説明

光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置

【課題】ワイヤを支持部材のガイド孔に高精度に位置決めでき、その挿通作業を容易に行える「光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置」を提供すること。
【解決手段】本実施形態例に係る光学式ピックアップ1のアクチュエータ(対物レンズ駆動装置)3では、ワイヤ8を挿通させるための支持部材9のガイド孔9aの全体形状が略円錐状であり、その先端部9bの断面形状がワイヤ8に外接させうる程度に小径な正方形に形成されている。ワイヤ8はレンズホルダ7を弾性的に支持しており、支持部材9の背面側に固着された背面基板10にワイヤ8の基端部が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DVDやCD等のディスク状記録媒体に対して情報を記録/再生する光学式ピックアップに係り、特に、対物レンズを保持するレンズホルダが複数本のワイヤによって弾性的に支持されている光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、この種の光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置は、対物レンズを保持するレンズホルダの両側部が合計4本(または6本)の導電性のワイヤによって弾性的に支持されている。つまり、各ワイヤの自由端側がレンズホルダを支えており、各ワイヤの固定端側は支持部材および背面基板に固定されている。背面基板は支持部材の背面側に固着されており、この支持部材は磁束を発生させる磁気回路(マグネットやヨーク)が配設されたベース部材上に固着されている。対物レンズはディスク状記録媒体(以下「ディスク」と略称)の記録面と対向する位置に配置され、光学式ピックアップの光源(半導体レーザ)から出射された光ビームを対物レンズで収束させて該記録面に照射することによって情報の記録/再生が行われ、その際、光ビームのスポット径をディスクの記録面に対して制御するフォーカスサーボとトラッキングサーボがかけられる。前記磁束を横切るフォーカスコイルとトラッキングコイルがレンズホルダに取着されたムービングコイル方式の場合、各ワイヤの一端部はレンズホルダ側のフォーカスコイルおよびトラッキングコイルに接続され、各ワイヤの他端部は背面基板に接続されている。この背面基板がフレキシブル配線基板を介して外部駆動回路と接続されるため、所定のワイヤを介してフォーカスコイルに通電することにより、対物レンズの光軸に沿った方向に電磁力を発生させてその方向へレンズホルダを駆動することができ、これにより対物レンズのフォーカス補正が可能となる。同様に、別のワイヤを介してトラッキングコイルに通電することにより、対物レンズの光軸と直交する方向に電磁力を発生させてその方向へレンズホルダを駆動することができ、これにより対物レンズのトラッキング補正が可能となる。
【0003】
このような対物レンズ駆動装置の組立工程でワイヤを取り付ける際には、予め所定の長さに切断されたワイヤを固定部側(支持部材側)のガイド孔に挿通し、さらに該ワイヤの先端部を可動部側(レンズホルダ側)のガイド孔に挿通した後、固定部側のガイド孔内に接着剤を充填してワイヤを固定するようにしている。また、ワイヤの位置ずれはフォーカス補正やトラッキング補正の動作特性を損なう大きな要因となるため、ワイヤはガイド孔に挿通することによって取付位置が精度良く規定されなければならない。それゆえ、通常は、先窄まりなテーパ状に形成したガイド孔にワイヤを挿通すると、このガイド孔の先端部によってワイヤが位置決めされるようになっている。
【0004】
図7は従来の対物レンズ駆動装置におけるワイヤの取付構造を示す説明図である(例えば、特許文献1参照)。図7に示すように、ワイヤ20は、背面基板21の遊挿孔21aと支持部材22のガイド孔22aとを貫通してレンズホルダ23のガイド孔23aに挿通されている。このワイヤ20は、背面基板21の背面において遊挿孔21aの周囲に形成されている図示せぬランド部に半田付けされると共に、レンズホルダ23のガイド孔23aを通過した先でフォーカスコイルまたはトラッキングコイルの導出部分と半田付けされる。背面基板21の遊挿孔21aはワイヤ20が容易に挿通できる程度に大径な円柱状に形成されている。支持部材22とレンズホルダ23はいずれも合成樹脂の成形品であり、支持部材22のガイド孔22aは略円錐状で、その先端部だけがワイヤ20よりも若干大径な円筒状に形成されている。レンズホルダ23のガイド孔23aも略円錐状であり、その先端部だけがワイヤ20よりも若干大径な円筒状に形成されている。ガイド孔23aの位置はレンズホルダ23の重心などから一義的に規定されるので、ワイヤ20の弾性変形が容易な部分(有効部分)に所要の長さLを確保するために、支持部材22のガイド孔22aは比較的短寸な奥行き寸法(例えば0.6mm程度)に設定されている。そして、ワイヤ20を取り付ける際には、ワイヤ20を背面基板21の遊挿孔21aに挿通した後、支持部材22のガイド孔22aの円錐面でガイドすることによって該ガイド孔22aに挿通させ、さらに、レンズホルダ23のガイド孔23aの円錐面でガイドすることによって該ガイド孔23aに挿通させる。こうしてワイヤ20をガイド孔22a,23aに挿通して位置決めした後、図示せぬ接着剤をガイド孔22a内に塗布するなどしてワイヤ20を位置決め状態に固定すると共に、ワイヤ20の両端部をコイルの導出部分と背面基板21のランド部に半田付けする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−289455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、レンズホルダと支持部材のテーパ状のガイド孔に挿通されるワイヤは、これらガイド孔の先端部によって位置決めされるので、ワイヤの位置決め精度を高めるためには、ガイド孔の先端部の内径をワイヤの外径と略同等に設定しておけば良い。例えば、図7に示す従来例の場合、略円錐状に形成されているガイド孔22aやガイド孔23aの先端部を、ワイヤ20がほとんど隙間なく挿通できる程度の円筒状に形成しておけば、このワイヤ20を高い位置精度で取り付けることが可能となる。しかしながら、樹脂モールド品である支持部材22やレンズホルダ23には成形バリが生じるため、ガイド孔22aやガイド孔23aの先端部を極力細くした場合、そこに生じた僅かな成形バリによってワイヤ20が挿通不能になってしまう虞がある。それゆえ、従来は、ガイド孔22aやガイド孔23aの先端部の内径をワイヤ20の外径の2倍程度に設定しておくことが多く、その分、ワイヤ20に対する位置決め効果は不十分であった。
【0007】
そこで本発明者らは、図8に示すように、支持部材22のガイド孔22aを四角錐状に形成すると共に、このガイド孔22aの先端部22bの断面形状を正方形にしたものについて検討した。このような四角錐状の場合、円錐状と同様にガイド孔22aの先端部22bに微小な成形バリは生じるものの、この成形バリは主に正方形の四隅の角部に発生するため、先端部22bの断面形状をワイヤに外接させうる程度に小径な正方形したとしても、成形バリがワイヤの挿通の妨げになりにくくなると推測される。しかしながら、図9の断面図に示すように、奥行き寸法が短い支持部材22のガイド孔22aを四角錐状に形成した場合、このガイド孔22aの稜線部22cの傾斜が過度に緩やかになってしまい、かつ、稜線部22cによって画成されるV字状溝にワイヤ20が嵌合しやすくなるため、ガイド孔22a内へ挿入したワイヤ20が稜線部22cの近傍に当接すると、摺動抵抗が不所望に大きくなって挿通作業に支障をきたしやすいことが判明した。なお、図9は図8のA−A線に沿う断面図を示しており、図9中の鎖線は図8のB−B線に沿って切断した場合のガイド孔22aのテーパ面(内壁面)を示している。また、レンズホルダ23のガイド孔23aは支持部材22のガイド孔22aに比して奥行き寸法が長いため、このガイド孔23aを四角錐状に形成しても稜線部の傾斜が過度に緩やかになることはない。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ワイヤを支持部材のガイド孔に高精度に位置決めでき、その挿通作業を容易に行える光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、磁束を発生させる磁気回路が配設されたベース部材と、ディスクに光ビームを収束させる対物レンズを保持していると共に前記磁束を横切るコイルが取着されたレンズホルダと、一端部が前記コイルに接続されて前記レンズホルダを弾性的に支持している複数本の導電性のワイヤと、前記各ワイヤが個別に挿通されるテーパ状のガイド孔を有して前記ベース部材に固着された合成樹脂製の支持部材と、この支持部材の背面側に固着されて前記各ワイヤの他端部が接続された背面基板とを備え、前記ガイド孔の先端部によって前記ワイヤが位置決め可能な光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置において、前記ガイド孔は、開口面積が相対的に広い基端部の断面形状が円形または八角形以上の多角形であると共に、開口面積が相対的に狭い先端部の断面形状が正方形であり、この正方形の1辺の長さを前記ワイヤの直径よりも僅かに大きな値に設定した。
【0010】
このようにワイヤが挿通される支持部材のテーパ状のガイド孔の先端部の断面形状を、ワイヤに外接させうる程度に小径な正方形となせば、ガイド孔の先端部の四隅に生じやすい成形バリがワイヤの挿通を損なわず、かつ、該先端部の四隅以外の部分でワイヤを精度良く位置決めすることが可能となる。また、テーパ状のガイド孔の基端部の断面形状を円形または八角形以上の多角形に形成し、このガイド孔の全体形状が略円錐状または八角錐以上の略多角錐状となるようにしておけば、ガイド孔の奥行き寸法が短くてもテーパ面(内壁面)の傾斜はさほど緩やかにはならず、かつ、ワイヤとの嵌合が懸念されるようなV字状溝が該テーパ面の稜線部付近に画成されることもなくなる。それゆえ、このガイド孔内へワイヤを挿通させる際に摺動抵抗が不所望に大きくならず、ワイヤの挿通作業を円滑に行うことができる。
【0011】
上記の構成において、ガイド孔のテーパ面の傾斜角度が59度以上であると、このガイド孔内へワイヤを挿通させる際の摺動抵抗を十分に抑制することができて好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置では、ワイヤが挿通される支持部材のテーパ状のガイド孔の先端部の断面形状を、ワイヤに外接させうる程度に小径な正方形となしているため、成形バリの影響を受けずにワイヤを精度良く位置決めすることができる。また、支持部材のガイド孔の全体形状が略円錐状または八角錐以上の略多角錐状となるようにしてあるため、このガイド孔内へワイヤを挿通させる際に摺動抵抗が不所望に大きくならず、ワイヤの挿通作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態例に係る光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置を示す上面図である。
【図2】該光学式ピックアップ全体の上面図である。
【図3】該光学式ピックアップ全体の斜視図である。
【図4】図1に示す対物レンズ駆動装置の要部説明図である。
【図5】図4に示す支持部材のガイド孔の正面図である。
【図6】ガイド孔の変形例を示す正面図である。
【図7】従来の対物レンズ駆動装置におけるワイヤの取付構造を示す説明図である。
【図8】対物レンズ駆動装置の支持部材のガイド孔を四角錐状に形成した場合の正面図である。
【図9】図8のA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態例について図面を参照しながら説明する。本実施形態例に係るアクチュエータ(対物レンズ駆動装置)3は図1に示すような外観を呈し、図2と図3に示す光学式ピックアップ1に組み込まれている。
【0015】
まず、この光学式ピックアップ1の全体構成について説明する。光学式ピックアップ1は、アルミニウム等からなるシャーシ2と、シャーシ2の長手方向の一端部に固設された図示せぬ受発光ユニットと、シャーシ2に担持された対物レンズ駆動装置であるアクチュエータ3と、シャーシ2内に配置された図示せぬ光学部品や回路基板を覆うカバー4と、シャーシ2の外部へ導出されたフレキシブル配線基板5とによって概略構成されている。使用に際しては、シャーシ2がディスクプレーヤ内の図示せぬガイドシャフトに沿って直線的に移送されるため、この光学式ピックアップ1はディスクの半径方向へ往復移動できるようになっている。前記受発光ユニットは半導体レーザと光検出器をユニット化したものであり、この受発光ユニットはフレキシブル配線基板5を介して外部駆動回路と接続される。また、アクチュエータ3の後述する背面基板10もフレキシブル配線基板5を介して外部駆動回路と接続される。
【0016】
アクチュエータ3は、対物レンズ6が取り付けられた合成樹脂製のレンズホルダ7と、このレンズホルダ7を弾性的に支持する4本のワイヤ8と、各ワイヤ8の基端側が挿通された合成樹脂製の支持部材9と、この支持部材9の背面に固着された背面基板10と、支持部材9や磁気回路11が配設されたベース部材12とを備えている。なお、磁気回路11はマグネットやヨークを組み合わせて構成されており、ベース部材12はヨークの一部を兼ねている。
【0017】
レンズホルダ7には、磁気回路11が発生する磁束を横切るコイル(フォーカスコイルとトラッキングコイル)が取着されている。これらのコイルと磁気回路11とによって、レンズホルダ7を駆動する電磁駆動手段が構成されている。対物レンズ6はレンズホルダ7の上面に保持されており、この対物レンズ6はディスクの記録面と対向する位置に配置される。
【0018】
ワイヤ8は導電性の金属線材からなり、その断面形状は直径0.11mmの円形である。レンズホルダ7の左右両側部にそれぞれ上下2本ずつ、合計で4本のワイヤ8が取り付けられており、これら各ワイヤ8によってレンズホルダ7は弾性的に支持されている。すなわち、各ワイヤ8は固定端側が支持部材9と背面基板10に固定されており、各ワイヤ8の自由端側がレンズホルダ7を支えている。図4に示すように、各ワイヤ8は、背面基板10の遊挿孔10aと支持部材9のガイド孔9aとを貫通してレンズホルダ7のガイド孔7aに挿通されている。また、各ワイヤ8は、背面基板10の背面において遊挿孔10aの周囲に形成されている図示せぬランド部に半田付けされていると共に、レンズホルダ9のガイド孔9aを通過した先でフォーカスコイルまたはトラッキングコイルの導出部分13(図1参照)と半田付けされている。
【0019】
背面基板10の遊挿孔10aは、ワイヤ8を容易に挿通できる程度に大径な円柱状に形成されている。支持部材9のガイド孔9aは全体的に略円錐状に形成されているが、図5に示すように、ガイド孔9aの先端部9bはワイヤ8に外接させうる程度に小径な四角柱状に形成されている。ワイヤ8の弾性変形が容易な部分(有効部分)に所要の長さを確保するために、ガイド孔9aの奥行き寸法は0.6mmと短く設定されており、このうち基端側の開口端9cから奥へ0.5mmまでが略円錐状であり、残り0.1mm分が小径な四角柱状の先端部9bとなっている。ガイド孔9aは基端側の開口端9cが直径0.7mmの円形に形成されているが、四角柱状の先端部9bは断面形状が正方形で、その1辺の長さがワイヤ8の直径(0.11mm)よりも僅かに大きな0.125mmに設定されている。したがって、ガイド孔9aの先端部9bにワイヤ8を挿通させると、ワイヤ8に外接する先端部9bによって該ワイヤ8の径方向の位置決めが高精度に行えるようになる。なお、四角柱状の先端部9bに生じる成形バリはほぼ四隅に限られるため、こうした成形バリが挿通時のワイヤ8と干渉を起こす可能性は極めて低い。また、ガイド孔9aは奥行き寸法が0.6mmと短くても略円錐状のテーパ面(内壁面)の傾斜角度を60度以上に設定することができるため、ワイヤ8の挿通作業に支障をきたすほど大きな摺動抵抗を生じる可能性も低い。
【0020】
レンズホルダ7のガイド孔7aも、支持部材9のガイド孔9aと同様に、全体が略円錐状で、先端部だけがワイヤ8に外接させうる程度に小径な四角柱状に形成されている。したがって、このガイド孔7aも先端部にワイヤ8を挿通させると、ワイヤ8に外接する該先端部によって該ワイヤ8の径方向の位置決めが高精度に行えるようになる。ただし、レンズホルダ7のガイド孔7aは支持部材9のガイド孔9aに比べて奥行き寸法が長いため、このガイド孔7aはテーパ面(内壁面)の傾斜角度を大きく設定することが極めて容易である。したがって、レンズホルダ7のガイド孔7aについては、例えば全体を略四角柱状に形成したとしても、その稜線部の傾斜が過度に緩やかになることはない。
【0021】
アクチュエータ3の組立工程でワイヤ8を取り付ける際には、予め所定の長さに切断されたワイヤ8を背面基板10の遊挿孔10aに挿通した後、支持部材9のガイド孔9aの略円錐面でガイドしながら先端部9bに挿通させる。そして、ガイド孔9aを貫通させたワイヤ8を、レンズホルダ7のガイド孔7aの略円錐面でガイドしながら先端部に挿通させる。こうしてワイヤ8をガイド孔9a,7aに挿通して位置決めした後、図示せぬ接着剤をガイド孔9a内およびガイド孔7aの先端部から突出したワイヤ8とレンズホルダ7の側部との間に塗布してワイヤ8を位置決め状態で固定すると共に、ワイヤ8の両端部をコイルの導出部分13と背面基板10のランド部に半田付けする。
【0022】
このように構成された光学式ピックアップ1は、半導体レーザから出射された光ビームを対物レンズ6で収束させてディスクの記録面に照射することにより情報の記録/再生が行われ、その際、光ビームのスポット径をディスクの記録面に対して制御するフォーカスサーボとトラッキングサーボがかけられる。すなわち、各ワイヤ8の一端部がレンズホルダ7側のフォーカスコイルとトラッキングコイルに接続され、各ワイヤ8の他端部が背面基板10に接続されており、この背面基板10がフレキシブル配線基板5を介して外部駆動回路と接続されるため、所定のワイヤ8を介してフォーカスコイルに通電することにより、対物レンズ6の光軸に沿った方向に電磁力を発生させてその方向へレンズホルダ7を駆動することができ、これにより対物レンズ6のフォーカス補正が可能となる。同様に、別のワイヤ8を介してトラッキングコイルに通電することにより、対物レンズ6の光軸と直交する方向に電磁力を発生させてその方向へレンズホルダ7を駆動することができ、これにより対物レンズ6のトラッキング補正が可能となる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態例に係る光学式ピックアップ1のアクチュエータ(対物レンズ駆動装置)3では、ワイヤ8が挿通される支持部材9のガイド孔9aの先端部9bの断面形状が、ワイヤ8に外接させうる程度に小径な正方形に形成されているため、先端部9bの四隅に生じやすい成形バリがワイヤ8の挿通を損なう虞はなく、しかも、先端部9bの四隅以外の部分でワイヤ8を精度良く位置決めすることができる。また、このガイド孔9aは全体形状が略円錐状なので、奥行き寸法が短くてもテーパ面(内壁面)の傾斜がさほど緩やかにはならず、かつ、ワイヤ8と嵌合可能なV字状溝が該テーパ面に画成されることもない。それゆえ、このガイド孔9a内へワイヤ8を挿通させる際に摺動抵抗が不所望に大きくならず、ワイヤ8の挿通作業を円滑に行うことができる。同様に、支持部材9のガイド孔9aに挿通したワイヤ8をレンズホルダ7のガイド孔7aに挿通させる際にも、ガイド孔7の先端部の成形バリがワイヤ8の挿通を損なう虞はなく、かつ、該先端部の四隅以外の部分でワイヤ8を精度良く位置決めすることができる。すなわち、本実施形態例においては、アクチュエータ3の組立工程でワイヤ8をガイド孔9a,7aに挿通させることが容易であると共に、これらのガイド孔9a,7aによってワイヤ8を高精度に位置決めすることができる。
【0024】
なお、上記の実施形態例では、支持部材9のガイド孔9aの全体形状を略円錐状に形成した場合について説明したが、ガイド孔9aの全体形状を図6に示すような略八角錐状に形成しても良い。このようにガイド孔9aを略八角錐状に形成した場合にも、そのテーパ面(内壁面)の傾斜角度を59度以上に設定することができるため、ガイド孔9a内へワイヤ8を挿通させる際の摺動抵抗を十分に抑制することができる。なお、この場合も略八角錐状のガイド孔9aの先端部9bの断面形状は、ワイヤ8に外接させうる程度に小径な正方形に形成しておくことが好ましい。また、ガイド孔9aの全体形状がN>8なる略N角錐状に形成されていても、上記の実施形態例とほぼ同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0025】
1 光学式ピックアップ
2 シャーシ
3 アクチュエータ(対物レンズ駆動装置)
5 フレキシブル配線基板
6 対物レンズ
7 レンズホルダ
7a ガイド孔
8 ワイヤ
9 支持部材
9a ガイド孔
9b 先端部
9c (基端側の)開口端
10 背面基板
10a 遊挿孔
11 磁気回路
12 ベース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束を発生させる磁気回路が配設されたベース部材と、ディスクに光ビームを収束させる対物レンズを保持していると共に前記磁束を横切るコイルが取着されたレンズホルダと、一端部が前記コイルに接続されて前記レンズホルダを弾性的に支持している複数本の導電性のワイヤと、前記各ワイヤが個別に挿通されるテーパ状のガイド孔を有して前記ベース部材に固着された合成樹脂製の支持部材と、この支持部材の背面側に固着されて前記各ワイヤの他端部が接続された背面基板とを備え、前記ガイド孔の先端部分によって前記ワイヤが位置決め可能な光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置において、
前記ガイド孔は、開口面積が相対的に広い基端部の断面形状が円形または八角形以上の多角形であると共に、開口面積が相対的に狭い先端部の断面形状が正方形であり、この正方形の1辺の長さを前記ワイヤの直径よりも僅かに大きな値に設定したことを特徴とする光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記ガイド孔のテーパ面の傾斜角度が59度以上であることを特徴とする光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59309(P2012−59309A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198976(P2010−198976)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】