説明

光学接続部品の製造方法及びそれに用いる製造装置

【課題】光伝送媒体の端面にのみ適正な量の屈折率整合体を再現性よく設けることができ、良好な光学接続構造を形成することができる光学接続部品の製造方法及びそれに用いる製造装置を提供する。
【解決手段】光伝送媒体の端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造方法において、光伝送媒体及び誘電体の近傍に配置された帯電手段により、該光伝送媒体を帯電させる工程と、屈折率整合体を該光伝送媒体の端面に供給する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送媒体の接続端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造方法及びそれに用いる製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光伝送媒体の光学接続方法としては、光ファイバの接続端面に、光ファイバのコアと同等あるいは近似した屈折率を有する液状又はグリース状の屈折率整合体を介在させて、光ファイバ同士又は光ファイバと光学部品とを接続する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、光ファイバ端面に屈折率整合体を塗布し、この屈折率整合体に光ファイバ又は光学部品を突き合わせることによって、接続端面への空気の侵入を防ぎ、空気によって生じるフレネル反射を回避し、接続損失を低減することができる。
【0003】
しかしながら、この方法では、非常に小さな面積である光ファイバ端面に、規定量の液状又はグリース状屈折率整合体を塗布することとなるため、屈折率整合体の塗布量が少なすぎると、良好な光学接続構造を形成することができず、一方、塗布量が多すぎると、光ファイバ側面にまで屈折率整合体が回り込んでしまい、接続部周囲の汚染や、それによる埃などの付着が問題となる。
【0004】
また、他の光学接続方法としては、互いに対向する光伝送媒体の端面間、または光伝送媒体の端面と光学部品との間に、屈折率整合性を有する固形の粘着性接続部材を単一層の状態で密着して介在させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、この技術では、固形の屈折率整合体を挟み込む構成であるため、接続の際の圧力調整が困難であり、接続される光伝送媒体に折れや破損が生じるという問題がある。また、挟み込む前に予め屈折率整合体を保持しておく構造を備える必要もあった。
【0006】
これらの問題を解決する技術として、光伝送媒体と液状屈折率整合体の少なくとも一方を帯電させた状態で、その端面を液状屈折率整合体の液面に近接させ、液状屈折率整合体を光伝送媒体の端面に吸着させた後、吸着された液状屈折率整合体を固化させて屈折率整合体とする光学接続部品の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
しかしながら、この製造方法では、光伝送媒体の端面への液状屈折率整合体の吸着量を厳密に制御することができないという問題を有している。
【0008】
【特許文献1】特開昭64−65512号公報
【特許文献2】特開2005−173575号公報
【特許文献3】特開2007−183383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、光伝送媒体の端面にのみ適正な量の屈折率整合体を再現性よく設けることができ、良好な光学接続構造を形成することができる光学接続部品の製造方法及びそれに用いる製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の光学接続部品の製造方法は、光伝送媒体の端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造方法において、光伝送媒体及び誘電体の近傍に配置された帯電手段により、該光伝送媒体を帯電させる工程と、屈折率整合体を該光伝送媒体の端面に供給する工程とを備えることを特徴としている。なお、本発明においては、屈折率整合体を溶媒に溶解又は分散させた状態を液状屈折率整合体としている。
【0011】
また、本発明の第1の光学接続部品の製造装置は、光伝送媒体を載置する光伝送媒体保持手段と、光伝送媒体の近傍に配置された帯電手段とを備え、上記光伝送媒体保持手段及び帯電手段近傍に誘電体を配置したことを特徴としている。
【0012】
本発明の第2の光学接続部品の製造方法は、光伝送媒体の端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造方法において、液状屈折率整合体を貯留するための凹部と、供給する液状屈折率整合体を適正な量にするためのスリットとを設けた屈折率整合体貯留手段を用い、上記凹部に液状屈折率整合体を供給する工程と、上記光伝送媒体を帯電手段により帯電させる工程と、上記液状屈折率整合体を上記光伝送媒体の端面に供給する工程とを備えることを特徴としている。なお、本発明においては、屈折率整合体を溶媒に溶解又は分散させた状態を液状屈折率整合体としている。
【0013】
また、本発明の第2の光学接続部品の製造装置は、光伝送媒体を載置する光伝送媒体保持手段と、光伝送媒体の近傍に配置された帯電手段と、液状屈折率整合体を貯留するための凹部と、供給する液状屈折率整合体を適正な量にするためのスリットとを設けた屈折率整合体貯留手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
本発明の第3の光学接続部品の製造方法は、光伝送媒体の端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造方法において、帯電手段により該光伝送媒体を帯電させる工程と、液状屈折率整合体を該光伝送媒体の端面に供給する工程とを備え、上記液状屈折率整合体は、粘度が0.005Pa・s以上1000Pa・s以下であり、上記帯電させる工程は、湿度40%RH以下の環境下で行われることを特徴としている。なお、本発明においては、屈折率整合体を溶媒に溶解又は分散させた状態を液状屈折率整合体としている。
【0015】
また、本発明の第3の光学接続部品の製造装置は、光伝送媒体を載置する光伝送媒体保持手段と、光伝送媒体の近傍に配置された帯電手段と、湿度40%RH以下の環境を調整する湿度調整手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の光学接続部品の製造方法によれば、液状屈折率整合体を供給する光伝送媒体及び帯電手段近傍に誘電体を配置することにより、光伝送媒体に付与された静電気を光伝送媒体端面付近に安定させ、液状屈折率整合体を光伝送媒体の端面にのみ再現性よく供給することができ、これにより、光伝送媒体側面への屈折率整合体の回り込みを防ぐとともに、光伝送媒体を光コネクタに組み込む際に高い芯出し精度が得られることから、良好な光学接続構造を形成することができる。また、本発明の第1の光学接続部品の製造装置によれば、液状屈折率整合体を供給する光伝送媒体及び帯電手段近傍に誘電体を配置することにより、光伝送媒体に付与された静電気を安定させ、液状屈折率整合体を光伝送媒体の端面にのみ再現性よく供給することができる。
【0017】
本発明の第2の光学接続部品の製造方法によれば、液状屈折率整合体を貯留するための凹部と、光伝送媒体の端面に供給する液状屈折率整合体を適正な量に制御するためのスリットとを設けた屈折率整合体貯留手段を用いることにより、適正な量の屈折率整合体を光伝送媒体の端面にのみ再現性よく供給することができ、これにより、光伝送媒体側面への屈折率整合体の回り込みを防ぐとともに、光伝送媒体を光コネクタに組み込む際に高い芯出し精度が得られることから、良好な光学接続構造を形成することができる。また、本発明の第2の光学接続部品の製造装置によれば、屈折率整合体貯留手段に、液状屈折率整合体を貯留するための凹部と、光伝送媒体の端面に供給する液状屈折率整合体を適正な量に制御するためのスリットとが設けられているため、光伝送媒体の端面に供給する液状屈折率整合体を適正な量に制御することができる。
【0018】
本発明の第3の光学接続部品の製造方法によれば、液状屈折率整合体の粘度を0.005Pa・s以上1000Pa・s以下とし、帯電工程を湿度40%RH以下の環境下で行うことにより、光伝送媒体端面への適正な量の液状屈折率整合体の供給の再現性を飛躍的に向上することができる。その結果、光伝送媒体側面への屈折率整合体の回り込みを防ぐとともに、光伝送媒体を光コネクタに組み込む際に高い芯出し精度が得られることから、良好な光学接続構造を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(1)第1実施形態
次に、図面を用いて本発明の光学接続部品の製造方法及びそれに用いる製造装置の第1実施形態について具体的に説明する。図1及び図2は本発明の第1の光学接続部品の製造装置の一実施形態を示した上面図及び側面図であり、光伝送媒体として光ファイバが用いられている。本発明の第1の光学接続部品の製造装置においては、図1及び2に示すように、光ファイバ1が光伝送媒体保持手段2上に載置されており、光ファイバ1の屈折率整合体を供給する端面近傍に、光ファイバ1に接触しない配置で帯電手段3が設けられており、さらに、誘電体4が配置されている。そして、光伝送媒体保持手段2及び帯電手段3は、フレーム5に対して移動可能な移動手段6上に並置されており、この移動手段6により、光ファイバ1の端面を屈折率整合体貯留手段7に近接離反させることが可能となっている。以下、これらの各構成要素についてより詳細に説明する。
【0020】
本発明に用いられる光伝送媒体としては、光ファイバ、光導波路等、光を伝送するものであれば如何なるものでもよい。光ファイバとしては、石英、プラスチック等のいずれの材料からなるものであってもよく、用途に応じて適宜選択することができる。本発明における光ファイバは、コアとクラッドとからなる光ファイバ素線の周囲を樹脂で被覆したものであるが、光学部材と接する端部については、先端より数十mmの部分の被覆が除去され、そして先端がカットされている。本発明においては、カットされた光ファイバの先端が斜めカットされたものや丸型のものであっても、光ファイバ端面に屈折率整合体のと膜を良好に形成することができるので何等問題はない。光導波路としては、ポリイミド光導波路、PMMA光導波路、エポキシ光導波路などが利用できる。さらに、本発明においては、光学接続部品の製造前に、静電ブラシ等を用いて光伝送媒体を除電することが好ましい。このような除電により、液状屈折率整合体の光伝送媒体端部への供給が良好となる。
【0021】
本発明における屈折率整合体は、光接続すべき光伝送媒体と光伝送媒体又は光学部品のいずれかの屈折率と同等又は近似した屈折率を有し、この屈折率整合体を介して光伝送媒体と光伝送媒体又は光学部品とを光接続することにより、接続損失を低減することができるものである。本発明における屈折率整合体の屈折率は、光伝送媒体の屈折率に近いものであれば特に限定されないが、フレネル反射の回避による伝送損失の面からそれらの屈折率の差が、±0.1以内であることが好ましく、±0.05以内であるものが特に好ましく使用される。なお、光伝送媒体の屈折率と光伝送媒体又は光学部品の屈折率との差が大きい場合には、これらの屈折率の平均値と屈折率整合体の屈折率が上記の範囲内であることが好ましい。
【0022】
屈折率整合体としては、光伝送媒体又は光学部品に接触した際、これらに適度なタック性を伴って密着する部材であればよい。好ましくは、光伝送媒体等との間で脱着性を有し、凝集破壊せず、取り外した光伝送媒体等に粘着性物質が付着しない材料がよい。このような材料からなる屈折率整合体によれば、光伝送媒体等の面が不均一でバリ等があっても屈折率整合体に傷が付き難く、かつ表面にタック性を有することで、光伝送媒体等の面に容易に密着させ、これを保持することができる。その上、光伝送媒体等を密着させる際に過剰な押圧力を加える必要がなく、光伝送媒体の折れや破損等が生じるおそれもない。また、再剥離性を有することで、複数回の着脱を行っても繰り返し使用することも可能である。
【0023】
屈折率整合体の材料としては、具体的には、高分子材料(例えばアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系等の各種粘着材料)の使用が好ましい。中でも、耐環境性及び接着性の面から、シリコーン系及びアクリル系が特に好ましい。また、架橋剤、添加剤、軟化剤、粘着調整剤等の添加により適宜に接着力、濡れ性を調節してもよく、また、耐水性や耐湿性、耐熱性を付加してもよい。また、液状屈折率整合体の粘度としては、特に限定されないが0.005〜200Pa・s程度が好ましい。
【0024】
さらに、本発明における屈折率整合体は、単一の層から構成されている。これは、複数層のもののように異種材料が接する界面が内部に存在しないという意味であり、光の波長オーダで均一に混ざり合った系を排除するものではない。すなわち、屈折率整合体は、粘着性を持つ単一の層からなる極めて単純な構成を有しており、このような単層構造の部材を用いることで、光反射が起きることなく光伝送媒体等を接続でき、低損失な接続を行うことが可能となる。
【0025】
本発明における光伝送媒体保持手段は、光伝送媒体を保持するとともに、帯電手段により静電気が光伝送媒体に付与された際に、光伝送媒体を絶縁状態に維持する作用がある。そのため、光伝送媒体保持手段は、絶縁性の材料からなるものが好ましい。また、光伝送媒体保持手段には、光伝送媒体の高精度な位置合わせを可能とするために、V溝が設けられていることが好ましい。
【0026】
本発明における帯電手段としては、光伝送媒体に静電気を付与するものであればいずれのものでも用いることができるが、例えば、静電チャック等の静電誘電装置や、回転摩擦装置等の摩擦帯電装置が挙げられる。本発明においては、光伝送媒体と帯電手段とを接触又は離間させた状態で静電気を付与するが、この離間距離は10mm以下であることが好ましい。離間距離が10mmを超えると、光伝送媒体への静電気の付与が十分に行うことができなくなる。
【0027】
本発明における誘電体は、液状屈折率整合体を供給する光伝送媒体及び帯電手段近傍に配置されており、光伝送媒体に付与された静電気を光伝送媒体端面付近に安定させている。そのため、液状屈折率整合体を光伝送媒体の端面にのみ再現性よく供給することができる。この誘電体4は、図1及び図2においては、光ファイバ1近傍に配置されているが、本発明においては、フェルールとして光ファイバ1に装着してもよい。さらに、本発明における誘電体は、1MHzにおける誘電率が2以上2000以下のものが好ましく、5〜2000のものがより好ましく、10〜2000のものがさらに好ましい。また、本発明における誘電体は、ジルコニア、アルミナからなるものであることが好ましく、さらには、ジルコニアフェルールであることが好ましい。なお、本願における近傍とは、隣接を含むものとする。
【0028】
本発明における移動手段は、光伝送媒体保持手段及び帯電手段が並置されており、例えばモータとボールネジ機構とを組み合わせた駆動手段により、フレームに対して略水平方向に沿って移動させ、光伝送媒体の屈折率整合体を供給する端面を、屈折率整合体貯留手段に近接又は離反させるものである。この移動手段の作動は、制御回路によって電子制御することができる。
【0029】
本発明における屈折率整合体貯留手段7には、図3に示すように、液状屈折率整合体を貯留するための凹部8と、光伝送媒体の端面に供給する液状屈折率整合体を適正な量に制御するためのスリット9とが設けられていることが好ましい。この凹部8への液状屈折率整合体の供給は、例えば、図1及び図2に示すように、ディスペンサ(供給器)10を用いて行うことができる。ディスペンサ10は、シリンダ内に貯留される液状屈折率整合体をノズルを介して凹部8に適宜供給する。この際、ディスペンサ10のノズルを凹部8へ案内する案内溝11を、凹部8に接するように設けてもよい。
【0030】
また、スリット9は、帯電手段3による光伝送媒体端面への静電気付与が行われる前においては、凹部8に供給された液状屈折率整合体が漏れ出ることなく、一方、帯電手段3による光伝送媒体端面への静電気付与が行われた際においては、光伝送媒体端面に適正な量の液状屈折率整合体を供給し得るように、スリット幅が規定されている。本発明においては、スリット幅は、液状屈折率整合体の粘度等により変動するが、10μm以上光伝送媒体の端面幅の10倍以下が好ましく、光伝送媒体の端面幅の0.5〜5倍であることがより好ましい。例えば、端面幅0.25mmの光ファイバに対して0.5mm程度である。
【0031】
さらに、凹部8の形状は、図1においては直方体が示されているが、液状屈折率整合体の除去の観点から、図3に示すような、かまぼこ形の半円柱状や半球状であることが好ましい。さらに、屈折率整合体貯留手段7は、液状屈折率整合体の凹部8への供給、スリットを経ての光伝送媒体端面への供給及び凹部8からの除去の観点から、液状屈折率整合体に対して親和性を有さない材料、例えばテフロン(登録商標)製であることが好ましい。また、ディスペンサ10の作動は、上記駆動手段同様、制御回路によって電子制御することができる。
【0032】
次に、上記のような製造装置を用いた光学部品の製造方法について説明する。まず、光ファイバ1を光伝送媒体保持手段2に設けられたV溝内に配置する。これにより、光ファイバ1は、帯電手段3に近づけた配置となる。また、光ファイバ1及び帯電手段3近傍には、誘電体4が配置されている。そして、移動手段6により、光伝送媒体保持手段2を屈折率整合体貯留手段7方向に移動させ、光ファイバ1の端面を屈折率整合体貯留手段7のスリット9から10〜1000μm離間させた状態に近接させる。離間距離がこの範囲を逸脱すると、適正な量の屈折率整合体が光伝送媒体端面に供給でき難くなり好ましくない。
【0033】
この配置において、ディスペンサ10内の液状屈折率整合体を、屈折率整合体貯留手段7の凹部8に準備供給する。この凹部への液状屈折率整合体の準備供給は、液状屈折率整合体における材料の変化及びごみ混入を防ぐ等の観点から、後述の光伝送媒体への静電気付与工程の直前に行うことが好ましい。
【0034】
次いで、帯電手段3により高電圧を印加して光ファイバ1に静電気を付与する。その際、光ファイバ1に付与された静電気が、誘電体4により光ファイバ1近傍に安定する。すると、光ファイバ1に付与された静電気のクーロン力によって、凹部8に準備供給された液状屈折率整合体が光ファイバ1に引き付けられ、その一部が屈折率整合体貯留手段7のスリット9を介して光ファイバ1の端面に供給される。このように、誘電体4によって光ファイバ1への液状屈折率整合体の供給量が安定して制御されるため、光ファイバ1の端面にのみ液状屈折率整合体を供給することができる。なお、この時点で屈折率整合体は、光ファイバ端面とスリットとの間に表面張力で架け渡されている。
【0035】
その後、印加を止めてから、移動手段6により光伝送媒体保持手段2を移動させて、光ファイバ1の端面を屈折率整合体貯留手段7から離反させ、液状屈折率整合体を切断する。そして、光伝送媒体保持手段2に設けられたV溝内から光ファイバ1を取り出す。次いで、この光ファイバ1を、例えば100℃で1.5時間加熱することにより、液状屈折率整合体の溶媒が揮発されて光ファイバ1の端面にのみ屈折率整合体の被膜が形成される。
【0036】
(2)第2実施形態
次に、図面を用いて本発明の光学接続部品の製造方法及びそれに用いる製造装置の第2実施形態について具体的に説明する。図4及び図5は本発明の第2の光学接続部品の製造装置の一実施形態を示した上面図及び側面図であり、光伝送媒体として光ファイバが用いられている。本発明の第2の光学接続部品の製造装置においては、図4及び図5に示すように、光ファイバ1が光伝送媒体保持手段2上に載置されており、光ファイバ1の屈折率整合体を供給する端面近傍に、光ファイバ1に接触しない配置で帯電手段3が設けられている。そして、光伝送媒体保持手段2及び帯電手段3は、フレーム5に対して移動可能な移動手段6上に並置されており、この移動手段6により、光ファイバ1の端面を屈折率整合体貯留手段7に近接離反させることが可能となっている。屈折率整合体貯留手段7の凹部8の形状は、図4においては直方体が示されているが、液状屈折率整合体の除去の観点から、図3に示すようなかまぼこ形の半円柱状や半球状であることが好ましい。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様な構成要素には同符号を付し、第1実施形態と同様な作用を有する構成要素の説明は省略している。
【0037】
上記のような製造装置を用いた光学部品の製造方法について説明する。まず、第1実施形態と同様に光ファイバ1を光伝送媒体保持手段2に設けられたV溝内に配置する。これにより、光ファイバ1は帯電手段3に近づけた配置となる。そして、移動手段6により、光伝送媒体保持手段2を屈折率整合体貯留手段7方向に移動させ、光ファイバ1の端面を屈折率整合体貯留手段7のスリット9から10〜1000μm離間させた状態に近接させる。離間距離がこの範囲を逸脱すると、適正な量の屈折率整合体が光伝送媒体端面に供給でき難くなり好ましくない。
【0038】
この配置において、ディスペンサ10内の液状屈折率整合体を、屈折率整合体貯留手段7の凹部8に準備供給する。この凹部8への液状屈折率整合体の準備供給は、液状屈折率整合体における材料の変化及びごみ混入を防ぐ等の観点から、後述の光伝送媒体への静電気付与工程の直前に行うことが好ましい。
【0039】
次いで、帯電手段3により高電圧を印加して光ファイバ1に静電気を付与する。すると、光ファイバ1に付与された静電気のクーロン力によって、凹部8に準備供給された液状屈折率整合体が光ファイバ1に引き付けられ、その一部が屈折率整合体貯留手段7のスリット9を介して光ファイバ1の端面に供給される。このように、スリット9によって光ファイバ1への液状屈折率整合体の供給量が安定して制御されるため、光ファイバ1の端面にのみ液状屈折率整合体を供給することができる。なお、この時点で屈折率整合体は、光ファイバ端面とスリットとの間に表面張力で架け渡されている。
【0040】
その後、印加を止めてから、移動手段6により光伝送媒体保持手段2を移動させて、光ファイバ1の端面を屈折率整合体貯留手段7から離反させ、液状屈折率整合体を切断する。そして、光伝送媒体保持手段2に設けられたV溝内から光ファイバ1を取り出す。次いで、この光ファイバ1を、例えば100℃で1.5時間加熱することにより、液状屈折率整合体の溶媒が揮発されて光ファイバ1の端面にのみ屈折率整合体の被膜が形成される。
【0041】
(3)第3実施形態
次に、図面を用いて本発明の光学接続部品の製造方法及びそれに用いる製造装置の第3実施形態について具体的に説明する。本発明の第3の光学接続部品の製造装置は、第1実施形態における図1及び図2と同様であり、光伝送媒体として光ファイバが用いられている。本発明の第3の光学接続部品の製造装置においては、図1及び図2に示すように、光ファイバ1が光伝送媒体保持手段2上に載置されており、光ファイバ1の近傍に帯電手段3が設けられており、さらに、誘電体4が配置されていることが好ましい。そして、光伝送媒体保持手段2及び帯電手段3は、フレーム5に対して移動可能な移動手段6上に並置されており、この移動手段6により、光ファイバ1の端面を屈折率整合体貯留手段7に近接離反させることが可能となっている。屈折率整合体貯留手段7の凹部8の形状は、図1においては直方体が示されているが、液状屈折率整合体の除去の観点から、図3に示すようなかまぼこ形の半円柱状や半球状であることが好ましい。なお、第3実施形態では、第1実施形態と同様な構成要素には同符号を付し、第1実施形態と同様な作用を有する構成要素の説明は省略している。
【0042】
また、本発明における液状屈折率整合体の粘度は、0.005Pa・s以上1000Pa・s以下であることが必須である。より好ましくは0.01Pa・s以上200Pa・s以下である。液状屈折率整合体をこのような範囲の粘度とするとともに、後述する帯電工程における湿度を40%RH以下とすることにより、光伝送媒体端面への適正な量の液状屈折率整合体の供給の再現性を飛躍的に向上することができる。液状屈折率整合体の粘度が1000Pa・sを超えると、光伝送媒体端面への適正な量の液状屈折率整合体の供給の再現性が低下してしまう。また、帯電工程における湿度が40%RHを超えると、光伝送媒体に付与された静電気を光伝送媒体端面付近に安定させることができず、光伝送媒体端面への適正な量の液状屈折率整合体の供給の再現性が低下してしまう。
【0043】
また、本発明においては、既存の湿度調整手段等により、帯電工程を湿度40%RH以下の環境下で行うことが必須である。このような環境下とすることにより、光伝送媒体に付与された静電気を光伝送媒体端面付近に安定させることができ、光伝送媒体端面への適正な量の液状屈折率整合体の供給の再現性が飛躍的に向上する。また、湿度が低い環境では、粘度が0.01Pa・s以上の液状屈折率整合体を用いても再現性が高いので、液状屈折率整合体の溶媒の量を少なくできたり、粘度が高い材料でも自由に選択して用いたりすることができる。
【0044】
本発明では必要に応じて光伝送媒体及び帯電手段近傍に誘電体を配置することが好ましい。本発明における誘電体は、光伝送媒体に付与された静電気を光伝送媒体端面付近に安定させている。そのため、液状屈折率整合体を光伝送媒体の端面にのみ再現性よく供給することができる。この誘電体4は、図1及び図2においては、光ファイバ1と接触しない状態で光ファイバ1端面近傍に配置されているが、本発明においては、フェルールとして光ファイバ1に装着してもよい。さらに、本発明における誘電体は、一般公知のものを用いることができるが、ジルコニアからなるものであることが好ましく、また、ジルコニアフェルールであることが好ましい。
【0045】
次に、上記のような製造装置を用いた光学部品の製造方法について説明する。第3実施形態においては、第1実施形態と同様な方法で光学部品の製造を行う。ただし、帯電手段3により高電圧を印加して光ファイバ1に静電気を付与する際は、湿度40%RH以下の環境下において行う。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の光学接続部品の製造方法について、実施例を用いてさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(1)実施例1
まず、光伝送媒体として、光ファイバ心線(古河電工社製、外径250μm、クラッド外径125μm)を用意し、その一端から20mmの範囲の被覆を除去して光ファイバ素線を剥き出しにした後、上記一端から10mmの部位で光ファイバ素線をカットした。また、n−ブチルアクリレート/メチルアクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(配合比=82/15/2.7/0.3)からなるアクリル系樹脂の30%酢酸エチル溶液100部に、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト)1.0部を混合し、屈折率1.46、粘度0.1Pa・sの液状屈折率整合体を調製した。
【0048】
次いで、図1及び図2に示したように、上記光ファイバを古河電工社製のホルダ(光伝送媒体保持手段)のV溝内に配置して、光ファイバと静電チャック(帯電手段)とを200μm離間した状態とし、さらに、ジルコニアからなる直径1.5〜3.0mm、長さ10mmの筒状の誘電体を、光ファイバ及び帯電手段近傍に配置した。なお、ジルコニアの誘電率は1MHzの条件下で33であった。そして、光ファイバの端面と屈折率整合体貯留手段のスリットとを100μm離間させた状態にした後、屈折率整合体貯留手段の凹部に液状屈折率整合体を準備供給した。なお、スリット幅は0.5mmとした。
【0049】
次に、静電チャックに3kVの電圧を印加して光ファイバに静電気を付与し、凹部内の液状屈折率整合体の一部を、屈折率整合体貯留手段のスリットを通過させて光ファイバの端面に供給させた。その後、印加を止めて1.5秒してから、移動手段によりホルダを移動させて、光ファイバの端面を屈折率整合体貯留手段から離反させ、液状屈折率整合体を切断した。そして、この光ファイバを100℃で1.5時間加熱して液状屈折率整合体の溶媒を蒸発させ、光ファイバの端面にのみ膜厚25μmの屈折率整合体の被膜を形成させて本発明の光学接続部品を製造した。
【0050】
上記のようにして製造した光学接続部品を、屈折率整合体を介して未研磨の光ファイバの端面に突き合わせて接続したところ、その反射減衰量は55dBであり、また、接続損失は0.1dBであった。当該光学接続部品を温度25℃湿度30%で100本製造したところ、端面のみに屈折率整合体を形成できた成功率は96%であった。なお、比較のため誘電体なしで同様に100本製造した場合の成功率は82%であった。よって、本発明の第1の光学接続部品の製造方法によれば、良好な光学接続構造を形成し得ることが示された。
【0051】
(2)実施例2
実施例1と同様にして光伝送媒体および液状屈折率整合体を用意した。次いで、図4及び図5に示したように、実施例1と同様に上記光ファイバを配置した。そして、光ファイバの端面と屈折率整合体貯留手段のスリットとを100μm離間させた状態に近接させた後、屈折率整合体貯留手段の凹部に液状屈折率整合体を準備供給した。
【0052】
実施例1と同様な方法で本発明の光学接続部品を製造した。この光学接続部品を、屈折率整合体を介して未研磨の光ファイバの端面に突き合わせて接続したところ、その反射減衰量は55dBであり、また、接続損失は0.1dBであった。当該光学接続部品を温度25℃湿度30%で100本製造したところ、図6に示すように光ファイバ1の端面のみに屈折率整合体12を形成できた成功率は82%であった。なお、比較のため、スリットを用いず、特開2007−183383号公報の図4のように保護壁を用いて同様に100本製造した場合の成功率は20%であった。残り80%は、図7に示すように屈折率整合体12が光ファイバ1の端面のみならず側面にまで回り込んでしまっていた。よって、本発明の第2の光学接続部品の製造方法によれば、良好な光学接続構造を形成し得ることが示された。
【0053】
(3)実施例3
湿度40%RH環境とした以外は、実施例1と同様な方法で光学接続部品を製造した。
【0054】
(比較例1)
湿度50%RH環境とした以外は、実施例1と同様な方法で光学接続部品を製造した。
【0055】
(比較例2)
液状屈折率整合体を3日間放置して半硬化させ、粘度1200Pa・s以上としたものを用いた。それ以外は実施例1と同様にしたところ、屈折率整合体が光伝送媒体の端面に付着せず、光学接続部品を製造することができなかった。
【0056】
実施例3並びに比較例1及び2における製造方法をそれぞれ100回繰り返し、その成功率を調べた。なお、屈折率整合体が光ファイバの側面に回り込まず、かつ端面に適正な量付着しているものを成功とした。その結果、実施例3では成功率88%と再現性が飛躍的に向上している。これに対し、比較例1では光ファイバの側面への回り込みが多数発生して成功率が16%に留まり、比較例2ではそもそも製造できなかった。
【0057】
また、実施例3の製造方法を用いた光学接続部品に対して、屈折率整合体を介して未研磨の光ファイバの端面に突き合わせて接続したところ、その反射減衰量は55dBであり、また、接続損失は0.1dBであった。よって、本発明の第3の光学接続部品の製造方法によれば、良好な光学接続構造を形成し得ることが示された。
【0058】
なお、以下の表1に実施例・比較例の主な条件を示し、表2にそれらの結果を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の光学接続部品の製造装置の一実施形態を示した上面図である。
【図2】本発明の第1の光学接続部品の製造装置の一実施形態を示した側面図である。
【図3】本発明の第1の光学接続部品の製造装置における屈折率整合体貯留手段の一実施形態を示した斜視図である。
【図4】本発明の第2の光学接続部品の製造装置の一実施形態を示した上面図である。
【図5】本発明の第2の光学接続部品の製造装置の一実施形態を示した側面図である。
【図6】本発明の第2の光学接続部品の製造方法により屈折率整合体が光伝送媒体の端面のみに供給された構成を示した側面図である。
【図7】特開2007−183383号公報に開示された光学接続部品の製造方法により屈折率整合体が光伝送媒体の端面のみならず側面に回り込んで供給された構成を示した側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1…光ファイバ、2…光伝送媒体保持手段、3…帯電手段、4…誘電体、5…フレーム、
6…移動手段、7…屈折率整合体貯留手段、8…凹部、9…スリット、
10…ディスペンサ、11…案内溝、12…屈折率整合体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送媒体の端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造方法において、
光伝送媒体及び誘電体の近傍に配置された帯電手段により、該光伝送媒体を帯電させる工程と、
屈折率整合体を該光伝送媒体の端面に供給する工程とを備えることを特徴とする光学接続部品の製造方法。
【請求項2】
前記誘電体の1MHzにおける誘電率は、2以上2000以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学接続部品の製造方法。
【請求項3】
前記誘電体は、ジルコニアからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の光学接続部品の製造方法。
【請求項4】
前記誘電体は、光伝送媒体に装着されたジルコニアフェルールであることを特徴とする請求項1に記載の光学接続部品の製造方法。
【請求項5】
光伝送媒体を載置する光伝送媒体保持手段と、
光伝送媒体の近傍に配置された帯電手段とを備え、
上記光伝送媒体保持手段及び帯電手段近傍に誘電体を配置したことを特徴とする光学接続部品の製造装置。
【請求項6】
前記誘電体の1MHzにおける誘電率は、2以上2000以下であることを特徴とする請求項5に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項7】
前記誘電体は、ジルコニアからなるものであることを特徴とする請求項5に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項8】
前記誘電体は、光伝送媒体に装着されたジルコニアフェルールであることを特徴とする請求項5に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項9】
光伝送媒体の端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造方法において、
液状屈折率整合体を貯留するための凹部と、供給する液状屈折率整合体を適正な量にするためのスリットとを設けた屈折率整合体貯留手段を用い、
上記凹部に液状屈折率整合体を供給する工程と、
上記光伝送媒体を帯電手段により帯電させる工程と、
上記液状屈折率整合体を上記光伝送媒体の端面に供給する工程とを備えることを特徴とする光学接続部品の製造方法。
【請求項10】
前記帯電手段は、静電チャックであることを特徴とする請求項9に記載の光学接続部品の製造方法。
【請求項11】
前記スリットは、幅が10μm以上光伝送媒体の端面幅の10倍以下であることを特徴とする請求項9に記載の光学接続部品の製造方法。
【請求項12】
前記凹部は、半円柱状又は半球状であることを特徴とする請求項9に記載の光学接続部品の製造方法。
【請求項13】
光伝送媒体を載置する光伝送媒体保持手段と、
光伝送媒体の近傍に配置された帯電手段と、
液状屈折率整合体を貯留するための凹部と、供給する液状屈折率整合体を適正な量にするためのスリットとを設けた屈折率整合体貯留手段とを備えたことを特徴とする光学接続部品の製造装置。
【請求項14】
前記帯電手段は、静電チャックであることを特徴とする請求項13に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項15】
前記スリットは、幅が10μm以上光伝送媒体の端面幅の10倍以下であることを特徴とする請求項13に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項16】
前記凹部は、半円柱状又は半球状であることを特徴とする請求項13に記載の光学接続部品の製造装置。
【請求項17】
光伝送媒体の端面に屈折率整合体を設けてなる光学接続部品の製造方法において、
帯電手段により該光伝送媒体を帯電させる工程と、
液状屈折率整合体を該光伝送媒体の端面に供給する工程とを備え、
上記液状屈折率整合体は、粘度が0.005Pa・s以上1000Pa・s以下であり、
上記帯電させる工程は、湿度40%RH以下の環境下で行われることを特徴とする光学接続部品の製造方法。
【請求項18】
前記液状屈折率整合体は、粘度が0.01Pa・s以上200Pa・s以下であることを特徴とする請求項17に記載の光学接続部品の製造方法。
【請求項19】
前記湿度40%RH以下の環境は、湿度調整手段により調整されることを特徴とする請求項17に記載の光学接続部品の製造方法。
【請求項20】
光伝送媒体を載置する光伝送媒体保持手段と、
光伝送媒体の近傍に配置された帯電手段と、
湿度40%RH以下の環境を調整する湿度調整手段とを備えることを特徴とする光学接続部品の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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