説明

光学用箔状粘着剤および光学用粘着シート

【課題】紫外線吸収性を有し、かつ紫外線吸収剤による架橋の阻害が抑制された光学用箔状粘着剤および光学用粘着シートを提供する。
【解決手段】剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着剤層11と、粘着剤層11に積層された基材13とから構成される光学用粘着シート1Aであり、粘着剤層11は、水酸基を含有する粘着成分と、水酸基と反応し得る架橋剤と、水酸基を有しない紫外線吸収剤とを含有する粘着性組成物を架橋してなり、波長350nmの光線透過率が10%以下である光学用箔状粘着剤からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ディスプレイパネル等に用いられる光学用箔状粘着剤および光学用粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電子ペーパーなどのフラットパネルディスプレイにおいては、種々の機能を有するフィルムが粘着剤によって積層されて使用されている。ここで用いられる粘着剤には、被着体への高密着性、高光線透過率および低ヘイズといった性能はもちろんのこと、耐湿熱試験に投入しても粘着剤の色相変化が無いこと、粘着剤の発泡等の物理的変化が無いことなどの性能が求められる。
【0003】
粘着剤としては、貼付する被着体の種類によっては、カルボン酸を含有しないことが望ましい。被着体が金属メッシュや酸化インジウムスズ(ITO)等である場合、粘着剤がカルボン酸を含有すると、当該カルボン酸が金属を腐食して、金属メッシュや、それに接触する粘着剤層に色変化が発生するおそれがある。そのため、架橋剤と反応させる粘着剤の官能基は水酸基であることが望ましく、架橋剤は、粘着剤の官能基が水酸基であっても反応可能な多官能のイソシアネート系架橋剤が望ましい。
【0004】
一方、フラットパネルディスプレイには、カラー表示を行うために、カラーフィルターや蛍光色素等が用いられるが、これらは紫外線により劣化し易いものである。そのため、外光(太陽光、蛍光灯等)に含まれる紫外線によりカラーフィルターや蛍光色素等が劣化し、色調が大きく変化するおそれがある。そこで、外光の紫外線によってカラーフィルターや蛍光色素等が劣化することを抑制するために、紫外線吸収剤が用いられ、この紫外線吸収剤は一般的に粘着剤層に添加される。
【0005】
紫外線吸収剤を含有する粘着剤層は、外光が入射してくる表示面とカラーフィルターや蛍光色素等との間に位置して紫外線を吸収し、カラーフィルターや蛍光色素等の劣化を抑制する。この紫外線吸収性能が350nm以下の領域の光線透過率で10%以下であれば、カラーフィルターや蛍光色素等の劣化を抑制することができる。
【0006】
上記のような性能を有する紫外線吸収剤としては、一般的に、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系などの紫外線吸収剤が用いられる(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−62411号公報
【特許文献2】特開2007−316336号公報
【特許文献3】特開2010−98073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の紫外線吸収剤は全て水酸基を有するものである。そのため、当該紫外線吸収剤がイソシアネート系架橋剤と共存すると、紫外線吸収剤の水酸基と架橋剤のイソシアネート基とが反応し、粘着剤の水酸基と架橋剤のイソシアネート基との反応が阻害される。これにより、粘着剤の架橋度合、すなわちゲル分率が、紫外線吸収剤を添加していない粘着剤と比較して低下する。紫外線吸収剤は、その用いられる用途等によって、添加する量は幅広く変化するので、それが粘着剤のゲル分率をどの程度低下させるのかを予測することは困難であった。そのため、特性が既知の、紫外線吸収剤を含有しない粘着剤に、紫外線吸収剤を添加しただけでは、ゲル分率の低下により所望の特性の粘着剤が得られないことがあった。具体的には、ゲル分率の低下により、粘着力、保持力、タック等の粘着物性がばらついたり、耐久試験において発泡等の問題が発生することがあった。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、紫外線吸収性を有し、かつ紫外線吸収剤による架橋の阻害が抑制された光学用箔状粘着剤および光学用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、水酸基を含有する粘着成分と、水酸基と反応し得る架橋剤と、水酸基を有しない紫外線吸収剤とを含有する粘着性組成物を架橋してなり、波長350nmの光線透過率が10%以下であることを特徴とする光学用箔状粘着剤を提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)に係る光学用箔状粘着剤は、水酸基を有しない紫外線吸収剤を使用することで、紫外線吸収性を有し、かつ当該紫外線吸収剤に起因する架橋の阻害が抑制されたものとなる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記水酸基を有しない紫外線吸収剤が、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤であることが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明2)においては、前記シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートおよび2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(発明3)。
【0014】
上記発明(発明1〜3)においては、前記水酸基を含有する粘着成分が、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含むことが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明4)において、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、水酸基を有するモノマーを重合してなる重合体であることが好ましい(発明5)。
【0016】
上記発明(発明1〜5)において、前記水酸基と反応し得る架橋剤は、イソシアネート系架橋剤であることが好ましい(発明6)。
【0017】
上記発明(発明4〜6)において、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、アミノ基を有するモノマーを重合してなる重合体であることが好ましい(発明7)。
【0018】
上記発明(発明1〜7)において、前記光学用箔状粘着剤は、アミノ化合物を含有することが好ましい(発明8)。
【0019】
上記発明(発明1〜8)においては、フタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、チオール錯体系化合物およびセシウム酸化タングステン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の近赤外線吸収剤をさらに含有することが好ましい(発明9)。
【0020】
上記発明(発明1〜9)においては、ベンゾトリアゾール系の防錆剤をさらに含有することが好ましい(発明10)。
【0021】
上記発明(発明1〜10)においては、23℃における貯蔵弾性率が0.05〜0.25MPaであることが好ましい(発明11)。
【0022】
第2に本発明は、基材と、粘着剤層とを備えた光学用粘着シートであって、前記粘着剤層は、前記光学用箔状粘着剤(発明1〜11)からなることを特徴とする光学用粘着シートを提供する(発明12)。
【0023】
上記発明(発明12)において、前記基材は、光学部材であることが好ましい(発明13)。
【0024】
第3に本発明は、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層とを備えた光学用粘着シートであって、前記粘着剤層は、前記光学用箔状粘着剤(発明1〜11)からなることを特徴とする光学用粘着シートを提供する(発明14)。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る光学用箔状粘着剤および光学用粘着シートの粘着剤は、紫外線吸収性を有し、かつ紫外線吸収剤に起因する架橋の阻害が抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学用粘着シートの断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光学用粘着シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔光学用箔状粘着剤〕
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤(以下、単に「箔状粘着剤」という場合がある。)は、水酸基を含有する粘着成分と、水酸基と反応し得る架橋剤と、水酸基を有しない紫外線吸収剤とを含有する粘着性組成物を架橋してなるものである。
【0028】
水酸基を含有する粘着成分としては、特に限定されるものではなく、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の粘着剤であって、水酸基を含有するものを用いることができるが、中でもアクリル系粘着剤が好ましい。
【0029】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含むものが挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、(シクロ)アルキルは、アルキルとしてシクロアルキルも含めた概念を意味する。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、(シクロ)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルと、反応性官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)と、所望により用いられる反応触媒性官能基を有するモノマー(反応触媒性基含有モノマー)と、所望により用いられる反応性官能基および反応触媒性官能基を有しない他のモノマーとの共重合体が好ましい。
【0031】
(シクロ)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)などが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、水酸基含有モノマーを重合してなる重合体であることが好ましい。
【0033】
水酸基は、水酸基と反応し得る架橋剤との反応性に優れ、また、水酸基は、カルボキシル基と異なり、粘着剤が金属と接触する場合でも当該金属を錆びさせず、さらには、粘着剤が色素を含有する場合でも当該色素の色を変化させない。
【0034】
カルボキシル基は、光学用箔状粘着剤の基材または被着体が金属を有するものである場合に、光学用箔状粘着剤が金属を腐食しやすくする作用がある。したがって、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の反応性官能基含有モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを含まないことが好ましい。
【0035】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0037】
反応触媒性基含有モノマーとしては、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)、および分子内にアクリルアミド基を有するモノマー(アクリルアミド基含有モノマー)が挙げられる。反応触媒性官能基は、水酸基と、水酸基と反応し得る架橋剤との反応の触媒として作用するため、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、反応触媒性基含有モノマーを重合してなる重合体であることが好ましい。これら反応触媒性基含有モノマーのうちでも、触媒作用の強力なアミノ基含有モノマーが好ましく、したがって、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、アミノ基含有モノマーを重合してなる重合体であることが特に好ましい。
【0038】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル等の1級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等の2級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の触媒としての作用は、3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより高いが、目的に応じて適宜選択して用いることができる。1級アミノ基または2級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、活性水素基を有するので、それ自体で反応性官能基含有モノマーとしても作用する。
【0039】
アクリルアミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
【0040】
反応性官能基および反応触媒性官能基を有しない他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における(シクロ)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルの含有量は、50〜100質量%の範囲が好ましい。(シクロ)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルの含有量をこのような範囲とすることで、アクリル系粘着剤に特有の粘着特性を発現させることができる。(シクロ)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸(シクロ)アルキルエステルのより好ましい含有量は70〜99.9質量%であり、特に好ましい含有量は80〜99質量%である。
【0042】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における反応性官能基含有モノマーの含有量は、0.01〜15質量%の範囲が好ましい。反応性官能基含有モノマーの含有量が0.01質量%以上であると、後述する架橋剤との反応により、架橋が十分となり、耐久性が良好となる。また、反応性官能基含有モノマーの含有量が15質量%以下であると、架橋性が高くなりすぎることによる、被着体、例えば金属メッシュ等への貼合適性の低下がなく好ましい。耐久性と被着体への貼合適性などを考慮すると、この反応性官能基含有モノマーのより好ましい含有量は0.1〜10質量%であり、特に1.0〜5.0質量%の範囲が好ましい。
【0043】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における反応触媒性官能基含有モノマーの含有量は、0.01〜10質量%の範囲が好ましい。反応性官能基含有モノマーの含有量が0.01質量%以上であると、所望の反応触媒性が得られ、反応性官能基含有モノマーと架橋剤との反応が効率的に進行する。また、反応触媒性官能基含有モノマーの含有量が5.0質量%以下であると、反応触媒性官能基含有モノマーが粘着剤の特性に及ぼす影響が過大になることなく、所望の粘着特性が得られやすい。反応触媒性官能基含有モノマーのより好ましい含有量は0.1〜5.0質量%であり、特に好ましい含有量は0.1〜3.0質量%である。
【0044】
また、反応性官能基含有モノマーおよび反応触媒性官能基含有モノマーとして、水酸基含有モノマーおよびアミノ基含有モノマーの両者を含有する場合、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における水酸基含有モノマーの好ましい含有量は、0.1〜10質量%、特に1.0〜5.0質量%であり、アミノ基含有モノマーの好ましい含有量は、0.01〜10質量%、特に0.1〜5質量%である。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の分子量は、重量平均分子量で40万以上であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。重量平均分子量が40万以上であると、被着体との密着性や、高熱・湿熱条件下での接着耐久性が十分となり、浮きや剥がれなどが生じることを防止することができる。密着性および接着耐久性などを考慮すると、重量平均分子量は、50万以上であることが好ましく、特に50万〜200万であることが好ましく、さらには50万〜100万であることが好ましい。
【0047】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤において、上記水酸基を含有する粘着成分は、水酸基と反応し得る架橋剤によって架橋されている。これにより、得られる粘着剤の保持力が向上し、もって粘着剤層としての形状が良好に維持される。
【0049】
水酸基と反応し得る架橋剤は、フェノール性水酸基と反応し得る架橋剤をも含む。このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられるが、中でもアルコール性水酸基と反応する多官能のイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0050】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。
【0051】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
【0052】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどが挙げられる。
【0053】
金属キレート系架橋剤には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズなどのキレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテートなどが挙げられる。
【0054】
以上の水酸基と反応し得る架橋剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その使用量は、架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量部に対して、通常0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部、特に好ましくは1〜5質量部である。水酸基と反応し得る架橋剤の量が少なすぎると、反応性官能基含有モノマーが含有する反応性官能基との架橋反応の発生が少なく、粘着剤の保持力が向上する効果が得られなかったり、十分でなかったりする場合がある。水酸基と反応し得る架橋剤の量が多すぎると、光学用箔状粘着剤を養生した後も未反応の架橋剤が残存し、経時により粘着特性の変動を来たすことがある。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を架橋するには、通常は加熱処理を行う。加熱処理を行う場合、加熱温度は、60〜150℃であることが好ましく、特に80〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜3分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。なお、この加熱処理は、粘着性組成物の塗布液(粘着剤塗布液)の希釈溶媒等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0056】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤は、上記の粘着成分とともに、水酸基を有しない紫外線吸収剤を含有する。紫外線吸収剤を含有することで、外光の紫外線によってカラーフィルターや蛍光色素等が劣化することを抑制することができる。また、紫外線吸収剤として水酸基を有しないものを使用すると、水酸基を有する粘着成分の架橋に水酸基と反応し得る架橋剤を使用した場合に、紫外線吸収剤と架橋剤とが優先的に反応することはなく、当該紫外線吸収剤は、粘着成分の水酸基と水酸基と反応し得る架橋剤との反応を妨げない。したがって、得られる箔状粘着剤においては、架橋の阻害が抑制される。
【0057】
架橋の阻害が抑制されることで、所望の架橋の度合い(ゲル分率)の光学用箔状粘着剤を得ることが容易となる。すなわち、水酸基を含有する粘着成分と、水酸基と反応し得る架橋剤とを用いた粘着剤のゲル分率は、含有される水酸基の量や、水酸基と反応し得る架橋剤の添加量により調整することができる。そこで、まず紫外線吸収剤を添加しない粘着剤を所望のゲル分率となるように設計し、次いで、他の成分の添加量を変化させずに、水酸基を有しない紫外線吸収剤を加える。水酸基を有しない紫外線吸収剤がゲル分率に与える影響が小さいために、上記のようにすることで、紫外線吸収剤を添加しない粘着剤のゲル分率と近い値のゲル分率を示す粘着剤を容易に得ることができる。
【0058】
ここで、下記の式で表される架橋阻害度(%)は、20%未満であることが好ましく、特に16%以下であることが好ましく、さらには12%以下であることが好ましい。この数値を満たすことで、紫外線吸収剤の添加に起因する箔状粘着剤の架橋の阻害が抑制されていることが示され、所望のゲル分率の光学用箔状粘着剤が得られやすい。
架橋阻害度(%)={(紫外線吸収剤未添加の粘着剤のゲル分率−紫外線吸収剤添加の粘着剤のゲル分率)/紫外線吸収剤未添加の粘着剤のゲル分率}×100
なお、粘着剤のゲル分率は、貼付時(養生期間経過後)での値である。具体的には、粘着剤塗布液を剥離シートに塗布し、加熱処理した後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下にて7日間保管した後のゲル分率をいう。また、紫外線吸収剤未添加の粘着剤のゲル分率は、本実施形態に係る光学用箔状粘着剤から紫外線吸収剤のみを除去した粘着剤のゲル分率である。
【0059】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤によれば所望のゲル分率のものを容易に得られることを、より具体的に説明する。まず、後述する比較例1の粘着剤層のゲル分率は99%であるが、実施例1、2および比較例2〜4は、異なる種類の紫外線吸収剤を添加した以外は、比較例1の粘着剤層と同じものである。したがって、これらの実施例1、2および比較例2〜4の「紫外線吸収剤未添加の粘着剤のゲル分率」は、比較例1の粘着剤層のゲル分率となる。水酸基を有する紫外線吸収剤を添加した比較例2〜4の架橋阻害度は、いずれも25%以上という大きな値を示し、比較例1の粘着剤層との対比で、ゲル分率が大きく低下している。これに対して、水酸基を有しない紫外線吸収剤を添加した実施例1および2の架橋阻害度は、7%および8%と小さなものである。したがって、本実施形態に係る光学用箔状粘着剤のゲル分率を99%に近い値としたい場合には、まず比較例1のような紫外線吸収剤非含有の箔状粘着剤を設計し、しかるのち、水酸基を有しない紫外線吸収剤を加えた配合とすることで、99%と大きく差のないゲル分率を示す光学用箔状粘着剤を得ることができる。
【0060】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤のゲル分率の好ましい範囲は、その用いられる用途によって異なるが、通常1〜100%であることが好ましく、5〜99%であることがより好ましい。箔状粘着剤のゲル分率は、このような範囲内で適宜調整される。
【0061】
例えば、本実施形態に係る光学用箔状粘着剤に、リワーク性を持たせたい場合などは、ゲル分率は高いほうが好ましい。このような場合に好ましいゲル分率の範囲は40〜100%であり、より好ましくは50〜99%である。
【0062】
また、例えば、本実施形態に係る光学用箔状粘着剤に、凹凸追従性を持たせたい場合などは、ゲル分率は低いほうが好ましい。このような場合に好ましいゲル分率の範囲は1〜75%であり、より好ましくは5〜50%である。
【0063】
ここで、上述したように水酸基と反応し得る架橋剤の量が多すぎると、残存した未反応の架橋剤によって経時で光学用箔状粘着剤の粘着特性が変化してしまうことがある。したがって、水酸基と反応し得る架橋剤の添加量は所定量以下に抑えることが望ましい。しかし、水酸基と反応し得る架橋剤の添加量を抑制すると、水酸基との架橋反応は不十分となる。このような箔状粘着剤に水酸基を含有する紫外線吸収剤を用いた場合には、さらに水酸基と反応し得る架橋剤の反応が妨げられるために、ゲル分率は低いものとなる。本実施形態に係る光学用箔状粘着剤は、上述のとおり水酸基と反応し得る架橋剤と水酸基との反応を妨げないので、例えば上述のようにゲル分率が高いことが好ましい場合に、水酸基と反応し得る架橋剤を過分に加えなくても粘着剤のゲル分率を高く維持でき、経時での光学用箔状粘着剤の粘着特性の変化が抑制されやすい。
【0064】
水酸基を有しない紫外線吸収剤としては、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が好ましい。シアノアクリレート系の紫外線吸収剤としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートおよび2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートが好ましく、それらは1種を単独で使用してもよいし、2種を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤は、本発明の作用効果を損なわない範囲で、水酸基を有する紫外線吸収剤を含有してもよい。その含有量は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0066】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤中における紫外線吸収剤の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、特に2〜10質量%であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量をこのような範囲とすることで、本実施形態に係る光学用箔状粘着剤の波長350nmの光線透過率を後述する範囲にしやすくなる。
【0067】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤は、好ましくは近赤外線吸収剤をさらに含有する。近赤外線吸収剤を含有することで、プラズマディスプレイパネル等から近赤外線が漏れることを防ぎ、他の電気機器の誤作動を防止することができる。
【0068】
近赤外線吸収剤としては、例えば、フタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、チオール錯体系化合物、セシウム酸化タングステン系化合物等が挙げられる。これらの近赤外線吸収剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤中における近赤外線吸収剤の含有量は、0.01〜5質量%であることが好ましく、特に0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0070】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤は、好ましくは防錆剤をさらに含有する。防錆剤を含有することで、例えば、粘着剤が電磁波遮蔽フィルムの金属メッシュやITO等と接触するときに、金属メッシュ等の金属部材と添加剤、金属メッシュ等の金属部材と粘着剤の相互作用などによる光線透過率の変化を抑制することができる。
【0071】
防錆剤としては、例えば、アゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、リン系化合物、アミン系化合物、亜硝酸塩系化合物、界面活性剤類、シランカップリング剤類等が挙げられるが、中でもベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。ベンゾトリアゾール系化合物を使用した場合、金属に対する防錆効果が高く、また粘着剤との相溶性が高い。
【0072】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、特に限定されないが、中でも1H−トリルトリアゾールが好ましい。以上の防錆剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤中における防錆剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、特に0.3〜2質量%であることが好ましい。防錆剤の含有量がこの範囲内にあることより、防錆剤としての効果が良好に発揮され、かつ粘着性も阻害されない。
【0074】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤は、上記成分の他にも、通常の光学用箔状粘着剤に用いられる成分、例えば、ネオン光吸収剤、色調調整用色素、シランカップリング剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0075】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤は、アミノ化合物を含有してもよい。ここでいうアミノ化合物は、上述のアミノ基を有するモノマーを重合してなる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体以外の、アミノ基を有する化合物をいう。アミノ化合物のアミノ基は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に含まれるアミノ基と同様に、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の反応性官能基含有モノマーと、水酸基と反応し得る架橋剤との反応の触媒としての作用を有する。この場合に使用されるアミノ化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等が挙げられる。
【0076】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤は、波長350nmの光線透過率が10%以下であり、好ましくは7%以下であり、特に好ましくは4%以下である。本実施形態に係る光学用箔状粘着剤は、かかる光線透過率を満たすことで、優れた紫外線吸収性を有することとなり、例えばプラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイ等の光学ディスプレイパネルに使用したときに、外光の紫外線によってカラーフィルターや蛍光色素等が劣化することを効果的に抑制することができる。
【0077】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.05〜0.25MPaであることが好ましく、特に0.10〜0.15MPaであることが好ましい。この貯蔵弾性率(G’)が0.05MPa以上であれば、外部から衝撃を受けても粘着剤が変形し難く、打痕が付き難い。また、貯蔵弾性率(G’)が0.25MPa以下であれば、印刷や凹凸等の段差、あるいは金属メッシュへ等の追従性が良好となり、気泡残りも防止することができる。なお、上記貯蔵弾性率(G’)は、後述するねじり剪断法により測定した値である。
【0078】
本実施形態に係る光学用箔状粘着剤の厚さは、種々の数値を取ることができるが、通常1〜200μm、好ましくは2〜100μmである。
【0079】
〔光学用粘着シート〕
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る光学用粘着シート(以下、単に「粘着シート」という場合がある。)の断面図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る光学用粘着シート1Aは、下から順に、剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着剤層11と、粘着剤層11に積層された基材13とから構成される。
【0080】
また、図2に示すように、第2の実施形態に係る光学用粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0081】
いずれの粘着シート1A,1Bにおいても、粘着剤層11は、前述した粘着性材料を架橋してなる箔状粘着剤からなる。
【0082】
粘着剤層11の厚さは、粘着シート1A,1Bの使用目的や使用箇所に応じて適宜決定されるが、例えば光学ディスプレイパネル等に使用される粘着剤層の場合には、5〜50μm、特に10〜30μmであることが好ましい。
【0083】
基材13としては、特に制限はなく、通常の光学用粘着シートの基材として用いられるものは全て使用できる。例えば、所望の光学部材の他、ガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースなどのセルロースフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリウレタンアクリレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
【0084】
光学部材としては、例えば、金属メッシュを有する電磁波遮蔽フィルム等の金属部材が形成されているフィルム、コントラスト向上フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム;、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。本実施形態に係る光学用粘着シート1A,1Bに用いられる粘着剤層11は金属を腐食しにくいものであるので、上記のうちでも、金属部材が形成されているフィルムが基材13であると、本実施形態に係る光学用粘着シート1A,1Bの効果が好ましく発揮される。
【0085】
金属部材としては、メッシュ状、箔状のもの等が挙げられる。金属部材の材料は、金属単体であっても、合金であっても、樹脂や無機材料と金属との混合物であってもよい。金属部材の形成方法としては、蒸着、スパッタリング、金属含有物のキャスト、圧延等が挙げられる。金属部材の用途としては、電磁波遮蔽用途、等方導電用途、異方導電用途、帯電防止用途、ガスバリア用途等が挙げられる。
【0086】
基材13の厚さは、その種類によっても異なるが、例えば光学部材の場合には、通常10〜500μmであり、好ましくは50〜300μmである。
【0087】
剥離シート12,12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0088】
上記剥離シートの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0089】
上記剥離シート12a,12bの一方(例えば剥離シート12a)は、軽剥離タイプの剥離シートであり、他方(例えば剥離シート12b)は、重剥離タイプの剥離シートであることが好ましい。このように剥離シート12a,12bに剥離力差を設けるには、剥離剤の種類を変えたり、一方を剥離処理し、他方を剥離処理しない等の方法によって達成することができる。
【0090】
剥離シート12,12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0091】
上記粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、粘着剤を構成する組成物および所望により希釈溶媒を含む粘着剤塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に基材13を積層する。なお、加熱処理の条件については、前述した架橋のための加熱処理と同様である。
【0092】
また、上記粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着剤を構成する組成物の塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。なお、塗布液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0093】
上記塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0094】
本実施形態に係る粘着シート1A,1Bは、光学用として、特にプラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイ等の光学ディスプレイパネル用として好適に使用することができる。例えば、粘着シート1Bをガラス基板と所望のフィルム(例えば、所望の機能を有する層が形成されたPETフィルム)との接着に使用する場合は、粘着シート1Bから一方の剥離シート12a(軽剥離タイプ)を剥離して露出した粘着剤層11と、フィルムとを貼合し、次いで他方の剥離シート12b(重剥離タイプ)を剥離して露出した粘着剤層11と、ガラス基板とを貼合する。
【0095】
本実施形態に係る粘着シート1A,1Bに用いられる粘着剤層11は金属を腐食しにくいものであるので、本実施形態に係る粘着シート1A,1Bが貼合される被接着体の少なくとも1つが、当該粘着シート1A,1Bが貼合される面に金属部材を有する部材であると、その効果が好ましく発揮される。被接着体の有する金属部材を例示するならば、前述の光学部材の一種である、金属部材が形成されているフィルムの当該金属部材と同様のものが挙げられる。
【0096】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0097】
例えば、粘着シート1Aの剥離シート12は省略されてもよいし、粘着シート1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、各成分の配合量は、全て固形分換算値で示す。
【0099】
〔実施例1〕
アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)およびアクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(DMAEA)をBA/MA/HEA/DMAEA=66.5/30/3/0.5の質量比で共重合して得られたアクリル酸エステル系共重合体(重量平均分子量:75万)100質量部(固形分換算,以下同じ)と、キシレンジイソシアネート系架橋剤(綜研化学社製,TD−75)3.75質量部と、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートからなる紫外線吸収剤(シプロ化社製,SEESORB 501)10質量部とを混合し、次いでメチルエチルケトンにて希釈して、不揮発分濃度25質量%の粘着剤塗布液を調製した。
【0100】
上記粘着剤塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン樹脂で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,SP−PET382150,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmとなるようにナイフコーターを用いて塗布し、90℃で60秒間乾燥し、粘着剤層を形成した。
【0101】
次いで、上記粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン樹脂で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,SP−PET381031H)の剥離処理面に貼合し、23℃、50%RH(相対湿度)の条件下で7日間養生して、これをサンプル(1)(剥離フィルム/粘着剤/剥離フィルム)とした。また、上記粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績社製,PET100A4300)に貼合し、これをサンプル(2)(PETフィルム/粘着剤/剥離フィルム)とした。
【0102】
〔実施例2〕
紫外線吸収剤として、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(シプロ化成社製,SEESORB 502)を使用する以外、実施例1と同様にしてサンプル(1)および(2)を作製した。
【0103】
〔実施例3〕
イソシアネート系架橋剤の替わりに、トリレンジイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製,コロネートL)を使用する以外、実施例1と同様にしてサンプル(1)および(2)を作製した。
【0104】
〔実施例4〕
イソシアネート系架橋剤の替わりに、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製,コロネートHL)を使用する以外、実施例1と同様にしてサンプル(1)および(2)を作製した。
【0105】
〔比較例1〕
紫外線吸収剤を未添加としたこと以外、実施例1と同様にしてサンプル(1)および(2)を作製した。
【0106】
〔比較例2〕
紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(白石カルシウム社製,UV−24)を使用する以外、実施例1と同様にしてサンプル(1)および(2)を作製した。
【0107】
〔比較例3〕
紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製,TINUVIN 109)を使用する以外、実施例1と同様にしてサンプル(1)および(2)を作製した。
【0108】
〔比較例4〕
紫外線吸収剤として、トリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製,TINUVIN 460)を使用する以外、実施例1と同様にしてサンプル(1)および(2)を作製した。
【0109】
〔試験例1〕(貯蔵弾性率測定)
実施例または比較例で得られた粘着剤層を積層し、直径8mm×厚さ3mmの円柱状の試験片を作製し、ねじり剪断法により下記の条件で貯蔵弾性率(G’)を測定した。結果を表1に示す。
・測定装置:レオメトリック社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDAII」
・周波数:1Hz
・温度:23℃
【0110】
〔試験例2〕(ゲル分率測定)
実施例または比較例で得られたサンプル(1)の粘着シートを50mm×90mmに切り出し、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ#380)に包んだ。具体的には、サンプル(1)から剥離フィルム(SP−PET381031H)を剥離除去し、ポリエステル製メッシュの内面となるべき面に接着させた後、剥離フィルム(SP−PET382150)を剥離除去し、次いでポリエステル製メッシュを密閉した。メッシュの質量を減じて、粘着剤のみの質量を精密天秤にて秤量した。このときの質量をM1とする。
【0111】
次に、200mlの酢酸エチル溶剤に上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を室温(23℃)で48時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後の粘着剤のみの質量を、精密天秤にて秤量した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。このようにして測定した紫外線吸収剤添加の粘着剤のゲル分率の結果を表1に示す。なお、比較例1については、当該粘着剤自身、紫外線吸収剤が未添加であるため、「紫外線吸収剤添加の粘着剤のゲル分率」の項目は存在せず、表1には記載していない。
【0112】
また、紫外線吸収剤を未添加とした以外は、各実施例および比較例と同様にして作製したサンプル(1)を用意し、紫外線吸収剤未添加の粘着剤のゲル分率を上記と同様にして測定した。結果を表1に示す。なお、実施例1、2および比較例2〜4の「紫外線吸収剤未添加の粘着剤のゲル分率」は、比較例1のゲル分率と同じである。
【0113】
〔試験例3〕(架橋阻害度の算出)
実施例および比較例の各粘着剤について試験例2で測定したゲル分率に基づいて、下記の式により架橋阻害度(%)を算出した。結果を表1に示す。
架橋阻害度(%)={(紫外線吸収剤未添加の粘着剤のゲル分率−紫外線吸収剤添加の粘着剤のゲル分率)/紫外線吸収剤未添加の粘着剤のゲル分率}×100
なお、比較例1については、「紫外線吸収剤添加の粘着剤のゲル分率」の項目は存在しないため、表1には架橋阻害度を記載していない。
【0114】
〔試験例4〕(光線透過率測定)
実施例または比較例で得られたサンプル(2)から剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付した。この積層体について、分光光度計(SHIMADZU社製,UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600)を使用して、350nmの波長の光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
表1から、実施例の粘着剤は、良好な貯蔵弾性率および優れた紫外線吸収性を有するとともに、紫外線吸収剤の添加による架橋の阻害が抑制されていることが分かった。一方、比較例1の粘着剤は、紫外線吸収性が殆どなく、また比較例2〜4の粘着剤は、紫外線吸収剤の添加による架橋の阻害が顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の光学用箔状粘着剤および光学用粘着シートは、プラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイ等の光学ディスプレイパネルにおける各層の接着に好適である。
【符号の説明】
【0118】
1A,1B…粘着シート
11…粘着層
12,12a,12b…剥離シート
13…基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を含有する粘着成分と、水酸基と反応し得る架橋剤と、水酸基を有しない紫外線吸収剤とを含有する粘着性組成物を架橋してなり、
波長350nmの光線透過率が10%以下である
ことを特徴とする光学用箔状粘着剤。
【請求項2】
前記水酸基を有しない紫外線吸収剤が、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項1に記載の光学用箔状粘着剤。
【請求項3】
前記シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートおよび2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の光学用箔状粘着剤。
【請求項4】
前記水酸基を含有する粘着成分が、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学用箔状粘着剤。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、水酸基を有するモノマーを重合してなることを特徴とする請求項4に記載の光学用箔状粘着剤。
【請求項6】
前記水酸基と反応し得る架橋剤は、イソシアネート系架橋剤である特徴とする請求項1〜5に記載の光学用箔状粘着剤。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、アミノ基を有するモノマーを重合してなることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学用箔状粘着剤。
【請求項8】
前記光学用箔状粘着剤は、アミノ化合物を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学用箔状粘着剤。
【請求項9】
フタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、チオール錯体系化合物およびセシウム酸化タングステン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の近赤外線吸収剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学用箔状粘着剤。
【請求項10】
ベンゾトリアゾール系の防錆剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学用箔状粘着剤。
【請求項11】
23℃における貯蔵弾性率が0.05〜0.25MPaであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学用箔状粘着剤。
【請求項12】
基材と、粘着剤層とを備えた光学用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学用箔状粘着剤からなる
ことを特徴とする光学用粘着シート。
【請求項13】
前記基材は、光学部材であることを特徴とする請求項12に記載の光学用粘着シート。
【請求項14】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層と
を備えた光学用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学用箔状粘着剤からなる
ことを特徴とする光学用粘着シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−207055(P2012−207055A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71483(P2011−71483)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】