説明

光学活性リグナンの製造方法

【課題】光学活性セサモリン、及びセサモリン代謝産物の効率的な合成法を提供する。
【解決手段】セサモリンの合成中間体であるサミンに対して、リパーゼを用い光学活性アシル化サミンを得た後、光学活性アシル化サミンは、Grignard試薬などとの反応により、光学活性セサミンへ誘導でき、また、同時に得られる光学活性サミンは、天然に存在するセサミンやセサモリンなどと鏡像異性体の関係にあるアサリニン(漢方薬であるサイシンの成分)などの合成に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学活性セサモリンの製造方法に関わり、詳細には、セサモリンの合成中間体であるdl−サミンを、リパーゼを触媒とする速度論的光学分割を利用した光学活性リグナンの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記化学式中に示した化学構造式:
【0003】
【化1】

【0004】
を有するリグナンであるセサミン並びにセサモリンが、ゴマなどの一部の植物に含まれることが知られており、また、セサミンやセサモリンなどと鏡像異性体の関係にあるアサリニンが、漢方薬であるサイシン中に含まれる成分であることが知られている。
【0005】
ところで、ゴマに含まれるセサミン並びにセサモリンは、抗酸化作用などの様々な生理活性があることが知られているが、その分子レベルでの作用機序についてはほとんど解明されていない。
また、セサミンやサセモリンは、生体内で代謝されて様々な代謝産物に誘導化を受けるが、どのような代謝産物に活性があるのかも明らかにされておらず、それが作用機序の解明の困難性に対する律速段階となっている。
したがって、セサミンやセサモリン、及びそれらの代謝産物の作用活性を調べるためには、それら化合物の全てを入手しなければならないが、セサミン並びにセサモリン以外の代謝産物は市販されておらず、何らかの方法で合成する必要がある。
【0006】
セサミン並びにセサモリンは市販されているものの高価であるため、大量のサンプルが必要となる場合には、ゴマあるいはゴマ油から抽出することが可能である(特許文献1〜3)。
さらに、セサミンの合成については非常に多くの合成方法が報告されており、その光学活性体の合成においても不斉補助基を利用した合成法がいくつか報告されている(非特許文献1、2)。
また、セサミンの代謝産物の合成における既存の技術としては、セサミンの1,3−メチレンジオキシ環の開裂による方法として、超臨界水による加水分解による方法(特許文献4)や、微生物を用いた発酵による方法(特許文献5、6)などが報告されているが、あまり効果的なものではない。
さらに、セサミンからの化学変換により、1,3−メチレンジオキシ環の一つあるいは二つを開裂させた化合物の合成方法(特許文献7、8)が報告されているが、これらの方法はセサモリンの代謝産物の合成には適用できない。
【0007】
セサモリン、及びセサモリンの代謝産物等のdl−体の合成は、下記化学式に示すように、合成中間体であるサミン誘導体と、セサモール等のフェノール類のピリジニウムp−トルエンスルホン酸塩(PPTS)等の有機酸塩を触媒として反応させることにより行われている(非特許文献3、4)。
【0008】
【化2】

【0009】
したがって、光学活性サセモリンを得るためには、ラセミ体として合成したdl−サセモリンを光学活性カラムクロマトグラフィーなどにより光学分割するか、あるいは中間体としてのサミンについて、その光学活性体の合成が必要である。
【0010】
合成中間体であるサミンの光学活性体の合成としては、サミンの中間体である4−ビニル−ジヒドロフラン−2(3H)−オン(すなわち、4−ビニル−γ−ラクトン)に光学活性アミンを反応させて得られるアミド生成物のジアステレオ異性体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離した後、再び4−ビニル−γ−ラクトンを再生し(非特許文献4)、光学活性サミンに誘導する方法(非特許文献5)と、小笠原らによる不斉補助基を利用した転移反応をキーステップとする合成法(非特許文献6)などが報告されている。
【0011】
前者の方法は、光学活性サミンを得るために余分に2段階の反応を必要とするものであり、また、ジアステレオ異性体の極性はそれほど大きな差がないことから光学活性体の分離が効率的でなく、大量合成には不向きな方法である。後者の方法は、不斉補助基の調製や除去に数段階の工程を要するため、効率的なものではない。
さらに、微生物やP450を含む薬剤代謝酵素によるサセモリンからの合成法も報告されている(特許文献9)が、主にカテコール体の生成に限定されるものである。
【0012】
【特許文献1】特開平10−007676号公報
【特許文献2】特開平10−120695号公報
【特許文献3】特開2006−056796号公報
【特許文献4】特開2001−139579号公報
【特許文献5】特開2005−023125号公報
【特許文献6】特開2005−022999号公報
【特許文献7】特開2009−013174号公報
【特許文献8】特開2009−143884号公報
【特許文献9】特開2008−127301号公報
【0013】
【非特許文献1】Tetrahedron: Asymmetry, 14, 2495-2497(2003)
【非特許文献2】Tetrahedron: Asymmetry, 17, 3-4(2006)
【非特許文献3】J. Chem. Soc. Chem. Commun., 3, 189-191(1988)
【非特許文献4】Bull. Chem. Soc. Japan, 61, 4361-4366(1988)
【非特許文献5】Can. J. Chem., 75, 840-849(1997)
【非特許文献6】Chemistry Letters, 543-544(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の現状を鑑み、セサモリンやセサミン或いはこれらの合成中間体であるサミンについて、その光学活性体(すなわち、光学活性サミン)の効率的な合成法を提供することを課題とする。
また本発明は、サミンの1,3−メチレンジオキシ基を他の置換基に置き換えた場合にも適用可能な化合物の合成法を提供し、効率的な光学活性セサモリン、セサミン、及びこれらの代謝産物の合成法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決するべく本発明者は鋭意検討した結果、セサモリンの合成中間体であるdl−サミンに対して、ビニル酢酸存在下、リパーゼを触媒とすることにより、dl−サミンの一方の鏡像異性体(enantiomer:エナンチオマー)のみがアセチル化されることにより速度論的光学分割が進行すること、また、反応混合物中のアセチル化サミン(すなわち、サミン−OAc)を、原料として残ったサミンとシリカゲルカラムクロマトグラフィー等により分離することにより、サセモリンやセサミンの合成中間体である光学活性アセチル化サミン[光学活性サミン−OAc;(1S,3aR,6aR)−サミン−OAc]と、光学活性サミン[(3aS,6aS)−サミン]の分離精製を完成させ、一段階で光学活性サセモリンや光学活性セサミンの製造方法を完成させるに至った。
【0016】
すなわち本発明は、その基本的な態様は、次式(I):
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリールアルキル基またはアリールアルコキシ基を表し、nは1〜5の整数を表す)
で示されるdl−サミン類を、溶媒中リパーゼの存在下、アシル化剤と反応させることによりアシル化し、得られた反応混合物を分離することからなる次式(II):
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R及びnは前記定義と同一、Rはアシル基を表す)
で示される光学活性体を合成・分離する方法である。
【0021】
具体的な本発明は、式(I)におけるフェニル基の置換様式が、次式:
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、R、R及びRは、同一または異なり、水酸基、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基を表すか、または隣り合う基同士でメチレンジオキシ基を形成する)
で示される、フロフラン(Furofuran)型リグナン類における上記に記載の光学活性体を合成・分離する方法である。
【0024】
最も具体的な本発明は、次式(Ia〜Ib):
【0025】
【化6】

【0026】
(式中R及びRは、同一又は異なり水素原子、低級アルキル基またはアリールアルキル基を表すか、或いは隣り合う両者でメチレン基を形成する)
で示されるdl−サミン類を、溶媒中リパーゼの存在下、ビニル酢酸等のアシル化剤と反応させることによりアシル化して、得られた反応混合物を分離することからなる次式(IIa〜IIc):
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、R及びRは前記定義と同一、Rはアシル基を示す)
で示される光学活性体を合成・分離する方法である。
【0029】
より具体的には、本発明は、アシル化剤がカルボン酸エステルまたはカルボン酸エノールエステルであり、なかでも当該カルボン酸エノールエステルがビニル酢酸である上記方法である。
したがって、好ましい本発明は、上記式(II)中、Rがアセチル基である光学活性体の合成・分離方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明が提供するサミン類のリパーゼによる速度論的な光学分割反応は、簡便な方法で光学活性サミン類を合成・分離する方法であり、その結果光学分割して得られた生成物である光学活性サミン−Oアシル体より、一段階で光学活性サセモリン類を合成することが可能となった。したがって、本発明は、入手が容易でないサセモリン代謝産物を、光学活性体として製造するために非常に有効な方法であり、サセモリン或いはセサモリンのカテコール体等を高い光学純度で簡便に得ることができる利点を有している。
また、光学活性サミン−Oアシル体は、各種セサミン類の合成にも利用できるものであり、さらに同時に得られる光学活性サミンは、サミンやセサモリンと鏡像異性体の関係にあるリグナン類(例えば、アサリニンなど)の合成に応用できる利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
上記したように、本発明は、式(I)で示されるdl−サミン類を、溶媒中リパーゼの存在下、アシル化剤と反応させることによりアシル化し、反応混合物を分離することからなる式(II)で示される光学活性体を合成・分離する方法である。
【0032】
そのなかでも、特に(Ia〜Ib)で示されるdl−サミン類を、溶媒中リパーゼの存在下、アシル化剤と反応させることによりアシル化し、反応混合物を分離することからなる式(IIa〜IIc)で示される光学活性体を合成・分離する方法である。
【0033】
本明細書において、置換基Rで示されるハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子であり、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜5程度の直鎖または分岐鎖アルキル基を挙げることができ、また低級アルコキシ基としてはこれらのアルキルオキシ基をいい、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等を挙げることができる。
また、アリールアルキル基としてはベンジル基、フェネチル基等を挙げることができ、アリールアルコキシ基としては、ベンジルオキシ基を挙げることができる。
【0034】
また、置換基Rの数は、1〜5までであり、複数の置換基Rが置換された場合には、それらは同一若しくは異なっていても良い。
さらに、隣り合う置換基R同士でメチレンジオキシ基を形成していても良い。
【0035】
より具体的には、本発明にあっては、式(I)におけるフェニル環上の「R」の置換様式が、次式:
【0036】
【化8】

【0037】
(式中、R、R及びRは、同一または異なり、水酸基、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基を表すか、または隣り合う基同士でメチレンジオキシ基を形成する)
で示される、フロフラン(Furofuran)型リグナン類における上記に記載の光学活性体を合成・分離する方法が提供される。
【0038】
さらに具体的には、本発明にあっては、特にフェニル環上の置換基「R」が2個の場合であって、その両者の置換位置は、フェニル基の3,4位に置換された化合物の合成・分離が特に好ましい。
その具体的な合成・分離方法を具体的化学反応式で示せば、下記化学反応式(1)で示すことができる。
なお、下記の化学反応式(1)においては、本発明の特異性の理解を容易ならしめるために、式(Ia,b)中、R及びRの両者でメチレン基を形成するdl−サミンについて示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
したがって、以下、式(I)の化合物として、式(Ia,b)に代表される化合物について説明することにより本発明を詳細に説明していく。
【0039】
本発明にあっては、式(Ia、b)中、置換基R及びRは、両者でメチレン基を形成するものに限定されるものではなく、置換基R及びRとしては、水素原子、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、またはベンジル基等のアリールアルキル基を表すことができることはいうまでもない。
【0040】
[化学反応式(1)]
【0041】
【化9】

【0042】
本発明における式(I)のdl−サミン類とアシル化剤の反応において、反応温度としては0〜60℃程度であり、好ましくは0〜30℃程度である。また反応時間は反応温度にも依存するが、1〜48時間程度であり、好ましくは2〜24時間程度で完了する。
また、反応は溶媒の存在下に行われ、そのような溶媒としては、反応に直接の影響を与えない、トルエン、ベンゼン、クロロホルム、ジクロルメタン等の疎水性の高い溶媒が好ましい。なお、エーテル類や酢酸エチル等の極性の高い溶媒を用いた場合には、反応時間が長くなる傾向がある。
【0043】
本発明において、添加されるアシル化剤としては、カルボン酸エノールエステルまたはカルボン酸のビニルエステルが好ましく使用され、なかでもビニル酢酸が好ましいが、これに限定されるものではない。その他の各種カルボン酸のビニルエステルに置き換えることが可能である。
添加するアシル化剤の量は、反応基質であるサミン類に対して等モル以上の過剰量であればよく、特に限定されるものではなく、5〜50倍量程度が好ましい。
【0044】
触媒として使用するリパーゼは、各種由来のリパーゼを使用することができる。その触媒量としては、温度にも依存するが、基質であるサミン類に対して10〜1,000重量%であり、好ましくは25〜500重量%程度である。
基質としてのサミン類は、サミンの芳香環部分の置換様式が異なる化合物であっても良いことはいうまでもない。
サミン類に対するアシル化反応の結果得られる反応混合物の分離は、一般的な化学反応処理において行われる分離手段を採用することができるが、なかでもカラムクロマトグラフィー、特にシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによる分離が好ましい。
【0045】
上記により分離された光学活性サミン−Oアシル体、具体的には光学活性アセチル化サミン(サミン−OAc)を用いて光学活性サセモリンへの誘導は、具体的には下記化学反応式(2)に示すように、ベンゼン、トルエン等の不活性溶媒中ピリジニウムp−トルエンスルホン酸塩(PPTS)等の有機酸塩を触媒としてセサモール等のフェノール類を反応させることにより得ることができる。
【0046】
[化学反応式(2)]
【0047】
【化10】

【0048】
また、光学活性セサミンを製造する場合には、下記化学反応式(3)に示すように、上記により分離された光学活性サミン−Oアシル体、具体的には光学活性アセチル化サミン(サミン−OAc)を用いて、テトラメチルシリルトリフルオレート(TMSOTf)の存在下、3,4−メチレンジオキシフェニルマグネシウムブロミドであるグリニア(Grignard)試薬と反応させ製造することができる。
【0049】
[化学反応式(3)]
【0050】
【化11】

【0051】
当該反応においてはテトラヒドロフラン等の溶媒を用いるのが好ましく、反応は具体的には−78℃程度の低温下で行うのが好ましい。
【0052】
本発明が提供する方法により、サミンの1,3−メチレンジオキシ環部分を他の置換基で置き換えた基質についても同様に、速度論的光学分割反応が進行し、光学活性サミン誘導体を提供することができ、また、得られた光学活性サミン誘導体からセサモリン代謝産物やセサミン代謝産物への合成が可能である。
その具体例を下記化学反応式(4)に示した。具体的には、サミンの1,3−メチレンジオキシ環部分を他の置換基で置き換えた基質(式1b、c)より光学活性サミン誘導体(式2b、c)の化合物を得、この光学活性サミン誘導体(式2b、c)から、各種セサモリン代謝産物やセサミン代謝産物の合成が可能となる。
【0053】
[化学反応式(4)]
【0054】
【化12】

【0055】
(式中、R及びRは前記定義と同一である)
【実施例】
【0056】
以下に具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、以下の実施例において出発化合物として使用する各種dl−サミン類は、非特許文献4または6にしたがって合成した。
【0057】
また、各実施例で行ったHPLCの条件は以下のとおりである。
カラム:ChiralPak IC(φ4.6×250mm:ダイセル化学社製)
流速:1.0mL/分
アイソクラティック:B液20%
溶媒A:ヘキサン
溶媒B:エタノール
検出波長:280nm
測定時間:30分
【0058】
実施例1:dl−サミン(Ia)のリパーゼによる速度論的光学分割−その1
【0059】
【化13】

【0060】
4mLバイアルにdl−サミン(1a)(2.0mg,6.7μmol)のトルエン溶液(0.2mL)、酢酸ビニル(10μL,0.11mmol)、リパーゼ(13.4mg,667wt%)を加え、室温で激しく攪拌した。2時間後、反応溶液にアセトニトリル(0.8mL)を加え、フィルター濾過によりリパーゼ等の固形物を取り除き、得られた溶液をHPLCにより分析し、反応溶液中の原料、及び、生成物の量を求めた。
【0061】
使用したリパーゼの種類による各生成物の収率と、その鏡像異性体過剰率(enantiomeric excess, %ee)を、下記表1にまとめて示した。
【0062】
【表1】

【0063】
*:(1S,3aS,6aS)-3aの値を示す。
【0064】
リパーゼとしてAmano AKを用いた場合には、未反応の原料(3aS,6aS)−1a、及び、生成物の(1S,3aR,6aR)−2a、並びに(1R,3aR,6aR)−3aを、それぞれ48.4%(75.6%ee)、44.9%(99.1%ee)、4.8%(2.1%ee)の収率、及び、鏡像異性体過剰率で、反応が進行し、最も良い結果を示した。
【0065】
Lipase PLもAmano AKと同じ程度の能力を示した。Lipase QLMは、上記の2種のリパーゼより反応活性が弱いので効率の点で劣るものであった。Lipase TLは、上記2種よりも反応活性が強すぎるため、反応特異性が悪いものであった。Lipase MY、及び、Lipase OFは、反応活性がそれほど強くもないにもかかわらず、反応特異性が上記2種よりも劣るものであった。
以上のことから、基質dl−サミン(1a)の速度論的光学分割には、Amano AK、或いは、Lipase PLを用いるのが望ましいことが判明した。
【0066】
なお、反応溶液中の新たな生成物である(1S,3aR,6aR)−2a、及び、(1R,3aR,6aR)−3aは、両方とも(3aR,6aR)−1aより誘導された生成物であり、酵素の種類の違いにより主生成物が異なる(アセチル基の立体化学のみ異なる)が、その後の反応にこの違いは影響しないため、2aと3aは等価体とみなすことができる。ただし、Entry−1〜4のように、3aの鏡像異性体過剰率は、悪いか(Entry−1)、あるいは、2aと逆の選択性を示すため、次の反応に使用する場合は、基質の光学純度を高めるためにシリカゲルカラム分離により2aと3aを十分に分離する必要がある。
【0067】
化合物データ:
各生成物についての精密質量分析、及び、H-NMRの結果は以下のとおりである。
【0068】
化合物(1a)
ESI−IT−TOF−MS:m/z 273.0730[M+Na]
(C1314Naの理論値:273.0739)
1H-NMR (400MHz, CDCl) δ: 6.77(d, J=1.6Hz, 1H), 6.72(d, J=1.6, 8.0Hz, 1H), 6.69(d, J=8.0Hz, 1H), 5.87(s, 2H), 5.30(d, J=2.4Hz, 1H), 4.30(t, J=8.8Hz, 1H), 4.27(d, J=6.4Hz, 1H), 4.09(dd, J=6.4, 8.8Hz, 1H), 3.83(d, J=1.2, 8.8Hz, 1H), 3.48(d, J=7.2, 8.8Hz, 1H), 2.99(ap q, 1H), 2.78(ap q, 1H), 2.29(d, J=2.4Hz, 1H)
【0069】
化合物(2a)
ESI−IT−TOF−MS:m/z 315.0852[M+Na]
(C1516Naの理論値:315.0845)
1H-NMR (400MHz, CDCl) δ: 6.77-6.85(m, 3H), 6.30(d, J=5.6Hz, 1H), 5.96(s, 2H), 4.72(d, J=6.6Hz, 1H), 4.16(dd, J=7.8, 9.0Hz, 1H), 4.08(dd, J=7.3, 9.0Hz, 1H), 4.02(dd, J=3.9, 9.0Hz, 1H), 3.99(dd, J=4.9, 9.0Hz, 1H), 3.30(m, 1H), 3.03(m, 1H), 2.16(s, 3H)
【0070】
化合物(3a)
ESI−IT−TOF−MS:m/z 315.0855[M+Na]
(C1516Naの理論値:315.0845)
1H-NMR (400MHz, CDCl) δ: 6.85(d, J=1.5Hz, 1H), 6.80(dd, J=1.5, 7.8Hz, 1H), 6.75(d, J=7.8Hz, 1H), 6.15(s, 1H), 5.96(s, 2H), 4.42(t, J=9.0Hz, 1H), 4.37(d, J=7.3Hz, 1H), 4.10(dd, J=5.8, 9.0Hz, 1H), 4.01(dd, J=1.2, 9.3Hz, 1H), 3.63(dd, J=7.6, 9.3Hz, 1H), 3.15(ap q, 1H), 2.88(ap q, 1H), 2.06(s, 3H)
【0071】
上記実施例1の結果から、リパーゼとしてAmano AKが最も良い結果を示したので、触媒としてリパーゼとしてAmanoAKを使用し、その触媒量、反応温度、反応時間の影響を検討した。
【0072】
実施例2:dl−サミン(Ia)のリパーゼによる速度論的光学分割−その2
【0073】
【化14】

【0074】
4mLバイアルにdl−サミン(1a)(2.0mg,6.7μmol)のトルエン溶液(0.2mL)、酢酸ビニル(10μL,0.11mmol)、リパーゼ(下記表2に示す量)を加え、各設定温度で激しく攪拌した。各設定時間後、反応溶液にアセトニトリル(0.8mL)を加え、フィルター濾過によりリパーゼ等の固形物を取り除き、得られた溶液をHPLCにより分析し、反応溶液中の原料、及び、生成物の量を求めた。
その結果を下記表2にまとめて示した。
【0075】
【表2】

【0076】
*:(1S,3aS,6aS)-3aの値を示す。
【0077】
触媒としてAmano AKを667重量%用いた場合(Entry−2)には、未反応の原料(3aS,6aS)−1a、及び、生成物の(1S,3aR,6aR)−2a、(1R,3aR,6aR)−3aを、それぞれ48.4%(75.6%ee)、44.9%(99.1%ee)、4.8%(2.1%ee)の収率、及び鏡像異性体過剰率で、反応が進行した。
表中に示した結果から、触媒の量、温度、時間の最適化の検討を行った結果、総合的には、Entry−6が最も好ましい条件であった。Entry−10も同等の結果を示したので、温度を下げることが困難でなければ有効な条件であるといえる。
なお、化合物2aのみを高い光学純度で得たい場合は、Entry−7、11も有効な条件であるといえる。
【0078】
次いで、置換基R及びRがそれぞれ低級アルキル基又はアリールアルキル基である場合dl−サミンを用いた場合の速度論的光学分割について検討した。具体的には、Rがメチル基又はベンジル基であり、Rがベンジル基であるdl−サミンの速度論的光学分割を検討した。
【0079】
実施例3:dl−サミン誘導体(Ib)のリパーゼによる速度論的光学分割
【0080】
【化15】

【0081】
4mLバイアルにdl−サミン誘導体(1b)(2.0mg,6.7μmol)のトルエン溶液(0.2mL)、酢酸ビニル(10μL,0.11mmol)、リパーゼ(13.4mg,667wt%)を加え、室温で激しく攪拌した。2時間後、反応溶液にアセトニトリル(0.8mL)を加え、フィルター濾過によりリパーゼ等の固形物を取り除き、得られた溶液をHPLCにより分析し、反応溶液中の原料、及び、生成物の量を求めた。
使用したリパーゼの種類による各生成物の収率と、その鏡像異性体過剰率(enantiomeric excess, %ee)を、下記表3にまとめて示した。
【0082】
【表3】

【0083】
*:(1S,3aS,6aS)-3bの値を示す。
【0084】
その結果、リパーゼにAmano AKを用いた場合には、未反応の原料(3aS,6aS)−1b、及び、生成物の(1S,3aR,6aR)−2b、(1R,3aR,6aR)−3bを、それぞれ39%(98%ee)、47%(97%ee)、6%(51%ee)の収率、及び鏡像異性体過剰率で、反応が進行した。
表中に示した結果からも判明するように、dl−サミン(1b)の場合にあっても、実施例1に示したdl-サミン(1a)の場合と同じような結果が得られた。
したがって、基質の構造が多少異なっていても、本発明方法の適用が可能であることが判明した。
【0085】
化合物データ:
各生成物についての精密質量分析、及び、H-NMRの結果は以下のとおりである。
【0086】
化合物(1b)
ESI−IT−TOF−MS:m/z 441.1685[M+Na]
(C2626Naの理論値:441.1678)
1H-NMR (400MHz, CDCl) δ: 7.42-7.47(m, 4H), 7.28-7.39(m, 4H), 6.97(d, J=1.6Hz, 1H), 6.91(d, J=8.4Hz, 1H), 6.85(dd, J=1.6, 8.4Hz, 1H), 5.37(d, J=2.4Hz, 1H), 5.16(s, 2H), 5.15(s, 2H), 4.35(d, J=6.8Hz, 1H), 4.34(t, J=9.0Hz, 1H), 4.14(dd, J=6.0, 9.0Hz, 1H), 3.87(d, J=9.0Hz, 1H), 3.56(dd, J=7.6, 9.0Hz, 1H), 3.05(ap q, 1H), 2.84(ap q, 1H), 2.42(d, J = 2.4 Hz, 1H)
【0087】
化合物(2b)
ESI−IT−TOF−MS:m/z 483.1787[M+Na]
(C2828Naの理論値:483.1778)
1H-NMR (500MHz, CDCl) δ: 7.42-7.46(m, 4H), 7.33-7.38(m, 4H), 7.28-7.33(m, 2H), 6.97(d, J=1.6Hz, 1H), 6.91(d, J=8.2Hz, 1H), 6.82(dd, J=1.6, 8.2Hz, 1H), 6.29(d, J=5.7Hz, 1H), 5.17(s, 2H), 5.15(s, 2H), 4.70(d, J=6.2Hz, 1H), 4.12(ap t, 1H), 3.97-4.02(m, 2H), 3.94(dd, J=5.1, 9.0Hz, 1H), 3.24(m, 1H), 2.98(m, 1H), 2.42(s, 3H)
【0088】
化合物(3b)
ESI−IT−TOF−MS m/z 483.1785[M+Na]
(C2828Naの理論値:483.1778)
1H-NMR (500MHz, CDCl) δ: 7.42-7.47(m, 4H), 7.33-7.38(m, 4H), 7.28-7.33(m, 2H), 6.96(d, J=1.3Hz, 1H), 6.91(d, J=8.2Hz, 1H), 6.85(dd, J=1.3, 8.2Hz, 1H), 6.14(s, 1H), 5.16(s, 2H), 5.15(s, 2H), 4.38(t, J=9.0Hz, 1H), 4.35(d, J=7.1Hz, 1H), 4.07(dd, J=6.2, 9.0Hz, 1H), 3.97(d, J=9.0Hz, 1H), 3.63(d, J=7.6, 9.0Hz, 1H), 3.11(ap q, 1H), 2.86(ap q, 1H), 2.08(s, 3H)
【0089】
実施例4:dl−サミン誘導体(Ic)のリパーゼによる速度論的光学分割
【0090】
【化16】

【0091】
4mLバイアルにdl−サミン誘導体(1c)(2.0mg,6.7μmol)のトルエン溶液(0.2mL)、酢酸ビニル(10μL,0.11mmol)、リパーゼ(13.4mg,667wt%)を加え、室温で激しく攪拌した。2時間後、反応溶液にアセトニトリル(0.8mL)を加え、フィルター濾過によりリパーゼ等の固形物を取り除き、得られた溶液をHPLCにより分析し、反応溶液中の原料、及び、生成物の量を求めた。
【0092】
使用したリパーゼの種類による各生成物の収率と、その鏡像異性体透過率(enantiomeric excess, %ee)を、下記表4にまとめて示した。
【0093】
【表4】

【0094】
*:(1S,3aS,6aS)-3bの値を示す。
【0095】
リパーゼとしてLipase PLを用いた場合には、未反応の原料(3aS,6aS)−1c、及び生成物の(1S,3aR,6aR)−2c、(1S,3aS,6aS)−3cを、それぞれ38%(96%ee)、47%(97%ee)、11%(74%ee)の収率、及び鏡像異性体透過率で、反応が進行した。
表中に示した結果からも判明するように、dl−サミン誘導体(1c)の場合であっても、実施例1に示したdl-サミン(1a)の場合と同じような結果が得られた。
したがって、実施例3と同様に、基質の構造が多少異なっていても、本発明方法の適用が可能であることが判明した。
【0096】
化合物データ:
各生成物についての精密質量分析、及び、H-NMRの結果は以下のとおりである。
【0097】
化合物(1c)
ESI−IT−TOF−MS:m/z 365.1368[M+Na]
(C2022Naの理論値:365.1365)
1H-NMR (400MHz, CDCl) δ: 7.43(t, J=7.6Hz, 2H), 7.36(t, J=7.6Hz, 2H), 7.29(t, J=7.6Hz, 1H), 6.93(d, J=1.6Hz, 1H), 6.85(d, J=8.4Hz, 1H), 6.80(dd, J=1.6, 8.4Hz, 1H), 5.38(d, J=2.4Hz, 1H), 5.15(s, 2H), 4.38(t, J=9.0Hz, 1H), 4.37(d, J=7.2Hz, 1H), 4.17(dd, J=6.4, 9.0Hz, 1H), 3.92(d, J=9.0Hz, 1H), 3.90(s, 3H), 3.57(d, J=7.6, 9.0Hz, 1H), 3.09(ap q, 1H), 2.91(ap q, 1H), 2.52(d, J=2.4Hz, 1H)
【0098】
化合物(2c)
ESI−IT−TOF−MS m/z 407.1470[M+Na]
(C2224Naの理論値:407.1465)
1H-NMR (500MHz, CDCl) δ: 7.43(t, J=7.2Hz, 2H), 7.36(t, J=7.2Hz, 2H), 7.29(t, J=7.2Hz, 1H), 6.91(d, J=1.3Hz, 1H), 6.85(d, J=8.2Hz, 1H), 6.77(dd, J=1.3, 8.2Hz, 1H), 6.30(d, J=5.7Hz, 1H), 5.15(s, 2H), 4.16(ap t, 1H), 4.08(ap t, 1H), 3.97-4.14(m, 2H), 3.90(s, 3H), 3.30(m, 1H), 3.06(m, 1H), 2.15(s, 3H)
【0099】
化合物(3c)
ESI−IT−TOF−MS m/z 407.1471[M+Na]
(C2224Naの理論値:407.1465)
1H-NMR (500MHz, CDCl) δ: 7.43(t, J=7.2Hz, 2H), 7.36(t, J=7.2Hz, 2H), 7.29(t, J=7.2Hz, 1H), 6.92(d, J=1.5Hz, 1H), 6.85(d, J=8.2Hz, 1H), 6.80(dd, J=1.5, 8.2Hz, 1H), 6.15(s, 1H), 5.15(s, 2H), 4.43(t, J=9.1Hz, 1H), 4.39(d, J=7.3Hz, 1H), 4.10(dd, J=6.1, 9.1Hz, 1H), 4.01(d, J=9.1Hz, 1H), 3.90(s, 3H), 3.64(d, J=7.6, 9.1Hz, 1H), 3.15(ap q, 1H), 2.92(ap q, 1H), 2.06(s, 3H)
【0100】
次いで、上記の各実施例で光学分割された光学活性サミン類を用いた光学活性セサモリン、光学活性セサミンの合成を検討した。
【0101】
実施例5:光学活性セサモリンの合成
4mLバイアルにdl−サミン(1a)(956mg,3.21mmol)のトルエン溶液(100mL)、酢酸ビニル(4.78mL)、リパーゼ(Amano AK,478mg,50wt%)を加え、室温で激しく攪拌した。2時間後、反応溶液の一部(0.2mL)にアセトニトリル(0.8mL)を加え、フィルターを濾過によりリパーゼ等の固形物を取り除き、得られた溶液をHPLCにより分析し、反応溶液中の原料、及び、生成物の量を求め、反応の終了を確認した。
HPLC分析により、未反応の原料(3aS,6aS)−1a、及び生成物の(1S,3aR,6aR)−2a、(1R,3aR,6aR)−3aを、それぞれ30%(99%ee)、31%(95%ee)、5%(25%ee)の収率、及び、鏡像異性体透過率で、反応が進行したことを確認した。
【0102】
反応溶液は、セライト濾過し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、未反応の原料(3aS,6aS)−1a、及び、生成物の(1S,3aR,6aR)−2a(438mg)、(1R,3aR,6aR)−3aを分離した。
得られた2a(95%ee)を、非特許文献3に記載の条件に反応を行い、目的とする光学活性セサモリン(50%,95%ee)を得た。
さらに光学純度の高い生成物を得る方法としては、光学活性カラムクロマトグラフィーによる分離や再結晶のような一般的な方法によることも可能である。
【0103】
化合物データ:
生成物についての精密質量分析、及び、H-NMRの結果は以下のとおりである。
【0104】
セサモリン:
1H-NMR (400MHz, CDCl) δ: 6.88(d, J=1.5Hz, 1H), 6.83(dd, J=1.5, 8.0Hz, 1H), 6.78(d, J=8.0Hz, 1H), 6.71(d, J=8.5Hz, 1H), 6.62(d, J=2.2Hz, 1H), 6.50(dd, J=2.2, 8.5Hz, 1H), 5.96(s, 2H), 5.92(s, 2H), 5.50(s, 1H), 4.45(t, J=9.0Hz, 1H), 4.39(d, J=7.1Hz, 1H), 4.13(dd, J=6.0, 9.0Hz, 1H), 3.96(d, J=9.0Hz, 1H), 3.64(dd, J=7.3, 9.0Hz, 1H), 3.31(ap q, 1H), 2.95(ap q, 1H)
【0105】
実施例6:光学活性セサミンの合成
上記実施例5で得られた2a(95%ee、54mg,0.159mmol)のTHF溶液(1mL)を非特許文献6の条件を参考にし、−78℃でTMSOTf(29μL,0.159mmol)と、3,4−メチレンジオキシフェニルマグネシウムブロミド(2M,0.80mL,1.59mmol)を加え、1時間反応させた。
反応終了後、一般的な、抽出操作により、光学活性セサミン(40%、95%ee)を得た。
さらに光学純度の高い生成物を得る方法としては、光学活性カラムクロマトグラフィーによる分離や再結晶のような一般的な方法によることも可能である。
【0106】
化合物データ:
生成物についてのH-NMRの結果は以下のとおりである。
【0107】
セサミン:
1H-NMR (400MHz, CDCl) δ: 6.85(d, J=1.5Hz, 2H), 6.80(dd, J=1.5, 7.8Hz, 2H), 6.78(d, J=7.8Hz, 2H), 5.95(s, 4H), 4.72(d, J=4.2Hz, 2H), 4.23(dd, J= 6.8, 9.0Hz, 2H), 3.87(dd, J=3.7, 9.0Hz, 2H), 3.05(m, 2H)
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上記載のように、本発明が提供するサミン類のリパーゼによる速度論的な光学分割反応により、生成物である光学活性サミン−Oアシル体を合成・分離することが可能となった。
得られた光学活性サミン−Oアシル体を原料として一段階で光学活性サセモリン類やセサミン類を合成することが可能となることから、本発明は、入手が容易でないサセモリン代謝産物やセサミン代謝産物を、光学活性体として製造するために非常に有効な方法を提供する点で、極めて有効なものである。
【0109】
また、本発明により合成・分割された光学活性サミン−Oアシル体は、セサモリンやセサミンなど広くセサミン類の合成にも利用できるものであり、さらに同時に得られる光学活性サミンは、セサミンやセサモリンと鏡像異性体の関係にあるリグナン類(例えば、アサリニンなど)の合成に応用できる利点を有していることから、その産業上の利用性は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】

(式中、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリールアルキル基またはアリールアルコキシ基を表し、nは1〜5の整数を表す)
で示されるdl−サミン類を、溶媒中リパーゼの存在下、アシル化剤と反応させることによりアシル化し、得られた反応混合物を分離することからなる次式(II):
【化2】

(式中、R及びnは前記定義と同一、Rはアシル基を表す)
で示される光学活性体を合成・分離する方法。
【請求項2】
式中のフェニル基の置換様式が、次式:
【化3】

(式中、R、R及びRは、同一または異なり、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコシキ基を表すか、または隣り合う基同士でメチレンジオキシ基を形成する)
である請求項1に記載の光学活性体を合成・分離する方法。
【請求項3】
次式(Ia〜Ib):
【化4】

(式中R及びRは、同一又は異なり水素原子、低級アルキル基またはアリールアルキル基を表すか、或いはR及びRの両者でメチレン基を形成する)
で示されるdl−サミン類を、溶媒中リパーゼの存在下、アシル化剤と反応させることによりアシル化し、得られた反応混合物を分離することからなる次式(IIa〜IIc):
【化5】

(式中、R及びRは前記定義と同一、Rはアシル基を示す)
で示される光学活性体を合成・分離する方法。
【請求項4】
アシル化剤がカルボン酸エステルである請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
アシル化剤がカルボン酸エノールエステル化合物である請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項6】
カルボン酸エノールエステル化合物がビニル酢酸である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式(II)中、Rがアセチル基である請求項1、2または3に記載の方法。

【公開番号】特開2011−92115(P2011−92115A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250180(P2009−250180)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】