説明

光学用積層ポリエステルフィルム

【課題】 ディスプレイ用部材として使用した際に高度な輝度を実現し、高品質な画像を与えることができるポリエステルフィルムを安価で提供する。
【解決手段】 少なくとも2種類の層から構成されたポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の表層がエチレンナフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなり、他の層がエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなり、少なくとも片面に塗布層を有することを特徴とする光学用積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明、光学用途に用いられる多層ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、高い光線透過率、寸法安定性に優れたポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のノート型パソコンのカラー化、小型軽量化に代表されるように、携帯用電気機器の小型軽量化、カラー化の普及は著しいものがある。特に、カラー液晶ディスプレイを用いた商品は、カラーノート型パソコンに限らず、携帯用カラー液晶テレビ、ビデオ一体型カラー液晶テレビ、ハンディラベルプリンター、携帯用通信機器など、多種多様なものがある。
【0003】
このような機器においては、携帯用とするためバッテリーが用いられ、その稼働時間には限りがある。特に、液晶ディスプレイ、中でもカラー液晶ディスプレイの消費電力は、バッテリーによる稼働時間を大きく左右するものであり、この消費電力を低減することにより、上記した携帯用電気機器の実用的な商品価値を高めることができる。同時に省エネルギー化の達成は地球環境的にも有意義なことである。
【0004】
消費電力を低減する方法としては、液晶ディスプレイに用いられるバックライトの消費電力を抑制することが最も簡単な方法である。しかし、この場合、バックライトの輝度が低下するので、液晶ディスプレイの輝度も低下し、表示機能が著しく低下することになる。
【0005】
この問題を解決するため、バックライトの光学的効率を改善する方法が提案されている。例えば片面に、プリズム列のレンズ単位を多数形成したレンズシート、あるいはレンチキュラー列のレンズ単位を多数形成したシートなどのレンズシートを、バックライトの導光体の出射光面側に設けたバックライトなどが提案されている。
【0006】
このようなレンズシートはバックライトからの出射光を屈折作用によってディスプレイ正面方向に向けることによって、正面輝度を向上させるものである。通常、レンズシートは、その成形性の良さからポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などの透明性に優れたプラスチック樹脂を基材とし、少なくとも片面に、レンズ単位を多数形成した構成がとられている。
【0007】
一方、レンズシートとして用いられているポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有している。
【0008】
プリズムシートを用いた光学製品において、明るく鮮明な画像を得るために、基材として用いられるポリエステルフィルムはその使用形態から透明性が良好で、かつ画像に影響を与える異物やキズ等の欠陥がないことが必要となる。
【0009】
また、近年ディスプレイのコストダウンは益々進んでおり、できるだけ安価に上記品質に見合う構成で製品を作ることが必要である。
【0010】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートは比較的安価で耐熱性に優れているため、寸法安定性が要求されるディスプレイ用途に広く用いられている。しかし、ポリエチレンテレフタレートは面方向屈折率が高く、光線透過率という面で劣る。そのため光学特性改善のために屈折率を制御した反射防止層を積層する必要があり、また高分子樹脂を用いた場合は光学機能樹脂にたいする易接着性を持たせる場合屈折率の制限が生じ、理想的な透過率を得ることができない。
【特許文献1】特開2004−98324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、プリズムシート等の光学フィルムとして使用した際に、寸法安定性に優れかつ透過率にも優れるため、ディスプレイ用の部材として使用した際に高度な輝度を実現し、高品質な画像を与えることができ、従来の構成に比べほぼ同等のコストにも関わらず高い透過率を達成できるポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも2種類の層から構成されたポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の表層がエチレンナフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなり、他の層がエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなり、少なくとも片面に塗布層を有することを特徴とする光学用積層ポリエステルフィルムに存する。
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のフィルムを構成するポリエステルは、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸が好ましく、これらのほかに、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの公知のジカルボン酸の一種以上を、共重合成分として含んでいてもよい。また、ジオール成分としては、エチレングリコールが好ましく、これらのほかに、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの公知のジオールの一種以上を、共重合成分として含んでいても
よい。
【0014】
また、ポリエステルの構成成分としては、上記のジカルボン酸成分およびジオール成分のほか、種々の酸成分およびアルコール成分を含むことができる。例えば、p−オキシ安息香酸のようなオキシカルボン酸、安息香酸、ベンゾイル安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物は修飾成分として、トリメシン酸、トリメリト酸、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能性化合物は共重合成分として、生成物ポリエステルが実質的に線状の高分子を保持し得る範囲内で、使用することができる。
【0015】
本発明におけるポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等公知の触媒を使用してよい。
【0016】
なお、本発明で用いるポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施してもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが好ましい
【0017】
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0018】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0019】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜5μmが好ましい。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、透明性が劣る傾向がある。
【0020】
さらに、ポリエステル中の粒子含有量は、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0021】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0022】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料等を添加することができる。また用途によっては、紫外線吸収剤特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
【0023】
本発明のフィルムは、共押出法を用いた積層構造であることが好ましく、少なくとも一方の表層の主たる繰り返し成分としてポリエチレンナフタレートが含まれることが必要である。ポリエチレンナフタレートはその分子構造のため、ポリエチレンテレフタレートよりも屈折率が高い。光学機能樹脂に対する易接着層を設けた場合、フィルムの透過率を上げる際の理想的な屈折率は下記式を満たすことが好ましい。
【0024】
(空気の屈折率)+(ポリエステルの表層の屈折率)=2×(易接着層の屈折率)
【0025】
一方でポリエステルの表層にポリエチレンテレフタレートを用いた場合、易接着層には高分子系の樹脂が用いられることが多く、その屈折率が理想の値よりも大きくなってしまう。その結果、上記式の左辺の値が小さく、理想的な透過率を得ることができない。一方で屈折率の大きなポリエチレンナフタレートを用いた場合、ポリエチレンテレフタレートよりも屈折率が大きいため、理想的な屈折率に近づくため、透過率が高くなる。
【0026】
主たる繰り返し単位としてのポリエチレンナフタレートとしては、少なくとも60モル%以上、80モル%以上の割合で含まれることがより好ましい。ポリエチレンナフタレートの割合が60モル%以下の場合、その層の屈折率が理想の値が低くなり、透過率が低くなる傾向がある。
【0027】
表層の厚みについては特に限定されるものではないが、1μm以上かつ基材の厚みの1/4程度であることが好ましい。かかる厚みが1μm未満では、加工中の熱履歴等により、内層に含有されているオリゴマー(環状三量体)がフィルム表面に析出し、生産ラインの汚染やフィルム表面の異物量の増加が見られる可能性があり、一方、総厚みの1/4の厚さより厚いと表裏の材料組成の違いによるカール等の寸法安定性の低下が考えられる。
【0028】
少なくとも一方の表層以外の層は主たる繰り返し単位がポリエチレンテレフタレート成分からなることが寸法安定性および製造コストを考えた場合好ましい。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常9〜300μm、好ましくは20〜250μm、さらに好ましくは25〜200μmの範囲である。
【0030】
本発明のフィルムは、フィルムヘーズが0〜3.0%、好ましくは0〜1.5%、さらに好ましくは0〜1.2%、特に好ましくは0〜1.0%である。本発明のフィルムは、その優れた透明性を有するために光学用途に広く用いられるが、フィルムヘーズが3.0%を超える場合には、光学用としては不適当となる場合がある。
【0031】
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0032】
まず、公知の手法により乾燥したまたは未乾燥のポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0033】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを、好ましくはMD方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、TD方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0034】
本発明においては、前記のとおりポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることができる。層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B構成、またはA/B/A構成やA/B/C構成、またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。例えばA原料として特定の粒子を用いてA層の表面形状を設計し、B原料としては粒子を含有しない原料を用い、A/B構成のフィルムとすることができる。この場合B層の原料を自由に選択できることからコスト的な利点などが大きい。また当該フィルムの再生原料をB層に配合しても表層であるA層により表面粗度の設計ができるので、さらにコスト的な利点が大きくなる。
【0035】
特に本発明のフィルムは、光学用途に用いるため加工層を形成する際の塗布性や接着性を向上することを目的として、少なくとも一方の面に下引き層としての塗布層を設ける必要がある。かかる塗布層の形成に当たっては、フィルムを製造する工程内、特に縦方向に延伸した後、横方向の延伸の前に行う方法はインラインコートと呼ばれており、極めて薄い塗布層を形成できる点、塗布液の乾燥や硬化反応を製膜工程内で実施できることなどの点で好ましい。かかる塗布層としては、架橋剤と各種バインダー樹脂との組み合わせからなるものが好ましく、バインダー樹脂としては接着性の観点から、通常ポリエステル、アクリル系ポリマーおよびポリウレタンの中から選ばれたポリマーを採用する。上記のポリマーは、それぞれそれらの誘導体をも含むものとする。ここでいう誘導体とは、他のポリマーとの共重合体、官能基に反応性化合物を反応させたポリマーを指す。
【0036】
なお、必要に応じてフィルムの製造後にオフラインコートでコートしてもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶剤系いずれでもよいが、インラインコーティングの場合は、水系または水分散系が好ましい。
【0037】
本発明で塗布剤として用いる、上記のポリエステル、アクリル系ポリマー、ポリウレタンの中で特に好ましいポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上、さらには40℃以上のものであり、ポリウレタンの中でもポリエステルポリウレタンであり、カルボン酸残基を持ち、その少なくとも一部はアミンまたはアンモニアを用いて水性化されているポリマーである。
【0038】
架橋剤樹脂としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられるが、塗布性、耐久接着性の点で、メラミン系樹脂が特に好ましい。 メラミン系樹脂としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。
【0039】
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させることが好ましい。塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、10重量%を超えると、フィルムの透明性を阻害し、画像の鮮明度が落ちる傾向がある。
【0040】
無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。一方有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
【0041】
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は、透明性を阻害しない適切な添加量として10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。
【0042】
また、塗布層は、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
【0043】
塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが必要である。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0044】
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
本発明において塗布層は第1の表層の反対面に形成する必要があるが、第1の表層側に形成する必要はない。これはコート層のコスト、リサイクル時の着色を考えた場合メリットは大きい。
【0045】
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.01〜0.5μm、好ましくは0.015〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.01μm未満の場合は、本発明の効果が十分に発揮されない恐れがある。塗布層の厚さが0.5μmを超える場合は、フィルムが相互に固着しやすくなったり、特にフィルムの高強度化のために塗布処理フィルムを再延伸する場合は、工程中のロールに粘着しやすくなったりする傾向がある。上記の固着の問題は、特にフィルムの両面に同一の塗布層を形成する場合に顕著に現れる。
【発明の効果】
【0046】
本発明のフィルムは、プリズムシート等の光学フィルムとして使用した際に、寸法安定性に優れかつ透過率にも優れるため、ディスプレイ用の部材として使用した際に高度な輝度を実現し、高品質な画像を与えることができ、従来の構成に比べほぼ同等のコストにも関わらず高い透過率を達成できるポリエステルフィルムを提供することができるものであり、工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0048】
(1)極限粘度
測定試料をフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量部)の溶媒に溶解させて濃度c=0.01g/cmの溶液を調製し、30℃にて溶媒との相対粘度ηを測定し、極限粘度[η]を求めた。
【0049】
(2)フィルムヘーズ、全光線透過率
JIS−K−7105に準じて日本電色工業社製積分球式濁度計「NDH−300A」により、フィルムヘーズおよび全光線透過率を測定した。
【0050】
(3)厚さ
マイクロメータにより求めた。
【0051】
(4)熱収縮率
熱収縮率(%)
無張力状態で180℃雰囲気中5分間、熱処理しその前後のサンプルの長さを測定することにより次式にて計算した。測定は、フィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)についてそれぞれ実施した。
熱収縮率(%)=(L1−L0)÷L0×100
(上記式中、L0は熱処理前のサンプル長(mm)、L1は熱処理後のサンプル長(mm)をそれぞれ意味する)
【0052】
以下に実施例および比較例を示すが、これに用いたポリエステルの製造方法は次のとおりである。
【0053】
〈ポリエステルの製造〉
(ポリエステルAの製造方法)
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.03部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.680に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルAの極限粘度は0.680で
あった。
【0054】
(ポリエステルBの製造方法)
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル100部、エチレングリコール65部およびエステル交換触媒として酢酸マグネシウム0.09部を使用し、常法に従いエステル交換反応を行った後、エチレングリコールに分散させた平均粒子0.35μmの球状シリカを0.36部添加した。ついで重合触媒として三酸化アンチモン0.04部を添加した後、常法に従って重合反応を進め、極限粘度0.55のポリマーを得、次いで固層重合を行い、最終的に極限粘度0.63、融点270℃のポリエチレンナフタレートを得た。
【0055】
(ポリエステルCの製造方法)
ポリエステルAの製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径3.5μmのシリカ粒子を3部、三酸化アンチモン0.03部を加えて、極限粘度0.700に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステルAの製造方法と同様の方法を用いてポリエステルCを得た。得られたポリエステルCは、極限粘度0.700であった。
【0056】
実施例1:
前述のポリエステルBを100重量部とした層をX層、ポリエステルA100重量部をY層の原料、ポリエステルA、Cをそれぞれ88重量部、12重量部としたものをZ層の原料として、3台のベント式二軸押出機に各々を供給し、それぞれ285℃で溶融し、X層、Z層を最外層(表層)、Y層を中間層とする3種3層(X/Y/Z)の層構成で共押出して、40℃に冷却したキャスティングドラム上で冷却固化させて未延伸フィルムを得た。次いで、ロール周速差を利用して縦延伸温度88℃で縦方向に3.1倍延伸した。その後以下に示した塗布剤をX層側に塗布した後テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、235℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩処理を行った後、フィルムをロール状に巻き上げ、厚さ100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは5/90/5μmであった。塗布層の厚みは0.08μmであった。
(塗布剤の組成:重量比)
a/b/c/d=47/20/30/3
ここで、aは、テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸/エチレングリコール/ジエチレングリコール/トリエチレングリコール=31/16/3/22/21(モル比)のポリエステル分散体;bは、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリルニトリル/N−メチロールメタアクリルアミド=45/45/5/5(モル比)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤);cは、ヘキサメトキシメチルメラミン(メラミン系架橋剤);dは、粒子径0.06μmの酸化ケイ素の水分散体(無機粒子)である。
【0057】
実施例2:
実施例1において、Z層の原料配合をポリエステルBを100重量部とし、塗布剤をZ層側にも塗工した以外は、実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。
【0058】
比較例1:
実施例1において、X層の原料配合をポリエステルA、Cをそれぞれ88重量部、12重量部とした以外は実施例1と同様にして、厚み100μmのフィルムを得た。得られたフィルムは実施例1と比較して全光線透過率が低く、光学用途として用いた場合性能が劣るものであった。
【0059】
比較例2:
実施例2において、X層およびZ層側の原料配合をポリエステルA、Cをそれぞれ88重量部、12重量部とした以外は実施例2と同様にして、厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは実施例2と比較して全光線透過率が低く、光学用途として用いた場合性能が劣るものであった。
【0060】
得られたフィルムの物性値および光学部材適性について表1にまとめて示す。本発明の要件を満たすフィルムは、光学用としての適性が高いことが分かる。
【0061】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のフィルムは、例えば、光学用のフィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の層から構成されたポリエステルフィルムであって、少なくとも一方の表層がエチレンナフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなり、他の層がエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなり、少なくとも片面に塗布層を有することを特徴とする光学用積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2009−184238(P2009−184238A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26909(P2008−26909)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】