説明

光学物品用ポリエステル厚膜及び光学物品

1つの実施形態では、本発明は0.25mm(10mil)〜0.64mm(25mil)の厚さを有する少なくとも1つの層を有する2軸配向された複屈折性ポリエチレンテレフタレート膜を含むポリエチレンテレフタレート膜であって、その膜がジメチルテレフタレート、テレフタル酸、又はこれらの組み合わせと、エチレングリコールと、エチレングリコール以外のジオール又はトリオールモノマーと、100モル%のジメチルテレフタレート、テレフタル酸、若しくはこれらの組み合わせに基づいて、無機対イオンを有するスルホネートモノマー0.9〜3モル%と、の反応生成物を含むポリエチレンテレフタレート樹脂から形成される膜を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
更に大きな寸法及び輝度のLCDベースのディスプレイに対する要望がますます高まってきている。大きなディスプレイ寸法、すなわち94cm(37インチ)よりも大きな対角線を有するディスプレイ、及び輝度への要望が増大していることにより電力消費が大きくなっていることが原因で、大きなディスプレイ膜は時間とともに波打つようになるおそれがある。波状のディスプレイ膜は不具合のある画像をディスプレイスクリーン上に表示させる傾向がある。
【0002】
現在市販されている半結晶性ポリエステル樹脂は、厚く、配向されており、光学的に透明であるポリエステル膜を製造するために必要な、厚く、透明な流延ウェブ膜に必須である適切なクエンチ(quench)効率性能を有しない。高レベルのクエンチ効率値を示す市販の非晶質コポリエステル樹脂では、ひずみ誘起性結晶能(複屈折)を欠くため、安定な配向膜を得られない。対照的に、本発明のポリエステル樹脂は、クエンチ効率及びひずみ誘起性結晶化度/複屈折ポテンシャルの必要な組み合わせを示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、配向され、自己支持型であり、大きなLCDディスプレイで用いたとき波打ち形成に対する耐性のある、透明ポリエステル厚膜に基づく光学膜物品に関する。透明ポリエステル厚膜は、高クエンチ効率を有する修飾PET樹脂に基づいている。
【0004】
本発明は、自己支持型であり、大きなLCDディスプレイで用いたとき波打ち形成に対する耐性のある、光学厚膜物品を提供する。
【0005】
本発明はまた、光源、LCDパネル、及び光源とLCDパネルとの間の本発明の光学厚膜を含む光学ディスプレイを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】PET流延ウェブのサンプルのバルクヘーズ(Bulk Haze)対厚さのプロットであり、説明文は延伸された膜の面外複屈折値について記載。
【図2】PET流延ウェブのサンプルの合計ヘーズ対膜のクエンチ効率のプロット。
【図3】PET流延ウェブのサンプルの合計ヘーズ対膜の結晶化半減時間(Half Time)のプロット。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「構造化表面」とは、その表面上に少なくとも1つの幾何学的特徴を有し、所望の幾何学的特徴又は複数の幾何学的特徴を表面に付与する任意の技術によって作製された表面を意味する。こうした幾何学構造は30〜300マイクロメートルのピッチを有する。こうした幾何学的特徴の例としては、規則的な細長い角柱、ランダムな細長い角柱、不連続な角柱、又はビーズ状構造が挙げられる。このような構造は、流延硬化法(cast and cure method)又は溶融押出複製法のいずれかによって適用できる。
【0008】
「2軸延伸」とは、膜を両方の面内方向に延伸するプロセスを指す。得られる膜の絶対面外複屈折は、実質的に0より大きく、好ましくは0.05より大きい。典型的な各面内方向の延伸比は、1.2〜8の範囲である。
【0009】
電子密度分布が材料中でもはやランダムではない場合に複屈折が起こり、異なる方向において異なる速度で光を進ませる。膜の場合には、複屈折は膜を1軸又は2軸のいずれかに延伸することによって生じ得る。所与の膜の複屈折を特徴付けするためには、通常、膜表面を基準面にとりデカルト座標系によって空間を定義する。ロールツーロールプロセスにおいては、膜面平面内にダウンウェブ方向をとり、それを機械方向(MD)と称する。MDと垂直なもうひとつの面内方向が横方向(TD)である。第3の方向は膜面平面と垂直であり、トランスマグネティック(transmagnetic)方向(TM)と称される。MD及びTDは面内方向と呼ばれることが多く、一方TMは面外方向と称される。
【0010】
延伸された膜に関しては、面内複屈折、Δninは、面内延伸方向と面内非延伸方向との間の屈折率の差として定義される。例えば、膜がTD方向に延伸された場合、その面内複屈折は次の等式で表される。
【0011】
【数1】

【0012】
その面外複屈折、Δnoutは、次の等式によって示されるように、面内方向の平均屈折率と膜垂直方向との屈折率の差として定義される。
【0013】
【数2】

【0014】
式中、nMD、nTD、nTMは3方向における膜の屈折率である。
【0015】
1軸延伸膜では、面内及び面外複屈折は両方とも、それらの応力光学係数が実質的に正の値であることにより、実質的に0より大きい。例えば、延伸比1×4(MD×TD)によりTD方向に制限された1軸延伸性PETは、典型的にMD、TD、及びTMがそれぞれ1.54、1.66、1.51の屈折率をもたらす。この場合には、等式(1)及び(2)により、面内複屈折は0.12であり、一方面外複屈折は0.09であり、これはPETが高複屈折性ポリマーであることを示している。
【0016】
一方、非複屈折性ポリマー、又は応力光学係数が本質的に0であるポリマーに関しては、面内及び面外の両方の複屈折が実質的に0に近くなり得る。例えば、ポリカーボネートの延伸は、典型的に面内及び面外の両方向において0.005未満の複屈折をもたらし、これはPCが複屈折性の強いポリマーではないということを示している。
【0017】
2軸延伸膜に関しては、膜が面内の両方向に等しく延伸された場合には、面内複屈折は実質的に0であり得る。同時に、材料の正の複屈折性に起因して面外複屈折は実質的に正であり得る。面内又は面外のいずれかの複屈折は実質的に0よりも大きいか又は小さく、このポリマーは実質的に複屈折性である。例えば、MD及びTDの両方向において3.5の延伸比で2軸延伸されたPET膜は典型的に、MD、TD、及びTMに対しそれぞれ1.65、1.65、及び1.50の屈折率を有する。この場合には、等式(1)及び(2)によると、面内複屈折は0.0であり、一方面外複屈折は0.15である。0.15の面外複屈折は実質的に0よりも大きく、これはPETが正に複屈折性のポリマーであることを示している。
【0018】
望ましくは、本発明の積層体の面外複屈折は0よりも大きい。他の実施形態では、本発明の膜の面外複屈折は0.05よりも大きく、0.10よりも大きく、又は0.15以上である。
【0019】
幾つかの実施形態では、2軸延伸膜は高明澄度を有する。透過率は、少なくとも50%、好ましくは70%超、最も好ましくは85%超である。
【0020】
幾つかの実施形態では、2軸延伸膜は低ヘーズを有する。ヘーズは、10%未満、好ましくは7%未満、最も好ましくは5%未満である。
【0021】
1つの実施形態では、本発明は、1軸又は2軸配向され、複屈折性であり、少なくとも0.25mm(10mil)の厚さ、他の実施形態では、少なくとも0.28mm(11mil)、0.30mm(12mil)、0.33mm(13mil)、0.36mm(14mil)、0.38mm(15mil)、0.41mm(16mil)、0.43mm(17mil)、0.46mm(18mil)、0.48mm(19mil)、0.51mm(20mil)、0.53mm(21mil)、0.56mm(22mil)、0.61mm(24mil)、又は0.64mm(25mil)の厚さを有するポリエチレンテレフタレート(PET)膜を提供する。他の実施形態では、光学膜は、0.25mm(10mil)〜0.64mm(25mil)の範囲内、及び0.25mm〜0.64mm間の任意の範囲の厚さを有することができる。別の実施形態では、本発明の光学膜は、ポリエステル基膜上に配置された構造化表面を含み、その光学膜は、少なくとも0.25mm(10mil)の全厚を有し、他の実施形態では、少なくとも0.28mm(11mil)、0.30mm(12mil)、0.33mm(13mil)、0.36mm(14mil)、0.38mm(15mil)、0.41mm(16mil)、0.43mm(17mil)、0.46mm(18mil)、0.48mm(19mil)、0.51mm(20mil)、0.53mm(21mil)、0.56mm(22mil)、0.61mm(24mil)、又は0.64mm(25mil)の厚さを有する。他の実施形態では、光学基膜は、0.25mm(10mil)〜0.64mm(25mil)の範囲内、及び0.25mm〜0.64mm間の任意の範囲の厚さを有することができる。
【0022】
本発明の膜を製造するために用いられるPET樹脂は、テレフタル酸のジカルボキシレートモノマー、及びテレフタル酸以外の別のジカルボキシレートモノマー、又はそのジアルキルエステル類似体、例えばジメチルテレフタレートを二酸成分として用い、エチレングリコール及びエチレングリコール以外の別のグリコールをグリコール成分として利用する。他のジカルボン酸の例としては、ナフタレンジカルボン酸、ジカルボン酸フタル酸、ジカルボン酸イソフタル酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビ−シクロオクタンジカルボン酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸、t−ブチルイソフタル酸、トリ−メリト酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、又はこれらの組み合わせが挙げられ、これらは、それらのジメチル(アルキル)エステル形態により置換されてもよい。
【0023】
本発明の実施形態では、テレフタル酸成分(又はアルキルエステル等価物)は、樹脂組成物中に、100モル%の総カルボン酸成分に基づいて、90〜99.75モル%、別の実施形態では、95〜99.75モル%の量存在する。別の態様では、テレフタル酸(又はアルキルエステル等価物)成分は、95〜99.75モル%の量存在し得る。他の態様では、カルボン酸成分は、95.1、95.2、95.3、95.4、95.5、95.6、95.7、95.8、95.9、96、96.1、96.2、96.3、96.4、96.5、96.6、96.7、96.8、96.9、97、97.1、97.2、97.3、97.4、97.5、97.6、若しくは97.7モル%の量、又はこれらの量の任意の範囲存在し得る。テレフタル酸の他のジカルボキシレートモノマーに対するモル比は、13〜500で変動し得る。
【0024】
本発明の膜を製造するために用いられるPET樹脂は、エチレングリコールモノマー、及びエチレングリコール以外の少なくとも1種の他のグリコールをグリコール成分として利用する。他のグリコールの例としては、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリシクロデカンジオール、ノルボルナンジオール、ビシクロ−オクタンジオール、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、及び1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0025】
エチレングリコールは、ポリマー骨格の100モル%の総グリコール成分に基づいて、90〜100モル%の量存在し得る。
【0026】
本発明の膜を製造するために用いられるPET樹脂は、イオン性コモノマーを利用する。イオン性コモノマーは、これらに限定されないが、カルボン酸、スルホン酸、亜リン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸(malice acid)、及び/若しくはイタコン酸に由来する1種以上の酸部分、又はそれらのジアルキルエステル類似体を含有することができる。更に、イオン性コモノマーは、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、コバルト、鉄、及び/又はアンチモンに由来する1種以上の金属イオンを含有することができる。加えて、イオン性コモノマーは、これらに限定されないが、フタレート、イソフタレート、テレフタレート、及び/又はナフタレートに由来する1種以上のジカルボン酸部分を含有することができる。有用なイオン性コモノマーとしては、スルホネートが挙げられる。
【0027】
有用なスルホネートの具体例は、ジメチルスルホイソフタレートである。有用な対イオンの例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、コバルト、鉄、アルミニウム、若しくはアンチモンの対イオン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。有用なスルホン化塩の具体例は、ジメチル−5−スルホイソフタレートのナトリウム塩である。
【0028】
本発明の実施形態では、イオン性コモノマーは、100モル%のジカルボン酸成分に基づいて、0.2〜4モル%の量樹脂組成物中に存在する。他の態様では、イオン性コモノマーは、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、若しくは4.0モル%の量、又はこれらの量の任意の範囲存在し得る。
【0029】
1つの実施形態では、本発明の膜を製造するために用いられるPET樹脂は、低クエンチ効率を有するPET樹脂と、高クエンチ効率を有する修飾PET樹脂との反応の反応生成物を含む、それから本質的になる、又はそれからなる。得られる共反応ポリマーが、有用なクエンチ効率レベルを有するポリマーもたらす範囲を除くモノマー範囲で構成されている限り、得られるポリマーは、改善された有用なクエンチ効率を有するブロックコポリマーである。
【0030】
別の実施形態では、本発明の膜を製造するために用いられるPET樹脂は、多層フィードブロックを通して低クエンチ効率を有するPET樹脂と、高クエンチ効率を有する修飾PET樹脂とを共押出することにより製造できる。別の実施形態では、コアとしての高クエンチ効率を有する修飾PET樹脂及びスキン層(1つの層又は複数)としての低効率を有するPET樹脂を用いて3つの層膜が製造される。改善された全体的な効率が得られる。
【0031】
本発明のPET膜は、一般に押出/流延プロセスにより製造できる。樹脂又は2種以上のポリエチレンテレフタレート樹脂の組み合わせは、押出成形機内で融解し、融解物流をフィルムダイを通過させ、得られる押出品を流延ホイール上に流延する。2種以上のポリエチレンテレフタレート樹脂は、典型的には異なる樹脂であり、例えば分子量、反応性モノマー比、用いられる他のグリコール成分の種類等が異なる。典型的には、流延ホイールは、例えば冷水により冷却されている。典型的には、静電ピンニングシステムを用いて、押出品を流延ホイール上に固定する。押出品が流延ホイール上で冷却されると、流延ウェブが形成される。典型的な流延システムでは、最高約2.5mm(100mil)の厚さの透明な流延ウェブを得ることができる。典型的には、2.5mm(100mil)より厚い流延ウェブは、PET樹脂の熱伝導率が低いため、効率的にクエンチすることができない。結果として、流延ウェブの中心は、最高200秒間樹脂の軟化温度を上回る状態で保たれる。この間、中心の材料は大きな結晶を形成するのに十分な時間を有し、その結果流延ウェブ中で不所望の光散乱(すなわちヘーズ)が生じる。このように得られた厚い流延ウェブは、光学用途には有用ではない。また複数層の流延ウェブを共押出してもよい。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態では、最高4.6mm(180mil)の厚さ又はそれ以上、例えば5.1mm(200mil)の流延ウェブは、修飾PET樹脂の高クエンチ効率のため、光学用途に有用な、ヘーズのない透明な流延であり得る。他の実施形態では、流延ウェブは、2.5mm(100mil)〜5.1mm(200mil)の厚さを有してもよい。
【0033】
他の実施形態では、本発明に記載される修飾PETを用いて厚さ0.29mm(11.5mil)、0.36mm(14mil)、0.38mm(15mil)、及び0.46mm(18mil)の透明な、2軸配向膜が得られることが示される。現在市販されているPET樹脂を用いてこれらの厚く透明なPET膜を得ることは不可能である。
【0034】
次いで流延ウェブを2軸延伸して光学厚膜を得る。幾つかの実施形態では、二重延伸工程を用いて2軸延伸膜を製造する。このプロセスは、長さ配向機(LO)及び幅出し機で連続して実施することができる。長さ配向機は膜を機械方向に延伸し、幅出し機は得られる膜を機械方向を横断する面内方向に延伸する。典型的には、延伸比は1.2〜8.0である。米国特許出願公開第2006/0238682A1号に開示されているものと類似の2軸配向機を用いて1工程の延伸プロセスのみを用いることにより厚膜を製造することができる。
【0035】
本発明はまた、本発明の光学膜を利用する光学ディスプレイを提供する。典型的な光学ディスプレイは、光源(例えばバックライト又は光ガイド)、LCDパネル、及び光源とLCDパネルとの間に配置される本発明の光学膜を備える。典型的には、光学膜積層体の構造化表面は上向きであり、すなわちLCDパネルの方に向けられている。光学膜は光源に隣接し、又は光源に貼り付けるか接着されていてもよい。
【0036】
次の実施例は、本発明の光学膜の例示的態様を示している。
【実施例】
【0037】
試験方法:
クエンチ効率:
クエンチ効率は、TA Instruments(New Castle,DE)製のTA Q2000示差走査熱量計を用いて測定される。試験前にサンプルを60℃で約72時間真空下で(<1.333kPa(10mmHg))乾燥させる。約5mgのサンプルを計量し、密閉したアルミニウムTzero(商標)パン内に密封する。加熱−冷却−加熱勾配(ramp)を実施する。温度範囲は30〜300℃である。勾配には20℃/分の一定加熱速度を用いる。走査後、融解及び結晶化ピークについて熱追跡(thermal trace)結果を解析する。2回目の加熱時の結晶化発熱(ΔHc)及び融解吸熱(ΔHm)は、100〜280℃の主基準を用いて別々に算出する。クエンチ効率は、以下のように算出される:
【0038】
【数3】

【0039】
上に示すように、クエンチ効率は、ΔHmが異なるPET樹脂についてほぼ同じであるとき、ΔHcにより決定される。クエンチ効率が高いことは、融解押出の流延ホイール速度をより速くすることができる所与の速度で融解物から冷却されることにより多くの非晶質相が存在し、流延ウェブがより厚くなるにつれて、高速ウェブ速度においてより厚くヘーズのない完成膜が得られることを示し;クエンチ効率が低いと、流延ホイール速度が遅くなる及び/又は流延ウェブが薄くなり、ヘーズのない膜の最大厚が減少し、ウェブ速度が遅くなる。20℃/分では、40%を超えるクエンチ効率を有するポリエステル膜から、厚さ4.6mm(180mil)の半透明から透明な流延ウェブが得られる。
【0040】
一部のポリマーでは、加熱曲線でも冷却曲線でも結晶化又は融解が見られない。この場合、これらのポリマーではQEが100%であると考えられる。
【0041】
結晶化半減時間測定:
クエンチ効率測定を補完するために(Complimentary to)、60℃で72時間真空乾燥させたポリエチレンテレフタレート樹脂を、アルミニウムの密閉したTzero(商標)パン内で300℃超にてTA Q2000示差走査熱量計内で溶解させ、90℃/分の速度で冷却し、等温に保ち、T(180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、及び300℃)を超える温度で結晶化させた。試験法及び原理は、Hu et al.(J.Appl.Polymer Sci 2002,86,98〜115)に記載されている。クエンチからの結晶化半減時間は、より長い半減時間が結晶化速度を遅くして、融解押出の流延ホイール速度をより速くすることができ、より厚い流延ウェブにより、高速ウェブ速度でより厚い、ヘーズのない完成膜が得られる最大熱流の時間から決定された。種々のポリマーの210℃の温度における結晶化半減時間を決定した。
【0042】
見かけのヘーズの測定
見かけのヘイズは、BYK−Garner USA製のHazeguard(登録商標)機器を用いて試験した。ヘイズはASTM D−1003に従い測定した。ヘーズは、表面ヘーズ及びバルクヘーズを含む。厚さ4.6mm(180mil)の流延ウェブでは、表面ヘーズは表面粗さのために約20%である。
【0043】
バルクヘーズの測定
バルクヘーズは、BYK−Garner USA製の同Hazeguard(登録商標)機器及び光学的に透明な表面を有する透明石英容器を用いて試験した。容器に脱イオン水を充填する。まず、バックグラウンドとして水を用いて容器上でヘーズ値を測定した(ヘーズ1)。次いで膜サンプルを容器に添加し、再びヘーズ値を測定した(ヘーズ2)。測定中、光路に気泡が存在せず、サンプルの両表面が湿潤するよう注意する。バルクヘーズは以下のように定義される:
【0044】
【数4】

【0045】
この測定値は、異なるサンプルにおける表面のトポロジー的特性を排除する。屈折率の不一致によるバルクヘーズ絶対値と上記等式から得られる値との差は、無視してよいと考えられ、試験全体を通して一定である。種々の流延ウェブ厚(L)の比較のために、バルクヘーズを2.5mm(100mil)の厚さに正規化し、以下のように定義する:
【0046】
【数5】

【0047】
屈折率の測定
種々のサンプルの屈折率を、メトリコン・プリズム・カプラー(Metricon Prism coupler)(Metricon Corporation,Pennington,N.J.)を用いて、MD、TD、及びTM方向において測定した。MD及びTDは面内方向であり、TMは膜表面に対して垂直である。
【0048】
化学組成物を決定するためのNMR
材料のサンプルを重水素化クロロホルム及びトリフルオロ酢酸の1:1混合物に溶解した。1D NMRスペクトルを二重チャネルVarian Chiliプローブを装備した500MHz機器で収集した。整相及び基準線補正の後、統合(Integration)を実施した。特に明記しない限り、全てのポリマー組成物をNMRを用いて確認した。
【0049】
光学ゲイン(Gain)測定
プリズムコーティングされた膜物品のゲインは、光源として使用されたゲインキューブと称される照明ボックス上で測定した。ゲインキューブは高度に反射性の空洞を含み、光がTeflon(登録商標)表面から外へと通り抜けサンプルを照らす。ゲインキューブの上部において基準線測定を行い、次いでゲインキューブの上部にサンプルを置いて測定を行った。サンプルを用いて測定した輝度を、ゲインキューブ上でサンプルを用いずに測定した輝度で割ることにより、ゲインを算出した。
【0050】
樹脂:
8601の製品等級を有するInvista(Wichita,KS)から市販されているPET樹脂(INVISTA PET)を調べた。樹脂は0.61の固有粘度(I.V.)値を有する。INVISTA PETは、エチレングリコール及びテレフタル酸から構成されていた。
【0051】
INVISTA PETは、0%のクエンチ効率を有しており、得られた膜は2軸延伸後0.10の面外複屈折を有していた。
【0052】
商品名Crystar(等級5005)としてDuPont(Wilmington,DE)から市販されているPET樹脂(DuPont Crystar PET)を調べた。樹脂は0.85のI.V.値を有する。DuPont Crystar PETは、エチレングリコール及びテレフタル酸から構成されていた。
【0053】
DuPont Crystar PETは、0%のクエンチ効率を有しており、得られた膜は2軸延伸後0.10の面外複屈折を有していた。
【0054】
PET樹脂(対照PET)は、0.18モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分がトリメチロールプロパン(TMP)により置換されたPET樹脂である。樹脂は、以下のように製造した:バッチ反応器に158.9kgのジメチルテレフタレート(DMT)、0.2kgのトリメチロールプロパン(TMP)、108.1kgのエチレングリコール(EG)、32gの酢酸亜鉛(II)、32gの酢酸コバルト(II)、及び80gの酢酸アンチモン(III)を充填した。239.2kPaの圧力下で、この混合物を257℃に加熱してエステル化反応の副生成物であるメタノールを除去した。メタノールが完全に除去された後、64gのトリエチルホスホノアセテートを反応器に充填し、次いで277℃まで加熱しながら圧力を徐々に500Pa未満まで低下させた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中で23℃にて測定した場合に、固有粘度が約0.60dL/gの樹脂が生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。
【0055】
対照PETは、0%のクエンチ効率を有しており、得られた膜は2軸延伸後0.10の面外複屈折を有していた。更に、この樹脂は210℃で4.5分の結晶化半減時間を有していた。
【0056】
商品名PETG 6763としてEastman Chemical(Kingsport,TN)から市販されている非晶質PET樹脂(PETG 6763)を調べた。PETG 6763は0.76のI.V.値を有していた。PETG 6763は、エチレングリコール(70モル%のグリコール部分)、CHDM(30モル%のグリコール部分)、及びテレフタル酸から構成されていた。
【0057】
PETG 6763は加熱及び冷却しても結晶化しなかった。慣習的に、PETG 6763は100%に近いクエンチ効率を有すると考えられる。
【0058】
樹脂Xは、モノマー充填中、5モル%のテレフタル酸二酸部分がスルホイソフタル酸ナトリウム又はそのエステルにより置換され、17モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分が、ネオペンチルグリコール(NPG)により置換されたPET樹脂であった。樹脂Xは、以下のように製造した:バッチ反応器に146.6kgのジメチルテレフタレート(DMT)、11.8kgのジメチルナトリウムスルホイソフタレート(DMSSIP)、22.7kgのネオペンチルグリコール(NPG)、91.5kgのエチレングリコール(EG)、16gの酢酸亜鉛(II)、16gの酢酸コバルト(II)、142gの酢酸ナトリウム、及び79gの酢酸アンチモン(III)を充填した。239.2kPaの圧力下で、この混合物を257℃に加熱してエステル化反応の副生成物であるメタノールを除去した。メタノールが完全に除去された後、29gのトリエチルホスホノアセテートを反応器に充填し、次いで277℃まで加熱しながら圧力を徐々に500Pa未満まで低下させた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中で23℃にて測定した場合に、固有粘度が約0.40dL/gの樹脂が生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。
【0059】
得られた樹脂は、加熱及び冷却しても結晶化しなかった。慣習的に、樹脂Xは100%に近いクエンチ効率を有すると考えられる。
【0060】
樹脂Dは、2モル%のテレフタル酸二酸部分がスルホイソフタル酸ナトリウム又はそのエステルにより置換され、3モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分がネオペンチルグリコール(NPG)部分により置換され、0.18モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分がTMRにより置換されたPET樹脂であった。樹脂Dは、以下のように製造した:ステンレス鋼、オイルジャケット付(oil jacketed)バッチ反応器に、22.01kgのジメチルテレフタレート(DMT)、0.69kgのジメチルナトリウムスルホイソフタレート(DMSSIP)、0.36kgのネオペンチルグリコール(NPG)、15.58kgのエチレングリコール(EG)、28.2gのトリメチロールプロパン(TMP)、4.5gの酢酸亜鉛(II)、4.5gの酢酸コバルト(II)、11.3gの酢酸ナトリウム、及び11.3gの酢酸アンチモン(III)を充填した。圧力下(239.2kPa)でこの混合物を約257℃に加熱し、約7.41kgのエステル化反応副生成物であるメタノールを除去した。メタノールが完全に除去された後、9.1gのトリエチルホスホノアセテートを反応器に充填し、次いで277℃まで加熱しながら圧力を徐々に500Pa未満まで低下させた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中で23℃で測定した場合に、固有粘度が約0.50dL/gの樹脂が生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。
【0061】
樹脂Dは、89%のクエンチ効率を有しており、得られた膜は2軸延伸後0.07超の面外複屈折を有していた。更に、この樹脂は210℃で26.3分の結晶化半減時間を有していた。
【0062】
樹脂Eは、0.25モル%のテレフタル酸二酸部分がスルホイソフタル酸ナトリウム又はそのエステルにより置換され、3.0モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分が1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)により置換され、0.18モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分がTMPにより置換されたPET樹脂であった。樹脂Eは、以下のように製造した:バッチ反応器に、22.61kgのジメチルテレフタレート(DMT)、86.5gのジメチルナトリウムスルホイソフタレート(DMSSIP)、505.1gの1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、15.71kgのエチレングリコール(EG)、28.5gのトリメチロールプロパン(TMP)、4.5gの酢酸亜鉛(II)、4.5gの酢酸コバルト(II)、2.3gの酢酸ナトリウム、及び11.3gの酢酸アンチモン(III)を充填した。239.2kPaの圧力下でこの混合物を約257℃に加熱し、約7.48kgのエステル化反応副生成物であるメタノールを除去した。メタノールが完全に除去された後、9.08gのトリエチルホスホノアセテートを反応器に充填し、次いで277℃まで加熱しながら圧力を徐々に500Pa未満まで低下させた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン内で23℃で測定した場合に、固有粘度が約0.50dL/gのポリマーが生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。
【0063】
樹脂Eは、55%のクエンチ効率を有しており、得られた膜は2軸延伸後0.07超の面外複屈折を有していた。更に、樹脂Eは210℃で14.6分の結晶化半減時間を有していた。
【0064】
樹脂Fは、2モル%のテレフタル酸二酸部分がスルホイソフタル酸ナトリウム又はそのエステルにより置換され、0.25モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分がTMPにより置換されたPET樹脂であった。樹脂Fは、以下のように製造した:バッチ反応器に、21.34kgのジメチルテレフタレート(DMT)、1.36kgのジメチルナトリウムスルホイソフタレート(DMSSIP)、15.63kgのエチレングリコール(EG)、27.9gのトリメチロールプロパン(TMP)、4.5gの酢酸亜鉛(II)、4.5gの酢酸コバルト(II)、18.2gの酢酸ナトリウム、及び11.3gの酢酸アンチモン(III)を充填した。239.2kPaの圧力下でこの混合物を約257℃に加熱し、約7.34kgのエステル化反応副生成物であるメタノールを除去した。メタノールが完全に除去された後、9.08gのトリエチルホスホノアセテートを反応器に充填し、次いで277℃まで加熱しながら圧力を徐々に500Pa未満まで低下させた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中で23℃で測定した場合に、固有粘度が約0.50dL/gの樹脂が生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。
【0065】
樹脂Fは、75%のクエンチ効率を有しており、得られた膜は2軸延伸後0.07超の面外複屈折を有していた。更に、この樹脂は210℃で15.4分の結晶化半減時間を有していた。
【0066】
樹脂Gは、4.0モル%のテレフタル酸二酸部分がスルホイソフタル酸ナトリウム又はそのエステルにより置換され、0.18モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分がTMPにより置換されたPET樹脂であった。樹脂Gは、以下のように製造した:バッチ反応器に、21.34kgのジメチルテレフタレート(DMT)、13.57kgのジメチルナトリウムスルホイソフタレート(DMSSIP)、15.63kgのエチレングリコール(EG)、0.2gの1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、0.1gのネオペンチルグリコール(NPG)、27.9gのトリメチロールプロパン(TMP)、4.5gの酢酸亜鉛(II)、4.5gの酢酸コバルト(II)、18.2gの酢酸ナトリウム、及び11.3gの酢酸アンチモン(III)を充填した。239.2kPaの圧力下でこの混合物を約257℃に加熱し、約7.34kgのエステル化反応副生成物であるメタノールを除去した。メタノールが完全に除去された後、9.08gのトリエチルホスホノアセテートを反応器に充填し、次いで277℃まで加熱しながら圧力を徐々に500Pa未満まで低下させた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン内で23℃で測定した場合に、固有粘度が約0.50dL/gのポリマーが生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。
【0067】
樹脂Gは、86%のクエンチ効率を有しており、得られた膜は2軸延伸後0.07超の面外複屈折を有していた。更に、この樹脂Gは210℃で19.2分の結晶化半減時間を有していた。
【0068】
樹脂Hは、1.0モル%のテレフタル酸二酸部分がスルホイソフタル酸ナトリウム又はそのエステルにより置換され、5.3モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分がネオペンチルグリコール(NPG)により置換されたPET樹脂であった。樹脂Hは、以下のように製造した:バッチ反応器に、22.04kgのジメチルテレフタレート(DMT)、339.6gのジメチルナトリウムスルホイソフタレート(DMSSIP)、14.78kgのエチレングリコール(EG)、628.4gのネオペンチルグリコール(NPG)、4.5gの酢酸亜鉛(II)、4.5gの酢酸コバルト(II)、11.2gの酢酸ナトリウム、及び11.2gの酢酸アンチモン(III)を充填した。239.2kPaの圧力下でこの混合物を約257℃に加熱し、約7.35kgのエステル化反応副生成物であるメタノールを除去した。メタノールが完全に除去された後、8.95gのトリエチルホスホノアセテートを反応器に充填し、次いで277℃まで加熱しながら圧力を徐々に500Pa未満まで低下させた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン内で23℃で測定した場合に、固有粘度が約0.50dL/gのポリマーが生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。
【0069】
樹脂Hは、64%のクエンチ効率を有しており、得られた膜は2軸延伸後0.07超の面外複屈折を有していた。更に、樹脂Hは210℃で17.5分の結晶化半減時間を有していた。
【0070】
樹脂Iは、1.0モル%のテレフタル酸二酸部分がスルホイソフタル酸ナトリウム又はそのエステルにより置換され、5モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分が1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)により置換されたPET樹脂であった。樹脂Iは、以下のように製造した:バッチ反応器に、22.04kgのジメチルテレフタレート(DMT)、339.6gのジメチルナトリウムスルホイソフタレート(DMSSIP)、14.80kgのエチレングリコール(EG)、826.6gの1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、4.5gの酢酸亜鉛(II)、4.5gの酢酸コバルト(II)、11.2gの酢酸ナトリウム、及び11.2gの酢酸アンチモン(III)を充填した。239.2kPaの圧力下でこの混合物を約257℃に加熱し、約7.35kgのエステル化反応副生成物であるメタノールを除去した。メタノールが完全に除去された後、8.95gのトリエチルホスホノアセテートを反応器に充填し、次いで277℃まで加熱しながら圧力を徐々に500Pa未満まで低下させた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン内で23℃で測定した場合に、固有粘度が約0.50dL/gのポリマーが生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。
【0071】
樹脂Iは、81%のクエンチ効率を有しており、得られた膜は2軸延伸後0.07超の面外複屈折を有していた。更に、樹脂Iは210℃で22.9分の結晶化半減時間を有していた。
【0072】
樹脂Jは、2.0モル%のテレフタル酸二酸部分がスルホイソフタル酸ナトリウム又はそのエステルにより置換され、3.18モル%の理論的に組み込まれたエチレングリコール部分が1.5モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、1.5モル%のネオペンチルグリコール(NPG)、及び0.18モル%のトリメチロールプロパン(TMP)により置換されたPET樹脂であった。ポリマーを以下のように製造した:バッチ反応器に、22.01kgのジメチルテレフタレート(DMT)、0.69kgのジメチルナトリウムスルホイソフタレート(DMSSIP)、15.69kgのエチレングリコール(EG)、250.2gの1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、180.7gのネオペンチルグリコール(NPG)、28.2gのトリメチロールプロパン(TMP)、4.5gの酢酸亜鉛(II)、4.5gの酢酸コバルト(II)、11.3gの酢酸ナトリウム、及び11.3gの酢酸アンチモン(III)を充填した。239.2kPaの圧力下でこの混合物を約257℃に加熱し、約7.41kgのエステル化反応副生成物であるメタノールを除去した。メタノールが完全に除去された後、9.08gのトリエチルホスホノアセテートを反応器に充填し、次いで277℃まで加熱しながら圧力を徐々に500Pa未満まで低下させた。60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン内で23℃で測定した場合に、固有粘度が約0.50dL/gのポリマーが生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。
【0073】
樹脂Jは、77%のクエンチ効率を有しており、得られた膜は2軸延伸後0.07超の面外複屈折を有していた。更に、樹脂Jは210℃で17.1分の結晶化半減時間を有していた。
【0074】
樹脂及び得られた膜の特性を説明するデータを以下の表1に要約する。
【0075】
膜:
実施例1〜7及び比較例1〜5では、押出成形した単層膜を単層フィードブロック及びフィルムダイを用いてパイロット押出成形ラインで製造した。合計押出速度は13.6kg/時間(30lbs/時間)であった。押出品をフィルムダイを使用して冷却ロール上に流延させ、流延ウェブを作製した。次いで、KARO IVバッチ延伸機(Bruckner Maschinengebau,Siegsdorff,Germany)で、90℃、100%/秒の速度で、異なる延伸比で流延ウェブの試料を2軸延伸した。
【0076】
比較例1
対照PETを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは、100%の見かけのヘーズを有していたため、透明で、厚い、2軸配向膜を製造するために有用ではない。
【0077】
比較例2
INVISTA PETを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは、100%の見かけのヘーズを有していたため、透明で、厚い、2軸配向膜を製造するために有用ではない。
【0078】
比較例3
DuPont Crystar PETを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは、100%の見かけのヘーズを有していたため、透明で、厚い、2軸配向膜を製造するために有用ではない。
【0079】
比較例4
PETG 6763を4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは透明であった。流延ウェブは15%未満の見かけのヘーズを有していた。しかし、流延ウェブを延伸したとき、ウェブは中央部分で破断し、見かけのひずみ硬化もネック伝播(neck propagation)も示さなかった。結果として、PETG 6763樹脂は有用な2軸延伸膜の製造に有用ではなかった。PETG 6763膜の面外複屈折は典型的には0.04未満であると測定された。
【0080】
比較例5
樹脂Xを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは透明であった。流延ウェブは15%未満の見かけのヘーズを有していた。しかし、流延ウェブを延伸したとき、ウェブは中央部分で破断し、見かけのひずみ硬化もネック伝播も示さなかった。結果として、樹脂Xは有用な2軸延伸膜の製造に有用ではなかった。樹脂X膜の面外複屈折は典型的には0.04未満であると測定された。
【0081】
(実施例1)
樹脂Dを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは透明であった。見かけのヘーズは約16%であると測定され、その厚さは3.5×3.5の延伸比を用いて最高0.38mm(15mil)の厚さの透明な配向膜を製造するために適切であった。
【0082】
(実施例2)
樹脂Eを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。見かけのヘーズは約98%であると測定された。流延ウェブは3.5×3.5の延伸比を用いて最高0.38mm(15mil)の厚さの透明な配向膜を製造するために適切であった。
【0083】
(実施例3)
樹脂Fを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは透明であった。見かけのヘーズは約36%であると測定され、その厚さは3.5×3.5の延伸比を用いて最高0.38mm(15mil)の厚さの透明な配向膜を製造するために適切であった。
【0084】
(実施例4)
樹脂Gを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは透明であった。見かけのヘーズは約22%であると測定され、その厚さは3.5×3.5の延伸比を用いて最高0.38mm(15mil)の厚さの透明な配向膜を製造するために有用であった。
【0085】
(実施例5)
樹脂Hを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは非常に透明であった。見かけのヘーズは約66%であると測定され、その厚さは3.5×3.5の延伸比を用いて最高0.38mm(15mil)の厚さの透明な配向膜を製造するために適切であった。
【0086】
(実施例6)
樹脂Iを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは非常に透明であった。見かけのヘーズは約58%であると測定され、その厚さは3.5×3.5の延伸比を用いて最高0.38mm(15mil)の厚さの透明な配向膜を製造するために適切であった。
【0087】
(実施例7)
樹脂Jを4.6mm(180mil)の厚さの流延ウェブに押出成形した。流延ウェブは非常に透明であった。見かけのヘーズは約13%であると測定され、その厚さは3.5×3.5の延伸比を用いて最高0.38mm(15mil)の厚さの透明な配向膜を製造するために適切であった。
【0088】
実施例8〜13及び比較例6では、押出成形単層膜を単層フィードブロック及びフィルムダイを用いてパイロット押出成形ラインで製造した。合計押出速度は272kg/時間(600lbs/時間)であった。押出品をフィルムダイを使用して冷却ロール上に流延させ、流延ウェブを作製した。
【0089】
比較例6
対照PETを2.2mm(85mil)、2.4mm(95mil)、2.92mm(115mil)、3.25mm(128mil)、及び3.68mm(145mil)の厚さの一連の流延ウェブに押出成形した。これらの流延ウェブのバルクヘーズを測定し、図2に流延ウェブ厚の関数として示す。
【0090】
(実施例8)
樹脂Eを2.2mm(85mil)、2.5mm(98mil)、2.54mm(100mil)、3.0mm(120mil)、3.3mm(130mil)、及び3.76mm(148mil)の厚さの一連の流延ウェブに押出成形した。これらの流延ウェブのバルクヘーズを測定し、図2に流延ウェブ厚の関数として示す。
【0091】
(実施例9)
樹脂Dを2.2mm(85mil)、2.5mm(98mil)、2.54mm(100mil)、3.0mm(120mil)、3.3mm(130mil)、及び3.76mm(148mil)の厚さの一連の流延ウェブに押出成形した。これらの流延ウェブのバルクヘーズを測定した。これらの流延ウェブのバルクヘーズを測定し、図2に流延ウェブ厚の関数として示す。
【0092】
次いで、KARO IVバッチ延伸機(Bruckner Maschinengebau,Siegsdorff,Germany)で、100℃、20〜60%/秒の速度で、異なる延伸比で実施例8及び9の流延ウェブの試料を2軸延伸した。
【0093】
(実施例10)
樹脂Dから製造した3.0mm(120mil)の厚さの流延ウェブを、約2.8×2.9(MD×TD)の延伸比で延伸した。非常に透明で均一な0.38mm(15mil)の厚さの膜が得られた。ヘーズ及び透過率は、それぞれ1.3%及び91%であった。この膜の面外複屈折は0.040であった。200℃で30秒熱硬化した後も膜は透明な状態を保ち、面外複屈折は0.093であった。
【0094】
(実施例11)
樹脂Dから製造した2.54mm(100mil)の厚さの流延ウェブを、約3.3×2.9(MD×TD)の延伸比で延伸した。非常に透明で均一な0.29mm(11.55mil)の厚さの膜が得られた。この膜の面外複屈折は0.065であった。ヘーズ及び透過率は、それぞれ0.8%及び91%であった。200℃で30秒熱硬化した後も膜は透明な状態を保ち、面外複屈折は0.154であった。
【0095】
(実施例12)
樹脂Dから製造した3.3mm(130mil)の厚さの流延ウェブを、約2.9×2.5(MD×TD)の延伸比で延伸した。非常に透明で均一な0.46mm(18mil)の厚さの膜が得られた。この膜の面外複屈折は0.063であった。ヘーズ及び透過率は、それぞれ1.5%及び91%であった。200℃で30秒熱硬化した後も膜は透明な状態を保ち、面外複屈折は0.10であった。
【0096】
(実施例13)
樹脂Eから製造した3.0mm(120mil)の厚さの流延ウェブを、約2.5×3.1(MD×TD)の延伸比で延伸した。非常に透明で均一な0.36mm(14mil)の厚さのPET膜が得られた。この膜の面外複屈折は0.038であった。ヘーズ及び透過率は、それぞれ2.1%及び91%であった。200℃で30秒熱硬化した後も膜は透明な状態を保ち、面外複屈折は0.103であった。
【0097】
(実施例14)
3つの層を含む共押出流延ウェブは、3つの層ABA(スキン/コア/スキン)フィードブロックを使用して、パイロット押出成形ラインで作製された。層Aのポリマーは、対照PETであり、単軸スクリュー押出成形機によってフィードブロックのスキン通路に供給された。層Bのポリマーは、PETG6763であり、2軸スクリュー押出成形機によってフィードブロックのコア通路に供給された。スキン/コア/スキンの供給比は1:1:1(重量)であった。合計押出速度は13.6kg/時間(30lbs/時間)であった。押出品をフィルムダイを用いて冷却ロール上に流延させて、全厚約4.6mm(180mil)の流延ウェブを製造した。流延ウェブは透明であった。
【0098】
(実施例15、16、及び17)
樹脂X及び対照PETを押出中押出成形機内でブレンドした。ブレンド比(樹脂X/対照PET)は、それぞれ5/95、10/90、及び15/85(重量)であった。融解が生じるエステル交換反応により押出中有効なブロックコポリエステルを製造した。結果として、各ブレンドのクエンチ効率は未処理(virgin)PETに対して改善されていた。厚さ約1.5mm(60mil)の流延ウェブを製造した。流延ウェブは、同様の厚さの対照PETのみを用いて製造したものよりヘーズが低いように思われた。
【0099】
図1のデータは、修飾PET樹脂を用いて製造した低ヘーズの厚膜が高い面外複屈折をもたらすことを示す。
【0100】
図2のデータは、膜のクエンチ効率が50%より高いとき、典型的には膜のヘーズが低いことを示す。
【0101】
図3のデータは、結晶化半減時間が15分より長いとき、修飾PET樹脂を用いると低ヘーズが得られることを示す。
【0102】
光学膜
比較例7
対照PET(比較例6で得られた)から製造した2.2mm(85mil)の厚さの流延ウェブを、長さ配向機及び幅出し機で延伸して、厚さ0.2mm(7mil)の完成膜を製造した。延伸比は3.5×3.5であった。次いで膜を約220℃で約30秒間幅出しオーブン中で熱硬化させた。得られた膜は0.166の面外複屈折を有していた。次いで得られた膜をロールツーロールプロセスによりアクリル樹脂でコーティングし、角柱の成形型を用いて表面構造を付与した。UVランプ下でアクリル樹脂を硬化することにより構造を定着させた。得られた膜は光学輝度増強機能を有しており、その光学ゲインは1.65であると測定された。
【0103】
(実施例18)
樹脂E(比較例6で得られた)から製造した2.2mm(85mil)の厚さの流延ウェブを、長さ配向機及び幅出し機で延伸して、厚さ0.2mm(7mil)の完成膜を製造した。延伸比は3.5×3.5であった。次いで膜を約220℃で約30秒間幅出しオーブン中で熱硬化させた。得られた膜は0.150の面外複屈折を有していた。次いで得られた膜をロールツーロールプロセスによりアクリル樹脂でコーティングし、角柱の成形型を用いて表面構造を付与した。UVランプ下でアクリル樹脂を硬化することにより構造を定着させた。得られた膜は光学輝度増強機能を有しており、その光学ゲインは1.64であると測定された。
【0104】
(実施例19)
樹脂D(実施例9で得られた)から製造した2.2mm(85mil)の厚さの流延ウェブを、長さ配向機及び幅出し機で延伸して、厚さ0.2mm(7mil)の完成膜を製造した。延伸比は3.5×3.5であった。次いで膜を約220℃で約30秒間幅出しオーブン中で熱硬化させた。得られた膜は0.145の面外複屈折を有していた。次いで得られた膜をロールツーロールプロセスによりアクリル樹脂でコーティングし、角柱の成形型を用いて表面構造を付与した。UVランプ下でアクリル樹脂を硬化することにより構造を定着させた。得られた膜は光学輝度増強機能を有しており、その光学ゲインは1.64であると測定された。
【0105】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.25mm(10mil)〜0.64mm(25mil)の厚さを有する少なくとも1つの層を有する2軸延伸された複屈折性ポリエチレンテレフタレート膜を含むポリエチレンテレフタレート膜であって、前記膜が、
ジメチルテレフタレート、テレフタル酸、又はこれらの組み合わせと、
エチレングリコールと、
エチレングリコール以外のジオール又はトリオールモノマーと、
100モル%のジメチルテレフタレート、テレフタル酸、若しくはこれらの組み合わせに基づいて、無機対イオンを有するスルホン化モノマー0.2〜3モル%と、
の反応生成物を含むポリエチレンテレフタレート樹脂から形成される、ポリエチレンテレフタレート膜。
【請求項2】
0.25mm(10mil)〜0.635mm(25mil)の厚さを有する単層の2軸延伸された複屈折性ポリエチレンテレフタレート膜を含むポリエチレンテレフタレート膜であって、前記膜が、
ジメチルテレフタレート、テレフタル酸、又はこれらの組み合わせと、
エチレングリコールと、
エチレングリコール以外の第2のジオール又はトリオールモノマーと、
100モル%のジメチルテレフタレートに基づいて、無機対イオンを有するスルホネートモノマー0.2〜3モル%と、
の反応生成物から本質的になるポリエステル樹脂から形成される、ポリエチレンテレフタレート膜。
【請求項3】
少なくとも0.25mm(10mil)の全厚を有する少なくとも1つの層を有する2軸延伸された複屈折性基膜と、
前記基膜の表面上に配置された構造化表面と、を備える光学膜であって、前記基膜がジカルボキシレートモノマー、グリコールモノマー、及び100モル%のジカルボキシレートに基づいて、無機対イオンを有するスルホン化モノマー0.2〜3モル%の反応生成物を含むポリエステルを含む、光学膜。
【請求項4】
前記光学膜の主表面上に構造化表面を更に有する、請求項1又は2に記載の光学膜。
【請求項5】
前記構造化表面が規則的な細長い角柱、ランダムな細長い角柱、不連続な角柱、又はビーズ状構造を含む、請求項4に記載の光学膜。
【請求項6】
前記膜がポリエチレンテレフタレート及び異なるポリエステルのブレンドを含む、又はそれから本質的になる、請求項3〜5のいずれかに記載の光学膜。
【請求項7】
少なくとも2つの層を有する、請求項3〜6のいずれかに記載の光学膜。
【請求項8】
光源と、
LCDパネルと、
前記光源と前記LCDパネルとの間に請求項3〜7のいずれかに記載の光学膜と、を備える、光学ディスプレイ。
【請求項9】
前記LCDパネルの画面上に保護シートを更に備える、請求項8に記載の光学ディスプレイ。
【請求項10】
前記画面が少なくとも94cmの対角線を有する、請求項9に記載の光学ディスプレイ。
【請求項11】
前記光学膜が前記光源に隣接している、請求項8に記載の光学ディスプレイ。
【請求項12】
最高5.1mm(200mil)の厚さを有するポリエステルテレフタレートを含むウェブを融解押出及び流延する工程と、
前記流延膜を2軸延伸して、請求項1、2、又は3に記載の光学膜を形成する工程と、を含む、光学膜の製造方法。
【請求項13】
前記流延ウェブが2.5mm(100mil)〜5.1mm(200mil)の厚さを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記流延ウェブが30%未満の見かけのヘーズを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記流延ウェブが少なくとも50%のクエンチ効率を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記膜が少なくとも0.05の面外複屈折を有する、請求項1、2、又は3に記載の光学膜。
【請求項17】
前記膜が5%以下の合計ヘーズを有する、請求項1、2、又は3に記載の光学膜。
【請求項18】
ポリエステルテレフタレートウェブと別のポリエステルウェブとを共押出する工程と、少なくとも2つの層を有する流延ウェブを形成する工程と、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記樹脂が2種以上のポリエチレンテレフタレート樹脂のブレンドを含む、請求項3〜7、16及び17のいずれか一項に記載の光学膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−515564(P2011−515564A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501922(P2011−501922)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/037662
【国際公開番号】WO2009/120574
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】