説明

光学機能部材支持用積層フィルム及びその製造方法、光学機能シート、並びに表示装置

【課題】光学機能部材の接着性が良好な光学機能部材支持用積層フィルムを提供する。
【解決手段】プリズムシート10は、光学機能部材であるプリズム部材11と、プリズム部材11を支持する積層フィルム12とを備える。積層フィルム12は、ポリエステル製のベースフィルム15と、ベースフィルム15のフィルム面に接着して設けられた易接着層16とを備える。易接着層16により、プリズム部材11とベースフィルム15とが接着される。易接着層16は、ポリエステル樹脂と架橋剤とを含む。易接着層16に含まれるポリエステル樹脂は、ガラス転移温度Tgが60℃未満の水分散系のポリエステル樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機能部材との接着性を高める易接着層を備えた光学機能部材支持用積層フィルム及びその製造方法、光学機能シート、並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの表示装置では、プリズムシート、反射防止シート、光拡散シート、ハードコートシート、IR吸収シート、電磁波シールドシート、調色シート、防眩シート等といったポリマー製の光学機能シートが用いられる。光学機能シートは、シート状の光学機能部材と、光学機能部材を支持する支持フィルム(以下、光学機能部材支持用フィルムと称する)とを備える。例えば、プリズムシートは、シート状のプリズム部材と、プリズム部材を支持するポリエステル製の光学機能部材支持用フィルム(以下、ポリエステルフィルムと称する)とを備える。
【0003】
しかしながら、ポリエステルフィルム及び光学機能部材の接着性が十分でない場合も多い。そこで、接着性の高い素材を含有する易接着層をポリエステルフィルムの上に設けてなる積層フィルムを光学機能部材支持用フィルムとして用いて、光学機能部材との接着性の向上を図っている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
そして、特許文献1〜3によれば、光学機能部材支持用フィルムとしての積層フィルム(以下、光学機能部材支持用積層フィルムと称する)のフィルム面に、光学機能部材の原料となる硬化性樹脂を塗布する塗布工程と、塗布された硬化性樹脂を硬化させて光学機能部材を得る硬化工程とを行なうことにより、光学機能シートを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−271503号公報
【特許文献2】特開平10−86303号公報
【特許文献3】特開2007−253512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光学機能シートの製造方法において、光学機能部材に対する優れた接着性を得るためには、硬化工程の開始タイミングを、塗布工程開始から所定の時間(例えば、1〜2分)経過後に設定する必要があった。しかしながら、塗布工程開始から硬化工程の開始までの待ち時間は、光学機能シートの生産効率の点から好ましくない。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するものであり、光学機能部材支持用積層フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。更に、この光学機能部材支持用積層フィルムに光学機能部材が接着されてなる光学機能シート及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリエステルフィルムと、光学機能部材を接着するための接着面を有し、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片方のフィルム面側に設けられた易接着層とを備え、前記易接着層の易接着層はポリエステルと架橋剤とを含み、前記易接着層に含まれるポリエステルはガラス転移温度が60℃未満の水分散系ポリエステルであることを特徴とする。
【0009】
本発明は、ポリエステルフィルムと、光学機能部材を接着するための接着面を有し、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片方のフィルム面側に設けられた易接着層とを備え、前記易接着層の易接着層はポリエステルと架橋剤とを含み、前記易接着層に含まれるポリエステルは、ガラス転移温度が60℃未満の水分散系ポリエステルと、ガラス転移温度が60℃未満の水溶性ポリエステルとであることを特徴とする。
【0010】
前記水溶性ポリエステルは、ナフタレン構造を有することが好ましい。また、前記易接着層のうち前記光学機能部材との接着面が平らであることが好ましい。更に、前記易接着層の厚みが、0.2μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の光学機能シートは、上記の光学機能部材支持用積層フィルムと、前記易接着層に設けられた前記光学機能部材とを備えたことを特徴とする。
【0012】
前記光学機能部材は、前記易接着層との接着面と反対側の部材面に、凹部または凸部を有することが好ましい。また、前記光学機能部材は無溶剤型の紫外線硬化樹脂製であることが好ましい。更に、前記光学機能部材は、プリズムパターンを表面に備えたプリズム部材であることが好ましい。
【0013】
本発明の表示装置は、上記の光学機能シートを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明は、ポリエステルフィルムと、光学機能部材を接着するための接着面を有し、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片方のフィルム面側に設けられた易接着層とを備えた光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法において、ポリエステル、架橋剤、及び水を含み前記ポリエステルはガラス転移温度が60℃未満の水分散系ポリエステルである塗布液を、前記ポリエステルフィルムを備えたフィルムに塗布して、前記フィルムのフィルム面上に塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜から前記水を蒸発させて前記易接着層を得る易接着層形成工程とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、ポリエステルフィルムと、光学機能部材を接着するための接着面を有し、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片方のフィルム面側に設けられた易接着層とを備えた光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法において、ポリエステル、架橋剤、及び水を含み前記ポリエステルはガラス転移温度が60℃未満の水分散系ポリエステル及びガラス転移温度が60℃未満の水溶性ポリエステルである塗布液を、前記ポリエステルフィルムを備えたフィルムに塗布して、前記フィルムのフィルム面上に塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜から前記水を蒸発させて前記易接着層を得る易接着層形成工程とを有することを特徴とする。
【0016】
前記水溶性ポリエステルは、ナフタレン構造を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、塗布工程開始から硬化工程の開始までの待ち時間を短縮させても、光学機能部材との優れた接着性を有する光学機能部材支持用積層フィルムを提供することができる。したがって、本発明の光学機能部材支持用積層フィルムを用いれば、光学機能シートの製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の光学機能部材の概要を示す断面図である。
【図2】第2の光学機能部材の概要を示す断面図である。
【図3】第3の光学機能部材の概要を示す断面図である。
【図4】表示装置の概要を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(プリズムシート)
図1に示すように、プリズムシート10は、透光性を有する光学機能部材であるプリズム部材11と、プリズム部材11を支持するプリズムシート支持用積層フィルム(以下、積層フィルムと称する)12とを備える。積層フィルム12は、透光性を有するものであり、ベースフィルム15と、ベースフィルム15のフィルム面に接着して設けられた易接着層16とを備える。易接着層16の接着面16aは平らである。易接着層16により、プリズム部材11とベースフィルム15との接着性が確保される。
【0020】
(プリズム部材)
プリズム部材11は液晶ディスプレイ等に備えられたバックライトユニットの正面輝度を向上させるためのものであり、透光性を有し表面にはプリズムパターンが形成されている。プリズム部材11の形成材料としては、例えば、アクリル系紫外線硬化樹脂、中でも無溶剤型のアクリル系紫外線硬化樹脂が用いられる。
【0021】
アクリル系紫外線硬化樹脂としては、2,4−ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3,5−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビズ(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフォン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフォン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルフォン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフォン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフォン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、ビス(メタクロイルチオフェニル)スルフォイド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ジ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェート等の多官能(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。これらは、単独または2種以上を混合して使用することもできる。
【0022】
また、アクリル系紫外線硬化樹脂として、例えば、一般式(1)に示されるものを用いても良い。ここで、(n+m)は、例えば、2〜20である。
【0023】
【化1】

【0024】
(ベースフィルム)
ベースフィルム15は、ポリエステル製のフィルムである。ポリエステルとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等を用いることができる。中でも、コストや機械的強度の観点から、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0025】
ベースフィルム15は、機械的強度向上の観点から、延伸処理が施されたものであることが好ましく、特に2軸延伸したものが好ましい。延伸倍率には特に制限はないが、1.5〜7倍が好ましく、より好ましくは2〜5倍程度である。特に縦横方向にそれぞれ2〜5倍程度延伸した2軸延伸品が好ましい。延伸倍率が1.5倍よりも小さいと充分な機械的強度が得られなくなり、逆に7倍を超えると均一な厚みを得ることが難しくなる。
【0026】
ベースフィルム15の厚みは、例えば、30μm以上500μm以下であり、より好ましくは50μm以上300μm以下である。ベースフィルム15の厚みが30μm未満の場合には、腰がなくなり取り扱いにくくなるため好ましくない。一方で、ベースフィルム15の厚みが500μmを超えるものは、表示装置の小型化や軽量化が図りづらくなる他、コスト的にも不利となる。
【0027】
(易接着層)
易接着層16には、透光性を有するポリエステル樹脂と架橋剤とが含まれる。また、易接着層16には、透光性を有するポリエステル樹脂と架橋剤と添加剤とが含まれていてもよい。
【0028】
(ポリエステル樹脂)
易接着層16に含まれるポリエステル樹脂は、水分散系の共重合ポリエステル樹脂である。共重合ポリエステル樹脂により、二軸延伸されたベースフィルム15との接着性が確保される。また、易接着層16に含まれる共重合ポリエステル樹脂が水分散系のものであるため、プリズム部材11に対する優れた接着性を得ることができる。ここでいう、水分散系とは、膜乾燥前の塗液の段階で、上記共重合ポリエステル樹脂が水中でエマルジョンとして存在するいわゆるラテックスであることを示している。水分散系の共重合ポリエステル樹脂により、プリズム部材11に対する優れた接着性が発現するプロセスは、共重合ポリエステル樹脂がエマルジョンのため、最初球状で乾燥し造膜するため微細な隙間を作りやすく、プリズム部材11の原料モノマーが易接着層16に短時間でしみ込みやすくなると推測される。
【0029】
易接着層16に含まれる水分散系の共重合ポリエステル樹脂としては、例えば、以下の多価カルボン酸成分の少なくとも1種類と、以下の多価アルコール酸成分の少なくとも1種類との共重合体を用いることができる。多価カルボン酸成分は、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等や、式(1)のようなジカルボン酸成分である。
式(1) HOOC−(CH)n−COOH (式中、4≦n≦10の自然数)
多価アルコール酸は、例えば、
HO-〔(CH)-O〕-H (1≦a≦10、1≦b≦10)
である。なお、上記の水分散系の共重合ポリエステル樹脂のうちいずれか1つを用いても良いし、2つ以上を用いてもよい。
【0030】
共重合ポリエステル樹脂が、水分散系の共重合ポリエステル樹脂であるか、水溶性の共重合ポリエステル樹脂であるかは、次の特徴により判別できる。前者は水塗液中においてエマルジョン状態で存在する。後者はポリエステルを主鎖とするポリマーの側鎖にスルホン酸基等の水溶性基が存在し水に溶解する。
【0031】
易接着層16に含まれる水分散系の共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、−20℃以上60℃未満であることが好ましい。さらに好ましくは、−10℃以上50℃以下であることが好ましい。易接着層16に含まれる水分散系の共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが60℃以上であると、易接着層の分子の動きが抑制されプリズム部材11の原料モノマーが易接着層16にしみ込みにくくなる結果、プリズム部材11に対する優れた接着性を得ることができない。一方、易接着層16に含まれる水分散系の共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが−20℃未満であると、水分散系の共重合ポリエステル樹脂の安定性の観点で好ましくない。
【0032】
ガラス転移温度Tgの測定方法は、JIS K 7121(1987)の通りである。
【0033】
(架橋剤)
架橋剤は、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、メラミン系、尿素系、エポキシ系等が挙げられる。これらの中で、塗布液の経時安定性、高温高湿処理後の接着性の観点から、オキサゾリン系が好ましい。また、上記の架橋剤のうちいずれか1つを用いても良いし、2つ以上を用いてもよい。
【0034】
オキサゾリン基を有する化合物としては2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。また、オキサゾリン基を有する化合物は、例えば、エポクロスK-2020E、エポクロスK-2010E、エポクロスK-2030E、エポクロスWS−300、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700等の市販品(日本触媒(株)製)としても入手可能である。
【0035】
オキサゾリン基を有する化合物はバインダに対して5〜50質量%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは10〜40質量%の範囲で添加することである。オキサゾリン基を有する化合物を前記範囲で添加することで、高温下、高温高湿下での経時後であっても、ベースフィルム15との接着性を失うことなく高い接着性を保持することができる。これに対して、添加量が5質量%未満の場合には高温下、高温高湿下での経時後の接着性が不良となる。一方で、添加量が50質量%を超えると、塗布液の安定性の悪化が発生してしまう。ここで、バインダとは、易接着層16に含まれる共重合ポリエステルを指す。
【0036】
カルボジイミド構造を有する化合物は、分子内に複数のカルボジイミド基を有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。ポリカルボジイミドは、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成されるが、この合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能である。ただし、反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。合成原料としては、有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等が使用される。
【0037】
有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が使用可能である。具体的には、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が用いられ、また、有機モノイソシアネートとしては、イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が使用される。また、本発明に用いうるカルボジイミド系化合物は、例えば、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−02、カルボジライトV−04、カルボジライトV−06、カルボジライトE−01、カルボジライトE−02、カルボジライトE−03A、カルボジライトE−04等の市販品(日清紡(株)製)としても入手可能である。
【0038】
本発明のカルボジイミド系化合物はバインダに対して15〜80質量%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは20〜75質量%の範囲で添加することである。カルボジイミド系化合物を前記範囲で添加することで、ベースフィルム15との接着性を向上させることができる。これに対して、添加量が15質量%未満の場合にはベースフィルム15との接着性が悪くなる。一方で、添加量が80質量%を超えると、特に弊害はないがコストがかかりすぎてしまう。
【0039】
易接着層16が薄くなりすぎると、プリズム部材11に対して優れた接着性を発現することができない。一方、易接着層16が厚くなりすぎると、塗布膜の厚みばらつきによる密着不良や製造費用の増大の点で好ましくない。易接着層16の厚みの下限値は、例えば、0.2μmである。易接着層16の厚みの上限値は、製造条件にもよって異なるが、例えば、1.5μmである。
【0040】
(添加剤)
添加剤としては、マット剤、界面活性剤、滑り剤などを適宜用いても良い。
【0041】
マット剤としては、有機又は無機の微粒子のいずれでもよい。たとえばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのポリマー微粒子やシリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどの無機微粒子を用いることができる。これらの中でポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカはすべり性改良効果、コストの観点から好ましい。
【0042】
マット剤の平均粒径は0.01〜12μmが好ましく、より好ましくは0.03〜9μmの範囲である。これら範囲内の平均粒径とすることで、表示装置の表示品位の低下をきたすことなく、すべり性改良効果を充分に得ることができる。また平均粒径の異なるマット剤を2種類以上用いることもできる。
【0043】
マット剤の添加量は、平均粒径によっても異なるが、0.1〜100mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜50mg/mの範囲である。これら範囲内の添加量とすることで、表示装置の表示品位の低下をきたすことなく、すべり性改良効果を充分に得ることができる。
【0044】
界面活性剤としては、公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤については例えば「界面活性剤便覧」(西 一郎、今井 怡知一郎、笠井 正蔵編 産業図書(株) 1960年発行)に記載されている。界面活性剤の添加量としては0.1〜30mg/mが好ましく、より好ましくは0.2〜10mg/mの範囲である。これら範囲内の添加量とすることで、ハジキを発生させることなく、面状を良好にすることができる。
【0045】
滑り剤としては、合成又は天然ワックス、シリコーン化合物、R-O-SOM(ただしRは置換又は無置換のアルキル基、アルキル基の炭素数は3から20の整数、Mは一価の金属原子を表す)。
【0046】
滑り剤の具体例としてはセロゾール524、428、732-B、920、B-495、ハイドリンP-7、D-757、Z-7-30、E-366、F-115、D-336、D-337、ポリロンA、393、H-481、ハイミクロンG-110F、930、G-270(以上中京油脂(株)製)、ケミパールW100、W200、W300、W400、W500、W950(以上三井化学(株)製)などのワックス系、KF‐412、413、414、393、859、8002、6001、6002、857、410、910、851、X−22−162A、X−22−161A、X−22−162C、X−22−160AS、X−22−164B、X−22−164C、X−22−170B、X−22−800、X−22−819、X−22−820、X−22−821、(以上信越化学工業(株))などのシリコーン系、C16H33−O−SO3Na、C18H37−O−SO3Naなどの上記一般式で表される化合物などを挙げることができる。これらのすべり剤は0.1から50mg/mの範囲で添加することが好ましく、1〜20mg/mの範囲で添加することがより好ましい。これら範囲内で添加することで、面状を良好にしつつ、すべり性を充分に得ることができる。
【0047】
(積層フィルムの製造方法)
積層フィルム12の製造方法は、ベースフィルム成形工程と、ベースフィルム延伸工程と、塗布工程と、乾燥工程とを有する。ベースフィルム成形工程では、押し出しダイから溶融ポリマーを押し出して、ベースフィルム15を得る。ベースフィルム延伸工程では、ベースフィルム15を二軸方向に延伸する。延伸方向は、互いに直交することが好ましい。塗布工程では、水分散系ポリエステル樹脂と架橋剤と水とからなる塗布液を、二軸延伸されたベースフィルム15のいずれか片方のフィルム面に塗布し、フィルム面上に塗工膜を形成する。乾燥工程では、所定の乾燥風をあてて塗工膜から水を蒸発させて、塗工膜から易接着層16を得る。こうして、易接着層16をフィルム面に有するベースフィルム15、すなわち積層フィルム12が得られる。
【0048】
塗布液の塗布方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター塗布、スライドコーター塗布などの公知の方法が用いられる。
【0049】
(プリズムシートの製造方法)
プリズムシート10の製造方法は、硬化樹脂塗布工程と、硬化工程とを有する。硬化樹脂塗布工程では、積層フィルム12のうち易接着層16側のフィルム面に、プリズム部材用の紫外線硬化樹脂を塗布し、フィルム面上に硬化樹脂塗布膜を形成する。硬化工程では、プリズムシート用の金型を硬化樹脂塗布膜の膜面に押し当てた状態で、ベースフィルム15側から紫外線を照射して、硬化樹脂塗布膜を硬化させる。こうして、積層フィルム12とプリズム部材11とを備えたプリズムシート10を得ることができる。
【0050】
易接着層16は、ガラス転移温度Tgが60℃未満の共重合ポリエステル樹脂と架橋剤とからなるため、プリズム部材11に対して優れた接着性を示す。更に、易接着層16に含まれる共重合ポリエステル樹脂が水分散系のものであるため、紫外線硬化樹脂が易接着層16へしみ込みやすくなる結果、硬化樹脂塗布工程の開始から硬化工程の開始までの時間を短縮しても、プリズム部材11に対する優れた接着性が得られる。
【0051】
上記実施形態では、易接着層16に含まれるポリエステル樹脂は、水分散系の共重合ポリエステル樹脂であるとしたが、本発明はこれに限られず、易接着層16に含まれるポリエステル樹脂は、水分散系の共重合ポリエステル樹脂と水溶性の共重合ポリエステル樹脂とであってもよい。なお、水分散系の共重合ポリエステル樹脂は、上記実施形態のものと同一のものを用いることができる。
【0052】
(水溶性の共重合ポリエステル樹脂)
易接着層16に含まれる水溶性の共重合ポリエステル樹脂としては、前述した易接着層16に含まれる水分散系の共重合ポリエステル樹脂の成分の他、5−スルホイソフタル酸等の側鎖に水溶性基をもつ成分が含まれるものを用いてもよい。なお、上記の水溶性の共重合ポリエステル樹脂のうちいずれか1つを用いても良いし、2つ以上を用いてもよい。
【0053】
易接着層16に含まれる水溶性の共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、−20℃以上60℃未満であることが好ましい。さらに好ましくは、−10℃以上50℃以下であることが好ましい。易接着層16に含まれる水溶性の共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが60℃以上であると、プリズム部材11の原料ポリマーが易接着層16にしみ込みにくくなる結果、プリズム部材11に対する優れた接着性を得ることができない。一方、易接着層16に含まれる水溶性の共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが−20℃未満であると、水溶性の共重合ポリエステル樹脂の安定性の観点で好ましくない。
【0054】
水溶性の共重合ポリエステル樹脂の質量xと水分散系の共重合ポリエステル樹脂の質量yと比(=x/y)は、0.1以上10以下であることが好ましい。
【0055】
更に、易接着層16に含まれる水溶性の共重合ポリエステル樹脂は、ナフタレン環を含むことが好ましい。易接着層16に含まれる水溶性の共重合ポリエステル樹脂として、ナフタレン環を含有する化合物を用いることで、易接着層16の表面においてオリゴマーの析出を防止することができる。これは、ベースフィルム15からのオリゴマー成分とナフタレン環を含有する共重合ポリエステル樹脂の相溶性が高いことに起因すると推定している。
【0056】
ナフタレン環を有する共重合ポリエステル樹脂は、ナフタレン環を有さない共重合ポリエステル樹脂に比べて、ガラス転移温度Tgが高い傾向にある。したがって、ナフタレン環を含む共重合ポリエステル樹脂のうち、ガラス転移温度Tgが60℃未満のものとしては、ジカルボン酸の構成単位として、2,6−ナフタレンジカルボン酸の構成単位を有することが好ましい。また、ナフタレン環を含む共重合ポリエステル樹脂のうち、ガラス転移温度Tgが60℃未満のものとしては、ジカルボン酸の構成単位として、下記の式(1)に示されるジカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸などを構成単位として有していても良い。
式(1) HOOC−(CH)n−COOH (式中、4≦n≦10の自然数)
【0057】
ナフタレン環を含む共重合ポリエステル樹脂の全てのジカルボン酸構成単位に対し、2,6−ナフタレンジカルボン酸の構成単位が占める割合Xは、30%以上90%以下であることが好ましい。割合Xが30%未満である場合には、オリゴマーの析出防止が十分ではない。割合Xが90%より大きい場合には、共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが高くなる結果、アクリル系の紫外線硬化樹脂との接着性が低下するため好ましくない。割合Xは、40%以上80%以下がより好ましく、50%以上75%以下がさらに好ましい。
【0058】
割合Xが上述の範囲となるような共重合ポリエステル樹脂をつくるためには、共重合ポリエステル樹脂をつくるためのジカルボン酸のうち、ナフタレン環を含むジカルボン酸が占める割合は、割合Xと同様に、すなわち、30モル%以上90モル%以下が好ましい。なお、共重合ポリエステル樹脂をつくるためのジカルボン酸のうち、ナフタレン環を含むジカルボン酸が占める割合は、40モル%以上80モル%以下がより好ましく、50モル%以上75モル%以下がさらに好ましい。
【0059】
ナフタレン環を含む共重合ポリエステル樹脂のジオール成分としては、共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが低くなるようなものが好ましく、例えば、下記の式(2)に示されるジオールのほか、エチレングリコールやジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどがある。
式(2) HO−(CH)m−OH (式中、4≦m≦10の自然数)
【0060】
ナフタレン環を含む共重合ポリエステル樹脂の全てのジオール構成単位に対し、式(2)のジオールの構成単位が占める割合Yは、10%以上95%が好ましく、20%以上90%以下がより好ましく、30%以上85%以下がさらに好ましい。割合Yが10%未満では、ガラス転移温度Tgを下げる効果が不十分であるため、アクリル系の紫外線硬化樹脂と接着性が低下する。割合Yが95%より大きいと重合性が低下する場合がある。
【0061】
割合Yが上述の範囲となるような共重合ポリエステル樹脂をつくるためには、共重合ポリエステル樹脂をつくるためのジオールのうち、式(2)のジオールが占める割合は、割合Yと同様に、すなわち、10%以上95%が好ましい。なお、共重合ポリエステル樹脂をつくるためのジオールのうち、式(2)のジオールが占める割合は、20%以上90%以下がより好ましく、30%以上85%以下がさらに好ましい。
【0062】
なお、図2に示すように、単層の易接着層16に代えて、複層の易接着層51を用いても良い。易接着層51は、ベースフィルム15に接着して設けられたフィルム接着層51aと、フィルム接着層51aに重なって接着し、プリズム部材11の接着面を有する部材接着層51bとを備える。プリズム部材11は、部材接着層51bを介して、フィルム接着層51a及びベースフィルム15と接着する。
【0063】
フィルム接着層51a及び部材接着層51bの形成材料は、上記の易接着層16の形成材料と同一であっても良い。
【0064】
なお、図2に示す積層フィルム12の製造方法は、ベースフィルム15のフィルム面にフィルム接着層51a用の塗布液を塗布するフィルム接着層用塗布工程と、前記塗布された塗布液から溶媒を蒸発させてフィルム接着層51aを形成するフィルム接着層形成工程と、フィルム接着層に部材接着層51b用の塗布液を塗布する部材接着層用塗布工程と、前記塗布された塗布液から溶媒を蒸発させて部材接着層51bを形成する部材接着層形成工程とを有する。
【0065】
なお、図3に示すように、ベースフィルム15の両方のフィルム面に易接着層16、55を設けても良い。プリズム部材11と反対側に設けられた易接着層16は、他の光学機能部材との接着性を高めることができる。なお、ベースフィルム15の両方のフィルム面に易接着層16、55を設ける場合には、ベースフィルム15の両方のフィルム面に塗布液を塗布すればよい。また、易接着層16、55のうちいずれか一方、または両方は、図2に示す易接着層16のような複層構造を有していても良い。
【0066】
上記実施形態では、光学機能部材として、易接着層と反対側の面にプリズムパターンを有するプリズム部材11を用いたが、本発明はこれに限られない。光学機能部材として、拡散部材、マイクロレンズなど他の光学機能部材を用いても良いし、光学機能部材のうち易接着層と反対側の面には、凹部または凸部が設けられていても良い。プリズム部材11と反対側に設けられる他の光学機能部材としては、特開平10−300908に記載されている干渉縞防止層、特表2007−529780に記載されている損傷防止層、特開2010−49243に記載されているプリズム層頂点の接触痕防止層、さらには、虹ムラ改良層等が挙げられる。虹ムラ改良層とは、近年、部材削減のために、プリズムシート上の上拡散フィルムを外すことが検討されているが、上拡散フィルムを外すことで確認される虹ムラを改良するための拡散層であり、ヘイズが20〜50%程度、好ましくは30〜50%程度の凹凸構造を有するマット層である。
【0067】
上記実施形態では、易接着層16をベースフィルム15のフィルム面に接着して設けたが、本発明はこれに限られず、易接着層16とベースフィルム15との間に、別の層が設けられていても良い。この場合において、別の層の主たる形成材料としては、例えば、ポリエステルと、ポリウレタンと、ポリカーボネートと、ポリエステル及びポリウレタンの混合物等がある。
【0068】
図4に示すように、液晶表示装置60は、液晶パネル61と光源ユニット62とを備える。液晶パネル61は、光源ユニット62から出射された光の透過・遮断を画素単位で制御するためのものであり、液晶セル63と、2枚の偏光板64,65とを有する。液晶セル63は、透明なガラス基板の間に液晶を封入したものであり、各ガラス基板の内面に形成された透明電極間に電圧を印加することによって、透過する光の偏光状態を画素単位で変化させる。偏光板64は、偏光膜64aと、その両面に密着させた一対の保護膜64b,64cとを備える。偏光板65についても、偏光板64と同じ構成であり、偏光膜65aと保護膜65bと保護膜15cとを備える。各偏光板64,65は、互いにクロスニコルとなるように配置される。偏光板64,65の間に液晶セル63が配される。
【0069】
光源ユニット62は、液晶パネル61を背後から照明するものであり、光源ランプ67と、導光板68と、拡散シート69と、プリズムシート10とを備える。光源ランプ67は、例えば棒状の蛍光管を用いており、楔形状の導光板68の端部(エッジ)に沿うように配してある。この光源ランプ67から放出される照明光は、直接、またリフレクタ67aに反射されて、導光板68の端部から内部に入射する。導光板68は、入射した照明光を、その内部で反射することにより、液晶パネル61とほぼ同じサイズの射出面68aから射出する。
【0070】
拡散シート69は、液晶パネル61の全面を均一に照明するためのものであり、射出面68aに近接させて配してある。この拡散シート69は、射出面68aから射出される照明光を透過する際に散乱・拡散させる。このような拡散シート69としては、例えば透明なシートの表面にビーズ状の光拡散材料を分散したもの、シート内部に光拡散材料を分散させたものなどを用いることができる。なお、光源ユニット62の薄型化を図る上では、拡散シート69をプリズムシート10と密着させて配すのがよい。また、薄型化を図る上では、上述のようにシート内部に光拡散材料を分散させる等して表面を平面とすることが好ましく、この例でもそのように構成してある。
【0071】
プリズムシート10は、液晶パネル61と拡散シート69との間に配され、正面輝度を向上させる。すなわち、プリズムシート10は、液晶パネル61の法線方向に射出される照明光の光量を大きくするように照明光の分布を制御する。プリズムシート10は、そのサイズは液晶パネル61の背面とほぼ同じである。拡散シート69で拡散された照明光は、プリズムシート10に入射し、プリズムシート10から射出される照明光が液晶パネル61に入射する。プリズムシート10としては、正面輝度を5%以上向上させることが好ましい。
【実施例】
【0072】
本発明の効果を確認するために、以下の実験1〜19を行なった。
【0073】
(実験1)
(ポリエステル樹脂の重合)
表1に示すジカルボン酸成分およびジオール成分を、表1に示すモル比となるようにエステル交換器に仕込み、シュウ酸チタニウムカリ存在化のもと、窒素雰囲気下で250℃まで昇温することで、エステル交換反応を行った。次いで反応器の温度を225〜260℃まで昇温後、圧力を1mmHgまで徐々に減圧させ、重縮合反応を進行させた。重縮合反応により得られたポリエステル樹脂25質量部を、蒸留水65質量部と親水性溶媒(エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル)10質量部中に溶解若しくは分散させて、水溶性ポリエステル樹脂(A−1)〜(A−2)の水溶液(PA−1)〜(PA−2)、及び水分散系ポリエステル樹脂(B−1)〜(B−2)の水分散液(PB−1)〜(PB−2)を得た。各液(PA−1)〜(PA−2)、(PB−1)〜(PB−2)におけるポリエステル樹脂の濃度(固形分濃度)は、それぞれ25質量%であった。また、各ポリエステル樹脂(A−1)〜(A−2)、(B−1)〜(B−2)のガラス転移温度Tgは、表2に示すとおりである。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
(積層フィルムの作製)
ベースフィルム成形工程では、以下の手順により、積層フィルム12用のベースフィルム15を作製した。先ず、Ti化合物を触媒として重縮合した固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載する)樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させ、ヒーター温度が280〜300℃設定温度の押し出し機内で溶融させた。溶融させたPETをダイ部より静電印加されたチルロール上に押し出して、帯状の非結晶ベースを得た。ベースフィルム延伸工程では、得られた非結晶ベースを長手方向に3.3倍に延伸した後、幅方向に対して3.8倍に延伸し、厚さ188μmのベースフィルム15を得た。
【0077】
塗布工程では、ベースフィルム15を搬送速度60m/分で搬送し、両面を730J/mの条件でコロナ放電処理を行った後、下記の塗布液Aをバーコート法により両面に塗布した。乾燥工程では、これを145℃で1分乾燥して、ベースフィルム15の両面に易接着層16、55が設けられた積層フィルム12を得た。易接着層16、55の膜厚は略等しいものであった。易接着層16、55に含まれる各ポリエステルと架橋剤との種類・含有量、及び易接着層16、55の膜厚d1は、表2に示すとおりである。
【0078】
易接着層16、55の膜厚d1の測定は次のようにして行なった。プリズム部材11を形成する前の積層フィルム12において、ミクロトーム(Leica社製RM2255)を使用し、断面切削を実施した。得られた断面を走査電子顕微鏡(HITACHI社製S−4700)にて観察することで、易接着層16、55の膜厚d1を測定した。
【0079】
(塗布液A)
塗布液Aの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水溶液(PA−1) 141.1 質量部
ポリエステル樹脂水分散液(PB−1) 141.1 質量部
オキサゾリン系架橋剤(KA−1) 79.5 質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7 質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3 質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 0.7 質量部
(綜研化学(株)製 MR−2G 水分散物 固形分15%)
滑り剤 32.5 質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1 質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Aの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0080】
(プリズムシートの製造)
プリズムシートを製造するために、硬化樹脂塗布工程と硬化工程とを行なった。硬化樹脂塗布工程では、バーコート法によりワイヤーバー#10バー(ワイヤー径250μm)を用いて、紫外線硬化樹脂を含むプリズムシート用塗工液を易接着層16上に塗工した。硬化工程では、プリズムパターンを形成するための金型を塗工面に押し当て、ベースフィルム15側からUV光(ウシオ電機(株)製メタルハライドランプUVL−1500M2)を35mJ/cmの条件で照射して、紫外線硬化樹脂の硬化を行なった。前記金型から積層フィルム12を引き剥がし、頂角90°、ピッチ60μm、高さが30μmのプリズムパターンを形成した。さらに、プリズムパターン側から上記UV光を1100mJ/cmの条件で照射して、紫外線硬化樹脂の硬化を行なった。こうして、プリズム部材11を備える積層フィルム12、すなわちプリズムシート10を得た。なお、硬化樹脂塗布工程の開始から硬化工程の開始までの待ち時間WT1は、表2に示すとおりである。
【0081】
(プリズムシート用塗工液)
プリズムシート用塗工液の組成は次の通りである。
ビスフェノールA型ジアクリレート樹脂 23.75質量部
(新中村化学(株)製、NKエステル A−BPE−10)
開始剤 1.25質量部
(IRGACURE184)
【0082】
ここで、実験1に用いたビスフェノールA型ジアクリレート樹脂は、一般式(1)に示される化合物であり、(n+m)の値が10である。
【0083】
(実験2〜19)
表2に示したこと以外は、実験1と同様にしてプリズムシート10をつくった。
【0084】
なお、実験12〜15では、塗布液Aに代えて塗布液Bを用いた。また、実験16では、塗布液Aに代えて塗布液Cを用いた。
【0085】
(塗布液B)
塗布液Bの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水溶液(PA−1) 141.1 質量部
ポリエステル樹脂水分散液(PB−2) 141.1 質量部
オキサゾリン系架橋剤(KA−1) 79.5質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7 質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3 質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 0.7 質量部
(綜研化学(株)製 MR−2G 水分散物 固形分15%)
滑り剤 32.5 質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1 質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Aの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0086】
(塗布液C)
塗布液Cの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水溶液(PA−2) 141.1 質量部
ポリエステル樹脂水分散液(PB−1) 141.1 質量部
オキサゾリン系架橋剤(KA−1) 79.5 質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7 質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3 質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 0.7 質量部
(綜研化学(株)製 MR−2G 水分散物 固形分15%)
滑り剤 32.5 質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1 質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Aの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0087】
(評価)
上記実験1〜19で得られたプリズムシート10について、以下の評価を行った。
【0088】
[製造直後の接着性]
プリズム部材11上を片刃カミソリにて縦横それぞれ11本のキズを付け100個の升目を形成した後に、粘着テープ(3M社製600)を貼り付けた。そしてテープの上を消しゴムで擦って完全に付着させた後、水平面に対して90度方向に剥離させ剥離した升目の数を求めることで紫外線硬化樹脂との接着強度の高さを下記の6段階で以下のように評価した。
A5:剥がれなしの場合
A4:剥離した升目の数が1以上5未満の場合
A3:剥離した升目の数が5以上15未満の場合
A2:剥離した升目の数が15以上35未満の場合
A1:剥離した升目の数が35以上65未満の場合
A0:剥離した升目の数が65以上の場合
なお、上記のA4〜A5は製品として合格品であることを示し、上記のA0〜A3は製品として不合格品であることを示す。
【0089】
[サーモ処理後の接着性]
上記実験1〜19で得られたプリズムシート10を65℃95%RH環境下に240時間放置するサーモ処理を実施した。サーモ処理後に接着性の評価を実施した。サーモ処理後の接着性の評価基準は、プリズムシート製造後の接着性のものと同様である。
【0090】
[オリゴマー析出の有無]
実験1〜19で得られた積層フィルム12からサンプルフィルムを切り出した。サンプルフィルムを、高温環境(温度70℃、湿度10%RH)下に24時間置くサーモ処理を行なった。サーモ処理の前後におけるサンプルフィルムのヘイズから、ヘイズの増加ΔHを求めた。ここで、サーモ処理前におけるサンプルフィルムのヘイズをHb、及びサーモ処理後におけるサンプルフィルムのヘイズをHaとすると、ヘイズの増加ΔHは、次の式で表される。ヘイズの測定には、JIS−K−7105に準じて、ヘイズメーター(NDH−5000、日本電色工業(株))を用いた。
ΔH=Ha−Hb
ここで、オリゴマーが析出するとヘイズの増加ΔHが大きくなる傾向を利用して、求められたヘイズの増加ΔHを以下基準に基づいて評価した。
A:ヘイズの増加ΔHが0.2%未満
F:ヘイズの増加ΔHが0.2%以上
なお、上記のAは製品として合格品であることを示し、上記のFは製品として不合格品であることを示す。
【0091】
各評価結果は、表2に示すとおりである。
【符号の説明】
【0092】
10 光学機能部材
11 プリズムシート
12 積層フィルム
15 ベースフィルム
16、51、55 易接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムと、
光学機能部材を接着するための接着面を有し、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片方のフィルム面側に設けられた易接着層とを備え、
前記易接着層の易接着層はポリエステルと架橋剤とを含み、
前記易接着層に含まれるポリエステルはガラス転移温度が60℃未満の水分散系ポリエステルであることを特徴とする光学機能部材支持用積層フィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルムと、
光学機能部材を接着するための接着面を有し、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片方のフィルム面側に設けられた易接着層とを備え、
前記易接着層の易接着層はポリエステルと架橋剤とを含み、
前記易接着層に含まれるポリエステルは、ガラス転移温度が60℃未満の水分散系ポリエステルと、ガラス転移温度が60℃未満の水溶性ポリエステルとであることを特徴とする光学機能部材支持用積層フィルム。
【請求項3】
前記水溶性ポリエステルは、ナフタレン構造を有することを特徴とする請求項2記載の光学機能部材支持用積層フィルム。
【請求項4】
前記易接着層のうち前記光学機能部材との接着面が平らであることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の光学機能部材支持用積層フィルム。
【請求項5】
前記易接着層の厚みが、0.2μm以上1.5μm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の光学機能部材支持用積層フィルム。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の光学機能部材支持用積層フィルムと、
前記易接着層に設けられた前記光学機能部材とを備えたことを特徴とする光学機能シート。
【請求項7】
前記光学機能部材は、前記易接着層との接着面と反対側の部材面に、凹部または凸部を有することを特徴とする請求項6記載の光学機能シート。
【請求項8】
前記光学機能部材は無溶剤型の紫外線硬化樹脂製であることを特徴とする請求項6または7記載の光学機能シート。
【請求項9】
前記光学機能部材は、プリズムパターンを表面に備えたプリズム部材であることを特徴とする請求項7または8記載の光学機能シート。
【請求項10】
請求項6ないし9のうちいずれか1項記載の光学機能シートを備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
ポリエステルフィルムと、光学機能部材を接着するための接着面を有し、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片方のフィルム面側に設けられた易接着層とを備えた光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法において、
ポリエステル、架橋剤、及び水を含み前記ポリエステルはガラス転移温度が60℃未満の水分散系ポリエステルである塗布液を、前記ポリエステルフィルムを備えたフィルムに塗布して、前記フィルムのフィルム面上に塗布膜を形成する塗布工程と、
前記塗布膜から前記水を蒸発させて前記易接着層を得る易接着層形成工程とを有する
ことを特徴とする光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法。
【請求項12】
ポリエステルフィルムと、光学機能部材を接着するための接着面を有し、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片方のフィルム面側に設けられた易接着層とを備えた光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法において、
ポリエステル、架橋剤、及び水を含み前記ポリエステルはガラス転移温度が60℃未満の水分散系ポリエステル及びガラス転移温度が60℃未満の水溶性ポリエステルである塗布液を、前記ポリエステルフィルムを備えたフィルムに塗布して、前記フィルムのフィルム面上に塗布膜を形成する塗布工程と、
前記塗布膜から前記水を蒸発させて前記易接着層を得る易接着層形成工程とを有する
ことを特徴とする光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記水溶性ポリエステルは、ナフタレン構造を有することを特徴とする請求項12記載の光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63624(P2013−63624A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204869(P2011−204869)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】