説明

光学接着剤組成物及び光部品の接着方法

【課題】 従来製品よりも低屈折率で、しかも、低粘度、速硬化、耐熱性に優れた使い勝手のよい光学接着剤並びにこれを使用した伝送損失を低減可能な光部品の接着方法及び光デバイスを提供する。
【解決の手段】 下記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種及び光重合開始剤からなることを特徴とする光学接着剤組成物。
Tf−(O)−(CH−(CF−(CH−(O)−Tf (I)
(式中、複数のaは同一に、0又は1を表す。複数のbは同一に、0又は1を表す。mは4〜12の整数を表す。複数のTfは同一にグリシジル基又はCH=CH−C(O)−を表す。)、及び、これを用いた光部品の接着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信、計測、医療分野等で使用される光ファイバーに使用される光学接着剤に関し、詳細には、アクリル基又はエポキシ基含有の特定構造のフッ素化合物からなる低屈折率の光学接着剤及び光部品接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーは光通信、光応用計測、内視鏡等広範囲に使用されている。例えば光通信は、広域又はLAN光通信網、自動車内通信、電気製品や産業機器の制御等で広く使用されつつある。この光通信は光ファイバーとこれに接続される各種光伝送用部品とからなる光伝送網と光ファイバー増幅器等の能動光部品とにより担われる。光ファイバーと光部品や光部品同士の接続には、通常、光学樹脂からなる光学接着剤が使用されている。しかるに、光接続部分が増加すると、伝送損失の増加が予想され、そのため、低屈折率の光学接着剤が求められる。
【0003】
光学接着剤としては、光ファイバーの接続に精密な位置決め固定が必要であるため、硬化時に接着剤や被着材が膨張したり硬化に長時間かかる熱硬化型の接着剤は適当ではない。また、従来の光学接着剤組成物は、概ね屈折率が1.45以上であり、必ずしも低屈折率ではない。さらに、光学接着剤としての透明性、光ファイバーとの優れた接着性、使用環境を考慮して吸湿条件下での接着性、等も要求される。
【0004】
光学接着剤として使用可能な技術としては、特定のエポキシ系フッ素化合物からなる光重合性組成物(例えば、特許文献1参照。)、特定のアクリレート系フッ素化合物からなる光重合性組成物(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)、フッ化アルキレン基又はトリフッ化メチル基を有するエポキシ化合物と特定の脂環式エポキシ化合物を使用した光重合性接着剤(例えば、特許文献4参照。)等がある。しかしこれらの組成物は概ね屈折率が1.45以上あり、必ずしも低屈折率ではない。また、高粘度で、しかも硬化に時間がかかる(特に、特許文献1参照。)。屈折率1.40以下の光学樹脂として含フッ素共重合体とアルキルアミノ基含有化合物との反応物が知られているが(例えば、特許文献5参照。)、しかしこのものは接着剤組成物ではない。
【0005】
一方、アクリル基又はエポキシ基含有のフッ素化合物からなる光学樹脂としては、例えば、フッ素含有アルキレン基を有するエポキシ化合物の硬化物を使用した光学薄膜がある(例えば、特許文献6参照。)。この技術は光学コーティングの性能を改良することを目的とするものであって、耐擦傷性に優れた光学薄膜を形成することができる旨の記載があるものの、もっぱら反射防止膜用途の技術分野に属するものであって、開示されている組成物も多量の溶剤を含有するものであり、接着剤組成物との関連性は全くない。フッ素含有多官能アクリレートを使用した皮膜形成組成物も知られている(例えば、特許文献7参照。)。しかしこの技術も、反射防止膜に関するものであり、接着剤の技術分野に属するものではない。パーフルオロ基含有化合物についてはさらに、特許文献8に広い範囲のパーフルオロ基を含有する多種のエポキシ化合物が開示されている。しかしながらこの技術も、特定の用途を念頭に置くものではなく、実施例に開示されている化合物も本発明における特定構造の化合物とは異なるものである。このように、一層の低屈折率要求に応えることができて、しかも、低粘度、速硬化、耐熱性等の各種性能を満たす光学接着剤は、いまだ知られていない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−154233号公報
【特許文献2】特開昭62−265248号公報
【特許文献3】特開昭63−101409号公報
【特許文献4】特開2003−96424号公報
【特許文献5】特開平10−25388号公報
【特許文献6】特開平11−133207号公報
【特許文献7】特開2001−262011号公報
【特許文献8】特開2000−264883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の現状に鑑みて、本発明は、低屈折率を達成でき、しかも、低粘度、速硬化、耐熱性に優れた使い勝手のよい光学接着剤並びにこれを使用した伝送損失を低減可能な光部品の接着方法及び光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、アクリル基又はエポキシ基含有の特定構造のフッ素化合物を使用することにより上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。即ち本発明は、下記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種及び光重合開始剤からなる光学接着剤組成物である。
Tf−(O)−(CH−(CF−(CH−(O)−Tf (I)
式中、複数のaは同一に、0又は1を表す。複数のbは同一に、0又は1を表す。mは4〜12の整数を表す。複数のTfは同一にグリシジル基又はCH=CH−C(O)−を表す。
【0009】
本発明はまた、上記光学接着剤組成物を使用して光部品を接着する光部品の接着方法、及び、上記光学接着剤組成物を使用して光ファイバーと光部品とが接着されてなる光デバイスでもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の構成により、低屈折率を達成でき、しかも、低粘度、速硬化、耐熱性に優れる。
本発明は上述の構成により、硬化前の液状において測定された25℃における屈折率(D線屈折率。本明細書においてnと表記する。)1.31〜1.41を達成する。
本発明は上述の構成により、硬化物のTgが30〜110℃を達成する。
本発明は上述の構成により、より低い屈折率要求に対応できる使い勝手のよい光学接着剤を実現できる。
本発明は上述の構成により、伝送損失を低減可能な光部品の接着方法及び光デバイスを実現できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の光学接着剤組成物は、上記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種及び光重合開始剤からなる。上記一般式(I)において、複数のaは同一に、0又は1を表す。複数のbは同一に、0又は1を表す。これらのうちには、aが0であるもの、aが1であるもの、これらのそれぞれの場合に、bが0であるもの、及びbが1であるもの、がある。
【0012】
上記一般式(I)で示される化合物の具体例として、両端のTfを除いた構造のみを例示すれば、Tfがグリシジル基のとき、−(CF−、−(CH)−(CF−(CH)−、−O−(CF−O−、−O−(CH)−(CF−(CH)−O−である。mは4〜12、好ましくは6〜10の整数を表す。TfがCH=CH−C(O)−のとき、−(CF−、−(CH)−(CF−(CH)−、−O−(CF−O−、−O−(CH)−(CF−(CH)−O−である。mは4〜12、好ましくは6〜10の整数を表す。これらのうち、硬化速度の観点からは、aが1であるものが好ましい。本発明の光学接着剤組成物においては、これらの化合物の1種のみを使用することも2種以上を併用することもできる。光硬化性の観点からは、好ましくは、TfがCH=CH−C(O)−のもののみ、又は、TfがCH=CH−C(O)−のものとグリシジル基のものとの併用である。
【0013】
本発明の組成物には、さらに、必要に応じて、下記一般式(II)で示される化合物の少なくとも1種を含有させることができる。
Xf−(O)−(CH−(CF−A (II)
式中、cは0又は1を表す。dは0〜2の整数を表す。nは1〜11の整数を表す。Xfはグリシジル基又はCH=CH−C(O)−を表す。AはH又はFを表す。
【0014】
上記一般式(II)で示される化合物としては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカンフルオロデシルアクリレート、3−(1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニロイル)−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロオクチル)−1,2−エポキシプロパン等が挙げられる。これらの化合物は1種のみ使用してもよく又は2種以上を併用することもできる。
【0015】
上記一般式(II)で示される化合物の配合量は、上記一般式(I)で示される化合物との合計100重量部あたり40重量部未満であることが、組成物の光硬化性の観点から好ましい。より好ましくは35重量部未満である。
【0016】
上記一般式(I)で示される化合物、一般式(II)で示される化合物の製造方法は、末端Tf又はXfがエポキシ基であるものを例にとれば、例えば、パーフルオロ基含有ジ又はモノアルコールにハロゲン化エポキシプロピルを反応させればよく、又は、パーフルオロ基含有ジ又はモノアルコールにハロゲン化アリルを反応させた後に、過蟻酸、過酢酸、過プロピオン酸等の過酸で酸化させてもよい。Tf又はXfがCH=CH−C(O)−であるものは、例えば、パーフルオロ基含有ジ又はモノアルコールにアクリル酸をエステル反応させればよい。
【0017】
本発明の光学接着剤組成物に使用される光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤のいずれであってもよく、又は、両者の併用であってもよい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、チオキサントン類等がある。光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等がある。これらを具体的に例示すれば、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾインイソブチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン、α,α−ジメトキシ−α−ヒドロキシ−アセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等の光ラジカル重合開始剤;ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボレート、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、トリアリルセレニウム塩、トリアリルピリリウム塩、ベンジルピリジウムチオシアネート、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアルキルヒドロキシフェニルスルホニウム塩、メタロセン化合物等の光カチオン重合開始剤などが挙げられる。これらは1種のみ、又は2種以上を併用することができる。なお、スルホニウム塩では、UV照射だけでは十分な硬さが得られないことがある。一方、ヨードニウム塩は、単独もしくは、増感剤を併用することにより、速硬化が可能であり、紫外線硬化のみでも十分な硬さを得ることが可能である。
【0018】
光重合開始剤の添加量は、組成物中の光重合性化合物100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部であり、特に好ましくは0.5〜5重量部である。
【0019】
更に、必要に応じ、増感剤として、例えば、アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジブトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン等を使用することができる。
【0020】
これら増感剤の添加量は、光重合開始剤100重量部に対して、好ましくは1〜200重量部であり、特に好ましくは10〜100重量部である。
【0021】
本発明の組成物には、本発明の目的を阻害しないかぎり、接着剤に通常使用されるその他の添加剤を使用することができる。このような添加剤としては、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、粘着剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤を添加することは、無機光ファイバーとの馴染みを向上できるという効果がある。シランカップリングとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。このようなその他の成分は、特に、下記の屈折率、Tg、粘度等の各特性を阻害しない範囲で使用され得る。
【0022】
上記その他の添加剤の配合量は、本発明の組成物100重量部中、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは5重量部以下である。
【0023】
本発明の組成物においては、硬化前の液状において測定された25℃における屈折率(n)は、硬化性や接着性とのバランスの観点から、1.31〜1.41であることが好ましい。より好ましくは1.35〜1.40である。
【0024】
本発明の組成物において、上記シランカップリング剤の添加は屈折率を高める作用を発揮する。逆に、上記一般式(II)で示される化合物の添加は屈折率を低める作用を発揮する。従って、これらの成分を適宜使用することにより、本発明の組成物の屈折率を、上述の範囲に調節することができる。
【0025】
本発明の組成物は、その硬化物のTgが30〜110℃であることが好ましい。30℃未満であると、接着後、加熱された場合に柔らかくなり、接着強度が低下しやすい。また、110℃を超えると、硬すぎて衝撃が加わると簡単に剥がれやすい。より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃である。
【0026】
本発明の組成物は、25℃における粘度が10mPa・s以上で2000mPa・s以下が好ましい。この範囲より粘度が低すぎると塗布しずらく、逆に、粘度が高すぎると、狭い隙間に接着剤が十分に侵入していかない。上限はより好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは200mPa・s以下である。
【0027】
本発明の接着剤組成物の製造方法にはとくに限定はなく、原料が均一に混ざり合うように混合すればよい。例えば、一般式(I)のアクリレート化合物やエポキシ化合物、一般式(II)のアクリレート化合物やエポキシ化合物、光重合開始剤、カップリング剤、その他必要成分を配合混合し、常法に従い、加熱減圧下で、攪拌混合し、脱泡処理を行う。条件としては、40〜80℃、1〜20torrの減圧下で、30分から2時間、攪拌混合を行う。
【0028】
本発明の組成物は、UV照射により好適に硬化することができる。一般式(I)のアクリレート化合物、一般式(II)のアクリレート化合物は、硬化性が良好であり、例えば、6.0J/cm未満の照射であっても充分に硬化可能である。一般式(I)のエポキシ化合物、一般式(II)のエポキシ化合物も、硬化性が良好であり、6.0J/cmの照射であっても充分に硬化可能である。もっとも、エポキシ化合物の場合、光重合開始剤によっては、加熱硬化を併用することができるので、その際には、例えば、80℃/1時間程度の加熱硬化を併用することができる。
【0029】
本発明の組成物は、光ファイバーとコネクター類等の光部品とを、又は、光部品同士を、接着固定することにより、極めて低屈折率の光接続部分を構成することができるので、光接続部分が増加しても、伝送損失の増加を抑制することができて、極めて有利な光部品の接着方法となる。すなわち、上記光学接着剤組成物を使用して光ファイバーと光部品とが接着されてなる光デバイスを使用するならば、該光デバイスは極めて低屈折率の光接続部分から構成されているので、累積的に光デバイスを使用しても光伝送損失の増加を抑制することができる。
【0030】
以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
実施例1〜6、比較例1〜2
表1の配合(重量部)で各成分を混合して接着剤を常法により調製した。
なお、表中の成分の略号は以下のとおりである。
FA−16:共栄社化学工業(株)社製のアクリレート化合物(一般式(I)において、a=1、b=1、m=8のアクリレート化合物)である。
FE−16:共栄社化学工業(株)社製のエポキシ化合物(一般式(I)において、a=1、b=1、m=8のエポキシ化合物)である。
H022:東ソー・エフテック(株)社製のエポキシ化合物(一般式(I)において、a=0、b=0、m=4のエポキシ化合物)である。
H010:東ソー・エフテック(株)社製のエポキシ化合物(一般式(II)において、c=0、d=0、n=8、A=Fのエポキシ化合物)である。
CEOX2021P:脂環型エポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)社製、セロキサイド2021P(商品名))。
IC651:イルガキュア651(商品名)、チバスペシャルティケミカルズ社製光ラジカル重合開始剤
IC184:イルガキュア184(商品名)、チバスペシャルティケミカルズ社製光ラジカル重合開始剤
A2074:フォトイニシエーター2074(商品名)、ローディア・ジャパン社製光カチオン重合開始剤
UVI6976:ダウケミカル日本(株)製光カチオン重合開始剤
【0032】
評価方法
粘度:25℃に温調された液状接着剤をE型(Lタイプ)回転式粘度計にて、5rpm回転速度で、粘度を測定した。
屈折率:(株)アタゴ社製のデジタル屈折計RX−5000を用い、25℃でナトリウムのD線(589nm)を用いて測定した。
Tg:セイコーインスツルメント(株)社製のDMSにて、100μm厚みのテストピースをずりモードを用いて、Tanδのピーク値とした。
接着強度:接着組成物をアルカリガラス板に約20μm厚みで塗布し、両者を合わせてから、UVランプにて50mW/cmの照射エネルギーで60秒間照射したのち、両者を引張試験機で引張せん断接着強度(N/mm)を測定した。なお、比較例2は、UV照射のみでは硬化せず、80℃/1時間加熱したが硬化不全でTgの測定は不可能であった。
硬化性:50mW/cmの照射エネルギーで60秒間照射した場合に硬化物がえられるときを○とし、硬化物がえられないときを×とした。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例1〜6から、本発明の組成物は、低粘度、低Tg(実施例では概ね90℃未満)であり、優れた硬化性と接着強度を有しているのみならず、特に、組成物自体の屈折率が極めて低い値(実施例では概ね1.38以下)を達成していることが判る。これに対して、従来の組成物である比較例1は屈折率が1.5と高く、しかもTgが高い。また、比較例2は屈折率自体は低いものの硬化性が悪く接着剤としては使用できないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の光学接着剤は、低屈折率であって、しかも、低粘度、速硬化、耐熱性、接着強度等の各種性能を満たすので、光通信分野を始めとする光ファイバー使用分野における光素子の接続に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種及び光重合開始剤からなることを特徴とする光学接着剤組成物。
Tf−(O)−(CH−(CF−(CH−(O)−Tf (I)
(式中、複数のaは同一に、0又は1を表す。複数のbは同一に、0又は1を表す。mは4〜12の整数を表す。複数のTfは同一にグリシジル基又はCH=CH−C(O)−を表す。)
【請求項2】
TfがCH=CH−C(O)−である一般式(I)で表される化合物及び及び光重合開始剤からなる請求項1記載の組成物。
【請求項3】
更に、Tfがグリシジル基である一般式(I)で表される化合物を含有する請求項2記載の組成物。
【請求項4】
更に、下記一般式(II)で示される化合物の少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
Xf−(O)−(CH−(CF−A (II)
(式中、cは0又は1を表す。dは0〜2の整数を表す。nは1〜11の整数を表す。Xfはグリシジル基又はCH=CH−C(O)−を表す。AはH又はFを表す。)
【請求項5】
一般式(II)で示される化合物の配合量は、前記一般式(I)で示される化合物との合計100重量部あたり40重量部未満である請求項4記載の組成物。
【請求項6】
硬化前の液状において測定された25℃における屈折率(n)は、1.31〜1.41である請求項1〜5のいずれか記載の組成物。
【請求項7】
硬化物のTgは、30〜110℃である請求項1〜6のいずれか記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の光学接着剤組成物を使用して光部品を接着することを特徴とする光部品の接着方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか記載の光学接着剤組成物を使用して光ファイバーと光部品とが接着されてなることを特徴とする光デバイス。


【公開番号】特開2006−8809(P2006−8809A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186767(P2004−186767)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】