説明

光学用樹脂材料の製造方法、光学用樹脂材料、及び光学素子

【課題】本発明の目的は、光学素子として好適な屈折率、透明性を有し、且つ温度に対する屈折率変化が極めて小さく、しかも成型性と耐熱性に優れた光学用樹脂材料の製造方法、光学用樹脂材料、及びそれを用いた光学素子を提供することである。
【解決手段】ホスト樹脂材料中に、平均粒子径が1nm以上、50nm以下の無機酸化物微粒子を含有する光学用樹脂材料の製造方法であって、該無機酸化物微粒子の分散液を限外濾過により溶媒置換する工程、及び該無機酸化物微粒子が溶媒中で表面疎水化処理される工程を含むことを特徴とする光学用樹脂材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学用樹脂材料及び光学素子に関し、特にレンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路などとして好適に用いられる光学用樹脂材料の製造方法、光学用樹脂材料、及びそれを用いた光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光を透過させて所望の光学的機能を達成する光学素子としては、様々な光学機器に用いられる光学レンズや補正素子等が挙げられる。例えば、銀塩カメラやデジタルカメラ、医療用撮影装置等の撮像装置に用いられる撮像光学系や、光ピックアップ装置の光学系、光通信モジュール等に用いられる光学素子などが挙げられる。これらは、一般的にガラス製やプラスチック製の光学素子が用いられている。
【0003】
特に、プラスチック製の光学素子は射出成型や押し出し成型等により成型可能であり、また比較的低温度で成型可能である為、ガラス製の光学素子よりも低コストで製造可能であるため、ガラス製の光学素子と置き換えることが可能なプラスチック製の光学素子が強く望まれている。
【0004】
従来、撮像光学系や光ピックアップ装置の光学系に用いられる光学素子としては、熱可塑性樹脂を用いた光学素子が広く知られている。例えば、光ピックアップ装置の光学素子に適用可能な熱可塑性樹脂として、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、熱可塑性樹脂を用いた光学素子はガラス製の光学素子と比較して耐熱性が低く、高温下に曝されたときに光学性能に変動が発生する場合があるため、高い光学精度が求められる撮像光学系用の光学素子や光ピックアップ装置の光学系用光学素子として用いられる場合には問題となる場合があった。更に撮像光学系は撮影環境によって様々な環境に曝される可能性があり、光ピックアップ装置はトラッキングやフォーカシングのための装置の駆動により熱が発生し、光学素子が高温に曝されることとなる場合がある。
【0006】
それに対し、剛性と寸法安定性の向上を目的として、熱可塑性樹脂と疎水性基及び極性基を表面に有する酸化化合物を含有した樹脂組成物(例えば、特許文献2参照。)が開示されているが、これらの樹脂組成物は、その製造時に結晶性微粒子またはコロイダルシリカの様な非晶質シリカ粒子を用い、粒子とホスト樹脂材料の架橋反応により生じる立体構造により、樹脂組成物の強度及び剛性を上げているため流動性が低く、成形性に問題がある。特に、微粒子の体積分率を上げると流動性が大幅に低下するとともに透明性の低下を生じやすいために、これらの方法で得られた樹脂組成物では光学素子として使用するための十分な光線透過率を得ることができない。
【0007】
また、撮像装置等の製造工程においても、レンズを組み込んだ部品が半田リフロー工程を通るような場合には、レンズ自体も260℃程度の高温に曝されることになることから、更に高い耐熱性が求められてきた。
【0008】
熱可塑性樹脂については、比較的低い温度で軟化、溶融するため加工性は良好であるが、成型されたレンズは熱により変形しやすいという欠点をもつ。そのため、光学レンズとして使用される他のプラスチック材料として、シリコーン樹脂のような熱硬化性樹脂も検討されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、成型性と耐熱性を満足し、光学レンズとして使用可能な熱硬化性樹脂は今までに得られていない。
【0009】
更にゾルゲル法により作製した複合金属酸化物ナノ粒子を樹脂中に分散させて、剛性と透明性を両立させる方法についても開示されている(例えば、特許文献4、5参照。)。
【0010】
しかしながら、特許文献4、5の方法では成型性や耐熱性といった特性については考慮されていない。また、これら文献に記載の方法で作製された樹脂材料は、半田リフロー工程の様な高温下では変形、着色や粒子凝集による透明性の低下を生じてしまい、十分な性能が得られていない。
【特許文献1】特開2002−105131号公報
【特許文献2】特開2004−269773号公報
【特許文献3】特開2004−146554号公報
【特許文献4】特開2004−292698号公報
【特許文献5】特開2005−146042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、光学素子として好適な屈折率、透明性を有し、且つ温度に対する屈折率変化が極めて小さく、しかも成型性と耐熱性に優れた光学用樹脂材料の製造方法、光学用樹脂材料、及びそれを用いた光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0013】
1.ホスト樹脂材料中に、平均粒子径が1nm以上、50nm以下の無機酸化物微粒子を含有する光学用樹脂材料の製造方法であって、該無機酸化物微粒子の分散液を限外濾過により溶媒置換する工程、及び該無機酸化物微粒子が溶媒中で表面疎水化処理される工程を含むことを特徴とする光学用樹脂材料の製造方法。
【0014】
2.前記無機酸化物微粒子の分散液を限外濾過により溶媒置換する工程を、該無機酸化物微粒子の表面疎水化処理工程の後に行うことを特徴とする前記1に記載の光学用樹脂材料の製造方法。
【0015】
3.前記無機酸化物微粒子の分散液を限外濾過により溶媒置換する工程の後に、該無機酸化物微粒子の乾燥粉体を得る工程を含むことを特徴とする前記1または2に記載の光学用樹脂材料の製造方法。
【0016】
4.前記無機酸化物微粒子が、ケイ素と他の金属元素からなる複合酸化物微粒子であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の光学用樹脂材料の製造方法。
【0017】
5.前記無機酸化物微粒子の表面疎水化処理が、ケイ素化合物を用いて行われることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の光学用樹脂材料の製造方法。
【0018】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする光学用樹脂材料。
【0019】
7.前記6に記載の光学用樹脂材料を用いて成型されたことを特徴とする光学素子。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学素子として好適な屈折率、透明性を有し、且つ温度に対する屈折率変化が極めて小さく、しかも成型性と耐熱性に優れた光学用樹脂材料の製造方法、光学用樹脂材料、及びそれを用いた光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
本発明を更に詳しく説明する。
【0023】
《無機酸化物微粒子》
本発明に係る無機酸化物微粒子は、光学素子として使用する波長領域において吸収、発光、蛍光等が生じないものであれば組成は特に限定されず、例えば、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属等の1種または2種以上の元素の酸化物を用いることができる。
【0024】
本発明の如く樹脂と混合した際に高い透明性を示すためには、ホスト樹脂によって微粒子の屈折率を変化させることが好ましいため、2種以上の元素からなる複合酸化物微粒子が好ましく、特にケイ素酸化物(以下「シリカ」という。)とケイ素以外の1種類以上の金属酸化物とが複合化した複合酸化物微粒子であることが好ましく、シリカとAl、Ti、Nb、Zr、Y、W、La、Gd、Taなどの金属酸化物が複合された複合酸化物微粒子がより好ましい。
【0025】
当該複合酸化物粒子の組成分布は特に限定されず、シリカと他の金属酸化物が、略均一に分散していても良いし、コアシェルを形成していても良い。複合酸化物粒子中で、シリカと他の金属酸化物とが、局在することなく平均的に分布している状態では無機微粒子内の屈折率分布が存在せず、無機微粒子内での光散乱が抑えられることから、当該複合酸化物粒子はシリカと他の金属酸化物とが平均的に分布しているのがより好ましい。また、複合酸化物粒子を構成する、シリカと他の金属酸化物はそれぞれ結晶として存在していても良いし、非晶質であっても良い。
【0026】
複合酸化物粒子において、シリカとシリカ以外の金属酸化物の含有比は、金属酸化物の種類や作製する無機微粒子の屈折率値により任意に決めることができる。
【0027】
光学用樹脂材料において樹脂中に分散される無機微粒子は、光線透過率を低下させない範囲であれば、1種類の無機微粒子を用いても良く、複数種類の無機微粒子を併用してもよい。異なる性質を有する複数種類の無機微粒子を用いることで、光学素子に必要とされる光学特性を更に効率よく向上させることもできる。
【0028】
また、本発明の無機酸化物微粒子は平均粒子径が1nm以上、50nm以下であり、1nm以上、20nm以下がより好ましく、更に好ましくは1nm以上、15nm以下である。微粒子の平均粒子径とは、微粒子の単体(凝集体を構成する単体を含む)を同体積の球に換算したときの直径の平均値を示し、この値は、微粒子が樹脂中に分散された樹脂材料の切片の透過型電子顕微鏡写真から評価することができる。平均粒子径が1nm未満の場合、微粒子の分散が困難になり所望の性能が得られない恐れがあることから、平均粒子径は1nm以上であることが好ましく、また平均粒子径が50nmを超えると得られる樹脂材料組成物が濁るなどして透明性が低下し、光線透過率が80%未満となる恐れがあることから、平均粒子径は50nm以下であることが必要である。
【0029】
更に該微粒子の形状は特に限定されるものではないが、球状の微粒子が好適に用いられる。具体的には、微粒子の最小径(微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最小値)/最大径(微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最大値)が0.5〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることが更に好ましい。
【0030】
また、粒子径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。特に粒子径100nm以上の粒子が少数でも存在すると著しく光線透過率を劣化させることから、変動係数(測定値のばらつきの指標として標準偏差を平均で割った値、無次元数)は30以下となることが好ましく、特に10以下となることが好ましい。
【0031】
また、無機酸化物微粒子は後述するホスト樹脂材料との屈折率の差が小さいことが望ましい。本発明者らの検討によると、ホスト樹脂材料と当該樹脂に分散される無機酸化物微粒子との屈折率の差が小さいと、光を透過させた際に散乱が起こりにくく、透明性が高い光学用樹脂材料が得られることが分かった。また、当該樹脂へ分散する無機酸化物微粒子が大きい程、光を透過させた際に光が散乱しやすくなるが、当該樹脂と分散される無機酸化物微粒子との屈折率の差が小さいと、比較的大きな無機微粒子を用いても光の散乱を発生する頻度が少なくなり、また無機微粒子の含有量を増加しても透明性を維持することができるという知見が得られた。
【0032】
以上により、無機酸化物微粒子とホスト樹脂材料との屈折率差が0.15以下であることが好ましく、更に好ましくは屈折率差が0.1以下、より好ましくは屈折率差が0.05以下である。
【0033】
そして、このような屈折率差を満たす無機酸化物微粒子の屈折率は樹脂組成により異なるものの、樹脂の屈折率が通常1.5〜1.6の範囲にあるため、1.5〜1.75であることが好ましく、1.5〜1.65であることが更に好ましい。
【0034】
特に本発明においては、この無機酸化物微粒子が分散された光学用樹脂材料が光学素子として使用可能な光線透過率を有し、且つ25℃でナトリウムD線を光源として測定した屈折率nd25が1.5以上1.7以下となるように、無機酸化物微粒子の屈折率を調整することが好ましい。
【0035】
なお、上記屈折率は、例えば、ASTMD542規格に則りアッベ式屈折計等により測定されるものが該当し、種々の文献に記載されている値を用いることができる。また、無機酸化物微粒子を、屈折率を調整した種々の溶媒に分散させて分散液の吸光度を測定し、その値が最小になる溶媒の屈折率を測定することにより、該無機酸化物微粒子の屈折率を確認できる。
【0036】
《無機酸化物微粒子の形成方法》
本発明に係る無機酸化物微粒子の形成方法は、小粒径な酸化物微粒子を形成できれば、公知のいずれの方法も用いることができる。一般的に無機酸化物粒子を作製する方法としては、熱分解法(原料を加熱分解して微粒子を得る方法。)、噴霧乾燥法、火炎噴霧法、プラズマ法、気相反応法、凍結乾燥法、加熱ケロシン法、加熱石油法、沈殿法(共沈法)、加水分解法(塩水溶液法、アルコキシド法、ゾルゲル法)、水熱法(沈殿法、結晶化法、水熱分解法、水熱酸化法)などが挙げられる。本発明においては、これらの方法により作製した無機酸化物微粒子が溶媒中に分散した状態のものを用い、その後の溶媒置換工程や限外濾過工程を行うことを特徴とする。
【0037】
溶媒中に分散した無機酸化物微粒子の製造方法としては、特に限定はなく、溶液中で粒子分散液を作製する方法でも、無機酸化物微粒子粉体を分散装置を用いて溶媒中に分散する方法でも良い。分散装置としては、超音波分散機、ビーズミルなどの媒体攪拌ミル等が使用可能である。
【0038】
また、本発明の無機酸化物微粒子としてコアシェル構造の複合酸化物微粒子を用いる場合には、コア粒子を溶媒中に分散した後に、該溶媒中でシェル層を形成することも好ましい。
【0039】
《無機酸化物微粒子の表面疎水化処理》
本発明の製造方法においては、無機酸化物微粒子が溶媒中で表面疎水化処理される工程を含むことを特徴とする。疎水化処理の方法としては、湿式加熱法、湿式濾過法、乾式攪拌法、インテグルブレンド法、造粒法等が挙げられる。体積平均粒径が100nm以下の均一酸化物粒子の表面に対し疎水化処理を施す場合、粒子が凝集するのを抑制の観点と粒子への表面吸着剤が均一に吸着するという観点から乾式攪拌方法より湿式攪拌方法が好ましい。
【0040】
湿式攪拌方法の溶媒としては、非極性溶媒はヘキサン、ヘプタン、極性溶媒が好ましくトルエン、メタノール、エタノール、アセトン、水、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、メチル−i−ブチルケトン(MIBK)、1,4ジオキサン、このほかにはエーテルかケトン系が好ましいがケトン系は濃縮時爆発危険もなく好ましい。
【0041】
無機酸化物微粒子の表面に対する疎水化処理の方法としては、カップリング剤等による表面処理、ポリマーグラフト、メカノケミカルによる疎水化処理などが挙げられる。
【0042】
無機酸化物微粒子の表面に対する疎水化処理に用いられる試薬としては、シラン系カップリング剤を始め、シリコーンオイル系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。これらは特に限定されず、無機酸化物微粒子及び熱硬化性樹脂の種類により適宜選択することが可能である。また、各種疎水化処理を二つ以上同時又は異なる時に行ってもよい。
【0043】
本発明で好ましく用いられるケイ素化合物の疎水化処理剤としては、
シラザン類:ビニルシラザン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、
クロロシラン類:トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、
アルコキシシラン類:トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、
シランカップリング剤類:ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、
等が適用可能であり、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン等が好適である。
【0044】
シリコーンオイル系の疎水化処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルを用いることができる。
【0045】
疎水化処理剤としては、シラン系の疎水化処理剤が好ましく、特にシラザン類、クロロシラン類、シランカップリング剤が好ましい。
【0046】
またこれらの疎水化処理剤はヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン等で適宜希釈して用いてもよい。
【0047】
これらの疎水化処理剤は1種類のみを用いても、複数種類を併用してもよく、更に、用いる疎水化処理剤によって得られる疎水化処理後の無機酸化物微粒子(疎水性酸化物粒子)の性状が異なることがあり、疎水化処理剤の選択によって、光学用樹脂材料を得るにあたって用いる熱硬化性樹脂との親和性を高めることも可能である。疎水化処理剤の割合は特に限定されるものではないが、疎水化処理後の無機酸化物微粒子(疎水性酸化物粒子)に対して、疎水化処理剤の割合が10〜99質量%であることが好ましく、30〜98質量%であることがより好ましい。
【0048】
なお、上記粒子形成工程と上記疎水化処理工程との間で、粒子形成工程後に得られた無機酸化物微粒子の表面に対しテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランの処理を施して、当該無機酸化物微粒子の表面にテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランによるシリカ層を形成し(シリカ層形成工程)、その後に当該シリカ層の表面に対し上記疎水化処理を行ってもよい。
【0049】
《限外濾過による溶媒置換》
次に、限外濾過による溶媒置換について説明する。
【0050】
本発明においては、前述の表面処理工程とともに、粒子分散液の限外濾過による溶媒置換工程を含むことを特徴とする。該溶媒置換工程は、表面処理工程の前工程として粒子分散液の溶媒を表面処理工程に適した溶媒に置換する工程、あるいは表面処理工程の後工程として、表面処理時の副生成物の除去、表面処理後の無機酸化物微粒子の乾燥、及び樹脂との混合に適した溶媒へ置換する工程として行われることが好ましい。従って、本発明における限外濾過による溶媒置換工程は、表面処理前、表面処理後のいずれか一方でも良いが、両方実施することが好ましい。特に、表面処理後の溶媒置換工程は、副生成物除去や乾燥時の凝集防止に大きな効果を示すことから好ましい。
【0051】
限外濾過法は、例えばリサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)No.10208(1972)、No.13122(1975)及びNo.16351(1977)などを参照することができる。操作条件として重要な圧力差や流量は、大矢春彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房出版(1978)、p275に記載の特性曲線を参考に選定することができるが、目的の溶媒置換に対しては、その最適条件を見いだす必要がある。また、膜透過より損失する溶媒を補充する方法においては、連続して溶媒を添加する定容式と断続的に分けて添加する回分式とがあるが、脱塩処理時間が相対的に短い定容式が好ましい。
【0052】
限外濾過部ユニットは、市販の物を使用できるが、洗浄性や使用溶媒を考慮するとセラミック膜、ポリスルフォン膜等の耐薬品性に優れるものが好ましく、特にセラミック膜を用いることが好ましい。また、膜を透過することができる成分の閾値の指標となる分画分子量は、使用する溶媒等により異なるが、分画分子量5000から5万の範囲が好ましく利用できる。
【0053】
《無機酸化物微粒子の乾燥》
本発明においては、前記無機酸化物微粒子の分散液を限外濾過により溶媒置換する工程の後に、該無機酸化物微粒子の乾燥粉体を得る工程を含むことが好ましい。本発明に係る無機酸化物微粒子の乾燥方法は特に限定されないが、凍結乾燥や噴霧乾燥(スプレードライ)が好ましく利用できる。
【0054】
凍結乾燥においては、水、シクロヘキサン、t−ブチルアルコールのうち少なくとも1種を含む溶媒を用いることが好ましい。これらの物質は融点が0℃からそれより若干高く、昇華時の蒸気圧が高いことから凍結乾燥が容易である。本発明においては、特にt−ブチルアルコールを用いることが好ましい。
【0055】
噴霧乾燥においては、水を含んだまま直接加熱乾燥することは粒子の強い凝集を招くため好ましくないため、上述の通り溶媒置換する工程の後に乾燥することが好ましい。例えば、アルコールやケトン系の溶媒に置換した後に乾燥することが好ましい。
【0056】
乾燥で得られた粒子粉体には若干の凝集が残ることがあり、それは各種手法で解砕することができる。例えば、ジェットミルのように気相中でシェア、衝撃を与える手法や、高速で回転する翼で凝集を解砕する方法などがある。乾燥時の凝集を抑制しやすい非極性の分散媒中で、シェアや衝撃といったエネルギーを与えて分散させた後、乾燥することも可能である。
【0057】
上述のように、本発明においては、無機粒子の粉体を凍結乾燥工程ないし噴霧乾燥工程の両方又は一方の工程を経て得ることが好ましい。
【0058】
《ホスト樹脂材料》
次いで、本発明のホスト樹脂材料について説明する。
【0059】
本発明では、無機酸化物微粒子を含有するホスト樹脂材料としては、熱可塑性樹脂または硬化性樹脂が用いられる。
【0060】
(1)熱可塑性樹脂
まず、熱可塑性樹脂について説明する。
【0061】
本発明に用いることのできる無機酸化物微粒子が分散される熱可塑性樹脂としては、光学材料として一般的に用いられる透明の熱可塑性樹脂材料であれば特に制限はないが、光学素子としての加工性を考慮すると、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリイミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくは環状オレフィン樹脂であり、例えば、特開2003−73559号公報等に記載の化合物を挙げることができ、その好ましい化合物を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂材料においては、吸水率が0.2質量%以下であることが好ましい。吸水率が0.2質量%以下の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)AF(デュポン社製)、サイトップ(旭硝子社製)等)、環状オレフィン樹脂(例えば、ZEONEX(日本ゼオン社製)、アートン(JSR社製)、アペル(三井化学社製)、TOPAS(ポリプラスチック社製)等)、インデン/スチレン系樹脂、ポリカーボネートなどが好適であるが、これらに限るものではない。また、これらの樹脂と相溶性のある他の樹脂を併用することも好ましい。2種以上の樹脂を用いる場合、その吸水率は、個々の樹脂の吸水率の平均値にほぼ等しいと考えられ、その平均の吸水率が0.2%以下になるようにすればよい。
【0064】
本発明に係る無機酸化物微粒子の含有量は、本発明の効果を発揮できる範囲であれば特に限定されず、ホスト樹脂材料と無機酸化物微粒子の種類により任意に決めることができる。本発明に係る無機酸化物微粒子の含有量は、作製される複合材料の全体積に対する無機酸化物微粒子の体積分率が5%以上80%以下であることが好ましく、20%以上、60%以下であることがより好ましく、20%以上、40%以下であることが更に好ましい。ここでいう無機微粒子の体積分率は、無機酸化物微粒子の比重をa、含有量をxグラム、作製された複合材料の全体積樹脂をYミリリットルとした時に式(x/a)/Y×100で求められる。
【0065】
無機酸化物微粒子の含有量の定量は、透過型電子顕微鏡(TEM)による無機酸化物微粒子像の観察(EDX等の局所元素分析により複合無機酸化物微粒子組成に関する情報も得ることが可能)、あるいは与えられた樹脂組成物が含有する灰分の元素分析により求まる所定組成の含有質量と該組成の結晶の比重とから算出可能である。
【0066】
本発明の樹脂材料においては、有機重合体からなるホスト樹脂材料が、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状構造を有するオレフィン系重合体である、特開平7−145213号公報の段落番号〔0032〕〜同〔0054〕に示されて居る化合物や、脂環式構造を有する繰り返し単位からなる脂環式炭化水素系共重合体であることが好ましい。本発明に好ましく用いられる環状オレフィン樹脂としては、ZEONEX(日本ゼオン)、APEL(三井化学)、アートン(JSR)、TOPAS(チコナ)などが挙げられるが、これらに限るものではない。
【0067】
(2)硬化性樹脂
次いで、本発明に係る硬化性樹脂について説明する。
【0068】
本発明で用いられる硬化性樹脂としては、紫外線及び電子線照射、あるいは加熱処理のいずれかの操作によって硬化し得るもので、無機微粒子と未硬化の状態で混合させた後、硬化させることによって透明な樹脂組成物を形成する物であれば特に制限なく使用でき、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、アリルエステル系樹脂等が挙げられる。該硬化性樹脂は紫外線や電子線等の照射を受けて硬化する活性光線硬化性樹脂であってもよいし、加熱処理によって硬化する熱硬化性樹脂であってもよく、例えば、下記に列記したような種類の樹脂を好ましく使用することができる。
【0069】
(2.1)シリコーン樹脂
シリコーン系樹脂は、珪素(Si)と酸素(O)とが交互に結合したシロキサン結合−Si−O−を主鎖としているポリマーである。
【0070】
当該シリコーン樹脂として、所定量のポリオルガノシロキサン樹脂よりなるシリコーン系樹脂が使用可能である(例えば、特開平6−9937号公報参照)。
【0071】
熱硬化性のポリオルガノシロキサン樹脂は、加熱による連続的加水分解−脱水縮合反応によって、シロキサン結合骨格による三次元網状構造となるものであれば特に制限はなく、一般に高温、長時間の加熱で硬化性を示し、一度硬化すると加熱により再軟化し難い性質を有する。
【0072】
このようなポリオルガノシロキサン樹脂は、下記一般式(A)が構成単位として含まれ、その形状は鎖状、環状、網状形状のいずれであってもよい。
【0073】
一般式(A) ((R1)(R2)SiO)n
上記一般式(A)中、R1及びR2は同種または異種の置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示す。具体的には、R1及びR2として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換した基、例えば、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基、γ−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが例示される。R1及びR2は水酸基及びアルコキシ基から選択される基であってもよい。また、上記一般式(A)中、nは50以上の整数を示す。
【0074】
ポリオルガノシロキサン樹脂は、通常、トルエン、キシレン、石油系溶剤のような炭化水素系溶剤、またはこれらと極性溶剤との混合物に溶解して用いられる。また、相互に溶解しあう範囲で組成の異なるものを配合して用いてもよい。
【0075】
ポリオルガノシロキサン樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、オルガノハロゲノシランの1種または二種以上の混合物を加水分解、乃至アルコリシスすることによって得ることができ、ポリオルガノシロキサン樹脂は一般にシラノール基またはアルコキシ基等の加水分解性基を含有し、これらの基をシラノール基に換算して1〜10質量%含有する。
【0076】
これらの反応は、オルガノハロゲノシランを溶融し得る溶媒の存在下に行うのが一般的である。また、分子鎖末端に水酸基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンをオルガノトリクロロシランと共加水分解して、ブロック共重合体を合成する方法によっても得ることができる。このようにして得られるポリオルガノシロキサン樹脂は一般に残存するHClを含むが、本実施形態の組成物においては、保存安定性が良好なことから、10ppm以下、好ましくは1ppm以下のものを使用するのが良い。
【0077】
(2.2)エポキシ樹脂
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−シクロヘキシルカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂(国際公開第2004/031257号パンフレット参照)を使用することができ、その他、スピロ環を含有したエポキシ樹脂や鎖状脂肪族エポキシ樹脂等も使用することができる。
【0078】
(2.3)アダマンタン骨格を有する硬化性樹脂
2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート(特開2002−193883号公報参照)、3,3′−ジアルコキシカルボニル−1,1′−ビアダマンタン(特開2001−253835号公報参照)、1,1′−ビアダマンタン化合物(米国特許第3,342,880号明細書参照)、テトラアダマンタン(特開2006−169177号公報参照)、2−アルキル−2−ヒドロキシアダマンタン、2−アルキレンアダマンタン、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−t−ブチル等の芳香環を有しないアダマンタン骨格を有する硬化性樹脂(特開2001−322950号公報参照)、ビス(ヒドロキシフェニル)アダマンタン類やビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン(特開平11−35522号公報、特開平10−130371号公報参照)等を使用することができる。
【0079】
(2.4)アリルエステル化合物を含有する樹脂
芳香環を含まない臭素含有(メタ)アリルエステル(特開2003−66201号公報参照)、アリル(メタ)アクリレート(特開平5−286896号公報参照)、アリルエステル樹脂(特開平5−286896号公報、特開2003−66201号公報参照)、アクリル酸エステルとエポキシ基含有不飽和化合物の共重合化合物(特開2003−128725号公報参照)、アクリレート化合物(特開2003−147072号公報参照)、アクリルエステル化合物(特開2005−2064号公報参照)等を好ましく用いることができる。
【0080】
《添加剤》
本発明の樹脂材料の調製時や樹脂組成物の成型工程においては、必要に応じて各種添加剤(配合剤ともいう)を添加することができる。添加剤については、格別限定はないが、酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;軟質重合体、アルコール性化合物等の白濁防止剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤、難燃剤、フィラーなどが挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。本発明においては、特に、樹脂材料が少なくとも可塑剤または酸化防止剤を含有することが好ましい。
【0081】
〔可塑剤〕
可塑剤としては、特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を挙げることができる。
【0082】
リン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、例えば、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、例えば、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、例えば、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を挙げることができる。
【0083】
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係るホスト樹脂材料100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0084】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0085】
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0086】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0087】
〔耐光安定剤〕
耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤などが挙げられるが、本発明においては、レンズの透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALSともいう)の中でも、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いたGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフ)により測定したポリスチレン換算のMnが1,000〜10,000であるものが好ましく、2,000〜5,000であるものがより好ましく、2,800〜3,800であるものが特に好ましい。Mnが小さ過ぎると、該HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に、揮発のため所定量を配合できなかったり、射出成型等の加熱溶融成型時に発泡やシルバーストリークが生じるなど加工安定性が低下する。また、ランプを点灯させた状態でレンズを長時間使用する場合に、レンズから揮発性成分がガスとなって発生する。逆にMnが大き過ぎると、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下し、耐光性改良の効果が低減する。したがって、本発明においては、HALSのMnを上記範囲とすることにより加工安定性、低ガス発生性、透明性に優れたレンズが得られる。
【0088】
このようなHALSの具体例としては、N,N′,N″,N′″−テトラキス−〔4,6−ビス−{ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALS等が挙げられる。
【0089】
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物などのMnが2,000〜5,000のものが好ましい。
【0090】
本発明の樹脂材料に対する上記配合量は、ホスト樹脂材料100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。添加量が少な過ぎると耐光性の改良効果が十分に得られず、屋外で長時間使用する場合等に着色が生じる。一方、HALSの配合量が多過ぎると、その一部がガスとなって発生したり、樹脂への分散性が低下して、レンズの透明性が低下する。
【0091】
また、本発明のホスト樹脂材料に、更に最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を配合することにより、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
【0092】
《ホスト樹脂材料と無機酸化物微粒子の混合方法》
本発明の光学用樹脂材料は、上述したようにホスト樹脂材料及び無機酸化物微粒子からなるが、その混合方法は、特に限定されるものではない。
【0093】
ホスト樹脂材料として熱可塑性樹脂を用いる場合には、無機微粒子存在下で熱可塑性樹脂を重合させることで複合化する方法、熱可塑性樹脂の存在下で無機微粒子を形成し複合化する方法、無機微粒子を熱可塑性樹脂の溶媒になる液中に分散液とし、その後溶媒を除去することで複合化する方法、無機微粒子と熱可塑性樹脂を別々に用意し、溶融混練、溶媒を含んだ状態での溶融混練などで複合化する方法等、何れの方法によっても製造することができる。各種添加剤はこのような複合化の過程のどの工程で加えても良いが、複合化に支障のない添加タイミングを選択できる。
【0094】
これらの中で、無機微粒子と熱可塑性樹脂を別々に用意し、溶融混練で複合化する方法は、簡便で製造コストを抑えることが可能なことから、好ましく用いられる。溶融混練に用いることのできる装置としては、例えば、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式混練装置またはバッチ式混練装置を挙げることができる。また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いて製造することもできる。
【0095】
本発明の光学用有機無機複合材料の製造方法において、溶融混練を用いる場合、熱可塑性樹脂と無機微粒子を一括で添加し混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。この場合、押出機などの溶融混練装置では、段階的に添加する成分をシリンダーの途中から添加することも可能である。また、予め混練後、熱可塑性樹脂以外の成分で予め添加しなかった成分を添加して更に溶融混練する際も、これらを一括で添加して、混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。分割して添加する方法も、一成分を数回に分けて添加する方法も採用でき、一成分は一括で添加し、異なる成分を段階的に添加する方法も採用でき、そのいずれをも合わせた方法でも良い。
【0096】
溶融混練による複合化を行う場合、無機微粒子は粉体ないし凝集状態のまま添加することが可能である。あるいは、液中に分散した状態で添加することも可能である。液中に分散した状態で添加する場合は、混練後に脱揮を行うことが好ましい。
【0097】
本発明の光学用樹脂材料において、ホスト樹脂材料として硬化性樹脂を用いる場合、硬化性樹脂のモノマー、硬化剤、硬化促進剤、各種添加剤を、表面処理を適宜施した無機微粒子と混合し、紫外線及び電子線照射、あるいは加熱処理の何れかの操作によって硬化させることによって得ることができる。
【0098】
本発明の光学用樹脂材料において、光学用樹脂材料中に占める無機微粒子の含有量は、本発明の効果を発揮できる範囲であれば特に限定されず、樹脂と無機微粒子の種類により任意に決めることができる。
【0099】
しかし、無機微粒子の含有量が少ない場合、本発明の目的である光学特性の温度依存性を改善する効果が小さくなる可能性があることから、光学用有機無機複合材料中に占める無機微粒子の体積分率Φは20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。
【0100】
他方、無機微粒子の含有率が高い場合、無機微粒子の樹脂への添加が難しくなったり、光学用有機無機複合材料が硬くなって混練や成形が困難となったり、光学用有機無機複合材料の比重が大きくなったりする等の問題が生じる可能性があることから、光学用有機無機複合材料中に占める無機微粒子の体積分率Φは60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。
【0101】
なお、光学用樹脂材料中に占める無機微粒子の体積分率Φは、Φ=(光学用樹脂材料中の無機微粒子の総体積)/(光学用樹脂材料の体積)×100によって算出されるものである。
【0102】
光学用樹脂材料における樹脂と無機微粒子の混合の程度は、特に限定されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、均一に混合していることが望ましい。混合の程度が不十分の場合には、複合材料中の無機微粒子の粒径分布が、本発明で規定する条件を満たすことが困難になることが懸念される。熱可塑性樹脂組成物中の無機微粒子の粒径分布は、その作製方法に大きく影響されることから、用いられる熱可塑性樹脂及び無機微粒子の特性を十分に勘案して、最適な方法を選択することが重要である。
【0103】
以上のような光学用樹脂材料を成形することにより、各種成形材料を得ることができるが、その成形方法は特に限定されない。樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成形物を得るために、溶融成形法が好ましく用いられ、溶融成形法としては、市販のプレス成形、市販の押し出し成形、市販の射出成形等が挙げられる。この中でも成形性及び生産性の観点から、射出成形が好ましく用いられる。
【0104】
一方、樹脂として硬化性樹脂を用いた場合、硬化性樹脂のモノマー、硬化剤などの樹脂組成物と無機微粒子の混合物を、硬化性樹脂が紫外線及び電子線硬化性樹脂の場合は、透光性の所定形状の金型等に樹脂組成物を充填、あるいは基板上に塗布した後、紫外線及び電子線を照射して硬化させればよく、一方、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等により硬化成形することができる。
【0105】
《光学用樹脂材料の特性等》
更に、本発明の光学用樹脂材料は屈折率の温度変化率(dn/dT)が小さいことを特徴とする。
【0106】
ここで言う温度Tに対する屈折率nの変化率の指標であるdn/dTとは、光学用樹脂材料の屈折率(n)が温度(T)の変化に対しdn/dTの割合で変化することを示している。dn/dTの値は各温度で光学用樹脂材料の屈折率を測定し、屈折率の温度変化率を読みとることで求めることができる。
【0107】
屈折率の測定方法としては、例えば、エリプソメトリ、分光反射率法、光導波路法、Abbe法、最小偏角法等から、光学用樹脂材料の形態に応じて好ましい方法を選択することができる。
【0108】
本発明の光学用樹脂材料においては、このdn/dTの絶対値である|dn/dT|が0以上9.0×10-5以下であることが好ましく、更に|dn/dT|が0以上5.0×10-5以下であることが好ましい。このdn/dTが全ての波長領域で上記の範囲であることが好ましいが、光学素子として使用する際に用いられる波長領域で上記の範囲であれば、従来よりも温度安定性に優れた光学素子を提供することができるため好ましい。
【0109】
本発明の光学用樹脂材料は、可視領域波長における透明性を有することが好ましい。本発明の光学用樹脂材料の透明性は、可視領域波長での光線透過率が光路長3mmにおいて、通常は60%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上であるのが望ましい。かかる測定は、例えば、ASTM D−1003(3mm厚)規格での試験により行われる。ここで言う可視領域とは、400〜650nmの波長領域を意味する。
【0110】
また、本発明の光学用樹脂材料の屈折率は、ホスト樹脂材料と無機粒子の組み合わせにより決まるが、通常は樹脂より屈折率の高い無機粒子を選択することにより、樹脂の屈折率より高くすることが好ましい。具体的には1.45〜2.0程度の範囲が好ましく、更に好ましくは1.49〜1.7である。
【0111】
本発明の光学用樹脂材料は屈折率の温度依存性が小さく、且つ透明度が高く、光学的に優れた材料組成物であり、成型加工性に非常に優れた材料である。この優れた光学特性と成型加工性を併せ持った当該光学用樹脂材料は、これまでに開示されている材料では達成することができなかった特性であり、特定の樹脂と特定の無機微粒子からなることが、この特性に寄与していることが考えられる。
【0112】
《適用分野》
本発明の光学用樹脂材料は、その成形物が光学素子等に適用可能である。成形物としては、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、各種光学素子への適用が好適である。
【0113】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0114】
図1に示す通り、電子モジュールとしての撮像装置100は、携帯電話などの移動情報端末機器の電子回路を構成する電子部品が実装される回路基板1を有しており、回路基板1には撮像モジュール2が実装されている。撮像モジュール2はCCDイメージセンサとレンズを組み合わせた小型の基板実装用カメラであり、電子部品が実装された回路基板1をカバーケース3内に組み込んだ完成状態では、カバーケース3に設けられた撮像用開口4を介して撮像対象の画像取込ができるようになっている。なお、図1では、撮像モジュール2の電子部品以外の電子部品の図示を省略している。
【0115】
図2に示す通り、撮像モジュール2は基板モジュール5(図3(a)参照)とレンズモジュール6(図3(a)参照)より構成され、基板モジュール5を回路基板1に実装することにより、撮像モジュール2全体が回路基板1に実装される。基板モジュール5は、撮像用の電子部品であるCCDイメージセンサ11をサブ基板10上に実装した受光モジュールであり、CCDイメージセンサ11上面は樹脂12で封止されている。
【0116】
CCDイメージセンサ11の上面には、光電変換を行う画素が多数格子状に配列された受光部(図示略)が形成されており、この受光部に光学画像を結像させることにより各画素に蓄電された電荷を画像信号として出力する。サブ基板10は導電性材料18によって回路基板1に実装され、これによりサブ基板10が回路基板1に固定されるとともに、サブ基板10の接続用電極(図示略)と回路基板1上面の回路電極(図示略)とが電気的に導通する。
【0117】
レンズモジュール6はレンズ16を支持するレンズケース15を備えている。レンズケース15の上部にはレンズ16が保持されており、レンズケース15の上部はレンズ16を保持するホルダ部15aとなっている。レンズケース15の下部はサブ基板10に設けられた装着孔10a内に挿通されてレンズモジュール6をサブ基板10に固定する装着部15bとなっている。この固定には、装着部15bを装着孔10aに圧入して固定する方法や、接着材によって接着する方法などが用いられる。
【0118】
レンズ16は撮像光学系に用いられる撮像素子(光学素子)であり、複合材料で構成されている。なお、レンズ16も、基材として硬化性樹脂のみで構成してその基材の表面上に赤外線吸収/反射剤、紫外線吸収/反射剤による膜を蒸着法等の公知の手法で形成するような構成としてもよい。
【0119】
続いて、図3を参照しながら、電子モジュールとしての撮像装置100の製造方法について説明する。
【0120】
始めに、基板モジュール5とレンズモジュール6とを組み立て、図3(a)に示す通り、レンズケース15内に予め装着されたカラー部材17の下端部がサブ基板10の上面に当接するまでレンズケース15の装着部15bをサブ基板10の装着孔10aに挿通・固定し、撮像モジュール2を形成する。
【0121】
その後、図3(b)に示す通り、予め導電性材料18が塗布(ポッティング)された回路基板1の所定の実装位置に撮像モジュール2やその他の電子部品を載置する。その後、図3(c)に示す通り、撮像モジュール2やその他の電子部品を載置した回路基板1をベルトコンベア等でリフロー炉(図示略)に移送し、当該回路基板1をリフロー処理に供して180〜270℃程度の温度で加熱する。その結果、導電性材料18が溶融して撮像モジュール2がその他の電子部品と一緒に回路基板1に実装される。
【0122】
以上の本実施形態では、撮像モジュール2のレンズ16が複合材料で構成され、その複合材料中に赤外線吸収/反射剤、紫外線吸収/反射剤が含まれるから、レンズ16がリフロー処理という高温の加熱処理(180〜270℃程度)に供されても変形するのを抑制することができる(下記実施例参照)。
【0123】
光学素子1は、上記の作製方法により得られるが、例えば下記のような光学部品に応用される。
【0124】
例えば、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。
【0125】
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。具体的な適用例としては、光学レンズや、光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズ等のレンズ;眼鏡レンズ等の全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)等の光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズ等のレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズ等が挙げられる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0127】
実施例1
(無機酸化物微粒子分散液Aの調製)
アルミナ(日本アエロジル株式会社製アルミナC、一次粒子径13nm)7.2gに対して、純水50ml、特級エタノール(関東化学製)390ml、28%アンモニア(関東化学製)22mlを加えた溶液を調製し、この溶液に対してテトラエトキシシラン(信越化学製LS−2430)0.72gを添加し、その溶液をウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業株式会社製)で、0.05mmビーズを用いて、周速6m/secで1時間分散した。その後、更に、その分散液に対してテトラエトキシシラン(信越化学製LS−2430)0.72gを添加し、上記と同じように1時間攪拌した。
【0128】
その後、テトラエトキシシラン(信越化学製LS−2430)18.16gをエタノール40mlと純水5mlとの混合液で希釈し、その希釈液を上記分散工程で得た分散液に10分間かけて滴下した。その溶液を室温で20時間攪拌した。
【0129】
得られた分散液は、アルミナの表面にシリカ層を形成した複合酸化物微粒子のエタノール・水混合溶媒分散液であり、これを無機酸化物微粒子分散液Aとした。
【0130】
<光学用樹脂材料1の作製>
無機酸化物微粒子分散液Aを遠心分離し、粒子を沈降させた。この粒子を80℃で24時間減圧乾燥し、更に粒子に対して、シランカップリング剤のヘキサメチルジシラザン(HMDS)を10質量%加え、攪拌しながら150℃に加熱して2時間表面処理を行った。その後、80℃で24時間減圧乾燥し、無機微粒子粉末を得た。
【0131】
熱硬化性モノマーとして特開2002−193883号公報に従って作製した1−アダマンチルメタクリレート、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン社製、Irganox1010)を0.2質量部、及びラジカル重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂社製,パーヘキサ3M−95)0.01質量部、無機微粒子が20体積%になるように、二軸混練機(東洋精機製作所 ラボプラストミル)で混練し、金型中に注入し80℃4時間重合させて厚さ3mmの試験用プレートを作製した。
【0132】
<光学用樹脂材料2の作製>
無機酸化物微粒子分散液Aを、噴霧乾燥装置を用いて200℃で乾燥を行い、続けて200℃に維持した表面処理槽内でN2ガス、アンモニア、HMDSを反応ガスとして流して表面処理を行った。得られた無機微粒子粉末を用い、光学用樹脂材料1の作製方法と同様にして1−アダマンチルメタクリレート樹脂と混練、成形して厚さ3mmの試験用プレートを作製した。
【0133】
<光学用樹脂材料3の作製>
無機酸化物微粒子分散液Aを、分画分子量2万の日本ガイシ社製セラミックUFフィルタに0.5MPaの圧力をかけながら循環し、液量が1/5になるまで限外濾過を行った。その後、排出した溶媒量と同量のアセトニトリルを加え、液量が1/5になるまでの限外濾過操作を4回繰り返して行い、アセトニトリルに溶媒置換された無機酸化物微粒子分散液を作製した。
【0134】
このアセトニトリル分散液に、無機酸化物微粒子量に対して50質量%のHMDSを添加し、80℃で2時間表面処理を行い、表面処理済み無機酸化物微粒子のアセトニトリル分散液を得た。これを無機酸化物微粒子分散液Bとした。
【0135】
無機酸化物微粒子分散液Bを、分画分子量2万のセラミックUFフィルタを用い、前述と同様の方法でアセトニトリルの代わりにtert−ブチルアルコールを使用して、限外濾過による溶媒置換を行った。
【0136】
更に、得られた表面処理済み無機酸化物微粒子のtert−ブチルアルコール分散液を凍結乾燥して無機微粒子粉末とし、光学用樹脂材料1の作製方法と同様にして1−アダマンチルメタクリレート樹脂と混練、成形して厚さ3mmの試験用プレートを作製した。
【0137】
<光学用樹脂材料4の作製>
無機酸化物微粒子分散液Bを、分画分子量2万のセラミックUFフィルタを用い、前述と同様の方法でアセトニトリルの代わりにエタノールを使用して、限外濾過による溶媒置換を行った。更に、得られた表面処理済み無機酸化物微粒子のエタノール分散液を、ステンレス製のバットに流し込み、150℃のオーブン中で2時間乾燥行って無機微粒子粉末とし、光学用樹脂材料1の作製方法と同様にして1−アダマンチルメタクリレート樹脂と混練、成形して厚さ3mmの試験用プレートを作製した。
【0138】
<光学用樹脂材料5の作製>
光学用樹脂材料4の作製と同様にして得た、表面処理済み無機酸化物微粒子のエタノール分散液を、噴霧乾燥装置を用いて200℃で乾燥を行って無機微粒子粉末とし、光学用樹脂材料1の作製方法と同様にして1−アダマンチルメタクリレート樹脂と混練、成形して厚さ3mmの試験用プレートを作製した。
【0139】
<光学用樹脂材料6の作製>
光学用樹脂材料5の作製と同様にして得た無機微粒子粉末を、熱可塑性樹脂である三井化学社製APEL5014に対して、無機微粒子が20体積%になるように、200℃で二軸混練機を用いて混合した後、金型中に注入し、厚さ3mmの試験用プレートを作製した。
【0140】
<光学用樹脂材料7の作製>
平均粒子径15nmのシリカ微粒子のMEK分散液であるオリガノシリカゾルMEK−ST(日産化学社製)に、シリカ微粒子量に対して50質量%のHMDSを添加し、80℃で2時間表面処理を行い、表面処理済みシリカ微粒子のMEK分散液を得た。得られた分散液を、光学用樹脂材料5の作製と同様にして限外濾過によるエタノール溶媒置換を行い、噴霧乾燥により無機微粒子粉末とし、1−アダマンチルメタクリレート樹脂と混練、成形して厚さ3mmの試験用プレートを作製した。
【0141】
<光学用樹脂材料8の作製>
オリガノシリカゾルMEK−STを、噴霧乾燥装置を用いて200℃で乾燥を行って無機微粒子粉末とし、更に粒子に対して、シランカップリング剤のヘキサメチルジシラザン(HMDS)を10質量%加え、攪拌しながら150℃に加熱して2時間表面処理を行った。その後、80℃で24時間減圧乾燥し、表面処理済みシリカ微粒子粉末を得た。その後、光学用樹脂材料1の作製方法と同様にして1−アダマンチルメタクリレート樹脂と混練、成形して厚さ3mmの試験用プレートを作製した。
【0142】
<光学用樹脂材料9の作製>
オリガノシリカゾルMEK−STを、ステンレス製のバットに流し込み、150℃のオーブン中で2時間乾燥行って無機微粒子粉末とし、更に粒子に対して、シランカップリング剤のヘキサメチルジシラザン(HMDS)を10質量%加え、攪拌しながら150℃に加熱して2時間表面処理を行った。その後、80℃で24時間減圧乾燥し、表面処理済みシリカ微粒子粉末を得た。その後、光学用樹脂材料1の作製方法と同様にして1−アダマンチルメタクリレート樹脂と混練、成形して厚さ3mmの試験用プレートを作製した。
【0143】
以上の通り作製した光学用樹脂材料1〜9の詳細を表2に示す。
【0144】
【表2】

【0145】
《評価》
<平均分散粒子径の測定>
平均分散粒子径は、分散液を適当に希釈し、切片の透過型電子顕微鏡写真を撮影し、粒子の単体(凝集体を構成する単体を含む)を同体積の球に換算したときの直径の平均値を求めた。
【0146】
<屈折率の評価>
光学用樹脂材料1〜9の試験用プレートを、カルニュー光学工業(株)製の自動屈折計KPR−200を用いて、波長588nmの屈折率を、試料温度を10℃から60℃まで変化させて測定した。25℃での屈折率をnd25、10℃から60℃での屈折率の温度変化率をdn/dTとし、得られた結果を表3に示す。
【0147】
<透過率の測定>
光学用樹脂材料1〜9の試験用プレートを、ASTM D1003に準拠した方法で、東京電色(株)製のTURBIDITY METER T−2600DAを用いて光線透過率を測定し、この測定した光線透過率を透過率A(%)とした。次いで、上記各試験用プレートを、65℃の環境下で48時間放置した後、上記と同様の方法で、強制劣化処理後の光線透過率を測定し、これを透過率B(%)とした。
【0148】
更に、リフロー耐性の代用試験として、各試験用プレートを260℃の炉に投入し、3分後に取りだし試料の光線透過率を測定し、これを透過率C(%)とした。
【0149】
なお、測定した光線透過率が80%以下では、透明度に乏しく、光学素子に適さないと判定した。
【0150】
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0151】
【表3】

【0152】
表3に記載の結果より明らかな様に、本発明の製造方法により作製した光学用樹脂材料は、比較例に対し、屈折率の温度依存性が小さく、かつ透明性が高いことが分かる。更に、強制劣化処理を行った後でも、透明性の低下幅が極めて小さく、光学素子に使用する樹脂材料として極めて有用であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の好ましい実施形態で使用される撮像装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態で使用される撮像装置の一部を拡大した概略的な断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態における撮像装置の製造方法を概略的に説明するための図面である。
【符号の説明】
【0154】
100 撮像装置
1 回路基板
2 撮像モジュール
3 カバーケース
4 撮像用開口
5 基板モジュール
6 レンズモジュール
10 サブ基板
10a 装着孔
11 CCDイメージセンサ
12 樹脂
15 レンズケース
15a ホルダ部
15b 装着部
16 レンズ
17 カラー部材
18 導電性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト樹脂材料中に、平均粒子径が1nm以上、50nm以下の無機酸化物微粒子を含有する光学用樹脂材料の製造方法であって、該無機酸化物微粒子の分散液を限外濾過により溶媒置換する工程、及び該無機酸化物微粒子が溶媒中で表面疎水化処理される工程を含むことを特徴とする光学用樹脂材料の製造方法。
【請求項2】
前記無機酸化物微粒子の分散液を限外濾過により溶媒置換する工程を、該無機酸化物微粒子の表面疎水化処理工程の後に行うことを特徴とする請求項1に記載の光学用樹脂材料の製造方法。
【請求項3】
前記無機酸化物微粒子の分散液を限外濾過により溶媒置換する工程の後に、該無機酸化物微粒子の乾燥粉体を得る工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光学用樹脂材料の製造方法。
【請求項4】
前記無機酸化物微粒子が、ケイ素と他の金属元素からなる複合酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学用樹脂材料の製造方法。
【請求項5】
前記無機酸化物微粒子の表面疎水化処理が、ケイ素化合物を用いて行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学用樹脂材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする光学用樹脂材料。
【請求項7】
請求項6に記載の光学用樹脂材料を用いて成型されたことを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−235325(P2009−235325A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86378(P2008−86378)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】