説明

光学活性アンモニウム塩化合物、およびその製造中間体

【課題】キラル相間移動触媒として有用な光学活性4級アンモニウム塩化合物及び該化合物の製造中間体の提供。
【解決手段】式(1)で表される化合物。(式中、Rは、アルキル又はアルコキシを示し、R、Rは水素を示し、R21は、水素、アルキル又はアルコキシを示し、Rは、アリール又はアラルキルを示し、R、Rはアルケニルを示し、RとRは結合して芳香環を形成して、*および**は、軸不斉を有する光学活性であることを示し、Xは、アニオンを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラル相間移動触媒として有用な光学活性4級アンモニウム塩化合物に関し、より詳細には、新規な光学活性なスピロ型4級アンモニウム塩と該化合物を製造するための中間体および製造方法に関する。
本願は、2005年3月3日に出願された特願2005−059694号および2005年6月30日に出願された特願2005−192757号に基づいて優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
光学活性なスピロ型4級アンモニウム塩に関する化合物については、これまで多くの化合物が知られている。例えば、特許文献1に記載された下記式:
【0003】
【化1】

【0004】
に示す化合物や特許文献3に記載された化合物は、天然または非天然であることを問わず、光学活性α−アミノ酸を合成するための相間移動触媒として、この化合物が極めて有効に機能することが開示されている。しかし、これらの文献に記載された光学活性なスピロ型4級アンモニウム塩は相異なる置換基を有する2種類の光学活性ビナフチル誘導体によって構成されるため、高価となり、工業的に用いるには必ずしも満足されるものではない。
【0005】
また、特許文献2には、下記式:
【0006】
【化2】

に示すような化合物が記載されているが、光学活性体が片側のみであるゆえに、反応時間が長時間となり工業的に使用するには必ずしも満足されるものではない。
【0007】
さらに、特許文献4には、下記式に示すような化合物が記載されているが、これらの文献に記載されたスピロ型4級アンモニウム塩は、同一の置換基を有する2種の光学活性ビフェニル誘導体によって構成されるため、触媒設計上の制限があり、工業的に使用するには必ずしも満足されるものではない。
【0008】
【化3】

【0009】
そのため、光学活性α−アミノ酸を合成するための相間移動触媒として有効で、製造が容易でかつ実用的な光学活性スピロ型4級アンモニウム塩の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−48866号公報
【特許文献2】特開2002−326992号公報
【特許文献3】特開2003−81976号公報
【特許文献4】特開2004−359578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、キラル相間移動触媒として有用な光学活性4級アンモニウム塩化合物について、前記の先行技術の問題を解決することにあり、相間移動触媒として、天然または非天然であることを問わず光学活性アミノ酸合成に優れた効果を有する化合物および該化合物を工業的に有利に製造できる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究を行い、相異なる置換基を有する2種のビフェニル誘導体から、あるいはビフェニル誘導体とビナフチル誘導体から、構成される光学活性なスピロ型4級アンモニウム塩のなかに、光学活性アミノ酸の合成に優れた効果を有し工業的に有用な触媒となるものを見出し、さらに該4級アンモニウム塩の容易な製造方法を見出すことによって、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明において、見出したスピロ型4級アンモニウム塩の容易な製造方法は速度論分割を基盤とし、該製造方法によれば、例えば、原料化合物のビフェニル誘導体が光学活性を有していなくても、光学活性なアゼピン誘導体と反応させれば、2つの軸不斉を有する光学活性4級アンモニウム塩化合物を容易に得ることができ、この際、反応に関与しない一方のビフェニル誘導体を光学活性体として回収することもでき、また、原料化合物のビフェニル誘導体が光学活性を有していれば、光学活性を有さないアゼピン誘導体と反応させると、同様に2つの軸不斉を有する光学活性4級アンモニウム塩化合物を容易に得ることができ、反応に関与しない一方のアゼピン誘導体を光学活性体として回収することもできる。
【0014】
さらに、本発明で見出したスピロ型4級アンモニウム塩の容易な製造方法を構成するいまひとつの基盤は、スピロ型4級アンモニウム塩製造のための重要製造中間体であるアゼピン類の簡便な製造方法であり、本製造方法によれば、3,3’−位に置換基を有する2,2’−ビス(置換メチル)ビアリール化合物にアンモニアを反応させることで、容易に対応するアゼピン類を得ることができる。
【0015】
すなわち、本発明の第一の実施態様は、式(1):
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Rは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリ−ル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、
およびR21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜8アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、また、RとR21またはRとR21のいずれかの組み合わせが、結合して置換基を有していてもよいC1〜6アルキレン基、置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンモノオキキシ基、または置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンジオキシ基を形成してもよく、
およびRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリール基または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、ここで、RおよびRが、同時に水素原子になることはなく、
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルケニル基、または置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基を示し、
は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルケニル基、または置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基を示し、また、RとRは結合して置換基を有していてもよい芳香環を形成してもよく、
A環とB環は、同時に同じ置換基を有することはなく、
*および**は、軸不斉を有する光学活性であることを示し、
は、アニオンを示す。)で表される光学活性4級アンモニウム塩化合物に関する。
【0018】
式(1)で表される4級アンモニウム塩化合物としては、
が、水素原子で、R21は、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜8アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基である化合物が好ましく、
、RおよびR21が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基である化合物が好ましく、
が、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基で、RとR21が、結合して置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンジオキシ基を形成する化合物が好ましく、
およびR21が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基で、Rが、水素原子である化合物が好ましく、
とR21が、結合して置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンジオキシ基を形成し、Rが、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基である化合物が好ましく、
が、フッ素原子、塩素原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、または置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基で、RとR21が、結合して置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンジオキシ基を形成する化合物が好ましく、
が、(ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、またはC6〜C14アリール基)で置換されてもよいC6〜C14アリール基、(ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、またはC6〜C14アリール基)で置換されもよいC3〜C8ヘテロアリール基、または(ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、またはC6〜C14アリール基)で置換されてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、Rが、水素原子である化合物が好ましく、
または、Rが、水素原子を示し、Rが、(ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル、またはC6〜C14アリール)で置換されてもよいC6〜C14アリール基、(ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、またはC6〜C14アリール基)で置換されもよいC3〜C8ヘテロアリール基、または(ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、またはC6〜C14アリール基)で置換されてもよいC7〜C16アラルキル基である化合物が好ましく、
さらに、Xが、ハロゲン原子のアニオン、OH、BF,PF、HSO、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜6ジアルキル硫酸アニオン、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜6アルキルスルホン酸アニオン、置換基を有していてもよいC6〜14アリールスルホン酸アニオン、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキルスルホン酸アニオンである化合物が好ましい。
【0019】
また、本発明の第二の実施態様は、
(i)式(2):
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、R、R21、および、Rは、前記と同じ意味を示し、Yは、脱離基を示す)
で表される軸不斉を有する光学活性なビスベンジル化合物またはラセミのビスベンジル化合物;および、

(ii)式(3):
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、R、R、R21およびRは、前記と同じ意味を示す。)
で表されるラセミのアゼピン誘導体または光学活性なアゼピン誘導体に関する。
【0024】
本発明の第三の実施態様は、式(4):
【0025】
【化7】

【0026】
(式中、
Raは、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリール基または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、Rbは、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜8アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、また、Rb同士が結合して置換基を有していてもよいC1〜6アルキレン基、置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンモノオキキシ基、置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンジオキシ基、または置換基を有していてもよい芳香環を形成してもよく、mは0または1〜3の整数を示し、mが2以上である場合、互いに異なる置換基であってもよい。Yは前記と同じ意味を示す。)
で表されるビフェニル誘導体にアンモニアを反応させることを特徴とする下記式(5):
【0027】
【化8】

【0028】
(式中、Ra、Rb、mは、前記と同じ意味を示す。)
で表されるアゼピン誘導体の製造方法である。このアゼピン誘導体は式(1)で示される化合物の製造中間体として有用である。
【0029】
本発明の第四の実施態様は、
(i)式(6):
【0030】
【化9】

【0031】
(式中、Rcは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリ−ル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、RdとReは、それぞれ独立してハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜8アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリール基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、また、Rdは、Rd同士で結合して置換基を有していてもよいC1〜6アルキレン基、置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンモノオキキシ基、または置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンジオキシ基を形成してもよく、nは0または1〜2の整数を示し、nが2である場合、互いに異なる置換基であってもよい。Yは前記と同じ意味を示す。)
で表される光学活性なビスベンジル誘導体と、式(7):
【0032】
【化10】

【0033】
(Rfはハロゲン原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリール基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、kは0または1〜4の整数を示し、kが2以上の場合、互いに異なる置換基であってもよく、Rf同士が結合して置換基を有していてもよい芳香環を形成してもよい。)
で表されるラセミのアゼピン誘導体とを、反応させることを特徴とする、式(8):
【0034】
【化11】

【0035】
(式中、Rc、Rd、Re、Rf、n、k、Y、*および**は、前記と同じ意味を示す。)で表される光学活性4級アンモニウム塩化合物の製造方法、および
(ii)式(6)で表されるラセミのビスベンジル誘導体と式(7)で表される光学活性なアゼピン誘導体を反応させることを特徴とする反応させることを特徴とする式(8)で表される光学活性4級アンモニウム塩化合物の製造方法である。
【0036】
本発明の第五の実施態様は、式(9):
【0037】
【化12】

【0038】
(式中、Rc、Rd、Reおよびnは前記と同じ意味を示す)
で表される光学活性なアゼピン誘導体と、下記式(10):
【0039】
【化13】

【0040】
(Rf、kおよびYは前記と同じ意味を示す)
で表されるラセミのビスベンジル誘導体とを、反応させることを特徴とする、下記式(8):
【0041】
【化14】

【0042】
(式中、Rc、Rd、Re、Rf、n、k、Y、*および**は、前記と同じ意味を示す)で表される光学活性4級アンモニウム塩化合物の製造方法、および
(ii)式(9)で表されるラセミのビスベンジル誘導体と式(10)で表される光学活性なアゼピン誘導体を反応させることを特徴とする反応させることを特徴とする式(8)で表される光学活性4級アンモニウム塩化合物の製造方法である。
【発明の効果】
【0043】
本発明の光学活性4級アンモニウム塩化合物は、工業的に有利な方法で製造することができ、光学活性アミノ酸合成に優れた触媒効果を有する。
また、本発明の製造方法によれば、速度論分割により、工業的に有利に光学活性4級アンモニウム塩化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中のハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を挙げることが出来る。
【0045】
置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基の直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、シクロプロピル、シクロブチル、2−メチルシクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることが出来る。
【0046】
置換基を有していてもよいC2〜8アルケニル基のC2〜8アルケニル基の例として、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−メチル−2−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、2−メチル−1−ペンテニル、3−メチル−1−ペンテニル、4−メチル−1−ペンテニル、2−メチル−2−ペンテニル、3−メチル−2−ペンテニル、2−エチル−1−ブテニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、3−オクテニル、4−オクテニル等を挙げることが出来る。
【0047】
置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基のC2〜C8アルキニル基の例として、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、4−メチル−1−ペンテニル、1−ヘキシニル、1−オクチニル等を挙げることが出来る。
【0048】
置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基のC6〜C14アリール基の例として、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル、10−フェナントリル等を挙げることが出来る。
【0049】
置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリ−ル基のC3〜C8ヘテロアリ−ル基としては、同一または異なってN、O、S各原子の1〜4個を含む単環、多環または縮合環であり、具体的例として、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノニル、3−キノニル、4−キノニル、5−キノニル、6−キノニル、7−キノニル、8−キノニル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピロリジル、3−ピロリジル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル等を挙げることが出来る。
【0050】
置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基の直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基のアルキル部分は、前記アルキル基と同義であり、具体的例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、2−メチルシクロプロポキシ、シクロプロピルメトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等を挙げることが出来る。
【0051】
置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基のC7〜C16アラルキル基の例として、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−メチル−1−フェニルエチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル等を挙げることが出来る。
【0052】
の例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子のアニオン、OH、BF,PF、SCN、HSO、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜6ジアルキル硫酸アニオン、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜6アルキルスルホン酸アニオン、置換基を有していてもよいC6〜14アリールスルホン酸アニオン、置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキルスルホン酸アニオン等のアニオンを挙げることができる。
【0053】
ここで、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜6ジアルキル硫酸基および置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜6アルキルスルホン酸のアルキル部分は、前記アルキル基と同義であり、具体的には、ジメチル硫酸およびメチルスルホン酸、エチルスルホン酸、プロピルスルホン酸、ブチルスルホン酸等を例示することができる。
【0054】
置換基を有していてもよいC6〜14アリールスルホン酸基のアリール部分は、前記アリール基と同義であり、具体的には、フェニルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフチルスルホン酸等を例示することができる。
【0055】
置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキルスルホン酸基のアラルキル部分は、前記アラルキル基と同義であり、具体的には、ベンジルスルホン酸、フェネチルスルホン酸等を例示することができる。
【0056】
とRが結合して形成される置換基を有していてもよい芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等を挙げることが出来る。
【0057】
置換基を有していてもよいC1〜6アルキレン基のC1〜6アルキレン基とは、−(CH−(式中、nは1〜6の整数を示す。)で表され、RとR21、またはRとR21が結合した化合物として、具体的に以下のような構造の化合物等を例示することができる。
【0058】
【化15】

(式中、Gは置換基を示す。)
【0059】
置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンモノオキキシ基のC1〜6アルキレンモノオキキシ基としては、−O(CH−または、−(CH)nO−(式中、nは1〜6の整数を示す。)で表され、RとR21、またはRとR21が結合した化合物として具体的に以下のような構造の化合物を例示することができる。
【0060】
【化16】

(式中、Gは置換基を示す。)
【0061】
置換基を有していてもよいC1〜6アルキレンジオキキシ基のC1〜6アルキレンジオキキシ基としては、−O(CHO−(式中、nは1〜6の整数を示す。)で表され、RとR21、またはRとR21が結合した化合物として具体的に以下のような構造の化合物を例示することができる。
【0062】
【化17】

(式中、Gは置換基を示す。)
【0063】
また、脱離基は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1〜C8アルキルスルホニルオキシ基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリールスルホニルオキシ基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキルスルホニルオキシ基等を示す。
ここで、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキルスルホニルオキシ基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリールスルホニルオキシ基および置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキルスルホニルオキシ基における、アルキル部分、アリール部分およびアラルキル部分は、それぞれ前記アルキル、アリ−ルおよびアラルキルの定義と同義である。
【0064】
置換基を有していてもよい基(C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C6〜C14アリール基、C3〜C8ヘテロアリール基、C1〜C8アルコキシ基、C7〜C16アラルキル基、RとRが結合して形成される芳香環、C1〜6アルキレン基、C1〜6アルキレンモノオキキシ基、C1〜6アルキレンジオキキシ基、C1〜6ジアルキル硫酸基、C1〜6アルキルスルホン酸基、C6〜14アリールスルホン酸基、C7〜C16アラルキルスルホン酸基、C1〜C8アルキルスルホニルオキシ基、C6〜C14アリールスルホニルオキシ基、C7〜C16アラルキルスルホニルオキシ基)およびGの置換基としては、同一または異なって置換数1〜6の置換基であって、
フッ素、塩素、臭素原子、ヨウ素等のハロゲン原子;
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、シクロプロピル、シクロブチル、2−メチルシクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル等の直鎖、分岐または環状のC1〜C8アルキル基;
トリフロロメチル、テトラフロロエチル、ヘプタフロロイソプロピル等の直鎖、分岐または環状のC1〜C5パーフロロアルキル基;
フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル等のC6〜C14アリール基;
メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、2−メチルシクロプロポキシ、シクロプロピルメトキシ、シクロペンチルオキシ等の直鎖、分岐または環状のC1〜C8アルコキシ基;
べンジル、2−フェニルエチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル等のC7〜C16アラルキル基;
同一または異なってN、O、S各原子の1〜4個を含む単環、多環または縮合環であり、具体的例として、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノニル、3−キノニル、4−キノニル、5−キノニル、6−キノニル、7−キノニル、8−キノニル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピロリジル、3−ピロリジル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル等のC3〜C8ヘテロアリ−ル基等を挙げることができる。
【0065】
前記式(1)で表される化合物(1)の製造中間体として有用な前記式(2)で表される軸不斉を有するラセミのビスベンジル化合物として、下記式(2a)で表される化合物が挙げられ、光学活性なビスベンジル化合物として、下記式(2b)で表される化合物が挙げられる。
【0066】
【化18】

【0067】
式中、
は前記と同じ意味を示し、
2aおよびR21aは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C8アルキニル基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリ−ル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、
31は、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリール基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、
は、脱離基を示し、好ましくは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1〜C8アルキルスルホニルオキシ基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリールスルホニルオキシ基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキルスルホニルオキシ基を示す。
【0068】
【化19】

【0069】
式中、R、R2a、R21a、R31、Yおよび*は、前記と同じ意味を示す。
【0070】
前記式(1)で表される化合物(1)の製造中間体として有用な前記式(3)で表されるラセミのアゼピン誘導体として、下記式(3a)で表される化合物が挙げられ、光学活性なアゼピン誘導体として、下記式(3b)で表される化合物が挙げられる。
【0071】
【化20】

【0072】
式中、R、R、R21およびRは、前記と同じ意味を示す。
【0073】
【化21】

【0074】
式中、R、R、R21、Rおよび*は、前記と同じ意味を示す。
【0075】
前記式(1)と下記式(1’)で表される光学活性(鏡像関係にある軸不斉化合物の一方が他方に対して過剰)な4級アンモニウム塩化合物は、光学活性な軸不斉ビフェニル基と光学活性な軸不斉ビナフチル基、あるいは、光学活性な2種類の軸不斉ビフェニル基によって構成されるために、該化合物は、軸不斉の光学活性を示す記号に従えば、4種類の異性体S,S−体、R,R−体、S,R−体、R,S−体が存在し、これらのいずれもが本発明に含まれる。
【0076】
本発明の4級アンモニウム塩化合物(1’)は、例えば、以下のいずれかの方法で製造することができる。
(i)ラセミのビスベンジル化合物(2a’)と光学活性アゼピン誘導体(5b)を反応させる。
【0077】
【化22】

【0078】
(ii)光学活性ビスベンジル化合物(2b’)とラセミのアゼピン誘導体(5a)を反応させる。
(2b’);光学活性体+(5a);ラセミ体→(1’)+(5b);光学活性体
(iii)ラセミのアゼピン誘導体(3a)と光学活性ビフェニル誘導体(4b)を反応させる。
【0079】
【化23】

【0080】
(iv)光学活性アゼピン誘導体(3b)とラセミのビフェニル誘導体(4a)を反応させる。
(3b);光学活性体+(4a);ラセミ体 →(1’)+(4b);光学活性体
【0081】
本発明の前記の製造方法(i)〜(iv)のいずれにおいても、光学活性原料同士を反応させれば、得られる4級アンモニウム塩化合物の2つの不斉軸はいずれも光学活性となるが、一方が光学活性で他方がラセミ体の原料であっても反応する際には、速度論分割によって、前者は後者の一方のエナンチオマーと優先して反応し、この場合にも得られる4級アンモニウム塩化合物の2つの不斉軸はいずれも光学活性となって製造される。このため製造に関与しなかった後者のエナンチオマーは光学活性体として回収される。よって、本法の製造においては、いずれか一方の原料は光学活性を有していなくても、2つの不斉軸がいずれも光学活性な4級アンモニウム塩化合物を容易に得ることができるため、工業的に有利な方法である。
【0082】
本反応におけるラセミ体は、光学活性体に対して、1.0〜10倍モル使用することができ、特に工業的には1.5〜3.0倍モル使用することが好ましい。
【0083】
本反応は、溶媒存在下または無溶媒で行うことができる。使用できる溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトニトリル、プロピオンニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、水およびこれらの溶媒を二つ以上混合した混合溶媒系が挙げられる。
【0084】
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ−7−エン等の有機塩基等が挙げられる。用いられる塩基の使用量は、光学活性ビナフチル誘導体または光学活性ビフェニル誘導体に対し、通常1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルである。
【0085】
本反応の温度は、−78℃〜200℃の範囲で、好適には−20℃〜100℃の範囲である。反応時間は、反応試剤の量および温度等により異なるが、30分〜100時間の範囲である。
【0086】
製造中間体であるビスベンジル化合物(2a’)、(2b’)とビフェニル誘導体(4a)、(4b)は、特開2003−327566、特開2004−359578等に記載の方法に従って、対応する原料から製造することができる。
【0087】
一方、製造中間体のアゼピン誘導体(3a)、(3b)、(5a)、(5b)は、下記に記述するところに従い、製造することができる。
【0088】
即ち、特開2004−359578を参考に公知物質から製造されるビスアニリン類(12)をハロゲン化し、得られる3,3’−ジハロゲノ−2,2’−ジアニリン類(13)を、特開2001−48866等に記載のSuzukiカップリングの条件下(J.Organomet.Chem.(1999年)、576、147参照)、に反応させて3,3’−ジ置換−2,2’−ジアニリン類(14)を得る。
【0089】
【化24】

(式中、Xはハロゲン原子を示し、R、R、R21およびRは、前記と同じ意味を示す。)
【0090】
ハロゲン化試薬の例としては、N−ブロモコハク酸イミド(NBS)、N−クロロコハク酸イミド(NCS)、N−ヨウドコハク酸イミド(NIS)、臭素、塩素、ヨウ素等を挙げることができる。ここで使用できる溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール類、これらの溶媒を二つ以上混合した混合溶媒系が挙げられる。反応は、室温から溶媒の沸点まで適宜な温度で行うことができる。
【0091】
次に、3,3’−ジ置換−2,2’−ジアニリン類(14)のアミノ基を亜硝酸塩の使用によりハロゲン原子に変換し3,3’−ジ置換−2,2’−ジハロゲン体(15)とし、これを一酸化炭素−Pd触媒で処理すれば3,3’−ジ置換−2,2’−ジエステル体(16)が得られる。
【0092】
亜硝酸塩によるアミノ基のハロゲン原子への変換は、特開2004−359578に記載の方法を参考に、3,3’−ジ置換−2,2’−ジハロゲン体(15)の3,3’−ジ置換−2,2’−ジエステル体(16)への変換は、Synlett、(1998年)2、183の方法を参考にして行うことができる。
【0093】
【化25】

(式中、Xはハロゲン原子を示し、R、R、R21およびRは、前記と同じ意味を示す。)
【0094】
また、既知化合物あるいは公知の方法で誘導可能なビフェニル−2,2’−ジエステル体(14’)を前記に準じた方法で、ハロゲン化・鈴木カップリング反応をおこなって、3,3’−ジハロゲノビフェニル−2,2’−ジエステル体(15’)を経由し、3,3’−ジ置換−2,2’−ジエステル体(16)を得ることもできる。
【0095】
【化26】

(式中、X、R、R、R21およびRは、前記と同じ意味を示す。)
【0096】
3,3’−ジ置換−2,2’−ジエステル体(16)を日本化学会編第4版実験化学講座20巻、10〜141頁(丸善)に記載の方法によって還元すれば、3,3’−ジ置換−2,2’−ビスヒドロキシメチル体(17)を得ることができる。
【0097】
【化27】

(式中、R、R、R21、およびRは、前記と同じ意味を示す。)
【0098】
次いで、3,3’−ジ置換−2,2’−ビスヒドロキシメチル体(17)の水酸基を日本化学会編第4版実験化学講座19巻、438〜445頁(丸善)に記載の方法を参考に、ハロゲン原子等の脱離基に変換し、ビスベンジル化合物(2a’)を得る。
【0099】
【化28】

【0100】
(式中、Yは脱離基を示し、R、R、R21およびRは、前記と同じ意味を示す。)
ここで、上記Yにおける脱離基としては、ハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ、メタンスルホニルオキシ等が挙げられる。
【0101】
一方、3,3’−ジ置換−2,2’−ジハロゲン体(15)は、文献(J.Mol.Catal.,1990,60,343)に準じた方法で、3,3’−ジ置換−2,2’−ジメチル体(17’)に変換でき、(17’)を一般的なハロゲン化条件に付すことによってビスベンジル化合物(2a’)を得ることもできる。
【0102】
【化29】

(式中、R、R、R21、R、およびYは、前記と同じ意味を示す。)
【0103】
さらに、例えば、文献(J.Chem.Soc.,1950,711)等を参考に合成可能な6,6’−ジアルコキシ−2,2’−ジメチルビフェニル誘導体(14’’)に、前記に準じた方法で、ハロゲン化・鈴木カップリング反応をおこなって、6,6’−ジアルコキシ−3,3’−ジ置換−2,2’−ジメチル体(17’’)を得て、(17’’)は(17’)と同様の処理で(2a’)に対応するビスベンジル化合物(2a’’)に誘導できる。
【0104】
【化30】

【0105】
(式中、Ralcは、アルコキシ基を示し、R、R、R21、および、Yは、前記と同じ意味を示す。)
【0106】
また、ジオール類(18)から、文献(J.Am.Chem.Soc.,121,6519(1999).)に従って、ビフェニル誘導体類(4a)を得ることができる。
【0107】
【化31】

【0108】
(式中、R、R、RおよびYは、前記と同じ意味を示す。)
【0109】
前記のビスベンジル化合物(2a’)およびビフェニル誘導体類(4a)の合成法は、これらに対応する光学活性化合物(2b’)および(4b)にも、適用できる。
【0110】
これらのビフェニル類にアンモニアを反応させることによって、アゼピン誘導体(3a)、(3b)、(5a)、または(5b)を製造することができる。
【0111】
【化32】

【0112】
(式中、R、R、R21、R、R、R、R、XおよびXは、前記と同じ意味を示し、(*)と(**)はそれぞれ化合物番号にbがつく場合に光学活性であることを示す。)
【0113】
本反応は、ビフェニル類とアンモニアのそれぞれの溶媒溶液同士、あるいは、いずれか一方を直接他方の溶媒溶液に作用させて、行うことができる。
使用される溶媒は、ビフェニル類とアンモニアに反応しなければ特に制限はないが、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトニトリル、プロピオンニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、水、およびこれらの溶媒を二つ以上混合した混合溶媒系が挙げられる。また、アンモニアを溶解させる溶媒もアンモニアと反応しなければ特に制限はない。例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトニトリル、プロピオンニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、水、およびこれらの溶媒を二つ以上混合した混合溶媒系が挙げられる。
【0114】
反応は方法に特に制限はないが、例えば、アンモニアを気体または液体で直接ビフェニル類の溶液中に加えるか、アンモニアの前記溶媒溶液をビフェニル類の溶液に滴下することによって、行うことができる。
溶媒とビフェニル類の混合比率には特に制限はないが、1:1〜100:1(体積:重量)で、適宜に設定できる。アンモニアも同様に任意の濃度で使用可能である。
ビフェニル類とアンモニアのモル比は、1:0.2から1:10、好ましくは1:1〜1:5である。
反応温度は、−70℃〜溶媒の沸点まで、好ましくは−20℃〜40℃である。
【0115】
反応後、未反応アンモニアを留去させたのち、必要に応じて、抽出、洗浄、蒸留、カラムクロマトグラフィー、乾燥、再結晶等、公知慣用の方法により、アゼピン誘導体類を分離精製することができる。
【0116】
光学活性4級アンモニウム塩化合物(1)の製造は以下のように、一般的なN−ベンジル化反応条件に従って行うことができる。
(a)光学活性ビスベンジル化合物(2b’)と光学活性アゼピン誘導体(5b)を反応させる。または、
(b)光学活性ビフェニル誘導体(4b)と光学活性アゼピン誘導体(3b)を反応させる。
【0117】
また、光学活性4級アンモニウム塩化合物(1)の製造は速度論分割法によっても行うことができる。すなわち、以下のように、ラセミ基質と光学活性基質とを反応させることで実施できる。
(i)ラセミのビスベンジル化合物(2a’)と光学活性アゼピン誘導体(5b)を反応させる。
(ii)光学活性ビスベンジル化合物(2b’)とラセミのアゼピン誘導体(5a)を反応させる。
(iii)ラセミのアゼピン誘導体(3a)と光学活性ビフェニル誘導体(4b)を反応させる。または、
(iv)光学活性アゼピン誘導体(3b)とラセミのビフェニル誘導体(4a)を反応させる。
【0118】
前記の2種類の基質の反応は、適当な溶媒中、塩基の存在下に、容易に実施することができる。
【0119】
ここで、溶媒は、反応に関与しなければその種類にかかわらず使用できる。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトニトリル、プロピオンニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、およびこれらの溶媒を二つ以上混合した混合溶媒系が挙げられるが、本反応は相間移動反応条件においても実施可能であるので前記の溶媒中で水に不溶な溶媒と水を組み合わせた溶媒系も使用できる。
【0120】
使用され得る塩基は、一般の無機塩基が使用可能であるが、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および、炭酸カリウムが挙げられる。
【0121】
反応は溶媒中あるいは溶媒系中攪拌して、塩基存在下に、溶媒または溶媒系の凝固点から沸点までの間で実施できる。反応温度は、好ましくは−20℃〜80℃である。反応時間は反応温度により、適宜に調整できるが、30分から12時間で終了させることができる。
【0122】
この際、上記反応溶媒容積は、2種類の基質の合計重量に対して、容積(mL)/重量(g)比で、好ましくは1倍〜100倍、より好ましくは5倍〜50倍である。
【0123】
前記の2種類の基質の仕込みモル比は、一般的なN−ベンジル化反応条件の場合には、好ましくは1:1であるが、入手しやすい基質を適宜増やしたほうが、より好ましい結果が得られる。速度論分割法による場合には、好ましくは、光学活性体:ラセミ体が1:2〜1:5であり、より好ましくは1:2〜1:3である。
【0124】
塩基は、一般的なN−ベンジル化反応条件の場合には、反応系中に存在する脱離基Yに対して、好ましくは1当量〜6当量、より好ましくは1当量〜3当量用いればよく、速度論分割法による場合には、アゼピン誘導体が光学活性体ならば反応系中に存在する脱離基Yに対して、好ましくは1当量〜6当量、より好ましくは1当量〜3当量であり、アゼピン誘導体がラセミ体ならば、反応系中に存在する脱離基Yに対して、好ましくは0当量〜4当量、より好ましくは0当量〜1当量である。
【0125】
このようにして製造される、化合物(1)は、α−アミノ酸誘導体の不斉アルキル化において相間移動触媒として使用された場合、高い光学純度を有する反応生成物を与えることができる。
【0126】
以下、実施例と参考例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0127】
2’,2’’−ビス(ブロモメチル)−3,4,5,3’’’,4’’’,5’’’−ヘキサフルオロ−4’,5’,4’’,5’’−テトラメチル−(1,1’;3’,3’’;1’’,1’’’)クアテルフェニル(22)の製造
【0128】
【化33】

【0129】
化合物(20)(156mg,0.27mmol)をTHF(5mL)溶媒に溶かし、0℃に冷やした後、LiAlH(31mg,0.81mmol)を加えた。混合物をゆっくりと室温まで昇温させた後、更に5時間撹拌を行った。その後、反応溶液を氷水に注ぐことにより反応を終了させ、更に抽出・乾燥・濃縮操作を行うことによりアルコール体(21)を得た。アルコール体(21)をこれ以上の精製操作を行うことなく、CHCl2(5mL)に溶解させ、PBr(0.26mL,0.6mmol)を0℃にて滴下した。反応溶液を室温にて2時間撹拌した後氷水に注ぎ、反応を終了させ、更に塩化メチレンを用いて抽出し、乾燥・濃縮を経た後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=1:10)にて精製を行い、化合物(22)を得た(137mg,0.21mmol,収率77%)。
H NMR(300MHz,CDCl)、δ7.15(2H,d,J=6.6Hz,ArH),7.12(2H,d,J=6.6Hz,ArH),7.09(2H,s,ArH),4.03(4H,d,J=2.4Hz,ArCH),2.37(6H,s,ArCH),1.97(6H,s,ArCH
【実施例2】
【0130】
1,2,10,11−テトラメチル−4,8−ビス(3,4,5−トリフルオロフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ジベンゾ(c,e)アゼピンの製造
【0131】
【化34】

【0132】
化合物(22)(65mg,0.1mmol)と25%アンモニア水0.2mLをアセトニトリル溶媒中、室温にて24時間撹拌を行った。反応終了後、抽出・乾燥・濃縮を経た後カラムクロマトグラフィー(メタノール:塩化メチレン=1:10)にて精製を行い、化合物(23)を得た(51mg,0.1mmol,収率100%)。
H NMR(300MHz,CDOD)、δ7.31(2H,s,ArH),7.24(2H,d,J=6.6Hz,ArH),7.21(2H,d,J=6.6Hz,ArH),4.14(2H,d,J=13.8Hz,ArCH),3.46(2H,d,J=13.8Hz,ArCH),2.43(6H,s,ArCH),2.09(6H,s,ArCH
【実施例3】
【0133】
光学活性4級アンモニウム塩化合物(26)(ホモ)の製造
【0134】
【化35】

【0135】
炭酸カリウム(140mg)存在下、アセトニトリル溶媒中、キラルな二級アミン(24)(56mg)と該アミンに対して2.1等量のラセミのジブロモメチルビフェニル(25)(80mg)とを室温にて12時間撹拌を行った。反応終了後、抽出・カラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール=10:1)にて精製を行い、光学的に純粋な(S,S)−(26)を得た(74mg,収率85%)。
[α]D22=+25.6°(c1.0,CHCl
H NMR(300MHz,CDCl)、δ8.21(2H,s,ArH),8.08(2H,d,J=8.4Hz,ArH),7.205−7.60(8H,m,ArH),7.09(2H,d,J=8.7Hz,ArH),6.71(2H,d,J=7.8Hz,ArH),6.02(2H,d,J=7.8Hz,ArH),4.71(2H,d,J=13.8Hz,ArCH),4.50(2H,d,J=14.1Hz,ArCH),4.04(2H,d,J=13.5Hz,ArCH),3.49(2H,d,J=13.2Hz,ArCH),2.30(6H,s,ArCH),1.88(6H,s,ArCH
【実施例4】
【0136】
光学活性4級アンモニウム塩化合物(29)(ホモ)の製造
【0137】
【化36】

【0138】
実施例1と同様の方法で、炭酸カリウム(140mg)存在下、アセトニトリル溶媒中、キラルな二級アミン(27)(56mg)と、該アミンに対して2.1等量のラセミのジブロモメチルビフェニル(28)(80mg)とを室温にて12時間撹拌を行った。反応終了後、抽出・カラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール=10:1)にて精製を行い、光学的に純粋な(R,R)−(29)を得た(82mg,収率94%)。
[α]D23=−120.2°(c1.0,CHCl
H NMR(300MHz,CDCl)、δ7.92(2H,d,J=8.4Hz,ArH),7.20−7.57(12H,m,ArH),7.11(2H,d,J=8.4Hz,ArH),6.32(2H,d,J=8.7Hz,ArH),4.55(2H,d,J=13.8Hz,ArCH),4.47(4H,d,J=14.1Hz,ArCH),4.18(2H,d,J=14.1Hz,ArCH),3.61(2H,d,J=12.9Hz,ArCH),2.45(6H,s,ArCH),2.05(6H,s,ArCH
【実施例5】
【0139】
光学活性4級アンモニウム塩化合物(45)の製造
【0140】
【化37】

【0141】
化合物(40)(1.97g,4.37mmol)とN−ブロモスクシンイミド(2.33g,13.1mmol)をクロロホルム(20mL)溶媒中、室温にて12時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを用いて抽出し、乾燥・濃縮を経た後、カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、(酢酸エチル:へキサン=1:3)化合物(41)を得た(収率94%)。
H NMR(300 MHz,CDCl)、δ3.96(6H,s,ArCOCH),3.94(6H,s,ArOCH),3.79(6H,s,ArOCH),3.94(6H,s,ArOCH
【0142】
化合物(41)から(45)は、参考例7、実施例1および実施例4の方法に従い合成した。
【0143】
【化38】

【0144】
化合物(42)(収率80%)
H NMR(300MHz,CDCl)、δ6.90−6.95(4H,m,ArH),3.98(6H,s,ArCOCH),3.85(6H,s,ArOCH),3.70(6H,s,ArOCH),3.27(6H,s,ArOCH
【0145】
化合物(44)(化合物(42)からの収率81%)
H NMR(300MHz,CDCl)、δ6.95−7.15(4H,m,ArH),3.90−4.00(4H,m,ArCHO−),3.95(6H,s,ArOCH),3.87(6H,s,ArOCH),3.73(6H,s,ArOCH
化合物(45)(収率83%)
[α]D22=−89.55°(c 0.22,CHCl
H NMR(300MHz,CDCl)、δ6.75−8.00(12H,m,ArH),6.47(4H,d,J=8.4Hz,ArH),4.65(2H,d,J=14.1Hz,ArCH),4.44(2H,d,J=12.6Hz,ArCH),4.40(2H,d,J=13.5Hz,ArCH),4.11(6H,s,ArOCH),3.91(6H,s,ArOCH),3.75(6H,s,ArOCH),3.61(2H,d,J=13.8Hz,ArCH
【実施例6】
【0146】
【化39】

【0147】
アミン(61)の製造
化合物(60)(30mg,0.043mmol)をアセトニトリル2mLに溶かし、25%アンモニア水溶液を0.1−0.2ml滴下する。反応混合物を室温にて48時間攪拌した後、濃縮して溶媒を除去し、酢酸エチルにて抽出する。乾燥・濃縮を行なったのち、カラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール=15:1)にて精製を行い、目的物(61)を得た。(20mg、0.036 mmol,84%)
【0148】
上記実施例を含め、本発明化合物を表1〜表4に記載する。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【0151】
【表3】

【0152】
【表4】

【0153】
【表5】

【0154】
【表6】

表3
【0155】
【表7】

表4
【0156】
参考例1
光学活性4級アンモニウム塩化合物(29)を用いたα−アミノ酸の不斉合成
0℃にて、トルエン(2ml)溶媒中、tert−ブチル(ベンズヒドリリデンアミノ)酢酸(74mg)、光学活性4級アンモニウム塩化合物(R,R)−(29)(2.0mg)およびベンジルブロミド(36ul)を加えた。この溶液に、攪拌しながら50%KOH水溶液0.5mlを滴下した。反応溶液を0℃にて、8時間攪拌した後、水、エーテルを加え抽出した。反応生成物は、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:エーテル=15:1)により精製を行い目的のtert−ブチル2−(ベンズヒドリリデンアミノ)−3−フェニルプロピオン酸を得た。(収率95%)
更に、HPLC分析(ダイセルCHIRALCEL OD、ヘキサン:イソプロピルアルコール=100:1)により光学純度を決定した(不斉収率97%ee)。
【0157】
参考例2
光学活性4級アンモニウム塩化合物(45)を用いたα−アミノ酸の不斉合成
式(45)の触媒を用いて上記参考例1と同様の反応を試みたところ、収率96%、不斉収率94%eeで対応するアルキル化体を得ることが出来た。
【0158】
参考例3
光学活性4級アンモニウム塩化合物(46)を用いたα−アミノ酸の不斉合成
化合物(46)の触媒を用いて上記参考例1と同様の反応を試みたところ、収率100%、不斉収率98%eeで対応するアルキル化体を得ることが出来た。
【0159】
参考例4
2,3,2’,3’−テトラメチル−6,6’−ジニトロビフェニル(34)の製造
【0160】
【化40】

【0161】
2−ヨード−3,4−ジメチル−1−ニトロベンゼン(5.5g,20mmol)と、銅粉末(10g,155mmol)をDMF(20mL)溶媒中、150℃で、48時間加熱した。反応終了後、濾過により銅粉を除去した後、酢酸エチルを用いて抽出し、乾燥・濃縮を経た後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=1:10)にて精製を行い、2,3,2’,3’−テトラメチル−6,6’−ジニトロビフェニル(34)を得た。(2.9g,0.96mmol,収率96%)
H NMR(300MHz,CDCl)、δ7.91(2H,d,J=8.4Hz,ArCH),7.34(2H,d,J=8.4Hz,ArCH),2.40(6H,s,ArCH),1.84(6H,s,ArCH
【0162】
参考例5
5,6,5’,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジアミン(35)の製造
【0163】
【化41】

【0164】
化合物(34)(3.0g,10mmol)と10%Pd/C(500mg,5mol%)をメタノール(50mL)溶媒中、水素雰囲気下12時間撹拌を行った。反応終了後、濾過により固形物を除去した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=1:5)にて精製を行い、5,6,5’,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジアミン(35)を得た。(2.4g,10mmol,収率100%)
H NMR(300MHz,CDCl)、δ6.97(2H,d,J=8.1Hz,ArH),6.58(2H,d,J=8.4Hz,ArH),3.25(4H,br,NH),2.21(6H,s,ArCH),1.86(6H,s,ArCH
【0165】
参考例6
3,3’−ジブロモ−5,6,5’,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジアミン(36)の製造
【0166】
【化42】

【0167】
化合物(35)(2.75g,11.5mmol)をイソプロピルアルコール(20mL)に溶解させた後、NBS(4.45g,25mmol)を60℃にて加えた。反応混合物を還流下1時間撹拌させたのち氷水に注ぎ反応を終了させた。得られた懸濁液を酢酸エチルにて抽出し、乾燥・濃縮を経た後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=1:10)にて精製を行い、3,3’−ジブロモ−5,6,5’,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジアミン(36)を得た。(2.98g,7.48mmol,収率65%)
H NMR(300MHz,CDCl)、δ7.27(2H,s,ArH),3.71(4H,br,NH),2.21(6H,s,ArCH),1.80(6H,s,ArCH
【0168】
参考例7
3,4,5,3’’’,4’’’,5’’’−ヘキサフルオロ−4’,5’,4’’,5’’−テトラメチル−(1,1’;3’,3’’;1’’,1’’’)クアテルフェニル−2’,2’’−ジアミン(37)
【0169】
【化43】

【0170】
化合物(36)(1.5g,3.77mmol)、3,4,5−トリフルオロフェニルホウ酸(1.5g,9.0mmol)、Pd(OAc)2(42mg,5mol%)、PPh3(99mg,10mol%)、Ba(OH)2・8H2O(3.78g,12.0mmol)をDME−HO(10mL,9:1v/v)溶媒中、アルゴン雰囲気下、100℃にて12時間撹拌を行った。反応終了後、得られてくる反応混合物を飽和NH4Cl溶液に注いだ後、セライト濾過にて触媒を除去した。更に、この溶液を酢酸エチルにて抽出し、乾燥・濃縮を経た後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=1:10)にて精製を行い、化合物(37)を得た。(1.63g,3.21mmol,収率85%)
H NMR(300MHz,CDCl)、δ7.15(2H,d,J=6.6Hz,ArH),7.12(2H,d,J=6.6Hz,ArH),6.92(2H,s,ArH),3.46(4H,br,NH),2.26(6H,s,ArCH),1.92(6H,s,ArCH
【0171】
参考例8
2’,2’’−ジヨード−3,4,5,3’’’,4’’’,5’’’−ヘキサフルオロ−4’,5’,4’’,5’’−テトラメチル−(1,1’;3’,3’’;1’’,1’’’)クアテルフェニル(38)の製造
【0172】
【化44】

【0173】
化合物(37)(760mg,1.52mmol)を6M HCl(20mL)に溶かし0℃に冷却した。この溶液にNaNO2(315mg,4.56mmol)の水溶液を5分かけゆっくり滴下した。さらに同温度にてKI(1.51g,9.12mmol)の水溶液を滴下し、滴下終了後反応温度を80℃まで昇温した。反応混合物を同温度にて更に2時間撹拌した後、氷水で冷やし亜硫酸ナトリウムを添加することにより反応を終了させた。得られた混合物をジエチルエーテルで抽出し、乾燥・濃縮を経た後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=1:10)にて精製を行い、化合物(38)を得た。(1.03g,1.43mmol,収率94%)
H NMR(300MHz,CDCl)、δ7.09(2H,s,ArH),6.99(2H,d,J=7.2Hz,ArH),6.97(2H,d,J=6.6Hz,ArH),2.33(6H,s,ArCH),1.99(6H,s,ArCH
【0174】
参考例9
3,4,5,3’’’,4’’’,5’’’−ヘキサフルオロ−4’,5’,4’’,5’’−テトラメチル−(1,1’;3’,3’’;1’’,1’’’)クアテルフェニル−2’,2’’−ジカルボン酸ジメチル(20)の製造
【0175】
【化45】

【0176】
化合物(38)(361mg,0.5mmol)、Pd(OAc)2(5,6mg,5mol%)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(10.3 mg,5mol%)、N−エチルジイソプロピルアミン(0.52mL,3mmol)、MeOH(3mL)をトルエン(3mL)溶媒中、一酸化炭素圧10atm下にて80℃、48時間撹拌を行った。反応終了後、濾過にて触媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:へキサン=1:20)にて精製を行い、化合物(20)を得た(198mg,0.34mmol,収率68%)。
H NMR(300MHz,CDCl)、δ7.14(2H,s,ArH),6.99(2H,d,J=6.6Hz,ArH),6.94(2H,d,J=6.3Hz,ArH),3.27(6H,s,ArH),2.40(6H,s,ArCH),1.97(6H,s,ArCH

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、
は、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、または置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基を示し、
は水素原子を示し、
21は、水素原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、または置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基を示し、
は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、
は、水素原子を示し、
は、C2〜C8アルケニル基を示し、
は、C2〜C8アルケニル基を示し、RとRは結合して芳香環を形成して、
*および**は、軸不斉を有する光学活性であることを示し、
は、アニオンを示す)
で表される光学活性4級アンモニウム塩化合物。
【請求項2】
が、ハロゲン原子のアニオン、OH、BF,PF、HSO、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜6ジアルキル硫酸アニオン、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜6アルキルスルホン酸アニオン、置換基を有していてもよいC6〜14アリールスルホン酸アニオン、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキルスルホン酸アニオンである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(2):
【化2】

(式中、
は、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、または置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基を示し、
21は、水素原子、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルキル基、または置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C8アルコキシ基を示し、
は、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、または置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基を示し、
は、脱離基を示す)
で表される軸不斉を有する光学活性なビスベンジル化合物またはラセミのビスベンジル化合物。

【公開番号】特開2012−153691(P2012−153691A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−36862(P2012−36862)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【分割の表示】特願2007−506022(P2007−506022)の分割
【原出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】