説明

光学素子、照明装置、およびプロジェクター

【課題】強度分布が均一化された光を高効率で得られる光学素子を提供する。
【解決手段】光学素子30は、第1端面3aと第2端面4aとを有する第1ロッドインテグレーター31Aと、第3端面3bと第4端面4bとを有する第2ロッドインテグレーター31Bと、第1ロッドインテグレーター31Aと第2ロッドインテグレーター31Bとに挟まれた第1媒体32Aおよび第2媒体32Bと、を含み、第1媒体32Aは、第2媒体32Bよりも第1面1側に位置し、第2媒体32Bは、第1媒体32Aよりも第2面2側に位置し、第1媒体32Aの屈折率は、第1ロッドインテグレーター31Aの屈折率および第2ロッドインテグレーター31Bの屈折率よりも小さく、第2媒体32Bの屈折率は、第1ロッドインテグレーター31Aの屈折率および第2ロッドインテグレーター31Bの屈折率と等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、照明装置、およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
大画面画像を表示可能な装置の一つとして、画像情報に応じて光学像を形成する小型の光変調素子を照明装置からの光で照明し、その光学像を投写レンズによりスクリーン等へ拡大表示するプロジェクターが実用化されている。
【0003】
表示画像の高画質化を図るためには、強度分布(照度分布)が均一な照明光で光変調素子を照明することが重要であり、そのため、プロジェクターの照明装置には、照明光の強度分布を均一化する目的で、一対のレンズアレイやロッドレンズを用いたインテグレーター光学系が用いられている。このうち、ロッドレンズを用いたロッドインテグレーターは、光源からの光をロッドレンズの内面で反射させながら伝播することにより、ロッドレンズの射出面で強度分布が均一な照明光を得る光学系である。
【0004】
ロッドインテグレーターの改良例として、ロッドレンズの光軸(光を伝播させる方向)と直交する方向に、複数のロッドレンズを並列させたロッドアレイインテグレーターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、単独のロッドレンズに代えて小径の小ロッドレンズをマトリックス状に並列させてロッドアレイを構成し、さらに、そのロッドアレイの射出端にはロッドアレイと同径の単一のロッドレンズが配置されている。このような構成のロッドアレイインテグレーターでは、小ロッドレンズの各々に光を入射させることから、単独のロッドレンズを用いたロッドインテグレーターと比較して、ロッドレンズの内面での光の反射回数が飛躍的に増大するため、各小ロッドレンズの射出端では、強度分布(照度分布)が一層均一な照明光を得られる。さらに、ロッドアレイの射出端側に配置された単一のロッドレンズによって、各小ロッドレンズを通って来た光を互いに混じり合わせることができるため、最終的に強度分布(照度分布)が非常に均一な照明光を得られる。
【0005】
このような構成のロッドアレイインテグレーターは、一般的に、ロッドアレイとその射出端側に配置される単一ロッドレンズとを、各々別体として作製しておき、ロッドアレイの射出端面と単一ロッドレンズの入射端面とが段差を生じないように、接着剤等を用いて接続して作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−140837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数の小ロッドレンズをマトリックス状に並列させて構成したロッドアレイの射出端面の外形寸法や形状を、単一ロッドレンズの入射端面の外形寸法や形状と完全に一致させることは非常に難しい。そのため、ロッドアレイと単一ロッドレンズとの接続部では、段差の発生が避けられず、これによって接続部から光漏れを生じ、光伝達効率が低下する。また、ロッドアレイインテグレーターの4つの側面部で段差の程度が異なる場合には、各段差における光漏れの程度が異なることから、ロッドアレイインテグレーターで得られる照明光の強度分布(照度分布)が悪化する。このように、従来のロッドアレイインテグレーターでは、強度分布が均一な照明光を高効率で得ることは難しいという問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、従来よりも強度分布が均一化された光を高効率で得られる光学素子を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上述の光学素子を含む照明装置およびプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光学素子は、
互いに対向する第1面および第2面を有する光学素子であって、
第1端面と第2端面とを有する第1ロッドインテグレーターと、
第3端面と第4端面とを有する第2ロッドインテグレーターと、
前記第1ロッドインテグレーターと前記第2ロッドインテグレーターとに挟まれた第1媒体および第2媒体と、
を含み、
前記第1端面と前記第3端面とは、前記第1面を構成し、
前記第2端面と前記第4端面とは、前記第2面を構成し、
前記第1媒体は、前記第2媒体よりも前記第1面側に位置し、
前記第2媒体は、前記第1媒体よりも前記第2面側に位置し、
前記第1媒体の屈折率は、前記第1ロッドインテグレーターの屈折率および前記第2ロッドインテグレーターの屈折率よりも小さく、
前記第2媒体の屈折率は、前記第1ロッドインテグレーターの屈折率および前記第2ロッドインテグレーターの屈折率と等しい。
【0010】
このような光学素子によれば、第1媒体を有することにより、第1面から入射した光の強度分布を、第1ロッドインテグレーター内および第2ロッドインテグレーター内の各々で、均一化することができ、第2媒体を有することにより、第1ロッドインテグレーター内で均一化された光および第2ロッドインテグレーター内で均一化された光を混合してさらに均一化することができる。これにより、強度分布が均一化された光を得ることができる。
【0011】
さらに、このような光学素子によれば、第1面から第2面に向かう方向(光軸に沿う方向)には、1つのロッドインテグレーターで構成されている。すなわち、第1面から第2面に向かう方向には、接続部が存在しない。そのため、接続部の不完全性に起因する光漏れを生じさせないことができる。したがって、強度分布が均一化された照明光を高効率で得ることができる。
【0012】
本発明に係る光学素子において、
前記第1媒体および前記第2媒体は、前記第1ロッドインテグレーターおよび前記第2ロッドインテグレーターを接合する接着部材であってもよい。
【0013】
このような光学素子によれば、第1媒体および第2媒体が接着部材として機能することができる。そのため、例えば、第1ロッドインテグレーターと第2ロッドインテグレーターとを接合するための部材が不要となる。
【0014】
本発明に係る光学素子において、
前記第1媒体および前記第2媒体は、一体的に形成された光学部材であってもよい。
【0015】
このような光学素子によれば、製造工程を簡略化できる。
【0016】
本発明に係る光学素子において、
前記第1ロッドインテグレーターと前記第2ロッドインテグレーターとに挟まれ、かつ前記第1媒体と前記第2媒体との間に位置する、第3媒体および第4媒体をさらに含み、
前記第3媒体は、前記第4媒体よりも前記第1媒体側に位置し、
前記第4媒体は、前記第3媒体よりも前記第2媒体側に位置し、
前記第3媒体の屈折率は、前記第1ロッドインテグレーターの屈折率および前記第2ロッドインテグレーターの屈折率と等しく、
前記第4媒体の屈折率は、前記第1ロッドインテグレーターの屈折率および前記第2ロッドインテグレーターの屈折率よりも小さくてもよい。
【0017】
このような光学素子によれば、第1ロッドインテグレーターおよび第2ロッドインテグレーターの各々での強度分布の均一化工程と、光学的に一体化された第1ロッドインテグレーターおよび第2ロッドインテグレーター内での強度分布の均一化工程と、を複数回行うことができる。したがって、強度分布の均一性が高い照明光を得ることができる。
【0018】
本発明に係る光学素子において、
前記第1媒体の屈折率は、前記第1面側から前記第2面側に向かうに従って大きくなっていてもよい。
【0019】
このような光学素子によれば、第1ロッドインテグレーターと第2ロッドインテグレーターとの間で光が徐々に混じり合いながら伝播するため、強度分布(照度分布)がより均一な光を得ることができる。さらに、第1の媒体と第2の媒体との間における境界面(屈折率が離散的に変化する境界面)における光反射を低減できるため、高効率で導光することができる。
【0020】
本発明に係る光学素子において、
前記第1ロッドインテグレーターおよび前記第2ロッドインテグレーターは、前記第1面から前記第2面に向かうに従って断面積が大きくなってもよい。
【0021】
このような光学素子によれば、入射した光がロッドインテグレーターと第1媒体との境界面で反射するごとに、光学素子の光軸に対する光線角度を小さくすることができるため、第2面から射出される光の指向性を高めることができる。
【0022】
本発明に係る光学素子において、
前記第1ロッドインテグレーターおよび前記第2ロッドインテグレーターは、前記第1面から前記第2面に向かうに従って断面積が小さくなってもよい。
【0023】
このような光学素子によれば、第1面に入射した光の光束断面に対して、第2面から射出する光の光束断面を小さくすることができるため、被照射面が小さい照明対象を照明する場合には好適である。
【0024】
本発明に係る照明装置は、
本発明に係る光学素子と、
前記光学素子の前記第1面に入射する光を発生させる光源部と、
を含む。
【0025】
このような照明装置によれば、強度分布が均一化された照明光を高効率で得ることができる。
【0026】
本発明に係る照明装置において、
前記光源部は、
前記第1ロッドインテグレーターの前記第1端面に入射する光を発生させる第1発光素子と、
前記第2ロッドインテグレーターの前記第3端面に入射する光を発生させる第2発光素子と、
を有していてもよい。
【0027】
このような照明装置によれば、光強度が大きく、均一化された光を得ることができる。
【0028】
本発明に係るプロジェクターは、
本発明に係る照明装置と、
前記照明装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置によって形成された画像を投射する投射装置と、
を含む。
【0029】
このようなプロジェクターによれば、強度分布が均一化された照明光を高効率で得られる照明装置を光源として用いることができる。したがって、例えば、照度むらが少なく明るい画像を投射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係る照明装置の構成を示す概略図。
【図2】第1実施形態に係る照明装置の光学素子の構成を説明するための図。
【図3】第1実施形態に係る照明装置の光学素子の構成を説明するための図。
【図4】第1実施形態の第1変形例に係る照明装置の光学素子を光源部側から見た模式図。
【図5】第1実施形態の第1変形例に係る照明装置の光学素子を光源部側から見た模式図。
【図6】第1実施形態の第2変形例に係る照明装置の光学素子を光源部側から見た模式図。
【図7】第1実施形態の第3変形例に係る照明装置の光学素子を模式的に示す図。
【図8】第1実施形態の第3変形例に係る照明装置の光学素子を模式的に示す図。
【図9】第1実施形態の第4変形例に係る照明装置の光学素子を模式的に示す図。
【図10】第2実施形態に係る照明装置の光学素子を模式的に示す図。
【図11】第2実施形態の変形例に係る照明装置の光学素子を模式的に示す図。
【図12】第3実施形態に係る照明装置の光学素子を模式的に示す図。
【図13】第4実施形態に係る照明装置の構成を示す概略図。
【図14】第5実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0032】
1. 第1実施形態
1.1. 照明装置の構成
まず、第1実施形態に係る照明装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る照明装置100の構成を示す概略図である。第1実施形態に係る照明装置100は、本発明に係る光学素子を含む。
【0033】
照明装置100は、図1に示すように、光源部10と、集光素子20、光学素子30と、を含んで構成されている。
【0034】
光源部10は、発光素子11と、配光角制御素子12と、を備えている。
【0035】
発光素子11は、光を発生させる。配光角制御素子12は、発光素子11から放射された光の角度分布(放射角)を所定の値に変換する機能を有する。
【0036】
集光素子20は、光源部10から光学素子30への光の入射効率を高める機能を有する。ただし、光源部10から射出される光の角度分布等によっては、集光素子20を備えなくてもよい。光学素子30は、z方向に光を伝播させることにより、光学素子30から射出される光の強度分布を均一化する均一化導光素子として機能する。
【0037】
発光素子11としては、例えば、半導体レーザー(Laser Diode)、スーパールミネッセントダイオード(Super Luminescent Diode)、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic Light Emitting Diode)、放電ランプ(例えばキセノンランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ)等を採用できる。また、配光角制御素子12や集光素子20としては、レンズ、ミラー、ホログラフィック素子およびそれらを組み合わせたものを用いることができる。
【0038】
光源部10から射出した光は、配光角制御素子12によって所定の角度分布を有する光に変換され、集光素子20を介して光学素子30に入射する。光学素子30に入射した光は、z方向に伝播する間に強度分布が均一化され、照明対象90を、強度分布が均一化された照明光で高効率に照明する。
【0039】
次に、光学素子30の構成について説明する。
【0040】
図2および図3は、光学素子30の構成を説明するための図である。図2(A)は、光学素子30を、光源部10側から見た模式図である。図2(B)は、光学素子30を照明対象90側から見た模式図である。図3は、図1の一点鎖線IIIで囲まれた部分を拡大して示す図である。なお、図2および図3は、便宜上、誇張して示しており、図1〜図3の寸法関係は正確ではない。
【0041】
光学素子30は、図1〜図3に示すように、屈折率n1の透光性媒質からなる複数のロッドインテグレーター31と、屈折率が異なる2種類(屈折率n0,屈折率n1)の接着部材32A、32Bと、を含んで構成されている。
【0042】
ロッドインテグレーター31は、入射端面3と、射出端面4と、入射端面3と射出端面4とを接続する接続面5と、を有している。図示の例では、入射端面3と射出端面4とは、互いに対向している。ロッドインテグレーター31は、図3に示すように、光源部10で発生した光が入射する入射端面3から、均一化された照明光を射出する射出端面4まで、z方向に沿って延びる形状を有している。図示の例では、ロッドインテグレーター31は、直方体である。なお、z方向は、光学素子30の光軸(光を伝播させる方向)Lに沿う方向である。また、x方向は、z方向と直交する方向であり、y方向は、z方向およびx方向と直交する方向である。
【0043】
図2(A)、図2(B)に示すように、光学素子30では、少なくともz方向の寸法が等しい複数のロッドインテグレーター31が、x方向およびy方向に並列している。図示の例では、x方向の並列数は、6であり、y方向の並列数は、6である。なお、x方向およびy方向の並列数は、特に限定されない。
【0044】
隣接するロッドインテグレーター31間には、第1の接着部材32Aおよび第2の接着部材32Bが隙間無く充填され、これらの接着部材32A、32Bを介して隣接するロッドインテグレーター31が一体化(接合)されている。すなわち、複数のロッドインテグレーター31は、第1及び第2の接着部材32A、32Bによって一体化され、外形的には四角柱形状の光学素子30を構成している。図示の例では、互いに同じ形状および同じ大きさを有する36個のロッドインテグレーター31が、光学素子30を構成している。
【0045】
光学素子30は、光源部10で発生した光が入射する入射面(第1面)1と、入射した光を均一化して照明光として射出する射出面(第2面)2と、を有する。入射面1と射出面2とは、互いに対向している。
【0046】
図2(A)に示すように、光学素子30の入射面(第1面)1は、複数のロッドインテグレーター31の入射端面3を含んで構成されている。ロッドインテグレーター31の入射端面3の形状は、図示の例では、正方形である。光学素子30の入射面1は、例えば、複数の入射端面3を最密に配置することによって設けられる。光学素子30の入射面1の形状は、例えば、正方形である。
【0047】
図2(B)に示すように、光学素子30の射出面(第2面)2は、複数のロッドインテグレーター31の射出端面4を含んで構成されている。ロッドインテグレーター31の射出端面4の形状は、図示の例では、正方形である。光学素子30の射出面2は、例えば、複数の射出端面4を最密に配置することによって設けられる。光学素子30の射出面2の形状は、例えば、正方形である。
【0048】
第1の接着部材32Aおよび第2の接着部材32Bは、図3に示すように、隣り合うロッドインテグレーター31に挟まれている。図3に示すように、光学素子30を構成する複数のロッドインテグレーター31のうちの隣り合うロッドインテグレーター31を、第1ロッドインテグレーター31Aおよび第2ロッドインテグレーター31Bとすると、第1の接着部材32Aおよび第2の接着部材32Bは、第1ロッドインテグレーター31Aと第2ロッドインテグレーター31Bとに挟まれている。具体的には、第1の接着部材32Aおよび第2の接着部材32Bは、第1ロッドインテグレーター31Aの接続面5aと第2ロッドインテグレーター31Bの接続面5bとの間に位置している。なお、図3に示すように、第1ロッドインテグレーター31の入射端面(第1端面)3aと第2ロッドインテグレーター31の入射端面(第2端面)3bとは、入射面1を構成している。第1ロッドインテグレーター31の射出端面(第3端面)4aと、第2ロッドインテグレーター31の射出端面(第4端面)4bとは、射出面2を構成している。
【0049】
第1の接着部材(第1媒体)32Aは、屈折率n1よりも小さい屈折率n0を有しており、第2の接着部材(第2媒体)32Bは、屈折率n1を有している。すなわち、第1の接着部材32Aの屈折率は、ロッドインテグレーター31の屈折率よりも小さく、第2の接着部材32Bの屈折率は、ロッドインテグレーター31の屈折率と等しい。ここで、第2の接着部材32Bの屈折率と、ロッドインテグレーター31の屈折率と等しいとは、第2の接着部材32Bの屈折率が、実質的にロッドインテグレーター31の屈折率と等しい場合を含む。第2の接着部材32Bの屈折率が、実質的にロッドインテグレーター31の屈折率と等しい場合とは、第2の接着部材32Bの屈折率をn32Bとし、ロッドインテグレーター31の屈折率をn31とすると、第2の接着部材32Bの屈折率が、n31−0.01<n32B<n31+0.01の範囲にある場合をいう。
【0050】
第1の接着部材32Aおよび第2の接着部材32Bは、例えば、透光性を有する接着剤である。ここで、透光性を有するとは、光が透過する性質を有していることをいう。なお、第1の接着部材32Aは、必ずしも透光性を有する必要はなく、光吸収性を有する接着剤であってもよい。光吸収性を有する接着剤を用いた場合の効果については、後述の第4実施形態で説明する。
【0051】
ここで、第1ロッドインテグレーター31Aおよび第2ロッドインテグレーター31Bを接合する接着部材32A,32Bは、光学素子30におけるz方向の位置に応じて使い分けられている。
【0052】
具体的には、光学素子30の入射面1から境界部34までの第1の領域A1では、ロッドインテグレーター31の屈折率n1よりも小さい屈折率n0を有する第1の接着部材32Aが使用されている。ここで、境界部34は、第1の接着部材32Aと第2の接着部材32Bとの境界であり、第1の接着部材32Aと第2の接着部材32Bとが接触している部分である。一方、境界部34から射出面2までの第2の領域A2ではロッドインテグレーター31の屈折率n1と等しい屈折率n1を有する第2の接着部材32Bが使用されている。なお、境界部34のz方向の位置は、任意に設定することができる。第1の領域A1は、z方向において、境界部34よりも入射面1側の領域であり、第2の領域A2は、z方向において、境界部34よりも射出面2側の領域である。すなわち、第1の接着部材32Aは、第2の接着部材32Bよりも入射面1側に位置し、第2の接着部材32Bは、第1の接着部材32Aよりも射出面2側に位置している。
【0053】
これにより、光学素子30の第1の領域A1では、第1の接着部材32Aの屈折率n0がロッドインテグレーター31の屈折率n1よりも小さいため、ロッドインテグレーター31と第1の接着部材32Aとの物理的な境界面33A(図3参照)は、光学的にも界面として存在する。したがって、ロッドインテグレーター31に入射した光は、ロッドインテグレーター31と第1の接着部材32Aとの界面(境界面33A)で全反射しながらz方向に伝播する。さらに詳述すると、ロッドインテグレーター31に入射した光のうち、境界面33Aで全反射しながらz方向に伝播する光は、ロッドインテグレーター31の屈折率n1と第1の接着部材32Aの屈折率n0で規定される全反射条件(全反射を生じる臨界角)を満たす光に限定される。ロッドインテグレーター31と第1の接着部材32Aとの間で実質的な屈折率差が存在すると見なせる場合(例えば、屈折率差>0.02)、境界面33Aに対する臨界角は90°よりも十分に小さくなるため、ロッドインテグレーター31に入射した光の大部分は境界面33Aで全反射する。
【0054】
一方、光学素子30の第2の領域A2では、第2の接着部材32Bの屈折率n1がロッドインテグレーター31の屈折率n1と等しいため、ロッドインテグレーター31と第2の接着部材32Bとの物理的な境界面33B(図3参照)は、光学的には界面として存在せず一体化していると見なせる。さらに詳述すると、ロッドインテグレーター31と第1の接着部材32Aとの間で実質的な屈折率差が存在しないと見なせる場合(例えば、屈折率差<0.02)、境界面33Bに対する臨界角は90°に限りなく近づくため、ロッドインテグレーター31に入射した光の大部分は境界面33Bを透過する。したがって、ロッドインテグレーター31中を伝播する光が第2の領域A2に達すると、隣接するロッドインテグレーター31A,31Bとの間には反射面となり得る光学的な界面が存在しないため、第2の接着部材32Bを介して隣接するロッドインテグレーター31A,31Bとの間で光は互いに混じり合いながら伝播する。当然ながら、光学素子30の最外面39(図1参照)では、ロッドインテグレーター31は空気と接している(最外面39に対する臨界角は90°よりも十分に小さくなる)ため、最外面39では、光は全反射して光学素子30内をz方向に伝播する。
【0055】
言い換えると、光学素子30は、ロッドインテグレーター31と接する接着部材32A,32Bの屈折率を境界部34の前後で変えることにより、境界部34と射出面2との間(第2の領域A2)では、z方向と直交する方向(x,y方向)に並列した複数のロッドインテグレーター31を用いているにもかかわらず、光学的には一つのロッドインテグレーターで構成されていると見なすことができる。したがって、ロッドインテグレーターの物理的な寸法、材質等を変えることなく、あたかも、断面寸法が異なる2種類のロッドインテグレーター(断面形状が小さい複数のロッドインテグレーターと断面形状が大きい一つのロッドインテグレーター)をz方向に連結して構成した光学素子と光学的には同様の機能を実現できる。
【0056】
光学素子30に入射した光は、入射面1において、ロッドインテグレーター31ごとに分かれて入射し、各ロッドインテグレーター31内をロッドインテグレーター31と第1の接着部材32Aとの境界面33Aにて全反射しながらz方向へ伝播する間に強度分布が均一な光に変換され、接着部材が第1の接着部材32Aから第2の接着部材32Bへと変わる境界部34へと達する(アレイ化されたロッドインテグレーター31内での強度分布の均一化過程)。境界部34から射出面2との間では、隣接するロッドインテグレーター31間(ロッドインテグレーター31と第2の接着部材32Bとの間)には光学的界面が存在しないため、境界部34から射出面2側へ進む光は、隣接するロッドインテグレーター31の間で互いに混じり合い、光学素子30の射出面2では強度分布が一層均一な光となる(光学的に一体化されたロッドインテグレーター31内での強度分布の均一化過程)。
【0057】
光学素子30では、複数の小径ロッドインテグレーターを並列したロッドアレイと、単一の大径ロッドインテグレーターと、を接続して構成した光学素子と光学的には同等の機能を備えていることに加えて、ロッドアレイと大径ロッドインテグレーターとの接続部が存在しないため、接続部の不完全性に起因する光漏れを生じない。したがって、本実施形態に係る光学素子30によれば、強度分布(照度分布)が均一化された照明光を高効率で得ることができる。
【0058】
本実施形態に係る照明装置100および光学素子30は、例えば、以下の特徴を有する。
【0059】
光学素子30によれば、第1の接着部材32Aを有することにより、入射面1から入射した光の強度分布を、各ロッドインテグレーター内で均一化することができ、第2の接着部材32Bを有することにより、各ロッドインテグレーター内で均一化された光を、混合してさらに均一化することができる。これにより、強度分布が均一化された光を得ることができる。
【0060】
さらに、光学素子30によれば、上述したように、入射面1から射出面2に向かう光軸L方向(z方向)には、1つのロッドインテグレーターで構成されている。すなわち、光軸L方向(z方向)には、接続部が存在しない。そのため、接続部の不完全性に起因する光漏れを生じない。したがって、強度分布が均一化された照明光を高効率で得ることができる。
【0061】
光学素子30では、上述のように第1の接着部材32Aおよび第2の接着部材32Bが、ロッドインテグレーター31間の媒体として機能する。当該媒体が、接着部材でない場合(例えば、ガラス)、例えば、ロッドインテグレーター31間を接合するための部材等が必要となる。光学素子30によれば、当該媒体が接着部材を兼ねることができるため、例えば、ロッドインテグレーター31間を接合するための部材が不要となる。
【0062】
本実施形態に係る照明装置100は、本実施形態に係る光学素子30を含むため、強度分布が均一化された照明光を高効率で得ることができる。
【0063】
1.2. 変形例
次に、第1実施形態の変形例に係る照明装置について説明する。以下、第1実施形態の変形例に係る照明装置において、上述した照明装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
(1)第1変形例
まず、第1変形例について説明する。図4は、本変形例に係る照明装置の光学素子301を光源部10側から見た模式図である。図5は、本変形例に係る照明装置の光学素子302を光源部10側から見た模式図である。
【0065】
照明装置100の例では、図1〜図3に示すように、ロッドインテグレーター31の入射端面3および射出端面4の形状は、正方形であったが、入射端面3および射出端面4の形状は、特に限定されず、例えば、長方形、三角形、円、楕円などであってもよい。
【0066】
光学素子301では、図4に示すように、ロッドインテグレーター31の入射端面3の形状は、長方形である。なお、図示はしないが、ロッドインテグレーター31の射出端面4の形状は、入射端面3と同様に、長方形である。すなわち、光学素子301では、平板状のロッドインテグレーター31をその板厚方向に積層して構成されているとも言える。光学素子301の入射面1は、複数の長方形状の入射端面3で構成されており、その形状は、正方形である。
【0067】
また、光学素子301において、ロッドインテグレーター31のx方向における並列数と、ロッドインテグレーター31のy方向における並列数とは、異なっていてもよい。図示の例では、x方向における並列数は、1であり、y方向における並列数は、6である。光学素子301は、複数のロッドインテグレーター31と当該複数のロッドインテグレーター31の間隙に配置される接着部材32A,32Bによって、外形的には、一体化された光学素子として構成できればよい。x方向およびy方向におけるロッドインテグレーター31の並列数と照明光の均一性は、比例するため、x方向およびy方向におけるロッドインテグレーター31の並列数を調整することにより、x方向およびy方向において、照明光の強度分布の均一性の程度を制御できる。
【0068】
また、光学素子302では、図5に示すように、ロッドインテグレーター31の入射端面3の形状は、三角形である。なお、図示はしないが、ロッドインテグレーター31の射出端面4の形状は、入射端面3と同様に、三角形である。光学素子302の入射面1は、複数の三角形状の入射端面3で構成されており、その形状は、正方形である。
【0069】
なお、光学素子301,302において、入射面1の形状は、正方形に限定されず、例えば、長方形やその他の多角形であってもよい。また、射出面2の形状は、正方形に限定されず、例えば、長方形やその他の多角形であってもよい。
【0070】
(2)第2変形例
次に、第2変形例について説明する。図6は、本変形例に係る照明装置の光学素子303を、光源部10側から見た模式図である。
【0071】
照明装置100の例では、図1〜図3に示すように、光学素子30は、互いに同じ形状や同じ大きさを有する複数のロッドインテグレーター31を含んで構成されていたが、異なる形状や異なる大きさを有する複数のロッドインテグレーター31を含んで構成されていてもよい。
【0072】
光学素子303は、図6に示すように、入射端面3の大きさが異なるロッドインテグレーター31およびロッドインテグレーター31Sを含んで構成されている。図示の例では、入射端面3の面積が大きいロッドインテグレーター31が、入射端面3の面積が小さいロッドインテグレーター31Sの周囲を囲むように配置されている。
【0073】
このように、入射面1において、位置に応じて入射端面3の形状および大きさの少なくとも一方を変えることにより、xy面において、照明光の強度分布の均一性の程度を制御できる。
【0074】
(3)第3変形例
次に、第3変形例について説明する。図7は、本変形例に係る照明装置の光学素子304を模式的に示す図である。図8は、本変形例に係る照明装置の光学素子305を模式的に示す図である。
【0075】
照明装置100の例では、ロッドインテグレーター31は、z方向に沿って入射端面3から射出端面4に向かうに従って、その断面形状や寸法が変化せずに一定の断面形状および寸法を有していたが、入射端面3から射出端面4に向かうに従って、その断面形状や寸法が変化していてもよい。
【0076】
光学素子304では、図7に示すように、一部あるいは全部のロッドインテグレーター31は、入射端面3から射出端面4に向かうに従って断面積が大きくなるテーパー形状を有している。ここで、ロッドインテグレーター31の断面積とは、入射端面3から射出端面4に向かう方向(z方向)に直交する面(xy平面)における面積である。これに伴い、光学素子304は、入射面1から射出面2に向かうに従って断面積が漸次大きくなるテーパー形状を有している。図示の例では、一部のロッドインテグレーター31の断面積は、入射端面3から射出端面4に向かうに従って、徐々に大きくなっている。そのため、光学素子304の断面積は、入射面1から射出面2に向かうに従って、徐々に大きくなっている。
【0077】
また、光学素子305では、図8に示すように、ロッドインテグレーター31は、入射端面3から射出端面4に向かうに従って断面積が大きくなるテーパー形状を有している。具体的には、ロッドインテグレーター31の断面積は、入射端面3から境界部34に向かうに従って大きくなり、境界部34から射出端面4までは一定の大きさを有する。そのため、光学素子305の断面積は、入射面1から境界部34に向かうに従って大きくなり、境界部34から射出面2までは一定の大きさを有する。
【0078】
光学素子304,305によれば、ロッドインテグレーター31が、入射端面3から射出端面4に向かうに従って断面積が大きくなるテーパー形状を有していることにより、入射した光がロッドインテグレーター31の境界面33Aで反射するごとに、光軸Lに対する光線角度が小さくなるため、照明光の指向性を高めることができる。例えば、プロジェクターでは、光変調装置で変調可能な光の角度範囲、および投射光学系で取り込むことが可能な光の角度範囲に限りがあることから、小さい光線角度の光が多いほど効率よく光を利用できる。したがって、光学素子304,305を含む照明装置をプロジェクターに用いた場合には、小さい光線角度の光を増加させられるため、高い光利用効率で明るい投射画像を得ることができる。
【0079】
また、光学素子304,305によれば、入射面1側を小径化し、射出面2側を大径化できるため、例えば、照明対象90が光源部10に対して大きい場合に、光源部10で発生した光を均一化して、照明光を効率よく照明対象90に供給することができる。
【0080】
(4)第4変形例
次に、第4変形例について説明する。図9は、本変形例に係る照明装置の光学素子306を模式的に示す図である。
【0081】
照明装置100の例では、ロッドインテグレーター31は、z方向に沿って入射端面3から射出端面4に向かうに従って、その断面形状や寸法が変化せずに一定の断面形状および寸法を有していたが、入射端面3から射出端面4に向かうに従って、その断面形状や寸法が変化していてもよい。
【0082】
光学素子306では、図9に示すように、一部あるいは全部のロッドインテグレーター31は、入射端面3から射出端面4に向かうに従って断面積(xy面における面積)が小さくなるテーパー形状を有している。そのため、光学素子306は、入射面1から射出面2に向かうに従って断面積が漸次小さくなるテーパー形状を有している。図示の例では、一部のロッドインテグレーター31の断面積は、入射端面3から射出端面4に向かうに従って、徐々に小さくなっている。そのため、光学素子306の断面積は、入射面1から射出面2に向かうに従って、徐々に小さくなっている。なお、ロッドインテグレーター31の断面積は、図示はしないが、入射端面3から境界部34に向かうに従って小さくなり、境界部34から射出端面4までは一定の大きさを有していてもよい。
【0083】
光学素子306によれば、入射面1側に対して射出面2側を小径化することができるため、入射した光に対して、照明光の光束断面を小さくすることができる。したがって、例えば、照明対象90が、光源部10に対して小さい場合に、光源部10で発生した光を、効率よく照明対象90に照射することができる。
【0084】
(5)第5変形例
次に、第5変形例について説明する。
【0085】
照明装置100の例では、屈折率n0を有する第1の接着部材32Aおよび屈折率n1を有する第2の接着部材32Bを用いたが、屈折率n0を有する媒体(第1媒体)および屈折率n1を有する媒体(第2媒体)であればこれに限定されない。このような媒体としては、上述した接着部材32A,32Bの他に、例えば、ガラス、樹脂等が挙げられる。なお、媒体としてガラスを用いる場合、接着部材を用いずに隣り合うロッドインテグレーター31の界面同士を直接接合する界面接合により接合してもよい。また、例えば、屈折率n0を有する媒体(第1媒体)として空気を用いてもよい。この場合、入射面1から境界部34の間では隣接するロッドインテグレーター31間には空気が、境界部34から射出面2の間では隣接するロッドインテグレーター31間には屈折率n1を有する媒体(第2媒体)が存在し、この媒体(第2媒体)によって光学素子は一体化されている。
【0086】
また、例えば、第1媒体および第2媒体は、それぞれ異なる部材からなってもよいし、一体的に構成されていてもよい。例えば、第1媒体および第2媒体は、一体的に形成された光学部材であってもよい。これにより、製造工程を簡略化できる。このような光学部材として、例えば、屈折率n0を有する領域と、屈折率n1とを有する領域と、を備えたガラスや樹脂が挙げられる。
【0087】
2. 第2実施形態
2.1. 照明装置の構成
次に、第2実施形態に係る照明装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図10は、第2実施形態に係る照明装置の光学素子307を模式的に示す図である。なお、図10において、第1の接着部材32Aの色の濃淡は、屈折率を示しており、濃いほど屈折率が小さいことを意味している。また、図10は、図3に対応している。以下、第2実施形態に係る照明装置において、上述した照明装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
光学素子307では、図10に示すように、第1の接着部材32Aの屈折率は、入射面1側から射出面2側に向かうに従って変化している。図示の例では、第1の接着部材32Aの屈折率は、入射面1側から射出面2側に向かって連続的に大きくなっている。また、境界部34は、射出面2の近傍に設定されており、第1の接着部材32Aと第2の接着部材32Bとによって、屈折率が入射面1から射出面2まで連続的に変化している。ただし、境界部34と射出面2との間に位置する第2の接着部材32Bは、z方向の位置に関係なく一定の屈折率を取る。
【0089】
例えば、接着部材として、硬化前には流動性を有する接着剤を用い、入射面1側から屈折率n1よりも低い屈折率を有する接着剤を注入し、射出面2側から屈折率n1を有する接着剤を注入することにより、これらの接着剤が混じり合うため、硬化後には、屈折率が入射面1側から射出面2側に向かって連続的に変化する第1の接着部材32Aが得られる。
【0090】
また、例えば、屈折率の異なる複数の接着剤を用いて、第1の接着部材32Aを得てもよい。
【0091】
光学素子307によれば、第1の接着部材32Aの屈折率が、ロッドインテグレーター31の屈折率n1の近づくにつれて、隣接するロッドインテグレーター31間では光は徐々に混じり合いながら伝播するため、光学素子307の射出面2では強度分布(照度分布)がより均一な照明光が得られる。また、接着部材32A,32B間における境界面(屈折率が離散的に変化する境界面)が存在せず、その境界面における光反射が無いため、高効率で導光できる。
【0092】
さらに、ロッドインテグレーターに偏光を入射した場合には、全反射によって偏光状態が影響を受ける(例えば直線偏光が楕円編光化する)が、第1の接着部材32Aとロッドインテグレーター31との境界面では、屈折率差が徐々に小さくなるため、偏光状態が受ける影響を低減でき、偏光状態を高い割合で維持した状態で強度分布(照度分布)の均一化を図ることができる。
【0093】
2.2. 変形例
次に、第2実施形態の変形例に係る照明装置について説明する。図11は、本変形例に係る光学素子308を模式的に示す図である。なお、図11において、第1の接着部材32Aの色の濃淡は、屈折率を示しており、濃いほど屈折率が小さいことを意味している。以下、第2実施形態の変形例に係る照明装置および光学素子308において、上述した照明装置100および光学素子307の例と異なる点について説明し、同様の点については同一の符号を付して説明を省略する。
【0094】
光学素子307の例では、図10に示すように、第1の接着部材32Aの屈折率は、入射面1側から射出面2側に向かって連続的に変化していたが、第1の接着部材32Aの屈折率は、ロッドインテグレーター31の屈折率よりも小さければ、その分布は特に限定されない。
【0095】
光学素子308では、図11に示すように、第1の接着部材32Aは、入射面1側では屈折率が一定となっており、境界部34近傍で屈折率が徐々に変化して(大きくなって)、第2の接着部材32Bと同じ屈折率となっている。
【0096】
このような場合でも、上述した光学素子307と同様の効果を奏することができる。
【0097】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る照明装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図12は、第3実施形態に係る照明装置の光学素子309を模式的に示す図である。以下、第3実施形態に係る照明装置において、上述した照明装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0098】
光学素子309では、第1の接着部材32Aおよび第2の接着部材32Bに加えて、さらに、ロッドインテグレーター31間に挟まれ、かつ第1の接着部材32Aと第2の接着部材32Bとの間に位置する、第3の接着部材32Cおよび第4の接着部材32Dをさらに含む。また、第3の接着部材32Cは、第4の接着部材32Dよりも第1の接着部材32A側に位置しており、第4の接着部材32Dは、第3の接着部材32Cよりも第2の接着部材32B側に位置している。すなわち、光学素子309では、入射面1側からz方向に沿って、第1の接着部材32A、第3の接着部材32C、第4の接着部材32D、第2の接着部材32Bの順で並んでいる。
【0099】
第3の接着部材32Cの屈折率は、ロッドインテグレーター31の屈折率と等しい。すなわち、第3の接着部材32Cは、第2の接着部材32Bの屈折率と同じ屈折率n1を有している。
【0100】
第4の接着部材32Dの屈折率は、ロッドインテグレーター31の屈折率よりも小さい。第4の接着部材32Dは、例えば、第1の接着部材32Aと同じ屈折率n0を有している。なお、第4の接着部材32Dの屈折率は、ロッドインテグレーター31の屈折率よりも小さければ、特に限定されず、第1の接着部材32Aと異なる屈折率を有していてもよい。
【0101】
光学素子309は、図1および図3に示す光学素子30を多段化(図示の例では2段)したものともいえる。ここでは、光学素子30を2段にしたが、その段数は特に限定されず、3段以上であってもよい。
【0102】
光学素子309によれば、接着部材32A、32B,32C,32Dを設けることにより、アレイ化された各ロッドインテグレーター31内での強度分布の均一化過程と、光学的に一体化されたロッドインテグレーター31内での強度分布の均一化過程と、が複数(図示の例では2回)存在させることができる。したがって、光学素子309の射出面2では、強度分布がより均一化された照明光を得ることができる。
【0103】
さらに、光学素子309によれば、入射面1から射出面2まで、z方向には、接続部が存在しないため、接続部の不完全性に起因する光漏れを生じない。したがって、強度分布が均一化された照明光を高効率で得ることができる。
【0104】
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態に係る照明装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図13は、第4実施形態に係る照明装置200の構成を示す概略図である。以下、第4実施形態に係る照明装置200において、上述した照明装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については同一の符号を付して説明を省略する。
【0105】
照明装置100の例では、図1に示すように、光源部10は、1つの発光素子11を有していた。これに対して、照明装置200では、光源部10は、複数の発光素子11を有している。具体的には、照明装置200は、1つのロッドインテグレーター31に対して1つの発光素子11が設けられており、1つの発光素子11で発生した光は、対応する1つのロッドインテグレーター31の入射端面3に入射するように構成されている。これにより、光強度の大きな照明光を得ることができる。また、単一の光源から光が入射される場合と比べて、各ロッドインテグレーター31に入射する光の強度を揃えることができるため、より強度分布が均一化した照明光を得ることができる。なお、光学素子30に入射させる光が偏光である場合には、偏光度を維持する観点から、ロッドインテグレーター31のみに光を入射させるか、あるいは、入射面1から境界部34の間の隣接するロッドインテグレーター31間に配置される媒体(第1媒体)として光吸収性を有する媒体を用いることが望ましい。隣接するロッドインテグレーター31間に配置された透光性媒体に光が入射した場合、その光は、z方向に進みながら偏光度を低下し、ロッドインテグレーター31に入射する可能性がある。したがって、光吸収性を有する媒体を用いて偏光度が低下した光を吸収することによって、光学素子30から射出される光の偏光度を高い状態に維持することができる。
【0106】
5. 第5実施形態
次に、第5実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図14は、第5実施形態に係るプロジェクター1000を模式的に示す図である。なお、図14では、便宜上、プロジェクター1000を構成する筐体の図示は省略している。
【0107】
プロジェクター1000において、赤色光、緑色光、青色光を出射する赤色光源(照明装置)200R,緑色光源(照明装置)200G、青色光源(照明装置)200Bは、本発明に係る照明装置(例えば照明装置200)である。
【0108】
プロジェクター1000は、光源200R,200G,200Bから射出された光をそれぞれ画像情報に応じて変調する透過型の液晶ライトバルブ(光変調装置)1010R,1010G,1010Bと、液晶ライトバルブ1010R,1010G,1010Bによって形成された像を拡大してスクリーン(表示面)に投射する投射レンズ(投射装置)1030と、を備えている。また、プロジェクター1000は、液晶ライトバルブ1010R,1010G,1010Bから射出された光を合成して投射レンズ1030に導くクロスダイクロイックプリズム(色光合成手段)1020を備えていることができる。
【0109】
各液晶ライトバルブ1010R,1010G,1010Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム1020に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は投射光学系である投射レンズ1030によりスクリーン上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0110】
プロジェクター1000によれば、上述のように、強度分布(照度分布)が均一化された照明光を高効率で得られる照明装置200を光源として用いることができる。そのため、プロジェクター1000は、照度むらが少なく明るい画像を投射することができる。
【0111】
なお、上述の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、多数の微小ミラーをマトリクス状に配列したデジタルマイクロミラーデバイスが挙げられる。また、投射光学系の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0112】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0113】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0114】
A1 第1の領域、A2 第2の領域、 1 入射面、2 射出面、
3,3a,3b 入射端面、4,4a,4b 射出端面、5 接続面、10 光源部、
11 発光素子、12 配光角制御素子、20 集光素子、30 光学素子、
31,31A,31B ロッドインテグレーター、32A 第1の接着部材、
32B 第2の接着部材、33A 境界面、33B 境界面、34 境界部、
39 最外面、90 照明対象、100,200 照明装置、
301,302,303,304,305,306,307,308,309 光学素子
、1000 プロジェクター、
1010R,1010G,1010B 液晶ライトバルブ(光変調装置)、
1020 クロスダイクロイックプリズム、1030 投射レンズ(投射装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面および第2面を有する光学素子であって、
第1端面と第2端面とを有する第1ロッドインテグレーターと、
第3端面と第4端面とを有する第2ロッドインテグレーターと、
前記第1ロッドインテグレーターと前記第2ロッドインテグレーターとに挟まれた第1媒体および第2媒体と、
を含み、
前記第1端面と前記第3端面とは、前記第1面を構成し、
前記第2端面と前記第4端面とは、前記第2面を構成し、
前記第1媒体は、前記第2媒体よりも前記第1面側に位置し、
前記第2媒体は、前記第1媒体よりも前記第2面側に位置し、
前記第1媒体の屈折率は、前記第1ロッドインテグレーターの屈折率および前記第2ロッドインテグレーターの屈折率よりも小さく、
前記第2媒体の屈折率は、前記第1ロッドインテグレーターの屈折率および前記第2ロッドインテグレーターの屈折率と等しい、ことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記第1媒体および前記第2媒体は、前記第1ロッドインテグレーターおよび前記第2ロッドインテグレーターを接合する接着部材である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1媒体および前記第2媒体は、一体的に形成された光学部材である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1ロッドインテグレーターと前記第2ロッドインテグレーターとに挟まれ、かつ前記第1媒体と前記第2媒体との間に位置する、第3媒体および第4媒体をさらに含み、
前記第3媒体は、前記第4媒体よりも前記第1媒体側に位置し、
前記第4媒体は、前記第3媒体よりも前記第2媒体側に位置し、
前記第3媒体の屈折率は、前記第1ロッドインテグレーターの屈折率および前記第2ロッドインテグレーターの屈折率と等しく、
前記第4媒体の屈折率は、前記第1ロッドインテグレーターの屈折率および前記第2ロッドインテグレーターの屈折率よりも小さい、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1媒体の屈折率は、前記第1面側から前記第2面側に向かうに従って大きくなる、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1ロッドインテグレーターおよび前記第2ロッドインテグレーターは、前記第1面から前記第2面に向かうに従って断面積が漸次大きくなる、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1ロッドインテグレーターおよび前記第2ロッドインテグレーターは、前記第1面から前記第2面に向かうに従って漸次断面積が小さくなる、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光学素子と、
前記光学素子の前記第1面に入射する光を発生させる光源部と、
を含む、ことを特徴とする照明装置。
【請求項9】
前記光源部は、
前記第1ロッドインテグレーターの前記第1端面に入射する光を発生させる第1発光素子と、
前記第2ロッドインテグレーターの前記第3端面に入射する光を発生させる第2発光素子と、
を有する、ことを特徴とする請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の照明装置と、
前記照明装置の前記第2面から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置によって形成された画像を投射する投射装置と、
を含む、ことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−41132(P2013−41132A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178258(P2011−178258)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】