないし位置決めより相対的に容易であることから、光学式エンコーダの光学系の性能のばらつきをより容易に抑制できる。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態によれば、光学式エンコーダは、さらにアパーチャ平面と受光素子の平面との間に配置された第2レンズ平面に配置された受光素子側レンズを有する。この受光素子側レンズは、スケール側レンズの第2部分とアパーチャとを介して透過されたスケールトラック画像光を受光して、受光したスケールトラック画像光を受光素子上に投影するよう配設される。この受光素子側レンズは、スケール側レンズと同様に構成され、これら二つのレンズの同様な形状の表面がそれぞれの光軸方向に沿って反対方向に対向するように向けられる。さらに、受光素子側レンズの光軸は、スケール側レンズの光軸の反対方向に、アパーチャの中心からスケールトラックの読取方向に直交する方向にアパーチャ軸ずれ距離Dap2だけ離間される。従って、アパーチャは、スケールトラックによって反射されスケール側レンズの第2部分を介して透過されたスケールトラック画像光を、スケール側レンズの第2部分と同様の形状の受光素子側レンズの第1部分、及び受光素子に向けて透過するよう配設される。
【0012】
各種実施形態において、光学式エンコーダは、光源とアパーチャとがスケール側レンズの光軸からスケールトラックの読取方向に直交する方向に離隔される「軸ずれ」投影構造を用い、光の中心光束がスケール側レンズの光軸に対して「軸ずれ」した光路に沿ってスケールトラックに与えられ、特に、スケールトラックから反射されて受光素子にスケールトラック画像を与えるスケールトラック画像光の中心光束が、スケール側レンズの光軸に対してスケールトラックの読取方向に直交する方向に対して(光源に対してレンズの光軸の反対側において)「軸ずれ」した光路に同様に沿うものとされてもよい。
さらに、いくつかの実施形態では、光学式エンコーダは、「二重軸ずれ」投影構造を用いて、スケール側レンズを通って前述の軸ずれ光路をたどった後、スケールトラック画像光の中心光束の光路がスケールトラックの読取方向に直交する方向に沿って受光素子側レンズの光軸から同様にずれるものとされてもよい。「軸ずれ」構造は、小型光学式エンコーダを実現できる点で有利であり、特に有利な実施形態ではほぼテレセントリック設計とされる。「二重軸ずれ」設計は、受光素子上のスケールトラック画像の光学歪みを低減ないし解消できる点で有利であり、特に有利な実施形態ではほぼ二重にテレセントリック設計とされる。
【0013】
具体的に、反対方向を向くスケール側レンズと受光素子側レンズの双方が、アパーチャの両側(これはスケールトラックの法線方向にそったアパーチャの中心軸と理解可能である)で前述のようにそれぞれアパーチャ軸ずれ距離Dap1及びDap2だけ離隔されることから、アパーチャを通過した光は、同一形状であるものの光軸に沿ってかつ光軸を中心として互いに対して逆向きのレンズの一部を通過する。この結果、「二重軸ずれ」光学式エンコーダは、受光素子でのスケールトラック画像の個別のレンズ収差の影響を低減ないしキャンセルする(例えば、レンズ収差、コマ収差、及び光軸に沿った歪みを互いにキャンセルする)のに用いることができ、従って正確な測定が得られる。
【0014】
いくつかの実施形態において、アパーチャが、スケール側レンズの第1焦点平面と受光素子側レンズの第2焦点平面との間に配置される。いくつかの実施形態において、光源の光源平面は、レンズの光軸方向に沿ってアパーチャのアパーチャ平面からオフセットされる。特に、光源はアパーチャには投影されず、これによりスケールトラックによって反射されアパーチャを通過する光の強度を略均一にするのが容易となる。
いくつかの実施形態において、スケール側レンズと受光素子側レンズは、それぞれ軸ずれ投影構造中で光学収差をさらに低減し又は解消するように構成された非球面を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、読取ヘッドは二つの光源と、二つのスケール側レンズと、二つのアパーチャを有し、スケールトラックのX読取方向に直交するYZ平面内で、各光源、各スケール側レンズ、及び各アパーチャの光軸が、受光素子側レンズのZ光軸方向について互いに軸対称とされる。
この構成において、それぞれスケールトラック目盛りを有する二つのスケールトラックによって反射される光束(すなわち、スケールトラック画像光)は、一つの受光素子または最もコンパクトな空間に配設される複数の受光素子によって受光可能である。従って、例えば光学式エンコーダは、スケールトラック目盛りの一つのトラックをスケールと読取ヘッドの移動量を検出するのに用い、スケールトラック目盛りの別のトラックをスケールと読取ヘッドの原点を検出するのに用い、これら二つのスケールトラック目盛りのトラック双方からの光を一つの受光素子によって受光することが可能である。結果として、光学式エンコーダが二つの受光素子によって光束を受光するよう構成される場合と比較して部品の点数及び大きさを低減することができる。
【0016】
しかしながら、いくつかの場合、単一の受光素子を使って二つのスケールトラックから光束を受光するのは不便であり、または実際的ではない。例えば、いくつかのケースでは、スケールトラックに対する動作間隔が変わることにより、二つのスケールトラックからの光束の間で光学的クロストークや相容れない画像変位が生じる可能性がある。
従って、いくつかの実施形態において、読取ヘッドは二つのセットの光源と、スケール側レンズと、アパーチャと、受光素子側レンズと、(精細な測定解像度用のインクリメンタルエンコーダ信号を与える一方のセットと、エンコーダの測定範囲にわたって絶対位置決定用の絶対エンコーダ信号を与える他方のセット等の)受光素子とを有するものとする。これら二つのセットは、ほぼ同一の構造(その光路の対応する部分は、YZ平面において互いにほぼ平行とされる等)に構成され、スケールトラックの読取方向に直交する方向に沿って互いに隣接配置される。結果として、この実施形態は、いくつかの用途で、より実際に実現しやすく、及び/又は間隔変化に対してより堅牢に動作可能である。
【0017】
本発明の一実施形態において、光源は、光を発する発光体と、発光体から出射される光路の後段に配されて発光体から出射された光を拡散する拡散板を有してもよい。この構成によれば、光源の幅を拡散板の幅と置き換え可能であることから、光学式エンコーダをより容易に設計できる。
本発明の一実施形態において、光源は、光を発する発光体と、発光体から出射される光路の後段に配される発光体レンズとを有し、スケール側レンズと発光体レンズとがケーラー照明を構成してもよい。この構成によれば、光源から出射されスケール側レンズを介してスケールに向かう光の不均一性を低減可能であることから、測定の正確性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に沿って見た模式図である。
【図2】図1の光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に直交するY方向に沿って見た模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に沿って見た模式図である。
【図4】図3の光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に直交するY方向に沿って見た模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかる光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に沿って見た模式図である。
【図6】図5の光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に直交するY方向に沿って見た模式図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかる光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に沿って見た模式図である。
【図8】本発明の第5実施形態にかかる光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に沿って見た模式図である。
【図9】本発明の第6実施形態にかかる光学式エンコーダの光源を示す模式図である。
【図10】本発明の第7実施形態にかかる光学式エンコーダの光源を示す模式図である。
【図11】本発明の別の実施形態にかかる光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に沿って見た模式図である。
【図12】図11の光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に直交するY方向に沿って見た模式図である。
【図13】図11の光学式エンコーダの概略斜視図である。
【図14】本発明の他の実施形態にかかる光学式エンコーダを示すスケールのX読取方向に沿って見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を添付の図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる光学式エンコーダ1を示す模式図である。図1では、X軸は紙面の法線方向の軸を指し、より一般的に他の図では、スケール2上のスケールトラック2’の読取または測定方向に沿った軸を指す。Y軸は水平方向の軸を指し、より一般的に他の図では、X軸に直交しスケールトラック2’の平面に略平行な方向に沿った軸を指す。X及びY軸またはこれに平行な任意の平面によってこれを含んで定義される平面(以下XY平面とする)は、スケールトラック2’を含む平面と一致または平行となる。Z軸は垂直方向に延びる軸を指し、より一般的に他の図では、XY平面に直交し及び/又はスケールトラック2’の平面の略法線する方向に沿った軸を指す。X及びZ軸(かつこれを含む)またはこれに平行な任意の平面によって定義される平面をXZ平面とし、Y及びZ軸(かつこれを含む)またはこれに平行な任意の平面によって定義される平面をYZ平面とする。図1に示されるように、各スケールトラック2’は複数の目盛り21を有してもよい。すなわち、目盛り21は光学式エンコーダの読取ヘッド3によってX軸方向に沿って読み取られる。
【0020】
図1及び図2を参照すると、光学式エンコーダ1はX軸方向に沿って読み取り可能な格子状又は縞状の目盛り21を備えるスケールトラック2’を有するスケール2と、スケールトラック2’に光を出射する光源31と、光源31からスケールトラック2’への光を透過するスケール側レンズ32と、スケールトラック2’と平行に配設されスケールトラック2’によって反射されスケール側レンズ32を通過した光を受光する受光素子33とを備える読取ヘッド3を有し、スケールトラック2’に対する読取ヘッド3の位置が受光素子33によって受光される光に基づき測定される。すなわち、スケール側レンズ32は、スケールトラック2’によって反射された光を受光素子33に透過する。
スケール2は矩形板状を有し、その長手方向はX軸方向に沿って揃えられ、横方向はY軸方向に揃えられる。図1は、X軸方向に沿って、すなわち、スケールトラック2’の読取方向から見た光学式エンコーダ1を示す。
図2は、Y軸方向に沿って、すなわち、スケールトラック2’の読取方向に直交する方向から見た光学式エンコーダ1を示す模式図である。本明細書において、スケールトラック2’の読取方向に直交する方向(Y軸方向)は、単にスケールトラック2’に直交する方向と呼ばれることもある。
【0021】
図1及び図2に示されるように、光源31はスケール側レンズ32と受光素子33との間に配設され、光源31とスケール側レンズ32との間の距離はスケール側レンズ32の焦点距離fsとなるように設定される。
光源31の光軸Lsrcは、スケールトラック2’のX読取方向においてスケール側レンズ32の光軸Lsと一致し(図2参照)、スケールトラック2’に直交するY方向において、スケール側レンズ32の光軸Lsから所定距離離隔される。ここで、所定距離Dは、スケールトラック2’に直交するY方向において光源31の幅Wsrcy(開口数)の1/2以上に設定される。
光源31の光軸Lsrcがスケールトラック2’に直交するY方向においてスケール側レンズ32の光軸Lsから所定距離Dだけ離隔されることから、光源31から出射される光について、スケールトラック2’に直交するY方向において光源31側の光は、図1に示されるように、スケールトラック2’に直交するY方向においてスケール側レンズ32の光源31側を通ってスケールトラック2’に透過する。この光は、スケールトラック2’によって反射され、スケールトラック2’に直交するY方向のスケール側レンズ32の光源31側の反対側を通って受光素子33に受光される。
【0022】
図1及び図2において、受光素子33によって受光される光の光路は実線で示され、光のその他の光路は省略される。以下の図面でも、同様の表示が用いられる。
この点について、光源31とスケール側レンズ32との距離がスケール側レンズ32の焦点距離fsに設定されることから、光学式エンコーダ1を使って、図2に示されるように、(少なくとも略)スケールトラック2’の読取方向の物体(スケールトラック2’)側テレセントリック光学系を構成することが可能となり、スケールトラック2’の拡大率を変更することなく反射光の読取方向に沿った焦点深度を大きくすることが可能であり、これにより測定精度が維持される。
具体的に、スケール側レンズ32の開口数NAは以下の式(1)によって表すことができる。
【0023】
【数1】

【0024】
以上において、Wsrcxはスケールトラック2’の読取方向の光源31の幅であり、Ds(図示略)は、スケールトラック2’の目盛り21からスケール側レンズ32までの距離であり、Dp(図示略)は、スケール側レンズ32から受光素子33までの距離である。
さらに、光学式エンコーダ1の焦点深度DOFは以下の式(2)によって表すことができる。
【0025】
【数2】

【0026】
以上において、λは光源31から出射される光の波長である。
従って、光源31の幅Wsrcxを小さくすることにより焦点深度DOFを大きくすることができる。
【0027】
本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(1)この光電式エンコーダにおいては、光源31から出射されスケールトラック2’に向かう光の光路と、スケールトラック2’によって反射され、ハーフミラーを介することなくスケール側レンズ32を通って受光素子に向かう光の光路とを分離可能であることから、受光素子33が十分な光量の光を得ることができる。
(2)スケールトラック2’と受光素子33とは互いに平行に配設され、単一のスケール側レンズ32がスケールトラック2’と受光素子33との間に配設される。さらに、光源31が、スケール側レンズ32と受光素子33との間に配設される。従って、光学式エンコーダ1を小型化できる。
【0028】
(3)光学式エンコーダ1を用いて、スケールトラック2’の読取方向の物体(スケールトラック2’)側テレセントリック光学系を構成できることから、焦点深度を大きくすることができる。従って、スケール2及び読み取りヘッド3の間の許容可能な間隔を大きくすることができる。
(4)光源31の光軸Lsrcとスケール側レンズ32の光軸Lsとの間のスケールトラック2’に直交する方向の所定距離Dが光源31のスケールトラック2’に直交する方向の幅Wsrcyの1/2以上に設定されることから、光源31から出射される光の利用効率を向上することができる。具体的に、所定距離Dが光源31の幅Wsrcyの1/2よりも小さい場合には、光源31の一部がスケール側レンズ32の光軸Lsからスケールトラック2’に直交する方向に突出し、この部分からの光が受光素子33によって受光されなくなり、これにより光源31から出射される光の利用効率が低下する。これに対し、所定距離Dを、幅Wsrcyの1/2以下に設定することにより、光源31から出射された光の利用効率が向上する。
【0029】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を添付の図面を参照して説明する。以下の説明において、同様の符号は前記実施形態で述べた同様の要素を指すものとし、その説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態にかかる光学式エンコーダ1Aを示すスケールトラック2’の読取方向(X方向)から見た模式図である。図4は、スケールトラック2’に直交するY方向から見た光学式エンコーダ1Aを示す模式図である。
【0030】
前記第1実施形態では、光学式エンコーダ1は、光源31と、スケール側レンズ32と受光素子33とを有する読取ヘッド3を有していた。これに対し、本実施形態では、光学式エンコーダ1Aの読取ヘッド3Aは、図3及び図4に示されるように、光源31と、スケール側レンズ32と受光素子33とに加えて、アパーチャ34を備える。
このアパーチャ34は、スケールトラック2’によって反射されスケール側レンズ32を透過した光を通過させるために設けられる。アパーチャ34とスケール側レンズ32との間の距離は、スケール側レンズ32の焦点距離fsないしそれに近い値に設定される。
【0031】
さらに、スケールトラック2’の読取方向に直交する方向の平面(すなわち、図3の紙面)内において、アパーチャ34の光軸Laと光源31の光軸Lsrcは、スケール側レンズ32の光軸に対して互いに軸対称とされる。具体的に、アパーチャ34の光軸Laは、スケールトラック2’のX読取方向において(図4参照)スケール側レンズ32の光軸と一致する一方、アパーチャ34の光軸Laは、スケールトラック2’に直交するY方向において、スケール側レンズ32の光軸Lsから所定距離Dだけ離隔される。
ここで、スケールトラック2’に直交するY方向においてアパーチャ34の幅Way(図3参照)は、以下の式(3)に示される値に設定され、スケールトラック2’と直交するY方向の光源31の位置決め誤差δのみが許容されるようにされる。
【0032】
【数3】

【0033】
この設定において、スケールトラック2’に直交するY方向に光源31の位置決め誤差が生じた場合であっても、位置決め誤差がδ以下であればアパーチャ34を用いて光源31からの光を制限することが可能である。従って、光源31の位置ずれによる光学式エンコーダ1Aの光学系の性能のばらつきを抑えることができる。
アパーチャ34とスケール側レンズ32との間の距離は、スケール側レンズ32の焦点距離fsないしそれに近い値に設定されるため、図4に示されるように光学式エンコーダ1Aを用いてスケールトラック2’のX読取方向の物体(スケールトラック2’)側テレセントリック光学系を構成するのに利用することができる。従って、焦点深度を大きくすることができる。
具体的に、スケール側レンズ32の開口数NAは以下の式(4)によって表すことができる。
【0034】
【数4】

【0035】
以上において、Waxはスケールトラック2’の読取方向のアパーチャ34の幅であり、Ds(図示略)は、スケールトラック2’の目盛り21からスケール側レンズ32までの距離であり、Dp(図示略)は、スケール側レンズ32から受光素子33までの距離である。
さらに、光学式エンコーダ1Aの焦点深度DOFは以下の式(5)によって表すことができる。
【0036】
【数5】

【0037】
以上において、λは光源31から出射される光の波長である。
従って、アパーチャ34の幅Waxを小さくすることにより焦点深度DOFを大きくすることができる。
【0038】
本実施形態によれば、第1実施形態の前記機能及び効果に加え、以下の機能と効果を得ることができる。
(5)光学式エンコーダ1Aはスケールトラック2’によって反射されスケール側レンズ32を通過した光を透過するアパーチャ34を有することから、光源31の幅ないし位置を設定することによって光学系を提供するのと同様に、アパーチャ34の幅ないし位置を設定することにより光学系を得ることができる。
(6)アパーチャ34の設計ないし位置決めは、光源31の設計ないし位置決めより相対的に容易であることから、光学式エンコーダ1Aの光学系の性能のばらつきをより容易に抑制できる。
【0039】
〔第3実施形態〕
図5は、スケールトラック2’のX読取方向に沿って見た本発明の第3実施形態にかかる光学式エンコーダ1Bを示す模式図である。図6は、スケールトラック2’に直交するY方向から見た光学式エンコーダ1Bを示す模式図である。
前記第2実施形態では、光学式エンコーダ1Aは、光源31と、スケール側レンズ32と受光素子33と、アパーチャ34を有する読取ヘッド3Aを有していた。これに対し、本実施形態では、光学式エンコーダ1Bは、図5及び6に示されるように、光源31と、スケール側レンズ32と、受光素子33と、アパーチャ34とに加え、受光素子側レンズ35を有する読取ヘッド3Bを備える。
受光素子側レンズ35は、アパーチャ34と受光素子33との間に配設される。アパーチャ34と受光素子側レンズ35との間の距離は、受光素子側レンズ35の焦点距離fpないしそれに近い値に設定される。
加えて、受光素子側レンズ35の光軸Lpは、スケール側レンズ32の光軸Lsと一致する。
【0040】
本実施形態によれば、第2実施形態の前記機能及び効果に加え、以下の機能と効果を得ることができる。
(7)光学式エンコーダ1Bを用いて、スケールトラック2’の読取方向の二方向テレセントリック光学系を構成することができることから、焦点深度を大きくすることができる。従って、受光素子33と受光素子側レンズ35との間の許容可能な間隔を大きくすることができる。
【0041】
〔第4実施形態〕
図7は、スケールトラック2’のX読取方向に沿って見た本発明の第4実施形態にかかる光学式エンコーダ1Cを示す模式図である。
前記第3実施形態では、光学式エンコーダ1Bは読取ヘッド3Bを有し、読取ヘッド3Bの受光素子側レンズ35の光軸Lpは、スケール側レンズ32の光軸Lsと一致していた。これに対し、本実施形態では、図7に示すように、光学式エンコーダ1Cは読取ヘッド3Cを有し、読取ヘッド3Cの受光素子側レンズ35の光軸Lpは、スケールトラック2’のX読取方向においてスケール側レンズ32の光軸Lsと一致する一方、Lpはスケールトラック2’に直交するY方向において、スケール側レンズ32の光軸Lsから所定距離Dの2倍離隔される。
【0042】
本実施形態によれば、第3実施形態の前記機能及び効果に加え、以下の機能と効果を得ることができる。
(8)スケールトラック2’に直交するY方向において、スケール側レンズ32と受光素子側レンズ35の光軸LsとLpの双方は、両側でアパーチャ34の光軸Laと所定距離D離隔される。従って、アパーチャ34を通過した光は、それぞれの光軸に沿って、かつ光軸を中心として逆向きで同一形状を有するスケール側レンズ32と受光素子側レンズ35の一部を透過する。この結果、光学式エンコーダ1Cを用いて、各レンズにおけるレンズ収差の影響を低減ないしキャンセルする(例えば、個別のレンズ収差を互いにキャンセルする)ことができる。
【0043】
〔第5実施形態〕
図8は、スケールトラック2’のX読取方向に沿って見た本発明の第5実施形態にかかる光学式エンコーダ1Dを示す模式図である。
前記図7の第4実施形態では、光学式エンコーダ1Cは読取ヘッド3Cを有し、読取ヘッド3Cは、単一の光源31と、単一のスケール側レンズ32と、単一のアパーチャ34とを有していた。これに対し、本実施形態では、図8に示すように、光学式エンコーダ1Dは読取ヘッド3Dを有し、読取ヘッド3Dは、二つの光源31と、二つのスケール側レンズ32と、二つのアパーチャ34とを有する。加えて、二つのアパーチャ34は単一の部材に形成される。
【0044】
前記図7の第4実施形態では、光学式エンコーダ1Cは格子状又は縞状目盛り21を有するスケールトラック2’を有していた。これに対し、本実施形態においては、スケール2Dは、(例えば、精細なインクリメンタルスケールトラックと、絶対コードスケールトラックとを設けるために)互いに異なってもよいそれぞれ一連の目盛り21を有する第1スケールトラック2’と第2スケールトラック2”とを有する。
さらに、本実施形態においては、目盛り21’のX読取方向に直交する方向の平面(図8の紙面)内において、光源31、スケール側レンズ32、及びアパーチャ34の光軸Lsrc、Ls及びLaは、受光素子側レンズ35の光軸Lpに対して互いに軸対称とされる。
【0045】
本実施形態によれば、第4実施形態の前記機能及び効果に加え、以下の機能と効果を得ることができる。
(9)光学式エンコーダ1Dでは、目盛り21の二つのトラックによって反射された光束を、単一の受光素子33または受光素子の最もコンパクトな構造によって受光可能であることから、光学式エンコーダが二つの別個の受光素子を用いて光束を受光するように構成された場合に比べて部品を小型化し及び/又は部品数を少なくすることができる。
【0046】
〔第6実施形態〕
図9は、本発明の第6実施形態にかかる光学式エンコーダ1Eの光源31Eを示す模式図である。
前述した実施形態では、各光学式エンコーダ1−1Dは、光源31を有していた。これに対し、本実施形態においては、光学式エンコーダ1Eは光源31Eを有し、光源31Eは図9に示されるように、光を発する発光体311と、発光体311から出射される光の光路の後段に配され発光体311から出射される光を拡散する拡散板312とを有する。
図示されないものの、スケール側レンズ32側(図9の下側)の拡散板312の平面と、スケール側レンズ32との間の距離は、スケール側レンズ32の焦点距離fsに設定される。
本実施形態によれば、前記機能及び効果に加え、以下の機能と効果を得ることができる。
(10)光源31Eの幅を拡散板312の幅に置き換え可能であることから、光学式エンコーダ1Eを容易に設計できる。
【0047】
〔第7実施形態〕
図10は、本発明の第7実施形態にかかる光学式エンコーダ1Fの光源31Fを示す模式図である。
前記第1から第5実施形態では、各光学式エンコーダ1から1Dは、光源31を有していた。これに対し、本実施形態においては、光学式エンコーダ1Fは、図10に示されるように光源31Fを有し、光源31Fは光を発する発光体311と、発光体311から出射される光の光路の後段に配される発光体レンズ313とを有し、スケール側レンズ32と発光体レンズ313とがケーラー照明を構成する。
本実施形態によれば、前記機能及び効果に加え、以下の機能と効果を得ることができる。
(11)光源31Fから出射されスケール側レンズ32を通ってスケールトラック2’に向かう光の不均一性を低減可能であることから、正確な測定を行うことができる。
【0048】
〔実施形態の変形〕
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において各種の変形を含みうるものである。
例えば、前記各実施形態において、所定距離Dはスケールトラック2’に直交するY方向において光源31、31Eまたは31Fの幅Wsrcyの1/2以上に設定されるものの、これは他の値であってもよい。
さらに、前述の実施形態のいくつかは、光源またはアパーチャのいずれか、又は双方がレンズから焦点距離またはその近くに配されることでテレセントリックとされているものの、当然のことながら、このようなテレセントリックという特徴を、軸ずれ照明及び/又は軸ずれ投影構造に適用することは一般的ではない。特に、当然ながら、軸ずれ投影は比較的一般的ではなく、「理想的な」軸上近似もいくつかの実施形態では期待するよりはよく動作しない。読取ヘッドからスケールトラック2’までの合理的な間隔の変化によらず、スケールトラック2’の読取方向に沿って一定の拡大率とクリアな像が得られるのが特に望ましい。これに対し、以下に詳細に述べるように、スケールトラック2’に直交するY方向のみについての合理的なレベルの拡大率変化及び画像ボケは重大ではない。というのは、Y方向は測定方向ではなく、受光素子はY方向に沿って光学画像信号を結合可能だからである。
【0049】
以下に概説される実施形態においては、この事実を用いて軸ずれ画像のテレセントリシティ(例えば、合理的な物体ないし画像距離変化と独立な拡大率一貫性)及び画像のクリアさを、特にスケールトラックの読取方向に沿って向上させる。特に、以下に概説するように、いくつかの実施形態では、非球面レンズ形状が用いられた時、かつ特にこのようなレンズが光源及び/又はアパーチャを非球面レンズの焦点距離以外の場所に配置して従来のテレセントリック構造とやや異なる軸ずれ投影構造とすることによって最も有利な読取方向に沿った軸ずれ照明及び画像が得られる。
【0050】
〔別の実施形態〕
図11、図12及び図13は、本発明にかかる光学式エンコーダ1Gの別実施形態を示す。図11は、スケールトラック2’のX読取方向に沿って見た光学式エンコーダ1Gを示す。図12はスケールトラック2’に直交するY方向に沿って見た同一の光学式エンコーダ1Gを示す。図13は光学式エンコーダ1Gの概略斜視図である。
光学式エンコーダ1Gは、それぞれ複数の目盛り21を有する一つ以上のスケールトラック2’を有するスケール2と、読取ヘッド3とを有するスケール2と読取ヘッド3とはスケール−読取ヘッドギャップGだけ離隔される。読取ヘッド3は、光源31と、スケール側レンズ32と、アパーチャ34と、受光素子側レンズ35と、受光素子33とを有する。光源31は、スケール側レンズ32の主平面などのスケール側レンズ32の平面32’と、スケール2に最も近い受光素子33の平面などの受光素子33の平面33Pとの間に配設される。
【0051】
光源31は、光源平面31’に配設されてもよく、または光源平面31’を規定してもよい。例えば、光源平面31’は比較的小さな光源の発光点源を含む平面でもよい。あるいは、光源31が光源からの発散光を出射するレンズを含む場合、光源平面31’はこれらの光がその最も小さな断面にさかのぼる、ないし収束する位置と略一致してもよい。一般に、動作中、スケール側レンズ32は光源31から出射される光をその第1軸ずれ部32aを通してスケールトラック2’に向けて透過させ、スケールトラック2’によって反射された光をその第2軸ずれ部32bを通してスケールトラック画像光36として透過させる。スケールトラック画像光36は、スケール側レンズ32の第2軸ずれ部32bを介して受光素子33に伝えられる。特に、図11−13に示される実施形態では、以下により詳細に述べるように、スケール側レンズ32はアパーチャ34、及び受光素子側レンズ35の軸ずれ部35aを介して受光素子33にスケールトラック画像光36を透過させる。
光源31の実効中心(例えば、動作中のスケールトラック画像光に実際に寄与する光によって規定されるもの)によってその光軸Lsrcを規定することができ、これはスケールトラック2’のX読取方向に直交する方向(Y)に照明軸ずれ距離Dsrcだけスケール側レンズ32の光軸Lsから離隔される。
【0052】
アパーチャ34は、図11から図13に示される実施形態について、スケール側レンズ32の平面32’と受光素子33の平面33Pとの間、より具体的には、スケール側レンズ32の平面32’と受光素子側レンズ35の平面35’との間に配されたアパーチャ平面34’(例えば、スケール2に最も近いアパーチャ34の平面)に配され、またはこれを規定する。光軸Laとして規定可能なアパーチャ34の中心は、Y方向にアパーチャ軸ずれ距離Dap1だけスケール側レンズ32の光軸Lsから離隔され、受光素子33に達するスケールトラック画像光36の第1レンズ軸ずれ結像パス38(図11に中心光束として示される)を規定する。すなわち、アパーチャ34は第1レンズ軸ずれ結像パス38を含むスケール側レンズ32の軸ずれ部32b(図13中の部分32b参照)を介してスケールトラック画像光36を受光するよう配置される。
アパーチャ34は、スケール側レンズ32を通る所望の第1レンズ軸ずれ結像パス38の位置を規定し、かつ当該光路に沿って視準するないし略視準する画像光束を選択するような大きさに配設され、これによりスケールトラック2’のX読取方向に所望のレベルの物体(スケール)側テレセントリシティを確保する。すなわち、アパーチャ34は、受光素子33に到達する画像光束を制約し、スケール側レンズ32の物体側及び受光素子側レンズ35の画像側に互いに略平行となる(視準される)ようにされて、受光素子33に形成されるスケールトラック画像が、予測されるギャップGの変化に関わりなくおよそ一定の拡大率を示すようにされる。アパーチャ34の大きさは、スケールトラック2’を投影する所望の深度を与える光学系のアパーチャ数を決定するように選択されてもよい。
【0053】
図11に示されるいくつかの実施形態では、スケールトラック画像光36に基づき、スケールトラック画像が形成される受光素子33の一部から反射される光42を受光する位置に光吸収体41が設けられてもよい。
図示される実施形態において、光吸収体41はアパーチャ34を規定する構造上に設けられ、スケールトラック画像が形成される受光素子33に向けて光42を再反射することなく受光素子33によって反射される光42を吸収する素材によって構成され形成される。従って、この吸収体41により、吸収体41がなければ受光素子33から反射される光42により生じる可能性のあるノイズを低減可能であり、従って、受光素子33上に形成されるスケールトラック画像のコントラストが低減するのを防止するのに役立つ。
図11に示される実施形態では、光源31の光軸Lsrcとアパーチャ34の光軸Laとは、スケール側レンズ32の光軸Lsについてほぼ、または完全に軸対称に配設される。より一般的に、アパーチャ34と光源31とは、スケール側レンズ32の光軸Lsを含むXZ平面の反対側に配置され、光源光がアパーチャ34を通してスケール画像光として有効に反射されるようにされる。スケール側レンズ軸Lsに対する光源31の照明軸ずれ距離Dsrcは、いくつかの実施形態においてスケール側レンズ軸Lsに対するアパーチャ34のアパーチャ軸ずれ距離Dap1に応じて規定可能である。例えば、Dsrcは、第1レンズ軸ずれ結像パス38に沿って反射されるスケールトラック画像光の量を適切に最適化するために、0.8×Dap1より大きく1.2×Dap1より小さく規定されてよい。いくつかの実施形態において、第1レンズ軸ずれ結像パス38に沿って反射されるスケールトラック画像光の量を最大化するため、DsrcをDap1と同じにし、光源31とアパーチャ34とをスケール側レンズ32の光軸Lsを中心として軸対称に配置してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、光源31の平面とアパーチャ34の平面とは、スケール側レンズ32の動作に関しておよそ共役関係に設けられてもよい。本発明のいくつかの実施形態において、図11−13に示されるように、光源は、光源平面31’とアパーチャ平面34’とが一致しないように配設される。この構成は、光源31のコアの内部構造(例えばワイヤボンド)及び/又は強度変化がアパーチャ平面34’に投影されないようにするのに有利となりうる。これにより、スケールトラック2’によって反射されアパーチャ34を透過するスケールトラック画像光がアパーチャ34においてほぼ均一な強度を有することが可能となり、これによりアパーチャでより望ましいスケールトラック画像光の空間的フィルタリング、及び受光素子33上でのより好ましいスケールトラック画像が得られる。これは、光学式エンコーダ1Gによって正確な測定を行うために重要な特徴の一つである。
【0055】
最も一般的なケースにおいて、光源平面31’が、アパーチャ平面34’よりもスケール側レンズ32から遠い側に配されることでこの効果が得られる。しかしながら、光源平面31’が、スケール側レンズ32により近いほど(例えば、図11−13に示されるように、アパーチャ平面34’よりも近い場合)、スケールトラック2’での光強度が一般により高いことから有利である。例えば、光源平面31’がスケール側レンズ32の平面32’から距離LSPに配置され、アパーチャ平面34’がスケール側レンズ32の平面32’から距離AP1に配置されるものとすると、LSPはAP1によって定義可能であり、いくつかの実施形態においては、LSPが1.2×AP1よりも小さいのが有利である。別の実施形態においては、LSPがAP1よりも小さくされてより高い光強度となるのがより有利である。LSPが0.7×AP1よりも大きいことがより有利であり、これにより光源31とアパーチャ34とが距離AP1とLSPとに配置され、ほぼテレセントリック照明及び/又は画像が得られ、これにより前述した利点が得られる。
例えば、いくつかの実施形態において、距離AP1(すなわち、スケール側レンズ32の平面32’に対するアパーチャ平面34’の位置)は、所望の物体側画像テレセントリシティを得るため、スケール側レンズ32の焦点距離によって定義可能である。図11及び12に示されるように、スケール側レンズ32は、Z方向に沿ってスケール側レンズ32の平面32’から焦点距離fsに配置された第1焦点平面39を規定する焦点距離を有する。いくつかの実施形態では、AP1が0.8×fsよりも大きく1.2×fsよりも小さいのが有利である。非球面レンズと軸ずれ投影を用いる各種実施形態において、AP1が0.8×fsではなくfsよりも大きい(例えばAP1はいくつかの実施形態では少なくとも1.03×fsとなるよう設計されてもよい)方がより有利であることがわかっている。
【0056】
同様に、図11及び図12に示されるように、受光素子側レンズは、Z方向に沿って受光素子側レンズ35の平面35’から焦点距離fpに配置された第2焦点平面40を規定する焦点距離を有する。アパーチャ平面34’は平面35’から距離AP2に配置される。いくつかの実施形態においては、距離AP2(すなわち、受光素子側レンズ35の平面35’に対するアパーチャ平面34’の位置)は、所望の画像側画像テレセントリシティを得るため、焦点距離fpによって規定可能である。例えば、いくつかの実施形態では、AP2が0.8×fpよりも大きく1.2×fpよりも小さく設計される。非球面レンズと軸ずれ投影を用いる各種実施形態において、AP2が0.8×fpではなくfpよりも大きい(例えばAP2はいくつかの実施形態では少なくとも1.03×fsとなるよう設計されてもよい)方がより有利であることがわかっている。いくつかの実施形態では、前述した望ましい関係の少なくとも一つを満たせばよく、加えてアパーチャ平面34’を二つのレンズの第1焦点平面39と第2焦点平面40との間に配置してもよい(例えば、アパーチャ34の物体側と像側とで対称的な光路が得られるように)。
【0057】
先に概説したように、ほぼ物体(スケール)側テレセントリシティが、目盛り21の投影拡大率をスケールトラック2’とスケール側レンズ32との間のギャップGに影響されないようにするのに好ましい。同様に、ほぼ像側テレセントリシティが、目盛り21の投影拡大率を受光素子33と受光素子側レンズ35との間の間隔に影響されないようにするために好ましい。しかしながら、目盛り21のX読取方向にテレセントリシティであることが好ましいものの、Y方向にテレセントリシティであることは必要ではない。すなわち、単一の目盛り21に沿ってY方向に反射される画像光は、Y方向に沿って受光素子33内の単一の検出手段によって受光される(集光される)ことから、画像はY方向にずれても影響はなく、Y方向に沿ってテレセントリシティを達成すること、あるいはより一般的に歪みを低減し、またはなくすことは必要ではない。
【0058】
従って、光学的歪みは、主としてX読取方向に沿って低減され、または無くされる必要がある。従って、図12及び図13に示されるように、光源31、スケール側レンズ32、アパーチャ34、受光素子側レンズ35の光軸はX読取方向に沿って同一平面位置に揃えられる。言い方を変えれば、スケール側レンズ32の第2軸ずれ部32bは、XZ平面のY軸に直交する方向に沿ってスケール側レンズ32の光軸Lsに対して対称的に配置される。これにより、X読取方向に沿った画像歪みが最小化される。それは、この方向に沿って各レンズの光軸を含む平面に対して対称的なレンズの部分を用いて投影が行われ、かつ一般にレンズはその光軸に近い対称的な画像光を用いる時によりよい投影が得られるからである。
【0059】
一方、光源31、スケール側レンズ32、アパーチャ34、受光素子側レンズ35の光軸はY方向に沿って同一平面位置には整列されない。言い方を変えれば、図13に示されるように、スケールトラック2’によって反射されるスケールトラック画像光36が透過するスケール側レンズ32の第2軸ずれ部32bは、XY平面のZ軸に直交する方向に沿ってスケール側レンズ32の光軸Lsを中心として対称的に配置されない。付随するスケール側レンズ32と受光素子側レンズ35とを通る「軸ずれ」及び「二重軸ずれ」Y方向結像パスは、Y方向の歪みを低減するのに理想的ではなく、光学式エンコーダ1G全体を小型化するのに望ましい。さらに、スケール側レンズ32の第1の軸ずれ部32a及び/又は第2の軸ずれ部32bは、スケール側レンズ32のそれぞれ第1及び第2の軸ずれ部32a,32bを介した照明光と画像光とのクロストークを低減ないし無くすためにスケール側レンズ32の光軸Lsを含まない。
【0060】
光学的歪みを主にX読取方向に沿って低減ないし無くす必要があることから、いくつかの実施形態では、Y方向に沿ったアパーチャ幅WayがX方向にそったアパーチャ幅Waxよりも長くされるのが好ましい。一般に、より大きなアパーチャがより大きな光スループット(これにより受光素子33上により大きな信号が生成される)を得るのに好ましいが、これによって被写界深度が小さくなり、及び/又はより大きな光学収差が許容されることになる。本発明の各種実施形態において、しかしながら、Y方向に沿って光学収差を最小化する必要がないことから、Y方向に沿ったアパーチャ幅Wayをより大きくしてより多くの光を透過しつつ、X方向に沿ったアパーチャ幅Waxをより小さくしてX読取方向に沿った被写界深度とテレセントリシティを好ましい程度まで大きくすることが可能である。
【0061】
光学式エンコーダ1Gは、光源31が軸ずれ部32aを通して光を透過し、及び/又はスケールトラック画像光がY方向に沿ってスケール側レンズ32の光軸Lsから離隔されたレンズの軸ずれ部32bを介して透過されることから「軸ずれ」構造として特徴付けることができる(図11及び13参照)。
さらに、光学式エンコーダ1Gは、スケールトラック画像光が、さらにY方向に沿って受光素子側レンズ35の光軸Lpから離隔された軸ずれ部35aを通して透過されることから「二重軸ずれ」構造として特徴付けることができる(図11及び13参照)。前述のように、「軸ずれ」構造は光学式エンコーダ1Gを小型化するのに有利である。「二重軸ずれ」構造は、単独の「軸ずれ」構造に付随する光学歪みを低減する点で有利である。
【0062】
図11から図13に示される具体的な二重軸ずれ構造において、その利点を最大化するため、スケール側レンズ32と受光素子側レンズ35とは、同様に形成されかつその同様に形成された表面がその各々の光軸Ls、Lpに沿って互いに反対方向を向くように配置される。例えば、図11に示された実施形態において、レンズ32と35の双方は、全体的に凸の第1非球面S1(S1’)と第2非球面S2(S2’)とを有し、その各々の全体的に凸の表面S1(S1’)が互いに対向するように構成される。さらに、受光素子側レンズ35の光軸Lpはスケール側レンズの光軸LsとY方向にDL1L2(図11)だけ離隔され、スケールトラック2’によって反射されスケール側レンズ32の第2軸ずれ部32bとアパーチャ34とを通過したスケールトラック画像光36が第2軸ずれ部32bとほぼ、または全く同様の形状を有し光軸Ls、Lpの方向を中心として事実上180度回転された受光素子側レンズ35(図13)の第1部分(軸ずれ部)35aを通過するようにされる。別の言い方をすると、アパーチャ34とレンズ32及び35は、前述のようにスケール側レンズ32の第2軸ずれ部32bを補完する受光素子側レンズの所望の部分35aを通る第2レンズ軸ずれ結像パス38’をアパーチャによって規定するように配設される。
【0063】
この構造により、コマ収差などの収差及び、各レンズ32及び35を通した軸ずれ投影及び大きな画角により導入される歪みが設計上キャンセルされる。別の言い方をすると、これらのスケール側レンズ32の第2軸ずれ部32bを介した軸ずれ投影及び大きな画角により生ずる収差は、前述の受光素子側レンズ35の第1部分35aを設けたことによって設計上キャンセル可能である。この構造により、レンズ欠陥が双方のレンズにおいて同一であることを条件として、レンズ欠陥(表面形状のムラなど)も補償可能である。従って、多くの実際の、及び/又はわずかに欠陥のあるレンズについて、図11から図13に示される二重軸ずれ実施形態は、図5に示される実施形態よりも優れている。
【0064】
図11に示されるように、アパーチャ34の光軸Laは二つのレンズ32、35の光軸Ls、Lpの間の距離Dl1L2に沿って配置されている。一般に、DL1L2=Dap1+Dap2である。ある有利な実施形態において、距離Dap1と距離Dap2とは、設計上同一であり、部分32b,35aの形状がほぼ同一とされてもよい。
前述の各種設計関係は、光学式エンコーダ1Gの二重軸ずれ構造に関して記載されているものの、必要に応じてより一般的に前述の開示事項及び設計関係はここに開示されるその他の各種エンコーダ実施形態(ここに開示される「軸ずれ」及び「二重軸ずれ」構造等)に適合及び適用可能である。
【0065】
以下の表1は、光学式エンコーダ1Gの実施形態に使用可能な設計上の寸法の一例を示す。
これらの寸法は、例えばスケールトラック2’のY方向高さが1〜2mmであるときに適切である。スケールトラック2’は、インクリメンタルな目盛り21(例えば格子)ないし絶対目盛り21を有してよい。球面レンズが用いられる場合、X方向ピッチを有するおよそ140〜100ミクロンの目盛り21(例えば格子ピッチ)が投影されても結果として認容可能である。適切に設計された非球面レンズが用いられる場合、X方向ピッチ(格子ピッチなど)を有する20ミクロン(又はそれ以上)の目盛り21が投影されても、以下に詳述するように結果として認容可能である。光源31から出射された光の波長は、いくつかの実施形態においては約600〜900nmであってよい。この一連の設計寸法によりZ方向に沿って約21ミリという小型の読取ヘッド寸法が得られ、かつおよそ±200ミクロンのギャップ許容値が得られる。
【0066】
【表1】

【0067】
「FOVX」と「FOVY」の値(X方向とY方向それぞれに沿った受光素子33に投影されるスケールトラック2’の視野)は、望ましい組み立て及び照準許容誤差を得るため、スケールトラック2’ないしその他の光学素子ではなく受光素子の大きさによって制限可能である。小型の読取ヘッドを実現するため、比較的短い焦点距離が望ましい。一つの実施形態では、このような短い焦点距離、及び0.75から1.25の拡大率において、歪みのない画像を得るため、比較的厚いレンズ設計が望ましい。例えば、表1は、4.5mmの焦点距離について、4.0mmのレンズ厚みTにより許容可能な性能が得られることを示す。
いくつかの実施形態において、0.7から1.1の範囲のレンズ厚みT/焦点距離の比率が0.7から1.1であれば許容可能な性能が得られる。
【0068】
前述の本発明にかかる「二重軸ずれ」設計は「軸ずれ」設計と大きな画角とにより生ずる光学歪みとコマ収差とを低減するのに有利であるものの、その他の光学収差は残る可能性がある。スケール側レンズ32と受光素子側レンズ35の双方が適切に設計された非球面S1(S1’)とS2(S2’)とを有する場合、少なくともX読取方向に沿って残りの光学収差は実質的に解消されることが判明している。図11−12に示される非球面S1(及び同様の表面S1’)とS2(及び同様の表面S2’)とは、一連の表面の例示的なセットを近似して示す。
いくつかの実施形態において、望ましい性能が得られるのは、表面S1が当該レンズの光軸近傍で凸でありレンズの光軸からの半径「r」に応じて単調増加する径方向に沿った斜面を有する第1非球面であり、表面S2が当該レンズの光軸近傍で凸であり当該レンズの光軸を含む第1半径範囲RR1にわたってレンズの光軸からの半径「r」に応じて増加し、第1半径範囲RR1(図12参照)を囲む第2半径範囲RR2にわたり半径「r」に応じて小さくなる径方向に沿った斜面を有する第2非球面である時であることがわかっている。
【0069】
スケール側レンズ32と受光素子側レンズ35とが受光素子33上のスケールトラック画像の拡大率Mが0.75より大きく1.25より小さくなるよう構成される場合、いくつかの実施形態では、レンズの光軸に近い第2非球面S2の半径R2と、レンズの光軸に近い第1非球面S1の半径R1との比率、すなわちR2/R1が1.1より大きく1.7よりも小さい場合に望ましい性能が得られることがわかっている。
また、前述したように、いくつかの実施形態では、レンズの光軸に沿った第1非球面S1と第2非球面S2との間のレンズ厚み「T」とレンズの焦点距離F(fs、fp)との比率、すなわち、T/Fが0.7より大きく1.1より小さい時に望ましい性能が得られる。これらのガイドラインの一つ以上により示される設計範囲に該当する非球面の各種セットは、分析ないし実験に基づき当業者によって決定可能である。
【0070】
当然のことながら、これらのガイドラインは例示的なものにすぎず、限定的ではない。例えば、前述の特性を有するスケール側レンズ32の第1非球面S1がスケール2からより遠く配置され、前述の特性を有するスケール側レンズ32の第2非球面S2がスケール2により近く配置される場合(例えば、図12に示される場合)に優れた性能が得られ、このような構造がいくつかの実施形態では好まれるものの、表面S1とS2の表面形状が逆にされても(例えば、その光軸方向に沿ってレンズ32と35を逆にした場合のように)、合理的な性能がいくつかの用途では得られることがわかっている。
【0071】
スケール側レンズ32と受光素子側レンズ35とは、比較的安価、軽量かつ加工が容易(例えば射出成形)である一方、温度変化及び湿気などの環境的条件に比較的敏感なプラスチックから形成されてもよい。あるいは、レンズは環境的条件により影響を受けにくい光学ガラスから形成されてもよい。
【0072】
図14は本発明の特徴を組み込んださらに他の実施形態の光学式エンコーダ1Hを示し、この光学式エンコーダは、スケールトラック2’を読み取る第1構造1H−1と、スケールトラック2”を読み取るための第2構造1H−Aとを有する。一つの実施形態において、第1スケールトラック2’は、受光素子33に投影されるインクリメンタル目盛りと、絶対受光素子33’上に投影される絶対目盛りを有する第2スケールトラック2”とを有する。別の言い方をすると、読取ヘッドは二つのセットの光源と、スケール側レンズと、アパーチャと、受光素子側レンズと、(精細な測定解像度用のインクリメンタルエンコーダ信号を与える一方のセットと、エンコーダの測定範囲にわたって絶対位置決定用の絶対エンコーダ信号を与える他方のセット等の)受光素子とを有する。
【0073】
これら二つのセットは、ほぼ同一の構造(その光路の対応する部分は、YZ平面において互いにほぼ平行とされる等)に構成されていてもよく、スケールトラックの読取方向に直交する方向に沿って互いに隣接配置されてもよい。図示されるように、第2構造1H−Aと第1構造1H−1は、図11−13に示される光学式エンコーダに関して前述された二重軸ずれ構造である。第1及び第2トラック2’,2”はX読取方向に直交するY方向に沿って互いにオフセットされている。インクリメンタル受光素子33と絶対受光素子33’も、同様にY方向に沿って互いにオフセットされている。本実施形態によれば、インクリメンタルエンコーダ1H−1と絶対エンコーダ1H−Aをコンパクトに組み合わせることができる。
【0074】
図8の二つのスケールトラックの実施形態のいくつかの用途では、単一の受光素子を使って二つのスケールトラックから光束を受けるのは不便かつ実際的ではない。例えば、いくつかのケースでは、スケールトラックに対する動作間隔が変わることにより、この実施形態での二つのスケールトラックからの光束の間で光学的クロストークや相容れない画像変位が生じる可能性がある。このような用途では、平行な光路に付随する利点のため、図14のスケールトラックを有する光学式エンコーダ1Hを作るのがより実際的であり、かつ/又は間隔変化に関してより堅牢に動作する。
【符号の説明】
【0075】
1,1A〜1H…光学式エンコーダ
1H−1…第1構造
1H−A…第2構造
2,2D…スケール
2’,2”…スケールトラック
3,3A〜3D…読取ヘッド
31,31E,31F…光源
31’…光源平面
32…スケール側レンズ
32’…スケール側レンズの平面
32a,32b…軸ずれ部
33…受光素子
33P…受光素子の平面
34…アパーチャ
34’…アパーチャ平面
35…受光素子側レンズ
35’…受光素子側レンズの平面
35a,35b…軸ずれ部
39,40…焦点平面
41…光吸収体
311…発光体
312…拡散板
313…発光体用レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取方向に延設されかつ目盛りを備えるスケールトラックを有するスケールと、前記スケールトラックに光を出射する光源と前記スケールトラックによって反射された前記光を受光する受光素子とを備えた読取ヘッドとを備え、前記スケールに対する前記読取ヘッドの位置を前記受光素子によって受光された前記光に基づき測定する光学式エンコーダであって、
前記読取ヘッドは、前記光源から前記スケールトラックに出射された前記光を透過し、かつ前記スケールトラックによって反射された前記光をスケールトラック画像光として前記受光素子に向けて透過する第1レンズを備え、
前記光源は、前記第1レンズの平面と前記受光素子の平面との間に配された光源平面上に配置され、前記光源の中心は、前記第1レンズの光軸から前記スケールトラックの読取方向に直交する方向に照射軸ずれ距離Dsrcだけ離間され、
前記第1レンズの平面と前記受光素子の平面との間のアパーチャ平面に配されたアパーチャを有し、
前記アパーチャの中心は、前記第1レンズの光軸から前記読取方向に直交する方向にアパーチャ軸ずれ距離Dap1だけ離間されるとともに、前記スケールトラック画像光が前記受光素子に到達する第1レンズ軸ずれ結像パスであって前記第1レンズ軸ずれ結像パスを含む前記第1レンズの一部を介して前記スケールトラック画像光を前記アパーチャが受けるようにした第1レンズ軸ずれ結像パスを規定し、
前記アパーチャと前記光源とが前記第1レンズの光軸と前記読取方向とを含む平面の反対側に配されることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
0.8*Dap1<Dsrc<1.2*Dap1であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記アパーチャ平面は、前記第1レンズの前記光軸の方向に沿って前記第1レンズの平面から距離AP1に配され、前記光源平面は距離LSPに配され、かつLSP<1.2*AP1であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項4】
請求項3に記載の光学式エンコーダにおいて、
0.7*AP1<LSP<AP1であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項5】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記第1レンズは前記第1レンズの前記光軸の方向に沿って前記第1レンズの平面から距離fsに配される第1焦点平面を規定する第1焦点距離を有し、前記アパーチャ平面は、前記第1レンズの前記光軸の方向に沿って前記第1レンズの平面から距離AP1に配され、1.2*fs>AP1>0.8*fsであることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項6】
請求項5に記載の光学式エンコーダにおいて、
AP1>1.03*fsであることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項7】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記アパーチャ平面と前記受光素子の平面との間に配された第2レンズ平面に配された第2レンズを有し、前記第2レンズは前記アパーチャを透過する前記スケールトラック画像光を受光し、前記受光されたスケールトラック画像光を前記受光素子上に結像し、
前記第2レンズは前記第1レンズと同様に構成され、第1及び第2レンズの同様な形状を有する表面がその光軸方向に沿って反対方向を向くように配置され、前記アパーチャの中心が、前記第2レンズの光軸から前記読取方向に直交する方向にアパーチャ軸ずれ距離Dap2離間され、かつ前記アパーチャが前記第1レンズ軸ずれ結像パスを含む前記第2レンズの一部を介して前記スケールトラック画像光を通過させるように前記受光素子に到達する前記スケールトラック画像光の第2レンズ軸ずれ結像パスを規定することを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項8】
請求項7に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記第1レンズの前記光軸と前記第2レンズの前記光軸は、前記読取方向に直交する方向に沿って距離DL1L2離間され、前記アパーチャの中心は前記第1及び第2レンズの前記光軸の間に前記距離DL1L2に沿って配置されることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項9】
請求項8に記載の光学式エンコーダにおいて、
Dap2とDap1は設計上、同一であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項10】
請求項8に記載の光学式エンコーダにおいて、
0.8*Dap1<Dsrc<1.2*Dap1であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項11】
請求項8に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記第1レンズはその光軸の方向に沿って前記第1レンズの平面から距離fsに配される第1焦点平面を規定する第1焦点距離を有し、前記第2レンズはその光軸の方向に沿って前記第2レンズの平面から距離fpに配される第2焦点平面を規定する第2焦点距離を有し、前記アパーチャ平面は前記第1レンズの平面からその光軸の方向に沿って距離AP1に配され、かつ前記第2レンズの平面からその光軸の方向に沿って距離AP2に配され、1.2*fs>AP1>0.8*fsであることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項12】
請求項11に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記アパーチャ平面は、前記第1焦点平面より前記第1レンズの平面からより遠くに配されることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項13】
請求項11に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記アパーチャ平面は、前記第1及び第2焦点平面の間に配されることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項14】
請求項11に記載の光学式エンコーダにおいて、
1.2*fp>AP2>0.8*fpであることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項15】
請求項11に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記光源平面は、前記第1レンズの前記光軸の方向に沿って前記第1レンズの平面から距離LSPに配され、LSP<1.2*AP1であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項16】
請求項15に記載の光学式エンコーダにおいて、
0.7*AP1<LSP<AP1であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項17】
請求項11に記載の光学式エンコーダにおいて、
AP1>1.03*fsであることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項18】
請求項8に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記第1レンズと前記第2レンズとは、それぞれ非球面レンズを備え、前記第1レンズと前記第2レンズの第1非球面は当該レンズの光軸近傍で凸であり、かつ径方向に沿って当該レンズの光軸から径に応じて単調に増加する傾斜面を有する曲面であり、
前記第1レンズと前記第2レンズの第2非球面は当該レンズの光軸近傍で凸であり、かつ径方向に沿って当該レンズの光軸から当該レンズの光軸を含む第1径範囲にわたって径に応じて増加し、前記第1径範囲を囲む第2径範囲にわたって径に応じて減少する傾斜面を有する曲面であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項19】
請求項18に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記第1レンズの前記第1非球面は、前記スケールトラックから遠い側に配置され、前記第1レンズの前記第2非球面は前記スケールトラックに近い側に配置されることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項20】
請求項18に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記第1及び第2レンズは、前記受光素子上の前記スケールトラック画像の拡大率Mが、0.75<M<1.25とされ、その光軸近くの前記第2非球面の半径R2とその光軸近くの前記第1非球面の半径R1との割合が1.1<[R2/R1]<1.7であり、第1及び第2非球面の間のそれぞれの光軸に沿った厚みTのそれぞれのレンズの焦点距離Fに対する割合が0.7<[T/F]<1.1であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項21】
請求項8に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記スケールはさらに前記読取方向に沿って延び、目盛りを備え、前記第1スケールトラックから前記読取方向に直交する方向に沿ってオフセットされた第2スケールトラックを有し、前記読取ヘッドは、
前記光源、前記第1レンズ、前記アパーチャ、前記第2レンズ、及び前記受光素子を有する第1構造と、第2光源、前記第1レンズと同様の第3レンズ、第2アパーチャ、前記第2レンズと同様の第4レンズ、及び第2受光素子を備えて前記第1構造と同様に動作するよう構成された第2構造とを有し、
前記第2構造は、前記第2スケールトラックを前記第2受光素子上に結像するように、前記読取方向に直交する方向に沿って前記第1構造からオフセットされることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項22】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
前記スケールトラック画像が形成される前記受光素子の部分から反射される光を受光するように位置決めされ、前記受光素子の部分から反射された光を吸収するように構成された光吸収体を有することを特徴とする光学式エンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−227068(P2011−227068A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73149(P2011−73149)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】