説明

光学測定セルおよびガスモニター

測定容積部へ光を導入するための少なくとも1つの光源(2)と、測定容積部を通過する光を受信するために測定容積部に対して光源の光伝搬方向でほぼ向かい合う少なくとも1つの光受信器(3)とを備える、ガス吸収測定のための光学測定セルが記載されており、測定ガス容積部の中の1つまたは複数の目標ガスの濃度を評価ユニット(4)によって決定可能であり、測定容積部は内径が実質的に1mmよりも小さい中空ファイバ(1)の内部容積によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス吸収方法のための光学測定セルおよびガスモニターに関する。
【背景技術】
【0002】
測定ガス中のガス成分の濃度を吸収測定によって決定するための測光法や光学式分光法では、測定キュベットにおいて、ガスに依存する吸収の評価によって目標ガスを決定できるようにするために、目標ガスが存在していないときの、すなわち測定されるべき目標ガスによる吸収が行われないときの空キュベットの透過性が既知でなければならないという問題がある。
【0003】
公知の1つの解決法の要諦は、測定されるべきガス成分を含んでおらず、適用する波長領域での吸収もしない、たとえば圧力ガス容器などの備蓄容器に入っているガスでキュベットを洗浄することにある。この場合、たとえば測定ガスとして周囲の空気が用いられるときには窒素を利用可能である。従来の測定セルは、用途に応じて一般に大きい容積を有しており、典型的には>100cm3から数リットルの容積を有しているので、洗浄のたびごとに測定セル容積の何倍もの洗浄ガスが必要となり、このことは、測定プロセスが連続して進行する場合や、多くの回数行われる場合には著しいガス消費量につながってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、たとえば定まった波長での非スキャン式のシステムのような光学ガスセンサシステムの安定したゼロを発生するために、光学測定構造もしくは測定キュベットの変化/汚れに左右されることがなく、測定ガス容積ができる限り少ないことを特徴とする測定セクションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その解決は、請求項1ないし10のそれぞれの構成要件組み合わせによって行われる。
【0006】
好ましい実施態様はそれぞれの従属請求項に記載されている。
【0007】
ガスに依存する吸収を測定するために、典型的にはサブミリメートル範囲の直径をもつ少なくとも1つの中空ファイバが用いられる。測定されるべきガスと吸収測定に用いられる光とは、いずれも中空ファイバの端面側で開いているコアの中へ案内される。光の入射は中空ファイバの長手方向に行われる。発生する低い反射角により、特にガラスファイバである中空ファイバが大きく湾曲している場合でさえ光を数メートル先まで有意な損失なしに案内することができる良好な反射特性が生成される。
【0008】
中空ファイバを用いることにより、小さい測定セル容積で、大きな吸収区間およびこれに伴なう高感度のガス検出という特別な利点が得られる。たとえば、0.5mmの直径の中空ファイバ1メートルは約0.2cm3の容積を有している。つまりこのようなファイバを洗浄するには、わずか数cm3の洗浄ガスしか必要とされない。200barの圧力を持つ洗浄ガスの3リットル容器が1つあれば、10分サイクルでの反復測定で1回の洗浄について約1cm3のガスのガス消費がある場合、10年以上にわたって測定器具へ洗浄ガスを供給することができる。それにより、たとえば洗浄のための補助媒体を耐用寿命中に再充填せずにすませることができる自立した測定構造を具体化することができる。
【0009】
ガス圧力容器のような備蓄部B2からなる洗浄ガス供給部Bは、洗浄プロセスのときに洗浄ガスが直接生成される洗浄ガス発生器B1によって置き換えられているのが好ましい。そうすれば理論上、この構造は光学測定セル14と洗浄ガス発生器B1とで構成されることになり、さらに、洗浄ガス発生器B1は実質的にガス送出ポンプ10とガスフィルタ11とで構成される。
【0010】
本発明は基本的に、光学測定セルとしての中空ファイバの使用と、その典型的な容積との組み合わせに基づいている。これはファイバの長さに依存し、通常、ファイバの長さ1メートルあたり1cm3またはこれ以下の範囲内にあり、それにより、多数回の洗浄サイクルを通じて積算される、所要の洗浄ガスの再充填量に対して出せられる要求が低くなる。洗浄ガス供給に対する要求は、上述したように、小容量のガス容器ないし洗浄ガス発生器によって満たすことができる。
【0011】
長期間に亘るガス測定の場合、洗浄ガスを供給するためにガス圧力容器が利用されれば、測定構造のための補助ガス/洗浄ガスの備蓄の再充填が相当な期間にわたって必要ないという利点が得られる。それにより、補助ガスに関して最小のメンテナンスコストを有する自立したガスモニターを提供するという可能性が生まれる。中空ファイバ、洗浄ガス発生器といったコンパクトなコンポーネントに基づき、このような測定原理に基づく可搬形高感度ガスモニターを具体化することもできる。
【0012】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明を限定をするわけではない実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は中空ファイバ1を備える光学測定セル14を有するガス送出部Aを備えた測定セルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例を詳細に示している。この装置は、光学測定セル14と、測定ガス送出部および洗浄ガス送出部と、洗浄ガス供給部とで構成されている。光学測定セルは、光源2と、光検出器3と、制御および評価回路4とを備える吸収測定セルとしての中空ファイバ1を含んでいる。
【0015】
測定ガス送出部は、測定ガス吸込管5と、それぞれ1つの任意選択の小孔の粒子フィルタ6と、中空ファイバ1の後で測定ガス送出ポンプ9の前にある弁7と、ガス出口とを含んでいる。弁8は、洗浄ガス供給部Bに向かって、ガス送出部Aを含む測定セルを遮蔽する。洗浄ガス供給部は洗浄ガス圧力容器B2で構成されていてよい。しかしながら、測定時に検出されるべきガスを含まない洗浄ガスを生成する洗浄ガス発生器B1による洗浄ガス供給部を利用すると好ましい。洗浄ガス発生器B1は、ガス送出ポンプ10と本来のガス生成器とを含んでいる。別案では洗浄ガス発生器は、ガス流を調整するためのスロットル13を備えるたとえば圧力ガス容器12のような洗浄ガス備蓄部で構成される。
【0016】
測定サイクルの進行手順:
・洗浄サイクル:洗浄ガスポンプ10が作動し、弁8が開いており、一方弁7は閉じている。測定ガス送出ポンプ9はオフになっている。洗浄ガスが中空ファイバ1を貫流し、残留測定ガスを測定ガス雰囲気15へ流し戻す。十分な洗浄時間の後に光吸収測定が行われ、まず最初に、洗浄ガスを充填された中空ファイバ内のガス容積に関してゼロ点測定が行われる。
【0017】
・測定サイクル:弁8が閉じ、弁7が開き、洗浄ガスポンプ10がオフになり、測定ガスポンプ9が作動する。すると測定ガスが中空ファイバ1を通って流れ、光透過測定が実施される。一方の測定ガスの透過と、他方の洗浄ガスの透過(ゼロ測定)との比率は、吸収区間である中空ファイバの基本透過に関係なく、ガスに依存する透過を生じさせる。このプロセスは、洗浄ガスが圧力ガス容器12から提供されるときも同様に行われる。
【0018】
本実施例では、測定ガスと洗浄ガスとは中空ファイバをそれぞれ反対方向に貫流する。測定ガス送出ポンプの送出方向を反転することによって、中空ファイバの貫流を両ガスについて同一方向に行うこともできる。
【0019】
洗浄ガス発生器の例:
【0020】
1.たとえば水素雰囲気の中でガス濃度測定が行われるとき、ガスフィルタは、Pd拡散セルに匹敵する加熱されるパラジウム膜でできている。必要な圧力差はガス送出ポンプにより提供される。フィルタには汚れた水素が供給される。Pdによって陽子しか拡散することができないので、二次側では純粋な水素が得られ、この水素を洗浄ガスとして利用することができる。
【0021】
2.空気中または酸素雰囲気の中で測定が行われるときは、たとえば約600℃に加熱された酸化ジルコニウムからなり、酸素イオンを伝導するポンプセルが酸素供給体として適している。加熱される酸化ジルコニウムセラミックスの一次側と二次側との間に電圧が印加され、この電圧によってセラミックスを通して酸素が輸送される。二次側には純粋な酸素が生じ、この酸素を洗浄ガスとして利用することができる。この実施形態では、ポンプ作用はすでに原理的にセルに含まれているので、追加のポンプは不要である。基準ガスである酸素は、この原理では、H2O,CO2,CO,NO,NO2のような、酸素を含有する他のガスの電気化学分解によって生成することもできる。
【0022】
3.水素ないし酸素は、酸性化された水の電気分解によって液相内に存在していてもよい。所望のガスに応じて、陰極または陽極で生成されるガスを別個に洗浄用として使うことができる。電気分解は常に、洗浄ガスの必要が生じたときにはじめて開始される。電気分解セルおよび場合によりガス送出ポンプが必要である。このようなユニットは、上に掲げた少量の洗浄ガス量しか必要とされなければ、複数年にわたって作動させることができる。
【0023】
4.洗浄のために必要な少量の洗浄ガスは、公知の化学反応によって所要の量と純度で製作することができる。このような洗浄ガスの製造方法の例は次のとおりである:
【0024】
4a.水素の調製:
濃いアルカリ溶液中にアルミニウムまたはシリコンの溶解
Al+NaOH+3H2O→Na[Al(OH)4]+(3/2)H2
この反応は苛性ソーダ溶液へのAlの添加によって開始する。十分なガス量が生成されているときは、Alの供給を停止する。この装置は、NaOHおよびたとえばチップの形態のAlのためのそれぞれ1つの備蓄容器と、アルミニウムチップの調量装置と、ガス送出ポンプとで構成される。この構造は化学品の備蓄や洗浄サイクルの回数に依存して、複数年にわたって洗浄ガスを供給することができる。
【0025】
4b.窒素の調製:
赤熱した銅に空気を通し、それによって酸素を完全に取り除くことができる。残るのは窒素と1%のアルゴンとの混合物であるが、アルゴンに支障はない。この場合、CuおよびCuの加熱部のほかにガス送出ポンプが必要となる。プロセスは、測定セルが洗浄されるべきときにだけ進行する。基本的に、メンテナンスが必要なのは銅の交換だけである。洗浄サイクルの回数と所要のガス量に応じて、この装置も複数年にわたってメンテナンスなしで利用することができる。
【0026】
4c.酸素の調製:
硫酸で酸性化された過酸化水素溶液に過マンガン酸カリウム溶液を滴下することによって、厳密に算定可能な量で酸素を調製することができる。この場合、調量されながら反応容器内へ導入される化学薬品の2つの備蓄容器と、ガス送出ポンプとが必要である。このプロセスは次のように進行する。
洗浄を開始したいときに、所望の酸素量に相当する容積の過酸化水素を反応容器に用意して、過マンガン酸カリウムを滴下する。
【0027】
酸素の代替的な調製方法は、加熱による塩素酸カリウムまたは過マンガン酸カリウムの分解である。洗浄プロセスの開始時に、十分な量のガスが生成されるまで化学薬品を加熱する。次いで、冷却によってプロセスを停止する。この場合、備蓄容器、場合により反応容器、化学薬品の調量装置、およびガス送出ポンプだけが必要である。化学薬品の備蓄を補充するだけでよく、その量がメンテナンスの時間的間隔を決める。
【0028】
5.水と二酸化炭素に対する吸着トラップによる空気の浄化:水蒸気は、乾燥剤(シリカゲルまたはCaCl2)へ通すことによって空気流から取り除くことができる。CO2は、CaOとの反応によって空気から取り除くことができる。化学薬品容器とガス送出ポンプだけしか必要とされない。ガス乾燥装置は単純な加熱によって再生することができ、CaOは消費されるので再充填しなければならない。メンテナンスのインターバルは、化学薬品容器のサイズや洗浄ガスの必要量に準じて決まる。
【0029】
光学測定セルとして中空ファイバを利用することによる測定セルの少ない容積、および少ない所要の洗浄ガス量に基づき、洗浄ガス発生器もコンパクトに製作することができる。このことは、いわゆるガスモニターの具体化をコンパクトな形態で可能にする。ガス吸収測定セルだけでなく洗浄ガス供給部も小形に設計されておりないしは小形に設計することができるからである。
【符号の説明】
【0030】
1 中空ファイバ
2 光源
3 光受信器
4 評価ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定容積部へ光を導入するための少なくとも1つの光源(2)と、
前記測定容積部を通過する光を受信するために、前記測定容積部に対して前記光源の光伝搬方向でほぼ向かい合う少なくとも1つの光受信器(3)とを備え、
前記測定ガス容積部の中の1つまたは複数の目標ガスの濃度を評価ユニット(4)によって求めることができるガス吸収測定のための光学測定セルであって、
前記測定容積部は、内径が実質的に1mmよりも小さい中空ファイバ(1)の内部容積によって構成されている光学測定セル。
【請求項2】
前記中空ファイバの内面は実質的に光を反射するように構成されている請求項1に記載の光学測定セル。
【請求項3】
測定ガスまたは洗浄ガスを前記測定容積部へ送入するためのガス送出装置が設けられている請求項1または2に記載の光学測定セル。
【請求項4】
前記ガス送出装置は洗浄ガス圧力容器(B2)によって洗浄ガスを前記測定容積部へ送入するために構成されている請求項3に記載の光学測定セル。
【請求項5】
前記ガス送出装置は洗浄ガス発生器(B1)から洗浄ガスを前記測定容積部へ送入するために構成されている請求項3に記載の光学測定セル。
【請求項6】
前記洗浄ガス発生器(B1)はポンプ(10)およびガスフィルタ(11)によって構成されている請求項5に記載の光学測定セル。
【請求項7】
前記洗浄ガス発生器(B1)は1つまたは複数の化学反応によって洗浄ガスを発生する請求項5に記載の光学測定セル。
【請求項8】
前記洗浄ガス発生器(B1)は、目標ガス測定で検出されるべきガスを含んでいないガスまたは混合ガスからなる洗浄ガスを前記測定セルへ供給するために、ポンプ(10)およびガス発生器によって構成されている請求項6または7に記載の光学測定セル。
【請求項9】
前記光源と前記中空ファイバとの間、および/または前記光受信器と前記中空ファイバとの間に、結合効率を最適化するための光学系が配置されている請求項6に記載の光学測定セル。
【請求項10】
請求項3乃至9の1つに基づく光学測定セルとガス送出部(A)と洗浄ガス供給部(B)とを備え、特定の目標ガスを検出して表示するガスモニターにおいて、目標ガス測定が正のときに信号を発生するガスモニター。

【図1】
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【公表番号】特表2010−510507(P2010−510507A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537611(P2009−537611)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062481
【国際公開番号】WO2008/061949
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】