説明

光学用易接着フィルム及び光学シート並びに表示装置

【課題】液晶ディスプレイ等の表示装置に用いられる易接着性の積層フィルムの接着強度を向上する。
【解決手段】ポリエステルからなる支持体11を2軸延伸する。2軸延伸した支持体11の少なくとも一方の面に、支持体11に近い側から順に、第1バインダを含む第1易接着層12と、アクリル樹脂又はウレタン樹脂である第2バインダ及び架橋剤を含む第2易接着層13とを形成する。第1易接着層12の厚みを200nm以上500nm以下とする。第2易接着層13の厚みを50nm以上200nm以下とする。第1易接着層12の厚みを200nm以上500nm以下とすることにより、剥離力が第1及び第2易接着層12,13に作用しても厚み方向で応力を分散させることができ、凝集破壊が起こることがなく、接着強度に優れる積層フィルム10が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用易接着フィルム及びこのフィルムを用いて構成されるプリズムシート、反射防止シート、光拡散シート、防眩シート、ハードコートシート等の光学シート、並びに液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTディスプレイ等の表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリマーからなり、複数の層を積層してなる積層フィルムは、透明性や加工性等の利点から光学フィルムとして多く利用されている。中でも、特に、ポリエステルフィルム、特に2軸配向ポリエステルフィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性、低吸湿性を示すことから、各種の光学フィルム用ベースとして多く利用されている。例えば、液晶ディスプレイに用いられるプリズムシート、反射防止シート、光拡散シート、ハードコートシート等のベースフィルム、さらにプラズマディスプレイに用いられるIR吸収シート、電磁波シールドシート、調色シート、反射防止シート、防眩シート、ハードコートシート等のベースフィルムとしての用途が挙げられる。
【0003】
ベースフィルムとして利用されるポリエステルフィルムには、優れた透明性が要求されると共に、この上に積層されるプリズム層を始めとする層(以下、上層と言う場合もある)に対する優れた接着性(易接着性)が必要となる。しかし、ベースフィルムと上層とは、異なる成分で出来ている等の理由から、互いを直接的に充分な強度で接着することは難しい。そこで、一般的には、ポリエステルからなる支持体(ポリエステル支持体と称する)の上に易接着層と呼ばれる塗布層を設けてポリエステルフィルムとする方法が用いられており、例えば、ポリエステル支持体の上にポリエステルとウレタンとを混合してなる易接着層を設けたポリエステルフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ポリエステル支持体の上に、塗布層の平均厚みが20nm未満であり、架橋構造を有する易接着性塗布層が形成されたポリエステルフィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−229395号公報
【特許文献2】特開2004−258174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ポリエステル支持体と同一種成分であるポリエステルと、上層に対して優れた接着性を示すウレタンとを混合することにより、支持体及び上層の双方に対して優れた接着性を示す積層フィルムを得ることができる。また、特許文献2では、塗布層膜厚を20nm未満にして、特定のポリエステルバインダーと架橋剤の組み合わせにより優れた接着性を示す積層フィルムを得る事ができる。しかしながら、これら特許文献で示される従来のものは、例えば、上層の厚みが大きい場合や、この積層フィルムを光学シートとして組み立てて、これを搭載した表示装置が長時間高温や多湿の雰囲気下に置かれる場合には、支持体と塗布層との界面や、塗布層と上層との界面での接着性が低下してしまうために、結果として、積層フィルムと上層との接着性が低下するという問題を抱えている。したがって、上層の厚みが大きい場合や、長時間高温や多湿に晒される場合にも、接着性が低下しない積層フィルムの提案が望まれている。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、上層の厚みが大きい場合や、高温多湿下においても、支持体と上層との双方に対して充分な易接着性を示す易接着層を有する積層フィルム及びその製造方法を提案することを目的とする。また、この積層フィルムを用いることで、光学特性に優れる光学シートや表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下のような知見を得て本発明をなすに至った。従来、接着強度が弱いものを積層する場合に、上記特許文献2に記載のように、基層と上層との間に下塗り層を入れて、両者の接着強度を高めるというのが一般的である。しかし、このような下塗り層による接着強度アップには限界がある。そこで、下塗り層の条件を変えて基層と上層との剥離実験をいろいろと行ってみたところ、界面での剥離というよりも下塗り層内での凝集破壊により下塗り層内で剥離が発生しているということが判った。そして、このような下塗り層内での凝集破壊に対しては、下塗り層を2層構造とし、且つ、支持体側の第1易接着層の厚みを凝縮破壊が発生しない程度の厚みにすると良いという知見が得られた。
【0007】
上記のような知見に基づき、本発明の光学用易接着フィルムは、ポリエステルからなる支持体と、前記支持体の少なくとも一方の面に形成され、厚みが200nm以上500nmの第1易接着層と、前記第1易接着層の面に形成され、厚みが50nm以上200nmの第2易接着層とを備えることを特徴とする。
【0008】
前記第1易接着層は、ポリエステル樹脂を含有するバインダを有し、前記第2易接着層は、アクリル樹脂またはポリウレタン樹脂を含有するバインダを有することを特徴とする。また、前記第1易接着層及び第2易接着層は、カルボジイミド系架橋剤を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の光学シートは、前記光学用易接着フィルムと、前記光学用易接着フィルムの前記第2易接着層に形成されるプリズム層、反射防止層、光拡散層、防眩層、ハードコート層のうちの少なくともひとつからなる上層とを有することを特徴とする。また、本発明の表示装置は、前記光学用易接着フィルムまたは前記光学フィルムを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、上層の厚みが大きい場合や、長時間高温や多湿の雰囲気下に置かれても、支持体と上層との双方に対する易接着性が低下することのない積層フィルムが得られる。そして、この積層フィルムをプリズム層や反射防止層等の上層と組合せることで、光学特性に優れる光学シートや、表示装置が得られる。
【0011】
易接着層を第1及び第2の2層構造とし、第1易接着層の厚みを200nm以上500nm以下とすることにより、剥離力が積層フィルムに作用するときに、易接着層内の厚み増加によって応力が分散され、その分だけ剥離力が界面に集中することがなくなり、接着強度が向上しているものと思われる。このように、易接着層の厚みを従来の100nm以下とする発想から変えて、200nm以上500nm以下とすることにより、易接着層内での剥離が抑えられ、接着強度が著しく向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。実施の形態については、本発明の好適な適用例を記載しているものであり、本発明を制限するものではない。
【0013】
図1に示すように、本発明の積層フィルム10は、ポリエステルからなる支持体11と、支持体11から近い側から順に設けられる第1易接着層12、第2易接着層13とを有する。なお、第1及び第2易接着層12,13は、支持体11の少なくとも一方の面に設けられていれば良く、その面は特に限定されない。
【0014】
図2に示すように、積層フィルム10の第2易接着層13の上には、上層14が形成される。上層14としては、プリズム層、反射防止層、光拡散層、防眩層、ハードコート層などがあり、これらのうち少なくともひとつが形成されて、光学シート15となる。これら光学シート15としては、液晶ディスプレイに用いられるプリズムシート、反射防止シート、光拡散シート、ハードコートシート、プラズマディスプレイIR吸収シート、電磁波シールドシート、調色シート等が挙げられる。
【0015】
〔ポリエステル支持体〕
本発明の支持体11は、ポリエステルからなるポリエステル系基材フィルムである。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等を用いることができ、特にコストや機械的強度の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。ただし、本発明で用いることができるポリエステルは、特に制限されるものではない。
【0016】
本発明のポリエステルは機械的強度を向上させるため、延伸を行ったものであることが好ましく、特に2軸延伸したものが好ましい。延伸倍率には特に制限はないが、1.5〜7倍が好ましく、より好ましくは2〜5倍程度である。特に縦横方向にそれぞれ2〜5倍程度延伸した2軸延伸品が好ましい。支持体11の延伸倍率を1.5倍以上にすることにより、1.5倍未満の場合に比べて充分な機械的強度が得られる。また、延伸倍率を7倍以下とすることにより、7倍を超える場合に比べて均一な厚みを得ることができる。
【0017】
支持体11の厚みは、30μm以上400μm以下とする。より好ましくは35μm以上350μm以下である。支持体11の厚みは、延伸倍率を制御することで容易に調整可能である。このような支持体11は、透明度や種々の光学特性を有しながら、軽量かつ取り扱い性に優れる。厚みが30μm以上の支持体11は、薄すぎることがなく、取り扱いが容易になる。また、厚みが400μm以下の支持体11は適度な厚さとなり、画像表示装置の小型化や軽量化が容易になり、製造コストの増大等を引き起こすことがなくなる。本発明の支持体11は、紫外線吸収剤、酸化防止剤を含有しても良い。特にPDP用反射防止フィルムに用いる場合は、特開2006−212815号公報に記載されているような紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0018】
〔第1易接着層〕
第1易接着層12は、支持体11の上に直接的に積層される層である。この第1易接着層12はバインダを含有することが必須であり、更に、カルボジイミド系架橋剤を含むことが好ましい。また、第1易接着層12には、必要に応じて、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤等を含有してもよい。
【0019】
第1易接着層12に用いられるカルボジイミド系架橋剤の詳細については、後述するが、その添加量は、第1易接着層12のバインダ(第1バインダ)に対して、1質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上50質量%以下の範囲である。添加量を1質量%以上とすることにより、添加量が1質量%未満の場合に比べて微粒子の剥げ落ちの抑制効果が得られる。また、添加量が100質量%以下にすることにより、100質量%を超える場合に比べて第1易接着層12の塗布面状の悪化が抑えられる。
【0020】
第1バインダは、特に制限されるものではなく、(a)アクリル樹脂、(b)ポリウレタン樹脂、(c)ポリエステル樹脂、(d)ゴム系樹脂等のポリマーを好ましく用いることができる。
【0021】
(a)アクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体を成分とするポリマーである。具体的例示としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレート等を主成分として、これらと共重合可能なモノマー(例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等)を共重合したポリマーが挙げられる。
【0022】
(b)ポリウレタン樹脂とは、主鎖にウレタン結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、TDI、MDI、NDI、TODI、HDI、IPDI等があり、ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール等がある。また、本発明のイソシアネートとしては、ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用することができる。以上に述べたポリイソシアネート、ポリオール及び、鎖延長処理については、例えば「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社、昭和62年発行)において記載されている。
【0023】
(c)ポリエステル樹脂とは、主鎖にエステル結合を有するポリマーの総称であり、通常、ポリカルボン酸とポリオールとの反応で得られる。ポリカルボン酸としては、例えばフマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等があり、ポリオールとしては、例えば、前述のものが挙げられる。ポリエステル樹脂およびその原料については、例えば、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(滝山栄一郎著、日刊工業新聞社、昭和63年発行)において記載されている。
【0024】
本発明における(d)ゴム系樹脂とは、合成ゴムのうちジエン系合成ゴムを言う。具体例としてはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−ジビニルベンゼン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン等がある。ゴム系樹脂については、例えば、「合成ゴムハンドブック」(神原周ら編集、(株)朝倉書店、昭和42年発行)において記載されている。
【0025】
本発明では、ポリエステルからなる支持体11に対する接着性を良好にするために、第1バインダとしてポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。
【0026】
また、第1バインダとしては、上記のポリマーを有機溶剤に溶解して用いても良いし、水分散物を用いても良い。ただし、環境負荷が小さいことから、水分散物を用いて水系塗布することが好ましい。水分散物としては市販ポリマーを用いれば良く特に限定されるものではないが、本発明に好ましく用いることができるものとしては、例えば、スーパーフレックス830、460、870、420、420NS(商品名:第一工業製薬(株)製ポリウレタン)、ボンディック1370NS、1320NS、ハイドランAPX−101H、AP−40(F)(商品名:大日本インキ化学工業(株)製ポリウレタン)、ジュリマーET325、ET410、SEK301(商品名:日本純薬(株)製アクリル)、ボンコートAN117、AN226(商品名:大日本インキ化学工業(株)製アクリル)、ラックスターDS616、DS807(商品名:大日本インキ化学工業(株)製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX110、LX206、LX426、LX433(商品名:日本ゼオン(株)製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX513、LX1551、LX550、LX1571(商品名:日本ゼオン(株)製アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、ファインテックスES650、ES2200(商品名:大日本インキ化学工業(株)製ポリエステル)、バイロナールMD1400、MD1480(商品名:東洋紡(株)製ポリエステル)、プラスコートZ561、Z687(商品名:互応化学工業(株)製ポリエステル)等を挙げることができる。
【0027】
第1バインダとして用いるポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。また、第1バインダとして用いるポリマーの分子量は特に制限されないが、重量平均分子量で3000〜1000000程度のものを用いることが好ましい。ポリマーの重量平均分子量が3000以上の場合には、3000未満の場合に比べて、第1易接着層12、第2易接着層13の強度が不充分になるおそれが無くなる。また、ポリマーの重量平均分子量が1000000以下の場合には、1000000を超える場合に比べて、流動性の低下に起因する塗布容易性が損なわれることもなく、第1易接着層12、第2易接着層13の面状の悪化が抑えられる。
【0028】
また、第1易接着層12には、屈折率を制御することを目的として、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化チタンのいずれかひとつを主成分とする微粒子を含ませることが好ましい。例えば、酸化錫としては、SnO2 の組成を持つ酸化錫(IV)が好ましい。この酸化錫にアンチモン等をドープしたものを使用すると、導電性を有するために積層フィルムの表面抵抗率を低下させてゴミ等の不純物が付着するのを防止する効果が得られるので好ましい。このようなアンチモンをドープした酸化錫の具体的例示としては、市販されているFS−10D、SN−38F、SN−88F、SN−100F、TDL−S、TDL−1(いずれも、石原産業(株)製)等が挙げられ、本発明でも好適に用いることができる。
【0029】
上記の酸化ジルコニウムは、ZrO2 の組成を持ち、例えば、NZS−20A、NZS−30A(いずれも、日産化学(株)製)が挙げられ、これらも本発明に好適に用いることができる。そして、酸化チタンとしては、TiO2 の組成を持つ酸化チタン(IV)を用いることが好ましい。酸化チタンは、結晶構造の違いによりルチル型(正方晶高温型)やアナターゼ型(正方晶低温型)等が存在するが、特に限定されるものではない。また、表面処理が施された酸化チタンであっても良い。本発明に好適に用いることができる酸化チタンとしては、例えば、IT−S、IT−O、IT−W(いずれも、出光興産(株)製)等が挙げられる。
【0030】
なお、上記のような微粒子の平均粒径は、15nm以上200nm以下であることが好ましい。このような微粒子を含む第1易接着層12は、屈折率を容易に制御することができる。平均粒径が200nm以下の微粒子を用いると、目視により確認することができる第1易接着層12、第2易接着層13の透明度が低下したり、光透過性が低下したりするおそれが無くなる。また、平均粒径が15nm以上の微粒子とすることにより、それ未満の微粒子に比べて低価格での入手が可能となり、製造コストの面で有利となる。しかも、15nm以上の微粒子を用いるので、それ未満の微粒子を用いる場合に比べて、微粒子同士の凝集による巨大異物化となるおそれが少なくなり、透明度の低下を引き起こすこともなくなる。なお、本発明における微粒子の平均粒径とは、微粒子を走査型電子顕微鏡で撮影した時の微粒子と同面積の円の直径とを粒径としたとき、任意の50個の微粒子について求めた粒径の平均値をいう。
【0031】
また、第1易接着層12には、用途に応じて、上記の他にマット剤や界面活性剤等の各種添加剤を用いても良い。本発明の第1易接着層12に用いることができるマット剤としては、有機又は無機微粒子のいずれも使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のポリマー微粒子や、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の無機微粒子を用いることができる。これらの中で、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカは、すべり性改良効果やコストの観点から好ましい。
【0032】
マット剤の平均粒径は、0.3μm以上12μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上9μm以下である。マット剤の平均粒径を0.3μm以上にすることにより、0.3μm未満の場合に比べて、良好な滑り性を得ることができる。また、平均粒径を12μm以下とすることにより、12μmを超える場合に比べて、画像表示装置における表示品位を低下させるおそれが無くなる。また、マット剤の添加量は、その平均粒径によっても異なるが、滑り性の改良効果に優れ、かつ、画像表示装置の表示品位を低下させないために、0.1mg/m2 以上30mg/m2 以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mg/m2 以上20mg/m2 以下である。マット剤の添加量を0.1mg/m2 以上とすることにより、滑り性の改良効果が得られる。また、30mg/m2 以下とすることにより、画像表示装置の表示品位の低下を抑えることができる。なお、本発明におけるマット剤の平均粒径は、前述の微粒子の平均粒径と同様の方法により測定される値である。
【0033】
第1易接着層12に用いることができる界面活性剤としては、公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系のものが挙げられる。界面活性剤については、例えば、「界面活性剤便覧」(西 一郎、今井 怡知一郎、笠井 正蔵編 産業図書(株) 1960年発行)に記載されている。界面活性剤を用いる場合、その添加量は0.1mg/m2 以上30mg/m2 以下とすることが好ましく、より好ましくは0.2mg/m2 以上10mg/m2 以下とする。界面活性剤の添加量を0.1mg/m2 以上とすることにより、0.1mg/m2 未満とする場合に比べて界面活性剤による効果が得られ、第1易接着層12、第2易接着層13においてハジキの発生が抑えられる。また、その添加量を30mg/m2 以下とすることにより、30mg/m2 を超える場合に比べて、第1易接着層12、第2易接着層13の面状の悪化を抑えることができる。
【0034】
第1易接着層12には帯電防止剤を用いることもできる。帯電防止剤の種類等は特に限定されるものではないが、例えば、ポリアニリン、ポリピロール等の電子伝導系のポリマー、分子鎖中にカルボキシル基やスルホン酸基を有するイオン伝導系ポリマー、導電性微粒子等が挙げられる。これらのうち、特に特開昭61−20033号公報に記載されている導電性酸化錫微粒子は、導電性と透明性の観点から好ましく用いることができる。帯電防止剤の添加量は、25℃30%RH雰囲気で測定した第1易接着層12の表面抵抗率が、1×105 Ω以上1×1013Ω以下となるように調整することが好ましい。第1易接着層12、第2易接着層13の表面抵抗を1×105 Ω以上とすることにより、1×105 Ω未満の場合に比べて、多量の帯電防止剤の使用を避けて、第1易接着層12、第2易接着層13の透明性の低下が抑えられる。また、表面抵抗を1×1013Ω以下とすることにより、1×1013Ωを超える場合に比べて帯電防止の効果を確保することができ、第1易接着層12、第2易接着層13の表面にゴミ等の不純物が付着するおそれが無くなる。
【0035】
第1易接着層12の厚みは、支持体11に対する易接着性を発現させ、且つ界面における十分な接着強度を確保するために、200nm以上500nm以下である。より好ましくは、第1易接着層12の厚みは250nm以上400nm以下である。第1易接着層12の膜厚を200nm以上とすることにより、200nm未満の場合に比べて、支持体11及び上層14との接着性が向上し、且つ厚み増大による応力の分散が図れ、第1易接着層12内での凝集破壊が発生することがなくなる。また、厚みを500nm以下とすることにより、厚みが200nmを超える場合に比べて面状の悪化が抑えられる。
【0036】
[第2易接着層]
第2易接着層13について説明する。第2易接着層13は、第1易接着層12よりも支持体11から離れた位置に設けられる層であるが、積層フィルム10の最外層であることが好ましい。また、第2易接着層13は、アクリル樹脂又はウレタン樹脂である第2バインダ及び架橋剤を含むことを特徴とするが、必要に応じて、屈折率を制御する目的で第1易接着層12のところで説明した酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化チタンのいずれかを主成分とする微粒子や、マット剤、すべり剤、界面活性剤、帯電防止剤等を添加しても良い。
【0037】
第2バインダとしては、アクリル樹脂又はウレタン樹脂を用いることができる。中でも、第2易接着層13を形成する際には、分子内にカルボキシル基を有するポリマーであることが特に好ましい。また、アクリル樹脂やウレタン樹脂は、第1易接着層12で説明したものと同じものを使用することができる。
【0038】
第2バインダとしては、上記のポリマーを有機溶剤に溶解して用いてもよいし、水分散物を用いてもよい。しかし、環境負荷が小さいことから、水分散物を用いて水系塗布することが好ましい。水分散物としては前述の市販ポリマーを用いてもよい。
【0039】
第2バインダとして用いるポリマーは1種類を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。第2バインダとして用いるポリマーの分子量には特に制限はないが、接着強度及び面状悪化の観点から、重量平均分子量で3000から1000000程度のものが好ましい。
【0040】
本発明の第2易接着層13で用いられる架橋剤としては、特に制限されるものではないが、カルボジイミド系又はエポキシ系の架橋剤であることが好ましい。本発明で用いられるカルボジイミド系架橋剤(以下、カルボジイミド化合物と表す場合もある)としては、分子内にカルボジイミド基を有する化合物であれば良く、特に制限されるものではない。
【0041】
カルボジイミド化合物は、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成されるが、この合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能である。ただし、反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。合成原料としては、有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等が使用される。また、本発明に用いうるカルボジイミド系架橋剤としては、例えば、カルボジライトV−02−L2(商品名:日清紡(株)製)等の市販品としても入手可能である。
【0042】
また、本発明に用いることができるエポキシ系架橋剤としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に制限されない。エポキシ系架橋剤としては、例えば、ディナコール(商品名:ナガセ化成(株)社製 EX614B、EX521、EX512、EX301、EX313、EX314、EX810、EX811)等が挙げられる。
【0043】
第2易接着層13に含有させる架橋剤の添加量は、バインダに対して1〜100質量%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは5〜50質量%の範囲で添加することである。添加量を1質量%以上とすることにより、1質量%未満の場合に比べて第2易接着層13と上層との接着性が向上する。また、添加量が100質量%以下の場合には100質量%を超える場合に比べて、第2易接着層13の面状の悪化が抑えられる。
【0044】
また、第2易接着層13には、必要に応じて、マット剤やすべり剤、界面活性剤、帯電防止剤等(以下、総称して添加剤とする)を含有させることもできる。この場合、第2易接着層13に用いることができる各種添加剤の種類と量については、前述の第1易接着層と同様のものを使用することができる。なお、各種添加剤の詳細は、第1易接着層12と同様であるため、説明は省略する。
【0045】
第2易接着層13に添加剤としてすべり剤を用いる場合、このすべり剤の種類等も特に限定されるものではないが、好適に用いることができるすべり剤として、例えば、合成又は天然ワックス、シリコーン化合物、R−O−SO3 M(ただし、Rは置換又は無置換のアルキル基(Cn 2n+1 −;nは3〜20の整数)、Mは一価の金属原子を表す)で表される化合物等が挙げられる。
【0046】
その他にも、すべり剤の具体例としては、セロゾール524、428、428、732−B、920、B−495、ハイドリンP−7、D−757、Z−7−30、E−366、F−115、D−336、D−337、ポリロンA、393、H−481、ハイミクロンG−110F、930、G−270(商品名:中京油脂(株)製)や、ケミパールW100、W200、W300、W400、W500、W950(商品名:三井化学(株)製)等のワックス系や、KF−412、413、414、393、859、8002、6001、6002、857、410、910、851、X−22−162A、X−22−161A、X−22−162C、X−22−160AS、X−22−164B、X−22−164C、X−22−170B、X−22−800、X−22−819、X−22−820、X−22−821(商品名:信越化学工業(株)製)等のシリコーン系や、C1633−O−SO3 Na、C1837−O−SO3 Na等の一般式で表される化合物等を挙げることができる。なお、すべり剤の添加量は、0.1mg/m2 以上50mg/m2 以下とすることが好ましい。より好ましくは、その添加量を1mg/m2 以上20mg/m2 以下とすることである。滑り剤の添加量を0.1mg/m2 以上とすることにより、十分な滑り性を発現させることができる。また、添加量を50mg/m2 以下とすることにより、界面での接着強度の低下を抑えることができる。なお、本発明に用いることができる脂肪族ワックスに関しては、特開2004−054161号公報に詳細に記載されている。
【0047】
第2易接着層13の厚みは接着強度及び面状確保の観点から、50nm以上200nm以下とする。好ましくは70nm以上150nm以下である。第2易接着層13の厚みを50nm以上とすることにより50nm未満の場合に比べて、上層との接着性が向上する。また、厚みを200nm以下とすることにより、厚みが200nmを超える場合に比べて面状の悪化を抑えることができる。
【0048】
第1易接着層12、第2易接着層13の形成方法は、所望の厚みの層を形成することができれば特に限定されるものではない。したがって、塗布方法も限定されるものではなく、薄膜を形成させる際に使用される公知の方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、グラビア法、ワイヤーバー法、スロットエクストルージョンコーター法(単層及び重層)、スライドコーター法等が挙げられる。また、第1及び第2易接着層12,13の塗布はオンライン上での逐次塗布の他に、オフラインで個別に塗布してもよい。上記の方法は、本発明に係る層、すなわち第1易接着層12、第2易接着層13、上層の形成方法として使用することができる。
【0049】
第1易接着層12及び第2易接着層13ともに、塗布する際には溶媒(塗布溶媒)を用いることができる。塗布溶媒としては、水、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン等、及びこれらの混合系等の水系、有機溶剤系の塗布溶剤を用いることができる。これらのうちで水を塗布溶媒として用いる方法はコスト、製造の簡便さを考えると好ましい。なお、第1易接着層12及び第2易接着層13に使用する塗布溶媒は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0050】
また、第1易接着層12及び第2易接着層13を形成させる際に行う塗布は、一軸方向に延伸した後に行ってもよいし、2軸延伸した後に行ってもよい。しかし、横延伸後のベース耳部の回収・再利用を可能にするために、第1易接着層12及び第2易接着層13ともに、2軸延伸後に塗布して形成することが好ましい。なお、支持体11に対して各易接着層12,13は、一方の面のみならず、他方の面にも形成して良い。
【0051】
本発明の積層フィルム10は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTディスプレイに用いられる光学フィルムとして用いることができる。これらの表示装置については、例えば、「ディスプレイ先端技術」(谷 千束著 共立出版(株) 1998年出版)や、「EL、PDP、LCDディスプレイ」((株)東レリサーチセンター 2001年発行)や、「カラー液晶ディスプレイ」(小林 俊介著 産業図書出版(株) 平成2年出版)等に詳細に記載されている。また、上記の文献の他に、エレクトリックジャーナル誌2002年8月号の74ページに記載されているものにも本発明を適用することができる。
【0052】
以下、本発明に係る積層フィルム10及びその製造方法について、実施例等を挙げて説明する。なお、以下の実施例等に示す材料の種類、各材料の割合、処方等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更して良い。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例等に制限されるものではない。また、以下の実施例等において、積層フィルム10の製造方法等が同じ場合には、実施例1において詳細に説明するものとし、その他では説明を省略する。
【実施例】
【0053】
〔実施例1〕
以下の手順により、積層フィルム10の支持体11を形成した。先ず、Geを触媒として重縮合した固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載)樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させ、ヒーター温度が280〜300℃設定温度の押し出し機内で溶融させた。溶融させたPET樹脂をダイ部より静電印加されたチルロール上に吐出させ、非結晶ベースを得た。得られた非結晶ベースをベース進行方向に3.3倍に延伸した後、幅方向に対して3.8倍に延伸し、厚さ100μmの支持体を得た。
【0054】
上記により形成した厚さが100μmの支持体の両面を、搬送速度105m/分で搬送し、730J/m2 の条件でコロナ放電処理を行った後、この両面に塗布量を7.1cm3 /m2 として第1易接着層塗布液をバーコート法により塗布した。塗布後の支持体を180℃で1分乾燥して第1易接着層12を形成した後、続けて双方の第1易接着層12の両面に塗布量を7.1cm3 /m2 として第2易接着層塗布液をバーコート法により塗布した。塗布後の支持体を170℃で1分乾燥することにより、支持体11の両面に第1易接着層12と第2易接着層13とからなる塗布層14を設けた積層フィルム10を製造した。
【0055】
〔第1易接着層塗布液〕
第1易接着層塗布液としては、ポリエステル樹脂バインダ(互応化学工業(株)製Z−687 固形分25%)を154.6質量部と、架橋剤としてカルボジイミド化合物(日清紡(株)製、カルボジライトV‐02‐L2、固形分10%(カルボジイミド当量385)を75.9質量部と、界面活性剤A(日本油脂(株)、ラピゾールB−90、固形分1%水溶液、アニオン性)を12.5質量部と、界面活性剤B(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、固形分5%、ノニオン性)を15.5質量部とに対して、全体が1000質量部となるように蒸留水を添加して調製したものを用いた。
【0056】
〔第2易接着層塗布液A〕
第2易接着層塗布液Aとしては、ポリウレタン樹脂バインダ(三井化学(株)製、オレスターUD350、固形分38%)を22.2質量部と、架橋剤としてカルボジイミド化合物(日清紡(株)製、カルボジライトV‐02‐L2、固形分10%(カルボジイミド当量385)を16.9質量部と、界面活性剤A(日本油脂(株)、ラピゾールB−90、固形分1%水溶液、アニオン性)を11.3質量部と、界面活性剤B(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、固形分5%、ノニオン性)を14.1質量部と、マット剤Aとしてシリカ微粒子分散液(日本アエロジル(株)製、OX−50の水分散物、固形分10%)を1.4質量部と、マット剤Bとしてコロイダルシリカ分散液(日産化学(株)製、スノーテックス−XL、固形分10%)を14.1質量部と、滑り剤としてカルナバワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524、固形分3%水溶液)を14.1質量部とに対して、全体が1000質量部となるように蒸留水を添加して調製したものを用いた。
【0057】
〔上層A〕
上層A用塗布液としては、セイカビームEXF01(B)(大日精化(株)製)を225質量部と、メチルエチルケトンを75質量部と、2、4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐〔4‐(N、N−ジエトキシカルボニメチル)‐3‐ブロモフェニル〕‐s‐トリアジンを6.8質量部とを混合して調製した。次に、作製した積層フィルム10のどちらか一方の面(評価面)に、バーコーターを用いて乾燥後の膜厚が3μmとなるように上層A用塗布液を塗布した後、100℃で3分間乾燥した。次に、超高圧水銀灯を用いて2000mJ/cm2 の露光量で露光し、先ほどの塗布液を硬化させることにより上層Aを形成した。
【0058】
〔実施例2〜9、比較例1〜6〕
表1に示すような第1易接着層、第2易接着層A,第2易接着層B、及び上層A,上層Bとの塗布液及び厚みの組み合わせにより、実施例2〜9、比較例1〜6を構成し、実施例1と同様に実験を行った。実施例1と異なる第2易接着層及び上層用の塗布液は以下の通りである。なお、乾燥後の第1易接着層12、第2易接着層13の厚みを、透過型電子顕微鏡(JEM2010(日本電化(株)製)を用いて倍率20万倍で測定した。この測定は、各易接着層12,13を塗布したフィルムをエポキシ樹脂にて包埋し乾燥させ、その後ミクロトームにて厚み100nmになるように、断面を切削する。切削されたサンプル片を上記透過型電子顕微鏡を用いて倍率20万倍にて撮影する。そして、撮影された画像にて、20nm間隔で10点の膜厚測定を行い、最大値、最小値を除いた平均値を厚みとした。第1層と第2層との界面は透過型電子顕微鏡で撮影された画像により判断することができる。
【0059】
【表1】

【0060】
〔第2易接着層塗布液B〕
第2易接着層の別の塗布液Bとしては、アクリル樹脂バインダ(ダイセル化学工業(株)製、AS−563A 固形分27.5%)を34.1質量部と、架橋剤としてカルボジイミド化合物(日清紡(株)製、カルボジライトV‐02‐L2、固形分10%(カルボジイミド当量385)を18.9質量部と、界面活性剤A(日本油脂(株)、ラピゾールB−90、固形分1%水溶液、アニオン性)を12.7質量部と、界面活性剤B(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、固形分1%、ノニオン性)を15.5質量部と、マット剤Aとしてシリカ微粒子分散液(日本アエロジル(株)製、OX−50の水分散物、固形分10%)を1.6質量部と、マット剤Bとしてコロイダルシリカ分散液(日産化学(株)製、スノーテックス−XL、固形分10%)を2.5質量部と、滑り剤としてカルナバワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524、固形分3%水溶液)を15.5質量部とに対して、全体が1000質量部となるように蒸留水を添加して調製したものを用いた。塗布方法は第2易接着層Aと同じ方法とした。
【0061】
〔上層B〕
上層B形成用塗布液は、アクリルポリオール(大日本インキ化学工業(株)製、アクリディックA807、固形分50%)を19.2質量部と、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子(平均粒子径22μm)を26.1質量部と、イソシアネート(武田薬品工業(株)製 タケネートD110N、固形分75%)を3.0質量部と、酢酸ブチルを25.9質量部とを混合して調製した。次に、作製した積層フィルム10のどちらか一方の面(評価面)に、バーコーターを用いて乾燥後の膜厚が20μmとなるように上層B形成用塗布液を塗布した後、100℃で3分間乾燥した。
【0062】
作製した積層フィルムに関して、上層と第2易接着層との間での接着性を、吸湿前(評価1)、吸湿後(評価2)との2条件で下記方法により評価した。また、塗布面状の評価(評価3)を行った。なお、以下に示す評価は、実施例1だけでなく、その他の実施例及び比較例についても同様に行なった。
【0063】
〔評価1.上層と第2易接着層との間での接着性(吸湿前)〕
上記方法にて第1易接着層、第2易接着層、及び上層を形成した積層フィルムを用いてサンプルを作製した。このサンプルの表面に片刃カミソリを用いて縦、横それぞれ6本のキズをつけて25個の桝目を形成した。次に、この上にセロハンテープ(ニチバン(株)製 405番、24mm幅)を貼り付け、上からケシゴムでこすって完全に付着させた後、先ほど形成した塗布層を90度方向に剥離させて、剥離した桝目の数を求めることにより、下記のランク付けで上層と第2易接着層との間での接着性を評価した。なお、上記のキズの幅は、縦、横とも3mmとした。
Aランク: 剥れなしの場合
Bランク: 剥離した桝目数が1未満の場合
Cランク: 剥離した桝目数が1以上3未満の場合
Dランク: 剥離した桝目数が3以上20未満の場合
Eランク: 剥離した桝目数が20以上の場合
【0064】
〔評価2.上層と第2易接着層との間での接着性(吸湿後)〕
先ず、評価1と同様にしてサンプルを作製した。次に、サンプルを80℃/90%RHの雰囲気下に静置して16時間保持した後、23℃/60%RHの雰囲気下に静置して3時間調湿させて吸湿後のサンプルとした。この吸湿後のサンプルの上層と第2易接着層との間での接着性を評価1と同様の方法により評価した。
【0065】
〔評価3.易接着フィルムの塗布面状〕
支持体11の表面に第1易接着層12、第2易接着層13を形成してサンプルを作製した。次に、サンプルを、黒色ドスキン布を張り合わせた机上に置いてから、乳白色のアクリル板を通した蛍光灯の拡散光を塗布層に照射した。そして、ここで発生する反射光を目視により観察して、塗布ムラを下記基準により判断することにより、塗布面状として3段階で評価した。なお、下記の評価においてBランク以上は製品上問題ないレベルである。
Aランク:黒化処理後のサンプル及び未処理のサンプルの双方において、塗布ムラが目視で確認されない。
Bランク:黒化処理後のサンプルでは塗布ムラが目視で確認されるが、未処理のサンプルでは確認されない。
Cランク:黒化処理後のサンプル及び未処理のサンプルの双方において、塗布ムラが目視で確認される。
【0066】
上記の評価3では、目視判断にあたり、裏面からの反射を防止する意味でサンプルの所定の面に黒化処理を行い、550nm光の透過率を1%以下となるように調整した。上記の黒化処理は、サンプルのうち観察する面とは反対面に、マジックインキ(artline 油性マーカー補充インキ KR‐20クロ、shachihata(株)製)を塗工した後、これを乾燥させた。
【0067】
表1に示すように、実施例1〜9では、第2易接着層に含まれる第2バインダ及び架橋剤の添加量や種類等により、各評価結果に若干の差異はあるが、いずれも製品として使用する上では問題ない良好な評価結果を示した。一方で、比較例1〜6では、各評価結果において、優れたものもあったが、製品として使用する上で問題となる項目もあった。
【0068】
次に、各実施例1〜9で作製した積層フィルムの上に、特開2001−324609号公報に記載されている実施例1に従い、光拡散層を形成して光拡散シートを作製したところ、積層フィルムと光拡散層との間での接着性は実用上問題なく、光学特性に優れた光拡散シートを得ることができた。
【0069】
各実施例1〜9で作製した積層フィルムの上に、特開2001−114831号公報に記載されている実施例1に従い、厚さ25μmの光硬化性樹脂組成物をバーコート法により塗布した後、極微小プリズム状パターン付き原型(プリズム角度90度、プリズムピッチ50μm、冨士フイルム(株)製)を設置して、80℃のオーブン中に3分間放置した。この後、塗布層側からメタルハライドランプを光源として、照射強度250mW/cm2 のUV照射装置により1.0J/cm2 の紫外線を照射し、さらに、極微小プリズム状パターン付き原型を分離して、プリズムシートを作製したところ、積層フィルムとプリズム層との間での接着性は実用上問題なく、光学特性に優れたプリズムシートを得ることができた。
【0070】
各実施例1〜9で作製した積層フィルムの上に、特開2001‐323087号公報に記載されている実施例に従い、活性エネルギー線硬化層(ハードコート層)塗布液をバーコート法により乾燥膜厚が8μmとなるように塗布した後、これを紫外線照射により硬化せしめてハードコート層を形成してハードコートシートを作製したところ、積層フィルムとハードコート層との間での接着性は良好であり、光学特性に優れたハードコートシートを得ることができた。
【0071】
各実施例1〜9で作製した積層フィルムの上に、特開2002‐098803号公報に記載されている実施例1に従い、ハードコート層、銀コロイド層、反射防止層をこの順に積層して反射防止シートを作製したところ、積層フィルムとハードコート層との間での接着性は良好であり、光学特性に優れた反射防止シートを得ることができた。なお、ハードコート層の塗布厚みは12μmとし、銀コロイド層の塗布量は70mg/m2 とし、反射防止層の塗布厚みは85nmとなるようにそれぞれ塗布した。
【0072】
市販の液晶テレビのバックライトユニット部から拡散フィルムを取り除き、実施例2で作製した拡散フィルムと交換し、60℃90%RHの高温高湿化の環境条件化で使用したところ、接着性などで実用上問題の無いことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る積層フィルムを示す要部の断面図である。
【図2】本発明に係る光学シートを示す要部の断面図である。
【符号の説明】
【0074】
10 積層フィルム
11 支持体
12 第1易接着層
13 第2易接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルからなる支持体と、
前記支持体の少なくとも一方の面に形成され、厚みが200nm以上500nmの第1易接着層と、
前記第1易接着層の面に形成され、厚みが50nm以上200nmの第2易接着層とを備えることを特徴とする光学用易接着フィルム。
【請求項2】
前記第1易接着層は、ポリエステル樹脂を含有するバインダを有し、
前記第2易接着層は、アクリル樹脂またはポリウレタン樹脂を含有するバインダを有することを特徴とする請求項1記載の光学用易接着フィルム。
【請求項3】
前記第1易接着層及び第2易接着層は、カルボジイミド系架橋剤を含有することを特徴とする請求項1または2記載の光学用易接着フィルム。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項記載の光学用易接着フィルムと、前記光学用易接着フィルムの前記第2易接着層に形成されるプリズム層、反射防止層、光拡散層、防眩層、ハードコート層のうちの少なくともひとつからなる上層とを有することを特徴とする光学シート。
【請求項5】
請求項1ないし3いずれか1項記載の光学用易接着フィルムまたは請求項4記載の光学フィルムを有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−208310(P2008−208310A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49061(P2007−49061)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】