説明

光学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造方法

【課題】光学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造方法の提供。
【解決手段】4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩を還元剤の存在下で反応させ、光学的及び化学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジンを直接製造する方法。還元剤としてはボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム及びリチウムアルミニウムハイドライドからなる群から選択される。製造方法は、(S)−3−ヒドロキシピロリジンの工業的な大量生産の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造方法に関し、更に詳しくは、4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩を還元剤存在下で反応させ、光学的及び化学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジンを直接製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キラル3−ヒドロキシピロリジンまたはその誘導体化合物は抗生剤、鎮痛剤、血栓溶解剤、抗精神剤などの多様なキラル医薬品の核心中間体として有用であることが既に知られている。現在市販されている医薬品の中でもキラル3−ヒドロキシピロリジンまたはその誘導体化合物から誘導された例が多いが、実際に医薬品製造に使用されている例は次の通りである。血管拡張剤(カルシウム拮抗薬:バルニジピン)の核心中間体の原料[欧州特許公開第160451号、J.Med.Chem.,1986,29,2504-2511、特開昭61−267577号、特開昭61−63652号]、カルバペネム抗生剤[Heterocycles,Vol 24,No.5,1986、Tetrahedron Lett.,1984,25,2793、国際公開WO88/008845 号、J.Org.Chem.,1992,57,4352−4361]、キノロン系抗生剤[米国特許第4,916,141号、欧州特許公開第391169号、欧州特許公開第304087号]、鎮痛剤(κ−受容体作動薬)[欧州特許公開第398720号、欧州特許公開第366720号、欧州特許公開第366327号、J.Med.Chem.,1994,37,2138-2144]、神経伝達剤[国際公開WO01/019817号]である。更に、キラル3−ヒドロキシピロリジンまたはその誘導体化合物は、臨床試験中である新薬の核心中間体としてもその応用範囲が非常に広い。
【0003】
キラル3−ヒドロキシピロリジンの製造と係る従来の技術を見てみると下記の通りである。
【0004】
1番目の従来方法は、(R)−3−ヒドロキシ−L−プロリンを出発物質とし、脱炭酸反応であり、1段階反応により3−(R)−ヒドロキシピロリジンを合成する方法である[特開第2001−220372号、国際公開WO97/043256号、特開平5−255204号、Synlett,1995,55-57、Syn.Comm.,1994,24,1381-1387、Korean J.of Med.Chem.,1993,3,72-80、Syn.Comm.,1993,23,2691-2699、J.Chem.Soc.Perkin Trans.1.,1993,1421-1424、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2,827]。しかしながら、出発物質として使用された(S)−3−ヒドロキシ−L−プロリンは非常に高価であるため、大量生産のための経済的な方法としては利用が不可能である。
【0005】
2番目の従来方法は、D−リンゴ酸を原料物質とし、数種の製造段階を経て(S)−3−ヒドロキシピロリジンを得る方法である[Syn.Commun.,1985,15,587-598、J.Med.Chem.,1994,37,2138-2144]。しかしながら、この方法は数種の段階を経るため、大量生産のための経済的な方法としては利用が不可能である。
【0006】
3番目の従来方法は、3,4−エポキシ−1−ブタノールのアミンによるエポキシ開環反応にイオン5角形環形成反応を行い、(S)−3−ヒドロキシピロリジンを得る方法である[国際公開WO2003/097594号]。しかしながら、この方法は反応に使用される3,4−エポキシ−1−ブタノールが商業的に市販されていないだけでなく、原物質の製造過程が非常に複雑であり、原料需給に問題がある。
【0007】
4番目の従来方法は、3,4−エポキシ−1−ブタノールの誘導体である1,2,4−トリヒドロキシブタンを出発物質とし、水酸基の活性化反応に次いで、アミンの二重置換反応を行い、(S)−3−ヒドロキシピロリジンまたはその誘導体を得る方法である[国際公開WO2000/015610号]。しかしながら、この方法もやはり、出発物質の原料需給が容易ではないため、大量生産のための経済的な方法としては利用が不可能である。
【0008】
その他に従来方法として、3,4−ジヒドロキシ−1−ブタノールの誘導体から(S)−3−ヒドロキシピロリジンの合成方法[特開昭60−104061号]、3,4−ジヒドロキシ−1−ブチルアミンから(S)−3−ヒドロキシピロリジンの合成方法[特開昭57−56457号]、3−クロロ−1,2−プロパンジオールまたはその誘導体からシアン置換反応、シアン基の還元反応及び環形成反応を行う(S)−3−ヒドロキシピロリジンの合成方法[欧州特許第431521号、欧州特許第347818号]などが知られている。しかしながら、前記従来方法もやはり工業的に原料を供給することが非常に困難である。
【0009】
前述したように、現在まで知られている(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造方法は、高価な原料物質の使用及び複雑な製造過程を行うなどの理由により、工業的に大量生産が容易ではない。
【0010】
従って、容易に購入が可能であったり、安価な原料を出発物質として使用し、その製造過程が容易で経済的であり、工業的に利用が可能な(S)−3−ヒドロキシピロリジンの改善された製造方法の開発が切実に要求される。
【特許文献1】欧州特許公開第160451号公報
【特許文献2】特開昭61−267577号公報
【特許文献3】特開昭61−63652号公報
【特許文献4】国際公開WO88/008845号パンフレット
【特許文献5】米国特許第4,916,141号公報
【特許文献6】欧州特許公開第391169号公報
【特許文献7】欧州特許公開第304087号公報
【特許文献8】欧州特許公開第398720号公報
【特許文献9】欧州特許公開第366327号公報
【特許文献10】国際公開WO01/019817号パンフレット
【特許文献11】特開2001−220372号公報
【特許文献12】国際公開WO97/043256号パンフレット
【特許文献13】特開平5−255204号公報
【特許文献14】国際公開WO2003/097594号
【特許文献15】国際公開WO2000/015610号パンフレット
【特許文献16】特開昭60−104061号公報
【特許文献17】特開昭57−56457号公報
【特許文献18】欧州特許第431521号公報
【特許文献19】欧州特許第347818号公報
【非特許文献1】J.Med.Chem.,1986,29,2504-2511
【非特許文献2】Heterocycles,Vol 24,No.5,1986
【非特許文献3】Tetrahedron Lett.,1984,25,2793
【非特許文献4】J.Org.Chem.,1992,57,4352−4361
【非特許文献5】J.Med.Chem.,1994,37,2138-2144
【非特許文献6】Synlett,1995,55-57
【非特許文献7】Syn.Comm.,1994,24,1381-1387
【非特許文献8】Korean J.of Med.Chem.,1993,3,72-80
【非特許文献9】Syn.Comm.,1993,23,2691-2699
【非特許文献10】J.Chem.Soc.Perkin Trans.1.,1993,1421-1424
【非特許文献11】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2,827
【非特許文献12】Syn.Commun.,1985,15,587-598
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、出発物質として購入が容易であり、または、安価な光学活性4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩を使用して、還元及び環化反応を一容器内で同時に行う1段階製造過程による(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造方法を提供することにある。
【0012】
更に、本発明の別の目的は、単純な減圧蒸留により光学的または化学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジンを反応物から分離取得する方法を提供することにある。
【0013】
更に、本発明のまた別の目的は、工業的に大量生産が可能な工程からなる(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を実現する本発明は下記のような特徴を含む。
【0015】
即ち、本発明は下記化学式(2)に表される光学活性4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩を、還元剤存在下で反応させて下記化学式(1)に表される光学活性(S)−3−ヒドロキシピロリジンを製造する過程を含めてからなる光学活性(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造方法をその特徴とする。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
前記化学式(1)または(2)において、Rは炭素数1〜10の線形または分岐形のアルキル、アリール、またはアラルキルであり、HXはハロゲン化物酸、硫酸、リン酸などの無機酸、またはメタンスルホン酸などの有機酸である。
【0019】
更に、本発明は、前記還元剤としてボラン、水素化トリエチルホウ素リチウム(スーパーヒドリド(登録商標))、リチウムアルミニウムハイドライド及び水素化ホウ素ナトリウムからなる群から選択して使用することをその特徴とする。
【0020】
更に、本発明は前記還元剤と共に更に、酸、塩基、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、ヨード、三塩化アルミニウム、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群から選択された添加剤を混合して使用することをその特徴とする。
【0021】
更に、本発明は反応溶媒として、水;炭素数2〜10の線形、分岐形または環形エーテル;ジグライム;ジオキサン;炭素数1〜10の線形、分岐形または環形アルコール;炭素数6〜10の芳香族炭化水素;及び炭素数1〜6のハロゲン化アルキルからなる群から選択された単独または混合溶媒を使用することをその特徴とする。
【0022】
更に、本発明は、反応温度を0〜150℃の範囲に維持することを特徴とする。
【0023】
更に、本発明は、前記製造方法で製造された前記化学式(1)に表される光学活性(S)−3−ヒドロキシピロリジンを減圧蒸留法で精製する方法をその特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る光学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造方法によると、前記化学式(2)に表される光学活性4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩を前述した還元剤存在下で反応させ、直接前記化学式(1)に表される光学活性(S)−3−ヒドロキシピロリジンを合成する方法は現在まで発表されていない新規の製造方法である。
【0025】
更に、本発明において、出発物質として使用される前記化学式(2)に表される4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩は工業的に安価で大量に利用が可能である。
【0026】
更に、本発明の製造方法は収率が高く、反応条件も温和して大量生産工程に適用するのに適合している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明で出発物質として使用される前記化学式(2)に表される4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩は、下記化学式(3)に表される4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸からアルコールと酸触媒を利用した通常的なエステル化反応を通して製造して使用することができる。
【0028】
【化5】

【0029】
前記エステル化反応に使用されるアルコールは、炭素数1〜12のアルキルアルコールまたはベンジルアルコールを使用することができる。好ましくは、アルコールとしてメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールを使用する。前記アルコールは溶媒量として過量使用することができるが、その使用量は1〜20当量の範囲で使用することができ、好ましくは1〜7当量範囲で使用する。酸触媒としてはハロゲン化物酸、硫酸、リン酸、硝酸のような無機酸、またはメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸を使用することができる。前記酸触媒の使用量は1〜4当量範囲、好ましくは1〜2当量範囲で使用する。そして、エステル化反応は0〜150℃の温度範囲を維持するか、または還流反応温度を維持する条件で行う。
【0030】
本発明は前記のような簡単なエステル化反応を通して製造された前記化学式(2)に表される4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩を還元剤存在下で環化反応させて、目的とする下記化学式(1)に表される(S)−3−ヒドロキシピロリジンを製造する。
【0031】
【化6】

【0032】
本発明で使用される還元剤としては、ボラン、水素化トリエチルホウ素リチウム(スーパーヒドリド(登録商標))、リチウムアルミニウムハイドライド及び水素化ホウ素ナトリウムなどを使用することができる。還元剤として好ましくは、水素化ホウ素ナトリウムを使用する。前記還元剤の使用量は前記化学式(2)に表される4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩を基準として1〜10当量の範囲であり、好ましくは1〜5当量の範囲で使用する。
【0033】
更に、本発明では環化反応を行うのに、還元剤以外にも更に添加剤を使用することもできる。この時、添加剤としては酸、塩基、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、ヨード、三塩化アルミニウム、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩などを使用することができる。前記添加剤の使用により還元剤を活性化させて、環化反応条件を温和させ、反応収率を高める効果を得ることができる。これらの添加剤は使用された還元剤の量を基準に0.001〜10当量の範囲で使用することができる。
【0034】
還元剤と共に使用される添加剤についてより詳しく説明すると下記の通りである。
【0035】
添加剤として使用される酸は塩酸、臭素酸、ハロゲン化物酸、硫酸、リン酸、スルホン酸のような無機酸、または酢酸、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、またはハロゲン化アセチルのような有機酸を使用することができる。酸を添加剤として使用する場合、還元剤の使用量を基準として、好ましくは1〜5当量の範囲で使用し、特に好ましくは1〜3当量の範囲で使用する。
【0036】
添加剤として使用される塩基は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属塩基を使用することができる。塩基を添加剤として使用する場合、還元剤の使用量を基準として、好ましくは0.001〜1当量の範囲で使用し、特に好ましくは0.01〜0.5当量の範囲で使用する。
【0037】
添加剤として使用される三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、ヨード、三塩化アルミニウムは還元剤の使用量を基準として、好ましくは1〜5当量の範囲で使用し、特に好ましく1〜3当量の範囲で使用する。
【0038】
添加剤として使用される第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩は、水素または炭素数1〜20のアルキル基が置換された第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウムのハロゲン化合物が含まれる。第4級アンモニウム塩は具体的に、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化モノアルキルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキルアンモニウム、ハロゲン化トリアルキルアンモニウム、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムなどが含まれる。前記第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウムとして好ましくは、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ヘキサデシルトリブチルホスホニウムを使用する。前記第4級塩を添加剤として使用する場合、還元剤の使用量を基準として、好ましくは0.001〜1当量の範囲で使用する。
【0039】
本発明の環化反応に使用される溶媒は、水;炭素数2〜10の線形、分岐形または環形エーテル;ジグライム;ジオキサン;炭素数1〜10の線形、分岐形または環形アルコール;炭素数6〜10の芳香族炭化水素;及び炭素数1〜6のハロゲン化アルキルからなる群から選択された単独または混合溶媒を使用することができる。本発明の環化反応に使用される溶媒をより具体的に例示すると、水、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタンの中から選択して使用することができる。
【0040】
本発明の環化反応温度は0〜150℃の範囲であり、好ましくは0〜100℃の範囲を維持する。
【0041】
前記のような条件で環化反応が終了されると、反応液のpHが4以下となるように酸処理をし、生成された塩を濾過して除去し、濾過された濾液を再び水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのようなアルカリで処理し、濾過する後処理過程を行い、前記化学式(1)に表される(S)−3−ヒドロキシピロリジンを容易に得ることができる。
【0042】
更に、前記のような後処理工程で収得した前記化学式(1)に表される(S)−3−ヒドロキシピロリジンは簡単な精製方法、例えば、減圧蒸留を通して化学的及び光学的純度をより向上させることもできる。
【0043】
前述した通り、本発明は下記実施例に依拠して更に詳しく説明する。下記の実施例は本発明を詳しく説明するためのものであり、本発明を限定するためのものではなく、記載されていない本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者が容易に実施することができることは当然であり、本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0044】
実施例1:4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸メチルエステル塩酸塩の製造
温度計、還流コンデンサー及び攪拌器が装着された10L4口丸底フラスコに、4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸(8.4mol、1kg)とメタノール(84mol、2.688kg)を加え、混合物の温度を5℃以下に冷却した。塩化チオニル(4.6mol、550kg)を10℃以下の温度で5時間徐々に滴下した。滴下が完了すると、加熱して10時間還流して攪拌した。反応が完結されたことをTLCで確認した後、減圧濃縮して4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸メチルエステル塩酸塩1,393g(98%)を得た。
【0045】
実施例2:4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エチルエステル硫酸塩の製造
前記実施例1でメタノールの代りにエタノール3,864gを使用し、塩化チオニルの代りに硫酸(4.6mol、451g)を使用して同様の方法で実施し、4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エチルエステル硫酸塩1,998g(97%)を得た。
【0046】
実施例3:(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造
10L3口丸底フラスコに水5kgと水酸化ホウ素ナトリウム(8.84mol、343g)を入れ、5℃まで冷却した。水1.5kgに4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸メチルエステル塩酸塩(5.89mol、1kg)を溶かした溶液を、反応温度が15℃を超えないように注意しながら、前記フラスコに徐々に加えた後、反応温度を20℃を維持して6時間攪拌した。反応が完結したことを確認した後、反応混合物を冷却して5℃以下に維持した。メタノール2kgを加え、1時間攪拌して水素化ホウ素ナトリウムを非活性化した。ここに濃塩酸を加えて溶液のpHを1以下に合わせ、5℃で1時間攪拌した。生成された結晶を減圧濾過して除去し、得られた濾液に10N水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加えてpH11以上に調節する。再び生成された固体は濾過して除去し、減圧濃縮して精製されなかった(S)−3−ヒドロキシピロリジンを得た。この精製されなかった(S)−3−ヒドロキシピロリジンを真空ポンプを利用して減圧蒸留し、光学的及び化学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジン436g(85%)を得た。
【0047】
H NMR(DO)δ4.3(m、1H)、3.6(m、2H)、3.0(m、2H)、2.1(M、1H)、1.8(m、1H)であった。
【0048】
実施例4:(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造
10L3口丸底フラスコにジオキサン5kgと水酸化ホウ素ナトリウム(8.84mol、343g)を入れ、15℃まで冷却した。4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸メチルエステル塩酸塩(5.89mol、1kg)を反応温度が15℃を超えないように注意しながら、徐々に加えた。この反応溶液にトリフルオロ酢酸(8.84mol、1,008g)を内部温度が50℃以下に維持しながら滴下した。滴下完了後、内部温度を100℃まで温度を上昇させた後、15時間攪拌した。反応終了後、溶液を冷却してメタノール1kgを徐々に滴下した。生成された固体を減圧濾過した後、濾液を冷却した。冷却された濾液に10N水酸化ナトリウム水溶液500gを徐々に加えてpH11以上に調節し、再び生成された固体は濾過して除去した。この精製されなかった(S)−3−ヒドロキシピロリジンを真空ポンプを利用して減圧蒸留し、光学的及び化学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジン466g(87%)を得た。
【0049】
実施例5:(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造
前記実施例4でジオキサンの代りにトルエンを使用し、トリフルオロ酢酸の代りにメタンスルホン酸を使用し、反応温度を60℃に変更して同様な方法で反応及び精製し、光学的及び化学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジン4396g(82%)を得た。
【0050】
実施例6:(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造
水8500mLに水酸化ナトリウム714g(17.84mol、20eq)を20℃以下で徐々に投入した後、臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム903g(1.78mol、0.2eq)と水酸化ホウ素ナトリウム675g(17.84mol、2.0eq)を徐々に投入した。投入終了後、内部温度を100℃まで温度を上昇させ、前記実施例1で製造された4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸メチルエステル塩酸塩1,514g(8.92mmol)を徐々に投入した。滴下が終了した後、70℃の温度で5時間反応させ、反応液を室温まで冷却させた後、水層を分離した。分離された水層にメタノール1kgを徐々に滴下した後、濃塩酸を加えてpH1に調節した。生成された固体を減圧濾過し、濾過された濾液を冷却した。冷却された濾液に10N水酸化ナトリウム水溶液500gを徐々に加え、pH11以上に調節し、再び生成された固体は濾過して除去した。濾液を減圧濃縮して精製されなかった(S)−3−ヒドロキシピロリジンを得た。この精製されなかった(S)−3−ヒドロキシピロリジンを真空ポンプを利用して減圧蒸留して、光学的及び化学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジン645g(83%)を得た。
【0051】
実施例7:(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造
5L3口丸底フラスコに、4−アミノ(S)−2−ヒドロキシ酪酸エチルエステル硫酸塩(1mol、245g)、ジグライム(10.13mol、1.516kg)と水酸化ホウ素ナトリウム(4mol、151g)を25℃で投入し、硫酸200gを5時間徐々に滴下した。滴下後、80℃まで温度を上昇させて12時間維持すると、反応が終結した。反応が完結すると、メタノール1kgを投入して反応混合物を非活性化させ、濃塩酸(4mol、395g)を投入して中和した。反応混合物を10N水酸化ナトリウム水溶液350mLでpH11以上に作り、析出された塩を濾過して除去した。濾液を減圧濃縮し、精製されなかった(S)−3−ヒドロキシピロリジンを得た。精製されなかった(S)−3−ヒドロキシピロリジンを真空ポンプを利用して減圧蒸留して、光学的及び化学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジン72g(83%)を得た。
【0052】
実施例8:(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造
10L3口丸底フラスコに、テトラヒドロフラン5Lと水酸化ホウ素ナトリウム(4mol、151g)を25℃で投入し、ヨード(2mol、492g)を5時間徐々に滴下した。この溶液に4−アミノ−2−滴下後、80℃まで温度を上昇させて12時間維持すると、反応が終結した。反応が完結すると、メタノール1kgを投入して反応混合物を非活性化させ、濃塩酸(4mol、395g)を投入して中和した。反応混合物を10N水酸化ナトリウム水溶液350mLでpH11以上に作り、析出された塩を濾過して除去した。濾液を減圧濃縮し、精製されなかった(S)−3−ヒドロキシピロリジンを得た。精製されなかった(S)−3−ヒドロキシピロリジンを真空ポンプを利用して減圧蒸留して、光学的及び化学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジン72g(83%)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0053】
前述したように、本発明は安価で、商業的に大量利用が可能な4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸から通常の簡単な操作で製造することができる4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩を出発物質とし、(S)−3−ヒドロキシピロリジンを工業的であり、経済的に製造することができる方法を提案している。
【0054】
更に、製造された(S)−3−ヒドロキシピロリジンは別途の精製過程を経ずに、単純な減圧蒸留によっても、光学的または化学的に純粋な(S)−3−ヒドロキシピロリジンを製造することができるため、医薬品の原料物質として直接使用することができる。
【0055】
更に、本発明に(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造方法は温和な条件で反応が行われるため、工業的に大量合成が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(2)に表される光学活性4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩を、還元剤の存在下で反応させて下記化学式(1)に表される光学活性(S)−3−ヒドロキシピロリジンを製造する過程を含めてからなることを特徴とする光学活性(S)−3−ヒドロキシピロリジンの製造方法。
【化1】

【化2】

前記化学式(1)または(2)において、Rは炭素数1〜10の線形または分岐形のアルキル、アリールまたはアラルキルであり、HXはハロゲン酸、硫酸、リン酸、またはメタンスルホン酸である。
【請求項2】
前記Rはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチルまたはベンジルを表し、HXはHCl、HBr、HSO、HPOまたはCHSOHであることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記還元剤はボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム及びリチウムアルミニウムハイドライドからなる群から選択して使用することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記還元剤は水素化ホウ素ナトリウムを使用することを特徴とする、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
前記還元剤は前記化学式(2)に表される光学活性4−アミノ−(S)−2−ヒドロキシ酪酸エステル塩化合物を基準として1〜5当量の範囲で使用することを特徴とする、請求項1、3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記還元剤と共に更に、酸、塩基、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、ヨード、三塩化アルミニウム、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群から選択された添加剤を使用することを特徴とする、請求項1、3または4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記添加剤として、酸は塩酸、臭素酸、ハロゲン化物酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸及びハロゲン化アセチルからなる群から選択して使用することを特徴とする、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記添加剤として、塩基は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなるアルカリ金属塩基の中から選択して使用することを特徴とする、請求項6記載の製造方法。
【請求項9】
前記添加剤として、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩は、ハロゲン化アンモニウム及びハロゲン化ヘキサデシルトリブチルホスホニウムの中から選択して使用することを特徴とする、請求項6記載の製造方法。
【請求項10】
前記反応溶媒として、水;炭素数2〜10の線形、分岐形または環形エーテル;ジグライム;ジオキサン;炭素数1〜10の線形、分岐形または環形アルコール;炭素数6〜10の芳香族炭化水素;及び炭素数1〜6のハロゲン化アルキルからなる群から選択された単独または混合溶媒を使用することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項11】
前記反応溶媒としては、水、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム及びジクロロメタンからなる群から選択された単独または混合溶媒を使用することを特徴とする、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
前記反応温度は0〜150℃の範囲であることを特徴とする、請求項1または10記載の製造方法。
【請求項13】
前記化学式(1)に表される光学活性(S)−3−ヒドロキシピロリジンを減圧蒸留法で精製することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。