説明

光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法

【課題】各種化合物の中間体として有用な光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の効率的な製造方法の提供。
【解決手段】式(1)、式(2)等


(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子等であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基等であり、Rは、C1−4アルキル基等、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子等であり、Mは、Tiである。)で表される光学活性チタン錯体を触媒として利用した、下記のような光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種化合物の中間体として有用な光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Shiらは糖から誘導された触媒を用いて2,2−ジ置換アルケニルシランのエポキシ化を行い、94% eeの選択性でエポキシシランを得ているが、等量の触媒を必要とするという欠点があった(非特許文献1〜4)。立体障害の大きいシリル基をビニル位に導入することは、エナンチオ面選択性を更に促進することが期待できるが、立体障害が大きい故に反応が進行しないという問題があった(非特許文献5及び6)。
【非特許文献1】Wong, O. A.; Shi, Y. Chem. Rev. 2008, 108, 3958.
【非特許文献2】Shi, Y. Acc. Chem. Res. 2004, 37, 488.
【非特許文献3】Yang, D. Acc. Chem. Res. 2004, 37, 497.
【非特許文献4】Warren, J. D.; Shi, Y. J. Org. Chem. 1999, 64, 7675.
【非特許文献5】Kobayashi, Y.; Ito, T.; Yamakawa, I.; Urabe, H.; Sato, F. Synlett 1991, 811.
【非特許文献6】Katsuki, T. Tetrahedron. Lett. 1984, 25, 2821.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題を解決すべく光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法を鋭意研究した結果、光学活性チタン錯体を触媒として利用することで、高いエナンチオ選択性と高い化学収率で、光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物を製造できることを見いだし、本発明を完成した。すなわち、本発明は、
〔1〕
式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)
【0005】
【化1】

【0006】
(式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−12アリールオキシ基又はC6−22アリール基(該アリール基は、C1−4アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)、C1−7アルコキシ基、またはベンジルオキシ基で任意に置換されていてもよく、光学活性又は光学不活性である。)であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−12アリールオキシ基又はC6−18アリール基であり、Rは、C1−4アルキル基、C6−18アリール基又は、2つのRが一緒になって環を形成する場合は、C3−5の二価の基であり、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、ニトロ基又はシアノ基であり、Mは、TiJ(TiJにおいて、Tiはチタン原子であり、J及びJはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、C1−4アルコキシドを示すか、JとJが一緒になって酸素原子を示すか、又は、JとJが一緒になって環を形成し、式(5)
【0007】
【化2】

【0008】
(式(25)中の部分構造式O−E−Oは、下記式(6)、下記式(6’)、下記式(7)、下記式(7’)、下記式(8)、下記式(8’)、下記式(9)及び下記式(9’)
【0009】
【化3】

【0010】
(式(6)、式(6’)、式(7)、式(7’)、式(8)、式(8’)、式(9)及び式(9’)中のR、R、R及びRは前記と同じであり、このとき、式(5)中の2つの部分構造式O−E−Oは互いに同じである。)の何れかで表される。)で表される二核錯体を形成する場合を示す。)である。)の何れかで表される光学活性チタン錯体を触媒として使用し、下記式(10)
【0011】
【化4】

【0012】
(Rは水素原子、C1−22アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、C6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)であり、
、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、C1−22アルキル基又はC6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)であり、
及びR10は、それぞれ独立して水素原子、C1−6アルキル基
(該アルキル基は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基
(該アルコキシ基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)
又は水酸基により任意に置換されていてもよい。)
又はC6−14アリール基(該アリール基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基
(該アルコキシ基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)
又は水酸基により任意に置換されていてもよい。)
又はC1−6アルコキシ基
(該アルコキシ基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)
により任意に置換されていてもよい。)
であり、
nは0ないし3の整数である。)で表されるシス−シリルオレフィン化合物を酸化剤で不斉エポキシ化することを特徴とする下記式(11)
【0013】
【化5】

【0014】
(式中R、R、R、R、R、R10及びn前記と同じである。*で示された炭素原子の絶対配置は(R)又は(S)を意味する。)で表される光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
〔2〕
式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)の何れかで表される光学活性チタン錯体が式(1)、式(1’)、式(2)及び式(2’)のいずれかで表される光学活性チタン錯体であり、Rが、フェニル基(該フェニル基は、C1−4アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)C1−7アルコキシ基、又はベンジルオキシ基で任意に置換されていてもよい。)であり、Rが水素原子であり、2つのRが一緒になってCの二価の基である〔1〕に記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
〔3〕
式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)の何れかで表される光学活性チタン錯体が式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)のいずれかで表される光学活性チタン錯体であり、Rが、ナフチル基(該ナフチル基は、C1−4アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)C1−7アルコキシ基、又はベンジルオキシ基で任意に置換されていてもよく、光学活性又は光学不活性である。)であり、Rが水素原子であり、2つのRが一緒になってCの二価の基である〔1〕に記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
〔4〕
nが0であり、Rがフェニル基(該フェニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、C6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
〔5〕光学活性チタン錯体が下記式1
【0015】
【化6】

【0016】
で表される錯体またはその対掌体である、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
〔6〕
不斉エポキシ化反応で使用する溶媒が、ハロゲン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール系溶媒であるか、又は前記の溶媒の混合物である〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
〔7〕
不斉エポキシ化反応で使用する溶媒が、塩化メチレンである〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
〔8〕
不斉エポキシ化反応で使用する酸化剤が、ヨードソベンゼン、次亜塩素酸ナトリウム、m−クロロ過安息香酸、オキソン(デュポン社登録商標)、過酸化水素水、尿素−過酸化水素付加体(UHP)、オキサジリジン、N−メチルモルホリンオキシド(NMO)、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)またはこれら酸化剤の混合物である〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
〔9〕
不斉エポキシ化反応で使用する酸化剤が、過酸化水素水、尿素−過酸化水素付加体(UHP)またはこれら酸化剤の混合物である〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
〔10〕
不斉エポキシ化反応で使用する酸化剤が、過酸化水素水であり、濃度が、1〜100質量%である〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各種化合物の中間体として有用な光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書中「n」はノルマルを、「i」はイソを、「s」はセカンダリーを、「t」はターシャリーを、「c」はシクロを、「o」はオルトを、「m」はメタを、「p」はパラを意味する。
【0019】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明でシス−シリルオレフィン化合物を酸化剤で不斉エポキシ化する触媒として用いるチタン錯体は、式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)
【0020】
【化7】

【0021】
(式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRは、
水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−12アリールオキシ基又はC6−22アリール基
(該アリール基は、C1−4アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)又は、C1−7アルコキシ基で任意に置換されていてもよく、光学活性又は光学不活性である。)
であり、
は、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−12アリールオキシ基又はC6−18アリール基であり、
は、C1−4アルキル基、C6−18アリール基又は、2つのRが一緒になって環を形成する場合は、C3−5の二価の基であり、
は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、ニトロ基又はシアノ基であり、
Mは、TiJ
(TiJにおいて、Tiはチタン原子であり、J及びJはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、C1−4アルコキシドを示すか、JとJが一緒になって酸素原子を示すか、又は、JとJが一緒になって環を形成し、式(5)
【0022】
【化8】

【0023】
(式(25)中の部分構造式O−E−Oは、下記式(6)、下記式(6’)、下記式(7)、下記式(7’)、下記式(8)、下記式(8’)、下記式(9)及び下記式(9’)
【0024】
【化9】

【0025】
(式(6)、式(6’)、式(7)、式(7’)、式(8)、式(8’)、式(9)及び式(9’)中のR、R、R及びRは前記と同じであり、このとき、式(5)中の2つの部分構造式O−E−Oは互いに同じである。)の何れかで表される。)で表される二核錯体を形成する場合を示す。)
の何れかで表される。ここで、式(1’)の錯体は、式(1)の錯体の鏡像異性体であり、式(2’)の錯体は、式(2)の錯体の鏡像異性体であり、式(3’)の錯体は、式(3)の錯体の鏡像異性体であり、式(4’)の錯体は、式(4)の錯体の鏡像異性体である。
これらの中でも、式(2)、式(2’)、式(3)又は式(3’)で表される錯体が好ましい。
【0026】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中の各置換基について説明する。
【0027】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−12アリールオキシ基又はC6−22アリール基(該アリール基は、C1−4アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)又は、C1−7アルコキシ基で任意に置換されていてもよく、光学活性又は光学不活性である。)である。
【0028】
式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRを具体的に説明する。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、
該C1−4アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基及びt−ブチル基等が挙げられ、
該C1−4アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、c−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基及びc−ブトキシ基等が挙げられ、該C6−12アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−ビフェニリルオキシ基、3−ビフェニリルオキシ基及び4−ビフェニリルオキシ基等が挙げられ、
該C6−22アリール基(該アリール基は、C1−4アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)、C1−7アルコキシ基、またはベンジルオキシ基で任意に置換されていてもよく、光学活性又は光学不活性である。)としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−ペンタフルオロエチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2−i−プロポキシフェニル基、2−ベンジルオキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、2−メチル−1−ナフチル基、2−フェニル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、2−[3,5−ジメチルフェニル]−1−ナフチル基、2−[4−メチルフェニル]−1−ナフチル基、2−(o−ビフェニリル)−1−ナフチル基、2−(m−ビフェニリル)−1−ナフチル基及び2−(p−ビフェニリル)−1−ナフチル基等が挙げられる。なお、上記C6−22アリール基は、光学活性であっても、光学不活性であってもよい。
【0029】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRは、
水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、c−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、c−ブトキシ基、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、フェニル基、2−メチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、2−i−プロポキシフェニル基、2−ベンジルオキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、2−フェニル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、2−(m−ビフェニリル)−1−ナフチル基、2−(p−ビフェニリル)−1−ナフチル基が好ましく、これらの中でもRは、フェニル基、2−メチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−ベンジルオキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−ビフェニリル基、2−フェニル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、2−(m−ビフェニリル)−1−ナフチル基、2−(p−ビフェニリル)−1−ナフチル基(該2−フェニル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、2−(m−ビフェニリル)−1−ナフチル基又は、2−(p−ビフェニリル)−1−ナフチル基は、光学活性又は光学不活性である。)がより好ましく、これらの中でもRは、フェニル基、2−メチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−ベンジルオキシフェニル基、2−フェニル−1−ナフチル基がさらに好ましい。
【0030】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−12アリールオキシ基又はC6−18アリール基である。
【0031】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRを具体的に説明する。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、
該C1−4アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基及びt−ブチル基等が挙げられ、
該C1−4アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、c−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基及びc−ブトキシ基等が挙げられ、該C6−12アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−ビフェニリルオキシ基、3−ビフェニリルオキシ基及び4−ビフェニリルオキシ基等が挙げられ、
該C6−18アリール基としては、フェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−ビフェニリル基、2−フェニル−1−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、2−[3,5−ジメチルフェニル]−1−ナフチル基、2−[4−メチルフェニル]−1−ナフチル基及び2−メトキシ−1−ナフチル基等が挙げられる。
【0032】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、
メトキシ基、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、フェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−フェニルフェニル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、2−メトキシ−1−ナフチル基が好ましく、これらの中でもRは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、フェニルオキシ基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−フェニルフェニル基がより好ましく、これらの中でもRは、水素原子がさらに好ましい。
【0033】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRは、C1−4アルキル基、C6−18アリール基又は、2つのRが一緒になって環を形成する場合は、C3−5の二価の基である。
【0034】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRを具体的に説明する。
該C1−4アルキルとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基及びt−ブチル基等が挙げられ、該C6−18アリール基としては、フェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ビフェニリル基、2−フェニル−1−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、2−[3,5−ジメチルフェニル]−1−ナフチル基、2−[4−メチルフェニル]−1−ナフチル基及び2−メトキシ−1−ナフチル基等が挙げられ、2つのRが一緒になって環を形成する場合は、C3−5の二価の基であり、トリメチレン基及びテトラメチレン基等が挙げられる。
【0035】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRはフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2つのRが結合したテトラメチレン基が好ましく、これらの中でもRは、2つのRが互いに結合したテトラメチレン基がより好ましい。
【0036】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、ニトロ基又はシアノ基である。
【0037】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRを具体的に説明する。
該ハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、
該C1−4アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基及びt−ブチル基等が挙げられ、該C1−4アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基及びt−ブトキシ基等が挙げられる。
【0038】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基が好ましく、これらの中でも、Rとしては、水素原子がより好ましい。
【0039】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のMは、TiJ(TiJにおいて、Tiはチタン原子であり、J及びJはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、C1−4アルコキシドを示すか、JとJが一緒になって酸素原子を示すか、又は、JとJが一緒になって環を形成し、式(5)
【0040】
【化10】

【0041】
(式(25)中の部分構造式O−E−Oは、下記式(6)、下記式(6’)、下記式(7)、下記式(7’)、下記式(8)、下記式(8’)、下記式(9)及び下記式(9’)
【0042】
【化11】

【0043】
(式(6)、式(6’)、式(7)、式(7’)、式(8)、式(8’)、式(9)及び式(9’)中のR、R、R及びRは前記と同じであり、このとき、式(5)中の2つの部分構造式O−E−Oは互いに同じである。)の何れかで表される。)で表される二核錯体を形成する場合を示す。)である。
なお、JとJが一緒になって酸素原子を示す場合は、式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)は分子全体の構造として単核のオキソチタン錯体となり、JとJが一緒になって環を形成し二価の基である式(5)を示す場合は、式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)は分子全体の構造として複核錯体であるμ−オキソチタン(b+1)核錯体となる。
また、式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)が前記オキソチタン錯体またはμ−オキソチタン(b+1)核錯体である場合、本発明の光学活性チタン錯体は、これらオキソチタン錯体またはbが1から10のいずれかの状態であるμ−オキソチタン(b+1)核錯体の混合物であっても良い。
好ましいJとJとしては、JとJが一緒になって酸素原子を示すか、またはJとJが一緒になって環を形成し、式(5)で表される二核錯体を形成する場合が挙げられる。
【0044】
さらに本発明の光学活性チタン錯体について、前記式(1)、式(1’)、式(3)、及び式(3’)で表される光学活性チタンサラレン錯体と式(2)、式(2’)、式(4)、及び式(4’)で示されるチタンサラン錯体のタイプ別に分け、好ましい置換基の組み合わせと分子全体の構造を説明する。
【0045】
前記式(1)、式(1’)、式(3)、及び式(3’)で表される光学活性チタンサラレン錯体は、JとJが一緒になって環を形成し二価の基である前記式(5)を示し、式(5)においてbが1であることが好ましい。この場合、式(1)、式(1’)、式(3)、及び式(3’)は分子全体の構造として下記式(18)及び(18’)で示される
μ−オキソチタン二核錯体となる。
【0046】
【化12】

【0047】
(式中、O−NH−N−Oは、式(1)においては下記式(19)、式(1’)においては式(19’)、 式(2)においては式(20)及び式(2’)においては式(20’)
【0048】
【化13】

【0049】
(ここで、R、R、R及びRは、前記と同じである)であり、式(18’)の錯体は、式(18)の錯体の鏡像異性体である。)
【0050】
前記光学活性チタンサラレン錯体の中で特に好ましい置換基の組み合わせと分子全体の構造を説明する。特に好ましい光学活性チタンサラレン錯体は、式(18)及び式(18’)で表され、式中の部分構造O−NH−N−Oが、下記式(21)、(21’)、(22)又は式(22’)
【0051】
【化14】

【0052】
である(aRSΔ,aRSΔ)−ジ−μ−オキソチタン二核錯体と(aSRΛ,aSRΛ)−ジ−μ−オキソチタン二核錯体である。
【0053】
前記式(2)、式(2’)、式(4)及び式(4’)で表される光学活性チタンサラン錯体における特に好ましい置換基の組み合わせとしては、下記式(31)、(31‘)、(32)および(32’)
【0054】
【化15】

【0055】
(式中のMはTiJであり、JとJは一緒になって酸素原子であるか、又は一緒になって環を形成し二価の基である前記式(5)であり、式(5)においてbは1から10の整数であり、部分構造O−E−Oはそれぞれ下記式(23)、(23’)、(24)又は式(24’)
【0056】
【化16】

【0057】
である。)で示される単核のオキソチタン錯体、又はμ−オキソチタン(b+1)量体(bは1〜10の整数である。)が挙げられる。
【0058】
次に、式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)で記載される光学活性チタン錯体の製造法を説明する。
【0059】
式(2)、式(2’)、式(4)、及び式(4’)で示されるチタンサラン錯体の配位子である式(26)、式(26’)、式(28)又は式(28’)で示されるサラン配位子については、それぞれ式(25)、式(25’)、式(27)又は式(27’)で示されるサレン化合物を還元して製造することができる。
【0060】
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、シアン化水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)及び水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)等が挙げられ、
水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)が好ましい。
【0061】
【化17】



【0062】
式(2)、式(2’)、式(4)、及び式(4’)で表される光学活性チタンサラン錯体は、対応するサラン配位子を、チタンアルコキシド、四塩化チタン又は四臭化チタンと、ジクロロメタン等の有機溶媒中で反応させた後、水又は含水溶媒(有機溶媒に水を質量%で0.1〜100%含有させた混合溶媒であり、用いる有機溶媒としてはTHF、メタノール及びi−プロパノール等が挙げられる。)で処理することで製造できる。
また、反応系中で上記の光学活性チタンサラン錯体を生成させ、触媒として単離せずにシス−シリルオレフィン化合物の不斉エポキシ化反応を行うこともできる。
チタン化合物としては、チタンアルコキシドが好ましく、該チタンアルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトラi−プロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド及びチタンテトラt−ブトキシド等が挙げられ、これらの中でも、チタンテトラi−プロポキシド[Ti(Oi−Pr)]がより好ましい。
【0063】
式(1)、式(1’)、式(3)、及び式(3’)で表される光学活性チタンサラレン錯体は、非特許文献8(Angew.Chem.Int.Ed.(2005年),44,4935−4939.)記載の方法に従って製造できる。すなわち、対応するサレン配位子を、チタンアルコキシドと反応させ、Meerwein−Ponndrof−Verley(MPV)還元反応によりサレン配位子の2つのイミノ結合の一方を還元させつつチタン錯体を形成させ、反応終了後、水又は含水溶媒(有機溶媒に水を質量%で0.1〜100%含有させた混合溶媒であり、用いる有機溶媒としてはTHF、メタノール及びi−プロパノール等が挙げられる。)で処理することで製造することができる。
また、反応系中で上記の光学活性チタンサラレン錯体を生成させ、触媒として単離せずにシス−シリルオレフィン化合物の不斉エポキシ化反応を行うこともできる。
なお、該チタンアルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトラi−プロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド及びチタンテトラt−ブトキシド等が挙げられ、これらの中でも、チタンテトラi−プロポキシド[Ti(Oi−Pr)]が好ましい。チタンアルコキシドの使用量は、上記サレン配位子の1モルに対し、1〜2モルの範囲が好ましい。また、水の使用量は、上記サレン配位子の当量に対し、1〜1000モルの範囲が好ましく、1〜10モルの範囲がより好ましい。
【0064】
光学活性チタン錯体を製造する際の反応溶媒は、非プロトン性の有機溶媒、プロトン性の有機溶媒又はこれら溶媒の混合物である。非プロトン性の有機溶媒としては、ハロゲン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒又はニトリル系溶媒等が挙げられ、具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル等が挙げられる。プロトン性の有機溶媒としては、アルコール系溶媒が挙げられ、具体的には、エタノール、i−プロパノール又はt−ブタノール等が挙げられる。
好ましい反応溶媒は非プロトン性の有機溶媒であるジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、酢酸エチルである。
【0065】
本発明の製造方法では、式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)の光学活性チタン錯体を用いて出発原料であるシス−シリルオレフィン化合物を不斉エポキシ化することで、シス−シリルオレフィンオキシド化合物の鏡像異性体の一方を高い選択率で製造することができる。具体的には、式(1)の錯体又は式(1’)の錯体の何れかを使うことによって、光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の両鏡像異性体の一方を選択的に製造することができる。式(2)の錯体又は式(2’)の錯体の何れかを使うことによって、光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の両鏡像異性体の一方を選択的に製造することができる。式(3)の錯体又は式(3’)の錯体の何れかを使うことによって、光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の両鏡像異性体の一方を選択的に製造することができる。式(4)の錯体又は式(4’)の錯体の何れかを使うことによって、光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の両鏡像異性体を選択的に製造することができる。
【0066】
次に、本発明の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法について説明する。前記式(10)
【0067】
【化18】

【0068】
(式中R、R、R、R、R、R10及びnは前記と同じである。)
で表されるシス−シリルオレフィン化合物と式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)である光学活性チタン錯体とを窒素雰囲気下、又は大気中で有機溶媒に溶解させ、その反応溶液へ酸化剤を添加し撹拌することにより、不斉エポキシ化反応を行い、下記式(11)
【0069】
【化19】

【0070】
(式中R、R、R、R、R、R10及びnは前記と同じである。*で示された炭素原子の絶対配置は(R)又は(S)を意味する。)で表される光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物を製造する方法であり、以下の反応式1で示される方法によって製造することができる。
反応式1
【0071】
【化20】

【0072】
反応式1
(式中R、R、R、R、R、R10及びnは前記と同じである。*で示された炭素原子の絶対配置は(R)又は(S)を意味する。)
は、溶媒中で、式(10)で表されるシス−シリルオレフィン化合物を、酸化剤及び光学活性チタン錯体で処理することにより、式(11)で表される光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物を製造する方法を示す。
【0073】
本発明の出発原料である前記式(10)で示されるシス−シリルオレフィン化合物は、対応するアルキニルシランとジイソブチルアルミニウムハイドライドから、Eisch, J. J.; Foxton, M. W. J. Org. Chem. 1971, 36, 3520.記載の方法で製造することができる。
【0074】
前記式(10)で表されるシス−シリルオレフィン化合物についての各置換基を具体的に説明する。
【0075】
式(10)中のRは、Rは水素原子、C1−22アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、C6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)である。
【0076】
を具体的に説明する。該C1−22アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、イコシル基、ドコシル基等が挙げられる。該C1−4アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。該C6−10アリール基としては、フェニル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ブロモフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−ブロモフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、o−(t−ブチル)フェニル基、m−(t−ブチル)フェニル基、p−(t−ブチル)フェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0077】
としては、フェニル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ブロモフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−ブロモフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、o−(t−ブチル)フェニル基、m−(t−ブチル)フェニル基、p−(t−ブチル)フェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o−フェニルフェニル基、m−フェニルフェニル基、p−フェニルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基が好ましく、例えば、フェニル基、o−ブロモフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−ブロモフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−フェニルフェニル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基が好ましい。
【0078】
式(10)中のR、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、C1−22アルキル基又はC6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)である。
【0079】
、R及びRを具体的に説明する。該C1−22アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、イコシル基、ドコシル基等が挙げられる。該C6−10アリール基は、フェニル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ブロモフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−ブロモフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、o−(t−ブチル)フェニル基、m−(t−ブチル)フェニル基、p−(t−ブチル)フェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0080】
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、イコシル基、ドコシル基、フェニル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ブロモフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−ブロモフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、o−(t−ブチル)フェニル基、m−(t−ブチル)フェニル基、p−(t−ブチル)フェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基が好ましく、例えば、メチル基又はフェニル基が更に好ましい。
【0081】
式(10)中のR及びR10はそれぞれ独立して水素原子、C1−6アルキル基
(該アルキル基は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基(該アルコキシ基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)又は水酸基により任意に置換されていてもよい。)
又はC6−14アリール基(該アリール基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基(該アルコキシ基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)又は水酸基により任意に置換されていてもよい。)又はC1−6アルコキシ基(該アルコキシ基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)により任意に置換されていてもよい。)である。
【0082】
式(10)中のR及びR10の各置換基を具体的に説明する。
該C1−6アルキル基としては、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、i−ペンチル基、ネオペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基及び3,3−ジメチル−n−ブチル基等が挙げられ、該C6−14アリール基としては、フェニル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基及び9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0083】
式(10)中のR及びR10は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、より好ましくは、メチル基である。
【0084】
式(10)中のnは0ないし3の整数を表す。
【0085】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)の何れかで表される光学活性チタン錯体を触媒として使用し、その光学活性チタン錯体の使用量が、式(10)で表されるシス−シリルオレフィン化合物に対し、0.001〜100モル%の範囲であり、0.01〜20モル%の範囲が好ましく、0.3〜5モル%の範囲がより好ましい。
【0086】
前記式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)の何れかで表される光学活性チタン錯体を触媒として使用し、不斉エポキシ化反応で使用する溶媒が、非プロトン性の有機溶媒としては、ハロゲン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒又はニトリル系溶媒であり、プロトン性の有機溶媒としては、アルコール系溶媒である。ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられ、芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられ、エステル系溶媒としては、酢酸エチル等が挙げられ、エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフランやジエチルエーテル等が挙げられ、ニトリル系溶媒としては、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、i−プロパノール等が挙げられ、さらに、上記の溶媒の混合物も挙げられる。また、本反応で過酸化水素の水溶液(過酸化水素水)を使用する際に、水に溶解しない有機溶媒と混合されることより有機相と水相が分離することもあるが、このような2相系の溶媒も本発明の反応溶媒として用いることができる。好ましい溶媒は、非プロトン性の有機溶媒であるジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、酢酸エチル、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0087】
製造操作としては、有機溶媒に、シス−シリルオレフィン化合物、光学活性チタン錯体、酸化剤を加えれば、反応は進行する。添加順序としては、有機溶媒、シス−シリルオレフィン化合物、光学活性チタン錯体よりなる溶液に酸化剤を添加するのが好ましい。
【0088】
反応で使用する酸化剤の具体例としては、ヨードソベンゼン、次亜塩素酸ナトリウム、m−クロロ過安息香酸、オキソン(デュポン社登録商標)、過酸化水素水、尿素−過酸化水素付加体(UHP)、オキサジリジン、N−メチルモルホリンオキシド(NMO)、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)及びこれら酸化剤の混合物が挙げられる。この中でも過酸化水素水、尿素−過酸化水素付加体(UHP)及びこれら酸化剤の混合物が好ましい。酸化剤が、過酸化水素水である場合の濃度は1〜100%(重量%)の範囲が挙げられるが、5〜60%(重量%)の範囲が好ましい。
【0089】
反応で使用する酸化剤の使用量としては、式(10)で表されるシス−シリルオレフィン化合物に対し1〜10当量の範囲が挙げられるが、1〜3当量の範囲が好ましい。
【0090】
酸化剤の添加方法としては、一括添加の他に分割添加と連続添加が挙げられる。
連続添加の場合、添加速度は反応溶媒系中の内温が急激に上昇しない範囲が好ましく、具体的には毎時0.01〜40000当量の範囲が好ましく、より好ましくは毎時0.05〜0.3当量の範囲である。また、分割添加とは、用いる酸化剤を、p回(pは、任意の整数)に分けて添加する方法である。分割は等分でも非等分でも良く、pは、2〜100の範囲が好ましい。
【0091】
反応温度は、−78℃〜溶媒還流温度又は、使用する溶媒融点温度〜溶媒還流温度の範囲が挙げられるが、−20〜50℃の範囲が好ましく、0〜35℃の範囲がより好ましい。
【0092】
反応系中の圧力は、10kPa〜1100kPaの範囲が挙げられるが、15kPa〜200kPaが好ましい。加圧することで、常圧時の溶媒還流温度より高い温度で反応することができる。
【0093】
反応を行っている最中に、触媒である光学活性チタン錯体を追加して添加し、反応時間を短縮することができる。また、酸化剤を追加して添加し、反応時間を短縮することができる。
【0094】
反応終了後は、蒸留操作、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、分液抽出操作、再結晶操作又は上記の操作を組み合わせ分離精製して目的とする光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物を得ることができる。
【0095】
得られた光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の光学純度は、光学活性高速液体クロマトグラフィー分析、光学活性ガスクロマトグラフィー分析又は旋光度測定等により、分析することができる。
【0096】
本願発明の製造方法によって得られた光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物は、下記のように、様々な化合物に誘導することができる。
【0097】
【化21】



【0098】
(式中、R、R、R、R、R、R10及びnは前記と同じである。*で示された炭素原子の絶対配置は(R)又は(S)を意味する。Rはアルキル基等を、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を、Lはメトキシ(メチル)アミノ基等の脱離基を表す。)
【0099】
以下、実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
なお、以下の実施例において、全ての反応は加熱乾燥させたガラス容器にて攪拌子で攪拌しつつ行った。1H および 13C NMRスペクトルは、JEOL AL-400 spectrometerで測定した。1H NMRではテトラメチルシラン (TMS)を内部標準物質(0 ppm)として用い、 13C NMRではCDCl3を内部標準物質(77.0 ppm)として用いた。旋光性についてはJASCO P-1020 polarimeterにて測定した。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)はShimazu LC-10AT-VPに、ダイセル化学工業製の光学活性カラム上の様々な波長の検出器を装着したものを用いて測定した。塩化メチレンと過酸化水素水(30~35% in water)は、関東化学より購入したものをそのまま使用した。(Z)-アルケニルシランは、対応するアルキニルシランからEisch, J. J.; Foxton, M. W. J. Org. Chem. 1971, 36, 3520.に記載された方法で合成した。
【実施例】
【0101】
実施例1.アルケニルシランの不斉酸化
【0102】
【化21】

【0103】
上記の式で表されるチタンサラレン錯体1 (4.5-18 mg, 0.5-2.0 mol%)とアルケニルシラン(0.50 mmol) とをCH2Cl2 (0.50 mL)に溶解させ、そこへ30~35%過酸化水素水(85mL, 0.75 mmol) を加え、25 °Cで攪拌した。反応が完結した後、混合物を、n−ペンタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とするエポキシシランを得た。光学純度(ee)は、光学活性HPLC分析にて決定した。

実施例2.エポキシシランからのスチレンオキシドの製造
エポキシシランをTHF (4 mL/mmol)に溶解させた。そこへ、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)(1 molL-1THF溶液、1.5-2当量)を加え、室温又は50 °Cで攪拌した。反応が完結した後、混合物をジエチルエーテルで抽出し、水と食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。粗生成物をn-ペンタン/ジエチルエーテルを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、対応するエポキシドを得た。光学純度(ee)は、光学活性HPLC分析にて決定した。
以下、実施例1および2に従って製造した化合物の収率、光学純度および物性値を示す。なお、yieldは収率を表す。また、光学純度の決定に用いたCHIRALPAK IC、CHIRALCEL OD-H、
CHIRALPAK AD-H、CHIRALPAK IAおよびCHIRALCEL OJ-Hは、ダイセル化学工業の登録商標である。


トリメチル((2R,3S)-3-フェニルオキシラン-2-イル)シラン
無色油状物, 87% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D25+64.7° (c=0.77, CHCl3); FTIR (neat): n=3061, 3030, 2955, 2903, 1607, 1499, 1450, 1389, 1315, 1252, 1188, 1072, 1026, 905, 845, 737, 700, 648 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.35-7.23 (m, 5H), 4.26-4.25 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 2.52-2.51 (d, J= 5.4 Hz, 1H), -0.17 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d 138.0, 128.0, 127.4, 126.1, 57.1, 53.4, -2.3 ppm; 元素分析: C11H16OSiの計算値 (%): C 68.69, H 8.39; 実測値: C 68.83, H 8.42.


(S)-2-フェニルオキシラン
無色油状物, 69% yield, >99% ee (CHIRALCEL OD-H, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D23+26.1° (c=0.48, CHCl3); 1H NMR (CDCl3): d 7.39-7.26 (m, 5H), 3.88-3.85 (dd, J = 2.6, 4.0 Hz, 1H), 3.17-3.13 (dd, J = 4.0, 5.6 Hz, 1H), 2.82-2.79 ppm (dd, J = 2.6, 5.6 Hz, 1H).


ジメチル(フェニル)((2R,3S)-3-フェニルオキシラン-2-イル)シラン
無色油状物, 95% yield, >99% ee (CHIRALPAK AD-H, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+33.9° (c=0.79, CHCl3); FTIR (neat): n=3059, 3034, 2957, 2905, 1595, 1489, 1455, 1423, 1389, 1312, 1252, 1184, 1113, 1072, 1026, 903, 822, 777, 733, 700, 667 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.42-7.24 (m, 10H), 4.29-4.27 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 2.72-2.70 (d, J= 5.3 Hz, 1H), 0.08 (s, 3H), -0.04 ppm (s, 3H); 13C NMR (CDCl3): d 137.5, 136.9, 133.8, 129.3, 127.9, 127.8, 127.4, 126.2, 57.1, 52.9, -3.4, -4.2 ppm; 元素分析: C16H18OSiの計算値 (%): C 75.54, H 7.13; 実測値: C 75.43, H 7.15.


[(2R,3S)-3-(2-メトキシフェニル) オキシラン-2-イル]トリメチルシラン
無色油状物, 94% yield, >99% ee (CHIRALCEL OD-H, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+153° (c=0.78, CHCl3); FTIR (neat): n=3045, 2955, 2905, 2837, 1597, 1495, 1462, 1387, 1313, 1250, 1171, 1111, 1028, 905, 841, 754, 718, 652 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.30-7.22 (m, 2H), 6.93-6.89 (m, 1H), 6.84-6.82 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 4.23-4.22 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 2.59-2.57 (d, J = 5.4 Hz, 1H), -0.20 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d 157.6, 128.4, 126.9, 126.7, 120.0, 109.3, 55.0, 54.4, 53.1, -2.4 ppm; 元素分析: C12H18O2Siの計算値 (%): C 64.82, H 8.16; 実測値: C 65.01, H 8.20.


(S)-2-(2-メトキシフェニル) オキシラン
無色油状物, 81% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+55.3° (c=0.93, CHCl3); FTIR (neat): n=3047, 2993, 2947, 2839, 1597, 1497, 1464, 1387, 1288, 1250, 1169, 1134, 1101, 1026, 989, 937, 881, 822, 799, 754 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.30-7.23 (m, 1H), 7.17-7.13 (dd, J = 2.0, 7.6 Hz, 1H), 6.97-6.91 (ddd, J = 0.7, 7.6, 8.2 Hz, 1H), 6.90-6.87 (dd, J = 0.7, 8.2 Hz, 1H), 4.22-4.19 (dd, J = 2.6, 4.3 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.16-3.12 (dd, J = 4.3, 5.6 Hz, 1H), 2.72-2.69 ppm (dd, J = 2.6, 5.6 Hz, 1H); 13C NMR (CDCl3): d 158.1, 128.8, 126.1, 125.0, 120.7, 110.1, 55.4, 50.6, 48.2 ppm; 元素分析: C12H18O2Siの計算値 (%): C 64.82, H 8.16; 実測値: C 65.01, H 8.20.


[(2R,3S)-3-(3メトキシフェニル) オキシラン-2-イル]トリメチルシラン
無色油状物, 96% yield, >99% ee (CHIRALCEL OD-H, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+44.9° (c=0.91, CHCl3); FTIR (neat): n=3055, 2955, 2905, 2837, 1595, 1487, 1460, 1431, 1385, 1319, 1283, 1244, 1155, 1043, 897, 845, 783, 762, 729, 696 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.25-7.19 (dd, J = 7.9, 7.9 Hz, 1H), 6.94-6.89 (m, 2H), 6.82-6.78 (m, 1H), 4.24-4.22 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H), 2.52-2.50 (d, J = 5.64 Hz, 1H), -0.15 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d 159.4, 139.6, 129.1, 118.6, 113.3, 111.3, 57.0, 55.2, 53.5, -2.2 ppm; 元素分析: C12H18O2Siの計算値 (%): C 64.82, H 8.16; 実測値: C 64.94, H 8.19.


(S)-2-(3-メトキシフェニル) オキシラン
無色油状物, 85% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+12.6° (c=0.88, CHCl3); 1H NMR (CDCl3): d 7.28-7.24 (m, 1H), 6.90-6.81 (m, 3H), 3.85-3.84 (m, 1H), 3.81 (s, 3H), 3.15-3.12 (m, 1H), 2.79-2.77 ppm (ddd, J= 1.2, 2.4, 5.6 Hz, 1H).


[(2R,3S)-3-(2-ブロモフェニル) オキシラン-2-イル]トリメチルシラン
無色油状物, 10% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+148.2° (c=0.91, CHCl3); FTIR (neat): n=3063, 2957, 2907, 2860, 1572, 1470, 1435, 1414, 1383, 1315, 1250, 1190, 1155, 1115, 1053, 1024, 910, 847, 750, 696, 660 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.53-7.50 (dd, J = 1.0, 7.9 Hz, 1H), 7.39-7.36 (dd, J = 1.6, 7.6 Hz, 1H), 7.31-7.25 (m, 1H), 7.19-7.12 (m, 1H), 4.22-4.20 (d, J = 5..3 Hz, 1H), 2.65-2.63 (d, J = 5.3 Hz, 1H), -0.16 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d 137.8, 131.8, 129.0, 128.1, 127.0, 122.5, 58.1, 53.7, -2.3 ppm; 元素分析: C11H15BrOSiの計算値 (%): C 48.71, H 5.57; 実測値: C 48.92, H 5.58.


(S)-2-(2-ブロモフェニル) オキシラン
無色油状物, 82% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+54.6° (c=0.65, CHCl3); 1H NMR (CDCl3): d 7.55-7.53 (dd, J = 1.0, 8.1 Hz, 1H), 7.33-7.29 (m, 1H), 7.24-7.22 (dd, J = 2.0, 7.6 Hz, 1H), 7.19-7.15 (m, 1H), 4.17-4.14 (dd, J = 2.7, 4.2 Hz, 1H), 3.20-3.18 (dd, J = 4.2, 5.6 Hz, 1H), 2.66-2.64 ppm (dd, J = 2.7, 5.6 Hz, 1H).


[(2R,3S)-3-(3-ブロモフェニル) オキシラン-2-イル]トリメチルシラン
無色油状物, 98% yield, >99% ee (CHIRALCEL OJ-H, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+28.1° (c=1.00, CHCl3); FTIR (neat): n=3063, 2957, 2903, 2799, 1597, 1568, 1516, 1474, 1420, 1379, 1252, 1186, 1069, 1040, 999, 907, 841, 762, 700 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.50-7.49 (m, 1H), 7.42-7.38 (m, 1H), 7.29-7.26 (m, 1H), 7.21-7.16 (dd, J = 7.6, 7.6 Hz, 1H), 4.21-4.19 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 2.53-2.51 (d, J = 5.3 Hz, 1H), -0.14 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d 140.4, 130.5, 129.6, 129.2, 124.8, 122.2, 56.4, 53.7, -2.2 ppm; 元素分析: C11H15BrOSiの計算値 (%): C 48.71, H 5.57; 実測値: C 48.87, H 5.61.


(S)-2-(3-ブロモフェニル) オキシラン
無色油状物, 79% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+9.0° (c=1.20, CHCl3); 1H NMR (CDCl3): d 7.45-7.42 (m, 2H), 7.23-7.21 (m, 2H), 3.84-3.81 (dd, J = 2.6, 4.0 Hz, 1H), 3.16-3.13 (dd, J = 4.0, 5.6 Hz, 1H), 2.77-2.74 ppm (dd, J = 2.6, 5.6 Hz, 1H).


[(2R,3S)-3-(4-ブロモフェニル) オキシラン-2-イル]トリメチルシラン
無色油状物, 91% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D25+49.6° (c=1.06, CHCl3); FTIR (neat): n=3036, 2957, 2903, 1595, 1487, 1404, 1252, 1184, 1099, 1069, 1011, 907, 843, 752, 704, 658 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.47-7.43 (m, 2H), 7.24-7.20 (m, 2H), 4.19-4.17 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 2.52-2.51 (d, J = 5.4 Hz, 1H), -0.16 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d 137.1, 131.1, 127.9, 121.2, 56.6, 53.6, -2.2 ppm; 元素分析: C11H15BrOSiの計算値 (%): C 48.71, H 5.57; 実測値: C 48.91, H 5.62.


(S)-2-(4-ブロモフェニル) オキシラン
無色油状物, 82% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+20.5° (c=1.27, CHCl3); 1H NMR (CDCl3): d 7.50-7.45 (m, 2H), 7.18-7.13 (m, 2H), 3.84-3.81 (dd, J = 2.6, 4.0 Hz, 1H), 3.16-3.13 (dd, J = 4.0, 5.6 Hz, 1H), 2.77-2.74 ppm (dd, J = 2.6, 5.6 Hz, 1H).


[(2R,3S)-3-(ビフェニル-4-イル)オキシラン-2-イル]トリメチルシラン
白色固体, 99% yield, >99% ee (CHIRALPAK AD-H, hexane/iPrOH 99.9:0.1); 1H NMR (CDCl3): d 7.62-7.55 (m, 4H), 7.46-7.31 (m, 5H), 4.30-4.28 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 2.56-2.54 (d, J = 5.3 Hz, 1H), -0.14 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d 140.7, 140.3, 137.1, 128.8, 127.3, 127.0, 126.7, 126.6, 56.9, 53.6, -2.2 ppm; 元素分析: C11H15BrOSiの計算値 (%): C 48.71, H 5.57; 実測値: C 48.91, H 5.62.


(S)-2-(ビフェニル-4-イル)オキシラン
白色固体, 90% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D22+28.3° (c=1.05, CHCl3); 1H NMR (CDCl3): d 7.60-7.57 (m, 4H), 7.47-7.41 (m, 2H), 7.37-7.34 (m, 3H), 3.93-3.90 (dd, J = 2.6, 4.0 Hz, 1H), 3.20-3.17 (dd, J = 4.0, 5.6 Hz, 1H), 2.87-2.84 ppm (dd, J = 2.6, 5.6 Hz, 1H).


トリメチル[(2R,3S)-3-(ナフタレン-1-イル)オキシラン-2-イル]シラン
無色油状物, 92% yield, >99% ee (CHIRALCEL OD-H, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+258.8° (c=0.88, CHCl3); FTIR (neat): n=3053, 2953, 2901, 1593, 1510, 1412, 1371, 1342, 1252, 1213, 1157, 1059, 1024, 910, 843, 785, 696, 642 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 8.08-8.05 (m, 1H) 7.89-7.86 (m, 1H), 7.79-7.77 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.57-7.49 (m, 3H), 7.45-7.41 (dd, J = 7.3, 8.1 Hz, 1H), 4.66-4.65 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 2.79-2.77 (d, J = 5.4 Hz, 1H), -0.33 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d 133.9, 133.0, 131.2, 128.6, 127.7, 126.0, 125.8, 125.2, 123.5, 123.3, 56.1, 53.5, -2.4 ppm; 元素分析: C15H18OSiの計算値 (%): C 74.33, H 7.49; 実測値: C 74.42, H 7.59.


(S)-2-(ナフタレン-1-イル)オキシラン
無色油状物, 93% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+88.8° (c=0.83, CHCl3); 1H NMR (CDCl3): d 8.16-8.14 (m, 1H), 7.91-7.88 (m, 1H), 7.82-7.80 (m, 1H), 7.59-7.44 (m, 4H), 4.51-4.49 (dd, J = 2.9, 4.2 Hz, 1H), 3.32-3.29 (dd, J = 4.2, 5.9 Hz, 1H), 2.83-2.81 ppm (dd, J= 2.9, 5.9 Hz, 1H).



トリメチル[(2R,3S)-3-(ナフタレン-2-イル)オキシラン-2-イル]シラン
無色油状物, 96% yield, >99% ee (CHIRALPAK IA, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24 -4.7° (c=0.74, CHCl3); FTIR (neat): n=3053, 2955, 2903, 1603, 1508, 1393, 1348, 1250, 1157, 1128, 1026, 893, 845, 795, 752, 700 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.84-7.79 (m, 4H), 7.50-7.45 (m, 3H), 4.40-4.39 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 2.61-2.60 (d, J = 5.4 Hz, 1H), -0.18 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d135.5, 133.0, 132.8, 127.8, 127.7, 127.7, 126.2, 125.8, 124.7, 124.3, 57.3, 53.8, -2.1 ppm; 元素分析: C15H18OSiの計算値 (%): C 74.33, H 7.49; 実測値: C 74.11, H 7.59.


(S)-2-(ナフタレン-2-イル)オキシラン
無色油状物, 93% yield, >99% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D24+12.4° (c=0.90, CHCl3) ); 1H NMR (CDCl3): d 7.84-7.80 (m, 4H), 7.52-7.44 (m, 2H), 7.35-7.31 (dd, J = 1.6, 8.6 Hz, 1H) 4.05-4.02 (dd, J = 2.6, 4.0 Hz, 1H), 3.25-3.21 (dd, J = 4.0, 5.6 Hz, 1H), 2.93-2.90 ppm (dd, J = 2.6, 5.6 Hz, 1H).


トリメチル[(2R,3S)-3-フェネチルオキシラン-2-イル]シラン
無色油状物, 12% yield, 97% ee (CHIRALCEL OD-H, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D25 +3.1° (c=0.82, CHCl3); FTIR (neat): n=3061, 3026, 2957, 2924, 2858, 1599, 1495, 1452, 1418, 1329, 1252, 1180, 1070, 1028, 953, 843, 750, 698 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.32-7.28 (m, 2H), 7.22-7.19 (m, 3H), 3.17-3.13 (m, 1H), 2.91-2.83 (m, 1H), 2.80-2.73 (m, 1H), 2.24-2.22 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 1.93-1.85 (m, 1H), 1.80-1.71 (m, 1H), 0.13 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d 141.4, 128.5, 128.4, 126.0, 57.0, 50.9, 33.5, 33.3, -1.7 ppm; 元素分析: C13H20OSiの計算値 (%): C 70.85, H 9.15; 実測値: C 70.68, H 9.11.


(S)-2-フェネチルオキシラン
無色油状物, 74% yield, 97% ee (CHIRALPAK IC, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D22 -16.3° (c=0.38, CHCl3) ): d 7.32-7.28 (m, 2H), 7.22-7.18 (m, 3H), 2.98-2.93 (m, 1H), 2.87-2.72 (m, 3H), 2.49-2.47 (dd, J = 2.7, 5.1 Hz, 1H), 1.93-1.79 ppm (m, 2H).

【0104】
実施例3.アルケニルシランの不斉酸化その2
サラン配位子である式2
【0105】
【化22】

【0106】
(27mg,0.050mmol)(基質に対して10モル%)のジクロロメタン溶液(0.5mL)に20℃で、チタンテトライソプロポキシド[Ti(Oi−Pr)](2.8mg,0.010mmol)を加えた。20℃で1時間撹拌した後、cis-1-ジメチル(フェニル)シリル-2-フェニルエチレン (0.50 mmol) のCH2Cl2(0.50 mL)溶液を加え、そこへ30~35%過酸化水素水(85mL, 0.75 mmol) を加え、40 °Cで攪拌した。反応が完結した後、混合物を、n−ペンタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とするジメチル(フェニル)((2R,3S)-3-フェニルオキシラン-2-イル)シランを得た。収率は59%、光学純度(ee)は99%eeであった。

実施例4.トリメチル[(2R,3S)-3-メチル-3-(ナフタレン-2-イル)オキシラン-2-イル]シランの製造
トリメチル[(2R,3S)- 3-(ナフタレン-2-イル)オキシラン-2-イル]シラン(9.8 mg, 0.40 mmol) を無水THF (1.6 mL) に窒素雰囲気下で溶解し、-78 °Cに冷却した。そこへ、n-ブチルリチウム(2.69 molL-1 のヘキサン溶液180.3 mL, 0.48mmol) を滴下し、反応混合物を-78 °C で 90分攪拌した。そこへヨウ化メチル(99.8 mL, 1.60 mmol)を加え、-78 °Cで15分攪拌した。その後、反応混合物を室温に戻し、更に1時間攪拌した。水で反応をクエンチしたあと、酢酸エチルで抽出し、有機相を水及び食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ペンタン/ジエチルエーテル=0/0)で精製し、トリメチル[(2R,3S)-3-メチル-3-(ナフタレン-2-イル)オキシラン-2-イル]シランを71%の収率で得た。

トリメチル[(2R,3S)-3-メチル-3-(ナフタレン-2-イル)オキシラン-2-イル]シラン
無色油状物, 71% yield, >99% ee (CHIRALPAK IA, hexane/iPrOH 99.9:0.1); [a]D22+9.4° (c=1.14, CHCl3); FTIR (neat): n=3053, 3022, 2961, 2897, 1631, 1613, 1576, 1504, 1441, 1410, 1366, 1308, 1250, 1221, 1194, 1134, 1074, 1022, 955, 845, 777, 748, 671 cm-1; 1H NMR (CDCl3): d 7.83-7.78 (m, 4H), 7.49-7.45 (m, 3H), 2.49 (s, 1H), 1.77 (s, 3H), -0.26 ppm (s, 9H); 13C NMR (CDCl3): d 139.1, 133.0, 132.6, 127.9, 127.7, 127.6, 126.2, 125.8, 124.8, 124.8, 62.9, 61.0, 27.1, -2.5 ppm; 元素分析: C16H20OSiの計算値 (%): C 74.95, H 7.86; 実測値: C 75.07, H 7.87.

この化合物は、実施例2記載の方法で下記化合物に誘導した。


(S)-2-メチル-2-(ナフタレン-2-イル)オキシラン
白色固体, 85% yield, >99% ee (CHIRALCEL OJ-H, hexane/iPrOH 99.5:0.5); [a]D23+3.3° (c=1.00, CHCl3); 1H NMR (CDCl3): d 7.85-7.80 (m, 4H), 7.51-7.43 (m, 3H), 3.06-3.04 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 2.90-2.88 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 1.82 ppm (s, 3H).

【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、目的物を光学分割するための分離操作を用いず99%ee以上の高い光学純度を有する光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物を90%以上の高収率で得ることができ、各種化合物の中間体として十分に使用することができる。よって、本発明は、工業的に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)
【化1】


(式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−12アリールオキシ基又はC6−22アリール基(該アリール基は、C1−4アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)、C1−7アルコキシ基、またはベンジルオキシ基で任意に置換されていてもよく、光学活性又は光学不活性である。)であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−12アリールオキシ基又はC6−18アリール基であり、Rは、C1−4アルキル基、C6−18アリール基又は、2つのRが一緒になって環を形成する場合は、C3−5の二価の基であり、Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、ニトロ基又はシアノ基であり、Mは、TiJ(TiJにおいて、Tiはチタン原子であり、J及びJはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、C1−4アルコキシドを示すか、JとJが一緒になって酸素原子を示すか、又は、JとJが一緒になって環を形成し、式(5)
【化2】


(式(25)中の部分構造式O−E−Oは、下記式(6)、下記式(6’)、下記式(7)、下記式(7’)、下記式(8)、下記式(8’)、下記式(9)及び下記式(9’)
【化3】


(式(6)、式(6’)、式(7)、式(7’)、式(8)、式(8’)、式(9)及び式(9’)中のR、R、R及びRは前記と同じであり、このとき、式(5)中の2つの部分構造式O−E−Oは互いに同じである。)の何れかで表される。)で表される二核錯体を形成する場合を示す。)である。)の何れかで表される光学活性チタン錯体を触媒として使用し、下記式(10)
【化4】


(Rは水素原子、C1−22アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、C6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)であり、
、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、C1−22アルキル基又はC6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)であり、
及びR10は、それぞれ独立して水素原子、C1−6アルキル基
(該アルキル基は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基
(該アルコキシ基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)
又は水酸基により任意に置換されていてもよい。)
又はC6−14アリール基(該アリール基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基
(該アルコキシ基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)
又は水酸基により任意に置換されていてもよい。)
又はC1−6アルコキシ基
(該アルコキシ基はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)
により任意に置換されていてもよい。)
であり、
nは0ないし3の整数である。)で表されるシス−シリルオレフィン化合物を酸化剤で不斉エポキシ化することを特徴とする下記式(11)
【化5】


(式中R、R、R、R、R、R10及びn前記と同じである。*で示された炭素原子の絶対配置は(R)又は(S)を意味する。)で表される光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
【請求項2】
式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)の何れかで表される光学活性チタン錯体が式(1)、式(1’)、式(2)及び式(2’)のいずれかで表される光学活性チタン錯体であり、Rが、フェニル基(該フェニル基は、C1−4アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)C1−7アルコキシ基、又はベンジルオキシ基で任意に置換されていてもよい。)であり、Rが水素原子であり、2つのRが一緒になってCの二価の基である請求項1に記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
【請求項3】
式(1)、式(1’)、式(2)、式(2’)、式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)の何れかで表される光学活性チタン錯体が式(3)、式(3’)、式(4)及び式(4’)のいずれかで表される光学活性チタン錯体であり、Rが、ナフチル基(該ナフチル基は、C1−4アルキル基(該アルキル基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)C1−7アルコキシ基、又はベンジルオキシ基で任意に置換されていてもよく、光学活性又は光学不活性である。)であり、Rが水素原子であり、2つのRが一緒になってCの二価の基である請求項1に記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
【請求項4】
nが0であり、Rがフェニル基(該フェニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、C6−10アリール基(該アリール基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、C1−4アルキル基、若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)若しくはC1−4アルコキシ基で置換されている。)である請求項1ないし3のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
【請求項5】
光学活性チタン錯体が下記式1
【化6】


で表される錯体またはその対掌体である、請求項1から4のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
【請求項6】
不斉エポキシ化反応で使用する溶媒が、ハロゲン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール系溶媒であるか、又は前記の溶媒の混合物である請求項1ないし5のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
【請求項7】
不斉エポキシ化反応で使用する溶媒が、塩化メチレンである請求項1から5のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
【請求項8】
不斉エポキシ化反応で使用する酸化剤が、ヨードソベンゼン、次亜塩素酸ナトリウム、m−クロロ過安息香酸、オキソン(デュポン社登録商標)、過酸化水素水、尿素−過酸化水素付加体(UHP)、オキサジリジン、N−メチルモルホリンオキシド(NMO)、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)またはこれら酸化剤の混合物である請求項1ないし7のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
【請求項9】
不斉エポキシ化反応で使用する酸化剤が、過酸化水素水、尿素−過酸化水素付加体(UHP)またはこれら酸化剤の混合物である請求項1ないし7のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。
【請求項10】
不斉エポキシ化反応で使用する酸化剤が、過酸化水素水であり、濃度が、1〜100質量%である請求項1ないし7のいずれかに記載の光学活性シス−シリルオレフィンオキシド化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−275191(P2010−275191A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126105(P2009−126105)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本化学会第89春季年会 2009年 講演予稿集II 平成21年3月13日
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】