説明

光学的に整合された基板を有するバイオセンサ

ナノポア膜と、該膜とともにセンサに使用される検体溶液との屈折率の整合化について示した。励起光および/または放射光の散乱は、屈折率の整合により抑制される。これにより、バイオセンサのような流入センサまたは流出センサに多孔質透明膜が使用された際の効率が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関し、特に化学センサ、生物化学センサ、またはバイオセンサに関し、さらにそのようなセンサを製作し、作動させる方法に関する。バイオセンサは、特に感染症の診断のような臨床検査用、ならびに食物品質および環境パラメータの監視等に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
いかなる生物検知装置においても、感度は極めて重要である。蛍光または化学ルミネッセンスを介した光学的検出は、一般的に使用されている。通常の場合、特定の結合化学物質を介して表面に設置された不動化捕獲プローブを有する、ガラスまたはアモルファス高分子基板が使用される。生物学的結合は、表面の結合サイトに結合するラベルにより生じる光の強度を介して測定される。放射光は、全ての方向に伝播し、そのごく一部のみがセンサ表面上に放射される。その結果、基板の近傍では、大部分の光が基板に結合され、センサが反射モードまたは透過モードのいずれで使用されるかに関わらず、光は、基板の上部または底部のセンサに到達することはない。光結合性を改善するため、非多孔質基板上の表面を構造化することが提案されている。
【0003】
表面に向かう結合速度は、層流での拡散限界により制限される(ネルンストの境界層)。通常平衡には至らないため、これは、結合の速度が低下し、通常平衡には至らないため信号の上昇が抑制され、測定の感度が低下することを示している。この制限を克服するため、流入配置が開発されており、この配置では、捕獲プローブは、基板面と垂直な微小チャネル壁に取り付けられる。検体は、ポアを介して流れる。微小寸法のため、拡散限界が回避される。また、比表面積は、大幅に増大するため、照射面積当たりより多くのラベルが不動化されるようになり、信号が増大する(米国特許第6635493号、6383748号参照)。しかしながら、光の結合性は、不均一構造に影響を受ける。
【0004】
これらの公知の構成における異方性ポア構造の代わりに、そのような流入装置のため、フィルタ膜内に、無秩序構造が使用されても良い。捕獲プローブおよび結果的に不動化ラベルは、膜の厚さ方向に分散される。生じた光は、散乱媒体を通過し、センサ表面に到達する必要がある。この過程は、極めて非効率的である。蛍光検出の一つの重要な態様は、放射光からの励起の分離である。ストークスシフトは、ほとんどの蛍光プローブでは小さい(通常20nm)ため、励起光から放射光を識別するための、高品質フィルタが必要となる。強光散乱の場合、励起光は、検出器の方向に散乱されるため、フィルタを介したリークが増加し、これによりバックグラウンドレベルが検出されるようになる。例えば、有効ポア寸法が200nmの150μmの厚さの多孔質ナイロン膜の遠視野光透過は、水中浸漬下で求めた場合、0.3%しかない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、既知のシステムでは、多くの光が消失し、および/またはバックグラウンドレベルに寄与し、これにより、信号対ノイズ比が低下する。この低効率の主な原因は、流入装置に使用される多孔質基板での光の散乱である。消失光は、信号を低下させ、迷光は、バックグラウンドを高め、これによりバイオセンサの感度が低下する。光結合性効率、さらには結果的にセンサの感度を改良する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、特に化学センサ、生物化学センサ、またはバイオセンサのような改良されたセンサ、ならびにそのようなセンサを製作し作動させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様では、本発明により、液体検体溶液とともに使用される流入センサであって、多孔質基板と、流入配置において、前記検体溶液を前記多孔質基板に輸送する手段と、を有し、前記多孔質基板と前記使用検体溶液の間の屈折率の差異は、0.15未満であることを特徴とする流入センサが提供される。これにより、改良された光出力を有するセンサが提供される。多孔質基板と検体溶液の間の屈折率の差異は、0.08未満であることが好ましく、0.03未満であることがより好ましい。基板の屈折率が検体溶液の値と整合するように接近するほど、センサの効率が高くなり、例えば高い感度が得られる。
【0008】
本発明の別の態様では、液体検体溶液とともに使用される流入センサまたは流出センサが提供され、該センサは、多孔質基板、検体溶液を多孔質基板に輸送する手段を有し、多孔質基板の屈折率は、1.24から1.42の範囲であり、または1.31から1.35の範囲である。これらの範囲では、基板の屈折率と水性検体溶液との整合が得られる。
【0009】
本発明の別の態様では、液体検体溶液とともに使用されるセンサであって、多孔質基板と、前記検体溶液を前記多孔質基板に輸送する手段(9)と、を有し、前記多孔質基板と前記検体溶液の間の屈折率の差異は、0.15未満であり、前記多孔質基板は、ナノポロシティを有することを特徴とする流入センサが提供される。
【0010】
多孔質基板は、ナノポアを有しても良い。これらのナノポアは、密閉セルの形状を有することが好ましく、これらのセルは、空気で充填されても良い。ナノポアの平均直径寸法は、1から100nmであることが好ましく、例えば10から90nmである。ナノポロシティを使用することは、散乱を生じさせずに、ナノポアがバルクの屈折率に影響し得る点で有意である。基板内のナノセルの充填率は、これらを低い屈折立を有する空気のようなガスで充填して、基板の屈折率を調整するように適合される。ナノポアの容積充填率Vpは、多孔質基板の1から50%の範囲であることが好ましい。
【0011】
センサは、水溶液系の検体を使用するように適合されることが好ましい。医療および食物診断における多くの重要な用途では、水溶液中のターゲットを使用するため、これは有意である。
【0012】
多孔質膜は、流体チャネルを備えるサポートにより支持される。これにより、支持基板の厚さを、より広い範囲にわたって選定するようにすることができる。これにより、基板内の光エミッタの数に関して、光効率および光の散乱を最適化することができる。サポートは、多孔質であり、多孔質基板よりも大きなポア寸法を有することが好ましい。これにより、サポート内のチャネルにより、基板への流れおよび基板からの流れが妨害されることが抑制される。
【0013】
基板は、無機または有機材料または両者の組み合わせで構成され得る。高分子ファイバの形態の有機材料は、容易に製作することができ、軽量である。また、有機材料は、低い屈折率を有する。無機材料は、例えばエッチング法または成形法により、極めて正確に処理することができる点で有意である。無機材料は、高分子材料に比べて、しばしば、親水性である。例えば、多孔質基板は、石英、アモルファスSiO2、有機改質シロキサンおよびこれらの組み合わせを有しても良い。
【0014】
また本発明のセンサは、検体溶液を、基板に向かうおよび/または基板を通るように流通させるために必要な、微小チャネルをサポート内に有しても良い。これらの微小チャネルは、開状態であり、センサ用の液体投入溝と基板の主表面の間の接続を提供する。通常、チャネルの直径寸法は、50−500nmのオーダである。基板の微小チャネルは、親水性であることが好ましい。これにより、水性検体溶液と濡れるようになる。これは、そのようなバイオセンサの一般的な適用例である。
【0015】
捕獲プローブは、例えば多孔質基板に取り付けられ、不動化されることにより、保持または維持されることが好ましく、この基板には、検体溶液中の例えば生物分子のような分子が結合される。
【0016】
好適実施例では、センサは、バイオセンサである。最も好適な実施例では、多孔質基板は、膜である。
【0017】
別の態様では、本発明により、液体溶液を用いた、前述のようなセンサの使用であって、前記多孔質基板と前記検体溶液の間の屈折率の差異は、0.15未満であることを特徴とする、使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、一例としての添付図面を参照して、本発明がどのような効果を有するかについて説明する。
【0019】
ある図面を参照して、特定の実施例について、本発明を説明する。ただし、本発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲にのみ限定される。請求項内のいかなる参照符号も、本発明の範囲を限定するものと解してはならない。示された図面は、概略的なものであり、これに限定されるものではない。図面において、いくつかの素子の寸法は、誇張して示されており、表示目的のため、スケールは示されていない。本願明細書および特許請求の範囲において使用される「有する」という用語は、他の素子またはステップを排斥するものではない。単一の名詞を参照する際に使用される、例えば「一つの」、「その」という冠詞または不定冠詞は、特に説明がない限り、その名詞が複数あることを含む。
【0020】
また、明細書および特許請求の範囲内の第1、第2、第3等の用語は、同様な素子同士を識別するために使用され、必ずしも一連の順番または時間的順番に示されてはいない。使用用語は、適切な条件下で相互互換性があり、本願に示されている本発明の実施例は、本願に示されたもの以外の他の手順で作動することができることを理解する必要がある。
【0021】
本発明は、特に化学センサ、生物化学センサまたはバイオセンサのようなセンサに関し、またそのようなセンサを製作し、作動させる方法に関する。本発明のセンサは、特に、感染症診断のような臨床診断用に使用することができる上、食物品質、環境パラメータ等にも適用し得る。
【0022】
本発明のある態様は、多孔質基板と、該基板とともに使用される検体溶液との屈折率の整合化である。蛍光検出のある重要な態様は、放射光から励起光を分離することである。ほとんどの蛍光では、ストークスシフトは小さいため(通常20nm)、放射光と励起光とを識別するためには、高品質な光学フィルタが必要となる。例えば励起光および/または放射光の散乱を抑制することにより、励起ビームが光検出器に侵入することが回避されるため、フィルタ限界によるバックグラウンドは、有意に抑制される。これにより、流入配置で多孔質透明基板を用いた場合の効率が改善される。
【0023】
流入または流出バイオセンサのある実施例では、光信号出力を改善するため、特定の膜構造を有する基板が示される。透明多孔質膜は、捕獲プローブを有し、溶液中の生物分子は、これに結合する。この生物分子は、微小チャネル上で保持され、維持され、取り付けられ、不動化される。結合により、例えばプローブに関連する蛍光プローブからの発光、色、または光出力の変化が活性化される。多孔質基板上に保持され、維持され、取り付けられ、または不動化された分子は、光可変分子と呼ばれる。センサの感度は、特に、膜から結合する光の効率に依存する。従来の膜を光学的に整合化された材料と置換することにより、光散乱が回避される。これにより、光出力が大きく増大し、結果的に、生物学的結合の測定感度が増大する。励起光ビームと放射光の両方における損失は、回避されまたは抑制される。散乱がなくなるため、光路内の部材は、より効率的となる。膜は、機械的に安定な寸法にされることが好ましく、例えば約150μmの厚さ、あるいは例えば10μmから1mmの厚さである。
【0024】
好適実施例では、膜は、水性の検体と光学的に整合される。これにより、光散乱が抑制されまたは排除され、膜の屈折率が制限される。水の屈折率は、1.33である。本発明は、1.24から1.42の間の有効屈折率を有する多孔質膜材料を使用することを含む。本発明に使用し得る膜の例は、微小チャネルを有する多孔質材料の形態のナノポア含有石英であり、このチャネルには、例えば検体の流れにより、生物プローブが固定され、あるいは保持されまたは維持される。水性検体に関するプローブの一例は、核酸プローブ、DNAオリゴおよび/または抗体、抗原、レセプター、ハプテン、レセプター用の配位子、プロテインまたはペプチド、脂質、脂肪酸、糖質、炭化水素、共同因子、酸化還元剤、酸、塩基、小細胞、サブ小細胞、ウィルスまたはバクテリアまたは原生サンプル、ウィルス片、バクテリアまたは原生動物である。多孔質膜の屈折率は、ナノポア材料の密度を選定または変更することにより調整することができ、例えば材料中のナノポアの容積率を設定することにより、調整される。
【0025】
液体流のポロシティは、屈折率を調整するナノポアポロシティよりも大きなオーダである。通常の場合、100乃至1000μmの寸法のチャネルが形成される。これは、各種技術、例えば微小成形法および/または制御された相分離法により行われる。膜は、ミクロまたはマクロ流体チャネルを含むさらに別のサポートにより支持されても良い。
【0026】
流入または流出光バイオセンサの光収率は、光学的に整合された多孔質膜材料を用いて光散乱を抑制することにより、有意に改善されることが見出されている。散乱強度は、大まかには、多孔質膜材料と膜内におよび/または膜を介して流れる流体との間の、屈折率ミスマッチの二乗のオーダであり、これは、不完全な整合であっても、有益な光出力ゲインが得られることを意味する。測定波長での屈折率の0.15以下のミスマッチ、好ましくは0.08以下、さらに好ましくは0.03以下のミスマッチは、本発明において有益である。またこの屈折率のミスマッチは、10%以下、好ましくは6%以下、さらに好ましくは2%以下のミスマッチとして表現されても良い。
【0027】
多孔質膜の材料が親水性であり、またはポアが親水性の物質でコーティングされており、または例えばプラズマ処理等により、ポアが親水性となるように処理されていることが好ましい。多孔質膜の屈折率は、1.24から1.42の間であることが好ましく、屈折率が1.33の検体溶液の場合、1.31から1.35の間であることがより好ましい。これにより、励起光ビームと、放射光の両方の透過率が向上し、結果的に、測定感度が改善される。
【0028】
本発明によるバイオセンサは、光検出器もしくはセンサとともに使用され、あるいはこれらを含む。光検出器は、光センサ、CCDカメラのようなカメラ、または顕微鏡を含む他のいかなる光検出装置であっても良い。センサ入力と適合される適当なプローブは、多孔質膜内に収容される。これらのプローブは、蛍光もしくは化学ルミネッセンス分子のような光放射分子(しばしば「蛍光プローブ」と呼ばれる)を含み、またはこれらに結合されても良い。これらの分子は、ターゲット分子がプローブに結合した際に、光を放射し、またはそれらの光出力を変化させる。そのような分子は、光学的可変分子として示されている。あるいは、プローブは、ターゲット分子がプローブに結合した際に、色もしくは光度を変化させる分子、すなわち光学的可変分子を含み、またはそのような分子と結合されても良い。これらのいかなるプローブも、光検出手段により検出することができる。以下、蛍光プローブのみを参照するが、本発明の実施例は、検体ターゲット分子と結合した際に、光出力または外観を変化させるいかなるプローブにも使用し得ることは、当業者には明らかである。
【0029】
蛍光プローブまたは他の光学的可変分子は、微小チャネルの表面により保持され、維持され、またはこの表面に設置され、不動化される。例えば、これらは、膜内の微小チャネルの内側に共有結合されても良い。膜は、流体チャネルを有する他のサポート内またはサポートとともに導入され、センサ表面の光結合がさらに改善される。
【0030】
好適実施例では、膜と水の間の屈折率の整合は、膜材料として、密閉セルナノポア材料を用いることによりなされる。ある実施例では、μmオーダの相互に連続的な形態が存在し、すなわち、膜を貫通する微小チャネルがある。一方、ナノスケールでは、密閉ナノポアが存在する。微小チャネルの役割は、それが開である場合、膜に向かうおよび/または膜を通る検体溶液の流れを可能にすることであり、一方ナノポアの役割は、膜材料の屈折率を抑制することである。
【0031】
例えば、膜材料は、有機改質シロキサンであっても良い。他の材料を使用しても良い。膜材料は、無機材料であっても良く、例えばSiO2を有し、もしくはSiO2系の材料であり、または熱可塑性もしくは熱硬化性の高分子であっても良い。アモルファスSiO2は、屈折率が1.46であり、ナイロンは、1.53-1.56であり、ニトロセルロースは、1.51であり、一方水は1.33である。従って、希釈水溶液に対する屈折率の差異は、0.13から0.23の間である。光透過性を10倍から100倍増加する場合、屈折率の差異は、3乃至10倍、すなわち0.06から0.02まで抑制する必要がある。
【0032】
本発明では、多孔質基板がナノスケールで適合されたポロシティを有する場合、これにより屈折率が抑制されるため、高屈折率を有する材料が使用されても良い。
【0033】
例えば、屈折率が1.39のマトリクスは、水に対して有意に改善される。屈折率が1.35のマトリクスは、実質的に透明であり、すなわちほとんどまたは全く散乱しない。屈折率が1.4未満のいくつかの材料を利用することができ、例えば高フッ素化材料、ペルフルオロアルカン(テフロン(登録商標)AF:n=1.30)がある。
【0034】
後者の材料系は、強い疎水性を示し、これは、キャピラリを介した流れのため、水溶液に圧力が必要となるため、問題である。またこれらの材料では、「化学的アクセス」がほとんどないため、捕獲プローブの結合能が極めて制限される。しかしながら、フッ素化の程度を調整して、適当な酸素プラズマ処理を行うことにより、表面に十分な反応性が生じ、結合層の結合が可能となる。またこれにより、DNAオリゴマーおよび抗体のような、生物学的捕獲プローブを結合することが可能となる。
【0035】
膜用の別の材料は、石英または溶融シリカである。そのような材料は、DNAに対して強い結合性を有することが知られている。溶融シリカは、1.46の屈折率(波長550nm)を有し、これでは、限られた光特性しか得られない。材料は、液体状態から、いわゆるゾルゲル処理により合成することができる。この方法では、ナノスケールの制御されたポロシティが導入される。
【0036】
ポア寸法が光の波長のオーダまたはこれよりも小さい場合、散乱は生じない。ポアの形態が密閉セルである場合、水は、そこに侵入せず、屈折率nは、次式のように容積充填率vpに相関する:
【0037】
【数1】

ここでvpは、空気充填ポアの容積率である。例えば、28%のポロシティでは、完全に光学的な整合が得られる。本発明のさらに別の実施例では、低屈折率膜は、ゾルゲル処理により形成され、例えば:
TMOS、テトラメトキシオルトシリケート 1モル
MTMS、メチルトリメトキシシリケート 1モル
ギ酸を含む水1(1M酸) 7モル
水2 11モル
nプロパノール
CTAB、ヘキサメチルトリメチルアンモニウムブロマイド 0.2または0.3モル
(Si:CTAB、1:01および1:0.15)イオン性表面活性剤。
【0038】
膜は、以下の方法で調製される:
TMOS、MTMSおよび酸水1を混合し、30分間加水分解する。約10乃至20wt% SiO2の所望の濃度になるまで、希釈溶液にnプロパノールを加える。水2を加え、0.2または0.3モルのCTABを加える。
【0039】
溶液を室温で一晩維持する。その後冷蔵庫に保管する。
【0040】
以下の条件で、スピンコート法により、得られた溶液を担体上に設置する:100rpmで供給し、1000rpmで除去し、300rpmで乾燥させる。スピン処理後、さらに50℃で乾燥処理する。400℃で15分間、空気中に保持し、硬化処理する。
【0041】
前述のようにして調製されたコーティングは、50から55vol%の間のポロシティを有する。屈折率nは、広い波長範囲において、1.2から1.25の間である。このように、適当なCTAB濃度を用いることにより、28%のポロシティが得られる。ゾルゲル溶液を使用するため、例えば、(微小チャネル)多孔質高分子膜を含浸するため、濃度は、高めても良い。次に、固体分が約80wt%になるまで、加水分解混合物の真空浸透法を行うことが好ましい。浸透処理後、高分子は、洗浄除去され、ゾルゲルマトリクスが300乃至400℃で硬化されることにより、ナノポアシリカのネットワークが得られる。
【0042】
低屈折率の高分子とナノポアを有するシリカの組み合わせの使用により、シリカの光学的な透過性および有意な表面特性からの利点を犠牲にすることなく、壊れやすいシリカの機械的特性を向上させることができる。
【0043】
例えば材料を所望の生物学的結合用の流入型として使用することができるように、前述の種類の膜材料のナノ構造と同様、シリカにも微細構造が必要となる。例えば微小チャネルのような微細構造は、必要な流抵抗(圧力低下)および膜の比表面積に応じて、例えば相分離法、リソグラフィー法、繊維組立体または微小成形(キャスティング)およびこれらの組み合わせのような各種方法で得ることができる。そのような低屈折率膜は、当業者には明らかであり、以下、いくつかの製造工程の例を示す。
【0044】
成形の場合、微細構造の開放金型に、高分子溶液が充填され、これがその後、乾燥される。その過程中、層が収縮し、厚さは、型の微細構造の高さよりも小さくなるため、層内に開口が形成される(Laura Vogelaar、Rob G. H. Lammertink、Jonathan N. Barsema、Wietze Nijdam、Lydia A. M. Bolhuis-Versteeg、Cees J. M. van Rijn、Matthias Wessling、スモール、1巻、6号、645-655頁、2005年6月)。適当な型を使用した場合、直接、必要なミクロンサイズの微細構造が得られる。そのような型は、エッチングされたシリコンマスターからの複製により製造される。
【0045】
この処理方法は、乾燥処理中に相分離が生じるように調整され、微細構造間の層では、平行連続2相システムが形成される。型から取り外した後、2つの部材のうちの一方が、揮発または適当な溶媒中の選択分解により、除去される。
【0046】
また、成形、印刷または他の基板への一時的なコーティング方法、例えばリールツーリール(reel-to-reel)方法により、(すなわち微細構造型を使用せずに)そのような相分離材料の連続相を形成することもできる。
【0047】
多孔質膜層を形成した後、膜を機械的に支持し、および/または膜を通る液体もしくは光の導入路を供給するため、後者は、膜のポアよりも大きな寸法のチャネル構造を有する構造化素子の間に充填される。
【0048】
図1の電子顕微鏡像において、図の底部右側に確認されるように、多孔質膜1のナノ寸法のポロシティは、密閉セルの形状を有するナノポア3により得られる。中央部分は、開いた微小チャネル5を示しており、この上部には、捕獲プローブ(図示されていない)が設置される。これらの微小チャネルは、ミクロ寸法のポロシティを有する。膜は、機械的なサポート、すなわちサポート7により取り囲まれ、このサポートは、ミル寸法のポロシティの流体チャネル9を有する。別の製造技術は、フッ素化高分子のような材料繊維のスピン法である。必要に応じて、ナノポアシリカクラッド法を使用しても良い。これらの繊維を充填または焼結させて密着させ、これらの繊維から布またはマットを製作することも可能である。次にそのような繊維マットには、機械的サポートが充填される。ポア寸法は、繊維径および充填圧力により定められる。
【0049】
本発明によるバイオセンサが使用される検定は、混成、免疫学的検定、レセプター/配位子検定等による手順を含む。
【0050】
バイオセンサ配置20は、図2に概略的に示されており、これは、本発明による透過性流入膜26を示している。反射性配置もまた、本発明の範囲に含まれる。検体23のソースは、ポンプ24または重力またはキャピラリ力により、膜26に供給される。検体は、通常、バイオセンサにより検出されるバイオ分子または化学的物質を有する。必要な場合、例えば光のような放射線のソース源25が、膜26に隣接して配置され、この膜を照射する。また周囲光環境を利用して、膜26を照射しても良い。光検出器21は、膜の片側に配置され、光出力または色の変化を記録する。光検出器は、光センサまたはそのようなセンサの配列であり、あるいはCCDカメラのようなカメラであっても良い。光検出器は、光学フィルタを有しても良く、このフィルタは、光源25からの光を減衰させ、膜26内の化学ルミネッセンスまたは蛍光プローブのような、光可変分子から放射される光の透過が可能となる。出力電子機器22は、配線、光ファイバ、無線接続、または他の適当な通信接続方法により、検出器21に接続され、検出器21の出力が処理され、必要に応じて、表示出力、アラーム、ハードコピー出力等が提供される。
【0051】
本発明の他の実施例では、基板と流体との光学的な整合は、固体基板を有する流出装置においても有益である。この方法では、基板内を移動し、遷移のため、緻密度の劣る媒体には結合されないという光モードが回避される。界面で生じた光は、光学的に界面で妨害されず、結果的に等方的に伝達するため、これは、幾何光学素子により、センサ表面に向かって容易に誘導することができる。未構造化ナノポアシリカは、光検出器を有する流出バイオセンサ装置の基板として使用することもできる。また図3において、透過性流出センサとして使用される、多孔質膜26のナノ寸法のポロシティは、密閉セルの形状を有するナノポアによっても得られる。この実施例には、前述の実施例を参照して示したいかなるナノポア材料を使用しても良い。特に、多孔質基板と使用検体溶液の間の屈折率の差異は、0.15未満であることが好ましい。多孔質基板と検体溶液の間の屈折率の差異は、0.08未満であることが好ましく、0.03未満であることがより好ましい。基板の屈折率が検体溶液の屈折率と整合するように接近すると、センサの効率はより高くなり、例えば高い感度が得られる。多孔質基板の屈折率は、1.24から1.42の間、または1.31から1.35の間である。これらの範囲では、基板の屈折率と水溶液検体の屈折率との整合が可能となる。
【0052】
膜26は、溝28内に設置される。検体のソース源は、ポンプ、重力またはキャピラリ力により、膜26に供給される。検体は、通常、センサで検出される生物分子または化学物質を有する。必要な場合、例えば光のような放射線のソース源25は、溝28に隣接して配置され、膜26を照射する。周囲光環境を利用して、膜26を照射しても良い。光検出器21は、溝の片側に配置され、光の出力または色の変化を記録する。光検出器は、光センサまたはそのようなセンサの配列であっても良く、あるいはCCDカメラのようなカメラであっても良い。光検出器は、光学フィルタ27を有しても良く、光源25からの光が減衰され、膜26内の化学ルミネッセンスまたは蛍光プローブのような光可変分子から放射された光の透過が可能となる。図2を参照して説明したように、出力電子機器22は、配線、光ファイバ、無線接続または他の適当な通信接続方法により、検出器21に接続され、検出器21の出力が処理され、必要に応じて、表示出力、アラーム、ハードコピー出力等が提供される。
【0053】
本発明は、反射性および透過性の両方のバイオセンサに利用することができる。配置の感度に対しては、放射された放射線の有効収集角が重要となる。光検出器は、検体溶液中に浸漬することにより、内部反射を回避することができる。
【0054】
光源の励起強度は、光源の種類および照射場に関係する。例えば、0.1乃至1Wの光源が使用され、例えばLED、レーザ等のいかなる適当なタイプの光源が使用されても良い。光源は、飽和強度の約半分まで、蛍光プローブを励起するように選択されることが好ましい。蛍光プローブの光退色を回避するため、露出時間は短くする必要がある。従って、パルス光源が好ましい。
【0055】
図2または3のバイオセンサ配置は、微小流体装置に一体化しても良く、これにより、検体の流れを、重力供給、キャピラリ力、または微小流体ポンプにより駆動することができる。また本発明は、前述のいかなるバイオセンサを有するキットにも関する。そのようなキットは、さらに、プローブと検体の間で、結合が生じているかどうかを判断する検出手段を有しても良い。そのような検出手段は、ラベルを備える検体中の生物分子と結合する物質であることが好ましい。ラベルは、色反応を生じさせることができ、あるいは生物的、化学的もしくは光ルミネッセンスまたは蛍光を生じさせることのできるものであることが好ましい。
【0056】
本発明によるバイオセンサを使用して、核酸に関する一連の情報が得られる場合、膜上に、ターゲット領域の大きな配列が提供され、各領域は、結合物質として、異なる基本組(base-pair)順番のDNAオリゴプローブを有する。(部分的に)未知の順番のDNAまたはRNAフラグメントを有するサンプルが、膜と接するように動かされた場合、特定の混成パターンが生じ、このパターンから、DNA/RNAの順番が得られる。
【0057】
また本発明によるバイオセンサは、例えば血液のような、多くの検体に対する生物学的試料の選別に使用されても良い。配列は、例えば、バクテリア病原体のような病原体に対して特異的な、DNAオリゴプローブを有する領域からなる。血液サンプルは、装置と接するようにもたらされ、得られた混成パターンは、光検出器により読み取ることができ、これによりバクテリアの存在が推察される。本発明によるバイオセンサは、ウィルスの検出に適している。この方法では、ウィルスRNAにおける単一点の変異を検出することができる。
【0058】
また本発明によるバイオセンサは、サンドイッチ式免疫学的検定の実施に適している。サンドイッチ式検定では、検体を結合させるため、抗体のような第2の配位子が使用される。第2の配位子は、例えば、特定の抗体を用いることにより、認識できることが好ましい。本発明の目的を達成するため、および本発明を実施するための他の配置は、当業者には明らかである。
【0059】
好適実施例では、本発明による装置を説明するため、特定の構成、配置および材料が示されているが、本発明の範囲および思想から逸脱しないで、形態および細部の各種変更または修正を行うことが可能であることを理解する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例による多孔質膜の配置を示す図である。
【図2】本発明の実施例によるバイオセンサのブロック図である。
【図3】流出(flow over)センサの本発明のさらに別の実施例の詳細を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体検体溶液とともに使用される流入センサであって、
多孔質基板と、
流入配置において、前記検体溶液を前記多孔質基板に輸送する手段と、
を有し、
前記多孔質基板と前記検体溶液の間の屈折率の差異は、0.15未満であることを特徴とする流入センサ。
【請求項2】
液体検体溶液とともに使用されるセンサであって、
多孔質基板と、
前記検体溶液を前記多孔質基板に輸送する手段と、
を有し、
前記多孔質基板と前記検体溶液の間の屈折率の差異は、0.15未満であり、前記多孔質基板は、ナノポロシティを有することを特徴とする流入センサ。
【請求項3】
液体検体溶液とともに使用されるセンサであって、
多孔質基板と、
前記検体溶液を前記多孔質基板に輸送する手段と、
を有し、
前記多孔質基板の屈折率は、1.24から1.42の範囲であることを特徴とする流入センサ。
【請求項4】
前記多孔質基板と前記検体溶液の間の屈折率の差異は、0.08未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項5】
前記多孔質基板と前記検体溶液の間の屈折率の差異は、0.03未満であることを特徴とする請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記多孔質基板の材料は、無機材料、有機材料およびその混合物からなる群から選定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項7】
前記多孔質基板は、石英、アモルファスSiO2、有機改質シロキサンおよびこれらの混合物からなる群から選定される化合物を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項8】
前記多孔質基板は、ナノポアを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項9】
前記ナノポアは、密閉セルの形状を有することを特徴とする請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
前記ナノポアには、空気が充填されることを特徴とする請求項9に記載のセンサ。
【請求項11】
前記ナノポアの容積充填率Vpは、前記多孔質基板の体積の1から50%の範囲であることを特徴とする請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
前記ナノポアの平均直径寸法は、光学的分析に使用される光の波長に比べて有意に低いことを特徴とする請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記ナノポアの前記平均直径寸法は、50nm未満であることを特徴とする請求項12に記載のセンサ。
【請求項14】
前記検体は、水性であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項15】
前記多孔質基板は、自立式であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項16】
前記多孔質基板は、前記検体溶液を前記多孔質膜に供給する、少なくとも一つの流体チャネルを備えるサポートにより支持されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項17】
前記多孔質基板は、微小チャネルを有することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項18】
前記微小チャネルの前記平均直径寸法は、5μm未満であることを特徴とする請求項14に記載のセンサ。
【請求項19】
前記多孔質基板の前記微小チャネルは、親水性であり、または親水性材料でコーティングされていることを特徴とする請求項17または18に記載のセンサ。
【請求項20】
前記多孔質基板には、捕獲プローブが不動化され、前記多孔質基板に、前記検体溶液中の分子が結合されることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項21】
当該センサは、バイオセンサであることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項22】
前記多孔質基板は、膜であることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一つに記載のセンサ。
【請求項23】
液体検体を用いた、請求項1乃至22のいずれか一つに記載のセンサの使用であって、
前記多孔質基板と前記検体溶液の間の屈折率の差異は、0.15未満であることを特徴とする、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−510427(P2009−510427A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532941(P2008−532941)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053465
【国際公開番号】WO2007/039847
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】