説明

光学構造体

【課題】 顔料、色素、染料など従来の色材のように一部の光を吸収することによる色(色素色)以外の原理を利用し、どの方向から見ても鮮やかに構造色を発色する、無毒で、化学的に安定な化粧品組成物用の色材を提供する。
【解決手段】 芯物質と芯物質を被覆する皮膜物質とからなる半径500μm以下の球形光学構造体であって、前記球形光学構造体外表面に接する媒体の屈折率と前記皮膜物質の屈折率に応じて、前記球形光学構造体の粒子径と皮膜物質の厚みを所定の範囲に制御することにより、可視光領域の構造色を呈することを特徴とする球形光学構造体を提供する。さらに、前記構造色を呈する球形光学構造体からなる化粧品用色材、及び当該色材を含有する化粧品組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造色を呈することのできる球形光学構造体、及びその化粧品における用途に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品の分野で、化粧料に着色するための色材としては、顔料、色素、染料等が一般的に広く用いられている。それらの色材を化粧料の組成物に一定量混合することによって、使用する対象に顔料、色素を固定したり、あるいは染料で染色したりして、着色を行ってきた。このような従来の顔料、色素、染料等の色材は、色材表面での吸光度の波長依存性、つまり吸収スペクトル特性の違いによって、その色材表面からの反射光の波長特性に違いが生じ、よって観察者から着色の違いを認識される。
【0003】
前記のような色材の場合、着色の多様性を得るために複数の色材を混合することが一般的に試みられる。また、従来は、化粧料として使用する際に、雲母等の無機層状粉末、真珠光沢剤、液晶化合物等の添加物を化粧用組成物に混合して、皮膚、爪、髪等の表面に光沢を付与することが行われている。
【0004】
例えば、パール光沢と干渉色を持つ雲母チタンに酸化鉄、紺青、水酸化クロム、カーミンなどの着色紛体を混合又は被覆した着色パール剤が、化粧品の光沢性着色材としてとして欠くことのできない原料となっている。
【非特許文献1】「機能性化粧品の開発」、シーエムシー社、297-306頁(2000年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の色材を混合することは、それぞれの色材が光を吸収することによる減法混色となることによって、必ずしもそれぞれの色材単独の特性を生かすことができるとは限らず、色材の組み合わせによっては彩度が低下する傾向がある。
【0006】
また、前記無機層状粉末、真珠光沢剤、液晶化合物等の添加物自体は無色、白色であるか、着色の多様性が少ないために、目的の着色を得るために他の色材と組み合わせて使用しなければならない。その場合に、彩度や明度の低い色材との組み合わせから、これらの添加物によって要求される光沢感を生じさせることができるとは限らない。
【0007】
一方、従来の前記組み合わせで彩度が良いとされている前記着色パール剤に混合されている着色紛体は、例えば耐アルカリ性や耐熱性に弱い紺青や耐光性の低いカーミン等、必ずしも化学的安定性に優れているとは限らない。
【0008】
さらに、従来の顔料、色素、染料等は、使用量によっては、皮膚への影響など、人体に対して完全に無毒ではないものも少なくない。
【0009】
したがって、本発明は、従来の色材のように一部の光を吸収することによる着色方法以外の原理を利用し、どの方向から見ても鮮やかに構造色を発色する無毒で、化学的に安定な化粧品組成物用の球形光学構造体と、それらからなる化粧用色材と、それらを含んでなる化粧品組成物を提供することを目的とする。
【0010】
一方、殻構造を有する球形の微粒子を大量に作成する方法の一つとして、マイクロカプセルの製造法が知られている。マイクロカプセルは、芯物質と皮膜とからなり、種々の応用が検討されている。特に化粧品や医薬品の分野においては、組成物中における各種有効成分の安定性向上や徐放性の付与、有効成分から生ずる臭いや味の遮断等に用いられている。例えば、マイクロカプセルに顔料や染料を封入させた青色色材等が知られている(例えば、特表2004−526558号公報特許参照)。しかしながら、従来の顔料や染料を使用することなく、マイクロカプセル自体によって発色させるという試みについては、これまでに行われていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、芯物質と芯物質を被覆する皮膜物質とからなる粒子径500μm以下の球形光学構造体において、前記球形光学構造体外表面に接する外部媒体の屈折率と前記皮膜物質の屈折率に応じて、前記球形光学構造体の粒子径と皮膜物質の厚みを所定の範囲に制御することにより、可視光領域の所望の構造色の発色を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
構造色とは、物質による光の吸収に基づく色素色とは異なり、物質の微細構造に基づいて発色する色であり、光の散乱や干渉と関係している。化粧品においても、多層薄膜構造を有する無機物質粒子が、視る角度によって色が変化する角度依存性色材として使用されている。しかしながら、マイクロカプセル状の球形光学構造体の粒子径あるいは皮膜の厚みを調節して構造色を得た例は報告されていない。
【0013】
本発明の球形光学構造体は、顔料や染料といった従来の着色剤を用いることなく、粒子径及び/又は皮膜物質の厚みに応じた構造色を発色することができる。得られる構造色は独特の透明感があり、種々の化粧品に配合することによって、従来に無い特有の色調を得ることが可能となる。
また、本発明の球形光学構造体は、ポリスチレン等の適当な皮膜物質材料を採用すれば、芯物質(内相)の毒性を抑えることができ、安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の球形光学構造体を構成する芯物質は、皮膜物質との屈折率が異なる材料であればよく、水及びアルコール等の水性溶液又は有機溶媒等の液状物質、及びそれらの混合物、あるいは、或る程度の粘性を有する半液状物質であるものが好ましい。例えば、調製しやすさの点等から、水性物質、特にゼラチン等を溶解させた水溶液等が好適に使用される。また、芯物質は空気(内部が中空)であってもよい。
【0015】
皮膜を構成する材料は、一般のマイクロカプセルを形成するのに従来から使用されている材料であってよく、本発明の球形光学構造体が配合される媒体との屈折率が異なる材料から選択される。例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸エチル等のビニル系ポリマー、ポリカーボネート、ポリウレタン、ナイロン、ポリエステル等の重縮合系ポリマー、酢酸セルロース、エチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系ポリマー、塩化ポリマー、フッ素系ポリマー等の有機ポリマー、ガラス、シリカ、チタニア等の無機材料等が挙げられる。
【0016】
本発明の球形光学構造体は、芯物質と芯物質を被覆する皮膜物質とからなる粒子径500μm以下の球形光学構造体であって、前記球形光学構造体外表面に接する外部媒体の屈折率と皮膜物質の屈折率に応じて、前記球形光学構造体の粒子径と皮膜物質の厚みを所定の範囲に制御することにより、可視光領域の所望の構造色を発色することを特徴としている。
【0017】
また、本発明の球形光学構造体は、芯物質と芯物質を被覆する皮膜物質とからなる粒子径500μm以下の球形光学構造体であって、前記球形光学構造体外表面に接する外部媒体の屈折率nと前記皮膜物質の屈折率nに応じて、前記球形光学構造体の粒子半径Lと皮膜物質の厚みDを制御することによって、
【数1】

を満たすdの値を
【数2】

(ただし、mは0又は自然数)に代入して得られる可視光領域の波長λの構造色を発色することを特徴としている。
【0018】
本願発明の球形光学構造体の粒子半径Lと皮膜物質の厚みD、皮膜物質(屈折率n)、及び前記球形光学構造体外表面に接する外部媒体(屈折率n)の幾何学的関係によって生じる直接光との光路差を説明する図を図1に示す。
【0019】
光線14は、球形光学構造体外表面に接する外部媒体13(屈折率n)から入射し、球形光学構造体10の皮膜11(屈折率n)との境界面である皮膜外壁S1上の点Pにおいてスネルの法則(nsinΘ=nsinΘ)によって導かれる数1にしたがって屈折し、皮膜11の内部に進入する。進入した光線は、皮膜11の皮膜内壁S2上の点Rにて反射され、皮膜外壁S1上の点Uから再び外部媒体13に出射する。この時、点Uにおいて、上記点P−点R−点Uの経路を進んだ光線14と、外部媒体13中を点P−点Uの直線に相当する距離を進んだ光とが干渉する。この時に2光波の間に生ずる光路差(数2の右辺に相当)に対して、数2の左辺を満たす波長λでは、正の干渉効果により光を強め合う条件が成立する。
【0020】
従って、所望の構造色発色の波長λに対して、前記数1及び数2を同時に満たす皮膜の厚みD及び球形光学構造体の粒子半径Lを制御することによって、最適な球形光学構造体を得ることができる。
【0021】
ちなみに、数2の左辺のmは0又は自然数であり、m=0の干渉条件が最も強いので、本願発明の球形光学構造体は主にm=0の条件で設計される。しかし、m=1以上の条件の発色を同時に含んでいても良い。
【0022】
「球形光学構造体外表面に接する外部媒体の屈折率と皮膜物質の屈折率に応じて、前記球形光学構造体の粒子径と皮膜の厚みを所定の範囲に制御する」とは、球形光学構造体外表面に接する外部媒体の屈折率と皮膜物質として選択した物質の屈折率との一つの組み合わせに対して、任意の球形光学構造体の粒子径に対応して、皮膜物質の厚みが所望の構造色を発色させるための一定の範囲内に入るように作製されることを意味している。
【0023】
なお、球形光学構造体外表面に接する外部媒体の屈折率と皮膜物質として選択した物質の屈折率との一つの組み合わせに対して、一つの構造色を発色させる球形光学構造体の粒子径と皮膜の厚みの組み合わせの対は複数存在するが、作製された球形光学構造体の寸法がそれら複数の組み合わせ各々の一定範囲内であっても、結果として所望の構造色を発色すればよい。
【0024】
皮膜の厚みを、所望する構造色の波長λを導く数1及び数2を満たす厚みDと完全に一致させることのみならず、厚みDと略一致する厚みであって、構造色を発色できる厚みにすることも含む。さらに、球形光学構造体の皮膜を光線が通過した後に直接光との間に生ずる光路差が波長の半分(半波長)と同等な場合のみならず、半波長の奇数倍と同等な場合も含むものとする。
【0025】
皮膜の厚みDは、構造色の波長λが短波長(青色)側であって外部媒体の屈折率nと皮膜物質の屈折率nの屈折率差が大きいときに小さくなり、逆に、構造色の波長λが長波長(赤色)側であって外部媒体の屈折率nと皮膜物質の屈折率nの屈折率差が小さいときに大きくなる。外部媒体及び皮膜物質のあらゆる組み合わせを考慮した場合、皮膜の厚みDは50〜700nmの範囲にあることが好ましい。外部媒体が、水、アルコール、空気等の化粧品に用いられる媒体であって、皮膜物質がポリマーである場合には、80〜500nmの範囲が好ましく、特に好ましくは100nm〜300nmの範囲である。
【0026】
粒子径Lは、皮膜の厚みDに比べると構造色の波長λに与える効果は小さいので、発色する構造色の波長に対応した粒子径の制限はない。しかしながら、化粧用の色材、あるいはそれを含有してなる化粧用組成物としての用途において、光沢感、皮膚上のしわの深さ等に対する一般的条件を考慮すると、500μm以下であることが好ましく、構造体の作製、制御条件等も考慮に入れると、1〜500μmの範囲が好ましく、特に好ましくは10〜300μmの範囲である。
【0027】
本発明の球形光学構造体は、従来のマイクロカプセルの調製に用いられている方法に従って作製することができる。例えば、界面重合法、相分離法、界面沈澱法、噴霧乾燥法、流動床法などが知られている。しかしながら、調整方法は従来方法に限定されるものではなく、いかなる方法を用いてもよい。好ましくは、球形光学構造体の粒子径及び/又は皮膜の厚みを所望の範囲に制御することに適した方法がよい。
【0028】
本発明の球形光学構造体にあっては、操作の容易さの点から界面沈澱法を用いるのが好ましい。
【0029】
界面沈澱法は、二次エマルジョン法、あるいは液中濃縮法、液中乾燥法などとも呼ばれているマイクロカプセル化技法である(「マイクロカプセル−その製法・性質・応用−」、近藤保他、三共出版)。具体的には、水/油/水型の複合エマルジョンを用いる水中での界面沈澱法と、油/水/油型の複合エマルジョンを用いる油中での界面沈澱法に分類され、芯物質及び皮膜物質として採用する材料の性質に応じて適宜選択される。
【0030】
芯物質としてゼラチン水溶液を用い、皮膜物質としてポリスチレン等の疎水性有機ポリマーを用いる場合には、水中での界面沈澱法を用いるのが好ましい。詳細には以下の通りである。
約1〜5重量%のポリスチレンの塩化メチレン溶液中に、約4〜8重量%のゼラチン水溶液を分散させた水/油エマルジョン(一次エマルジョン)を形成させる。次いで、当該一次エマルジョンを水中に分散させて水/油/水型の二次エマルジョンを形成させる。次いで任意に、加温、減圧、溶媒抽出、冷凍、乾燥、冷却、乾燥粉末処理などの処理を施し、球形光学構造体を得ることができる。
【0031】
前記界面沈澱法で皮膜物質(疎水性ポリマー)を溶解するための溶媒は、ポリマーの種類に応じて適宜選択されるが、例えば、塩化メチレン(ポリスチレン、ポリカーボネートの場合)、ベンゼン(エチルセルロースの場合)、シクロヘキサン(エチルセルロースの場合)、四塩化炭素(ポリスチレンの場合)などが挙げられる。
【0032】
本発明では、一次エマルジョンを調製する際の皮膜物質の濃度を調節することにより、皮膜の厚みを調節して、所望の構造色を発色するマイクロカプセル状の球状光学構造体を得た。
例えば、約5重量%のポリスチレン溶液(塩化メチレン)を用いた場合には、およそ100〜1000nmの厚みを持つ球形光学構造体を得ることができ、そのような球形光学構造体が水中に分散された二次エマルジョンにおいて、赤色から青色に渡る複数の構造色を発色する球形光学構造体が混在していた。
【0033】
一方、約1重量%のポリスチレン溶液を用いた場合には、青色の構造色を呈する球形光学構造体の比率が増大した。
また、生成された二次エマルジョンは、種々の大きさ(粒子径)の粒子を含んでいたが、構造色を呈する球形光学構造体の粒子径は約1〜200μmであった。しかしながら、球形光学構造体の粒子径と、それが呈する構造色との間には相関は見られなかった。
【0034】
即ち、本発明の球形光学構造体において、その構造色を決定する最大の要因は皮膜の厚みであると考えられる。従って、例えば図2に示すように、青色の構造色を呈する球形光学構造体を得る場合には、溶液中の皮膜物質濃度を低下させ、逆に、赤色の構造色を呈する球形光学構造体を得る場合には、溶液中の皮膜物質濃度を上げることによって所望の波長λの構造色を呈する、数1及び数2を同時に満たす球形光学構造体を得ることができる。
【0035】
さらに、界面沈澱法等の従来のマイクロカプセルの調整法等によって作製された粗構造体を、例えば、濾過、遠心分離等の選別手段を用いて取捨選択することによって、球形光学構造体の粒子径及び/又は皮膜の厚みを所望の範囲に制御してもよい。
【0036】
このようにして得られた球形光学構造体は、界面沈澱法において通常使用される処理を施して乾燥させ、固体粒子として使用してもよいし、二次エマルジョンとして得られた媒体中の分散物として使用してもよい。
【0037】
本発明の球形光学構造体は、独特の透明感のある色調を呈しており、化粧品用色材として化粧品組成物に配合することにより、従来に無い独特の色彩効果を得ることができる。
よって本発明は、前記構造色を呈する球形光学構造体からなる化粧品用色材、並びに、当該色材を含有する化粧品組成物も提供する。
【0038】
本発明の化粧品用色材は、乾燥した粒子の形態でも、媒体中に分散された形態でもよい。また、本発明の化粧品組成物は、前記構造色を呈する球形光学構造体に加えて、化粧品で通常使用されている添加剤、例えば、酸化防止剤、香料、精油、防腐剤、化粧的活性剤、ビタミン、必須脂肪酸、スフィンゴ脂質、DHA等の自己日焼け化合物、サンスクリーン剤を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の組成物は、顔面及び身体の皮膚、粘膜及び/又は爪、睫毛又は毛髪等のケラチン繊維への適用を意図するものである。
これらは、想定されうる化粧品形態、例えば、任意に水を含有していてもよい固体又は柔軟な油性ゲル;固体又はゲル化した水中油型、油中水型又は多重エマルション;水中油型ディスパージョン;多相系、特に2相系とすることができる。それらは、クリーム、軟膏(salve)、ソフトペースト、軟膏剤(ointment)、キャスト又はモールドされた固体、特にスティックの外観を有することができる。それらは特に、スティック又はディッシュの形態;特に透明な無水の硬質ゲルの形態、中でも特に半透明又は透明な無水スティックの形態とすることができる。
【0040】
これらの組成物は、特に身体用衛生組成物、例えばデオドラントスティックの形態として;毛髪用組成物、例えば毛髪用のスタイリングスティック又はメークアップスティックの形態として;顔面又は身体の皮膚用又は粘膜用のメークアップ組成物、例えば口紅、スティック又はディッシュとしてキャストされたファンデーション、フェースパウダー、アイシャドウ、従来の口紅に上塗りする固定ベース、コンシーラースティック、リップグロス、アイライナー、マスカラ又は一時的なタトゥー製品として;皮膚又は粘膜のケア用組成物、例えばリップケアバーム又はベース、身体用軟膏又はデイリーケアクリームの形態として;抗日光組成物又は自己日焼け組成物として;スキンケア組成物、例えばクリーム又は洗顔ゲルとしての用途が見出される。
【実施例】
【0041】
以下に、具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
5重量%のポリスチレン(分子量20万)を含む塩化メチレン溶液200mL中に、4〜8重量%ゼラチン水溶液50mLを乳化し、(W/O)型一次エマルジョン(1)を調製した。
上記とは別に、1重量%のゼラチン水溶液1500mLを用意し、攪拌しながら上記エマルジョン(1)を加え、(W/O/W)型二次エマルジョンとした。
系の温度を約40℃の保ち、塩化メチレンを蒸発させることにより、ポリスチレン殻を持ち、水溶液を芯物質とする球形光学構造体が得られた。
得られた球形光学構造体の光学顕微鏡写真を図3に示す。各球形光学構造体は、その殻の厚みに従って、構造色を呈していた。
得られた各色の球形光学構造体の透過スペクトルを図4に示す。各球形光学構造体からの透過光は、各色に対応した透過光の波長ピークを有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の構造色を呈する球形光学構造体の光学的原理を説明する断面の幾何学図である。
【図2】本発明の赤色及び青色構造色を呈する球形光学構造体の断面を示す模式図である。
【図3】実施例1で得られた球形光学構造体の光学顕微鏡写真である。
【図4】実験例1で得られた各色球形光学構造体の透過スペクトルの比較である。
【符号の説明】
【0043】
10 球形光学構造体
11 皮膜
12 芯
13 外部媒体
14 光線
D 皮膜の厚み
L 球形構造体の粒子半径
O 球形光学構造体の中心点
P 光線の皮膜への入射点
Q 光線の皮膜への入射点と出射点の中間点
R 光線の皮膜内壁S2における反射点
S1 皮膜外壁
S2 皮膜内壁
T 直線OQの延長上のS1の点
U 光線の皮膜からの出射点
d 点Tと点Qの距離
20 赤色球形光学構造体
30 青色球形光学構造体
31 芯
32 皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯物質と芯物質を被覆する皮膜物質とからなる粒子径500μm以下の球形光学構造体であって、前記球形光学構造体外表面に接する外部媒体の屈折率と前記皮膜物質の屈折率に応じて、前記球形光学構造体の粒子径と皮膜物質の厚みを所定の範囲に制御することにより、可視光領域の構造色を呈することを特徴とする球形光学構造体。
【請求項2】
芯物質と芯物質を被覆する皮膜物質とからなる粒子径500μm以下の球形光学構造体であって、前記球形光学構造体外表面に接する外部媒体の屈折率nと前記皮膜物質の屈折率nに応じて、前記球形光学構造体の粒子半径Lと皮膜物質の厚みDを制御することによって、
【数1】

を満たすdの値を

【数2】

(ただし、mは0又は自然数)に代入して得られる可視光領域の波長λの構造色を呈することを特徴とする請求項1記載の球形光学構造体。
【請求項3】
皮膜物質の厚みが、50〜700nmの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の球形光学構造体。
【請求項4】
皮膜物質の厚みが、80〜500nmの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の球形光学構造体。
【請求項5】
皮膜物質の厚みが、100nm〜300nmの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の球形光学構造体。
【請求項6】
1〜500μmの粒子径を有することを特徴とする、請求項1に記載の球形光学構造体。
【請求項7】
10〜300μmの粒子径を有することを特徴とする、請求項1に記載の球形光学構造体。
【請求項8】
芯物質が水、水性液状物質、有機液状物質又はそれらの混合物あるいは空気であり、皮膜物質が有機ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の球形光学構造体。
【請求項9】
芯物質が水性液状物質であり、皮膜物質がポリスチレン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ナイロンから選択される物質であることを特徴とする、請求項8に記載の球形光学構造体。
【請求項10】
液状媒体中に分散された形態で提供されることを特徴とする、請求項1に記載の球形光学構造体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の球形光学構造体からなることを特徴とする、化粧用色材。
【請求項12】
請求項11に記載の色材を含有することを特徴とする、化粧品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−31417(P2007−31417A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340979(P2005−340979)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】