説明

光学機器

【課題】 撮影環境が低温の場合は撮影ができなくなったり、駆動が遅くなったりするような問題があった。撮影環境の気温変化を検知する手段として、新たに温度センサーを搭載することなく、撮影環境に合わせた撮影を可能とする。
【解決手段】 撮影環境の気温変化を検知する手段として、AF時に駆動するレンズの駆動量検出手段から出力されるパルス幅の変化を計測する事により行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器において撮影時の気温変化を検知する方法、及び検知後の光学機器内の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市販されているデジタルカメラ等にはAuto Focus(以降AFと略する)機能やAuto Exposure(以降AEと略する)等の機能が搭載されており、レリーズを押すとフォーカスレンズや絞りを駆動し、合焦・露出の調整が自動で行われる。これらのフォーカスレンズの駆動や絞りの動作は、取り付けられている電池から供給される直流電流を電源としてモータ等を駆動することによって行われている。
【特許文献1】特開平11−52467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、撮影環境が低温の時は、常温の時と同様に電力を供給して起動させようとすると、電池の内部抵抗が常温時に比べて高くなり、更に供給する回路の抵抗は下がり出力電流が増えてしまい、この為に著しく電池の起電力が降下して通常の動作ができなくなってしまう。
【0004】
またAFやAEを駆動させるモータも温度により特性をもち、常温での最適設定を行っている為低温下では最適な制御ができない。
【0005】
これらの原因から撮影環境が低温の場合は撮影ができなくなったり、駆動が遅くなったりするような問題があった。
【0006】
この問題を解決する為に、温度センサー等を取り付け、撮影状況に応じて制御方法を変える事が行われているが、新たに温度センサーつけることにより消費電力増加とカメラ等の光学機器が大型化してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に対して、撮影環境の気温変化を検知する手段として、AF時に駆動するレンズの駆動量検出手段から出力されるパルス幅の変化を計測する事により、新たに温度センサーを搭載することなく温度検知を行い、撮影環境に合わせた撮影が可能となる。
【0008】
パルスエンコーダは従来LED等の光を受光部(フォトトランジスタ、フォトダイオード等)に照射し、そのLEDと受光部の間に、移動体と合わせて駆動するパルス等で遮蔽、開放することにより信号を発生させている。
【0009】
ここで、LEDに流れる電流を制限している回路抵抗が温度変化により変化するため、LEDに流れる電流も変化する。更にLEDに流れる電流変化に伴い発生する光量が変化しパルスエンコーダから出力させる出力信号レベルの平均も変化する。
【0010】
このため、パルスエンコーダ出力をコンパレートしているスレッシュレベルが一定と考えると入力されるエンコーダ出力の変化に伴い生成されるパルス幅、もしくはデューティ比が変化する。
【0011】
このパルス出力の変化より温度変化を検知する事により、新たに温度センサー等を付けずに温度変化を検知することが可能となり、この検知結果に伴い、撮影気温に最適な状態に光学機器の設定を変えることで、常に最適な設定で撮影が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新たに温度センサーを搭載することなく撮影環境の気温変化を検知する事が可能となり、従来と同じサイズで光学機器を設計する事が可能となる。
【0013】
また温度検知をするため、光学機器を撮影環境に適した設定にする事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態として、一眼レフカメラ用交換レンズにAF駆動レンズの駆動量検出部としてパルスエンコーダを使用したモデルの構成を示す図である。
【0018】
1はCPUであり、レンズの駆動量、駆動速度を制御している。2は結像を変化させるために駆動するフォーカスレンズ、3はレンズの駆動量を検出する駆動量検出部、4は駆動量検出部3より出力された信号をパルス信号に変換するための処理回路である。
【0019】
6はフォーカスレンズ1を駆動するためのモータでありDCモータやUSM等を使用する。
【0020】
5はモータ5をCPUからの駆動信号により駆動させるモータードライバである。
【0021】
図2は前記図1に記載されている処理回路4と駆動量検出部3の構成を示した例である。
【0022】
駆動量検出部3として、フォトインタラプタとフォーカスレンズの駆動に連動して回転するパルス板から構成されるパルスエンコーダを使用し、処理回路4として電流コンパレータを使用し、フォトインタラプタからの出力信号をパルス出力に変換する構成である。
【0023】
次に図2を使用して前記フォトインタラプタ出力よりパルス波形を生成する回路について説明する。
【0024】
図2のフォトインタラプタの内部にはLEDとフォトトランジスタが内蔵されており、その間をフォーカスレンズの駆動に連動して回転する明暗のパターンが連続したパルス板が通過する仕組みになっている。
【0025】
パルス板が明のパターンの時にはフォトトランジスタがONして電流が流れ、パルス板が暗のパターンの時にはフォトトランジスタがOFFして電流が流れなくなる。その電流変化を電流コンパレータにて閾値と比較を図3に示すようにパルスを生成している。
【0026】
抵抗1はLEDに流れる電流を制限する制限抵抗です。常温にてパルス幅が設定値になるように定める。更に可変抵抗等を使用して、常温にてパルスのデューティが所定の値になるように調整することも可能である。
【0027】
次に図1、図2、図3を使用して環境変化を検知する具体的な方法について説明する。
【0028】
図2の回路を低温に入れた場合、抵抗1の抵抗値が下がり、この為にLEDに流れる電流が大きくなり、LEDの発光光量も比例して大きくなる。
【0029】
この結果から、フォトトランジスタに流れる電流の平均が増加し、図3に示すように常温の時と比べてパルス幅もしくはデューティ比が変化する。この変化を図1に示すCPU1のタイマー等で計測して、温度変化を検知することが可能となる。
【0030】
高温の場合は同様に抵抗1の抵抗値が上がり、パルス幅は逆の方向に変化する。
【0031】
CPU1にてこの温度変化を検知した際には、前記フォーカスレンズを駆動させるモータの制御を撮影環境に応じた最適な設定で行う。
【0032】
これにより、低温で動作できなくなるような場合も対応する事が可能となる。
【0033】
次に図5を使用して、撮影環境が変化した際の制御方法を説明する。
【0034】
前記CPU1は温度検知をした際に、環境変化により設定を自動切換えするか手動切換えするかを決定する環境変化スイッチが手動の際にはカメラに温度変化を通信にて知らせその後カメラが背面モニタを使用してユーザに変化を知らせる。
【0035】
次に前記環境変化オートスイッチがオートの場合において、環境変化が高温側に変化した際にはDCモータのPWM制御を最適値に変更して駆動を行する。
【0036】
低温側に変化した際には、その変化が常温範囲であるかどうかを検知して、常温範囲であればDCモータのPWM制御を最適値に変更して駆動を行う。(例えば、低温時に電圧が下がった際にはPWM制御のHi区間を広くしモータへの電力供給の低下を防ぎ駆動を可能とする。)
また、低温側に変化し常温範囲外の時には、DCモータのPWM制御を最適値に変更後、更にカメラに温度変化を通信して、バックモニターの消去等を行い省電力モードに移行させる。
【0037】
このように撮影動作に支障の無い設定(以下省電力モード)に自動切換えを行い、低温による電池の消耗を抑える事が可能となる。
【0038】
また、低温側にシフトしたことを撮影者に警告して、撮影者の判断により手動にて切換えを行い省電力モードにする事も可能である。
【0039】
前記モータ6がUSM(超音波モータ)の場合には図6のように、USMの基準周波数を環境に応じて変化させ、温度変化によるUSMの特性変化に対応させ駆動を可能にする。
【0040】
これにより、低温環境下でもレンズの駆動が可能となり、また電池の消耗を抑える事ができて長時間の撮影も可能となる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【実施例2】
【0042】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0043】
図1は本発明の実施形態として、一眼レフカメラ用交換レンズにAF駆動レンズの駆動量検出部としてパルスエンコーダを使用したモデルの構成を示す図である。
【0044】
1はCPUであり、レンズの駆動量、駆動速度を制御している。2は結像を変化させるために駆動するフォーカスレンズ、3はレンズの駆動量を検出する駆動量検出部、4は駆動量検出部3より出力された信号をパルス信号に変換するための処理回路である。
【0045】
6はフォーカスレンズ1を駆動するためのモータでありDCモータやUSM等を使用する。
【0046】
5はモータ5をCPUからの駆動信号により駆動させるモータードライバである。
【0047】
図2、図4は前記図1に記載されている処理回路4と駆動量検出部3の構成を示した一例である。
【0048】
駆動量検出部3として、フォトインタラプタとフォーカスレンズの駆動に連動して回転するパルス板から構成されるパルスエンコーダを使用し、処理回路4として電流コンパレータを使用し、フォトインタラプタからの出力信号をパルス出力に変換する構成である。
【0049】
次に図4を使用して前記フォトインタラプタ出力よりパルス波形を生成する回路について説明する。
【0050】
図4のフォトインタラプタの内部にはLEDとフォトトランジスタが内蔵されており、その間をフォーカスレンズの駆動に連動して回転する明暗のパターンが連続したパルス板が通過する仕組みになっている。
【0051】
パルス板が明のパターンの時にはフォトトランジスタがONして電流が流れ、パルス板が暗のパターンの時にはフォトトランジスタがOFFして電流が流れなくなる。その電流変化を電流コンパレータにて閾値と比較を図3に示すようにパルスを生成している。
【0052】
抵抗1はLEDに流れる電流を制限する制限抵抗です。常温にてパルス幅が設定値になるように定めます。更にDA変換回路を抵抗1の他端につけて、CPU1から抵抗1の一端の電位を調整し、常温にてパルスのデューティが所定の値になるように調整している。
【0053】
次に図1、図3、図4を使用して環境変化を検知する具体的な方法について説明する。
【0054】
図4の回路を低温に入れた場合、抵抗1の抵抗値が下がり、この為にLEDに流れる電流が大きくなり、LEDの発光光量も比例して大きくなる。
【0055】
この結果から、フォトトランジスタに流れる電流の平均が増加し、図3に示すように常温の時と比べてパルス幅もしくはデューティ比が変化する。この変化を図1に示すCPU1のタイマー等で計測して、温度変化を検知することが可能となる。
【0056】
高温の場合は同様に抵抗1の抵抗値が上がり、パルス幅は逆の方向に変化する。
【0057】
CPU1にてこの温度変化を検知した際には、前記フォーカスレンズを駆動させるモータの制御を撮影環境に応じた最適な設定で行うようにする。
【0058】
これにより、低温で動作できなくなるような場合も対応する事が可能となる。
【0059】
次に図7を使用して、撮影環境が変化した際の制御方法を説明する。
【0060】
前記CPU1は温度検知をした際に、環境変化により設定を自動切換えするか手動切換えするかを決定する環境変化スイッチが手動の際にはカメラに温度変化を通信にて知らせ、その後カメラが背面モニタを使用してユーザに変化を知らせる。
【0061】
前記環境変化オートスイッチがオートの場合において、環境変化が高温側に変化した際にはDCモータのPWM制御を最適値に変更して駆動を行する。
【0062】
前記環境変化オートスイッチがオートの場合において、低温側に変化した際には、その変化が常温範囲であるかどうかを検知して、常温範囲であればDCモータのPWM制御を最適値に変更して駆動を行う。(例えば、低温時に電圧が下がった際にはPWM制御のHi区間を広くしモータへの電力供給の低下を防ぎ駆動を可能とする。)
また、低温側に変化し常温範囲外の時には、DCモータのPWM制御を最適値に変更後、CPUのDA出力を変更することによりフォトインタラプタに使用しているLED電流を減少させ、更にカメラに温度変化を通信して、バックモニターの消去等を行い省電力モードに移行させる。
【0063】
このように撮影動作に支障の無い設定(以下省電力モード)に自動切換えを行い、低温による電池の消耗を抑える事が可能となる。
【0064】
また、低温側にシフトしたことを撮影者に警告して、撮影者の判断により手動にて切換えを行い省電力モードにする事も可能である。
【0065】
前記モータ6がUSM(超音波モータ)の場合には図8のように、USMの基準周波数を環境に応じて変化させ、温度変化によるUSMの特性変化に対応させ駆動を可能にする。
【0066】
これにより、低温環境下でもレンズの駆動が可能となり、また電池の消耗を抑える事ができて長時間の撮影も可能となる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態のパルスエンコーダを搭載したフォーカス駆動部の構成図
【図2】本実施形態のパルス出力回路の概略図
【図3】本実施形態の温度変化によるパルスデューティ変化図
【図4】本実施形態のパルス出力回路の概略図
【図5】本実施形態のフローチャート(1)
【図6】本実施形態のフローチャート(2)
【図7】本実施形態のフローチャート(3)
【図8】本実施形態のフローチャート(4)
【符号の説明】
【0069】
1 CPU
2 フォーカスレンズ
3 駆動量検出部
4 処理回路
5 モータドライバ
6 モータ(フォーカスレンズ駆動用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像位置を変えるための可動レンズを(フォーカスレンズ)と、
前記可動レンズを光軸方向に駆動させるレンズ駆動系と、
前記駆動レンズの駆動量を検出し、駆動量に相当したパルスを出力する駆動量検出部と、
前記駆動量検出部より出力されるパルス幅を計測するパルス幅計測手段を有し、
所定速度で前記可動レンズを駆動中に、前記パルス幅計測手段より計測されたパルス幅が設定許容値よりズレた場合は、パルス幅が所定許容値より大きいか小さいかにより撮影環境の気温が高温もしくは低温側に変化したこと検知する温度検知部を有し、
その温度変化を撮影者に警告することを特徴とした光学機器。
【請求項2】
結像位置を変えるための可動レンズを(フォーカスレンズ)と、
前記可動レンズを光軸方向に駆動させるレンズ駆動系と、
前記駆動レンズの駆動量を検出し、駆動量に相当したパルスを出力する駆動量検出部と、
前記駆動量検出部より出力されるパルスのデューティを測定するデューティ計測手段を有し、
所定速度で前記可動レンズを駆動中に、前記デューティ計測手段より計測されたパルスデューティが設定許容値よりズレた場合は、デューティ比が所定許容値より大きいか小さいかにより撮影環境の気温が高温もしくは低温側に変化したこと検知する温度検知部を有し、
その温度変化を撮影者に警告することを特徴とした光学機器。
【請求項3】
前記駆動量検出部には、前記可動レンズの駆動と共に駆動する遮光板と、
その遮光板の駆動を検知するフォトインタラプタを備えている事を特徴とした請求項1又は請求項2に記載の光学機器。
【請求項4】
通常の撮影モードとは別に省電力撮影モードがあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学機器。
【請求項5】
前記温度検知部により撮影環境変化を検出した際に、低温であると判断した際には前記光学機器を省電力モードに切換えることを特徴とした請求項3に記載の光学機器。
【請求項6】
前記温度検知部により撮影環境変化を検出した際に、高温もしくは低温になった事を判断し、前記レンズ駆動系、及び駆動量検出手段の設定を撮影環境に適したモードに切換えることを特徴とした請求項1又は請求項2に記載の光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−32887(P2010−32887A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196383(P2008−196383)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】