説明

光学式検査装置

【課題】検査感度を向上させるとともに、孔部の場所によらず装置全体として検査感度を均一とすることが可能となる光学式検査装置を提供する。
【解決手段】蛍光発生ユニット5に、蛍光を上方へ反射させるテーパ部6aと反射部12cと、蛍光を通過させる貫通穴13a,14aと形成することで、光検出器7を被検査物2とは反対側に配置することとし、光検出器7が被検査物2や検査光源ユニット3と干渉することを防止し、各部品同士の距離を近づける。これによって、検査面積を広げた場合であっても、被検査物2の孔部への検査光量を増加させ、孔部を通過した検査光の蛍光板への入射量を増加させて、被検査物2の孔部に対する検査感度を向上させることを可能とする。また、被検査物2のエッジ部付近の孔部に対しても、十分な検査光量を確保して、装置全体として検査感度を均一とすることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物において孔が存在するか否かを光学的に検査する光学式検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光学式検査装置として被検査物へ検査光を照射する光源と、その光源と対向して配置される蛍光部材と、その蛍光部材の端部に対して横向きに配置された光検出器とを備え、光源と蛍光部材との間に被検査物を配置して測定するものが知られている(例えば、非特許文献1)。この光学式検査装置によれば、被検査物の孔部を通過した検査光により蛍光部材が蛍光を発し、両端の光検出器がその蛍光を検出することで、被検査物に孔部が存在するか否かを検査する。
【非特許文献1】MICHEL F. LAGUESSE著, “Optical Detection and Localization of Holes inStrips Using a Fluorescent Fiber Sensor”,Transaction on Instrumentation andMeasurement,(US),February 1990,p.242-246
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上記光学式検査装置にあっては、検査面積を広げて測定した場合に検査感度が低下してしまうという問題があり、特に被検査物のエッジ部付近の孔部に対する検査感度の低下が著しく、装置全体としての検査感度が不均一となるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、検査面積を広く確保した場合であっても、被検査物の孔部に対する検査感度を向上させるとともに、孔部の場所によらず装置全体として検査感度を均一とすることが可能となる光学式検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る光学式検査装置は、被検査物に孔部が存在するか否かを検査する光学式検査装置において、被検査物が配置される検査空間の一方側に配置され、検査空間に向かって検査光を投射する検査光源と、検査空間の他方側に配置され、検査光が入射することによって蛍光を発する蛍光板を有し、検査空間の反対側の面が蛍光を反射するようにされた蛍光発生部と、蛍光発生部を挟んで検査空間と反対側に設けられ、蛍光を検出する光検出器と、を備え、蛍光発生部は、光検出器が望む領域に蛍光を通過させる蛍光出力部を有し、かつ、蛍光板の内部の蛍光を蛍光出力部を介して光検出器に向かうように反射させる蛍光反射部を有することを特徴とする。
【0006】
この光学式検査装置では、被検査物に形成された孔部を通過した検査光によって発生した蛍光を、蛍光反射部で反射させて光検出器で検出している。そのため、光検出器が被検査物とは反対側に配置されることとなるため、光検出器が横側からはみ出て被検査物や光源と干渉することが防止され、各部品同士の距離を近づけることができる。これによって、検査面積を広げた場合であっても、被検査物の孔部への検査光量を増加させるとともに、孔部を通過した検査光の蛍光板への入射量を増加させることができるため被検査物の孔部に対する検査感度を向上させることが可能とされる。また、被検査物のエッジ部付近の孔部に対しても、十分な検査光量を確保することができるため、孔部の場所によらず装置全体として検査感度を均一とすることが可能とされる。
【0007】
ここで、蛍光板は矩形状であり、その4つの隅部に対応して蛍光発生部は蛍光出力部および蛍光反射部をそれぞれ有し、光検出器は4つの蛍光出力部をそれぞれ望むように4つ設けられていることが好ましい。このような構成を採用した場合、4箇所で蛍光を検出することとなるので、検査感度を向上することが可能とされる。また、蛍光板の四隅で蛍光を検出することができるため、孔部が被検査物のどの位置に形成されていても、偏りなく確実に蛍光を検出することができるため、装置全体として検査感度を均一とすることが可能とされる。
【0008】
また、蛍光反射部は、蛍光板の4つの隅部にそれぞれ形成された光反射性の傾斜面を含んで構成されることが好ましい。このような構成を採用した場合、効率よく、且つ、確実に蛍光を光検出器へ向かって反射させることが可能とされる。
【0009】
また、検査光源は、蛍光板に対面して発光する面状の光源であることが好ましい。このような構成を採用した場合、検査光源から投射された検査光が被検査物に対して広い範囲にわたって照射されるので、被検査物の広い範囲における孔部の有無を検査することが可能とされ、また、被検査物のエッジ部付近の孔部に対しても十分に検査光を投射させることができるため、孔部の場所によらず装置全体として検査感度を均一とすることが可能とされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る光学式検査装置は、検査面積を広く確保した場合であっても、被検査物の孔部に対する検査感度を向上させるとともに、孔部の場所によらず装置全体として検査感度を均一とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る光学式検査装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る光学式検査装置1を示す斜視図であり、図1(a)は上方から見た斜視図、図1(b)は下方から見た斜視図を示している。光学式検査装置1は、被検査物2を配置する検査空間2aに対して下方側に設けられる検査光源ユニット(光源)3と、上方側に設けられる光検査ユニット4とから構成される。この光学式検査装置1は、検査光源ユニット3から被検査物2に向かって投射された検査光のうち、被検査物2に存在する孔部を通過した検査光が光検査ユニット4における蛍光発生ユニット(蛍光発生部)5の蛍光板6に入射し、それによって発せられた蛍光を蛍光発生ユニット5上方に配置された光検出器7が検出することによって、被検査物2に孔部が存在するか否かを検査するものである。
【0013】
被検査物2としては、金属板やラミネートフィルムのプレス加工品、金属箔、磁気フィルム、塗膜及び蒸着膜などの微細な孔部が品質に大きな影響を与えるようなものが対象となる。この被検査物2は、図示されないベルトコンベヤ等の移動装置により運搬され、光学式検査装置1にセットされる。
【0014】
検査光源ユニット3は、上方の検査空間2aに配置された被検査物2へ向かって検査光を投射するものであり、出射部8aから検査光を出射する直方体状の検査光源部8と、その検査光源部8の上面をふさぐとともに、出射部8aを露出させるように中央に長方形状の開口部9aが形成された矩形平板状の設置板9と、開口部9aを取り囲むようにして設置板9の上面に設けられた枠型のパッキン11とを備えている。
【0015】
被検査物2は、その下面がパッキン11と密着するようにして配置される。これによって、出射部8aから出射された検査光は、漏れなく被検査物2に照射される。
【0016】
検査光源ユニット3から出射される検査光は、蛍光板6に含まれる蛍光物質を励起し得る波長の光である。この検査光は、検査光源部8の内部に配置された蛍光灯や半導体発光素子(半導体レーザ光源、発光ダイオード等)などにより発生させてもよく、また、複数の半導体発光素子を面状に配列させたものにより発生させてもよい。これによって、被検査物2に対して広い範囲にわたって検査光を照射することができるので、被検査物2の孔部の有無を広い範囲にわたって検査することが可能とされ、また、被検査物2のエッジ部付近の孔部に対しても十分に検査光を投射させることができるため、孔部の場所によらず装置全体として検査感度を均一とすることが可能とされる。
【0017】
図2は光検査ユニット4を分解して示した分解斜視図である。蛍光発生ユニット5は、フレーム12に蛍光板6と反射部材13と遮光部材14とを固定することにより構成され、遮光部材14の上面の各隅部には光検出器7が配置される。
【0018】
蛍光板6は、矩形平板状であり、例えば蛍光物質を含有するアクリルやビニール等の樹脂からなる。このような蛍光板6は、検査光が下面である入射面6bに入射することによって蛍光板6を形成する蛍光物質が励起され、入射点を基点として蛍光を発する。
【0019】
この蛍光板6は、入射面6bが検査光源ユニット3の出射部8aと対向するようにして配置されており、その大きさは、設置板9に形成された開口部9aよりも大きくされている。また、各隅部がカットされることにより、下面から上面に向かって拡がるようなテーパ部(蛍光反射部)6aが形成されている。このように、テーパ部6aを隅部に形成することによって、蛍光板6内を伝播する蛍光を上方へ全反射させることが可能とされている、また、テーパを各隅部に形成しているため、側面に形成する場合に比べてカット作業が容易とされている。なお、このテーパ部6aは蛍光板6を成形する段階で予め形成しておいてもよい。
【0020】
蛍光板6の上面(検査空間と反対側の面)6cには、その面を覆うようにして蛍光板6よりも大きい矩形平板状の反射部材13が配置される。この反射部材13によって、蛍光板6内を伝播する蛍光のうち、全反射されないものを、外に漏らさないように反射させることができる。
【0021】
また、反射部材13の各隅部には、蛍光板6の各隅部のテーパ部6aと対向する位置に、蛍光を通過させるための長方形状の貫通穴(蛍光出力部)13aが形成されている。この貫通穴13aの長縁部は、蛍光板6のテーパ部6aにおける上面6c側の縁部と平行となるようにされている。また、この貫通穴13aの内周部は上方へ向かって拡がるようなテーパ状とされており、このテーパの角度は蛍光板6のテーパ部6aの角度と同一とされている。
【0022】
反射部材13の上面には、その面を覆うようにして反射部材13よりも大きい矩形平板状の遮光部材14が配置される。この遮光部材14が外部からの光を遮断して、蛍光板6が外部からの光と反応することを防止している。また、この遮光部材14の各隅部には、反射部材13の各隅部の貫通穴13aのそれぞれと連通するように、蛍光を通過させるための長方形状の貫通穴14aが形成されている。この貫通穴14aの内周部は貫通穴13aと同一角度のテーパ状とされており、反射部材13と遮光部材14とを重ね合わせたときに、貫通穴13aのテーパと貫通穴14aのテーパとは、四方の面のそれぞれが同一平面となるようにされている。また、これらのテーパ部分には蛍光を反射するような反射処理が施されている。
【0023】
上述の蛍光板6、反射部材13及び遮光部材14を固定するフレーム12は、矩形平板状の非透光性部材に対して、その中央に蛍光板6等をはめ込むための凹部12aを形成することにより設けられる。この凹部12aは、蛍光板6の入射面6b、側面及びテーパ部6aと一致するように形成され、更に、その上方は反射部材13及び遮光部材14がはめ込まれるようにされている。そして、凹部12aの深さは、各部品をはめ込んだときに、遮光部材14の上面とフレーム12の上面が同一平面となるような深さとされている。また、凹部12aの底面の中央には、蛍光板6の入射面6bが下方からの検査光を受光できるように長方形状の開口部12bが形成されている。なお、この開口部12bは、検査光源ユニット3の設置板9に形成された開口部9aと同一形状とされている。
【0024】
凹部12aにおける蛍光板6と接触する部分及び開口部12bの内周部は、アルミニウム等のコーティングなどの反射処理が施されることによって、蛍光板6内を伝播してきた蛍光に対して反射可能とされている。
【0025】
特に、凹部12aの蛍光板6のテーパ部6aと対応する面は、テーパ部6aと一致するように、下方から上方へ向かって拡がるようなテーパ形状とされるとともに、上述の反射処理がなされるため、蛍光板6内を伝播した蛍光のうち、全反射しなかったものを漏らさず上方向けて反射させるような反射部(蛍光反射部)12cが形成されることとなる。なお、反射処理は、蛍光板6に直接施してもよく、その場合は、全反射が起こるか否かに関わらず、蛍光は蛍光板6の面で反射することとなる。
【0026】
遮光部材14の上面の各隅部には、蛍光板6から発せられた蛍光を検出する光検出器7が配置されており、この光検出器7の検出面と貫通穴14aとが対向するような位置関係とされる。なお、この光検出器7には、例えば光電子増倍管や半導体受光素子(フォトダイオード等)などが用いられる。
【0027】
フレーム12の下面には、開口部12bを取り囲むようにして、枠型のパッキン16が設けられている。このパッキン16は、被検査物2の上面を密着させて挟み込むものであり、これによって、外部からの光が蛍光板6の入射面6bに入射することを防止する。
【0028】
以上のように構成された光学式検査装置1の作用効果について、図3を参照しながら説明する。
【0029】
図3は、図1に示されたIII−III線に沿っての断面図である。なお、明確化のため、蛍光板6のハッチングは省略して示している。また、図3において点線で示す部分は、蛍光に対して反射可能とされた面である。
【0030】
まず、パッキン11とパッキン16の間に設置された被検査物2へ向かって検査光源ユニット3から検査光を投射する。このとき、被検査物2に孔部が存在すると、検査光はその孔部を通過して蛍光板6の入射面6bに入射される。そして、蛍光板6は、検査光の入射点を起点として蛍光を発する。
【0031】
発生した蛍光の一部は全反射によって蛍光板6内部を面方向へ向かって伝播することとなる。また、全反射しない蛍光も、反射部材13やフレーム12の凹部12aの底面などで反射されることによって、外部へ漏れることが防止されることとなる。そして、伝播した蛍光のうち、蛍光板6の隅部まで伝播したものは、蛍光板6の各隅部のテーパ部6aにて全反射により、あるいは反射部12cによって、上方へ向かって反射されることとなる。
【0032】
反射された蛍光は、反射部材13の貫通穴13a及び遮光部材14の貫通穴14aを通過して、光検出器7によって検出され、これによって被検査物2に孔部が存在していると判断される。また、一定時間が経過しても蛍光が検出されなかった場合は、被検査物2には孔部は存在していなかったと判断される。
【0033】
このように、本実施形態に係る光学式検査装置1では、光検出器7が被検査物2とは反対側に配置されることとなるため、光検出器7が横側からはみ出て被検査物2や検査光源ユニット3と干渉することが防止され、各部品同士の距離を近づけることができる。これによって、検査面積を広げた場合であっても、被検査物2の孔部への検査光量を増加させるとともに、孔部を通過した検査光の蛍光板6への入射量を増加させることができるため被検査物2の孔部に対する検査感度を向上させることが可能とされている。また、被検査物2のエッジ部付近の孔部に対しても、十分な検査光量を確保することができるため、孔部の場所によらず装置全体として検査感度を均一とすることが可能とされている。
【0034】
また、4箇所で蛍光を検出することとなるので、検査感度を向上することが可能とされている。また、蛍光板6の四隅で蛍光を検出することができるため、孔部が被検査物2のどの位置に形成されていても、偏りなく確実に蛍光を検出することができるため、装置全体として検査感度を均一とすることが可能とされている。
【0035】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0036】
例えば、図4(a)に示すように、蛍光部材を貫通穴13a及び貫通穴14aの内部の空間に更に設けてもよく、また図4(b)に示すように、蛍光板の各隅部にテーパを形成することに代えて曲面を形成することによって蛍光反射部を設けてもよい。特に、光検出器7として受光面の狭いサイドオンPMTを用いる場合は、図4(c)に示すように、貫通穴13a及び貫通穴14aにテーパを設けずストレート状とすることにより、蛍光を反射させて受光部の中央に導くことが好ましい。
【0037】
また、各隅部のみならず、蛍光板の側面に蛍光反射部を形成してもよい。また、蛍光板等は四角形に限らず、その他の多角形として、その各隅部で蛍光を検出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る光学式検査装置を示す斜視図であり、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
【図2】光検査ユニットの構成部品を分解して示した分解斜視図である。
【図3】図1に示されたIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】(a)、(b)及び(c)は、変形例に係る光学式検査装置を示す図であり、図3に相当する断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…光学式検査装置、2…被検査物、2a…検査空間、3…光源ユニット(光源)、5…蛍光発生ユニット、6…蛍光板、6a…テーパ部(蛍光反射部)、6c…上面(検査空間と反対側の面)、7…光検出器、12c…反射部(蛍光反射部)、13a,14a…貫通穴(蛍光出力部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に孔部が存在するか否かを検査する光学式検査装置において、
前記被検査物が配置される検査空間の一方側に配置され、前記検査空間に向かって検査光を投射する検査光源と、
前記検査空間の他方側に配置され、前記検査光が入射することによって蛍光を発する蛍光板を有し、前記検査空間の反対側の面が前記蛍光を反射するようにされた蛍光発生部と、
前記蛍光発生部を挟んで前記検査空間と反対側に設けられ、前記蛍光を検出する光検出器と、
を備え、
前記蛍光発生部は、
前記光検出器が望む領域に前記蛍光を通過させる蛍光出力部を有し、かつ、
前記蛍光板の内部の蛍光を前記蛍光出力部を介して前記光検出器に向かうように反射させる蛍光反射部を有することを特徴とする光学式検査装置。
【請求項2】
前記蛍光板は矩形状であり、その4つの隅部に対応して前記蛍光発生部は前記蛍光出力部および前記蛍光反射部をそれぞれ有し、
前記光検出器は4つの前記蛍光出力部をそれぞれ望むように4つ設けられている請求項1記載の光学式検査装置。
【請求項3】
前記蛍光反射部は、前記蛍光板の4つの隅部にそれぞれ形成された光反射性の傾斜面を含んで構成される請求項2記載の光学式検査装置。
【請求項4】
前記検査光源は、前記蛍光板に対面して発光する面状の光源である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学式検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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