説明

光学的情報読取装置

【課題】読取対象物に複数並べて形成された情報コードを読み取ることが可能な光学的情報読取装置において、読み取り作業をより効率的に行うことができ、作業者の操作負担を効果的に低減し得る構成を提供する。
【解決手段】ケース2の読取口4側に取り付けられた車輪40と読取対象物Rとの接触が維持された状態で、ケース2の移動によって車輪40が回転するようになっている。そして、制御部10は、回転検知結果に基づいて読取対象物Rに、複数並べて形成されたバーコードBの読み取りタイミングを制御するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、バーコード、QRコード等の情報コードを光学的に読み取る光学的情報読取装置に関する技術として、例えば下記特許文献1、2に示すものが知られている。
特許文献1に示すバーコードリーダ(光学的情報読取装置)(10)は、読取対象物(W)に形成されたバーコード(B)に対し照明光(Lf)を照射する照明光源(21)と、バーコード(B)からの反射光(Lr)を受光する受光センサ(28)とを備えている。さらに、読取対象物(W)と当接して回転することで、読取対象物(W)の皺を伸ばすローラ状当接部材(61)を備えており、このローラ状当接部材(61)が読取対象物(W)に当接した状態で、バーコード(B)に対して照明光(Lf)を照射して読み取るように構成されている。また、特許文献1では、トリガースイッチ(50)の操作をトリガーとしてバーコードの読み取りが開始されるようになっている。
【0003】
特許文献2に示すコードリーダ(情報コード読取装置)(1)は、1次元配列の光センサ(6)を備えており、1次元コード及び2次元コードを読み取り可能に構成されている。この特許文献2では、2次元コードを読み取る場合、読取対象(9)上を読取口が通過するようにして、ローラ(15)でコードリーダ(1)を移動させると共に、このローラ(15)の回転角度を検出し、ローラの移動量を検出するようにしている。そして、トリガスイッチが押されると、光センサ(6)にて走査信号に応じたライン走査が行われ、制御部(24)にて撮像された2次元画像信号に基づいた2次元コードの検出及びデコード処理を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2008−181403号公報
【特許文献2】特開2003−22411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、情報コードの用途も多様化しており、その配置も様々である。その中には、読取対象物に情報コードを複数並べて配置したようなものもあり、このような情報コードを読み取る場合には、読み取り作業の効率性や作業負担が問題となる。例えば、複数並べられた情報コードを複数まとめて読み取ろうとした場合、上述した特許文献1や2の構成では、光学的情報読取装置の読取口を各情報コードの位置に少しずつずらしながら、各情報コードの読み取り毎にトリガスイッチを押さなければならない。このように作業者によるスイッチ操作に大きく依存する構成では、作業の効率化が難しく、作業者の操作負担も大きくならざるを得ない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、読取対象物に複数並べて形成された情報コードを読み取ることが可能な光学的情報読取装置において、読み取り作業をより効率的に行うことができ、作業者の操作負担を効果的に低減し得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、読取対象物に複数並べて形成された情報コードを読み取り可能な光学的情報読取装置であって、読取口が形成されたケースと、前記読取口を介して前記情報コードを光学的に読み取る読取手段と、前記ケースの前記読取口側に取り付けられ、その取付位置で回転可能に保持される回転体と、前記回転体の回転を検知する回転検知手段と、を備え、前記回転体と前記読取対象物との接触が維持された状態で前記ケースの移動によって前記回転体が回転するように構成されており、前記読取手段は、前記回転検知手段による回転検知結果に基づいて前記情報コードの読み取りタイミングを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、ケースの読取口側に取り付けられた回転体と読取対象物との接触が維持された状態で、ケースの移動によって回転体が回転するようになっている。そして、読取手段は、回転検知手段による回転検知結果に基づいて情報コードの読み取りタイミングを制御するように構成されている。この構成によれば、回転体の回転にともなって情報コードの読み取りタイミングが自動的に制御される。このため、読取対象物に複数並べて形成された情報コードを読み取る際には、各情報コードの読み取り毎にトリガスイッチ等の操作をするといった作業を省略することができるので、読み取り作業をより効率的に行うことができ、作業者の操作負担を効果的に低減することができる。
【0009】
請求項2の発明では、読取手段は、回転検知手段により回転体の回転開始が検出されたことを条件として情報コードの読取動作を開始するように構成されている。この構成によれば、回転体の回転が停止しているときには確実に読み取り動作を停止させることができるため、回転体が回転せずに読み取りがなされない蓋然性が高い時期に効果的に省電力化を図ることができる。
【0010】
請求項3の発明では、読取手段は、データ取得手段によって取得される情報コードの間隔と、回転量測定手段により測定された回転量とに基づき、複数並んで配置される情報コードの2番目以降の読み取りタイミングを決定するようにしている。この構成によれば、2番目以降の情報コードを読み取るタイミングを、取得された間隔データ及び実測された回転量に基づいて適切に決定することができるため、複数の情報コードをより確実に読み取ることができる。
【0011】
請求項4の発明では、データ取得手段によって取得された情報コードの間隔と、回転量測定手段によって測定された回転量とが、所定の関係にある場合に、規制手段により回転体の回転を規制するように構成されている。この構成によれば、複数の情報コードの読み取り過程において、読み取り不良が生じた可能性が高い状態を迅速に検出し、装置の移動動作を規制することができる。
【0012】
請求項5の発明では、読取対象物に、複数のバーコードが、各バーコードのバー方向の向きを揃えた構成でそのバー方向に沿って並んで形成されてなる情報コードを読み取るように構成されている。そして、回転体と読取対象物との接触が維持された状態で、複数のバーコードの並びに沿ってケースが移動されたときに、読取手段によって既に読み取りがなされたバーコードの読み取り結果と、データ取得手段によって取得されたバーコードの間隔のデータと、回転量測定手段によって測定された回転量とに基づいて、既に読み取りがなされたバーコードよりも後のバーコードの配置領域を推定して読み取りを行うようにしている。上記のように複数のバーコードがバー方向に並んだ構成では、各バーコードにおいてバー方向のいずれかの位置で読み取りを行えばよく、既に読み取りがなされたバーコードの読み取り結果と、バーコードの間隔のデータと、測定された回転量とに基づいて後のバーコードの配置領域を推定して読み取りを行えば、作業者に特別な位置合わせ操作を強いることなくそのような位置で読み取りを行い易くなる。
【0013】
請求項6の発明では、読取手段による情報コードの読み取りが失敗であると判定手段により判定された場合に、規制手段により回転体の回転を規制するように構成されている。この構成によれば、複数の情報コードの読み取り過程において、読み取り不良が生じると、装置の移動動作が規制されるので、情報コードの不読を抑制することができる。
【0014】
請求項7の発明では、判定手段の判定結果を報知手段により報知するようにしている。この構成によれば、作業者は、情報コードの読み取りが成功か失敗かを確認しながら読み取り作業を行うことができるので、情報コードの不読をより防止することができ、複数の情報コードをより確実に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置によりバーコードを読み取る様子を説明する説明図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の構成を概略的に例示する説明図である。
【図3】図3(A)は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。図3(B)は、情報コード読取部の構成を例示するブロック図である。
【図4】図4(A)は、回転計の構成を説明する説明図であり、図4(B)は、光学式スケールの構成を説明する説明図である。
【図5】図5(A)は、光学式スケールの構成を説明する説明図であり、図5(B)は、図5(A)のA−A断面を概略的に示す断面概略図であり、図5(C)は、図5(A)のB−B断面を概略的に示す断面概略図である。
【図6】図6は、回転計による回転量の測定を説明する説明図であり、図6(A)は、車輪の回転角度検出信号を示す波形図であり、図6(B)は、図6(A)を波形整形して得られた走査信号の波形図である。
【図7】図7(A)は、車輪のブレーキ機構を説明する説明図であり、図7(B)は、ソレノイドアクチュエータの構成を説明する説明図である。
【図8】図8は、車輪のブレーキ機構を説明する説明図である。
【図9】図9(A)は、車輪のブレーキ機構を説明する説明図であり、図9(B)は、車輪の回転が規制される前の様子を説明する説明図であり、図9(C)は、車輪の回転が規制された様子を説明する説明図である。
【図10】図10は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置における読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る光学的情報読取装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(全体構成)
まず、図1〜図3等を参照して第1実施形態に係る光学的情報読取装置1の全体構成について説明する。なお、図1は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置によりバーコードを読み取る様子を説明する説明図である。図2は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の構成を概略的に例示する説明図である。図3(A)は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。図3(B)は、情報コード読取部の構成を例示するブロック図である。
【0017】
図1に示すように、光学的情報読取装置1は、読取対象物Rに表示されたバーコード等の情報コード(以下、単に「バーコードB」ともいう)を読み取る装置として構成されている。そして、光学的情報読取装置1は、図2に示すように、全体的に長手状に構成されており、長手状のケース2によって外郭が構成され、このケース2の内部に各種部品(各種電気部品等)が収容されている。ケース2は、主に上ケース2aと下ケース2bとから構成され、箱状形態をなしており、例えば樹脂材料などから形成されている。また、下ケース2bには電池(図示略)を収容する電池収容部(図示略)を開閉するための着脱可能な電池蓋3が設けられている。
【0018】
本実施形態では、ケース2の長手方向を前後方向とし、読取口4(後述)や表示装置5(後述)及びが形成された側を前方側、それとは反対側を後方側としている。また、ケース2の厚さ方向を上下方向とし、操作ボタン6a(後述)や表示装置5が設けられた側を上方側、それとは反対側を下方側としている。また、これら前後方向及び上下方向と直交する方向を幅方向(横方向)としている。
【0019】
ケース2の前方側にはバーコードBからの反射光を取り込む読取口4が形成されている。この読取口4は、ケース2の内部に光を取り込みうる開口形状となっており、その開口が透明部材(例えば透明の樹脂部材)によって閉塞された構成をなしている。また、光学的情報読取装置1には、ケース2から露出する形態で様々な部品が設けられている。例えば、上面側には、表示装置5や、複数個の操作ボタン6a(数字キーや機能キー等)を有するキー操作部6が設けられている。更に、ケース2の読取口4側には、車輪40(詳細は後述)が取り付けられている。
【0020】
次に、電気的構成について説明する。光学的情報読取装置1におけるケース2の内部には、図3(A)に示すように、光学的情報読取装置1全体を制御する制御部10が設けられている。この制御部10は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インターフェース等を有しており、メモリ16と協働して情報処理手段として機能している。また、制御部10には、表示装置11、スピーカ12、車輪40、回転計50、キー操作部6、外部インターフェース15なども接続されている。
【0021】
車輪40やキー操作部6は、制御部10に対して操作信号を与える構成をなしており、制御部10は、これらからの操作信号を受けて操作信号の内容に応じた各種制御を行う。表示装置5は、例えば液晶表示器として構成されており、制御部10からの指令を受けて様々な表示動作が行われるようになっている。外部インターフェース15は、外部(例えばホスト装置)との間でのデータ通信を行うためのインターフェースとして構成されており、制御部10と協働して通信処理を行うように構成されている。また、ケース2内には、電源となる電池17や電源部18が設けられている。電池17は、充電可能な二次電池(例えばリチウムイオン電池等)によって構成され、電源部18は、公知の電源回路などによって構成されており、これらによって制御部10や各種電気部品に電力が供給されるようになっている。
【0022】
また、制御部10には、情報コード読取部30が接続されている。この情報コード読取部30は、図3(B)に示すように、CCDエリアセンサ等の受光センサ33、結像レンズ37、複数個のLEDやレンズ等から構成される照明部31などを備えた構成をなしており、制御部10と協働して読取対象物Rに付されたバーコードBを読み取るように機能する。この情報コード読取部30によって読み取りを行う場合、まず、制御部10によって指令を受けた照明部31から照明光Lfが出射され、この照明光Lfが読取口4を通って読取対象物Rに照射される。そして、照明光LfがバーコードBにて反射した反射光Lrは、読取口4を通って装置内に取り込まれ、結像レンズ37を通って受光センサ33に入射する。読取口4と受光センサ33との間に配される結像レンズ37は、バーコードBの像を受光センサ33上に結像させる構成をなしており、受光センサ33はこのバーコードBの像に応じた受光信号を出力する。受光センサ33から出力された受光信号は、画像データとしてメモリ16(図3(A))に記憶され、デコード処理に用いられる。なお、情報コード読取部30には、受光センサ33からの信号を増幅する増幅回路や、その増幅された信号をデジタル信号に変換するAD変換回路等が設けられているがこれらの回路については図示を省略している。更に、制御部10には、回転計50が接続されている。この回転計50は、光学式スケール52(後述)、発光素子53(後述)や受光素子54(後述)等から構成されており、制御部10と協働して、車輪40の回転量を測定するようになっている。なお、情報コード読取部30及び制御部10は、「読取手段」の一例に相当する。また、回転計50及び制御部10は、「回転量測定手段」の一例に相当する。
【0023】
(特徴的部分の構成)
次に、図1〜図9等を参照し、本実施形態の特徴的構成について詳述する。
なお、図4(A)は、回転計の構成を説明する説明図であり、図4(B)は、光学式スケールの構成を説明する説明図である。図5(A)は、光学式スケールの構成を説明する説明図であり、図5(B)は、図5(A)のA−A断面を概略的に示す断面概略図であり、図5(C)は、図5(A)のB−B断面を概略的に示す断面概略図である。図6は、回転計による回転量の測定を説明する説明図であり、図6(A)は、車輪の回転角度検出信号を示す波形図であり、図6(B)は、図6(A)を波形整形して得られた走査信号の波形図である。図7(A)は、車輪のブレーキ機構を説明する説明図であり、図7(B)は、ソレノイドアクチュエータの構成を説明する説明図である。図8は、車輪のブレーキ機構を説明する説明図である。図9(A)は、車輪のブレーキ機構を説明する説明図であり、図9(B)は、車輪の回転が規制される前の様子を説明する説明図であり、図9(C)は、車輪の回転が規制された様子を説明する説明図である。
【0024】
本実施形態に係る光学的情報読取装置1は、図1及び図2に示すように、ケース2の読取口4側に、シャフト41が設けられており、このシャフト41の両端に1対の車輪40が取り付けられている。この1対の車輪40は、この取付位置で回転可能に保持されている。そして、車輪40は、図1に示すように、読取対象物Rとの接触が維持された状態でケース2が読取対象物Rに沿って移動されたときに、回転するように構成されている。なお、車輪40は、「回転体」の一例に相当する。
【0025】
この1対の車輪40のうちいずれか一方の一側(読取口4側)には、図4に示すように、高反射性部材52aと低反射性部材52bとが交互に等間隔で配置されて円盤状に形成されてなる光学式スケール52が設けられている。例えば、この光学式スケール52は、図5(A)に示すように、車輪40の一方側の面に、反射率の異なる二つの部位を形成することで構成されていてもよい。なお、図5(B)は、高反射部位での反射の様子を示しており、図5(C)は、低反射部位での反射の様子を示している。
【0026】
また、この光学式スケール52が設けられた車輪40と対向するケース2における所定部位には、LED等から構成される発光素子53と、フォトダイオード等から構成される受光素子54が設けられている。そして、発光素子53から光学式スケール52面上に光が出射されるとともに、この光学式スケール52面上で反射した光が受光素子54に入光するように構成されている。そして、受光素子54にて受光された信号は例えば、図6(A)に示す波形(角度検出信号)となり、所定の回路等によって波形整形されて図6(B)に示すように、角度検出信号と同周波数の走査信号(デジタル信号)として制御部10へ出力されるようになっている。なお、これら光学式スケール52、発光素子53及び受光素子54等によって、回転計50が構成されている。なお、車輪40の回転量を測定する回転計50は、「回転量測定手段」の一例に相当する。
【0027】
そして、シャフト41には、車輪40の回転を規制するブレーキ機構42が設けられており、所定の信号に基づき動作するように構成されている。このブレーキ機構42としては、例えば、図7に示すように、ソレノイドアクチュエータ60と貫通孔63が等間隔に複数設けられる円盤部材62とによって、構成することができる。この円盤部材62は、シャフト41に固定されており、車輪40と連動して回転するようになっている。そして、ソレノイドアクチュエータ60に所定の信号が入力されると、プランジャ61がいずれかの貫通孔63内へ突出し、車輪40の回転を規制するように構成されている。なお、ブレーキ機構42は、「規制手段」の一例に相当する。
【0028】
また、ブレーキ機構42は、図8に示すように、モータ64と、このモータの駆動軸64aに中心が固定される歯車65aと、シャフト41に中心が固定され歯車65aの歯と噛合するように設けられる歯車65bとによっても構成することができる。この構成では、モータ64に所定の信号が入力されると、歯車65aが車輪の回転を制動する方向にモータ64により回転されて、この歯車65aの回転が歯車65bに伝達されて車輪40の回転が規制されるようになっている。
【0029】
さらに、ブレーキ機構42は、図9に示すように、ブレーキパッド66から構成されていてもよく、ソレノイドやモータ等の駆動によって円盤部材67を挟み込んで制動することで、車輪40の回転を規制するように構成することもできる。
【0030】
(読取動作)
次に、上述のように構成される光学的情報読取装置1により、読取対象物Rに複数並べて形成された情報コードを読み取る場合の読取処理について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。より具体的には、図1に示すように、読取対象物Rに、各バーコードのバー方向の向きを揃えた構成でそのバー方向に沿って所定間隔で並んで形成されたバーコードB1〜B4を順に読み取る場合を例に挙げて説明する。
【0031】
まず、ステップS101にて、メモリ16内に記憶されている車輪回転距離L及び既読み取り枚数Mを初期化(リセット)する。このステップS101の処理では、前回の読取処理で記憶された情報がリセットされる。次に、ステップS102にて、これから読み取るバーコードB1〜B4の情報を入力する。具体的には、バーコードBのコード間隔Xと、バーコードBの高さYと、読み取り枚数Z(ここでは4)を入力する。なお、ステップS102のバーコードBの間隔Xのデータを取得する処理を実行する制御部10は、「データ取得手段」の一例に相当する。
【0032】
そして、車輪40を読取対象物R上のバーコードB1近傍(例えば、バーコードB1から所定距離(例えばX)以内の領域)若しくはバーコードB1上に接触させ、この接触を維持した状態で、図2に示すように、読取対象物Rに沿って移動させると、この車輪40の回転が回転計50によって検知され、制御部10へ出力される。そして、ステップS103にて、バーコードBの読取動作を開始する。なお、車輪40の回転を検知する回転計50及び制御部10は、「回転検知手段」の一例に相当する。
【0033】
ステップS103にて読取動作が開始されると、車輪40の回転距離Lと、コード間隔Xとが制御部10にて比較される。そして、車輪40の回転距離Lがコード間隔Xよりも小さい場合には、ステップS104にてNoとの判定が繰り返される。一方、車輪40の回転距離Lがコード間隔X以上である場合には、ステップS104にてYesと判定されて、ステップS105にて読取処理が行われる。このステップS105の読取処理では、制御部10によって指令を受けた照明部31から照明光Lfが出射され、この照明光Lfが読取口4を通って読取対象物Rに照射される。また、バーコードBにて反射した反射光Lrが受光センサ33にて受光されることにより受光センサ33から出力される信号に基づいて撮像画像が取得される。そして、この撮像画像内のバーコードBに対して、デコードが行われる。このように、制御部10は、回転計50による回転検知結果に基づいてバーコードBの読み取りタイミングを制御するようになっている。
【0034】
ステップS105にて読取処理がなされると、ステップS106にて、デコードが成功か失敗かの判定がなされることとなる。また、このとき、この判定結果に応じた情報が、制御部10からの指令により表示装置11やスピーカ12から報知される。具体的には、デコードが成功した場合には、「読み取り成功」などの情報を表示装置11に表示したり、スピーカ12から「ピッ」などの高音を発生させる。また、デコードが失敗した場合には、「読み取り失敗」などの情報を表示装置11に表示したり、スピーカ12から「ブー」などの低音やビープ音やアラーム音を発生させるようになっている。なお、バーコードBのデコードが成功か失敗かを判定する制御部10は、「判定手段」の一例に相当する。また、バーコードBのデコード結果を報知する表示装置11及びスピーカ12は、「報知手段」の一例に相当する。
【0035】
そして、制御部10によりデコードが失敗と判定された場合には、ステップS106にてNoと判定されて、ステップS107にて、車輪40の回転距離Lと、コード間隔X及びバーコードの高さYとが比較される。そして、車輪40の回転距離Lがコード間隔Xとバーコードの高さYの合計の長さよりも小さい場合には、ステップS107にてNoと判定されて、ステップ105にて読取処理が再度なされることとなる。一方、車輪40の回転距離Lがコード間隔Xとバーコードの高さYの合計の長さ以上である場合(すなわち、バーコードB1のデコードが成功する前に次のバーコードB2へ車輪40を回転させてしまった場合)には、ステップS107にてYesと判定される。そして、ステップS108にて、制御部10からの信号によりブレーキ機構42が駆動されて、車輪40の回転が規制されることとなる。すなわち、ステップS106〜S108の処理では、バーコードBのデコードに失敗した場合に、制御部10によって取得されたバーコードBの間隔と、回転計50によって測定された車輪40の回転量とが、所定の関係(L≧X+Y)にある場合に車輪40の回転を規制するようになっている。
【0036】
一方、制御部10によりデコードが成功と判定された場合には、ステップS106にてYesと判定されて、ステップS109にて、既読み取り枚数Mをカウントアップする。そして、ステップS110にて、読み取り枚数Z(ここでは4)と、既読み取り枚数Mとが比較される。既読み取り枚数Mが読み取り枚数Zと等しい場合には、ステップS110にてYesと判定されて、当該読取処理が終了する。一方、既読み取り枚数Mが読み取り枚数Zより少ない場合には、ステップS110にてNoと判定され、ステップS103からの処理が繰り返されることとなる(即ち、既読み取り枚数Mが設定した読み取り枚数Zに達するまで、ステップS103からの処理が繰り返される)。
【0037】
なお、本実施形態では、予め取得されたバーコードBの間隔Xと、回転計50により測定された回転量とに基づき、複数並んで配置されるバーコードBの2番目以降(バーコードB2〜B4)の読み取りタイミングが自動的に決定されるようになっている。具体的には、既に読み取りがなされたバーコードの読み取り結果と、バーコードBの間隔Xと、回転計50により測定された回転量とに基づいて、既に読み取りがなされたバーコードよりも後のバーコードの配置領域を推定して読み取りを行うように構成されている。そのため、作業者は、トリガスイッチ等を操作しなくとも、車輪40を読取対象物Rと接触させた状態で、これらバーコードB2〜B4のバー方向に沿ってケース2を移動させるだけで、バーコードB2〜B4を読み取ることができる。
【0038】
以上説明したように、本第1実施形態に係る光学的情報読取装置1では、ケース2の読取口側に取り付けられた車輪40と読取対象物Rとの接触が維持された状態で、ケース2の移動によって車輪40が回転するようになっている。そして、制御部10は、車輪40の回転検知結果に基づいてバーコードBの読み取りタイミングを制御するように構成されている。この構成によれば、車輪40の回転にともなってバーコードBの読み取りタイミングが自動的に制御される。このため、読取対象物Rに複数並べて形成されたバーコードBを読み取る際には、各バーコードBの読み取り毎にトリガスイッチ等の操作をするといった作業を省略することができるので、読み取り作業をより効率的に行うことができ、作業者の操作負担を効果的に低減することができる。
【0039】
また、制御部10は、車輪40の回転開始が検出されたことを条件としてバーコードBの読取動作を開始するように構成されている(ステップS103)。この構成によれば、車輪40の回転が停止しているときには確実に読み取り動作を停止させることができるため、車輪40が回転せずに読み取りがなされない蓋然性が高い時期に効果的に省電力化を図ることができる。
【0040】
また、制御部10は、取得されたバーコードBの間隔と、回転計50により測定された車輪40の回転量とに基づき、複数並んで配置されるバーコードBの2番目以降の読み取りタイミングを決定するようにしている。この構成によれば、2番目以降のバーコードBを読み取るタイミングを、取得された間隔データ及び実測された回転量に基づいて適切に決定することができるため、複数のバーコードBをより確実に読み取ることができる。
【0041】
また、取得されたバーコードBの間隔と、回転計50により測定された車輪40の回転量とが、所定の関係にある場合に、ブレーキ機構42により車輪40の回転を規制するように構成されている。この構成によれば、複数のバーコードBの読み取り過程において、読み取り不良が生じた可能性が高い状態を迅速に検出し、装置の移動動作を規制することができる。
【0042】
また、読取対象物Rに、複数のバーコードBが、各バーコードBのバー方向の向きを揃えた構成でそのバー方向に沿って並んで形成されてなるバーコードBを読み取るように構成されている。そして、車輪40と読取対象物Rとの接触が維持された状態で、複数のバーコードBの並びに沿ってケース2が移動されたときに、制御部10によって既に読み取りがなされたバーコードBの読み取り結果と、予め取得されたバーコードBの間隔のデータと、回転計50により測定された車輪40の回転量とに基づいて、既に読み取りがなされたバーコードBよりも後のバーコードBの配置領域を推定して読み取りを行うようにしている。上記のように複数のバーコードBがバー方向に並んだ構成では、各バーコードBにおいてバー方向のいずれかの位置で読み取りを行えばよく、既に読み取りがなされたバーコードBの読み取り結果と、バーコードBの間隔のデータと、測定された回転量とに基づいて後のバーコードBの配置領域を推定して読み取りを行えば、作業者に特別な位置合わせ操作を強いることなくそのような位置で読み取りを行い易くなる。
【0043】
また、制御部10によるバーコードBの読み取りが失敗であると判定された場合に(ステップS106)、ブレーキ機構42により車輪40の回転を規制するように構成されている(ステップS108)。この構成によれば、複数のバーコードBの読み取り過程において、読み取り不良が生じると、装置の移動動作が規制されるので、バーコードBの不読を抑制することができる。
【0044】
また、制御部10によるバーコードBの読み取り結果を表示装置11及びスピーカ12により報知するようにしている。この構成によれば、作業者は、バーコードBの読み取りが成功か失敗かを確認しながら読み取り作業を行うことができるので、バーコードBの不読をより防止することができ、複数のバーコードBをより確実に読み取ることができる。
【0045】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
上記実施形態において、回転体が1対の車輪40から構成された例を示したが、回転体の構成は特に限定されず、例えば、ローラ状部材等から構成されていてもよい。
【0047】
上記実施形態において、車輪40が、ケース2の読取口4側に直接取り付けられた構成を例示したが、車輪40は、他部材を介して間接的に取り付けるようにしてもよい。
【0048】
上記実施形態において、さらにトリガスイッチ等によっても、読み取りタイミングを制御できる構成が付加されていてもよい。
【0049】
上記実施形態では、バーコードBにより構成された情報コードを読み取る場合を例示したが、QRコード等により構成された情報コードであっても同様に読み取ることができる。
【0050】
上記実施形態において、ステップS107及びステップS108では、L≧X+Yであるときに、車輪40の回転を規制する場合を例示したが、これに限定されず、例えば、L≧X+2Yであるときに、車輪40の回転を規制するように設定されていてもよい。
【0051】
上記実施形態において、複数並べて形成された情報コードを読み取る場合に、1番目の情報コード(バーコードB1)の読み取りまでは常に読取処理を続け、2番目以降の情報コードを読み取る時に、ステップS103以降の処理を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…光学的情報読取装置
2…ケース
2a…上ケース
2b…下ケース
3…電池蓋
4…読取口
5…表示装置
6…キー操作部
6a…操作ボタン
10…制御部(読取手段、回転検知手段、回転量測定手段、データ取得手段、判定手段)
11…表示装置(報知手段)
12…スピーカ(報知手段)
15…外部インターフェース
40…車輪(回転体)
41…シャフト
50…回転計(回転検知手段、回転量測定手段)
52…光学式スケール
52a…高反射性部材
52b…低反射性部材
53…発光素子
54…受光素子
60…ソレノイドアクチュエータ
61…プランジャ
62、67…円盤部材
63…貫通孔
64…モータ
64a…駆動軸
65a、65b…歯車
66…ブレーキパッド
B、B1〜B4…バーコード(情報コード)
R…読取対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象物に複数並べて形成された情報コードを読み取り可能な光学的情報読取装置であって、
読取口が形成されたケースと、
前記読取口を介して前記情報コードを光学的に読み取る読取手段と、
前記ケースの前記読取口側に取り付けられ、その取付位置で回転可能に保持される回転体と、
前記回転体の回転を検知する回転検知手段と、
を備え、
前記回転体と前記読取対象物との接触が維持された状態で前記ケースの移動によって前記回転体が回転するように構成されており、
前記読取手段は、前記回転検知手段による回転検知結果に基づいて前記情報コードの読み取りタイミングを制御することを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記読取手段は、前記回転検知手段により前記回転体の回転開始が検出されたことを条件として前記情報コードの読取動作を開始することを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記回転体の回転量を測定する回転量測定手段と、
前記情報コードの間隔のデータを取得するデータ取得手段と、
を備え、
前記読取手段は、前記データ取得手段によって取得される前記情報コードの間隔と、前記回転量測定手段により測定された前記回転量と、に基づき、複数並んで配置される前記情報コードの2番目以降の読み取りタイミングを決定することを特徴とする請求項1または2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記回転体の回転量を測定する回転量測定手段と、
前記情報コードの間隔のデータを取得するデータ取得手段と、
前記回転体の回転を規制する規制手段と、
を備え、
前記規制手段は、前記データ取得手段によって取得された前記情報コードの間隔と、前記回転量測定手段によって測定された前記回転量とが、所定の関係にある場合に前記回転体の回転を規制することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記情報コードは、バーコードであり、
前記読取対象物には、複数のバーコードが、各バーコードのバー方向の向きを揃えた構成でそのバー方向に沿って並んでおり、
前記読取手段は、前記回転体と前記読取対象物との接触が維持された状態で、複数の前記バーコードの並びに沿って前記ケースが移動されたときに、当該読取手段によって既に読み取りがなされたバーコードの読み取り結果と、前記データ取得手段によって取得された前記バーコードの間隔のデータと、前記回転量測定手段によって測定された前記回転量とに基づいて、既に読み取りがなされたバーコードよりも後のバーコードの配置領域を推定して読み取りを行うことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記読取手段による前記情報コードの読み取りが成功か失敗かを判定する判定手段と、
前記回転体の回転を規制する規制手段と、を備え、
前記規制手段は、前記判定手段により前記情報コードの読み取りが失敗であると判定された場合に前記回転体の回転を規制することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記判定手段の判定結果を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−194854(P2012−194854A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59081(P2011−59081)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】