説明

光学用無機材料及びその製造方法、光学用樹脂材料並びにそれを用いた光学素子

【課題】屈折率の温度変化率を維持しながら光散乱が小さい光学樹脂材料及び光学素子と、それに用いられる光学用無機材料及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】無機微粒子が分散した酸性の溶液に塩基性基含有シランカップリング剤を添加し、溶液を塩基性に調整し、該溶液に対して無機酸化物前駆体を滴下したことによって、前記無機微粒子表面に無機酸化物層を形成したことを特徴とした光学用無機材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用無機材料及びその製造方法、光学用樹脂材料並びにそれを用いた光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光学材料の分野においては、レンズ、プリズム等の光学素子を有機樹脂の成形によって作製している。しかし、これらの樹脂は、熱膨張係数や、屈折率の温度変化が光学ガラスよりも大きい。このため、近年、レンズに求められている高い光学精度を十分に満たせない。このような欠点を補うために、樹脂と光学用無機材料を複合化させた光学用樹脂材料が開発されている。
【0003】
特許文献1には、シリカゾルの表面に酸化チタン層を形成し、透明で光散乱の発生を防止した粒子を用いて光学用無機材料を作製している。しかしながら、酸化チタン層を酸性溶液中で形成しているために、表面が活性のままであり、乾燥によって強い凝集が起こる。よって、液中の粒子を噴霧乾燥等を用いて取り出し、樹脂と溶融混練しても透明性が認められない。従って、粒子をモノマーと共に液中で重合してなるポリマーにのみ応用が可能であり、このように作製した樹脂の物性の熱膨張や吸水率は高く、高精度のレンズを作製できない。
【0004】
特許文献2には、酸化チタンゾルの表面を、有機成分を持った無機酸化物のアルコキシドを用いて修飾し、さらにモノマーを加え重合することで光学用樹脂材料を作製している。
【0005】
特許文献3には、酸化ジルコニウムの表面を無機酸化物のアルコキシドを用いて修飾し、さらにモノマーを加え重合することで光学用樹脂材料を作製している。しかし、これらの光学樹脂材料は特許文献1と同様の理由で実用に耐えない。
【0006】
特許文献4には、粒子のコアから表面へ徐々に屈折率が低下している粒子を樹脂に含有させることで、光学樹脂材料を作製している。この場合、粒子をプラズマ法で作製している。この製法では粒子径十分な透明性が得られるほど小さくすることは難しく、粒子径の分布が大きく、光学樹脂材料として十分な性能を得られない。
【0007】
従来技術として、無機微粒子をアルコキシドや塩化物を用いて、酸触媒を用いて、ゾルーゲル法等を用いて粒子を作製することによって粒子径30nm以下の微粒子が、ほぼ、一次粒子として分散した溶液を作製できる。これらの表面に強固な無機酸化物層を形成するためには塩基性中で無機酸化物前駆体を用いなければならない。しかし、酸性分散液を塩基性にする場合、ゲル化が起こり、塩基性溶液中で分散した粒子表面に均一に無機酸化物層を形成することは困難であった。
【特許文献1】特開2005−146042号公報
【特許文献2】特開2005−316119号公報
【特許文献3】特開2005−316219号公報
【特許文献4】特開2005−213410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、屈折率の温度変化率を維持しながら光散乱が小さい光学樹脂材料及び光学素子と、それに用いられる光学用無機材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.無機微粒子が分散した酸性の溶液に塩基性基含有シランカップリング剤を添加し、溶液を塩基性に調整し、該溶液に対して無機酸化物前駆体を滴下することによって、前記無機微粒子表面に無機酸化物層を形成することを特徴とする光学用無機材料の製造方法。
【0011】
2.前記塩基性基含有シランカップリング剤の塩基性基がアミノ基であることを特徴とする前記1に記載の光学用無機材料の製造方法。
【0012】
3.前記塩基性基含有シランカップリング剤が、3−アミノプロピルトリメトキシシランまたは3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする前記1または2に記載の光学用無機材料の製造方法。
【0013】
4.前記無機酸化物前駆体が、テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法。
【0014】
5.前記無機微粒子が、酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法。
【0015】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法によって得られた光学用無機材料を、さらに、疎水化処理することを特徴とする光学用無機材料の製造方法。
【0016】
7.塩基性基含有シランカップリング剤を添加し、さらに塩基性物質を加えることによって溶液を塩基性に調整することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法。
【0017】
8.前記無機微粒子の一次粒子径が1〜30nmであることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法。
【0018】
9.前記1〜8のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法によって得られることを特徴とする光学用無機材料。
【0019】
10.前記9に記載の光学用無機材料を熱可塑性樹脂に含有させることを特徴とする光学用樹脂材料。
【0020】
11.前記10に記載の光学用樹脂材料を成形したものであることを特徴とする光学素子。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、屈折率の温度変化率を維持しながら光散乱が小さい光学樹脂材料及び光学素子と、それに用いられる光学用無機材料及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明者らは、上記課題鑑み鋭意検討を行った結果、無機微粒子が分散した酸性の溶液に塩基性基含有シランカップリング剤を添加し、または、さらに塩基性物質を加えることによって溶液を塩基性に調整し、該溶液に対して無機酸化物前駆体を滴下することによって、前記無機微粒子表面に無機酸化物層を形成する光学用無機材料の製造方法により、屈折率の温度変化率を維持しながら光散乱が小さい光学樹脂材料及び光学素子に用いられる光学用無機材料の製造方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0023】
熱可塑性樹脂に無機微粒子を含有させることで、屈折率の温度変化率、熱可塑性樹脂の熱膨張率を低減させることができる。また、無機微粒子は光学樹脂材料及び光学素子に用いるため透明度が高いことが必要である。このためには、無機微粒子の粒子径が小さく、かつ、光散乱低減の必要がある。
【0024】
本発明は、無機微粒子として、アルコキシドや塩化物を用いて、ゾル−ゲル法等で粒子を作製することによって、微粒子がほぼ一次粒子で分散した酸性溶液を作製することができる。この溶液に塩基性基含有シランカップリング剤を加え、表面処理を行う。さらに溶液のpHを一気に上昇(塩基性)することで、分散液をゲル化(無機粒子を凝集)することなしに、酸性溶液から塩基性溶液に持って行くことができる。従来の酸性溶液ではpHを上昇させると粒子は凝集し、別途、分散工程が必要であった。しかも一次粒子までの分散は極めて困難であった。本発明では、分散液を凝集なしに塩基性にもって行き、さらに、該粒子分散液に無機酸化物前駆体を滴下することで、無機粒子の表面に均一に酸性溶液中では作成不可能な堅固な無機酸化物層を形成した粒子(光学用無機材料)を作製することができる。
【0025】
該粒子は均一に堅固な無機酸化物が形成されているために分散液中の粒子を利用する際の最大の問題点である乾燥凝集が極めて小さい。従って、乾燥後も熱可塑性樹脂中での分散性がよく、この粒子を熱可塑性樹脂に含有させても、屈折率の温度変化率を維持しながら高い光透過率を維持している。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
(無機微粒子)
本発明に用いられる無機微粒子としては、酸化マグネシウム、酸化鉄(二価)、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化ランタン、酸化ベリリウム、酸化銅、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化チタン等が挙げられ、中でも酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウム(アルミナ)が好ましい。本発明においては、これらの粒子が一次粒子に近い粒子径で分散した分散液を用いる。その際、市販されている無機微粒子分散液を使うことができ、このような分散液は、ナノ酸化ジルコニア分散液(住友大阪セメント社製)、コロイダルアルミナゾル(日産化学工業社製)等、各社から販売されている。
【0028】
無機微粒子は、光学樹脂材料及び光学素子に用いるため400〜800nmの光に対し透明度が高いことが望ましく、このためには、平均粒子径が30nm以下であることが好ましく、10nmであることがより好ましい。平均粒子径が30nmを超えると、得られる光学用樹脂材料が濁る等して透明性が低下し、光線透過率が70%未満となる恐れがある。ここでいう平均粒子径とは、各無機粒子を同体積の球に換算した時の直径(球換算粒径)の体積平均値である。また、1nm未満では、工程汚染(粒子の飛散)、ブロッキングによる目詰まり(搬送性の悪化)等の工程上の不具合が生じるため好ましくない。また、表面にシリカを形成した場合、粒子の屈折率のトータルの屈折率は下がる。光学樹脂材料の場合、粒子の屈折率を樹脂の屈折率に近づける必要がある。この際、粒子の粒子径が30nm以上であると、粒子の表面積が低くなるため、シリカ層の厚膜化が必要になってしまう。この際に、シリカ粒子の副生が問題になる場合がある。したがって、粒子径は30nm以下が望ましく。生産性などを考えると、10nm以下の粒子であることが適度であり望ましい。
【0029】
無機微粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状であるのが好適である。具体的には、無機微粒子の最小径(無機粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最小値)/最大径(無機微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最大値)が0.5〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることがさらに好ましい。無機微粒子径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。
【0030】
(無機酸化物前駆体)
無機酸化物は無機粒子の表面に形成される層を構成するもので、当該無機酸化物の層はその前駆体化合物から形成される。
【0031】
無機酸化物前駆体としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ポリシラザン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラメトキシタングステン、テトラエトキシタングステン等が適用可能である。これらの無機酸化物前駆体の中では、コアとなる無機粒子表面に無機酸化物を形成した際、無機粒子同士の凝集体が生成され難く乾燥凝集を防ぎ、緻密な層を無機粒子の表面上に形成し、かつ、シランカップリング剤の効果が高いことから、テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランが好ましい。
【0032】
(無機酸化物層の形成)
無機酸化物層の形成は、酸性溶液中に分散した粒子に塩基性基含有シランカップリング剤を加えて、加熱攪拌する過程、さらに、塩基性物質、イオン交換樹脂を用いて、溶液を塩基性物質にして、無機酸化物の前駆体化合物を滴下する過程にからなる。
【0033】
第一段階として、分散液を攪拌しながら塩基性基含有シランカップリング剤をゆっくりと滴下する。この際、塩基性基含有シランカップリング剤の滴下量は、分散粒子の比表面面積と塩基性基含有シランカップリング剤の最小被覆面積から計算した量が最適である。滴下終了後、分散液を加熱しながら攪拌する。加熱攪拌終了後、塩基性物質を用いて、無機微粒子の前駆体化合物を滴下する所定のpHまで一気に溶液のpHを上昇させる。このpHは、攪拌後の分散液に塩基性物質をゆっくり加えていくと白濁が見られるが、さらに加えていくと透明な分散液となることから、透明になるpHをあらかじめ調べておくことにより決定される。この際、表面のZ電位の反転が見られる。
【0034】
粒子の比表面によっては、塩基性基含有シランカップリング剤を加え、過熱攪拌後、イオン交換樹脂を用いることによって、塩基性物質を加えることなく十分溶液を塩基性にすることができる。また、塩基性基含有シランカップリング剤の種類によってはZ電位が反転する前のpHにおいても十分に塩基性である場合があり、その場合は白濁をみることなく、前駆体を滴下することが可能である。従って、溶液のpHを塩基性側で調整することにより、プラス、マイナス任意のZ電位での前駆体の滴下が可能である。前駆体の帯電を考慮し、最も好ましいZ電位を選ぶことができる。
【0035】
また、テトラエトキシシラン等の無機酸化物前駆体は、水には溶けないため、加熱攪拌終了後に任意の溶媒を加え、混合溶液に調製することが望ましい。純水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エトキシエタノール、ジメチルフォルムアミド、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、キシレン、シクロへキサン等の溶媒を、無機粒子の分散性や安定性や前駆体化合物の特性等に応じて、単独でまたは2種類以上混合して、使い分けて用いることが可能である。溶媒としては、取り扱いが簡単で費用が安いことから、エタノールまたはエタノールと純水との混合溶液を用いるのが好ましい。
【0036】
さらに塩基性物質としては、アンモニア、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、トリメチルアミン、ピリジン、アニリン等を好ましく用いることができるが、表面無機酸化物形成後に加熱により容易に取り除けることから、アンモニアを用いるのが好ましい。また、塩基性物質を滴下する前に、陰イオン交換樹脂を用いて、陰イオンを除去しておくことが粒子の疎水化処理をする場合は好ましい。このような用途としては、ダイヤイオン(三菱化学社)、アンバーライト(ロームアンドハース社)等、さまざまなイオン交換樹脂が販売されており、用途によって任意に選択して使用することができる。また、塩基性基含有シランカップリング剤の量によっては、陰イオンを除去するだけで、所定のpHまで上昇する。その際は塩基性物質の滴下は不要である。さらにpHを上昇させた粒子分散液に対して、溶液を攪拌しながら無機酸化物前駆体をゆっくりと滴下することによって、粒子の表面に無機酸化物層を形成することができる。
【0037】
(塩基性基含有シランカップリング剤)
塩基性基含有シランカップリング剤の塩基性基としては、アミノ基もしくは第4級アンモニウム基が好ましく、アミノ基がより好ましい。塩基性基含有シランカップリング剤としては、具体的にはN−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル2ピペリジノエチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、中でも3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく用いられる。
【0038】
(疎水化処理)
疎水化処理では、乾式、湿式の両方を用いることができる。
【0039】
乾式の疎水化処理では、上記層形成工程を経た分散液から遠心分離、ろ過等で表面に無機酸化物の層が形成された無機微粒子を分離する。その後、この無機粒子を好ましくは80〜120℃の範囲で乾燥または減圧乾燥して溶媒を取り除き、任意に好ましくは200〜400℃の範囲でエイジングする。このエイジング操作の際、着色が見られる場合は、窒素やアルゴン等の不活性気体を流しながらエイジングすることが好ましい。こうして得た粒子をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機に入れて高速攪拌しながら、当該粒子に対して疎水化処理剤を滴下して、またはスプレー等で添加し、疎水化処理剤を添加した後の粉体を加熱する。
【0040】
湿式の疎水化処理では、上記層形成工程を経た分散液に疎水化処理剤を加えて任意にその分散液を加熱する。この分散液から、粒子を遠心分離、ろ過等で分離して乾燥する。
【0041】
疎水化処理剤としては、耐熱性や、高い疎水性を示すシランカップリン剤を用いるのが好ましい。シランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルクロライド、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、東レ・ダウシリコーン製のSZ6187等を好適に用いることができる。
【0042】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、光学材料として一般的に用いられる透明の熱可塑性樹脂材料であれば特に制限はないが、光学素子としての加工性を考慮すると、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリイミド樹脂が好ましく、特に好ましくは環状オレフィン樹脂であり、例えば、特開2003−73559号公報等に記載の化合物を挙げることができ、その好ましい化合物を以下に示す。
【0043】
【化1】

【0044】
光学用樹脂材料に用いられる熱可塑性樹脂は、その吸水率が0.2質量%以下であることが好ましい。吸水率が0.2質量%以下の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)AF(デュポン社製)、サイトップ(旭硝子社製)等)、環状オレフィン樹脂(例えば、ZEONEX(日本ゼオン社製)、アートン(JSR社製)、アペル(三井化学社製)、TOPAS(ポリプラスチック社製)等)、インデン/スチレン系樹脂、ポリカーボネート等が好適であるが、これらに限るものではない。
【0045】
また、これらの樹脂と相溶性のある他の樹脂を併用することも好ましい。2種以上の樹脂を用いる場合、その吸水率は、個々の樹脂の吸水率の平均値にほぼ等しいと考えられ、その平均の吸水率が0.2%以下になればよい。
【0046】
熱可塑性樹脂に無機粒子を分散させる際には、母材となる熱可塑性樹脂と無機粒子の屈折率の差が小さいことが望ましい。発明者らの検討の結果、熱可塑性樹脂と分散される無機粒子の屈折率の差が小さいと、光を透過させた場合に散乱を起こし難いということが分かった。熱可塑性樹脂に無機粒子を分散させる際、無機粒子が大きい程、光を透過させた時の散乱を起こしやすくなるが、熱可塑性樹脂と分散される無機粒子の屈折率の差が小さいと、比較的大きな無機粒子を用いても光の散乱が発生する度合いが小さいことを発見した。熱可塑性樹脂と分散される無機粒子の屈折率の差は、0〜0.3の範囲であることが好ましく、さらに0〜0.15の範囲であることが好ましい。
【0047】
光学用樹脂材料として好ましく用いられる熱可塑性樹脂の屈折率は、1.4〜1.6程度である場合が多く、これらの熱可塑性樹脂に分散させる無機微粒子としては、例えば酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物、シリカ−ジルコニウム複合粒子等が好ましく用いられる。
【0048】
また、発明者らの研究により、比較的屈折率の低い無機微粒子を分散させることで、光学用樹脂材料のdn/dT(温度変動に対する屈折率変動)を効果的に小さくすることができることが分かった。屈折率が低い無機微粒子を分散した光学用樹脂材料の|dn/dT|が小さくなる理由について、詳細は分かっていないものの、光学用樹脂材料における無機微粒子の体積分率の温度変化が、無機微粒子の屈折率が低いほど、光学用樹脂材料の|dn/dT|を小さくする方向に働くのではないかと考えられる。比較的屈折率が低い無機微粒子としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)等が挙げられる。
【0049】
光学用樹脂材料のdn/dTの低減効果、光透過性、所望の屈折率等を全て同時に向上させることは困難であり、熱可塑性樹脂に分散させる無機微粒子は、光学用樹脂材料に求める特性に応じて、無機微粒子自体のdn/dTの大きさ、無機微粒子のdn/dTと母材となる熱可塑性樹脂のdn/dTとの差、及び無機微粒子の屈折率等を考慮して適宜選択することができる。さらに、母材となる熱可塑性樹脂との相性、即ち、熱可塑性樹脂に対する分散性、散乱を引き起こし難い無機微粒子を適宜選択して用いることは、光透過性を維持する上で好ましい。
【0050】
本発明の有機無機複合材料の調製時や樹脂組成物の成型工程においては、必要に応じて各種添加剤(配合剤ともいう)を添加することができる。添加剤については、格別限定はないが、酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤の他に、滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;軟質重合体、アルコール性化合物等の白濁防止剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤、難燃剤、フィラー等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。
【0051】
〔光学素子(光学用樹脂レンズ)の作製方法〕
次いで、上記説明した本発明の光学用樹脂材料(複合熱可塑性材料)から作製される光学素子の一つである光学用樹脂レンズの作製方法について説明する。
【0052】
本発明に係る光学用樹脂レンズは、まず、樹脂組成物(樹脂単独の場合もあれば、樹脂と添加剤との混合物の場合もある)を調製し、次いで、得られた樹脂組成物を成型する工程を含む。
【0053】
本発明に係る光学用樹脂レンズは、まず、樹脂組成物(樹脂単独の場合もあれば、樹脂と添加剤との混合物の場合もある)を調製し、次いで、得られた樹脂組成物を成型する工程を含む。
【0054】
本発明の光学用樹脂材料の成型物は、前記樹脂組成物からなる成型材料を成型して得られる。成型方法としては、格別制限されるものはないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成型物を得るためには溶融成型が好ましい。溶融成型法としては、例えば、市販の、プレス成型、押し出し成型、射出成型等が挙げられるが、射出成型が成型性、生産性の観点から好ましい。
【0055】
成型条件は使用目的、または成型方法により適宜選択されるが、例えば、射出成型における樹脂組成物(樹脂単独の場合または樹脂と添加物との混合物の両方がある)の温度は、成型時に適度な流動性を樹脂に付与して成型品のヒゲやひずみを防止し、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、さらに、成型物の黄変を効果的に防止する観点から150〜400℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは200〜350℃の範囲であり、特に好ましくは200〜330℃の範囲である。
【0056】
本発明に係る成型物は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状等種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、本発明の光学素子の一つである光学用樹脂レンズとして用いられるが、その他の光学部品としても好適である。
【0057】
(光学用樹脂レンズ)
本発明に係る光学用樹脂レンズは、上記の作製方法により得られるが、光学部品への具体的な適用例としては、以下のようである。
【0058】
例えば、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズ等のレンズ;眼鏡レンズ等の全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)等の光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズ等のレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズ等が挙げられる。
【0059】
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)等が挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイ等の導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム等の光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板等が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズやレーザ走査系レンズとして好適であり、ピックアップレンズに最も好適に用いられる。
【0061】
本発明に係る光学用樹脂レンズの用途の一例として、光ディスク用のピックアップ装置に用いる対物レンズとして用いられる例を図1を用いて説明する。
【0062】
本形態では、使用波長が405nmのいわゆる青紫色レーザ光源を用いた「高密度な光ディスク」をターゲットとしている。この光ディスクの保護基板厚は0.1mmであり、記憶容量は約30GBである。
【0063】
図1は、本発明の光学素子(光学用樹脂レンズ)を対物レンズとして適用した光ディスク用のピックアップ装置の一例を示す模式図である。
【0064】
光ピックアップ装置1において、レーザダイオード(LD)2は、光源であり、波長λが405nmの青紫色レーザが用いられるが、波長が390〜420nmである範囲のものを適宜採用することができる。
【0065】
ビームスプリッタ(BS)3はLD2から入射する光源を対物光学素子(OBL)4の方向へ透過させるが、光ディスク(光情報記録媒体)5からの反射光(戻り光)について、センサーレンズ(SL)6を経て受光センサー(PD)7に集光させる機能を有する。
【0066】
LD2から出射された光束は、コリメータ(COL)8に入射し、これによって無限平行光にコリメートされたのち、ビームスプリッタ(BS)3を介して対物レンズOBL4に入射する。そして光ディスク(光情報記録媒体)5の保護基板5aを介して情報記録面5b上に集光スポットを形成する。ついで情報記録面5b上で反射した後、同じ経路をたどって、1/4波長板(Q)9によって偏光方向を変えられ、BS3によって進路を曲げられ、センサーレンズ(SL)6を経てセンサー(PD)7に集光する。このセンサーによって光電変換され、電気的な信号となる。
【0067】
なお、対物光学素子OBL4は、樹脂によって射出成型された単玉の光学用樹脂レンズである。そしてその入射面側に絞り(AP)10が設けられており、光束径が定められる。ここでは入射光束は3mm径に絞られる。そして、アクチュエータ(AC)11によって、フォーカシングやトラッキングが行われる。
【0068】
なお、光情報記録媒体の保護基板厚、さらにピットの大きさにより、対物光学素子OBL4に要求される開口数も異なる。ここでは、高密度な光ディスク(光情報記録媒体)5の開口数は0.85としている。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0070】
実施例
〔光学用樹脂材料の作製〕
(光学用樹脂材料1の作製)
酸化ジルコニア分散液(平均粒子径3nm、住友大阪セメント社製、10%溶液)100gを純水135mlで希釈した溶液を作製した。この溶液に、室温で3−アミノプロピルトリメトキシシラン3.7gをゆっくりと滴下した。さらに、この溶液を60℃で10時間攪拌した。室温まで溶液を冷却し、陰イオン交換樹脂であるアンバーライトを加え、溶液のpHが10.4になるまで攪拌した。この溶液にエタノール680ml、アンモニア水(28%溶液、関東化学社製)230ml、を加える。攪拌しながら、テトラエトキシシラン(信越化学社製)30gをエタノール200ml、水100mlの混合液に溶かし、6時間かけて滴下した。滴下終了後、15時間攪拌した。粒子を遠心分離機を用いて、分離し、エタノールで洗浄する。90℃で乾燥し、エタノールを除いた後、450℃で焼成した。得られた粒子は白色粉体であり、BET値は210m2/gであった。
【0071】
得られた白色粉体17gをなすフラスコに封入し、窒素置換し、さらに塩基性基含有シランカップリング剤HMDS3(信越化学社製)を3.5g加え、30分間150℃で攪拌した。さらに、脱気することで、未反応のHMDS3を除いた。該粒子をポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、熱可塑性樹脂O−PET(鐘紡社製)14gと溶融混練することによって、樹脂中に粉体を20体積%含有する本発明の光学用樹脂材料1を得た。
【0072】
(光学用樹脂材料2の作製)
アルミナゾル520(平均粒子径3nm、日産化学社製、20%溶液)100gを純水270mlで希釈した溶液を作製した。この溶液に24gの3−アミノプロピルトリメトキシシランをゆっくり滴下した。さらに、この溶液を60℃で10時間攪拌した。さらに、室温まで溶液を冷却し、陰イオン交換樹脂であるアンバーライトを加え、溶液のpHを10.4になるまで攪拌した。この溶液にエタノール1200ml、アンモニア水(28%溶液、関東化学社製)400mlを加えた。攪拌しながら、テトラエトキシシラン(信越化学社製)70gをエタノール350ml、純水175mlの混合液に溶かし、6時間かけて滴下した。滴下終了後、15時間攪拌した。粒子を遠心分離機を用いて分離し、エタノールで洗浄した。90℃乾燥し、エタノールを除いた後、450℃で焼成した。得られた粒子は白色粉体であり、BET値は450m2/gであった。
【0073】
得られた白色粉体15gをなすフラスコに封入し、窒素置換し、さらにHMDS3(信越化学社製)を3g加え、30分間150℃で攪拌した。さらに、脱気することで、未反応のHMDS3を除いた。ポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、ZEONEX340R(熱可塑性の環状オレフィン樹脂、日本ゼオン社製)14.5gと溶融混練することによって、樹脂中に粉体を20体積%含有する本発明の光学用樹脂材料2を得た。
【0074】
(光学用樹脂材料3の作製)
酸化ジルコニア分散液(平均粒子径3nm、住友大阪セメント社製、10質量%溶液)100gを純水135mlで希釈した溶液を作製した。この溶液に、室温で3−アミノプロピルトリエトキシシラン4.6gをゆっくりと滴下した。さらに、この溶液を60℃で10時間攪拌した。室温まで溶液を冷却し、陰イオン交換樹脂であるアンバーライトを加え、溶液のpHが10.4になるまで攪拌した。この溶液にエタノール680ml、アンモニア水(28%溶液、関東化学社製)230mlを加えた。攪拌しながら、テトラメトキシシラン(信越化学社製)22gをエタノール200ml、水100mlの混合液に溶かし、6時間かけて滴下した。滴下終了後、15時間攪拌した。粒子を遠心分離機を用いて、分離し、エタノールで洗浄した。90℃乾燥し、エタノールを除いた後、450℃で焼成した。得られた粒子は白色粉体であり、BET値は200m2/gであった。
【0075】
得られた白色粉体15gをなすフラスコに封入し、窒素置換し、さらにHMDS3(信越化学社製)を3g加え、30分間150℃で攪拌した。さらに、脱気することで、未反応のHMDS3を除いた。ポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、ZEONEX340R(日本ゼオン社製)9.5gと溶融混練することによって、樹脂中に粉体を20体積%含有する本発明の光学用樹脂材料3を得た。
【0076】
(光学用樹脂材料4の作製)
CATALOID−AS(平均粒子径25nm、触媒化成工業株式会社製、10%アルミナ)100gを純水135mlで希釈した溶液を作製した。この溶液に、室温で3−アミノプロピルトリメトキシシラン2gをゆっくりと滴下した。さらに、この溶液を60℃で10時間攪拌した。室温まで溶液を冷却し、陰イオン交換樹脂であるアンバーライトを加え、溶液のpHが10.4になるまで攪拌した。この溶液にエタノール680ml、アンモニア水(28%関東化学社製)230mlを加えた。攪拌しながら、テトラメトキシシラン(信越化学社製)11.5gをエタノール200ml、水100mlの混合液に溶かし、6時間かけて滴下した。滴下終了後、15時間攪拌した。粒子を遠心分離機を用いて、分離し、エタノールで洗浄した。90℃乾燥し、エタノールを除いた後、450℃で焼成した。得られた粒子は白色粉体であり、BET値は60m2/gであった。
【0077】
得られた白色粉体15gをなすフラスコに封入し、窒素置換し、さらにHMDS3(信越化学社製)を3g加え、30分間150℃で攪拌した。さらに、脱気することで、未反応のHMDS3を除いた。ポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、O−PET17.5gと溶融混練することによって、樹脂中に粉体を20体積%含有する本発明の光学用樹脂材料4を得た。
【0078】
(光学用樹脂材料5の作製)
酸化ジルコニア分散液(平均粒子径3nm、住友大阪セメント社製、10質量%溶液)100gを純水135mlで希釈した溶液を作製した。この溶液に、室温で3−アミノプロピルトリメトキシシラン3.7gをゆっくりと滴下した。さらに、この溶液を60℃で10時間攪拌した。室温まで溶液を冷却し、陰イオン交換樹脂であるアンバーライトを加え、溶液のpHが10.5になるまで攪拌した。この溶液にエタノール680ml、イオン交換水230mlを加えた。攪拌しながら、テトラエトキシシラン(信越化学社製)30gをエタノール200ml、水100mlの混合液に溶かし、6時間かけて滴下した。滴下終了後、15時間攪拌した。粒子を遠心分離機を用いて分離し、エタノールで洗浄した。90℃乾燥し、エタノールを除いた後、450℃で焼成した。得られた粒子は白色粉体であり、BET値は210m2/gである。
【0079】
得られた白色粉体17gをなすフラスコに封入し、窒素置換し、さらにHMDS3(信越化学社製)を3.5g加え、30分間150℃で攪拌した。さらに、脱気することで、未反応のHMDS3を除いた。該粒子をポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、O−PET(鐘紡)14gと溶融混練することによって、樹脂中に粉体を20体積%含有する本発明の光学用樹脂材料5を得た。
【0080】
(光学用樹脂材料6の作製)
酸化ジルコニア分散液(平均粒子径3nm、住友大阪セメント社製、10質量%溶液)100gを純水135mlで希釈した溶液を作製した。次に陰イオン交換樹脂であるアンバーライトを加え、溶液のpHが10.4になるまで攪拌した。この溶液にエタノール680ml、アンモニア水(28%関東化学社製)230mlを加えた。攪拌しながら、テトラエトキシシラン(信越化学社製)34gをエタノール200ml、水100mlの混合液に溶かし、6時間かけて滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。粒子を遠心分離機を用いて、分離し、エタノールで洗浄した。90℃乾燥し、エタノールを除いた後、450℃で焼成した。得られた粒子は白色粉体であり、BET値は130m2/gであった。
【0081】
得られた白色粉体17gをなすフラスコに封入し、窒素置換し、さらにHMDS3(信越化学社製)を3.5g加え、30分間150℃で攪拌した。さらに、脱気することで、未反応のHMDS3を除いた。該粒子をポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、O−PET(鐘紡社製)14gと溶融混練することによって、樹脂中に粉体を20体積%含有する比較例の光学用樹脂材料6を得た。
【0082】
(光学用樹脂材料7の作製)
アルミナゾル520(平均粒子径3nm、日産化学製、20質量%溶液)100gを純水270mlで希釈した溶液を作製した。陰イオン交換樹脂であるアンバーライトを加え、溶液のpHを10.4になるまで攪拌した。この溶液にエタノール1200ml、アンモニア水(28%溶液、関東化学社製)400mlを加えた。攪拌しながら、テトラエトキシシラン(信越化学社製)100gをエタノール350ml、純水175mlの混合溶液に溶かし、6時間かけて滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。粒子を遠心分離機を用いて、分離し、エタノールで洗浄した。90℃乾燥し、エタノールを除いた後、450℃で焼成した。得られた粒子は白色粉体であり、BET値は250m2/gであった。
【0083】
得られた白色粉体15gをなすフラスコに封入し、窒素置換し、さらにHMDS3(信越化学社製)を3g加え、30分間150℃で攪拌した。さらに、脱気することで、未反応のHMDS3を除いた。ポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、ZEONEX340R(日本ゼオン社製)14.5gと溶融混練することによって、樹脂中に粉体を20体積%含有する比較例の光学用樹脂材料7を得た。
【0084】
(光学用樹脂材料8の作製)
酸化ジルコニア分散液(平均粒子径3nm、住友大阪セメント社製、10質量%溶液)100gを純水135mlで希釈した溶液を作製した。この溶液にエタノール680ml、純水230mlを加えた。攪拌しながら、テトラエトキシシラン(信越化学社製)34gをエタノール200ml、水100mlの混合液に溶かし、6時間かけて滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。粒子を遠心分離機を用いて、分離し、エタノールで洗浄した。90℃乾燥し、エタノールを除いた後、450℃で焼成した。得られた粒子は半透明の白色固体であった。ただしBET測定時の吸着等温線より、粒子同士の融着が確認された。
【0085】
得られた白色固体17gを粉砕し、白色粉体にし、なすフラスコに封入し、窒素置換し、さらにHMDS3(信越化学社製)を3.5g加え、30分間150℃で攪拌した。さらに、脱気することで、未反応のHMDS3を除いた。該粒子をポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、O−PET(鐘紡社製)14gと溶融混練することによって、樹脂中に粉体を20体積%含有する比較例の光学用樹脂材料8を得た。
【0086】
(光学用樹脂材料9の作製)
アルミナゾル520(平均粒子径3nm、日産化学社製、20質量%溶液)100gを純水270mlで希釈した溶液を作製した。この溶液にエタノール1200ml、アンモニア水(28%溶液、関東化学社製)400mlを加えた。攪拌しながら、テトラエトキシシラン(信越化学社製)100gをエタノール350ml、純水175mlの混合溶液に溶かし、6時間かけて滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。粒子を遠心分離機を用いて、分離し、エタノールで洗浄した。90℃乾燥し、エタノールを除いた後、450℃で焼成した。得られた粒子は半透明の白色固体であった。ただしBET測定時の吸着等温線より、粒子同士の融着が確認された。
【0087】
得られた白色粉体15gをなすフラスコに封入し、窒素置換し、さらにHMDS3(信越化学社製)を3g加え、30分間150℃で攪拌した。さらに、脱気することで、未反応のHMDS3を除いた。ポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、ZEONEX340R(日本ゼオン社製)14.5gと溶融混練することによって、樹脂中に粉体を20体積%含有する比較例の光学用樹脂材料9を得た。
【0088】
〔試料の作製〕
上記得られた光学用樹脂材料1〜9を射出成形して、それぞれ光学用樹脂材料の試料1〜9(厚さ3mm)を得た。
【0089】
〔試料の評価〕
(dn/dTの測定)
上記得られた試料を自動屈折計KPR−200(カルニュー光学工業社)製を用いて、波長587.5nmの屈折率を試料温度を10〜60℃まで変化させて測定した。10〜60℃での屈折率の温度変化率をdn/dTとして求めた。
【0090】
(透過率の測定)
上記得られた試料を分光光度計UV−3150(島津製作所社製)を用いて587.5nmの透過率を測定した。なお、透過率が70%未満は、透明度が低いため光学用途に適さないと判断した。
【0091】
以上により得られた結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明の試料は、比較例に対し、屈折率の温度変化率を維持しながら、透明性が高いことが分かる。
【0094】
さらに、上記光学用樹脂材料を用いて光学素子を作製して評価した結果、本発明の光学素子は、良好な光学特性を持ち、かつCDやDVDの記録、再生に用いられるBlue−Rayを長時間照射しても、白濁化等の材料変質耐性に優れていることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の光学素子(光学用樹脂レンズ)を対物レンズとして適用した光ディスク用のピックアップ装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0096】
1 光ピックアップ装置
2 レーザダイオード
3 ビームスプリッタ
4 対物光学素子(対物レンズともいう)
5 光ディスク
5a 保護基板
5b 情報記録面
6 センサーレンズ
7 センサー
8 コリメータ
9 1/4波長板
10 絞り
11 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機微粒子が分散した酸性の溶液に塩基性基含有シランカップリング剤を添加し、溶液を塩基性に調整し、該溶液に対して無機酸化物前駆体を滴下することによって、前記無機微粒子表面に無機酸化物層を形成することを特徴とする光学用無機材料の製造方法。
【請求項2】
前記塩基性基含有シランカップリング剤の塩基性基がアミノ基であることを特徴とする請求項1に記載の光学用無機材料の製造方法。
【請求項3】
前記塩基性基含有シランカップリング剤が、3−アミノプロピルトリメトキシシランまたは3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学用無機材料の製造方法。
【請求項4】
前記無機酸化物前駆体が、テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法。
【請求項5】
前記無機微粒子が、酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法によって得られた光学用無機材料を、さらに、疎水化処理することを特徴とする光学用無機材料の製造方法。
【請求項7】
塩基性基含有シランカップリング剤を添加し、さらに塩基性物質を加えることによって溶液を塩基性に調整することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法。
【請求項8】
前記無機微粒子の一次粒子径が1〜30nmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学用無機材料の製造方法によって得られることを特徴とする光学用無機材料。
【請求項10】
請求項9に記載の光学用無機材料を熱可塑性樹脂に含有させることを特徴とする光学用樹脂材料。
【請求項11】
請求項10に記載の光学用樹脂材料を成形したものであることを特徴とする光学素子。

【図1】
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【公開番号】特開2008−74923(P2008−74923A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254139(P2006−254139)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】