説明

光学素子および視覚表示のためのフォトポリマー組成物

【課題】特に画像の視覚表示のためのホログラフィック媒体の製造に適する、書込みモノマーとして特定のウレタンアクリレートに基づく新規フォトポリマーならびにそれを含む組成物を提供する。
【解決手段】書込みモノマーとして、ポリウレタン組成物の全重量を基準に少なくとも10重量%の1つまたはそれ以上のトリフェニルフォスフェート、トリフェニルチオフォスフェート、トリフェニルメタンの各フェニル基のp−位がウレタン結合を介して放射線硬化性基を有している不飽和ウレタンを含有する書込みモノマー成分ならびに、該書込みモノマーのためのマトリックスとして、ポリマー化合物または対応するマトリックス前駆体を含んでなるポリウレタン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に画像の視覚表示のためのホログラフィック媒体の製造に適する書込みモノマーとして特定のウレタンアクリレートに基づく新規フォトポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトポリマーは、2つの可干渉性(コヒーレント)の光源の重ね合わせによって暴露されうる材料である。3次元構造がフォトポリマー中に生成し、通常、この構造は材料中の屈折率の局所的変化によって書込まれる。このような構造はホログラムと称され、これを回折光学素子と記載することもできる。このようなホログラムがどの光学的機能を発揮するかは特定の暴露に依存する。
【0003】
可視範囲における光学的応用のためにホログラムの支持体としてフォトポリマーを使用するためには、一般に、高い回折効果を有する無色または極めてわずかにのみ着色した材料が、暴露後に要求される。ホログラフィーの初期から、ハロゲン化銀フィルム(特に、高い解像度を有するもの)がこの目的に使用されている。二クロム酸塩ゼラチン(DCG)、二クロム酸塩含有のゼラチンフィルムまたはハロゲン化銀とDCGの混合形態も使用されている。両材料は、ホログラムの形成のために化学的な後処理を必要とし、これが、工業過程に追加コストを生じ、化学的な現像溶液の取扱いを必要とする。さらに、湿式の化学過程は、フィルムの膨潤およびその後の収縮の結果を与え、これがホログラムにおける色シフトを導くことができ、それは望ましくない。
【0004】
特許文献1(Dupont)は、特に、有機溶媒に可溶性の熱可塑性樹脂(例えば、ポリ酢酸ビニル、アセト酪酸セルロースまたはポリメタクリル酸メチル-スチレンコポリマー)、光開始剤および少なくとも1つのビニルシクロプロパン誘導体からなるフォトポリマーを記載している。さらに、特許文献2(Dupont)は、ビニル基を含む他のモノマー、例えば、N-ビニルピロリドン、アクリル酸フェノキシエチルおよびトリオールのアクリレート、例えばトリメチロールプロパン(TMPTA)およびエトキシル化トリメチロールプロパン(TMPEOTA)、あるいは他のアクリレートまたはアクリルアミドを記載している。このようなフォトポリマーは、長い熱処理の後にのみ利用可能なホログラムを与えることが工業的に知られている。O'Neillらはその概説論文(非特許文献1)において、上記した材料だけでなく、熱可塑性樹脂とアクリルアミドから得られるフォトポリマーをも議論している。アクリルアミドの望ましくない毒性学的プロフィールに加えて、このような生成物は、高い屈折率コントラストを有するホログラムを与えない。
【0005】
また知られているのは、光の影響下に光感受性が変化する染料を導入したホログラフ的に活性な材料である(非特許文献2)。同様に、Bieringer(非特許文献3)は、光の影響下に異性化することができる同様のポリマー結合した染料である、いわゆる光アドレス可能なポリマーを記載している。両群の物質にホログラムを導入することができ、これらの材料をホログラフ的データ保存に使用することができる。しかし、これらの生成物は、もちろん強く着色しており、従って上記した用途には適していない。
【0006】
より最近になって、熱可塑性樹脂からではなく、架橋したポリマーから得られるフォトポリマーが記載されている。即ち、特許文献3(Fuji)は、ポリウレタンマトリックス中に溶解した2,4,6-トリブロモフェニルアクリレートを記載している。同様に、特許文献4(InPhase)は、4-クロロフェニルアクリレート、4-ブロモスチレンおよびビニルナフタレンなどの重合可能成分を含むポリウレタンマトリックスを記載している。これらの配合物は、ホログラフ的データ保存、即ちホログラフ的応用(ここで、電子検出器によってのみ読むことが可能な多数のしかし非常に弱いホログラムが書込まれ、そして読まれる)のために開発された。全可視範囲における光学的応用のためには、このような配合物は適していない。
【0007】
特許文献5は、ポリウレタンマトリックス中の書込みモノマーとしてウレタンアクリレートの配合物を開示している。書込みモノマーおよびその量的範囲および可能な使用分野は、明確ではなく広く記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4959284号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第352774号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0077498号明細書
【特許文献4】米国特許第6103454号明細書
【特許文献5】未公開のPCT出願PCT/EP2008/002464
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Applied Optics、第41巻、第5号、第845頁以降、2002
【非特許文献2】Luoら、Optics Express、第13巻、第8号、2005、第3123頁
【非特許文献3】Springer Series in Optical Sciences (2000)、76、第209-228頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここに、特許文献5から出発して、高い回折効率を有する極めて有用な無色ホログラムを、特に、特定の不飽和ウレタンを書込みモノマーとして使用し、マトリックス成分および書込みモノマーを含む全配合物に対する該書込みモノマーの割合が少なくとも10重量%であるときに、光学およびセキュリティー用途のために得ることができることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、書込みモノマーとして、ポリウレタン組成物の全重量を基準に少なくとも10重量%の1つまたはそれ以上の以下の式(I)、(II)および(III)で示される不飽和ウレタン(a)を含有する書込みモノマー成分(a)、ならびに、該書込みモノマーのためのマトリックスとして、ポリマー化合物または対応するマトリックス前駆体を含んでなるポリウレタン組成物である:
【化1】


【化2】

【化3】

[式中、
Rは、それぞれ互いに独立して、放射線硬化性基であり;そして
Xは、それぞれ互いに独立して、RとC=Oの間の単結合、あるいは、ヘテロ原子を含有することもあり、そして/または官能基によって置換されていることもある直鎖、分岐鎖または環式の炭化水素基である]。
【0012】
本発明の別の態様は、Rがビニルエーテル、アクリレートまたはメタクリレート基である上記ポリウレタン組成物である。
本発明の別の態様は、Xがそれぞれ直鎖または分岐鎖のオキシアルキレンまたはポリオキシアルキレン基である上記ポリウレタン組成物である。
【0013】
本発明の別の態様は、1つまたはそれ以上の不飽和ウレタン(a)が、ポリウレタン組成物の全重量を基準に20〜50重量%の量で存在する上記ポリウレタン組成物である。
【0014】
本発明の別の態様は、対応するマトリックス前駆体が、
イソシアネート成分(b);
イソシアネート反応性成分(c);および
1つまたはそれ以上の光開始剤(d);
を含んでなる上記ポリウレタン組成物である。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、(1)上記ポリウレタン組成物を基材または型中に適用し;そして(2)該ポリウレタン組成物を硬化させる;ことを含んでなる視覚ホログラムの記録に適する媒体の製造方法である。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、(1)上記ポリウレタン組成物の成分の混合物を供し;(2)該ポリウレタン組成物を基材または型中に適用し;そして(3)該ポリウレタン組成物を硬化させる;ことを含んでなり、成分(b)を(2)の適用の直前に最後にのみ混合する視覚ホログラムの記録に適する媒体の製造方法である。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、上記方法によって製造した視覚ホログラムの記録に適する媒体である。
本発明のさらに別の態様は、上記媒体をレーザービームによって暴露することを含んでなるホログラムの記録方法である。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、式(II):
【化4】

[式中、
Rは、それぞれ互いに独立して、放射線硬化性基であり;そして
Xは、それぞれ互いに独立して、RとC=Oの間の単結合、あるいは、ヘテロ原子を含有することもあり、そして/または官能基によって置換されていることもある直鎖、分岐鎖または環式の炭化水素基である]
で示される不飽和ウレタンである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】媒体の回折効率(DE)を測定した実験的ホログラフィック配置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
即ち、本発明は、書込みモノマーとして、全組成物を基準に少なくとも10重量%の1つまたはそれ以上の以下の式(I)〜(III)で示される不飽和ウレタン(a)を含有する書込みモノマー成分(a)、ならびに、該書込みモノマーのためのマトリックスとして、ポリマー化合物または対応する前駆体を含んでなるポリウレタン組成物に関する;
また、本発明は、上記ポリウレタン組成物を基材または型中に適用し、そして硬化させる媒体の製造方法、該媒体それ自体および視覚ホログラムの記録方法に関する;
さらに、本発明は、以下の式(II)で示されるウレタンアクリレートに関する;
【化5】

【化6】

【化7】

[式中、
Rは、互いに独立して、それぞれ放射線硬化性基であり;そして
Xは、互いに独立してそれぞれ、RとC=Oの間の単結合、あるいは、ヘテロ原子を含有することもあり、そして/または官能基によって置換されていることもある直鎖、分岐鎖または環式の炭化水素基である]。
【0021】
本発明において、化学線の作用下での重合によってオレフィン性不飽和化合物と反応する全ての官能基が放射線硬化性基である。これらは、例えば、ビニルエーテル(CH2=CH−O−)、マレイル(cis−HOOC−C=C−CO−O−)、フマリル(trans−HOOC−C=C−CO−O−)、マレインイミド、ジシクロペンタジエニル、アクリルアミド(CH2=CH−(CO)−NH−)、メタクリルアミド(CH2=CCH3−(CO)−NH−)、アクリレート(CH2=CH−(CO)−O−)およびメタクリレート基(CH2=CCH3−(CO)−O−)である。
【0022】
化学線とは、電磁、イオン化放射、特に電子ビーム、UV放射および可視光を意味するものと解される[Roche Lexikon Medizin (Roche Medical Lexikon)、第4版;Urban & Fischer Verlag、Munich 1999]。
【0023】
Rは、好ましくはビニルエーテル、アクリレートまたはメタクリレート基、特に好ましくはアクリレート基である。
原則的に、R基の炭素結合した水素原子の1つまたはそれ以上を、C1〜C5アルキル基によって置換することもできるが、これは好ましくない。
【0024】
X基は、好ましくは、2〜40個の炭素原子および1つまたはそれ以上の酸素原子(エーテル架橋の形態で存在する)を有する。Xは、直鎖または分岐鎖または環式であってよく、官能基によって置換されていてもよい。X基は、特に好ましくは、それぞれ直鎖または分岐鎖のオキシアルキレンまたはポリオキシアルキレン基である。
好ましいポリオキシアルキレン基は、10個まで、特に好ましくは8個までの各オキシアルキレン基の反復単位を有する。
【0025】
原則的に、Xは、反復単位として同一または異なるオキシアルキレン基を有することができ、このような反復単位は、好ましくは2〜6個、特に好ましくは2〜4個の炭素原子を有する。特に好ましいオキシアルキレン単位は、オキシエチレンおよびそれぞれ異性体のオキシプロピレンまたはオキシブチレンである。
各X基中の反復単位は、完全にまたは部分的に、ブロックとしてまたはランダムに分布して存在することができる。
【0026】
本発明の好ましい態様において、Xは、互いに独立してそれぞれ、−CH2−CH2−O−、−CH2−CHCH3−O−、−CHCH3−CH2−O−、−(CH2−CH2−O)n−、−O(CH2−CHCH3−O)n−[ここで、nは2〜7の整数である]、および−O−CH2−CH2−(O−(CH2)5−CO)m−[ここで、mは1〜5の整数である]からなる群から選択されるオキシアルキレン単位である。
【0027】
本発明にとって必須である不飽和ウレタンは、例えば、それぞれ対応するトリイソシアネートと、式:R-X-Hで示される同一化合物または異なる化合物の混合物との付加による好ましくは化学量論的反応によって得られる(RおよびXは上記した意味を有する)。
使用するトリイソシアネートは、トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、トリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートまたはトリス(p-イソシアナトフェニル)ホスフェートである。
【0028】
例えば、ヒドロキシ官能性のアクリレートまたはメタクリレート、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリ(ε-カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、例えばTone M100(Dow、Schwalbach、独国)など、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたはこれらの工業用混合物を、式:R-X-Hで示される化合物として使用する。
【0029】
式:R-X-Hで示される他の適する化合物は、ヒドロキシル基を含むエポキシ(メタ)アクリレート、例えば、アクリル酸および/またはメタクリル酸とエポキシド(グリシジル化合物)との反応生成物である。好ましいエポキシアクリレートは、アクリル酸および/またはメタクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの既知の反応によって得ることができるような、規定した官能価を有するものである。
【0030】
好ましい態様において、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリ(ε-カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレートまたはこれらの工業用混合物を、式:R-X-Hで示される化合物として使用する。
【0031】
特に好ましい態様において、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートまたはこれらの混合物を、式:R-X-Hで示される化合物として使用する。
【0032】
過剰のトリイソシアネートまたはR-X-Hと、それに続くウレタンに変換されない化合物の後の分離も考えられるが、生成物の重合不安定性のゆえに好ましくない。
【0033】
本発明に必須である不飽和ウレタンは、0.5重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満の遊離イソシアネート基(M=42)の含量、および1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、特に好ましくは0.2重量%未満の未変換化合物R-X-Hの含量を有する。
【0034】
付加反応におけるウレタン形成を、イソシアネート付加反応を促進するために知られている触媒、例えば、第三アミン、スズ、亜鉛、鉄またはビスマス化合物、特に、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ビスマスオクタノエートまたはジブチルスズジラウレートなどを用いて行うことができる。これらは、最初に同時導入するか、または後に計量導入することができる。
【0035】
本発明に必須である不飽和ウレタンの製造中または製造後に、望ましくない重合に対する安定剤を添加することができる。このような安定剤は、例えば、Houben-Weyl、「Methoden der organischen Chemie(有機化学の方法)」、第4版、第XIV/1巻、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1961年、第433頁以降に記載されているような、酸素含有ガスならびに化学的安定剤であってよい。例えば、適する安定剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、硫化水素ナトリウム、イオウ、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドラゾベンゼン、N-フェニル-β-ナフチルアミン、N-フェニルエタノールジアミン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、p-ニトロソジメチルアニリン、ジフェニルニトロソアミン、フェノール、例えば、パラ-メトキシフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、p-tert-ブチルピロカテコールまたは2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、二硫化テトラメチルチウラム、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩、フェノチアジン、N-オキシル化合物、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンN-オキシド(TEMPO)またはその誘導体のいずれかである。
【0036】
好ましい安定剤は、フェノチアジン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、パラ-メトキシフェノール、およびこれらの混合物である。
このような安定剤は、安定化する不飽和ウレタンを基準に、通常は0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%の量で使用される。
【0037】
本発明に必須である不飽和ウレタンが遊離イソシアネート基をなお含んでいるべきときには、安定化を、適する化合物、例えば酸または酸誘導体、例えば、塩化ベンゾイル、塩化フタロイル、亜ホスフィン酸、亜ホスホン酸および/または亜リン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸および/またはリン酸ならびにあとに挙げた6種類の酸の酸性エステル、硫酸およびその酸性エステルおよび/またはスルホン酸によって行うことができる。
【0038】
本発明に必須である不飽和ウレタンの製造を、出発物質および生成物に不活性である有機溶媒の存在下に行うことができる。その例は、塗料溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、溶媒ナフサ、酢酸メトキシプロピル、アセトン、ブタノン、または炭化水素、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンまたはイソオクタンである。
【0039】
反応の後、溶媒を、例えば蒸留によって生成物から除去するか、生成物中に残存させるか、または別の溶媒と交換することができる。
好ましい態様において、溶媒を、反応後に蒸留によって除去する。
さらに好ましい態様において、プロセス溶媒を、反応後に蒸留によって別の溶媒と交換する。この目的のために、この別の溶媒を反応後に加え、プロセス溶媒を蒸留によって除去する。しかし、このような溶媒交換のための前提条件は、プロセス溶媒が別の溶媒よりも低い沸点を有することである。
【0040】
この別の溶媒は、好ましくは、ヒドロキシ官能性ポリマー(ポリオール)である。この種の適するポリオールは、500〜13000g/モル、好ましくは700〜8500g/モルの範囲内の数平均分子量を有するジまたはポリオールである。
この目的に好ましいポリオールは、1.5〜3.5、好ましくは1.8〜3.2、特に好ましくは1.9〜3.1の平均ヒドロキシル官能価を有する。
【0041】
上記した種類のポリオールは、例えば、脂肪族、脂環式および/または芳香族のジ、トリおよび/またはポリカルボン酸と、2官能、3官能および/または多官能アルコールならびにラクトンに基づくポリエステルアルコールとに基づくポリエステルアルコールである。
好ましくは500〜4000、特に好ましくは650〜2500g/モルの分子量を有する好ましいポリエステルアルコールは、例えば、アジピン酸とヘキサンジオール、ブタンジオールまたはネオペンチルグリコールあるいはこれらジオールの混合物との反応生成物である。
【0042】
また適するのは、環式エーテルの重合によって、またはアルキレンオキシドと開始剤分子との反応によって得られるポリエーテルポリオールである。
500〜13000g/モルの数平均分子量を有するポリエチレンおよび/またはポリプロピレングリコール、さらには、500〜8000、好ましくは650〜3000g/モルの数平均分子量を有するポリテトラヒドロフランを、例示の目的で挙げることができる。
【0043】
また適するのは、ポリエステル-ポリエーテル-ポリエステルブロックポリオールであり、これは、ポリエーテルポリオールとラクトンとを反応させることによって得られる。
また適するのは、ヒドロキシル末端ポリカーボネートであり、これは、ジオールまたはラクトン修飾したジオールまたはビスフェノール(例えばビスフェノールAなど)とホスゲンまたは炭酸ジエステル(例えば、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネート)とを反応させることによって得られる。
【0044】
500〜8000g/モルの数平均分子量を有する1,6-ヘキサンジオールのポリマーカーボネートおよび1,6-ヘキサンジオールとε-カプロラクトンとの1〜0.1のモル比での反応生成物のカーボネートを、例示の目的で挙げることができる。好ましいカーボネートは、上記したような1,6-ヘキサンジオールに基づく650〜3000g/モルの数平均分子量を有するポリカーボネートジオール、および/または1,6-ヘキサンジオールとε-カプロラクトンとの1〜0.33のモル比での反応生成物のカーボネートである。
【0045】
ヒドロキシル末端ポリアミドアルコールおよびヒドロキシル末端ポリアクリレートジオール、例えば、Tegomer BD 1000(Tego GmbH、Essen、独国から)を使用することもできる。
上記した溶媒交換のために、別の溶媒として特に適するポリオールは、上記した種類のポリエーテルポリオールおよびエステル基を含むポリオールである。
【0046】
本発明に必須であるウレタンの製造を、連続的に、例えば静的ミキサーにおいて、またはバッチ式で、例えば適当な撹拌容器において行う。バッチ式操作においては、室温または高温で、イソシアネートおよび化合物R-X-Hの両方を最初に導入し、それぞれ他の成分を計量導入することができる。好ましくは、イソシアネート成分を最初に導入し、R-X-Hを計量導入することによって反応を行う。
【0047】
式:R-X-Hで示される異なる化合物の混合物を使用したときに、これらを、混合物の形態で、または任意の順序で順に加えることができるが、化合物R-X-Hを、イソシアネートとの反応性を高める順序で加えるのが好ましい。
反応温度は、好ましくは40〜130℃、特に好ましくは50〜80℃である。温度は、外部加熱によって、および/または発生する反応熱の適切な利用によって調節する。
【0048】
ウレタンを与えるNCO基とOH基の反応の進行を、分光学的に、例えば、赤外または近赤外スペクトルを記録することによって、または採取した試料の化学分析によって行うことができる。
イソシアネート含量または所望によりヒドロキシル含量が、反応中の変換の尺度として特に適している。
【0049】
溶媒を含まない形態において、本発明に必須であるウレタンは、放射線硬化性基(好ましくはアクリレートおよびメタクリレート基)を基準に、ウレタン1kgあたり、通常は0.5、好ましくは0.8モルのC=Cという二重結合密度を有する。
【0050】
本発明のポリウレタン組成物は、成分(a)中に、ポリウレタン組成物を基準に、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは少なくとも15重量%、非常に特に好ましくは少なくとも20重量%の本発明に必須である不飽和ウレタン(a)を、書込みモノマーとして含んでいる。しかし、これら書込みモノマー(a)の割合は、全配合物を基準に、好ましくは70重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。
【0051】
書込みモノマー成分(a)に加えて、本発明のポリウレタン組成物は、ポリマー化合物を、書込みモノマーのためのマトリックスまたは対応するマトリックス前駆体(これから、書込みモノマーのための対応するマトリックスが生成する)として含んでいる。
【0052】
好ましくは、本発明のポリウレタン組成物は、マトリックスのための合成成分として、以下の成分を含有する:
イソシアネート成分(b);
イソシアネート反応性成分(c);および
1つまたはそれ以上の光開始剤(d)。
【0053】
イソシアネート成分(b)は、好ましくはポリイソシアネートを含んでなる。使用しうるイソシアネートは、1分子あたりに平均して2個またはそれ以上のNCO官能基を有する当業者に自体周知である全ての化合物またはこれらの混合物である。これらは、芳香族、アリール脂肪族、脂肪族または脂環式に基づくものであってよい。少ない量で、不飽和基を含むモノイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを同時に使用することもできる。
【0054】
例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8-ジイソシアナト-4-(イソシアナトメチル)オクタン、2,2,4-および/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4'-イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよびこれらの混合物(任意の異性体含量を有する)、イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-および/または2,6-トルエンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4'-または4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/またはトリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネートが適している。
【0055】
また可能なのは、ウレタン、尿素、カルボジイミド、アシル尿素、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンおよび/またはイミノオキサジアジンジオン構造を有するモノマーのジまたはトリイソシアネートの誘導体の使用である。
【0056】
脂肪族および/または脂環式のジまたはトリイソシアネートに基づくポリイソシアネートの使用が好ましい。
特に好ましくは、成分(b)のポリイソシアネートは、ダイマー化またはオリゴマー化した脂肪族および/または脂環式のジまたはトリイソシアネートである。
HDI、1,8-ジイソシアナト-4-(イソシアナトメチル)オクタンまたはこれらの混合物に基づくイソシアネート、ウレトジオンおよび/またはイミノオキサジアジンジオンが非常に特に好ましい。
【0057】
原則的に、1分子あたりに平均して少なくとも1.5個のイソシアネート反応性基を有する全ての多官能イソシアネート反応性化合物を、成分(c)として使用することができる。
本発明におけるイソシアネート反応性基とは、好ましくはヒドロキシル、アミノまたはチオ基であり、ヒドロキシ化合物が特に好ましい。
適する多官能イソシアネート反応性化合物は、例えば、ポリエステル-、ポリエーテル-、ポリカーボネート-、ポリ(メタ)アクリレート-および/またはポリウレタン-ポリオールである。
【0058】
適するポリエステルポリオールは、例えば、脂肪族、脂環式または芳香族のジまたはポリカルボン酸あるいはこれらの無水物とOH官能価2を有する多価アルコールとから既知のようにして得られる直鎖ポリエステルジオールまたは分岐鎖ポリエステルポリオールである。
【0059】
このようなジまたはポリカルボン酸あるいは無水物の例は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナン二カルボン酸、デカン二カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、o-フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはトリメリト酸、および酸無水物、例えばo-フタル酸、トリメリト酸またはコハク酸無水物、またはこれらの互いとの任意の混合物である。
【0060】
このような適するアルコールの例は、エタンジオール、ジ、トリまたはテトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジ、トリ、テトラプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、またはこれらの互いとの任意の混合物である。
【0061】
また、ポリエステルポリオールは、天然原料(例えばヒマシ油)に基づくものであってもよい。また、このポリエステルポリオールは、好ましくはラクトンまたはラクトン混合物(例えば、ブチロラクトン、ε-カプロラクトンおよび/またはメチル-ε-カプロラクトン)とヒドロキシ官能性化合物(例えば、上記した種類のOH官能価2を有する多価アルコール)との付加反応によって得られるような、ラクトンのホモポリマーまたはコポリマーに基づくこともできる。
【0062】
このようなポリエステルポリオールは、好ましくは400〜4000g/モル、特に好ましくは500〜2000g/モルの数平均分子量を有する。これらのOH官能価は、好ましくは1.5〜3.5、特に好ましくは1.8〜3.0である。
【0063】
適するポリカーボネートポリオールは、自体既知のように、有機カーボネートまたはホスゲンとジオールまたはジオール混合物とを反応させることによって得られる。
適する有機カーボネートは、ジメチル、ジエチルおよびジフェニルカーボネートである。
【0064】
適するジオールまたは混合物は、ポリエステルセグメントに関連して挙げたOH官能価2を有する多価アルコール、好ましくは1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよび/または3-メチルペンタンジオールを含んでなるか、またはポリエステルポリオールをポリカーボネートポリオールに変換することができる。
【0065】
このようなポリカーボネートポリオールは、好ましくは400〜4000g/モル、特に好ましくは500〜2000g/モルの数平均分子量を有する。これらポリオールのOH官能価は、好ましくは1.8〜3.2、特に好ましくは1.9〜3.0である。
【0066】
適するポリエーテルポリオールは、環式エーテルとOHまたはNH官能性の開始剤分子との重付加物であり、この重付加物は所望によりブロック構造を有する。
適する環式エーテルは、例えば、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンおよびこれらの任意の所望の混合物である。
使用しうる開始剤は、ポリエステルポリオールに関連して挙げたOH官能価2を有する多価アルコールおよび第一または第二アミンおよびアミノアルコールである。
【0067】
このようなポリエーテルポリオールは、好ましくは250〜10000g/モル、特に好ましくは500〜8500g/モル、非常に特に好ましくは600〜4500g/モルの数平均分子量を有する。OH官能価は、好ましくは1.5〜4.0、特に好ましくは1.8〜3.0である。
【0068】
さらに、低分子量(即ち、500g/モル未満の分子量)を有する短鎖(即ち、2〜20個の炭素原子を含む)の脂肪族、アリール脂肪族または脂環式の2官能、3官能または多官能アルコールも、成分(c)の構成成分として、多官能イソシアネート反応性化合物として適している。
【0069】
これらは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、ジエチルオクタンジオールの位置異性体、1,3-ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA[2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン]、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオン酸(2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピルエステル)であってよい。
【0070】
適するトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンまたはグリセロールである。
適するさらに高官能のアルコールは、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールまたはソルビトールである。
【0071】
1つまたはそれ以上の光開始剤を、成分(d)として使用する。通常、これらは、化学線によって活性化することができ、対応する重合可能な基の重合を開始することができる開始剤である。光開始剤は、自体既知の市販化合物であり、単分子(タイプI)および2分子(タイプII)開始剤の間で区別がなされている。さらに、化学的性質に依存して、これらの開始剤は、フリーラジカル、アニオン性(または)、カチオン性(または混合)形態の上記重合に使用される。
【0072】
ラジカル光重合のための(タイプI)系は、例えば、芳香族ケトン化合物、例えばベンゾフェノン、(第三アミンと組合せて)、アルキルベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(Michler ケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたはこれらタイプの混合物である。
【0073】
さらに適するのは、(タイプII)開始剤、例えば、ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシクロホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α-アミノアルキルフェノン、α,α-ジアルコキシアセトフェノン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン 2-(O-ベンゾイルオキシム)およびα-ヒドロキシアルキルフェノンである。
【0074】
また、欧州特許出願公開第0223587号に記載され、アリールホウ酸アンモニウムおよび1つまたはそれ以上の染料の混合物からなる光開始剤系を、光開始剤として使用することもできる。例えば、トリフェニルヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリス(3-フルオロフェニル)ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウムおよびトリス-(3-クロロ-4-メチルフェニル)ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、Ph3-Bu、(Napht)3-Buが、アリールホウ酸アンモニウムとして適している。
【0075】
適する染料は、例えば、ニューメチレンブルー(new methylene blue)、チオニン、ベーシックイエロー(basic yellow)、塩化ピナシノール、ローダミン6G、ガロシアニン(gallocyanine)、エチルバイオレット(ethyl violet)、ビクトリアブルー(Victoria blue)R、セレスチンブルー(Celestine blue)、キナルジンレッド(quinaldine red)、クリスタルバイオレット(crystal violet)、ブリリアントグリーン(brilliant green)、アストラゾンオレンジ(astrazon orange)G、ダロウレッド(darrow red)、ピロニン(pyronine)Y、ベーシックレッド(basic red)29、ピリリウム(pyrillium)I、シアニンおよびメチレンブルー、アズレ(azure)Aである(Cunninghamら、RadTech'98 North America UV/EB Conference Proceedings、シカゴ、1998年4月19〜22日)。
【0076】
アニオン重合に使用する光開始剤は、一般に(タイプI)系であり、第1列の遷移金属錯体から誘導される。ここで、クロム塩、例えばtrans-Cr(NH3)2(NCS)4-(Kutalら、Macromolecules、1991、24、6872)、またはフェロセン化合物(Yamaguchiら、Macromolecules、2000、33、1152)が知られている。さらなるアニオン重合の可能性は、光分解によってシアノアクリレートを重合させることができる染料、例えばクリスタルバイオレットロイコニトリル(crystal violet leuconitrile)またはマラカイトグリーンロイコニトリル(malachite green leuconitrile)を使用することにある(Neckersら、Macromolecules、2000、33、7761)。しかし、それによって発色団がポリマー中に導入されるので、得られるポリマーが全体に着色する。
【0077】
カチオン重合に使用する光開始剤は、実質的に次の3つの群からなる:アリールジアゾニウム塩、オニウム塩(具体的には:ヨードニウム、スルホニウムおよびセレノニウム塩)および有機金属化合物。
水素ドナーの存在下および不存在下の両方で、フェニルジアゾニウム塩は、照射したときにカチオンを生成することができ、これが重合を開始する。系全体の効率は、ジアゾニウム化合物に対して使用する対イオンの性質によって決定される。ここで、それほど反応性が高くないが非常に高価なSbF6-、AsF6-、またはPF6-が好ましい。薄いフィルムの被覆に使用するためには、これらの化合物は、一般に、暴露後に遊離する窒素によって表面品質が低下するので(ピンホール)、それほど適していない(Liら、Polymeric Materials Science and Engineering、2001、84、139)。
【0078】
様々な形態において非常に広く使用され、かつ市販もされているのは、オニウム塩、特にスルホニウムおよびヨードニウム塩である。これら化合物の光化学は、古くから研究されている。励起の後、ヨードニウム塩は最初に均一分解し、こうしてフリーラジカルおよびラジカルカチオンを生成し、これが、H-引抜きによって安定化され、プロトンを遊離し、次いでカチオン重合を開始する(Dektarら、J.Org.Chem.、1990、55、639;J.Org.Chem.、1991、56、1838)。この機序は、ラジカル光重合のためにもヨードニウム塩を使用することを可能にする。ここでも、対イオンの選択が非常に重要であり、非常に高価なSbF6-、AsF6-、またはPF6-が同様に好ましい。それ以外に、芳香族の置換を、この構造群において全く自由に選択することができ、該選択は、実質的に、合成のための適当な出発構成要素の利用可能性によって決定される。
【0079】
スルホニウム塩は、Norrish(II)に従って分解する化合物である(Crivelloら、Macromolecules、2000、33、825)。スルホニウム塩の場合にも、対イオンの選択が決定的に重要であり、これが、実質的にポリマーの硬化速度において現れる。最良の結果は、一般にSbF6-塩を用いて得られる。
【0080】
ヨードニウムおよびスルホニウム塩の自己吸収は、<300nmにあるので、これらの化合物を、近UVまたは短波長可視光を用いて、光重合のために適切に感作しなければならない。これを、比較的高吸収性の芳香族、例えば、アントラセンおよびその誘導体[Guら、Am.Chem.Soc.Polymer Preprints、2000、41(2)、1266]あるいはフェノチアジンまたはその誘導体(Huaら、Macromolecules、2001、34、2488-2494)を使用することによって行う。
【0081】
これら化合物の混合物の使用が有利であることもある。硬化に使用する放射源に依存して、光開始剤の種類および濃度を、当業者に既知であるようにして適合させなければならない。光重合に関する上記した調節は、当業者にとって、それぞれ選択のために利用できる合成成分(特に、好ましい合成成分)ならびに各成分の以下に挙げる量的範囲内での型どおりの実験の形態で、容易に行うことができる。
【0082】
好ましい光開始剤(d)は、テトラヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフェニルヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリス(3-フルオロフェニル)ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウムおよびトリス(3-クロロ-4-メチルフェニル)ヘキシルホウ酸テトラブチルアンモニウムと染料との、例えば、アストラゾンオレンジG、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、アズレA、ピリリウムI、サフラニンO、シアニン、ガロシアニン、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット、エチルバイオレットおよびチオニンとの混合物である。
【0083】
成分(a)〜(d)に加えて、フリーラジカル安定剤、触媒およびさらなる添加剤を同時に使用することができる。
【0084】
適するフリーラジカル安定剤は、「Methoden der organischen Chemie(有機化学の方法)」(Houben-Weyl)[第4版、第XIV/1巻、第433頁以降、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1961年]に記載されているような阻害剤および酸化防止剤である。適する種類の物質は、例えばフェノール、例えば2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、クレゾール、ヒドロキノン、ベンジルアルコール、例えばベンズヒドロール、所望によりキノン、例えば2,5-ジ-tert-ブチルキノン、所望により芳香族アミン、例えばジイソプロピルアミンまたはフェノチアジンである。好ましいフリーラジカル安定剤は、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジンおよびベンズヒドロールである。
【0085】
さらに、1つまたはそれ以上の触媒を使用することができる。これらは、好ましくはウレタン形成を触媒する。好ましくは、アミンならびに金属スズ、亜鉛、鉄、ビスマス、モリブデン、コバルト、カルシウム、マグネシウムおよびジルコニウムの金属化合物が、この目的に適している。以下に挙げるものが特に好ましい:スズオクタノエート、亜鉛オクタノエート、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジカルボキシレート、鉄(III)アセチルアセトネート、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、水酸化テトラアルキルアンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコラート、10〜20個の炭素原子および所望によりOH側鎖基を有する長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩、鉛オクタノエート、ならびに、第三アミン、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N',N'-テトラメチルジアミノジエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、N-メチル-またはN-エチルモルホリン、N,N'-ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)、N-シクロヘキシルモルホリン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルブタンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルピペラジン、N-ジメチルアミノエチルピペリジン、1,2-ジメチルイミダゾール、N-ヒドロキシプロピルイミダゾール、1-アザビシクロ[2,2,0]オクタン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(Dabco)、あるいは、アルカノールアミン化合物、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチル-およびN-エチル-ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2-(N,N-ジメチルアミノエトキシ)エタノールまたはN-トリス-(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロトリアジン、例えば、N,N',N-トリス(ジメチルアミノプロピル)-s-ヘキサヒドロトリアジン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン。
【0086】
特に好ましい触媒は、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジカルボキシレート、鉄(III)アセチルアセトネート、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジンである。
【0087】
さらなる助剤および添加剤として、例えば、溶媒、可塑剤、レベリング剤、湿潤剤、消泡剤または接着プロモーターだけでなく、さらにポリウレタン、熱可塑性ポリマー、オリゴマー、さらなる官能基を有する化合物、例えば、アセタール、エポキシド、オキセタン、オキサゾリン、ジオキソランおよび/または親水性基、例えば、塩および/またはポリエチレンオキシドが存在することができる。
【0088】
好ましく使用される溶媒は、本発明の2成分配合物との良好な相溶性を有する易揮発性溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルおよび/またはアセトンである。
【0089】
好ましく使用される可塑剤は、良好な溶解特性、低揮発性および高沸点を有する液体である。1つの種類の複数添加剤を同時に使用するのが有利であることもある。もちろん、複数種類の複数添加剤を使用するのが有利であることもある。
【0090】
本発明のポリウレタン組成物は、好ましくは以下の成分を含んでなる:
・成分(a)として、10〜94.999重量%の本発明に必須である式(I)〜(III)で示される不飽和ウレタン;
・5〜89.999重量%の成分(b)および(c)、または(b)と(c)との対応する反応生成物;
・0.001〜10重量%の光開始剤(d);
・0〜10重量%のフリーラジカル安定剤;
・0〜4重量%の触媒;
・0〜70重量%の助剤および添加剤。
【0091】
本発明のポリウレタン組成物は、特に好ましくは以下の成分を含んでなる:
・成分(a)として、15〜70重量%の本発明に必須である式(I)〜(III)で示される不飽和ウレタン;
・10〜84.899重量%の成分(b)および(c)、または(b)と(c)との対応する反応生成物;
・0.1〜7.5重量%の光開始剤(d);
・0.001〜1重量%のフリーラジカル安定剤;
・0〜3重量%の触媒;
・0〜50重量%の助剤および添加剤。
【0092】
本発明のポリウレタン組成物は、特に好ましくは以下の成分を含んでなる:
・成分(a)として、20〜50重量%の本発明に必須である式(I)〜(III)で示される不飽和ウレタン;
・25〜79.489重量%の成分(b)および(c)、または(b)と(c)との対応する反応生成物;
・0.5〜5重量%の光開始剤(d);
・0.01〜0.5重量%のフリーラジカル安定剤;
・0.001〜2重量%の触媒;
・0〜35重量%の助剤および添加剤。
【0093】
成分(b)および(c)は、互いに対するOH/NCO比を、通常は0.5〜2.0、好ましくは0.95〜1.50、特に好ましくは0.97〜1.33として使用する。
【0094】
視覚ホログラムを記録するための媒体を製造するための本発明の方法は、好ましくは、成分(b)を除く本発明のポリウレタン組成物の合成成分を、互いに均一に混合し、成分(b)を、基材または型中に適用する直前にのみ混合する操作によって行う。
【0095】
混合技術から当業者に自体既知である全ての方法および装置、例えば、撹拌タンクまたは動的および静的の両ミキサーを、混合のために使用することができる。しかし、デッドスペースがないか、またはわずかのデッドスペースしかない装置が好ましい。混合する2つの成分の非常に激しい徹底混合を用いて非常に短い時間で混合を行う方法がさらに好ましい。特に、動的ミキサー、特に成分がミキサー中でのみ互いと接触することになる動的ミキサーが、この目的に適している。
【0096】
温度は、0〜100℃、好ましくは10〜80℃、特に好ましくは20〜60℃、非常に特に好ましくは20〜40℃である。
【0097】
必要なら、減圧下(例えば1mバール)での個々の成分または全混合物の脱ガスを行うこともできる。特に、成分(b)の添加後の脱ガスが、得られる媒体中の残留ガスによる気泡生成を防止するために好ましい。
【0098】
成分(b)を混合する前に、混合物を、貯蔵安定性中間体として、所望により数ヶ月にわたって貯蔵することができる。
本発明のポリウレタン組成物の成分(b)を混合した後に、透明な液体配合物が得られ、これは、組成に依存して、室温において数秒間〜数時間で硬化する。
【0099】
ポリウレタン組成物の合成成分の比率および種類および反応性を、室温において成分(b)を混合した後、数分間〜1時間以内に硬化が始まるように調節するのが好ましい。好ましい態様において、混合後に、配合物を30〜180℃、好ましくは40〜120℃、特に好ましくは50〜100℃の温度に加熱することによって硬化を促進する。
【0100】
硬化挙動に関する上記したアプローチは、当業者にとって、それぞれ選択のために利用できる合成成分(特に、好ましい合成成分)ならびに各成分の上記した量的範囲内での型どおりの実験の形態で可能である。
【0101】
全成分を完全混合した直後に、本発明のポリウレタン組成物は、25℃において、通常は10〜100000mPa.s、好ましくは100〜20000mPa.s、特に好ましくは200〜15000mPa.s、さらに特に好ましくは500〜10000mPa.sの粘度を有しており、従って、これらは、溶媒を含まない形態であっても非常に良好な加工特性を有する。適する溶媒との溶液においては、25℃において、10000mPa.s以下、好ましくは2000mPa.s以下、特に好ましくは500mPa.s以下の粘度を達成することができる。
【0102】
上記した種類のポリウレタン組成物は、15g量で、触媒含量0.004重量%を用いて、25℃において4時間未満で硬化するか、または触媒含量0.02%で、25℃において10分未満で硬化する。
【0103】
基材または型中に適用するために、当業者に既知である全てのそれぞれの通常の方法、特に、ナイフ塗布、注型、印刷、スクリーン印刷、スプレーまたはインクジェット印刷などが適している。
【0104】
本発明のポリウレタン組成物を用いて、全可視および近UV範囲(300〜800nm)における光学的応用のためのホログラムを、適当な暴露方法によって得ることができる。視覚ホログラムには、当業者に既知である方法によって記録することができる全てのホログラムが含まれ、特に、インライン(Gabor)ホログラム、軸外ホログラム、フルアパーチャートランスファー(full-aperture transfer)ホログラム、白色光透過ホログラム(「レインボウホログラム」)、Denisyukホログラム、軸外反射ホログラム、エッジリト(edge-lit)ホログラムおよびホログラフ的立体画が含まれる。反射ホログラム、Denisyukホログラム、透過ホログラムが好ましい。光学素子、例えば、レンズ、鏡、偏向鏡、フィルター、散乱スクリーン、回折素子、導光路、導波路、映写スクリーンおよび/またはマスクが好ましい。これらの光学素子は、如何にホログラムを暴露するか、およびホログラムがどの次元を有しているかに依存して、振動数選択性を示すことが多い。
【0105】
さらに、本発明のポリウレタン組成物を用いて、ホログラフィック画像または表示を製造することもできる。これらは、例えば、個人肖像、機密文書における生体提示のため、あるいは広く、広告、機密ラベル、商標保護、商標ブランド化、ラベル、デザイン素子、装飾、イラスト、複数旅行チケットなどのための画像または画像構造、およびデジタルデータを表すことができる画像、特に上記物品と組合せた画像である。
【0106】
ホログラフィック画像は、3次元画像の印象を与えることができるだけでなく、照明する角度、使用する光源(移動光源を含む)などに依存して、画像配列、短い映画または多数の異なる物体を提示することもできる。これらの多様なデザインの可能性のゆえに、ホログラム(特に体積ホログラム)は、上記した用途のための魅力的な技術的解決である。
【0107】
従って、本発明はさらに、視覚ホログラムを記録するためおよび光学素子、画像、表示を製造するための本発明の媒体の使用、ならびに、本発明の媒体を使用することによるホログラムの記録方法に関する。
【0108】
上記した全ての引用文献は、全ての役立つ目的のために、その全体が参照することにより本明細書の一部を構成する。
本発明を具体化するある種の特定の構成を示しかつ説明したが、各部分の様々な修飾および再配列を、基礎となる本発明のコンセプトの思想および範囲から逸脱することなく為しうること、および本発明が本明細書中に示しかつ説明した特定の形態に限定されないことは、当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0109】
以下に挙げる実施例は、本発明に係るフォトポリマーを説明するために挙げたものであり、限定のためのものと理解すべきではない。
他に記すことがなければ、全ての%データは、重量%に基づく。
【0110】
実施例1
初めに、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(0.1g)、ジブチルスズジラウレート(Desmorapid Z;Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、独国)(0.05g)、および酢酸エチル中のトリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートの27%濃度溶液(Desmodur RFE;Bayer MaterialScience AGの製品、Leverkusen、独国)(213.07g)を、500mlの丸底フラスコに導入し、60℃に加熱した。次いで、2-ヒドロキシエチルアクリレート(42.37g)を滴下し、イソシアネート含量が0.1%以下になるまで、混合物をさらに60℃に維持した。次いで、冷却を行い、酢酸エチルを真空下で完全に除去した。生成物が半結晶性固体として得られた。
【0111】
実施例2
初めに、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(0.03g)、ジブチルスズジラウレート(0.05g)、および酢酸エチル中のトリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートの27%濃度溶液(150.34g)を、250mlの丸底フラスコに導入し、60℃に加熱した。次いで、2-ヒドロキシエチルアクリレート(14.95g)を滴下し、イソシアネート含量が3.3%以下になるまで、混合物をさらに60℃に維持した。次いで、ポリ(ε-カプロラクトン)モノアクリレート(Tone M100;Dow Chemicals Inc.の製品)(44.33g)を滴下し、イソシアネート含量が0.1%以下に低下するまで、さらに60℃に維持した。次いで、冷却を行い、酢酸エチルを真空下で完全に除去した。生成物が粘稠液体として得られた。
【0112】
実施例3
初めに、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(0.1g)、ジブチルスズジラウレート(0.05g)、および酢酸エチル中のトリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネートの27%濃度溶液(189.52g)を、500mlの丸底フラスコに導入し、65℃に加熱した。次いで、2-ヒドロキシエチルアクリレート(48.68g)を滴下し、イソシアネート含量が0.1%以下になるまで、さらに65℃に維持した。次いで、冷却を行い、酢酸エチルを真空下で完全に除去した。生成物が半結晶性固体として得られた。
【0113】
実施例4
初めに、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(0.06g)、Desmorapid Z(0.03g)、および酢酸エチル中のトリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートの27%濃度溶液(122.6g)を、500mlの丸底フラスコに導入し、60℃に加熱した。次いで、ヒドロキシプロピルアクリレート(27.3g)を滴下し、イソシアネート含量が0.1%以下になるまで、混合物をさらに60℃に維持した。次いで、冷却を行い、酢酸エチルを真空下で完全に除去した。生成物が淡黄色液体として得られた。
【0114】
実施例5
初めに、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(0.06g)、Desmorapid Z(0.03g)、および酢酸エチル中のトリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートの27%濃度溶液(120.2g)を、500mlの丸底フラスコに導入し、60℃に加熱した。次いで、4-ヒドロキシブチルアクリレート(29.7g)を滴下し、イソシアネート含量が0.1%以下になるまで、混合物をさらに60℃に維持した。次いで、冷却を行い、酢酸エチルを真空下で完全に除去した。生成物が淡黄色液体として得られた。
【0115】
実施例6
初めに、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(0.07g)、Desmorapid Z(0.04g)、および酢酸エチル中のトリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートの27%濃度溶液(109.1g)を、500mlの丸底フラスコに導入し、60℃に加熱した。次いで、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEM3;LAPORTE Performance Chemicals UK LTDから)(40.8g)を滴下し、イソシアネート含量が0.1%以下になるまで、混合物をさらに60℃に維持した。次いで、冷却を行い、酢酸エチルを真空下で完全に除去した。生成物が淡黄色液体として得られた。
【0116】
ポリオール成分の製造
スズオクタノエート(0.18g)、ε-カプロラクトン(374.81g)、および2官能ポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオール(当量 500g/モルOH)(374.81g)を、1Lのフラスコに追加的に導入し、120℃に加熱し、固体含量(非揮発性成分の割合)が99.5重量%またはそれ以上になるまで、この温度に維持した。次いで、冷却を行い、生成物がワックス状固体として得られた。
【0117】
比較媒体1
上記のように製造したポリオール成分(7.61g)を、実施例1のウレタンアクリレート(0.50g)、CGI 909[CGI 909は、Ciba Inc.(Basel、スイス国)により2008年に販売される実験生成物である](0.10g)およびニューメチレンブルー(0.01g)、N-エチルピロリドン(0.35g)および20μmガラスビーズ(0.02g)と50℃において混合して、透明な溶液を得た。次いで、30℃までの冷却を行い、Desmodur XP 2410 [Bayer MaterialScience AG (Leverkusen、独国)の実験生成物、ヘキサンジイソシアネートに基づくポリイソシアネート、イミノオキサジアジンジオンの割合:少なくとも30%、NCO含量:23.5%](1.41g)を加え、再び混合を行った。最後に、Fomrez UL 28(ウレタン化触媒、Momentive Performance Chemicalsの市販製品、Wilton、CT、米国)(0.006g)を加え、再び短時間の混合を行った。次いで、得られた液体材料をガラスプレートに移し、それを第2のガラスプレートで覆った。この試験試料を、室温において15kg重量下で12時間硬化させた。
【0118】
媒体1
上記のように製造したポリオール成分(7.19g)を、実施例1のウレタンアクリレート(1.00g)、CGI 909(0.10g)およびニューメチレンブルー(0.01g)、N-エチルピロリドン(0.35g)および20μmガラスビーズ(0.02g)と50℃において混合して、透明な溶液を得た。次いで、30℃までの冷却を行い、Desmodur XP 2410 [Bayer MaterialScience AG (Leverkusen、独国)の実験生成物、ヘキサンジイソシアネートに基づくポリイソシアネート、イミノオキサジアジンジオンの割合:少なくとも30%、NCO含量:23.5%](1.33g)を加え、再び混合を行った。最後に、Fomrez UL 28(0.009g)を加え、再び短時間の混合を行った。次いで、得られた液体材料をガラスプレートに移し、それを第2のガラスプレートで覆った。この試験試料を、室温において15kg重量下で12時間硬化させた。
【0119】
媒体2
上記のように製造したポリオール成分(6.98g)を、実施例1のウレタンアクリレート(1.25g)、CGI 909(0.10g)およびニューメチレンブルー(0.01g)、N-エチルピロリドン(0.35g)および20μmガラスビーズ(0.02g)と50℃において混合して、透明な溶液を得た。次いで、30℃までの冷却を行い、Desmodur XP 2410(1.29g)を加え、再び混合を行った。最後に、Fomrez UL 28(0.009g)を加え、再び短時間の混合を行った。次いで、得られた液体材料をガラスプレートに移し、それを第2のガラスプレートで覆った。この試験試料を、室温において15kg重量下で12時間硬化させた。
【0120】
媒体3
上記のように製造したポリオール成分(8.75g)を、実施例1のウレタンアクリレート(3.75g)、CGI 909(0.15g)およびニューメチレンブルー(0.015g)、N-エチルピロリドン(0.52g)および20μmガラスビーズ(0.02g)と50℃において混合して、透明な溶液を得た。次いで、30℃までの冷却を行い、Desmodur XP 2410(1.647g)を加え、再び混合を行った。最後に、Fomrez UL 28(0.009g)を加え、再び短時間の混合を行った。次いで、得られた液体材料をガラスプレートに移し、それを第2のガラスプレートで覆った。この試験試料を、室温において15kg重量下で12時間硬化させた。
【0121】
媒体4
上記のように製造したポリオール成分(6.54g)を、実施例2のウレタンアクリレート(1.77g)、CGI 909(0.10g)およびニューメチレンブルー(0.01g)、N-エチルピロリドン(0.35g)および17μmガラスビーズ(0.015g)と50℃において混合して、透明な溶液を得た。次いで、30℃までの冷却を行い、Desmodur XP 2410(1.21g)を加え、再び混合を行った。最後に、Fomrez UL 28(0.006g)を加え、再び短時間の混合を行った。次いで、得られた液体材料をガラスプレートに移し、それを第2のガラスプレートで覆った。この試験試料を、室温において15kg重量下で12時間硬化させた。
【0122】
媒体5
上記のように製造したポリオール成分(5.92g)を、実施例4のウレタンアクリレート(2.50g)、CGI 909(0.10g)およびニューメチレンブルー(0.01g)、N-エチルピロリドン(0.35g)および20μmガラスビーズ(0.015g)と50℃において混合して、透明な溶液を得た。次いで、30℃までの冷却を行い、Desmodur XP 2410(1.10g)を加え、再び混合を行った。最後に、Fomrez UL 28(0.006g)を加え、再び短時間の混合を行った。次いで、得られた液体材料をガラスプレートに移し、それを第2のガラスプレートで覆った。この試験試料を、室温において15kg重量下で12時間硬化させた。
【0123】
媒体6
上記のように製造したポリオール成分(5.92g)を、実施例5のウレタンアクリレート(2.50g)、CGI 909(0.10g)およびニューメチレンブルー(0.01g)、N-エチルピロリドン(0.35g)および20μmガラスビーズ(0.015g)と50℃において混合して、透明な溶液を得た。次いで、30℃までの冷却を行い、Desmodur XP 2410(1.10g)を加え、再び混合を行った。最後に、Fomrez UL 28(0.006g)を加え、再び短時間の混合を行った。次いで、得られた液体材料をガラスプレートに移し、それを第2のガラスプレートで覆った。この試験試料を、室温において15kg重量下で12時間硬化させた。
【0124】
媒体7
上記のように製造したポリオール成分(5.92g)を、実施例6のウレタンアクリレート(2.50g)、CGI 909(0.10g)およびニューメチレンブルー(0.01g)、N-エチルピロリドン(0.35g)および20μmガラスビーズ(0.015g)と50℃において混合して、透明な溶液を得た。次いで、30℃までの冷却を行い、Desmodur XP 2410(1.10g)を加え、再び混合を行った。最後に、Fomrez UL 28(0.006g)を加え、再び短時間の混合を行った。次いで、得られた液体材料をガラスプレートに移し、それを第2のガラスプレートで覆った。この試験試料を、室温において15kg重量下で12時間硬化させた。
【0125】
図1は、媒体の回折効率(DE)を測定した実験的ホログラフィック配置を示す。
上記のように製造した媒体のホログラフィック特性を次のように試験した。
He-Neレーザー(放射波長633nm)のビームを、空間フィルター(SF)および視準レンズ(CL)の助けを借りて、平行な均一ビームに変換した。信号および参照ビームの最終横断面を、虹彩絞り(I)によって決定した。虹彩絞り開口部の直径は4mmである。偏光依存ビームスプリッター(PBS)が、レーザービームを2つの可干渉性(コヒーレント)の同一偏光ビームに分割する。λ/2プレートによって、参照ビームの電力を0.5mWに調節し、信号ビームの電力を0.65mWに調節した。これらの電力を、試料を除去して半導体検出器(D)で測定した。参照ビームの入射角(α)は21.8°であり、信号ビームの入射角(β)は41.8°である。試料(媒体)の位置において、2つの重なりビームの干渉場は、試料に入射した2つのビームの角二等分線に垂直である明および暗ストリップの格子(反射ホログラム)を与えた。媒体中のストリップ間隔は約225nmであった(媒体の屈折率は約1.49であると仮定される)。
【0126】
以下のようにして、ホログラムを媒体中に書込んだ。
暴露時間tの間、両シャッター(S)を開いた。
次いで、シャッター(S)を閉じながら、媒体のなお未重合の書込みモノマーを5分間拡散させた。
【0127】
ここで、書込んだホログラムを以下のようにして読んだ。信号ビームのシャッターは閉じたままであった。参照ビームのシャッターを開いた。参照ビームの虹彩絞りを、直径<1mmに閉じた。これは、ビームが、常に完全に、媒体の回転の全角度(Ω)に対して、予め書込んだホログラム中に存在することを確実にした。ここで、ターンテーブルは、コンピューター制御下に角度ステップ幅0.05°でΩ=0〜20°の角度範囲をカバーしていた。到達した各角度Ωにおいて、ゼロオーダーにおいて透過したビームの電力を、対応する検出器Dによって測定し、第1オーダーにおいて回折したビームの電力を、検出器Dによって測定した。回折効率は、到達した各角度Ωにおいて、以下の商として得られた:回折ビーム検出器の電力/(回折ビーム検出器の電力+透過ビーム検出器の電力)。
【0128】
ホログラムの最大回折効率(DE)、即ちそのピーク値を測定した。回折ビーム検出器の位置を変更して該最大値を測定することが必要になることもある。
ある配合物のために、この操作を、異なる媒体において異なる暴露時間tに対して恐らくは数回繰り返して、DEが飽和値に到達したところでのホログラムの書込み中の入射レーザービームの平均エネルギー用量を測定した。この平均エネルギー用量Eは、次の式によって得られる:
【数1】

【0129】
以下のDE測定値が、用量Eにおいて得られた:
【表1】

【0130】
上記した実験においてホログラフィック媒体に対して得られた回折効率DEは、好都合に50%を超えるはずである(入射光の少なくとも半分が回折しているため)。これは、全可視範囲において、上記で説明したような利用可能な明るい高コントラストのホログラムを導く。
【0131】
回折効率DEおよび必要用量についてわかった値は、ウレタンアクリレート含量が10重量%に等しいかまたはそれを超える本発明に係るウレタンアクリレートに基づくフォトポリマーが、上記で説明したようなホログラフィック媒体として非常に適していることを示す。特に良好なホログラフィック媒体は、ウレタンアクリレートの含量が15重量%に等しいかまたはそれを超えるときに得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書込みモノマーとして、ポリウレタン組成物の全重量を基準に少なくとも10重量%の1つまたはそれ以上の以下の式(I)、(II)および(III)で示される不飽和ウレタン(a)を含有する書込みモノマー成分(a)、ならびに、該書込みモノマーのためのマトリックスとして、ポリマー化合物または対応するマトリックス前駆体を含んでなるポリウレタン組成物:
【化1】

【化2】

【化3】


[式中、
Rは、それぞれ互いに独立して、放射線硬化性基であり;そして
Xは、それぞれ互いに独立して、RとC=Oの間の単結合、あるいは、ヘテロ原子を含有することもあり、そして/または官能基によって置換されていることもある直鎖、分岐鎖または環式の炭化水素基である]。
【請求項2】
Rが、ビニルエーテル、アクリレートまたはメタクリレート基である請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項3】
Xが、それぞれ直鎖または分岐鎖のオキシアルキレンまたはポリオキシアルキレン基である請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項4】
1つまたはそれ以上の不飽和ウレタン(a)が、ポリウレタン組成物の全重量を基準に、20〜50重量%の量で存在する請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項5】
対応するマトリックス前駆体が、
イソシアネート成分(b);
イソシアネート反応性成分(c);および
1つまたはそれ以上の光開始剤(d);
を含んでなる請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項6】
(1)請求項1に記載のポリウレタン組成物を基材または型中に適用し;そして(2)該ポリウレタン組成物を硬化させる;ことを含んでなる視覚ホログラムの記録に適する媒体の製造方法。
【請求項7】
(1)請求項5に記載のポリウレタン組成物の成分の混合物を供し;(2)該ポリウレタン組成物を基材または型中に適用し;そして(3)該ポリウレタン組成物を硬化させる;ことを含んでなり、成分(b)を(2)の適用の直前に最後にのみ混合する視覚ホログラムの記録に適する媒体の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法によって製造した視覚ホログラムの記録に適する媒体。
【請求項9】
請求項8に記載の媒体をレーザービームによって暴露することを含んでなるホログラムの記録方法。
【請求項10】
以下の式(II)で示される不飽和ウレタン:
【化4】


[式中、
Rは、それぞれ互いに独立して、放射線硬化性基であり;そして
Xは、それぞれ互いに独立して、RとC=Oの間の単結合、あるいは、ヘテロ原子を含有することもあり、そして/または官能基によって置換されていることもある直鎖、分岐鎖または環式の炭化水素基である]。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−90378(P2010−90378A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−229370(P2009−229370)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】