説明

光学的特性が改良されたポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー

【課題】光学的特性が改良されたポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー。
【解決手段】ポリアミドブロックPAとポリエーテルブロックPEとを交互に有するコポリマーであって、PAブロックがX個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンと、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸との重縮合で得られるホモポリアミドブロックPAX.Yブロックで形成されるコポリマーで、上記コポリマーは同じサイズのPAブロックと、同じサイズのブロックを有するまたは曲げ弾性率(MPa)または引張弾性率(MPa)またはショアーD硬度(同じ条件下で全て測定)によって定義される剛性が同じコポリマーPA12/PTMGと比較して、改良された光学的特性(460nm、560nmおよび700nmでの透過率)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的および/または機械的特性が改良されたポリアミドブロック(PAブロック)とポリエーテルブロック(PEブロック)とを有する新規なコポリマーに関するものである。このブロックコポリマーはポリエーテル−ブロック−アミド(PEBA)ともよばれる。
【背景技術】
【0002】
本発明のPEBAコポリマーは、反応性カルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルポリオール(ポリエーテルジオール)である反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合で得られるポリエーテルエステルアミドの特定の種類(ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの結合がエステル結合である)またはポリエーテルアミドの種類(ポリエーテルブロックがアミン末端基を有するとき)に属する。
【0003】
下記文献には、主としてPEGから成るPEブロックと、PAX.Yブロック(ここで、Xは脂肪族ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミンおよびC9〜C25のジアミンで、YはC9〜C25の脂肪族二酸である)とを有するPEBAコポリマーを含む帯電防止エラストマー組成物が記載されている。帯電防止特性を有するこれらのコポリマーは本発明の範囲には含まれない。
【特許文献1】欧州特許第EP 1,500,684号公報
【0004】
下記文献は、PAX.Yタイプ(ここで、脂肪族ジアミンとしてX:ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンを含み、脂肪族二酸としてY:酪酸、アジピン酸、アゼライン酸、コルク酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー化した脂肪酸およびポリオキシアルキレン−α,ω−二酸)を含むPEBAを含む帯電防止組成物に関するものである。このコポリマーおよび組成物に帯電防止特性を与えるPEGから成るPEブロックはPPGブロック、実際にはPTMGブロックと一緒に用いることができる。このコポリマーは本発明の範囲には含まれない。
【特許文献2】欧州特許第EP 1,262,527号公報
【0005】
下記文献には、リジッドセグメントとしてPAX.Yブロック(Xは4〜14個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンで、Yは4〜14個の炭素原子を有する直鎖脂肪族二酸である)を有し、ソフトセグメントとして60重量%以下の別のポリエーテル、例えばPEG、PPGおよびPTMGを有することができるPO3Gを含むPEBAが開示されている。このコポリマーも本発明の範囲には含まれないので、本発明とは無関係である。
【特許文献3】国際特許第WO 03/050159号公報
【0006】
下記文献の対象はPAブロックがPAX1.Y1/X2.Y2またはPAX.1Y1/Zタイプ(ここで、X1およびX2はジアミン、Y1およびY2は二酸、Zはラクタムまたはアミノ酸である)のコポリアミドであるPAブロックとPEブロックとを有するコポリマーにある。このコポリマーも本発明の範囲には含まれないので、本発明とは無関係である。
【特許文献4】国際特許第WO 04/037898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、驚くべきことに、光学的特性が改良され、特にPEBAの不透明性が少なくなり、および/または、機械的特性が改良される、特に動的疲労抵抗性が大きくを改善される新規なタイプのPEBAを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の対象は、光学的特性が改良されたポリアミドPAブロックとポリエーテルブロックPEとを交互に有するコポリマーPAX.Y/PEであって、PAブロックがX個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンとY個の炭素原子を有するジカルボン酸との重縮合で得られるホモポリアミドPAX.Yブロックから成り、上記コポリマーが(1)PAブロックがカルボキシル末端基を有し、(2)Xが少なくとも4、好ましくは少なくとも6であり、(3)Yが少なくとも10、好ましくは少なくとも12であり、(4)PEブロックが:
(i)好ましくは、PEジオールブロックとよばれるヒロドキシル末端基を有するPEブロックで、カルボキシル末端基を有するPAブロックとPEジオールブロックとの結合はエステル結合であるか、
(ii)好ましくは、Yが14以上の炭素原子数である場合にNH2末端基を有するPEブロックで、カルボキシル末端基を有するPAブロックとNH2末端基を有するPEブロックとの結合はアミド結合であり、
(iii)0〜39重量%のPO3Gおよび/またはPEGと100〜61重量%のPO3GまたはPEG以外のポリエーテル(コポリマーの全重量に対する重量%)とから成り、上記コポリマーPAX.Y/PEが
(iv)同じサイズのPAブロックと、同じサイズのPEブロックとをそれぞれ有する、および/または、
(v)曲げ弾性率(MPa)または引張弾性率(MPa)またはショアーD硬度によって定義される剛性が同じコポリマーPA12/PTMGと比較して、
460nm、560nmおよび700nmでの光の透過特性が改良される、
ことを特徴とするコポリマーにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一つの実施例では、上記コポリマーは(iii)中の100〜61%のポリエーテルがPTMG、PPG、これらのブレンド物およびこれらのコポリマーの中から選択される。
本発明の一つの実施例では、上記コポリマーはX+Y≧22、好ましくは≧24であり、有利には22、24、26、28または30に等しい。
本発明の一つの実施例では、上記コポリマーはPAブロックがPA10.12、PA6.18、PA10.14、PA12.12、PA12.14、PA10.18およびPA12.18ブロックの中から選択される。
【0010】
本発明の対象は、機械的特性が改良された、ポリアミドPAブロックとポリエーテルPEブロックとを交互に有するコポリマーPAX.Y/PEであって、PAブロックが(1)X個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンと(2)Y個の炭素原子を有するジカルボン酸との重縮合で得られるホモポリアミドPAX.Yブロックから成り、上記コポリマーが(1)PAブロックがカルボキシル末端基を有し、(2)Xは少なくとも4、好ましくは少なくとも6であり、(3)Yは少なくとも10、好ましくは少なくとも12であり、(4)PEブロックは、
(iV)好ましくは、PEジオールブロックとよばれるヒロドキシル末端基を有するPEブロックで、カルボキシル末端基を有するPAブロックとPEジオールブロックとの結合はエステル結合であるか、
(v)好ましくは、Yが14以上の炭素原子数である場合にNH2末端基を有するPEブロックで、カルボキシル末端基を有するPAブロックとNH2末端基を有するPEブロックとの結合はアミド結合であり、さらに、
(vi)0〜39重量%のPO3Gおよび/またはPEGと100〜61重量%のPO3GまたはPEG以外のポリエーテル(コポリマーの全重量に対する重量%)とから成り、
(iv)PAX.Yブロックの結晶化度は、寸法が同じPA12ブロックの結晶化度以上であり、および/または
(v)コポリマーPAX.Y/PEのPA/PE相分離度はコポリマーPAX.Y/PEのPAX.Yブロックと寸法が同じPA12ブロックとPAX.Y/PEコポリマーのPEブロックと寸法が同じPTMGブロックとから成るコポリマーPA12/PTMGの相分離以上であることを特徴とするコポリマーにある。
【0011】
本発明の一つの実施例では、コポリマーはX+Y≦24、好ましくは24または22または20に等しい。
本発明の一つの実施例では、コポリマーはPAブロックがPA10.14、PA12.12、PA6.18、PA10.12、PA6.14、および、PA10.10ブロックの中から選択される。
【0012】
本発明の一つの実施例では、機械的特性および/または光学的特性が改良された上記コポリマーは下記を特徴とする:
(1)Y個の炭素原子を有するジカルボン酸が直鎖脂肪族二酸から選択される、
(2)Yが10〜20、有利には12〜20、好ましくは10〜18、さらに好ましくは12〜18である(従って、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸としてはセバシン酸、ドデカンジカルボン酸、または、オクタデカンジカルボン酸が挙げられる)、
(3)Xが6〜20、好ましくは6〜14である(従って、X個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンとしてはテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよび1,10−デカメチレンジアミンが挙げられる)。
【0013】
ポリアミドブロックPAX.Yはポリアミド4.12、ポリアミド4.14、ポリアミド4.18、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド6.14、ポリアミド6.18、ポリアミド9.12、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12、ポリアミド10.14およびポリアミド10.18ブロックの中から選択されるのが有利である。光学的特性を改良するのに特に好ましいポリアミドブロックPAX.YはPA6.18またはPA10.14ブロックであり、機械的特性を改良するためにはPA6.12またはPA6.14ブロックが好ましい。
【0014】
PA6.12/PTMGは本発明の範囲から除外ができる。
下記ポリアミドPAX.Yは下記ジアミンXと二酸Yとの縮合で得られる:
(1)PA4.12:1,4−テトラメチレンジアミンと1,10−デカンジカルボン酸、
(2)PA4.14:1,4−テトラメチレンジアミンと1,12−ドデカンジカルボン酸、
(3)PA4.18:1,4−テトラメチレンジアミンと1,16−ヘキサ−デカンジカルボン酸、
(4)PA6.10:ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸、
(5)PA6.12:ヘキサメチレンジアミンと1,10−デカンジカルボン酸
(6)PA6.14:ヘキサメチレンジアミンと1,12−ドデカンジカルボン酸
(7)PA6.18:ヘキサメチレンジアミンと1,16−ヘキサデカンジカルボン酸
(8)PA9.12:1,9−ノナンジアミンと1,10−デカンジカルボン酸
(9)PA10.10:1,10−デカメチレンジアミンとセバシン酸
(10)PA10.12:1,10−デカメチレンジアミンと1,10−デカンジカルボン酸
(11)PA10.14:1,10−デカメチレンジアミンと1,12−ドデカンジカルボン酸
(12)PA10.18:1,10−デカメチレンジアミンと1,16−ヘキサデカンジカルボン酸。
【0015】
本発明のPEBAコポリマーのポリエーテルブロックは、少なくとも一種のポリアルキレンエーテルポリオール、特にポリアルキレンエーテルジオール、特にポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、これらのブレンド物およびこれらのコポリマーの中から選択されるもので得られるのが有利である。PTMGを選択するのが好ましい。
【0016】
Y>14の場合は、PEブロックはPEブロックのブレンド物またはポリエーテルコポリマーを含むことができる。この場合は、PEブロックは0〜39重量%のPO3Gおよび/またはPEGと、100〜61重量%のPO3GまたはPEG以外の一種または複数のポリエーテル(コポリマーの全重量に対する重量%)を含むことができる。
PEブロックはPEGが主成分となることはなく、39重量%以上(PEブロックの重量に対する重量)のPO3Gを含むこともない。
【0017】
本発明のPEBAコポリマーのポリエーテルブロックは、NH2鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックにすることもできる。このブロックはポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化したα、ω-ポリオキシアルキレンブロックをシアノアセチル化して得ることができる。特に、ジェファミン(Jeffamine)を用いることができる(例えば、ハンツマン(Huntsmann社)の製品であるジェファミン(登録商標)D400、D2000、ED2003およびXTJ542、下記文献参照)。
【特許文献5】日本国特許第2004346274号公報
【特許文献6】日本国特許第2004352794号公報
【特許文献7】欧州特許第1,482,011号公報
【0018】
本発明のコポリマーの数平均分子量は5000〜50,000、好ましくは10,000〜30,000であるのが有利である。
PAブロックの数平均分子量は500〜10,000、好ましくは600〜7000、さらに有利には1500〜6000であるのが有利である。
PEブロックの数平均分子量は250〜5,000、好ましくは250〜20000、さらに好ましくは350〜1000であるのが有利である。
PAブロックは本発明コポリマーのPAブロックとPEブロックとの合計の5〜95重量%、好ましくは10〜95重量%であるのが有利である。
【0019】
本発明の別の対象は下記(1)と(2)を特徴とする上記定義のコポリマーの製造方法にある:
(1)第1段階で、X個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンと、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸とを、ジカルボン酸から選択される連鎖制限剤の存在下で、重縮合によってポリアミドPAブロックを製造し、
(2)第2段階で、得られたポリアミドPAブロックを触媒の存在下でポリエーテルPEブロックと反応させる。
【0020】
PAブロックとPEブロックとの間にエステル結合を有する本発明のPEBAコポリマーを2段階で調製する一般的な方法は周知であり、例えば下記文献に記載されている。
【特許文献8】フランス国特許第2,846,332号公報
【0021】
PAブロックとPEブロックとの間にアミド結合を有する本発明のPEBAコポリマーの一般的な製造方法は周知であり、例えば上記特許文献7(欧州特許第1,482,011号公報)に記載されている。
PAブロックの生成反応は通常、180〜300℃、好ましくは200〜290℃の温度で行い、反応器内の圧力は5〜30barに設定し、この圧力を約2〜3時間維持する。反応器を雰囲気圧に置き、次いで圧力をゆっくりと下げ、過剰な水は例えば1,2時間の蒸留で除去する。
【0022】
カルボン酸末端を有するポリアミドを作った後に、ポリエーテルと触媒とを添加する。ポリエーテルおよび触媒は1回または複数回で添加できる。好ましい実施例では、ポリエーテルを初めに添加する。ポリエーテルのOH末端基とポリアミドのCOOH末端基との反応と、エステル結合の形成および水の除去が一緒に始まる。反応混合物中の水を蒸留によってできるだけ除去した後、触媒を導入してポリアミドブロックのポリエーテルブロックへの結合を完成させる。この第2段階は好ましくは少なくとも6mmHg(800Pa)の減圧下で反応物および得られたコポリマーが溶融状態にあるような温度で攪拌しながら実施する。この温度は例えば100〜400℃、一般に200〜300℃でよい。溶融ポリマーから攪拌器に加わるトルクを測定するか、攪拌器の消費電力を測定することによって反応をモニターし、このトルクまたは消費電力値によって反応の終点を決定する。
【0023】
本発明はさらに、一段階重縮合をX個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンを、ジカルボン酸から選択される連鎖制限剤の存在下、ポリエーテルPEブロックの存在下、および、PEブロックとPAブロックの反応のための触媒の存在下で行う上記定義のコポリマーの製造方法に関する。
【0024】
コポリマーの製造法は、1段階の場合でも複数の段階の場合でも:
(1)コポリマーの製造方法が連鎖制限剤として、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸をジアミンの化学量論より過剰に用いる点に特徴があり、
(2)コポリマーの製造方法が触媒としてチタン、ジルコニウムおよびハフニウムまたは強酸、例えば燐酸またはホウ酸で形成される群の中から選択される金属の誘導体を用いる点に特徴があり、
(3)コポリマーの製造方法が、重縮合を180〜300℃の温度で行う点に特徴があり、
(4)触媒はエステル化またはアミド化によってポリアミドブロックをポリエーテルブロックに結合させる任意の化合物と定義される。このエステル化触媒はチタン、ジルコニウムおよびハフニウムまたは強酸、例えば燐酸またはホウ酸で形成される群の中から選択される金属の誘導体であるのが有利である。
【0025】
触媒の例としては下記文献に記載のものが挙げられる。
【特許文献9】米国特許第4,331,786号明細書
【特許文献10】米国特許第4,115,475号明細書
【特許文献11】米国特許第4,195,015号明細書
【特許文献12】米国特許第4,839,441号明細書
【特許文献13】米国特許第4,864,014号明細書
【特許文献14】米国特許第4,230,838号明細書
【特許文献15】米国特許第4,332,920号明細書
【0026】
(5)酸化防止剤として用いる一種または複数の分子、例えばIrganox(登録商標)1010またはIrganox(登録商標)245を、合成中の最も適切であると判断される時に添加することができる。
【0027】
本発明の別の対象は、透明または半透明な上記定義のコポリマーを含む造形品、例えば繊維、織布、フィルム、シート、ロッド、パイプまたは任意の射出成形部品(靴底のような部品)にある。
【0028】
本発明はさらに、PA12から成るPAブロックとPTMGから成るPEブロックとを有するコポリマーPA12/PTMGで製造された同じ物品と比較して光学的特性が改良された物品の製造での上記のコポリマーPAX.Y/PEの使用であって、下記を特徴とする使用に関する:
(1)上記コポリマーPAX.Y/PEとPA12/PTMGのPAブロックのサイズは同じまたはほぼ同じであり、コポリマーPAX.Y/PEとPA12/PTMGのPEブロックのサイズが同じまたはほぼ同じであり、および/または、
(2)曲げ弾性率(MPa)または引張弾性率(MPa)またはショアーD硬度によって定義される上記コポリマーPAX.Y/PEとPA12/PTMGの剛性は同じまたはほぼ同じである。
【0029】
「ほぼ同じ」とは、本発明のコポリマーPAX.Y/PEの曲げ弾性率(MPa)または引張弾性率(MPa)またはショアーD硬度の値が、コポリマーPA12/PTMGのそれぞれ曲げ弾性率(MPa)または引張弾性率(MPa)またはショアーD硬度との差(大または小)が20%以下、好ましくは10%以下、有利には5%以下であるということを意味する。
【0030】
本発明はさらに、PA12から成るPAブロックとPTMGから成るPEブロックとを有するコポリマーで製造された同じ物品と比較して機械的特性が改良された物品の製造での上記のコポリマーPAX.Y/PEの使用であって、下記を特徴とする使用に関する:
(1)コポリマーPAX.Y/PEとPA12/PTMGのPAブロックのサイズが同じまたはほぼ同じであり、コポリマーPAX.Y/PEとPA12/PTMGのPEブロックのサイズが同じまたはほぼ同じであり、および/または、
(2)PAX.Yブロックの結晶化度が寸法が同じPA12ブロックの結晶化度以上であり、および/または、コポリマーPAX.Y/PEのPA/PE相分離度がコポリマーPAX.Y/PEのPAX.Yブロックと寸法が同じPA12ブロックと、PAX.Y/PEコポリマーのPEブロックと寸法が同じPTMGブロックとから成るコポリマーPA12/PTMGの相分離度以上である。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
実施例1
ポリアミド6.18ブロックとポリテトラメチレンエーテルグリコールからのブロックとを有するコポリマー(PA6.18−PTMG)の製造
モル質量が2000g/molのPA6.18ブロックと、モル質量が1000g/molのPTMGブロックとから、下記の手順に従ってPEBAを調製した:
攪拌機を備えたオートクレーブ中に5kgのヘキサメチレンジアミンと16.9kgのオクタデカンジオン酸のモノマーを導入してPA6.18ブロックを得る。得られた混合物を不活性雰囲気下に置き、温度が250℃、圧力が32barに達するまで加熱する。1時間維持した後、減圧操作を1時間続けて雰囲気圧に戻す。
次いで、質量が1000g/mol(10.22kg)のポリテトラメチレングリコールと、Zr(OBu)4(30g)とを反応器に添加して、8mbar(すなわち800Pa)の絶対圧力下で240℃で重合を完了する。
最終生成物PA6.18−PTMGの固有粘度は1.4dl/gである。
100×100×2mmのシートを射出成形して、光学的特性が改良されたことを確認した。最終生成物の透過率は460nmで59%、560nmで74%、700nmで82%であり、不透明度は約20%、ヘーズは11である。これらの値はPA12とPE=PTMGとをベースにした、ブロックサイズが同じコポリマーで得られた値(それぞれ29、43、58、26および30)と比較することができる。
【0032】
実施例2
ポリアミド10.14ブロックとポリテトラメチレンエーテルグリコールから得られるブロックとを有するコポリマー(PA10.14−PTMG)の製造
モル質量が5000g/molのPA10.14ブロックと、モル質量が650g/molのPTMGブロックとから、実施例1の手順に従ってPEBAを調製したが、ジアミンとして1,10−デカメチレンジアミン(11.95kg)を用い、二酸として1,12−ドデカンジカルボン酸(19.4kg)、およびポリテトラメチレングリコール(3.7kg)を用いた。
最終生成物PA10.14−PTMGの固有粘度は1.28dl/gである。
100×100×2mmのシートを射出成形して光学的特性が改良されたことを確認した。最終生成物の透過率は460nmで49.5%、560nmで62.9%、700nmで71.7%(ASTM D 1003に従って測定)で、不透明度(ASTM D 1003に従って測定)は約20%、ヘーズ(ISO 2814に従って測定)は11である。これらの値はPA12とPTMGとをベースにしたそれぞれ寸法が同じPAブロックと寸法が同じPEブロックとのコポリマーで得られた値(それぞれ14、23、35、測定せずおよび25)と比較することができる。
【0033】
PA相の熱的特性、特に融点はPA12/PTMGコポリマーの場合よりも高い可能性があることが観察された。これはPAブロックとPEブロックとが同じモル質量の場合である。特に、質量が5000g/molのPA6.14ブロックと、650g/molのPTMGブロックとを有するPEBA6.14/PTMGコポリマーは融点が196〜206℃で、2つのブロックのサイズが同じPA12/PTMGタイプのPEBAコポリマーは融点が172℃である。
【0034】
実施例3
ポリアミド6.14ブロックとポリテトラメチレンエーテルグリコールからのブロックとを有するコポリマー(PA6.14−PTMG)の製造
モル質量が5000g/molのPA6.14ブロックと、モル質量が650g/molのPTMGブロックとから、実施例1の手順に従ってPEBAを調製したが、ジアミンとして1,6−ヘキサメチレンジアミン(13.2kg)を用い、二酸として1,12−ドデカンジカルボン酸(31.6kg)、およびポリテトラメチレングリコール(5.3kg)を用いた。最終生成物PA6.14−PTMGの固有粘度は1.44dl/gである。
こうして得られた生成物の曲げ弾性率(23℃および相対湿度50%で14日間コンディショニング後)の測定値は680MPaであった。これをPA12とPTMGとをベースにしたそれぞれ寸法が同じPAブロックと寸法が同じPEブロックとのコポリマーの曲げ弾性率380MPaと比較することができる。新規な生成物ははるかに剛性が高いが、−10℃での屈曲疲れ試験(Ross Flex試験)中に150,000サイクル後でも壊れない。
【0035】
実施例4
ポリアミド6.12ブロックとポリテトラメチレンエーテルグリコールからのブロックとを有するコポリマー(PA6.12−PTMG)の製造
モル質量が4000g/molのPA6.12ブロックと、モル質量が650g/molのPTMGブロックとから、実施例1の手順に従ってPEBAを調製したが、ジアミンとして1,6−ヘキサメチレンジアミン(13.9kg)を用い、二酸としてドデカンジオン酸(29.8kg)およびポリテトラメチレングリコール(6.4kg)を用いた。最終生成物PA6.12−PTMGの固有粘度は1.38dl/gである。
こうして得られた生成物の曲げ弾性率(23℃および相対湿度50%で14日間コンディショニング後)の測定値は730MPaであった。これをPA12とPTMGとをベースにした、それぞれより大きいサイズのPAブロックと寸法が同じPEブロックとのコポリマーの曲げ弾性率380MPaと比較することができる。PA6.12−PTMG生成物はPA12をベースにした生成物よりもソフト相のパーセンテージが高いが、剛性が著しく高く、−10℃での屈曲疲れ試験(Ross Flex試験)中に150,000サイクル後でも壊れない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドPAブロックとポリエーテルブロックPEとを交互に有するコポリマーPAX.Y/PEであって、PAブロックがX個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンと、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸との重縮合で得られるホモポリアミドPAX.Yブロックから成り、上記コポリマーは(1)PAブロックがカルボキシル末端基を有し、(2)Xが少なくとも4、好ましくは少なくとも6であり、(3)Yが少なくとも10、好ましくは少なくとも12であり、(4)PEブロックが(i)好ましくは、PEジオールブロックとよばれるヒロドキシル末端基を有するPEブロックで、従って、カルボキシル末端基を有するPAブロックとPEジオールブロックとの結合はエステル結合であるか、(ii)好ましくは、Yが14以上の炭素原子数である場合にNH2末端基を有するPEブロックで、カルボキシル末端基を有するPAブロックとNH2末端基を有するPEブロックとの結合はアミド結合であり、(iii)0〜39重量%のPO3Gおよび/またはPEGと100〜61重量%のPO3GまたはPEG以外のポリエーテル(コポリマーの全重量に対する重量%)とから成り、さらに、コポリマーPAX.Y/PEが、
(iv)同じサイズのPAブロックと同じサイズのPEブロックとをそれぞれ有する、および/または、
(v)曲げ弾性率(MPa)または引張弾性率(MPa)またはショアーD硬度によって定義される剛性が同じコポリマーPA12/PTMGと比較して、
460nm、560nmおよび700nmでの光の透過特性が改良されている、
ことを特徴とするコポリマー。
【請求項2】
(iii)の100〜61%のポリエーテルがPTMG、PPGまたはこれらのブレンド物の中から選択され、ポリエーテルがPTMGである請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
X+Y≧22である請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
X+Y≧24である請求項3に記載のコポリマー。
【請求項5】
X+Y=22で、PAブロックがPA10.12ブロックである請求項3に記載のコポリマー。
【請求項6】
X+Y=24で、PAブロックがPA6.18から成る請求項4に記載のコポリマー。
【請求項7】
PAブロックがPA10.14である請求項6に記載のコポリマー。
【請求項8】
X+Y=26で、PAブロックがPA12.14ブロックである請求項3に記載のコポリマー。
【請求項9】
X+Y=28で、PAブロックがPA10.18ブロックである請求項4に記載のコポリマー。
【請求項10】
X+Y=30で、PAブロックがPA12.18ブロックである請求項4に記載のコポリマー。
【請求項11】
Y個の炭素原子を有するジカルボン酸が直鎖脂肪族二酸から選択される請求項1〜10のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項12】
Yが10〜20、好ましくは10〜18である請求項1〜11のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項13】
Xが6〜20、好ましくは6〜14である請求項1〜12のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項14】
PAブロックの数平均分子量が500〜10,000、好ましくは600〜7000、さらに好ましくは1500〜6000である請求項1〜13のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項15】
PEブロックの数平均分子量が250〜5,000、好ましくは250〜20000、さらに好ましくは350〜1000である請求項1〜14のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項16】
上記コポリマーの数平均分子量が5000〜50,000、好ましくは10,000〜30,000である請求項1〜15のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項17】
PAブロックが上記コポリマーのPAブロックとPEブロックとの合計の5〜95重量%、好ましくは10〜95重量%である請求項1〜16のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項18】
下記(1)と(2)とを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のコポリマーの製造方法:
(1)第1段階で、X個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンとY個の炭素原子を有する一種または複数のジカルボン酸とを、ジカルボン酸から選択される連鎖制限剤の存在下で重縮合によってポリアミドPAブロックを製造し、
(2)第2段階で、得られたポリアミドPAブロックを触媒の存在下でポリエーテルPEブロックと反応させる。
【請求項19】
X個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミンを、ジカルボン酸から選択される連鎖制限剤の存在下で、ポリエーテルPEブロックの存在下且つPEブロックとPAブロックとの反応のための触媒の存在下で、一段階の重縮合で行う請求項1〜17のいずれか一項に記載のコポリマーの製造方法。
【請求項20】
連鎖制限剤として、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸をジアミンの化学量論より過剰に用いる請求項18または19に記載の製造方法。
【請求項21】
触媒としてチタン、ジルコニウムおよびハフニウムまたは強酸、例えば燐酸またはホウ酸で形成される群の中から選択される金属の誘導体を用いる請求項18〜20のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
重縮合を180〜300℃の温度で行う請求項18〜21のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のコポリマーを含む造形品、例えば繊維、織布、フィルム、シート、ロッド、パイプまたは射出成形部品、例えば靴底の部品。
【請求項24】
PA12から成るPAブロックとPTMGから成るPEブロックとを有するコポリマーで製造された同じ物品と比較して光学的特性が改良された物品の製造での請求項1〜17のいずれか一項に記載のコポリマーPAX.Y/PEの使用であって、下記(1)と(2)を特徴とする使用:
(1)上記コポリマーPAX.Y/PEとPA12/PTMGのPAブロックのサイズが同じまたはほぼ同じで、コポリマーPAX.Y/PEとPA12/PTMGのPEブロックのサイズが同じまたはほぼ同じであり、および/または、
(2)曲げ弾性率(MPa)または引張弾性率(MPa)またはショアーD硬度によって定義された剛性が上記コポリマーPAX.Y/PEとPA12/PTMGで同じまたはほぼ同じである。

【公表番号】特表2009−526891(P2009−526891A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554828(P2008−554828)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050814
【国際公開番号】WO2007/093751
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】