説明

光学的情報読取装置

【課題】 高輝度で効率良く照明光を照射することができながらも、照明光学系の構成を簡単で安価に済ませる。
【解決手段】 本体ケース内に、読取対象に照明光を照射する照明光学系4、結像レンズ9及び受光センサを備え読取対象からの反射光を受光してバーコードを読取る受光光学系を設ける。照明光学系4を、指向角が広く高輝度の3個のLED11と、それらLED11からの光を集光して横長な帯状の照明光とする1個の照明用レンズ12から構成する。照明用レンズ12を、ベース部と、入射面側に位置し3個のLED11に夫々対応して入射面側に3個が横に並びLED11から発せられた光を集光する球面状レンズ部14と、出射面側に位置し入射光を垂直方向(縦方向)に集光するシリンダレンズ部13とを一体に有して構成する。各LED11を、照明用レンズ12の焦点位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光源及び照明用レンズを有し、情報コードが記された読取対象に向けて照明光を照射する照明光学系を備えた光学的情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば情報コードとしてのバーコード(一次元コード)を読取るハンディタイプのバーコードリーダは、読取口を有する本体ケース内に、読取対象(バーコードが印刷されたラベル)に対し横長な照明光を照射する照明光学系と、読取対象からの反射光を、結像レンズを介してCCDセンサ等の受光センサより受光(撮像)する受光光学系とを備えて構成されている。前記照明光学系は、照明光源としての複数個のLEDの前方に、プラスチック成形品からなるいわゆるかまぼこ型の照明用レンズを配置して構成される。この場合、読取口の近くでも遠くでも明るい光が得られるように、前記照明用レンズには、LEDからの光を縦方向に集光し、横方向には適度な照度分布となるように拡散させる機能が求められる。
【0003】
具体的には、特許文献1には、バーコードリーダの照明光学系に用いられる照明用レンズとして、入射面側が、縦に延びる微細な凹凸を多数形成したレンチキュラーレンズとされ、出射面側が、円筒面からなるシリンダレンズとされたものが開示されている。また、この特許文献1では、照明光源として、指向角の狭い(例えば30度以下)のLEDが採用されている。更に、別の例として、特許文献2には、照明用レンズとして、LEDからの出射光を集光して横方向に均一な光とする第1のレンズと、その光を縦方向に集光して横長な帯状とする第2のレンズとの2個のレンズを備えたものが開示されている。
【特許文献1】特開2004−266621号公報
【特許文献2】特許第2690125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、次のような改善すべき点があった。即ち、特許文献1に記載された照明用レンズでは、微細形状を有するレンチキュラーレンズを採用しているため、成形のために微細な型加工が必要となり、成形型の寿命も比較的短くなるため、コスト高を招いてしまうものとなっていた。また、照明光源として、指向角の狭い特殊なLEDを採用しなければならない事情もあった。
【0005】
一方、特許文献2に記載された照明用レンズでは、2個のレンズを用いているため、部品数が多く組付け工数も掛かってコスト高となると共に、装置全体の大型化を招いてしまう虞があった。さらに、高輝度の照明光を得るために光源となるLEDの数を増やそうとしても、第1のレンズに近い位置に配置されたLEDからの光は集光されるが、離れて配置されたLEDからの光が集光されず、照明光の照射効率が低下する不具合がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、読取対象に向けて照明光を照射する照明光学系を備えるものにあって、高輝度で効率良く照明光を照射することができながらも、照明光学系の構成を簡単で安価に済ませることができる光学的情報読取装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の光学的情報読取装置は、照明光源及び照明用レンズを有し、読取対象に向けて照明光を照射する照明光学系を備えるものにあって、前記照明光源を、2個以上のLEDを備えて構成し、前記照明用レンズを、入射面側に、前記各LEDに対応してそれらLEDから発せられた光を集光するレンズ形状を備えると共に、出射面側に、入射光を情報コードの読取幅方向に対して垂直方向に集光するレンズ形状を備えるように構成したところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0008】
この構成によれば、照明光学系においては、複数個のLEDから発せられた光は、夫々照明用レンズの入射面側に入射されて集光された後、照明用レンズの出射面により情報コードの読取幅方向に対して垂直方向に集光され、読取幅方向に横長な照明光として出射される。このとき、照明用レンズの入射面は、LEDからの光を拡散するのではなく集光する機能を有しているので、レンチキュラーレンズのような微細な形状が必要なく、比較的簡単なレンズ形状で済ませることができる。しかも、1個の照明用レンズで済ませることができる。さらに、照明用レンズの入射面側には、各LEDに対応して集光のためのレンズ形状が設けられるので、複数のLEDからの光を効率良く照明光とすることができる。また、照明光源として、指向角の狭い特殊なLEDを必要とすることなく、指向角の広い(例えば90°以上)の高輝度のLEDを採用することが可能となる。
【0009】
従って、読取幅方向に均等な照度分布を有し、読取口の近くでも遠くでも明るい照明光が得られるようになる。この結果、請求項1の発明によれば、読取対象に向けて照明光を照射する照明光学系を備えるものにあって、高輝度で効率良く照明光を照射することができながらも、照明光学系の構成を簡単で安価に済ませることができるという優れた効果を得ることができるものである。
【0010】
このとき、より具体的には、前記照明用レンズの入射面側を、前記各LEDに対応して、それらLED側に凸となる球面又は非球面の曲面状に構成することができる(請求項2の発明)。これにより、各LEDから発せられた光を入射面側の曲面状の凸により夫々集光することができ、効率の良い照明光を生成することができる。しかも、照明用レンズに微細形状が必要なくなり、成形型の寿命を長くすることができる。尚、照明用レンズの出射面側については、従来と同様の、円筒面状のレンズ(シリンダレンズ)を採用することができる。
【0011】
また、前記各LEDを、前記照明用レンズの焦点位置に配置する構成とすることができ(請求項3の発明)、これにより、平行光からなる照明光を出射することが可能となる。或いは、前記各LEDを、前記照明用レンズと、該照明用レンズの焦点位置との間に配置する構成としても良く(請求項4の発明)、これにより、先方にいくほど拡がるような照明光を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を、バーコード(一次元コード)を読取るハンディタイプのバーコードリーダ(バーコードハンディターミナル)に適用した一実施例について、図面を参照しながら説明する。本実施例に係る光学的情報読取装置たるバーコードリーダ1は、図4にその外観を示すように、ユーザが片手で持って操作可能な大きさの縦長形状をなす本体ケース2内の先端側に、ラベル等の読取対象Rに記録された情報コードとしてのバーコードBを読取るための読取機構3(図3参照)を配設して構成される。
【0013】
図3に示すように、前記読取機構3は、読取対象Rに向けて横長な帯状の照明光Lを照射する照明手段としての照明光学系4、読取対象Rからの反射光を受光(撮像)しバーコードBを読取る受光手段としての受光光学系5、更に、図示はしないが、読取対象Rに対して読取位置を示すマーカ光を照射するマーカ光学系を備えて構成される。照明光学系4及び受光光学系5については後述する。
【0014】
図4に示すように、前記本体ケース2の先端面には、横長な矩形状をなし透光性を有する読取口2aが設けられている。また、本体ケース2の上面部には、表示部6やキー操作部7が設けられ、本体ケース2の左右の側面部には、読取指示用のトリガキー8が設けられている。さらに、これも図示はしないが、前記本体ケース2内には、全体の制御や読取ったバーコードBのデコード処理等を行う制御回路、外部との通信を行うための通信回路、駆動電源となる二次電池等が設けられている。
【0015】
前記受光光学系5は、図3に示すように、本体ケース2内の先端側に配設された例えばCCDエリアセンサ(或いはCCDラインセンサ)からなる受光センサ9と、その受光センサ9の前方に配置された結像レンズ10とを備えて構成されている。詳しく図示はしないが、前記結像レンズ10は、例えば鏡筒内に複数枚のレンズを配設して構成される。この受光光学系5の読取光軸Oは、前記読取口2aの中心を該読取口2a面に直交する状態(水平状態)で延びている。また、受光光学系5は、横長な読取視野を有している。
【0016】
さて、前記照明光学系4について、図1、図2、図5も参照して述べる。この照明光学系4は、図1に示すように、照明光源としての2個以上(複数個)のLED11と、その前部に位置しそれらLED11からの光を集光して横長な帯状の照明光Lとする1個の照明用レンズ12とを備えて構成される。このとき、図1に示すように、照明光学系4は、前記結像レンズ9の左右の側部に位置して、2組が、読取光軸Oに対して左右対称的に設けられている。前記LED11は、この場合、指向角が広く(90°以上例えば110°)、高輝度を有した汎用のLEDが採用され、3個が横方向に並んで設けられている。
【0017】
そして、前記照明用レンズ12は、次のように構成されている。即ち、図2にも示すように、この照明用レンズ12は、透明プラスチックの成形品からなり、前記3個が並んだLED11に対応した横長形状に構成されている。この照明用レンズ12は、入射面側(LED11を向く側)に、各LED11に対応してそれらLED11から発せられた光を集光するレンズ形状を備えると共に、出射面側(前面側)に、入射光をバーコードBの読取幅方向(バーの並ぶ方向)に対して垂直方向(縦方向)に集光するレンズ形状を備えて構成される。
【0018】
具体的には、図2に示すように、この照明用レンズ12は、横長な矩形薄板状をなすベース部12aと、その前面側に位置するシリンダレンズ部13と、ベース部12aの後面側に位置するこの場合3個の球面状レンズ部14とを一体に有して構成されている。前記シリンダレンズ部13は、ベース部12aの前面において横方向ほぼ全体に延び、軸方向を横方向とした円筒面状(いわゆるかまぼこ型)に構成されている。前記球面状レンズ部14は、後方(LED11側)に凸となる球面状(ドーム状)に構成され、前記3個のLED11に夫々対応(対向)して3個が横に並んで設けられている。
【0019】
また、本実施例では、前記各LED11は、照明用レンズ12の後方の焦点位置に配置されるようになっている。このとき、図5にいわゆるかまぼこ型のレンズAについて例示するように、幾何光学の一般式において、レンズAの焦点距離をf、出射面のレンズ曲率をr1、入射面のレンズ曲率をr2、レンズAの屈折率をNとすると、
(1/f)=(N−1){(1/r1)−(1/r2)}
の関係がある。そして、焦点距離fの位置に光源pを配置すれば、レンズAの出射面から出射される光が、縦方向に拡がりのない平行光となることが知られている。
【0020】
以上のように構成された照明光学系4により、次の作用説明でも詳述するように、LED11から発せられた光が照明用レンズ12により集光され、横方向(読取幅方向)に広がると共に縦方向には細い帯状の照明光Lとして、前記読取口2aから前方(図3で左方)に向けて出射される。これにて、読取対象Rに対して読取幅方向に長い照明光Lが照射されるようになっている。このとき、左右の照明光学系4(照明用レンズ12)から出射される照明光Lの照明光軸は、前記受光光学系5の読取光軸Oを含む光学的平面と同一の光学的平面内(水平面内)に位置されるようになっている。尚、この照明光Lは、バーコードBの読取り時(画像取込み時)に点灯されるようになっている。
【0021】
次に、上記構成の作用について述べる。バーコードリーダ1によりバーコードBを読取るにあたっては、ユーザは、本体ケース2を読取対象Rから適当な距離だけ離した状態で、その読取口2aを、横長のバーコードBが記録された読取対象Rに対してほぼ平行となるように向ける。この場合、図示しないマーカ光が読取対象Rに照射されることによって、ユーザは、読取口2aと読取対象Rとの位置合せを行うことができる。
【0022】
そして、その状態で、トリガキー8のオン操作が行われると、図4に示すように、マーカ光が消灯された上で、LED11が点灯され、照明光学系4により読取口2aを通してバーコードB部分に横長な帯状の照明光Lが照射される。そして、バーコードBからの反射光が読取口2aを通して入射されて結像レンズ10を介して受光センサ9上に結像され、以てバーコードBが読取られる。このとき、照明光軸と読取光軸Oとが同一の光学的平面内(水平面内)に配置されることによって、良好な読取りが行われる。
【0023】
ここで、上記した照明光学系4においては、各LED11から前方に向けて発せられた光は、指向角が広く円形状に拡散するような光として、照明用レンズ12に入射されるようになる。そして、その入射光が、入射面側の球面状レンズ部14によって集光されるようになり、その状態で照明用レンズ12内を通り、さらに、出射面側のシリンダレンズ部13によって縦方向に集光され、読取幅方向に横長な照明光Lとして出射される。また、照明光Lは、縦方向に関して拡がりのない(ごく少ない)平行光として出射されるようになる。
【0024】
このとき、照明用レンズ12の入射面側に、3個のLED11に夫々対応した集光用の球面状レンズ部14が設けられているので、全てのLED11からの光を効率良く照明光Lとすることができ、しかも、指向角の広い高輝度のLED11を採用することが可能となった。これにより、読取口2aの近くでも遠くでも明るく、横方向に適度(均一)な照度分布となった照明光Lを得ることができた。
【0025】
そして、本実施例の照明用レンズ12は、入射面側に球面状レンズ部14を備えるので、レンチキュラーレンズを採用したものと異なり、微細な形状が必要なく、比較的簡単なレンズ形状で済ませることができる。これに伴い、照明用レンズ12の成形のための型形状も簡単となり、成形型の寿命を長くすることができ、ひいては照明用レンズ12の製造コストを安価に済ませることができる。しかも、複数枚のレンズを用いるものと異なり、1個の照明用レンズ12で済ませることができるので、本体ケース2内にコンパクトに配設することができ、構成の複雑化や装置全体の大型化を抑えることができる。
【0026】
このように本実施例によれば、照明光学系4を構成する照明用レンズ12を、入射面側に各LED11に対応した球面状レンズ部14を一体に設けると共に、出射面側にシリンダレンズ部13を一体に設けて構成したので、高輝度で効率良く照明光Lを照射することができながらも、照明光学系4の構成を簡単で安価に済ませることができるという優れた効果を得ることができる。また、照明光源として、指向角の広い高輝度のLED11を採用することができるものである。
【0027】
尚、上記実施例では、各LED11を照明用レンズ12の焦点位置に配置するように構成したが、各LEDを、照明用レンズと該照明用レンズの焦点位置との間に配置する構成としても良く、これによれば、先方にいくほど拡がるような照明光を得ることができる。また、上記実施例では、照明用レンズ12の入射面側に球面状レンズ部14を設けるようにしたが、球面に限らず、非球面(例えば放物線を描くような曲面)状であっても良く、各LEDからの光を集光するレンズ形状であれば様々な形状を採用することができる。その他、LEDの個数や指向角などについても一例を示したに過ぎない等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、照明光学系部分の構成を概略的に示す平面図
【図2】照明用レンズの構成を示す背面図(a)、平面図(b)、側面図(c)
【図3】バーコードリーダの先端側の内部構成を示す縦断側面図
【図4】読取対象に照明光を照射している様子を概略的に示す図
【図5】レンズの曲率と焦点距離との関係を示す図
【符号の説明】
【0029】
図面中、1はバーコードリーダ(光学的情報読取装置)、2は本体ケース、4は照明光学系、5は受光光学系、9は受光センサ、10は結像レンズ、11はLED(照明光源)、12は照明用レンズ、13はシリンダレンズ部、14は球面状レンズ部、Lは照明光、Rは読取対象を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光源及び照明用レンズを有し、情報コードが記された読取対象に向けて照明光を照射する照明光学系を備えた光学的情報読取装置であって、
前記照明光源は、2個以上のLEDを備えて構成され、
前記照明用レンズは、入射面側に、前記各LEDに対応してそれらLEDから発せられた光を集光するレンズ形状を備えると共に、出射面側に、入射光を前記情報コードの読取幅方向に対して垂直方向に集光するレンズ形状を備えることを光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記照明用レンズの入射面側は、前記各LEDに対応して、それらLED側に凸となる球面又は非球面の曲面状に構成されていることを特徴とする請求項1記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記各LEDは、前記照明用レンズの焦点位置に配置されることを特徴とする請求項1または2記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記各LEDは、前記照明用レンズと、該照明用レンズの焦点位置との間に配置されることを特徴とする請求項1または2記載の光学的情報読取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−26040(P2007−26040A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206624(P2005−206624)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】