光学式測距センサおよび電子機器
【課題】広い測距範囲を実現できると共に、その範囲内の遠距離側にある低反射物体でも正確に検知できる光学式測距センサを提供すること。
【解決手段】赤外LEDを駆動する時間と、受光素子側の露光時間を同一タイミングとし、更に、赤外LEDを駆動させない期間に受光素子側を上記露光時間と同じ時間だけ露光させる。赤外LEDを駆動する場合の露光に基づく出力と、赤外LEDを駆動しない場合の露光に基づく出力との出力差を求め、この出力差に基づいて測距を行う。
【解決手段】赤外LEDを駆動する時間と、受光素子側の露光時間を同一タイミングとし、更に、赤外LEDを駆動させない期間に受光素子側を上記露光時間と同じ時間だけ露光させる。赤外LEDを駆動する場合の露光に基づく出力と、赤外LEDを駆動しない場合の露光に基づく出力との出力差を求め、この出力差に基づいて測距を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式測距センサに関する。また、本発明は、光学式測距センサを備える電子機器に関し、特に、光学式測距センサを備えるパーソナルコンピュータや、光学式測距センサを備える携帯電話に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、従来の光学式測距センサの上面図であり、図13は、図12のAA線断面図である。
【0003】
図13に示すように、この光学式測距センサは、一つの発光素子101と、位置検出受光素子である一つの光位置センサ(PSD:Position Sensitive Detector)102と、発光側レンズ103及び受光側レンズ104と、1つのIC105とを備え、IC105は、光位置センサ102から出力される信号の処理を行うと共に、所定のタイミングで発光素子101を駆動するようになっている。上記光位置センサ102は、一つの受光部のみを有し、その受光部の抵抗値は、受光部内で均一かつ一定になっている。
【0004】
また、特開平9−318315号公報(特許文献1)や、特開2003−287420号公報(特許文献2)には、次に示す事項が記載されている。すなわち、図14に示すように、上記光位置センサ102の2つの端子より得られる信号(電流値)を、I1,I2とした場合に、I1/(I1+I2)により距離に対応する出力値を得て、距離計測を行うことが記載されている。
【0005】
また、特開2002−195807号公報(特許文献3)に記載の光学式測距センサのように、位置検出素子としてCMOSイメージセンサを利用したものもある。この光学式測距センサは、発光素子と、受光素子とが同一平面状になく、パッケージも各素子毎に別々に形成されている。また、CMOSイメージセンサより取り出した信号処理部や、発光素子の駆動回路部は、CMOSイメージセンサチップの外部に存在している。そして、全ての部分が、1チップ内に存在しないようになっている。また、受光部での光量最適化のため2回露光している。1回目の露光をモニターし、この結果に基づいて、2回目の露光における発光量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−318315号公報
【特許文献2】特開2003−287420号公報
【特許文献3】特開2002−195807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の光学式測距センサの構成で、三角測量方式により測距を行う場合、光位置センサ102(図13参照)の受光部が1つだけで、その受光部の抵抗値が、受光部内で均一かつ一定なものであるから、以下に説明するように、物体までの距離が長いところでは距離計測の精度が悪くなる。
【0008】
図15は、三角測量方式の原理を説明する図である。
【0009】
尚、図15において、X=A・f/dの関係が成立する。
【0010】
三角測量方式により物体までの距離dを検出する光学式測距センサにおいては、物体までの距離dと、光位置センサ102の出力とは、図16に示すように、反比例の関係になる。
【0011】
したがって、物体までの距離が短いところでは距離変動による出力変化が大きい一方、物体までの距離が長いところでは距離変動による出力変化が小さくなり、物体までの距離が短いところでは精度よく距離を計測できるが、物体までの距離が長いところでは距離計測の精度が悪くなる。
【0012】
三角測量方式では、距離精度の良し悪しは、発光側レンズ中心と、受光側レンズ中心との中心間距離Aや、受光側レンズと、受光部との間の距離、すなわち、受光側レンズの焦点距離fに依存する。詳しくは、距離計測の精度は、A、fを、大きくすることで高くなる。しかし、この場合、光学式測距センサのサイズが大きくなってしまうという課題がある。
【0013】
また、物体までの距離が長いところでは、光量不足を生じないように、レンズ径も大きくする必要があるが、このことも、光学式測距センサのサイズが大きくなる原因になる。
【0014】
また、位置検出素子としてCMOSイメージセンサを採用したものについても、発光素子と、受光素子とが同一平面状になく、かつ、パッケージも各素子毎に別々に形成されているから、測距センサのサイズが大きくなる。また、このことに加えて、CMOSイメージセンサより取り出した信号処理部や、発光素子の駆動回路部が、CMOSイメージセンサチップの外部にあるから、全ての素子および部位を、1チップ内に搭載することができず、測距センサのサイズが、更に大きくなる。更には、この光学式測距センサでは、生産工数が多く、各工程での作業も、精度を求めると複雑になって、製造コストが高いという課題がある。
【0015】
光量については、上述のように、1回目の露光で光量を検知して、発光素子の光量を調整し、次ぎの1回の露光を、測定に利用している。光量は、発光素子に流す電流を大きくすると大きくなる。しかし、限度以上の大きさの電流の発光素子への供給は、発光素子の破壊に繋がるから、供給電流を格段に大きくすることができない。したがって、このことに起因して、レンズ径をそれほど小さくすることができないから、測距センサのサイズの小型化が困難になる。
【0016】
そこで、本発明の課題は、広い測距範囲を実現できると共に、その範囲内の遠距離側にある低反射物体でも正確に検知できる光学式測距センサを提供することにある。また、本発明の課題は、そのような光学式測距センサを備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題を解決するために、この発明の光学式測距センサは、
赤外発光素子と、
上記赤外発光素子に対して間隔をおいて配置されると共に、受光部と、上記受光部から出力される信号を処理する信号処理部と、受光部からの信号が含む情報を格納する情報メモリー部と、上記受光部からの信号を処理するためのソフトを格納する信号処理ソフトメモリー部とを有する受光素子と、
上記赤外発光素子を封止する第1透光性樹脂部と、
上記受光素子を封止する第2透光性樹脂部と、
上記第1透光性樹脂部と、上記第2透光性樹脂部とに接触していると共に、上記赤外発光素子からの光が通過する第1窓部と、上記受光素子に入射する入射光が通過する第2窓部とを有する遮光性樹脂部材と、
上記赤外発光素子を駆動する駆動回路部と、
上記受光素子を制御する受光素子制御部と、
上記赤外発光素子を予め定められた時間毎に間欠的に駆動するように、上記駆動回路部を制御すると共に、上記赤外発光素子を駆動するタイミングに同期して上記受光素子を露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する制御部と
を備えることを特徴としている。
【0018】
上記受光素子は、位置の検出のために使用され、例えば、位置検出受光部としてのm行×n列のCMOSエリアセンサを有することができる。また、上記受光素子は、例えば、位置検出受光部、位置検出受光部から出力される信号を処理する回路部、信号処理ソフトメモリー部、情報メモリー部(フラッシュメモリー、e−Fuse、OTM(one time memory等で構成)および上記駆動回路部を備える構成であっても良い。また、この場合においては、上記駆動回路部は、上記受光素子の一部をなすことになるが、上記駆動回路部は、上記受光素子に含まれていなくても良い。例えば、上記駆動回路部は、発光素子と一緒になって発光素子部を構成していても良い。
【0019】
本発明によれば、発光素子として、波長が可視光線より長い赤外発光素子を使用するから、外乱光の影響を低減できる。また、発光素子の発光波長が、赤外領域であるから、例えば、受光素子(受光部として、例えば、CMOSエリアセンサを利用)の受光波長が、赤外にピーク感度を有するようにし、かつ、受光側レンズと、発光側レンズとが、可視光をカットする光学特性を有するようにすることで、屋内の蛍光灯程度の光であれば影響を受けないようにすることができる。
【0020】
また、本発明によれば、上記赤外発光素子が、間欠駆動されるようになっていて、更に、上記赤外発光素子を駆動するタイミングと、受光素子の露光または動作のタイミングとが同期するようになっているから、発光時の光で生じる電荷を複数回受光側で蓄積することができて、1回の発光量では測距を行うのに受光の光量が十分でない場合においても、不足する光量を補うことができる。したがって、受光素子の受光部が、例えば、CMOSエリアセンサである場合において、受光部の各セルの光量分布より、その光量分布の重心となる位置を精密に求めることができて、同受光部の所定の位置からその光量重心位置までの相対位置を精密に求めることができる。したがって、その相対位置に基づいて、被測定物までの距離についての精密な情報を有する信号を獲得することができて、測距を精密に行うことができる。
【0021】
また、一実施形態では、
上記制御部は、
予め定められた第1期間毎に、上記赤外発光素子を連続的に駆動すると共に、上記赤外発光素子を連続的に駆動するタイミングに同期して、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第1制御と、
予め定められた第2期間毎に、上記赤外発光素子の駆動を停止する一方、上記第1制御において、上記赤外発光素子が連続的に駆動している時間と略同じ時間の間、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第2制御と
を交互に行い、
上記第1制御の間の上記受光素子からの信号と、上記第2制御の間の上記受光素子からの信号との差に基づいて、距離を測定する。
【0022】
白熱灯や太陽光のように赤外光が含まれる光の環境下で、光学式測距センサを使用する場合には、その白熱灯や太陽光の照度が小さくて、発光していないときに受光素子の受光部に入射する周囲光が少なければ良いが、多い場合には、周囲光による雑音の受光信号が大きく、発光部からの光を精度よく検知できない場合がある。
【0023】
上記実施形態によれば、第2制御によって、周囲光に基づく雑音の信号の大きさを検出できるから、第1制御における、物体までの距離の情報を表す信号と、周囲光の雑音の信号とからなる信号から、第2制御における、周囲光の雑音の信号を差っ引くことによって、物体までの距離の情報を表す信号のみを取り出すことができる。したがって、白熱灯や太陽光のように赤外光が含まれる光の環境下で使用する場合においても、測距を精密に行うことができる。
【0024】
すなわち、所定のタイミングで赤外発光素子を駆動させる時間と、受光素子の露光または動作時間を同一タイミングとし、更に、赤外発光素子を駆動させない期間に受光素子側を上記露光または動作時間と同じ時間だけ露光または動作させ、二つの露光または動作時間内の出力差を信号として利用することで、周囲光による影響を除去することができるのである。
【0025】
また、一実施形態では、
上記制御部は、予め定められた時間、上記赤外発光素子の駆動を停止する一方、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第3制御を行い、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、上記受光素子の感度と、露光または動作時間とのうちの少なくとも一方を制御する。
【0026】
周囲光が非常に多い場合、周囲光だけで受光部の出力レベルが飽和してしまうことがある。
【0027】
本発明によれば、距離の情報を表す信号を検出する前に、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、周囲光レベルを検知することができる。したがって、その周囲光のレベルに応じて、受光素子の感度を切り替えることができ、また、その周囲光のレベルに応じて、発光側の発光回数と、受光側の露光または動作回数を増減させることができるから、周囲光に応じた最適な条件で正確な測距を行うことができる。すなわち、所定のタイミングで、赤外発光素子の発光、および、受光素子の露光または動作を行う前に、所定の時間に受光素子の露光または動作のみを行って、周囲照度を検知して、受光感度、および、受光素子の露光または動作時間を制御するから、周囲光に応じた最適な条件で正確な測距を行うことができるのである。
【0028】
また、一実施形態では、
上記制御部は、上記第3制御を、予め定められた第3期間毎かつ上記第1制御および上記第2制御の前に行い、かつ、上記第3制御と、上記第1制御と上記第2制御とからなる制御とを、交互に行う。
【0029】
上記実施形態によれば、上記第3制御と、上記第1制御と上記第2制御とからなる制御とを、交互に行うから、測距中に周囲光レベルが変化しても、その周囲光の変動の影響を受けることなしに、正確に測距を行うことができる。すなわち、周囲照度を検知するタイミングを、測距を行う測距周期毎に、一回行うことにより、測距中に周囲光レベルが変化しても、その周囲光の変動の影響を受けることなしに、正確に測距を行うことができるのである。
【0030】
また、一実施形態では、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、周囲光の照度を検知し、検知した周囲照度が、予め定められた照度よりも小さい場合、上記受光素子の受光感度を上げると共に、上記赤外発光素子の光の発光回数および上記受光素子での受光回数を少なくする。
【0031】
例えば、検知した周囲照度が室内照度レベルである場合に、受光感度を上げ、また、発光および受光回数を少なくすると、効率良くかつ正確な測距を行うことができる。
【0032】
上記実施形態によれば、周囲光に応じた最適条件で、正確な測距を行うことができる。
【0033】
また、一実施形態では、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、周囲光の照度を検知し、検知した周囲照度が、予め定められた照度よりも大きい場合、上記受光素子の受光感度を下げると共に、上記赤外発光素子の光の発光回数および上記受光素子での受光回数を大きくする。
【0034】
例えば、検知した周囲照度が屋外照度レベルである場合に、受光感度を下げ、また、発光および受光回数を多くすると、効率良くかつ正確な測距を行うことができる。
【0035】
上記実施形態によれば、周囲光に応じた最適条件で、正確な測距を行うことができる。
【0036】
また、一実施形態では、
上記受光素子は、光を受光する受光部と、上記受光部から出力される信号を処理する回路部と、信号処理ソフトメモリー部と、フラッシュメモリー部とを備え、上記駆動回路部は、上記受光素子に含まれる。
【0037】
また、一実施形態では、
発光側レンズと、受光側レンズとを有するレンズケースを備え、
三角測量方式により物体までの距離を検出する。
【0038】
また、本発明の電子機器は、
本発明の光学式測距センサを備えることを特徴としている。
【0039】
電子機器には、例えば、パーソナルコンピュータや、携帯電話が含まれる。
【0040】
本発明によれば、光学式測距センサによって、測距を精密に行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の光学式測距センサによれば、例えば、三角測量方式を利用して測距を行う形式において、広い測距範囲を実現できると共に、その範囲内の遠距離側にある低反射物体でも正確に検知でき、かつ、小型化、高性能化、消費電流の低減化および製造コストの低減化を実現できる。
【0042】
また、この光学式測距センサをパソコンに搭載すれば、そのパソコンにおいて、パソコンの前にいる人を検知できて、例えば、人がいなくなるとパソコンをスリープモードにすることができ、省エネを実現することができる。また、このセンサを、カメラ付き携帯電話に搭載すれば、被写体までの距離を精密に計測でき、高速で駆動するオートフォーカス機能(カメラのフォーカスを自動で合わせる)を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態の光学式測距センサの上面図である。
【図2】図1のAA線断面図である。
【図3】受光素子の上面図である。
【図4】発光素子から発光される光の光量と、時間との関係を示す図である。
【図5】受光素子で露光した光の光量と、時間との関係を示す図である。
【図6】発光素子から発光される光の光量と、時間との関係を示す図である。
【図7】露光した光の光量と、時間との関係を示す図である。
【図8】信号光の光量を視覚的に表す図である。
【図9】受光量差の蓄積量と、時間との関係を示す図である。
【図10】信号光の光量の第1回目の蓄積を行う前に、周囲光の検知のための露光を行う実施形態について説明する図である。
【図11】電荷蓄積部の一部を表す図である。
【図12】従来の光学式測距センサを説明する図である。
【図13】従来の光学式測距センサを説明する図である。
【図14】従来の光学式測距センサを説明する図である。
【図15】三角測量方式の原理を説明する図である。
【図16】三角測量方式の原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明の一実施形態の光学式測距センサの上面図であり、図2は、図1のAA線断面図である。
【0045】
図2に示すように、この光学式測距センサは、リードフレーム15、赤外発光素子の一例としての赤外発光ダイオード(以下、赤外LEDという)5、受光素子6、第1透光性樹脂部12、第2透光性樹脂部7、遮光性樹脂部材8、および、レンズケース11を備え、赤外LED5および受光素子6は、リードフレーム15上に搭載され、同一平面上に配置されている。
【0046】
上記赤外LED5は、赤外線を発光する。上記赤外LED5は、トランスファモールドによりエポキシ系の第1透光性樹脂部12で封止され、受光素子6は、トランスファモールドによりエポキシ系の第2透光性樹脂部7で封止されている。上記赤外LED5および受光素子6は、一定の間隔で併置されている。
【0047】
上記遮光性樹脂部材8は、第1透光性樹脂部12および第2透光性樹脂部7を、インジェクション成形により一体成形している。上記遮光性樹脂部材8は、第1窓部12aと、第2窓部7aとを有する。上記赤外LED5からの光が、第1窓部12aを通過するようになっている一方、受光素子6の後述のCMOSエリアセンサ6aに入射する光が、第2窓部7aを通過するようになっている。
【0048】
上記レンズケース11は、発光側レンズ9および受光側レンズ10を有する。上記レンズケース11は、レンズ部を、可視光カット材よりなるアクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂で成形している一方、ケース部を、ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂で成形している。上記レンズ部およびケース部は、2色成形で一体成形されている。上記発光側レンズ9および受光側レンズ10の夫々のレンズの軸は、上記同一平面の法線方向に一致している。
【0049】
図3は、上記受光素子6の上面図である。
【0050】
図3に示すように、上記受光素子6は、受光部の一例としてのm行×n列のCMOS(complementary metal oxide semiconductor)エリアセンサ(以下、センサという)6a、信号処理回路部6b、信号処理ソフトメモリー部6c、信号処理データメモリー部6d、情報メモリー部の一例としてのフラッシュメモリー部6eおよび駆動回路部6fを有する。上記信号処理ソフトメモリー部6cは、センサ6aからの信号を処理するためのソフトを格納している。上記フラッシュメモリー部6eは、センサ6aからの信号をデジタル信号として格納している。尚、この実施形態では、情報メモリー部として、フラッシュメモリを使用したが、この発明では、情報メモリー部として、フラッシュメモリの代わりに、E−Fuse、OTM(one time memory)等のフラッシュメモリ以外のメモリーを使用しても良い。また、信号処理データメモリー部6dは、信号処理の過程で算出されるデータを記憶するようになっている。
【0051】
上記センサ6aは、受光により位置を検出するようになっている。上記回路部6bは、センサ6aから出力される信号を処理するようになっている。また、上記駆動回路部6fは、所定のタイミングで赤外LED5を駆動するようになっている。
【0052】
本発明では、レンズ径を小さくした状態で比較的遠距離(2m前後)の低反射物を検知できるレベルの信号を得るために、赤外LED5の発光時間を制御すると共に、センサ6aの露光時間を制御するようになっている。
【0053】
この光学式測距センサは、三角測量方式により物体までの距離を検出するようになっている。詳しくは、所定の位置に検出物がある場合において、センサ6a上の光スポット重心位置は、センサ6aの各セルの光量分布からその光量分布の重心となる位置を求めることによって決定される。また、同センサ6aの所定の位置からその光量重心位置までの相対位置を求めて、その相対位置に基づいて、出力を行う信号の処理を実施して、この信号の処理により検出物までの距離を検出する。ここで、光量が不足していると、上記センサ6aの各セルの光量分布から、その光量分布の重心となる位置を求めることが出来なくなる。
【0054】
図4は、赤外LED5から発光される光の光量と、時間との関係を示す図であり、図5は、露光(センサ6aに当てられて感光)した光の光量と時間との関係を示す図である。本実施形態では、図4および図5に示すように、赤外LED5を駆動させる駆動回路部6fにより発光するタイミングと、その光を検出物で反射させセンサ6aで受けるタイミングとを同期させる。
【0055】
これは、例えば、次のようにして行うことができる。光学式測距センサに、制御部の一例としての図示しないIC(集積回路)を搭載し、また、受光素子6の第2窓部7aの開閉を行う受光素子制御部の一例としての液晶シャッタを搭載する。そして、上記ICから、駆動回路部6fと、上記液晶シャッタとに、同時かつ同じタイミングで信号を出力することにより、赤外LED5を駆動すると共に、受光素子6のセンサ6aを光に曝して露光する。この例は、受光素子6が、予め定められた時間のみ露光する例となっている。上記ICのこの制御は、第1制御をなしている。
【0056】
尚、図4および図5に示す信号は、例えば、次のようにして獲得することもできる。光学式測距センサに、制御部の一例としての図示しないIC(集積回路)を搭載し、また、赤外LED5に電力を供給するかしないかを制御する第1スイッチング素子と、センサ6aをアクティブにするかしないかを制御する受光素子制御部の一例としての第2スイッチング素子とを搭載する。そして、上記ICから上記二つのスイッチング素子に制御信号を同時かつ同じタイミングで出力することにより、赤外LED5を駆動させる駆動回路部6fにより発光するタイミングと、その光を検出物で反射させセンサ6aで受けるタイミングとを同期させる。この例では、センサ6aは、永続的に露光している(光に曝されている)一方、予め定められた時間のみ出力信号が、アクティブになる。この例は、受光素子6が、予め定められた時間のみ動作する例となっている。上記ICのこの制御は、第1制御をなしている。
【0057】
本実施形態では、図4に示すように、上記ICによって、赤外LED5を、予め定められた時間毎の一例としての一定時間毎に間欠駆動する。そして、これにより、発光時の光で生じる電荷を複数回受光側で蓄積して、1回の発光量では不足する光量を補うようになっている。これにより、測距時間(測距周期)は長くなるが、センサ6aの各セルの光量分布よりその光量分布の重心となる位置を求めるのに必要な光量が得られる。この方式は、周囲光がほとんどない場合には有効である。
【0058】
次に、周囲光がある場合には、赤外LED5からの光以外の光が、受光部に入射するので、赤外LED5からの光以外の光を除去しなければならない。
【0059】
赤外LED5からの光以外の光を除去する実施形態では、受光部であるセンサ6aの赤外に対する受光感度を上げ、かつ、発光側レンズ9と受光側レンズ10とに、可視光をカットする光学特性を有する材料を使用する。この実施形態によれば、屋内の蛍光灯程度の光であれば、影響を受けることがなく、測距を正確に行うことができる。
【0060】
次に、白熱灯や太陽光のように赤外光が含まれる光の環境下での使用に好ましい実施形態について説明する。
【0061】
図6は、赤外LED5から発光される光の光量と、時間との関係を示す図であり、図7は、露光(CMOSエリアセンサに当てられて感光)した光の光量と、時間との関係を示す図である。
【0062】
図6および図7に示す実施形態では、赤外LED5を駆動する時間と、受光側の露光時間とを、所定のタイミングかつ同一タイミングとする第1制御を行うと共に、更に、赤外LED5を駆動していない期間に、受光側を、上記所定のタイミングかつ同一タイミングの露光時間と同じ時間露光させる第2制御を行う。そして、赤外LED5を駆動する場合の露光に基づく出力と、赤外LED5を駆動しない場合の露光に基づく出力との出力差を求め、この出力差を信号として利用する。
【0063】
上記赤外LED5を駆動する時間(略100〜200μsec)に露光する光の量は、赤外LED5による光が検出物に反射してセンサ6aに入射する光aと、周囲光がセンサ6aに入射する光bとの和となる。一方、上記赤外LED5を駆動していない期間(発光素子を駆動させる時間の略100〜200μsecと同一時間)に露光する光の量は、周囲光がセンサ6aに入射する光bのみである。したがって、図8に、視覚的に示すように、これら光量の差が、信号光aの光量に相当することになるのである。
【0064】
図9は、受光量差の蓄積量と、時間との関係を示す図である。
【0065】
上記光量の差の操作一回で得られる信号光aの量は、大きくないから、測距を精密に行うことができない場合がある。この場合、図9に示すように、一回の操作によって得られた信号光aの光量を、繰り返し蓄積する。このようにすれば、周囲光による影響を除去した上で、CMOSエリアセンサ上の光量分布の重心となる位置を求めるのに必要な光量を獲得することができる。
【0066】
次に、周囲光が非常に多い場合に好ましい実施形態について説明する。
【0067】
周囲光が非常に多い場合においては、周囲光だけでセンサ6aが飽和してしまうことがある。このため、図10に示すように、信号光の光量の第1回目の蓄積を行う前に、周囲光の検知のための露光を行って、周囲光レベルを検知する。そして、そのレベルに応じてセンサ6aの感度を切り替えたり、さらには発光回数と受光側の露光回数を増減させるようにする。このようにして、周囲光に応じた最適条件で、正確な測距を行う。
【0068】
つまり、測距動作の前に周囲光のレベルを測定し、この値が小さければ(照度600ルクス程度以下)、センサ6aの感度を上げる。このことは、例えば、図11に示す電荷蓄積部の一部において、120,121,122で示すコンデンサの合成容量を小さくすることで行う。コンデンサの合成容量を小さくすることは、例えば、スイッチにより使用コンデンサ数を減らすことで実現できる。また、発光回数を、比較的少なくして(勿論、発光回数は次の感度を下げた場合と同じ回数でもかまわない)、測距動作をおこなう。
【0069】
一方、上記値が大きければ(照度600〜10000ルクス程度)、センサ6aの感度を下げる。このことは、例えば、図11に示す電荷蓄積部の一部において、コンデンサ120,121,122の合成容量を大きくすることで行う。コンデンサの合成容量を大きくすることは、例えば、スイッチにより使用コンデンサ数を増やすことで実現できる。また、発光回数を、比較的多くして測距動作をおこなう。飽和しないよう感度を下げて、その分、本来測距に必要な信号を何回(10〜30回程度)も蓄積して、必要レベルにもっていくのである。上記周囲光レベルを検知するための制御は、第3制御をなしている。
【0070】
一例では、周囲光による感度切り替えレベルは、周囲光が多い場合の感度に比べ少ない場合の感度を20倍程度にする。
【0071】
尚、このとき測距動作の前に周囲光のレベルを測定する動作は、図10に示すように、各測距周期毎に1回行うようにしている。このようにして、測距中に周囲光レベルが変化しても、その次の測距動作から、周囲光に応じた最適条件で測距できるようにしている。
【0072】
尚、この周囲光レベルは、2段階でなく3段階以上にすることで、発光回数、露光回数を細かく最適化できて、測距周期を最短化できる。例えば、周囲光のレベルを0〜300、300〜600、600〜10000ルクスの3段階に分けた場合、0〜300ルクスの場合は、上述の2段階に分けた場合の600ルクス以下とした場合より、感度を約2倍まで上げることができる。このようにすると、発光回数を1/2とできて、測距動作に必要な時間を、約半分にすることができる。
【0073】
以上のように受光側の露光時間、および、受光素子6の感度を制御することで、測距センサを、小型化できると同時に、遠距離の低反射物まで正確に距離を計測できる。露光時間を延ばせば、発光効率の小さい低価格の発光素子を使用でき、測距センサのコストダウンに繋がる。また、発光効率の大きい赤外発光素子であっても露光時間を延ばすことで、発光量を小さくできるので、赤外発光素子に流す電流を小さくでき、測距センサの低消費電流化を実現できる。
【0074】
本実施形態は、上述のように、三角測量方式により、ある範囲に存在する物体までの距離dを検出するようになっている。ここで、上で図15を用いて説明したように、三角測量方式により物体までの距離dを検出する光学式測距センサにおいて、物体までの距離dと、出力とは、反比例の関係にある。
【0075】
すなわち、物体までの距離が短いところでは、距離変動による出力変化が大きい一方、物体までの距離が長いところでは、距離変動による出力変化が小さい。したがって、物体までの距離が長いところを測距するためには相応の光量を必要とする。このためレンズ径を大きくする方法があるが、それではレンズ径とともに、発光側レンズ中心と、受光側レンズ中心との距離Aや、受光側レンズと、受光素子との距離、つまり、受光側レンズの焦点距離fも大きくなり、光学式測距センサのサイズが大きくなる。
【0076】
このような背景において、光学式測距センサをパソコンの人体検出(人がパソコンの前に居るかどうかを検出していなければモニターを消す等の制御をし、省エネを実現する)や、携帯電話のカメラオートフォーカス用途として搭載するためのサイズとしては、発光側レンズ中心と、受光側レンズ中心との距離Aは、略10mm以下で、レンズ焦点距離fは、略5mm以下であることが望ましい。
【0077】
本実施形態では、上述のように、距離変動による出力変化が小さくても、物体までの距離が長いところを測距するために必要な相応の光量を獲得できるから、これらのパラメータの所望の寸法を実現することができる。
【0078】
尚、上記実施形態では、赤外LED5が、第1透光性樹脂部12で封止されると共に、受光素子6が、第1透光性樹脂部12と別体の第2透光性樹脂部7で封止されたが、この発明では、赤外発光素子を封止する第1透明樹脂部と、受光素子を封止する第2透明樹脂部とが、一体であっても良い。
【0079】
また、上記実施形態では、赤外LED5が、第1制御において、同じ時間間隔毎に間欠駆動され、また、センサ6aが、第1、第2、第3制御の夫々において、同じ時間間隔毎に間欠的に露光するようになっていた。しかしながら、この発明では、赤外発光素子は、全てが同じ時間間隔でない時間間隔で、間欠駆動されても良く、また、受光素子は、第1、第2、第3制御のうちの少なくとも一つにおいて、全てが同じ時間間隔でない時間間隔で、間欠的に露光されるようになっていても良い。また、第1制御と、第2制御の露光時間は、同一でないといけないが、第1制御と、第3制御の露光時間が、異なっていても良いことは、言うまでもない。また、この発明では、対をなす(すなわち、互いの受光素子からの信号の差をとる組)第1制御と第2制御の露光時間が同一でないといけないのは、言うまでもないが、一の対をなす第1制御と第2制御の露光時間と、他の対をなす第1制御と第2制御の露光時間とが、異なる時間であっても良いことも、言うまでもない。
【0080】
また、上記実施形態では、赤外発光素子が、赤外LED5であったが、この発明では、赤外発光素子は、赤外発光レーザ素子であっても良い。
【0081】
また、上記実施形態では、受光素子6を、予め定められた時間露光するようになっていたが、この発明では、上述のように、受光素子を、予め定められた時間露光する代わりに、受光素子を、常時露光した上で、予め定められた時間のみ、受光素子を動作する(アクティブする)ようにしても良い。
【0082】
また、上記実施形態では、センサ6aと、赤外LED5の駆動回路部6fとが、ともに受光素子6に含まれ、1チップ内に含まれていたが、この発明では、受光素子と、赤外発光素子の駆動回路部とが、ともに、1チップ内に含まれていなくても良い。例えば、赤外発光素子の駆動回路部は、赤外発光素子とともに、1チップ内に含まれていても良いし、別チップで構成されても良い。
【0083】
尚、本実施形態では、受光素子6の受光部として、CMOSイメージセンサ(CMOSプロセスで画素部を構成したエリアイメージセンサ)6aを使用しているから、周辺回路や信号処理部との1チップ化を容易に行うことができて、低電圧化・低消費電力化を図ることができる。
【0084】
また、パーソナルコンピュータや携帯電話等の電子機器に、本発明の光学式測距センサを搭載すれば、測距を精密に行うことができると共に、低電圧化・低消費電力化を図ることができる。
【符号の説明】
【0085】
5 赤外LED
6 受光素子
6a センサ
6b 信号処理回路部
6c 信号処理ソフトメモリー部
6d データメモリー部
6e フラッシュメモリー部
6f 駆動回路部
7 透光性樹脂部
7a 窓部
8 遮光性樹脂部材
9 発光側レンズ
10 受光側レンズ
11 レンズケース
12 透光性樹脂部
12a 窓部
15 リードフレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式測距センサに関する。また、本発明は、光学式測距センサを備える電子機器に関し、特に、光学式測距センサを備えるパーソナルコンピュータや、光学式測距センサを備える携帯電話に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、従来の光学式測距センサの上面図であり、図13は、図12のAA線断面図である。
【0003】
図13に示すように、この光学式測距センサは、一つの発光素子101と、位置検出受光素子である一つの光位置センサ(PSD:Position Sensitive Detector)102と、発光側レンズ103及び受光側レンズ104と、1つのIC105とを備え、IC105は、光位置センサ102から出力される信号の処理を行うと共に、所定のタイミングで発光素子101を駆動するようになっている。上記光位置センサ102は、一つの受光部のみを有し、その受光部の抵抗値は、受光部内で均一かつ一定になっている。
【0004】
また、特開平9−318315号公報(特許文献1)や、特開2003−287420号公報(特許文献2)には、次に示す事項が記載されている。すなわち、図14に示すように、上記光位置センサ102の2つの端子より得られる信号(電流値)を、I1,I2とした場合に、I1/(I1+I2)により距離に対応する出力値を得て、距離計測を行うことが記載されている。
【0005】
また、特開2002−195807号公報(特許文献3)に記載の光学式測距センサのように、位置検出素子としてCMOSイメージセンサを利用したものもある。この光学式測距センサは、発光素子と、受光素子とが同一平面状になく、パッケージも各素子毎に別々に形成されている。また、CMOSイメージセンサより取り出した信号処理部や、発光素子の駆動回路部は、CMOSイメージセンサチップの外部に存在している。そして、全ての部分が、1チップ内に存在しないようになっている。また、受光部での光量最適化のため2回露光している。1回目の露光をモニターし、この結果に基づいて、2回目の露光における発光量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−318315号公報
【特許文献2】特開2003−287420号公報
【特許文献3】特開2002−195807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の光学式測距センサの構成で、三角測量方式により測距を行う場合、光位置センサ102(図13参照)の受光部が1つだけで、その受光部の抵抗値が、受光部内で均一かつ一定なものであるから、以下に説明するように、物体までの距離が長いところでは距離計測の精度が悪くなる。
【0008】
図15は、三角測量方式の原理を説明する図である。
【0009】
尚、図15において、X=A・f/dの関係が成立する。
【0010】
三角測量方式により物体までの距離dを検出する光学式測距センサにおいては、物体までの距離dと、光位置センサ102の出力とは、図16に示すように、反比例の関係になる。
【0011】
したがって、物体までの距離が短いところでは距離変動による出力変化が大きい一方、物体までの距離が長いところでは距離変動による出力変化が小さくなり、物体までの距離が短いところでは精度よく距離を計測できるが、物体までの距離が長いところでは距離計測の精度が悪くなる。
【0012】
三角測量方式では、距離精度の良し悪しは、発光側レンズ中心と、受光側レンズ中心との中心間距離Aや、受光側レンズと、受光部との間の距離、すなわち、受光側レンズの焦点距離fに依存する。詳しくは、距離計測の精度は、A、fを、大きくすることで高くなる。しかし、この場合、光学式測距センサのサイズが大きくなってしまうという課題がある。
【0013】
また、物体までの距離が長いところでは、光量不足を生じないように、レンズ径も大きくする必要があるが、このことも、光学式測距センサのサイズが大きくなる原因になる。
【0014】
また、位置検出素子としてCMOSイメージセンサを採用したものについても、発光素子と、受光素子とが同一平面状になく、かつ、パッケージも各素子毎に別々に形成されているから、測距センサのサイズが大きくなる。また、このことに加えて、CMOSイメージセンサより取り出した信号処理部や、発光素子の駆動回路部が、CMOSイメージセンサチップの外部にあるから、全ての素子および部位を、1チップ内に搭載することができず、測距センサのサイズが、更に大きくなる。更には、この光学式測距センサでは、生産工数が多く、各工程での作業も、精度を求めると複雑になって、製造コストが高いという課題がある。
【0015】
光量については、上述のように、1回目の露光で光量を検知して、発光素子の光量を調整し、次ぎの1回の露光を、測定に利用している。光量は、発光素子に流す電流を大きくすると大きくなる。しかし、限度以上の大きさの電流の発光素子への供給は、発光素子の破壊に繋がるから、供給電流を格段に大きくすることができない。したがって、このことに起因して、レンズ径をそれほど小さくすることができないから、測距センサのサイズの小型化が困難になる。
【0016】
そこで、本発明の課題は、広い測距範囲を実現できると共に、その範囲内の遠距離側にある低反射物体でも正確に検知できる光学式測距センサを提供することにある。また、本発明の課題は、そのような光学式測距センサを備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題を解決するために、この発明の光学式測距センサは、
赤外発光素子と、
上記赤外発光素子に対して間隔をおいて配置されると共に、受光部と、上記受光部から出力される信号を処理する信号処理部と、受光部からの信号が含む情報を格納する情報メモリー部と、上記受光部からの信号を処理するためのソフトを格納する信号処理ソフトメモリー部とを有する受光素子と、
上記赤外発光素子を封止する第1透光性樹脂部と、
上記受光素子を封止する第2透光性樹脂部と、
上記第1透光性樹脂部と、上記第2透光性樹脂部とに接触していると共に、上記赤外発光素子からの光が通過する第1窓部と、上記受光素子に入射する入射光が通過する第2窓部とを有する遮光性樹脂部材と、
上記赤外発光素子を駆動する駆動回路部と、
上記受光素子を制御する受光素子制御部と、
上記赤外発光素子を予め定められた時間毎に間欠的に駆動するように、上記駆動回路部を制御すると共に、上記赤外発光素子を駆動するタイミングに同期して上記受光素子を露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する制御部と
を備えることを特徴としている。
【0018】
上記受光素子は、位置の検出のために使用され、例えば、位置検出受光部としてのm行×n列のCMOSエリアセンサを有することができる。また、上記受光素子は、例えば、位置検出受光部、位置検出受光部から出力される信号を処理する回路部、信号処理ソフトメモリー部、情報メモリー部(フラッシュメモリー、e−Fuse、OTM(one time memory等で構成)および上記駆動回路部を備える構成であっても良い。また、この場合においては、上記駆動回路部は、上記受光素子の一部をなすことになるが、上記駆動回路部は、上記受光素子に含まれていなくても良い。例えば、上記駆動回路部は、発光素子と一緒になって発光素子部を構成していても良い。
【0019】
本発明によれば、発光素子として、波長が可視光線より長い赤外発光素子を使用するから、外乱光の影響を低減できる。また、発光素子の発光波長が、赤外領域であるから、例えば、受光素子(受光部として、例えば、CMOSエリアセンサを利用)の受光波長が、赤外にピーク感度を有するようにし、かつ、受光側レンズと、発光側レンズとが、可視光をカットする光学特性を有するようにすることで、屋内の蛍光灯程度の光であれば影響を受けないようにすることができる。
【0020】
また、本発明によれば、上記赤外発光素子が、間欠駆動されるようになっていて、更に、上記赤外発光素子を駆動するタイミングと、受光素子の露光または動作のタイミングとが同期するようになっているから、発光時の光で生じる電荷を複数回受光側で蓄積することができて、1回の発光量では測距を行うのに受光の光量が十分でない場合においても、不足する光量を補うことができる。したがって、受光素子の受光部が、例えば、CMOSエリアセンサである場合において、受光部の各セルの光量分布より、その光量分布の重心となる位置を精密に求めることができて、同受光部の所定の位置からその光量重心位置までの相対位置を精密に求めることができる。したがって、その相対位置に基づいて、被測定物までの距離についての精密な情報を有する信号を獲得することができて、測距を精密に行うことができる。
【0021】
また、一実施形態では、
上記制御部は、
予め定められた第1期間毎に、上記赤外発光素子を連続的に駆動すると共に、上記赤外発光素子を連続的に駆動するタイミングに同期して、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第1制御と、
予め定められた第2期間毎に、上記赤外発光素子の駆動を停止する一方、上記第1制御において、上記赤外発光素子が連続的に駆動している時間と略同じ時間の間、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第2制御と
を交互に行い、
上記第1制御の間の上記受光素子からの信号と、上記第2制御の間の上記受光素子からの信号との差に基づいて、距離を測定する。
【0022】
白熱灯や太陽光のように赤外光が含まれる光の環境下で、光学式測距センサを使用する場合には、その白熱灯や太陽光の照度が小さくて、発光していないときに受光素子の受光部に入射する周囲光が少なければ良いが、多い場合には、周囲光による雑音の受光信号が大きく、発光部からの光を精度よく検知できない場合がある。
【0023】
上記実施形態によれば、第2制御によって、周囲光に基づく雑音の信号の大きさを検出できるから、第1制御における、物体までの距離の情報を表す信号と、周囲光の雑音の信号とからなる信号から、第2制御における、周囲光の雑音の信号を差っ引くことによって、物体までの距離の情報を表す信号のみを取り出すことができる。したがって、白熱灯や太陽光のように赤外光が含まれる光の環境下で使用する場合においても、測距を精密に行うことができる。
【0024】
すなわち、所定のタイミングで赤外発光素子を駆動させる時間と、受光素子の露光または動作時間を同一タイミングとし、更に、赤外発光素子を駆動させない期間に受光素子側を上記露光または動作時間と同じ時間だけ露光または動作させ、二つの露光または動作時間内の出力差を信号として利用することで、周囲光による影響を除去することができるのである。
【0025】
また、一実施形態では、
上記制御部は、予め定められた時間、上記赤外発光素子の駆動を停止する一方、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第3制御を行い、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、上記受光素子の感度と、露光または動作時間とのうちの少なくとも一方を制御する。
【0026】
周囲光が非常に多い場合、周囲光だけで受光部の出力レベルが飽和してしまうことがある。
【0027】
本発明によれば、距離の情報を表す信号を検出する前に、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、周囲光レベルを検知することができる。したがって、その周囲光のレベルに応じて、受光素子の感度を切り替えることができ、また、その周囲光のレベルに応じて、発光側の発光回数と、受光側の露光または動作回数を増減させることができるから、周囲光に応じた最適な条件で正確な測距を行うことができる。すなわち、所定のタイミングで、赤外発光素子の発光、および、受光素子の露光または動作を行う前に、所定の時間に受光素子の露光または動作のみを行って、周囲照度を検知して、受光感度、および、受光素子の露光または動作時間を制御するから、周囲光に応じた最適な条件で正確な測距を行うことができるのである。
【0028】
また、一実施形態では、
上記制御部は、上記第3制御を、予め定められた第3期間毎かつ上記第1制御および上記第2制御の前に行い、かつ、上記第3制御と、上記第1制御と上記第2制御とからなる制御とを、交互に行う。
【0029】
上記実施形態によれば、上記第3制御と、上記第1制御と上記第2制御とからなる制御とを、交互に行うから、測距中に周囲光レベルが変化しても、その周囲光の変動の影響を受けることなしに、正確に測距を行うことができる。すなわち、周囲照度を検知するタイミングを、測距を行う測距周期毎に、一回行うことにより、測距中に周囲光レベルが変化しても、その周囲光の変動の影響を受けることなしに、正確に測距を行うことができるのである。
【0030】
また、一実施形態では、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、周囲光の照度を検知し、検知した周囲照度が、予め定められた照度よりも小さい場合、上記受光素子の受光感度を上げると共に、上記赤外発光素子の光の発光回数および上記受光素子での受光回数を少なくする。
【0031】
例えば、検知した周囲照度が室内照度レベルである場合に、受光感度を上げ、また、発光および受光回数を少なくすると、効率良くかつ正確な測距を行うことができる。
【0032】
上記実施形態によれば、周囲光に応じた最適条件で、正確な測距を行うことができる。
【0033】
また、一実施形態では、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、周囲光の照度を検知し、検知した周囲照度が、予め定められた照度よりも大きい場合、上記受光素子の受光感度を下げると共に、上記赤外発光素子の光の発光回数および上記受光素子での受光回数を大きくする。
【0034】
例えば、検知した周囲照度が屋外照度レベルである場合に、受光感度を下げ、また、発光および受光回数を多くすると、効率良くかつ正確な測距を行うことができる。
【0035】
上記実施形態によれば、周囲光に応じた最適条件で、正確な測距を行うことができる。
【0036】
また、一実施形態では、
上記受光素子は、光を受光する受光部と、上記受光部から出力される信号を処理する回路部と、信号処理ソフトメモリー部と、フラッシュメモリー部とを備え、上記駆動回路部は、上記受光素子に含まれる。
【0037】
また、一実施形態では、
発光側レンズと、受光側レンズとを有するレンズケースを備え、
三角測量方式により物体までの距離を検出する。
【0038】
また、本発明の電子機器は、
本発明の光学式測距センサを備えることを特徴としている。
【0039】
電子機器には、例えば、パーソナルコンピュータや、携帯電話が含まれる。
【0040】
本発明によれば、光学式測距センサによって、測距を精密に行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の光学式測距センサによれば、例えば、三角測量方式を利用して測距を行う形式において、広い測距範囲を実現できると共に、その範囲内の遠距離側にある低反射物体でも正確に検知でき、かつ、小型化、高性能化、消費電流の低減化および製造コストの低減化を実現できる。
【0042】
また、この光学式測距センサをパソコンに搭載すれば、そのパソコンにおいて、パソコンの前にいる人を検知できて、例えば、人がいなくなるとパソコンをスリープモードにすることができ、省エネを実現することができる。また、このセンサを、カメラ付き携帯電話に搭載すれば、被写体までの距離を精密に計測でき、高速で駆動するオートフォーカス機能(カメラのフォーカスを自動で合わせる)を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態の光学式測距センサの上面図である。
【図2】図1のAA線断面図である。
【図3】受光素子の上面図である。
【図4】発光素子から発光される光の光量と、時間との関係を示す図である。
【図5】受光素子で露光した光の光量と、時間との関係を示す図である。
【図6】発光素子から発光される光の光量と、時間との関係を示す図である。
【図7】露光した光の光量と、時間との関係を示す図である。
【図8】信号光の光量を視覚的に表す図である。
【図9】受光量差の蓄積量と、時間との関係を示す図である。
【図10】信号光の光量の第1回目の蓄積を行う前に、周囲光の検知のための露光を行う実施形態について説明する図である。
【図11】電荷蓄積部の一部を表す図である。
【図12】従来の光学式測距センサを説明する図である。
【図13】従来の光学式測距センサを説明する図である。
【図14】従来の光学式測距センサを説明する図である。
【図15】三角測量方式の原理を説明する図である。
【図16】三角測量方式の原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明の一実施形態の光学式測距センサの上面図であり、図2は、図1のAA線断面図である。
【0045】
図2に示すように、この光学式測距センサは、リードフレーム15、赤外発光素子の一例としての赤外発光ダイオード(以下、赤外LEDという)5、受光素子6、第1透光性樹脂部12、第2透光性樹脂部7、遮光性樹脂部材8、および、レンズケース11を備え、赤外LED5および受光素子6は、リードフレーム15上に搭載され、同一平面上に配置されている。
【0046】
上記赤外LED5は、赤外線を発光する。上記赤外LED5は、トランスファモールドによりエポキシ系の第1透光性樹脂部12で封止され、受光素子6は、トランスファモールドによりエポキシ系の第2透光性樹脂部7で封止されている。上記赤外LED5および受光素子6は、一定の間隔で併置されている。
【0047】
上記遮光性樹脂部材8は、第1透光性樹脂部12および第2透光性樹脂部7を、インジェクション成形により一体成形している。上記遮光性樹脂部材8は、第1窓部12aと、第2窓部7aとを有する。上記赤外LED5からの光が、第1窓部12aを通過するようになっている一方、受光素子6の後述のCMOSエリアセンサ6aに入射する光が、第2窓部7aを通過するようになっている。
【0048】
上記レンズケース11は、発光側レンズ9および受光側レンズ10を有する。上記レンズケース11は、レンズ部を、可視光カット材よりなるアクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂で成形している一方、ケース部を、ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂で成形している。上記レンズ部およびケース部は、2色成形で一体成形されている。上記発光側レンズ9および受光側レンズ10の夫々のレンズの軸は、上記同一平面の法線方向に一致している。
【0049】
図3は、上記受光素子6の上面図である。
【0050】
図3に示すように、上記受光素子6は、受光部の一例としてのm行×n列のCMOS(complementary metal oxide semiconductor)エリアセンサ(以下、センサという)6a、信号処理回路部6b、信号処理ソフトメモリー部6c、信号処理データメモリー部6d、情報メモリー部の一例としてのフラッシュメモリー部6eおよび駆動回路部6fを有する。上記信号処理ソフトメモリー部6cは、センサ6aからの信号を処理するためのソフトを格納している。上記フラッシュメモリー部6eは、センサ6aからの信号をデジタル信号として格納している。尚、この実施形態では、情報メモリー部として、フラッシュメモリを使用したが、この発明では、情報メモリー部として、フラッシュメモリの代わりに、E−Fuse、OTM(one time memory)等のフラッシュメモリ以外のメモリーを使用しても良い。また、信号処理データメモリー部6dは、信号処理の過程で算出されるデータを記憶するようになっている。
【0051】
上記センサ6aは、受光により位置を検出するようになっている。上記回路部6bは、センサ6aから出力される信号を処理するようになっている。また、上記駆動回路部6fは、所定のタイミングで赤外LED5を駆動するようになっている。
【0052】
本発明では、レンズ径を小さくした状態で比較的遠距離(2m前後)の低反射物を検知できるレベルの信号を得るために、赤外LED5の発光時間を制御すると共に、センサ6aの露光時間を制御するようになっている。
【0053】
この光学式測距センサは、三角測量方式により物体までの距離を検出するようになっている。詳しくは、所定の位置に検出物がある場合において、センサ6a上の光スポット重心位置は、センサ6aの各セルの光量分布からその光量分布の重心となる位置を求めることによって決定される。また、同センサ6aの所定の位置からその光量重心位置までの相対位置を求めて、その相対位置に基づいて、出力を行う信号の処理を実施して、この信号の処理により検出物までの距離を検出する。ここで、光量が不足していると、上記センサ6aの各セルの光量分布から、その光量分布の重心となる位置を求めることが出来なくなる。
【0054】
図4は、赤外LED5から発光される光の光量と、時間との関係を示す図であり、図5は、露光(センサ6aに当てられて感光)した光の光量と時間との関係を示す図である。本実施形態では、図4および図5に示すように、赤外LED5を駆動させる駆動回路部6fにより発光するタイミングと、その光を検出物で反射させセンサ6aで受けるタイミングとを同期させる。
【0055】
これは、例えば、次のようにして行うことができる。光学式測距センサに、制御部の一例としての図示しないIC(集積回路)を搭載し、また、受光素子6の第2窓部7aの開閉を行う受光素子制御部の一例としての液晶シャッタを搭載する。そして、上記ICから、駆動回路部6fと、上記液晶シャッタとに、同時かつ同じタイミングで信号を出力することにより、赤外LED5を駆動すると共に、受光素子6のセンサ6aを光に曝して露光する。この例は、受光素子6が、予め定められた時間のみ露光する例となっている。上記ICのこの制御は、第1制御をなしている。
【0056】
尚、図4および図5に示す信号は、例えば、次のようにして獲得することもできる。光学式測距センサに、制御部の一例としての図示しないIC(集積回路)を搭載し、また、赤外LED5に電力を供給するかしないかを制御する第1スイッチング素子と、センサ6aをアクティブにするかしないかを制御する受光素子制御部の一例としての第2スイッチング素子とを搭載する。そして、上記ICから上記二つのスイッチング素子に制御信号を同時かつ同じタイミングで出力することにより、赤外LED5を駆動させる駆動回路部6fにより発光するタイミングと、その光を検出物で反射させセンサ6aで受けるタイミングとを同期させる。この例では、センサ6aは、永続的に露光している(光に曝されている)一方、予め定められた時間のみ出力信号が、アクティブになる。この例は、受光素子6が、予め定められた時間のみ動作する例となっている。上記ICのこの制御は、第1制御をなしている。
【0057】
本実施形態では、図4に示すように、上記ICによって、赤外LED5を、予め定められた時間毎の一例としての一定時間毎に間欠駆動する。そして、これにより、発光時の光で生じる電荷を複数回受光側で蓄積して、1回の発光量では不足する光量を補うようになっている。これにより、測距時間(測距周期)は長くなるが、センサ6aの各セルの光量分布よりその光量分布の重心となる位置を求めるのに必要な光量が得られる。この方式は、周囲光がほとんどない場合には有効である。
【0058】
次に、周囲光がある場合には、赤外LED5からの光以外の光が、受光部に入射するので、赤外LED5からの光以外の光を除去しなければならない。
【0059】
赤外LED5からの光以外の光を除去する実施形態では、受光部であるセンサ6aの赤外に対する受光感度を上げ、かつ、発光側レンズ9と受光側レンズ10とに、可視光をカットする光学特性を有する材料を使用する。この実施形態によれば、屋内の蛍光灯程度の光であれば、影響を受けることがなく、測距を正確に行うことができる。
【0060】
次に、白熱灯や太陽光のように赤外光が含まれる光の環境下での使用に好ましい実施形態について説明する。
【0061】
図6は、赤外LED5から発光される光の光量と、時間との関係を示す図であり、図7は、露光(CMOSエリアセンサに当てられて感光)した光の光量と、時間との関係を示す図である。
【0062】
図6および図7に示す実施形態では、赤外LED5を駆動する時間と、受光側の露光時間とを、所定のタイミングかつ同一タイミングとする第1制御を行うと共に、更に、赤外LED5を駆動していない期間に、受光側を、上記所定のタイミングかつ同一タイミングの露光時間と同じ時間露光させる第2制御を行う。そして、赤外LED5を駆動する場合の露光に基づく出力と、赤外LED5を駆動しない場合の露光に基づく出力との出力差を求め、この出力差を信号として利用する。
【0063】
上記赤外LED5を駆動する時間(略100〜200μsec)に露光する光の量は、赤外LED5による光が検出物に反射してセンサ6aに入射する光aと、周囲光がセンサ6aに入射する光bとの和となる。一方、上記赤外LED5を駆動していない期間(発光素子を駆動させる時間の略100〜200μsecと同一時間)に露光する光の量は、周囲光がセンサ6aに入射する光bのみである。したがって、図8に、視覚的に示すように、これら光量の差が、信号光aの光量に相当することになるのである。
【0064】
図9は、受光量差の蓄積量と、時間との関係を示す図である。
【0065】
上記光量の差の操作一回で得られる信号光aの量は、大きくないから、測距を精密に行うことができない場合がある。この場合、図9に示すように、一回の操作によって得られた信号光aの光量を、繰り返し蓄積する。このようにすれば、周囲光による影響を除去した上で、CMOSエリアセンサ上の光量分布の重心となる位置を求めるのに必要な光量を獲得することができる。
【0066】
次に、周囲光が非常に多い場合に好ましい実施形態について説明する。
【0067】
周囲光が非常に多い場合においては、周囲光だけでセンサ6aが飽和してしまうことがある。このため、図10に示すように、信号光の光量の第1回目の蓄積を行う前に、周囲光の検知のための露光を行って、周囲光レベルを検知する。そして、そのレベルに応じてセンサ6aの感度を切り替えたり、さらには発光回数と受光側の露光回数を増減させるようにする。このようにして、周囲光に応じた最適条件で、正確な測距を行う。
【0068】
つまり、測距動作の前に周囲光のレベルを測定し、この値が小さければ(照度600ルクス程度以下)、センサ6aの感度を上げる。このことは、例えば、図11に示す電荷蓄積部の一部において、120,121,122で示すコンデンサの合成容量を小さくすることで行う。コンデンサの合成容量を小さくすることは、例えば、スイッチにより使用コンデンサ数を減らすことで実現できる。また、発光回数を、比較的少なくして(勿論、発光回数は次の感度を下げた場合と同じ回数でもかまわない)、測距動作をおこなう。
【0069】
一方、上記値が大きければ(照度600〜10000ルクス程度)、センサ6aの感度を下げる。このことは、例えば、図11に示す電荷蓄積部の一部において、コンデンサ120,121,122の合成容量を大きくすることで行う。コンデンサの合成容量を大きくすることは、例えば、スイッチにより使用コンデンサ数を増やすことで実現できる。また、発光回数を、比較的多くして測距動作をおこなう。飽和しないよう感度を下げて、その分、本来測距に必要な信号を何回(10〜30回程度)も蓄積して、必要レベルにもっていくのである。上記周囲光レベルを検知するための制御は、第3制御をなしている。
【0070】
一例では、周囲光による感度切り替えレベルは、周囲光が多い場合の感度に比べ少ない場合の感度を20倍程度にする。
【0071】
尚、このとき測距動作の前に周囲光のレベルを測定する動作は、図10に示すように、各測距周期毎に1回行うようにしている。このようにして、測距中に周囲光レベルが変化しても、その次の測距動作から、周囲光に応じた最適条件で測距できるようにしている。
【0072】
尚、この周囲光レベルは、2段階でなく3段階以上にすることで、発光回数、露光回数を細かく最適化できて、測距周期を最短化できる。例えば、周囲光のレベルを0〜300、300〜600、600〜10000ルクスの3段階に分けた場合、0〜300ルクスの場合は、上述の2段階に分けた場合の600ルクス以下とした場合より、感度を約2倍まで上げることができる。このようにすると、発光回数を1/2とできて、測距動作に必要な時間を、約半分にすることができる。
【0073】
以上のように受光側の露光時間、および、受光素子6の感度を制御することで、測距センサを、小型化できると同時に、遠距離の低反射物まで正確に距離を計測できる。露光時間を延ばせば、発光効率の小さい低価格の発光素子を使用でき、測距センサのコストダウンに繋がる。また、発光効率の大きい赤外発光素子であっても露光時間を延ばすことで、発光量を小さくできるので、赤外発光素子に流す電流を小さくでき、測距センサの低消費電流化を実現できる。
【0074】
本実施形態は、上述のように、三角測量方式により、ある範囲に存在する物体までの距離dを検出するようになっている。ここで、上で図15を用いて説明したように、三角測量方式により物体までの距離dを検出する光学式測距センサにおいて、物体までの距離dと、出力とは、反比例の関係にある。
【0075】
すなわち、物体までの距離が短いところでは、距離変動による出力変化が大きい一方、物体までの距離が長いところでは、距離変動による出力変化が小さい。したがって、物体までの距離が長いところを測距するためには相応の光量を必要とする。このためレンズ径を大きくする方法があるが、それではレンズ径とともに、発光側レンズ中心と、受光側レンズ中心との距離Aや、受光側レンズと、受光素子との距離、つまり、受光側レンズの焦点距離fも大きくなり、光学式測距センサのサイズが大きくなる。
【0076】
このような背景において、光学式測距センサをパソコンの人体検出(人がパソコンの前に居るかどうかを検出していなければモニターを消す等の制御をし、省エネを実現する)や、携帯電話のカメラオートフォーカス用途として搭載するためのサイズとしては、発光側レンズ中心と、受光側レンズ中心との距離Aは、略10mm以下で、レンズ焦点距離fは、略5mm以下であることが望ましい。
【0077】
本実施形態では、上述のように、距離変動による出力変化が小さくても、物体までの距離が長いところを測距するために必要な相応の光量を獲得できるから、これらのパラメータの所望の寸法を実現することができる。
【0078】
尚、上記実施形態では、赤外LED5が、第1透光性樹脂部12で封止されると共に、受光素子6が、第1透光性樹脂部12と別体の第2透光性樹脂部7で封止されたが、この発明では、赤外発光素子を封止する第1透明樹脂部と、受光素子を封止する第2透明樹脂部とが、一体であっても良い。
【0079】
また、上記実施形態では、赤外LED5が、第1制御において、同じ時間間隔毎に間欠駆動され、また、センサ6aが、第1、第2、第3制御の夫々において、同じ時間間隔毎に間欠的に露光するようになっていた。しかしながら、この発明では、赤外発光素子は、全てが同じ時間間隔でない時間間隔で、間欠駆動されても良く、また、受光素子は、第1、第2、第3制御のうちの少なくとも一つにおいて、全てが同じ時間間隔でない時間間隔で、間欠的に露光されるようになっていても良い。また、第1制御と、第2制御の露光時間は、同一でないといけないが、第1制御と、第3制御の露光時間が、異なっていても良いことは、言うまでもない。また、この発明では、対をなす(すなわち、互いの受光素子からの信号の差をとる組)第1制御と第2制御の露光時間が同一でないといけないのは、言うまでもないが、一の対をなす第1制御と第2制御の露光時間と、他の対をなす第1制御と第2制御の露光時間とが、異なる時間であっても良いことも、言うまでもない。
【0080】
また、上記実施形態では、赤外発光素子が、赤外LED5であったが、この発明では、赤外発光素子は、赤外発光レーザ素子であっても良い。
【0081】
また、上記実施形態では、受光素子6を、予め定められた時間露光するようになっていたが、この発明では、上述のように、受光素子を、予め定められた時間露光する代わりに、受光素子を、常時露光した上で、予め定められた時間のみ、受光素子を動作する(アクティブする)ようにしても良い。
【0082】
また、上記実施形態では、センサ6aと、赤外LED5の駆動回路部6fとが、ともに受光素子6に含まれ、1チップ内に含まれていたが、この発明では、受光素子と、赤外発光素子の駆動回路部とが、ともに、1チップ内に含まれていなくても良い。例えば、赤外発光素子の駆動回路部は、赤外発光素子とともに、1チップ内に含まれていても良いし、別チップで構成されても良い。
【0083】
尚、本実施形態では、受光素子6の受光部として、CMOSイメージセンサ(CMOSプロセスで画素部を構成したエリアイメージセンサ)6aを使用しているから、周辺回路や信号処理部との1チップ化を容易に行うことができて、低電圧化・低消費電力化を図ることができる。
【0084】
また、パーソナルコンピュータや携帯電話等の電子機器に、本発明の光学式測距センサを搭載すれば、測距を精密に行うことができると共に、低電圧化・低消費電力化を図ることができる。
【符号の説明】
【0085】
5 赤外LED
6 受光素子
6a センサ
6b 信号処理回路部
6c 信号処理ソフトメモリー部
6d データメモリー部
6e フラッシュメモリー部
6f 駆動回路部
7 透光性樹脂部
7a 窓部
8 遮光性樹脂部材
9 発光側レンズ
10 受光側レンズ
11 レンズケース
12 透光性樹脂部
12a 窓部
15 リードフレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外発光素子と、
上記赤外発光素子に対して間隔をおいて配置されると共に、受光部と、上記受光部から出力される信号を処理する信号処理部と、受光部からの信号が含む情報を格納する情報メモリー部と、上記受光部からの信号を処理するためのソフトを格納する信号処理ソフトメモリー部とを有する受光素子と、
上記赤外発光素子を封止する第1透光性樹脂部と、
上記受光素子を封止する第2透光性樹脂部と、
上記第1透光性樹脂部と、上記第2透光性樹脂部とに接触していると共に、上記赤外発光素子からの光が通過する第1窓部と、上記受光素子に入射する入射光が通過する第2窓部とを有する遮光性樹脂部材と、
上記赤外発光素子を駆動する駆動回路部と、
上記受光素子を制御する受光素子制御部と、
上記赤外発光素子を予め定められた時間毎に間欠的に駆動するように、上記駆動回路部を制御すると共に、上記赤外発光素子を駆動するタイミングに同期して上記受光素子を露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式測距センサにおいて、
上記制御部は、
予め定められた第1期間毎に、上記赤外発光素子を連続的に駆動すると共に、上記赤外発光素子を連続的に駆動するタイミングに同期して、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第1制御と、
予め定められた第2期間毎に、上記赤外発光素子の駆動を停止する一方、上記第1制御において、上記赤外発光素子が連続的に駆動している時間と略同じ時間の間、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第2制御と
を交互に行い、
上記第1制御の間の上記受光素子からの信号と、上記第2制御の間の上記受光素子からの信号との差に基づいて、距離を測定することを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式測距センサにおいて、
上記制御部は、予め定められた時間、上記赤外発光素子の駆動を停止する一方、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第3制御を行い、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、上記受光素子の感度と、露光または動作時間とのうちの少なくとも一方を制御することを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の光学式測距離センサにおいて、
上記制御部は、上記第3制御を、予め定められた第3期間毎かつ上記第1制御および上記第2制御の前に行い、かつ、上記第3制御と、上記第1制御と上記第2制御とからなる制御とを、交互に行うことを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光学式測距センサにおいて、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、周囲光の照度を検知し、検知した周囲照度が、予め定められた照度よりも小さい場合、上記受光素子の受光感度を上げると共に、上記赤外発光素子の光の発光回数および上記受光素子での受光回数を少なくすることを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項6】
請求項3または4に記載の光学式測距センサにおいて、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、周囲光の照度を検知し、検知した周囲照度が、予め定められた照度よりも大きい場合、上記受光素子の受光感度を下げると共に、上記赤外発光素子の光の発光回数および上記受光素子での受光回数を大きくすることを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の光学式測距センサを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
赤外発光素子と、
上記赤外発光素子に対して間隔をおいて配置されると共に、受光部と、上記受光部から出力される信号を処理する信号処理部と、受光部からの信号が含む情報を格納する情報メモリー部と、上記受光部からの信号を処理するためのソフトを格納する信号処理ソフトメモリー部とを有する受光素子と、
上記赤外発光素子を封止する第1透光性樹脂部と、
上記受光素子を封止する第2透光性樹脂部と、
上記第1透光性樹脂部と、上記第2透光性樹脂部とに接触していると共に、上記赤外発光素子からの光が通過する第1窓部と、上記受光素子に入射する入射光が通過する第2窓部とを有する遮光性樹脂部材と、
上記赤外発光素子を駆動する駆動回路部と、
上記受光素子を制御する受光素子制御部と、
上記赤外発光素子を予め定められた時間毎に間欠的に駆動するように、上記駆動回路部を制御すると共に、上記赤外発光素子を駆動するタイミングに同期して上記受光素子を露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式測距センサにおいて、
上記制御部は、
予め定められた第1期間毎に、上記赤外発光素子を連続的に駆動すると共に、上記赤外発光素子を連続的に駆動するタイミングに同期して、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第1制御と、
予め定められた第2期間毎に、上記赤外発光素子の駆動を停止する一方、上記第1制御において、上記赤外発光素子が連続的に駆動している時間と略同じ時間の間、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第2制御と
を交互に行い、
上記第1制御の間の上記受光素子からの信号と、上記第2制御の間の上記受光素子からの信号との差に基づいて、距離を測定することを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式測距センサにおいて、
上記制御部は、予め定められた時間、上記赤外発光素子の駆動を停止する一方、上記受光素子が連続的に露光または動作するように、上記受光素子制御部を制御する第3制御を行い、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、上記受光素子の感度と、露光または動作時間とのうちの少なくとも一方を制御することを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の光学式測距離センサにおいて、
上記制御部は、上記第3制御を、予め定められた第3期間毎かつ上記第1制御および上記第2制御の前に行い、かつ、上記第3制御と、上記第1制御と上記第2制御とからなる制御とを、交互に行うことを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光学式測距センサにおいて、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、周囲光の照度を検知し、検知した周囲照度が、予め定められた照度よりも小さい場合、上記受光素子の受光感度を上げると共に、上記赤外発光素子の光の発光回数および上記受光素子での受光回数を少なくすることを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項6】
請求項3または4に記載の光学式測距センサにおいて、
上記制御部は、上記第3制御の間の上記受光素子からの信号に基づいて、周囲光の照度を検知し、検知した周囲照度が、予め定められた照度よりも大きい場合、上記受光素子の受光感度を下げると共に、上記赤外発光素子の光の発光回数および上記受光素子での受光回数を大きくすることを特徴とする光学式測距センサ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の光学式測距センサを備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−216933(P2010−216933A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62831(P2009−62831)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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