説明

光学材料用樹脂組成物

【課題】高屈折率を実現しながら、密着性及び/又は低カールに優れた光学材料用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】式(1)で表されるフルオレン骨格を有する二官能(メタ)アクリレー化合物(A)と、少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレート化合物(B)とを含有することを特徴とする光学材料用樹脂組成物。


(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基、a及びbは、それぞれ1〜4の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学材料用樹脂組成物に関し、より詳細には、低硬化収縮性、密着性、透明性に優れた高屈折率コーティング材料等に好適な光学材料用樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折率プラスチックは、成形の容易性、軽量等の特徴により、光学関連材料に幅広く用いられている。
高屈折率化を達成する手段としては、樹脂組成物の分子構造中に臭素原子を導入する方法や、フルオレン骨格を有する2官能(メタ)アクリレートを配合する方法が挙げられる(例えば、特許文献1)。
しかし、臭素原子を導入した樹脂は、屈折率が高くなる反面、脆くなりやすく、比重が大きく、耐光性が劣化する等の欠点を有している。
また、フルオレン骨格を有する2官能(メタ)アクリレートの配合によって高屈折率化させると、基材への密着性が低下する。さらに厚膜塗工した際、硬化収縮が大きく、塗工シートがカールしやすくなるため、成形・加工に支障を及ぼすことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−322706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況下において、高屈折率を実現しながら、光学用途へのコーティング材として密着性及び/又は低カールに優れた樹脂組成物が熱望されている。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、高屈折率を実現しながら、密着性及び/又は低カールに優れた光学材料用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光学材料用樹脂組成物は、
式(1)で表されるフルオレン骨格を有する二官能(メタ)アクリレー化合物(A)と、少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレート化合物(B)とを含有することを特徴とする。

(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基、a及びbは、それぞれ1〜4の整数を表す。)
【0006】
このような光学材料用樹脂組成物は、単官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート及びo−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0007】
単官能(メタ)アクリレート化合物(B)成分以外の(メタ)アクリレート化合物(C)をさらに含有することが好ましい。
光重合開始剤(D)をさらに含有することが好ましい。
屈折率が25℃で1.60以上であることが好ましい。
また、本発明の硬化物は、上述した光学材料用樹脂組成物を硬化させることによって得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高屈折率を実現しながら、密着性及び/又は低カールに優れた光学材料用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の光学材料用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と記すことがある)は、上述した式(1)で表されるフルオレン骨格を有する二官能(メタ)アクリレー化合物(A)と、単官能(メタ)アクリレート化合物(B)を含有する。
【0010】
式(1)の化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物(a)〜(h)等が挙げられる。

【0011】

【0012】
なかでも、化合物(a)が好ましい。これを用いた硬化物の屈折率をより向上させることができるとともに、紫外線照射による硬化速度を速めることができるからである。
これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
式(1)の化合物は、当該分野で公知の方法、例えば、特開2008−94987号公報及び特開2001−206863号公報に記載の方法又はこれらに準じた方法等を利用して得ることができる。
【0013】
また、単官能(メタ)アクリレート化合物(B)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、特開2001−139518号等に記載されている(メタ)アクリル酸ベンジルエステル類を用いてもよい。
単官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、当該分野で公知の方法、例えば、特開2001−139518号公報に記載の方法又はこれに準じた方法などによって製造することができる。
【0014】
本発明の樹脂組成物においては、式(1)で表される化合物(A)と単官能(メタ)アクリレート化合物(B)とは、例えば、0.1:1〜10:1程度の重量比で用いることが適しており、0.4:1〜8:1程度の重量比が好ましい。
【0015】
本発明の光学材料用樹脂組成物は、上述した式(1)で表される化合物(A)及び単官能(メタ)アクリレート化合物(B)以外の化合物を含有していてもよい。
なかでも、単官能(メタ)アクリレート化合物(B)以外の(メタ)アクリレート化合物(C)をさらに用いることが適している。
【0016】
このような化合物(C)としては、単官能又は2以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、4−ノニルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性したジペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
なかでも、単官能(メタ)アクリレートとして、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、二官能(メタ)アクリレートとして、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート等が好ましく、多官能(メタ)アクリレートとして、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が好ましい。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
このような(メタ)アクリレート化合物(C)を用いる場合には、(A)+(B)+(C)成分=100重量部に対して、(A)成分は20〜80重量部、(B)成分は10〜70重量部、(C)成分は0〜50重量部であることが適している。ただし、この場合、(A)+(B)成分の合計量を40〜100重量部の範囲内とすることが適しており、50〜100重量部の範囲内とすることが好ましく、60〜100重量部の範囲内とすることがより好ましい。言い換えると、化合物(C)は、本発明の樹脂組成物における樹脂成分の主成分(最も含有重量の多い成分)とならないように含有されることが好ましく、本発明の樹脂組成物における樹脂成分に対して、45重量%程度以下で含有されることが好ましい。
【0021】
本発明の光学材料用樹脂組成物は、さらに、光重合開始剤(D)を含有していてもよい。
光重合開始剤(D)は、紫外線等の活性エネルギー線でラジカルを発生する重合性の開始剤である。このような光重合開始剤(D)としては、例えば、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような光重合開始剤(D)を用いる場合には、本発明の光学材料用樹脂組成物の全重量に対して、0.1〜10重量%程度が適しており、0.5〜6重量%程度が好ましく、2〜6重量%がより好ましい。
【0022】
本発明の光学材料用樹脂組成物には、必要に応じて上記成分以外に、有機溶剤、重合禁止剤、離型剤、レベリング剤等を配合することができる。
有機溶剤としては、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン等が挙げられる。
重合禁止剤としては、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、4−メトキシフェノール(メトキノン)等が挙げられる。
離型剤としては、フッ素系ノニオン界面活性剤、シリコーン系ノニオン界面活性剤、アルキル第4級アンモニウム塩、リン酸エステル、亜リン酸エステル等が挙げられる。
レベリング剤としては、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンとの共重合体、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体等が挙げられる。
等が挙げられる。
【0023】
さらに、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸エステル等の1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル残基を有するヒンダードアミン系光安定剤、
【0024】
テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、n−オクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のヒンダードフェノール系、あるいはジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ビス〔2−メチル−4−{3−n−アルキル(C12又はC14)チオプロピオニルオキシ}−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド等の硫黄系等の3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル残基あるいは3−メチル−6−t−ブチルフェニル残基を有する酸化防止剤、
【0025】
亜リン酸エステル系の脱色剤、
シリコーンオイル等の消泡剤、
アルコール類、グリコール類、脂肪族環状ケトン類、酢酸エステル類等の有機溶剤、
シランカップリング剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、艶消し剤、光増感剤、紫外線吸収剤等の当該分野で公知の添加剤を配合してもよい。
【0026】
なかでも、数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフによるポリスチレン換算値)が200〜600のキシレン樹脂、分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物を配合することが好ましい。このような化合物を配合することにより、基材への密着性を向上させることができる。
【0027】
多官能チオール化合物としては、トリメチロールプロパン−トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトール−ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトブチレート等が挙げられる。なかでも、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−ルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトブチレートが好ましい。これらは透明性の向上にも寄与できる。
【0028】
また、硬化物の色数(APHA)低減のため、青系や紫系の染料や顔料を添加してもよい。
【0029】
本発明の光学材料用樹脂組成物は、屈折率が25℃で1.60以上であることが適しており、1.61以上、さらに1.62以上であることが好ましい。屈折率は、例えば、アッベ屈折率計にて測定することができる。このような屈折率にすることにより、背景の写りこみ又は正面輝度等をより向上させることができる。なお、このような屈折率の調整は、例えば、原料成分の配合比により、任意に調整することができる。
【0030】
本発明の光学材料用樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化物を得ることができる。活性エネルギー線の光源としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、複写用高圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、走査型又はカーテン型電子線加速路による電子線等を挙げることができる。
このような光源を用いて硬化させる場合、活性エネルギー線照射量は300〜3000mJ/cm2程度が適している。なお、樹脂組成物を十分に硬化させるために、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で紫外線等の活性エネルギー線を照射することが望ましい。
【0031】
本発明の光学材料用樹脂組成物は、プラスチックレンズ等のような成形物に硬化させることができる。このような成形物の作製法としては、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体等からなるガスケットと所望の形状の2つの鋳型の間に、樹脂組成物を注入した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して本発明で得られた樹脂組成物を硬化し、硬化物を型より剥離する方法等が挙げられる。
【0032】
また、本発明の光学材料用樹脂組成物は、対象物に対する被覆層として形成してもよい。具体的には、対象物に、刷毛塗り、バーコーター、アプリケーター、ロールコーターあるいはローラーブラシ等により直接塗布する方法、エアースプレー又はエアーレススプレー塗装機等によるスプレー塗布法、シャワーコーター又はカーテンフローコーター等により流し塗りする方法(フローコート)、浸漬法、キャスティング法、スピンコート法を用いる方法などによって、被覆することができる。これらの塗布法は、対象物の材質、形状あるいは用途等に応じて適宜選択することが好ましい。
【0033】
さらに、本発明の光学材料用樹脂組成物をフィルム状に成形してもよい。フィルムの形成は、当該分野で公知の方法、例えば、押し出し成形等、あるいは、適当な基材上に、上述した方法を用いて塗布膜を形成し、硬化させた後に基材を剥離する方法等が例示される。
【0034】
本発明の樹脂組成物及びその硬化物は、屈折率を任意に調整することができる。よって、特に、プリズムレンズシート、フレネルレンズ、眼鏡レンズ、非球面レンズ等の光学プラスチックレンズ用材料として有用である。また、光ディスク、光ファイバー、光導波路等のオプトエレクトロニクス向け用途、印刷インキ、塗料、クリアコート剤、ツヤニス等にも使用することができる。
以下に、本発明の光学材料用樹脂組成物及び硬化物の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
[A成分の合成例]
4つ口フラスコにビス−o−フェニルフェノキシエタノールフルオレン590g、アクリル酸187.2g、p−トルエンスルホン酸30g、トルエン1350g、ハイドロキノンモノメチルエーテル1g及びハイドロキノン0.03gを仕込み、攪拌機、温度計、コンデンサ、分水器を装着した。その後、100〜120℃で還流しながら、理論脱水量を得るまで約5〜6時間脱水エステル化反応を行った。続いて、反応液をアルカリ中和し、10%食塩水で洗浄を行った。洗浄後、減圧濃縮によりトルエンを除去し、白色粉末状の上述した化合物(a)を得た。この化合物の屈折率は25℃で1.647であった。この化合物をFT−IRで分析した結果、1730cm−1にエステル結合起因のカルボニルと、695cm−1にアクリロイル基起因の二重結合の振動を確認した。
【0036】
実施例1
(A)成分として化合物(a)と、(B)成分としてm−フェノキシベンジルアクリレートと、(D)成分としてイルガキュア184(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;チバスペシャルティ(株)製)を使用して、(A):(B):(D)=45:55:3(重量部)で配合し、均一に攪拌して、本発明の樹脂組成物を得た。
得られた樹脂溶液及びその硬化物の物性を表1に示す。
【0037】
実施例2及び3
(A)成分として化合物(a)、(B)成分としてo−フェニルフェノキシエチルアクリレート単体又はm−フェノキシベンジルアクリレートを併用し、(D)成分としてイルガキュア184(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;チバスペシャルティ(株)製)を使用して、実施例1と同様に表1の重量比で配合した。
【0038】
実施例4及び5
(A)成分として化合物(a)、(B)成分としてm−フェノキシベンジルアクリレート単体又はベンジルアクリレートを併用し、(C)成分としてビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、(D)成分としてイルガキュア184(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;チバスペシャルティ(株)製)を使用して、実施例1と同様に表1の重量比で配合した。
【0039】
実施例6及び7
(A)成分として化合物(a)、(B)成分としてm−フェノキシベンジルアクリレート単体又はo−フェニルフェノキシエチルアクリレートを併用し、(C)成分としてビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、(D)成分としてイルガキュア184(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;チバスペシャルティ(株)製)を使用して、実施例1と同様に表1の重量比で配合した。
【0040】
実施例8
(B)成分の重量比を変更した以外、実施例1と同様の組成かつ表1の重量比で配合した。
【0041】
比較例1及び2
(B)成分としてm−フェノキシベンジルアクリレート又はo−フェニルフェノキシエチルアクリレート、(C)成分としてビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、(D)成分としてイルガキュア184(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;チバスペシャルティ(株)製)を使用して、実施例1と同様に表1の重量比で配合した。
【0042】
比較例3
(B)成分としてm−フェノキシベンジルアクリレート及びベンジルアクリレートを併用し、(C)成分としてビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、(D)成分としてイルガキュア184(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;チバスペシャルティ(株)製)を使用して、実施例1と同様に表1の重量比で配合した。
【0043】
比較例4及び5
(B)成分としてベンジルアクリレート、(C)成分としてビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、(D)成分としてイルガキュア184(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;チバスペシャルティ(株)製)を使用して、実施例1と同様に表1の重量比で配合した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
注)
(A)成分:ビス−o−フェニルフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート
(B)成分1:m−フェノキシベンジルアクリレート
(B)成分2:o−フェニルフェノキシエチルアクリレート
(B)成分3:ベンジルアクリレート
(C)成分:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート
(D)成分:ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
※1)屈折率:アッベ屈折率計にて測定
※2)カール性:100μm易接着PETフィルムに膜厚80μmで塗工し、600mJ/cmの紫外線を照射させて硬化したのち、6cm角に切り出し、4隅の反りの高さ(mm)の平均を算出した。
※3)密着性:100μm易接着PETフィルム(東洋紡績(株)製A−4300)に膜厚80μmで塗工し、600mJ/cmの紫外線を照射させて硬化した後、JISK5400に準じた碁盤目セロハンテープ剥離試験を行い、碁盤目の剥離状態を観察し、0/100〜100/100で評価した。
【0047】
表1に示したように、実施例ではいずれも、カール性が小さく、密着性が良好であるとともに、高い屈折率が得られた。
一方、比較例では、屈折率が低く、比較例5はカールによる反りが強く発現された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の光学材料用樹脂組成物及び硬化物は、種々のプラスチック材料による光学用物品、例えば、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター用保護膜、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク用コーティング剤及び接着剤、光ファイバー用コア材及びクラッド材、光ファイバー接続用接着剤、光導波路用コア材及びクラッド材等の種々の物品に応用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるフルオレン骨格を有する二官能(メタ)アクリレー化合物(A)と、少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレート化合物(B)とを含有することを特徴とする光学材料用樹脂組成物。


(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基、a及びbは、それぞれ1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
単官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート及びo−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、単官能(メタ)アクリレート化合物(B)以外の(メタ)アクリレート化合物(C)を含有する請求項1に記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、光重合開始剤(D)を含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項5】
屈折率が25℃で1.60以上である請求項1〜4のいずれか1つに記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の光学材料用樹脂組成物を硬化させることによって得られる硬化物。

【公開番号】特開2011−126991(P2011−126991A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286459(P2009−286459)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【出願人】(591147694)大阪ガスケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】