説明

光学用積層ポリエステルフィルム

【課題】 ディスプレイ等の表示部材として用いられたときの視認性、特に黒の色味再現性に優れ、傷つき防止、作業性、生産性、ハードコート層との密着性に優れた光学用積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 両最外層に粒子を含有する、少なくとも3層以上のポリエステル層からなる積層フィルムの少なくとも片面に、当該積層フィルの製膜工程内で設けられた塗布層を有し、当該塗布層の絶対反射率が波長400〜800nmの任意の波長に対して4.0%以上であり、550nmのSCE値が0.60%以下であることを特徴とする光学用積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用積層ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、ディスプレイ等の表示部材として用いられたときの視認性、特に黒の色味再現性に優れ、傷つき防止、作業性、生産性、ハードコート層との密着性に優れた光学用積層ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、耐薬品性などに優れ、包装材料、電気絶縁材料、金属蒸着材料、製版材料、磁気記録材料、表示材料、転写材料、窓貼り材料などを始めとして多くの用途で使用されている。
【0003】
特に最近では、透明タッチパネル用、液晶表示装置に用いられるプリズムシート用のベースフィルムやブラウン管、LCD、PDP等の、いわゆるフラットディスプレイの前面パネルガラス表面貼り付け用に、帯電防止、反射防止、電磁波シールド等の機能層を設けた保護フィルムのベースフィルム用などの各種光学用途に広く用いられている。
【0004】
反射防止フィルムとしては、一般的には、表面機能層として高屈折率層と低反射率層を交互に積層させることで、光の干渉現象を利用し、外光や屋内蛍光灯の反射防止を行う方法が採用されている。
【0005】
近年、LCD、PDPなどの表示部材等の用途では、さらなる大画面化、高画質化、および高級化が求められ、それに伴って特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉ムラ)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長蛍光灯が主流となってきており、より干渉ムラが見えやすくなっており、ポリエステルフィルム上に積層する塗布層の光学設計が重要になってきている。さらに表示部材として光学欠点を少なくすることは重要であり、従来、フィルム表面への傷入り防止としては滑剤粒子を添加する方法が用いられてきたが、滑剤粒子添加量が多くなると表示部材としてのクリアー感が損なわれ、黒の色味再現性が低下し、問題となっている。
【特許文献1】特開2003−48289号公報
【特許文献2】特開2007−130956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、表示部材として用いられたときの外光反射による干渉ムラが少なく、黒の色味再現性に優れ、傷つき防止、作業性、ハードコート層との接着性に優れた有用なフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、特定構成のポリエステルフィルムによれば上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、両最外層に粒子を含有する、少なくとも3層以上のポリエステル層からなる積層フィルムの少なくとも片面に、当該積層フィルの製膜工程内で設けられた塗布層を有し、当該塗布層の絶対反射率が波長400〜800nmの任意の波長に対して4.0%以上であり、550nmのSCE値が0.60%以下であることを特徴とする光学用積層ポリエステルフィルムに存する。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムは、少なくとも3層以上の多層フィルムであることが必須要件である。本発明にいう光学用積層ポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押し出される、いわゆる押出法により、押し出されたポリエステルフィルムであって、必要に応じ、縦方向および横方向の二軸方向に配向させたフィルムである。
【0010】
本発明において、ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト(PEN)等が例示される。
【0011】
また、本発明で用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体である。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、および、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または、二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0012】
本発明のフィルムは後述するように塗布層を有するものであるが、当該塗布層表面の波長550nmのSCE値が0.60%以下である必要があり、好ましくは0.59%以下、さらに好ましくは0.58%以下である。本発明のフィルムは、その優れた透明性を有するために光学用途に広く用いられるが、SCE値が0.60%を超える場合は、黒の色味再現性が劣るため光学用表示部材として不適切となってしまう。
【0013】
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた塗布層側の絶対反射率は、波長400〜800nmの任意の波長において4.0%以上、好ましくは4.5%以上であり、塗布層を積層しないポリエステルフィルムの絶対反射率未満であることが好ましい。絶対反射率が4.0%を下回る場合には、フィルムの塗布層上に、ハードコート層、反射防止層等の表面機能層を設けたときの反射防止機能が悪化することにより、干渉ムラが強くなり、視認性が低下する場合がある。
【0014】
本発明のフィルムの全フィルム厚みは、通常50〜300μm以上、好ましくは75〜250μmである。全フィルム厚みが50μm未満の場合、フィルムの腰が弱いため、枚葉状に打ち抜き後、1枚毎に実施される最終検査やディスプレイへの貼り付け時の作業性が悪くなる傾向があり、300μmより厚いとその剛性のため作業性が悪化することがある。
【0015】
本発明のフィルムは、ハードコート層の耐久密着性の向上のためにも、フィルム表面へのオリゴマー析出量が15.0mg/m以下であることが好ましい。
【0016】
熱処理によるフィルム表面へのオリゴマー析出量を上記の範囲とするため、オリゴマーの含有量の少ないポリエステルを用いる方法が挙げられる。また、共押出しによる積層フィルムの場合は、最外層にオリゴマー含有量の少ないポリエステルを用いることで、熱処理後のフィルム表面へのオリゴマー析出量を上記の範囲に抑えることができる。具体的にはポリエステルフィルムに含まれるオリゴマー量を5000ppm以下、さらには4000ppm、特に3000ppm以下とすることにより、加熱された際にフィルム表面に析出するオリゴマーを防ぐことができる。
【0017】
ポリマー中のオリゴマーは、製膜での溶融工程などにより増加することが知られており、その増加量は、ポリマー中の含水率、溶融時の温度や滞留時間などに強く影響を受け、約100〜5000ppm程度増加すると考えられる。
【0018】
ポリエステル中のオリゴマー量を低減する方法としては、従来公知の固相重合を用いることができる。
【0019】
積層構造のフィルムの場合、最外層厚みは、片側のみの厚みで、通常3μm以上であり、総厚の1/4以下であることが好ましい。かかる厚みが3μm未満では、加工中の熱履歴等により、内層に含有しているオリゴマー(環状三量体)がフィルム表面に析出し、生産ラインの汚染やフィルムヘーズが悪化する場合があり、総厚の1/4の厚さより厚いとフィルムの巻き取り性向上のため最外層フィルム中に配合している滑剤粒子起因のヘーズ値(特に内部ヘーズ値)が高くなり、フィルムの透明性が悪化する傾向がある。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムの最外層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合する。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0021】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0022】
ポリエステルフィルム中に配合する粒子の平均粒径としては、特に限定されるものではないが、通常0.02μm〜3μm、好ましくは0.02μm〜2.5μm、さらに好ましくは0.02μm〜2μmの範囲である。平均粒径が0.02μm未満の粒子を用いた場合には、充分な易滑性の付与が出来ないため、フィルム製造工程における巻き特性が劣る傾向がある。また、平均粒径が3μmを超える場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎてフィルムがヘージーとなる場合がある。
【0023】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.0005〜0.5重量%、好ましくは0.001〜0.3重量%の範囲である。粒子含有量が0.0005重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、0.5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0024】
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0025】
以下、本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0026】
公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0027】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムは、表面硬度の向上のため、ハードコート層を設けて用いられる。この場合、ポリエステルフィルムは、一般的に不活性であることから接着性に乏しく、かかるハードコート層との接着性を向上させるために、接着性向上のための塗布層をあらかじめ設けることが必要である。
【0029】
かかる塗布層を形成する方法としては、テンター入口前(配向結晶化完了前)にコートしてテンター内で乾燥する、いわゆるインラインコート法が好ましい。
ハードコート層との接着性向上のための塗布層としては、接着性を向上させるものであれば特に限定されるものではないが、本発明においては、絶対反射率が、波長400〜800nmの任意の波長において4.0%以上となる塗布層を有することを必須の要件とするものである。
【0030】
塗布層としては、塗布層上に種々の表面機能層が積層されたときの反射防止能の向上や透明性の向上、種々の表面機能層との接着性を向上させるためにバインダーポリマーを使用するのが好ましい。
【0031】
本発明において使用する「バインダーポリマー」とは高分子化合物安全性評価フローキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義する。
【0032】
バインダーポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。表面機能層との接着性向上という点では、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂がより好ましく用いられ、さらに絶対反射率を高く設計できるという点で、これらの化合物の中に芳香族を含有することがより好ましい。
【0033】
さらに塗布層中には本発明の主旨を損なわない範囲において、架橋剤を併用してもよく、種々公知の樹脂が使用できるが、メラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。絶対反射率が高く設計できるという点で、メラミン化合物がより好ましい。
【0034】
本発明におけるメラミン化合物としては、アルキロールまたはアルコキシアルキロール化したメラミン系化合物であるメトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン等が例示され、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。
【0035】
また、塗布層中には金属キレート化合物等のカップリング剤を使用することもでき、具体的には、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクタンジオレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンオキサレート等のチタン化合物、あるいは、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムステアレート等のジルコニウム化合物が挙げられる。
【0036】
また、塗布層の固着性、滑り性改良を目的として、不活性粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられる。
【0037】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0038】
上述の一連の化合物を溶液または分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。
【0039】
さらにインラインコーティングの場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0040】
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の塗布量(乾燥後)に制限はないが、通常0.005〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/mの範囲である。塗布量が0.005g/m未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合がる。一方、1g/mを超えて塗布する場合には、滑り性低下等の不具合を生じる場合がある。
【0041】
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0042】
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムには予め、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0043】
また、本発明のポリエステルフィルムを光学用として用いる場合、表面硬度向上のために設けたハードコート層に他の機能性を付与する目的で、帯電防止剤、着色剤、導電材料等を加えてもよく、さらにその上に、外光の映り込みや静電気による電撃、ゴミ付着防止、さらには電磁波シールドを目的とした機能性多層薄膜を形成してもよい。
【0044】
本発明において用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0045】
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、蛍光増白剤、潤滑剤、遮光剤、マット化剤、および染料、顔料などの着色剤等を配合してもよい。また、必要に応じ、フィルムの滑り性や耐摩耗性を改良する目的などのために、ポリエステルに対し、不活性な無機または有機の微粒子などを配合することもできる。
【発明の効果】
【0046】
発明のポリエステルフィルムによれば、表示部材として用いられたときの外光反射による干渉ムラが少なく、黒の色味再現性に優れ、傷つき防止、作業性、ハードコート層との接着性に優れた有用なフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0048】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0049】
(2)平均粒径(d50)
(株)島津製作所社製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いてストークスの抵抗則にもとづく沈降法によって粒子の大きさを測定した。
【0050】
(3)ポリエステル中のオリゴマー(環状三量体)含有量
所定量のポリエステル原料、またはポリエステルフィルムをo−クロロフェノールに溶解した後、テトラヒドロフランで再析出して濾過し、線状ポリエチレンテレフタレートを除いた後、次いで得られた濾液を液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してポリエステル中に含まれるオリゴマー(環状三量体)量を求め、この値を測定に用いたポリエステル量で割って、ポリエステル中に含まれるオリゴマー量(環状三量体)とする。液体クロマトグラフィーで求めるオリゴマー(環状三量体)量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して作成した。
【0051】
液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0052】
(4)積層ポリエステル層の厚み
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を積層厚さとした。
【0053】
(5)ハードコートの接着性
得られたフィルムの塗布層上にハードコート樹脂を硬化後の厚さが3μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離150mmにて約15秒間照射し、ハードコートフィルムを得た。ハードコート樹脂としては、日本化薬株式会社製のKAYARAD(登録商標)と日本合成化学工業株式会社製の紫光(登録商標)の2:1混合液を塗布し、80℃で1分間乾燥し溶剤を除去した。当該ハードコート層に1インチ幅に碁盤目が100個になるようクロスカットを入れ、直ちに、同一箇所について3回セロテープ(登録商標)による急速剥離テストを実施し、剥離面積により評価した。判定基準は以下のとおりである。
【0054】
○:碁盤目剥離個数=0
△:1≦碁盤目剥離個数≦20
×:21<碁盤目剥離個数
【0055】
(6)フィルムヘーズ
JIS K 7136に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDHにより濁度を測定した。
【0056】
(7)SCE値
測定面の裏面にニチバン社製の黒色テープを貼り、コニカミノルタ社製分光測色計CM−3700dにより550nmのSCE値を測定した。
【0057】
(8)黒の色味評価
上記(5)と同様の方法で得られたハードコートフィルムのハードコート層裏面にニチバン社製の黒色テープを貼り、室内蛍光灯下にてハードコート面側の黒の色味を下記基準にて目視判定した。
○:クリアー感があり、鮮やかな黒色を呈している
×:クリアー感がなく、黒色がぼけている
【0058】
(9)塗布層表面の絶対反射率最小値の測定方法
あらかじめ、ポリエステルフィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT−50)を貼り、分光光度計(株式会社島津製作所社製UV−3100PC型)を使用して入射角5°で塗布層面を波長範囲400〜800nm、サンプリングピッチ1nm、スリット幅2nm、スキャン速度低速の絶対反射率を測定し、その最小値を評価した。
【0059】
(10)干渉ムラの評価方法
上記(5)と同様にハードコート層を設け、得られたハードコートフィルムのハードコート面を3波長光域型蛍光灯下で目視にて干渉ムラを観察し、視認性が良好ならば○、視認性の悪化が確認できれば×とした。
【0060】
以下の実施例および比較例で使用したポリエステルの製造方法は以下のとおりである。
〈ポリエステルの製造〉
[エステル(A)の製造方法]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63、オリゴマー(環状三量体)の含有量は0.83重量%であった。
【0061】
[ポリエステル(B)の製造方法]
ポリエステル(A)を、予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.75、オリゴマー(環状三量体)含有量0.24重量%のポリエステル(B)を得た。
【0062】
[ポリエステル(C)の製造方法]
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、平均粒子径1.6μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.2部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は、極限粘度0.65、オリゴマー(環状三量体)含有量0.82重量%であった。
【0063】
塗布層を構成する化合物は以下のとおりである。
(塗布剤の調整)
ポリエステル樹脂:(a1)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸/エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=28/20/2/35/10/5(mol%)
【0064】
ポリエステル樹脂:(a2)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=84/13/3//80/20(mol%)
【0065】
ウレタン樹脂:(b)
下記の方法で得られたウレタン樹脂水性塗料を使用した。すなわち、先ず、テレフタル酸664部、イソフタル酸631部、1,4−ブタンジオール472部、ネオペンチルグリコール447部から成るポリエステルポリオールを得た。次いで、得られたポリエステルポリオールに、アジピン酸321部、ジメチロールプロピオン酸268部を加え、ペンダントカルボキシル基含有ポリエステルポリオールAを得た。更に、上記のポリエステルポリオールA1880部にヘキサメチレンジイソシアネート160部を加えてウレタン樹脂水性塗料を得た。
【0066】
アクリル樹脂:(c)
メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/N−メチロールメタアクリルアミド=45/45/5/5(モル比)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
【0067】
ヘキサメトキシメチルメラミン:(d)
チタン化合物:(e1) チタントリエタノールアミン
チタン化合物:(e2) チタンラクテート
粒子:(f) 平均粒径65nmのシリカゾル
塗布液I:(a1)/(b)/(e1)/(e2)/(f)=40/12/30/15/3
塗布液II:(a2)/(b)/(d)/(f)=35/32/30/3
塗布液III :(a1)/(c)/(d)/(f)=47/20/30/3
【0068】
実施例1:
上記ポリエステル(B)、(C)をそれぞれ95%、5%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(A)100%の原料をB層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、40℃に冷却したキャスティングドラム上に、2種3層(ABA)で、厚み構成比がA:B:A=5:90:5になるように共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度82℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、横延伸乾燥後の塗布量が0.1g/mとなるよう液濃度を調整した水性塗布液Iを塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で3.7倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に弛緩0%で、その後のレール幅は一定とし、巻取り40m/分の生産速度でフィルムをロール状に巻き上げ、両面に塗布層を有する厚さ100μm、フィルムヘーズ0.5%の積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの表面には3波長蛍光灯下目視可能な傷がほとんどないものであった。評価結果を下記表1に示す。
【0069】
実施例2:
実施例1において、A層の原料をポリエステル(B)/ポリエステル(C)=97.5/2.5とし、塗布液を水性塗布液IIとした以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのフィルムヘーズ値は0.4%で、表面には3波長蛍光灯下目視可能な傷がほとんどないものであった。
【0070】
比較例1:
実施例1において、A層の原料をポリエステル(B)/ポリエステル(C)=80/20とした以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのフィルムヘーズは1.1%で、表面には3波長蛍光灯下目視可能な傷がほとんどないものであった。
【0071】
比較例2:
実施例1において、A層の原料をポリエステル(B)/ポリエステル(C)=87.5/12.5とした以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのフィルムヘーズは0.7%で、表面には3波長蛍光灯下目視可能な傷がほとんどないものであった。
【0072】
比較例3:
実施例1において、A層の原料をポリエステル(B)のみとした以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのフィルムヘーズは0.3%で、表面には3波長蛍光灯下目視可能な傷が多数あり、光学用フィルムとして見劣りするものであった。
【0073】
比較例4:
実施例1において、塗布液aを塗工しなかったこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのフィルムヘーズは0.5%で、表面には3波長蛍光灯下目視可能な傷がほとんどないものであった。
【0074】
比較例5:
実施例1において、塗布液Iを塗布液III に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのフィルムヘーズは0.5%で、表面には3波長蛍光灯下目視可能な傷はほとんどないものであった。
【0075】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のフィルムは、例えば、ディスプレイ等の表示部材として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両最外層に粒子を含有する、少なくとも3層以上のポリエステル層からなる積層フィルムの少なくとも片面に、当該積層フィルの製膜工程内で設けられた塗布層を有し、当該塗布層の絶対反射率が波長400〜800nmの任意の波長に対して4.0%以上であり、550nmのSCE値が0.60%以下であることを特徴とする光学用積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2009−214354(P2009−214354A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58859(P2008−58859)
【出願日】平成20年3月9日(2008.3.9)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】