説明

光学素子部材、立体画像表示装置及び光学素子部材の製造方法

【課題】ガラスヤーン内部に存在する樹脂の複屈折性に起因すると推測される、透過する偏光の偏光状態の変化が大きい。
【解決手段】光学素子部材は、ガラス繊維に樹脂を含浸させた、可撓性を有する透明基板と、ガラス繊維に沿った方向と光学軸とが平行に、透明基板の少なくとも一方の面に形成され、入射光の偏光状態を変調する偏光変調部とを備え、偏光変調部は位相差板であり、光学軸は位相差板の進相軸または遅相軸であって、偏光変調部は一方の面において、互いに離間した複数の領域に配され、複数の領域の間に配され、入射光の偏光状態を変調せずに透過させる無変調部をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子部材、立体画像表示装置及び光学素子部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板を有する光学素子部材が知られているが、軽量化が難しいといった問題があった。そこで、特許文献1には、可撓性を向上させつつ、軽量化を実現可能な基板として、エポキシ樹脂液にガラス繊維製布状体を浸漬させる技術が開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2004−51960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した基板を有する光学素子部材を立体画像表示装置に適用すると、ガラスヤーン内部に存在する樹脂の複屈折性に起因すると推測される、透過する偏光の偏光状態の変化が大きいといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の光学素子部材は、ガラス繊維に樹脂を含浸させた、可撓性を有する透明基板と、前記ガラス繊維に沿った方向と光学軸とが平行に、前記透明基板の少なくとも一方の面に形成され、入射光の偏光状態を変調する偏光変調部とを備え、前記偏光変調部は位相差板であり、前記光学軸は前記位相差板の進相軸または遅相軸であって、前記偏光変調部は前記一方の面において、互いに離間した複数の領域に配され、前記複数の領域の間に配され、入射光の偏光状態を変調せずに透過させる無変調部をさらに備える。
【0005】
本発明の第2の態様の光学素子部材の製造方法は、ガラス繊維に樹脂を含浸させた透明基板を準備する段階と、入射光の偏光状態を変調する偏光変調部を、前記ガラス繊維に沿った方向と光学軸とを平行にして、前記透明基板の一面に形成する段階とを備え、前記偏光変調部は位相差板であり、前記光学軸は前記位相差板の進相軸または遅相軸であって、前記偏光変調部は前記一面において、互いに離間した複数の領域に配され、前記複数の領域の間に配され、光学的に等方性を有する無変調部をさらに備える。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】偏光眼鏡をかけたユーザに立体画像を提供する立体画像表示装置である。
【図2】第1実施形態による立体画像表示装置の断面図である。
【図3】光学素子部材の製造工程を説明する断面図である。
【図4】光学素子部材の製造工程を説明する断面図である。
【図5】光学素子部材の製造工程を説明する断面図である。
【図6】第2実施形態による立体画像表示装置の分解斜視図である。
【図7】第3実施形態による立体画像表示装置の分解斜視図である。
【図8】第4実施形態による立体画像表示装置の分解斜視図である。
【図9】第5実施形態による立体画像表示装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
<第1実施形態>
第1の実施形態は、偏光眼鏡をかけたユーザに立体画像を提供する立体画像表示装置である。図1は、第1実施形態による立体画像表示装置の分解斜視図である。図2は、第1実施形態による立体画像表示装置の断面図である。尚、実施形態の説明において、図1の矢印で示すように、ユーザが位置する方向を前方とする。
【0010】
図1及び図2に示すように、第1実施形態による立体画像表示装置10は、光源11と、偏光板12と、画像生成部13と、偏光板14と、光学素子部材15と、反射防止膜16とを備える。
【0011】
光源11は、面内において略均一な強度で、白色の無偏光を照射する面光源である。光源11は、ユーザから見て、立体画像表示装置10の一番後方に配置される。光源11には、拡散板と冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)とを組み合わせた光源、導光板と冷陰極管との組み合わせ、または、フレネルレンズと発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)とを組み合わせた光源等を適用できる。
【0012】
偏光板12は、光源11と画像生成部13との間に配置される。偏光板12は、水平方向から45°傾斜した透過軸と、透過軸に直交する吸収軸とを有する。これにより、光源11から出射されて偏光板12に入射した無偏光のうち、振動方向が透過軸と平行な成分は透過するとともに、振動方向が吸収軸と平行な成分は吸収されて遮断される。このため、偏光板12から出射される光は、偏光板12の透過軸を偏光軸とする直線偏光となる。
【0013】
画像生成部13は、画像データ等に基づいて画像を生成する。画像生成部13には、液晶部と、液晶部の前後面に形成された透明電極とを有する液晶ディスプレイが適用される。
【0014】
透明電極は、液晶部に電圧を印加する。電圧が印加された領域の液晶部は、直線偏光の偏光軸を90°回転させる。透明電極は、各ピクセルのサブピクセルに対応させて形成されている。ここで、ピクセルとは、画像を扱うときの単位をいい、色調及び階調の色情報を有する。ピクセルは、その単位領域に形成された透明電極及び液晶部からなる。ピクセルは、水平方向及び鉛直方向に二次元的に配列されている。これらのピクセルにより、画像生成部13が構成される。サブピクセルとは、ピクセルを3つに分けた赤領域、緑領域及び青領域をいい、これらの色を強めたり弱めたりしながら様々な色を表現するための最小単位である。
【0015】
図1の「R」及び「L」で示すように、画像生成部13は、右目用の画像を生成する右目用画像生成領域21と、左目用の画像を生成する左目用画像生成領域22とを有する。右目用画像生成領域21及び左目用画像生成領域22は、水平方向に延びる帯状に形成される。右目用画像生成領域21及び左目用画像生成領域22は、鉛直方向に沿って交互に配列される。
【0016】
偏光板14は、透過軸と、透過軸と直交する吸収軸とを有する。ここで、偏光板14の透過軸は、偏光板12の透過軸と直交する。よって、画像生成部13の液晶部によって偏光軸が90°回転された直線偏光は、偏光板14を透過して画像となる。一方、液晶部によって偏光軸が回転されなかった直線偏光は、偏光板14によって遮断される。
【0017】
光学素子部材15は、偏光板14の前方に配置される。光学素子部材15は、偏光変調部25と、無変調部26と、透明基板27とを備える。
【0018】
偏光変調部25及び無変調部26は、偏光板14の前方に配置されるとともに、透明基板27の後面に形成される。偏光変調部25及び無変調部26は、水平方向に延びる帯状に形成される。偏光変調部25及び無変調部26は、それぞれ画像生成部13の右目用画像生成領域21及び左目用画像生成領域22と略同形状に形成される。偏光変調部25及び無変調部26は、それぞれ右目用画像生成領域21と左目用画像生成領域22の前方に位置するように、鉛直方向に沿って交互に配列される。換言すれば、偏光変調部25は、透明基板27の後面において、互いに離間した領域に配されるとともに、無変調部26は、隣接する偏光変調部25の間に配されている。
【0019】
偏光変調部25は、入射する偏光の偏光状態を変調させる。偏光変調部25は、λ/2の位相差板である。偏光変調部25は、図1の偏光変調部25の左端に記載の矢印に示すように、水平方向と平行な光学軸を有する。これにより、偏光変調部25は、光学軸の矢印の右側に示す矢印のように、偏光板14から入射した直線偏光の偏光方向を90°回転させた直線偏光に変調する。光学軸の一例は、偏光変調部25の進相軸である。光学軸の他の例は、遅相軸である。
【0020】
無変調部26は、図1の無変調部26の左端に記載の矢印に示すように、偏光板14の透過軸と平行な光学軸を有する。これにより、無変調部26の光学軸は、直線偏光である入射光の偏光方向と平行になる。この結果、無変調部26は、光学軸の矢印の右側に示す矢印のように、偏光板14から入射した直線偏光の偏光状態を変調せずに、そのまま透過させる。尚、無変調部26の光学軸を、偏光板14の透過軸、即ち、入射光の偏光方向と垂直にしてもよい。
【0021】
ここで、ユーザが掛ける偏光眼鏡の右目用フィルターは、透過軸が水平方向から右方向に45°傾斜しているので、偏光変調部25により変調された直線偏光を透過する。一方、左目用フィルターは、透過軸が偏光板14の透過軸と平行な方向なので、無変調部26を透過した直線偏光を透過する。これにより、ユーザの右目は、偏光変調部25によって変調された直線偏光のみを見る。一方、ユーザの左目は、無変調部26によって透過された直線偏光のみを見る。
【0022】
図2に示すように、偏光変調部25は、配向膜28と、液晶膜29とを有する。配向膜28は、液晶膜29の分子を配向させる。配向膜28は、透明基板27の後面に形成される。配向膜28は、透明基板27の水平方向の略全長にわたって設けられている。配向膜28は、一般に公知の光配向性化合物を用いることができる。例えば、光分解型、光二量子化型、光異性化型等の化合物を挙げることができる。液晶膜29は、配向膜28の後面の略全面にわたって形成される。液晶膜29の分子は、配向膜28の配向に対応して配向される。これら配向膜28及び液晶膜29の配向は、上述した偏光変調部25の光学軸に対応させて設定される。
【0023】
無変調部26は、配向膜31と、液晶膜32とを有する。配向膜31は、配向膜28と同じ材料からなる。配向膜31は、透明基板27の後面に形成される。配向膜31は、透明基板27の水平方向の略全長にわたって設けられている。配向膜31は、隣接する配向膜28と配向膜28との間に設けられている。液晶膜32は、液晶膜29と同じ材料からなる。液晶膜32は、配向膜31の後面の略全面にわたって形成されている。液晶膜32は、隣接する液晶膜29と液晶膜29との間に設けられている。液晶膜32の分子は、配向膜31の配向に対応して配向される。これら配向膜31及び液晶膜32の配向は、上述した無変調部26の光学軸に対応して設定される。
【0024】
透明基板27は、可撓性を有し、偏光変調部25及び無変調部26を支持する。透明基板27は、偏光変調部25及び無変調部26の前方に配置される。透明基板27は、エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂よりも線膨張係数の小さいガラス繊維に含浸させて形成する。ここで、図1の点線に示すように、ガラス繊維は、縦方向(即ち図1における鉛直方向)及び横方向(即ち図1における水平方向)に編まれたクロス(即ち、布状体)である。即ち、複数の偏光変調部25及び複数の無変調部26は、水平方向に延びるガラス繊維に沿った方向に帯状に形成されている。
【0025】
ガラス繊維の縦糸及び横糸は、モノフィラメントからなるヤーンによって構成されている。モノフィラメントの表面には、カップリング処理等によって導入されたアミノ基、エポキシ基または水酸基等の極性基(官能基ともいう)が存在する。尚、これら極性基は単独で存在させたり、併存させたりすることもある。また、水酸基は、カップリング処理を施さなくても、空気中の水分と結合して生成される。このようなガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させると、モノフィラメントの表面の極性基とエポキシ樹脂の極性基とが反応し、ガラス繊維とエポキシ樹脂との結合が強固となる。一方、モノフィラメントの極性基とエポキシ樹脂、エポキシ樹脂同士の相互作用により、ヤーンの内部でのエポキシ樹脂の偏り(即ち、樹脂配列)が発生する。このため、透明基板27を透過する偏光に位相差が生じると推測される。この結果、透明基板27を位相差板に用いると、偏光の偏光軸がばらついて、適正な偏光軸からずれが大きくなっていると推測される。これに対し、本実施形態では、ガラス繊維に沿った方向を上述した偏光変調部25のいずれかの光学軸(例えば、進相軸)と平行にした。ここでいうガラス繊維に沿った方向と偏光変調部25の光学軸とが平行であるとは、数学的に完全な平行なだけでなく、例えば、ガラス繊維に沿った方向と偏光変調部25の光学軸との間の角度が、±5°、好ましくは±1.5°の範囲を含む。
【0026】
反射防止膜16は、透明基板27から出射された光の反射を抑制して、高効率で画像を構成する偏光をユーザへと出射する。
【0027】
次に、光学素子部材の製造方法について説明する。図3〜図5は、光学素子部材の製造工程を説明する断面図である。まず、図3に示すように、透明基板27を準備する。具体的には、縦横に編まれたガラス繊維に透明且つ液状のエポキシ樹脂を含浸させる。この後、エポキシ樹脂を熱硬化等により硬化させて透明基板27を作成する。次に、透明基板27の一方の面(即ち、後面)の全面に液状の感光性樹脂膜34を塗布する。この後、偏光変調部25の配向膜28に対応した位置に開口部36が形成されたマスク35を準備する。次に、マスク35の開口部36を偏光変調部25に対応する位置に配置する。
【0028】
この後、図4に示すように、ガラス繊維に沿った方向の一方である水平方向と平行な偏光軸を有する偏光を、マスク35を介して感光性樹脂膜34に照射する。これにより、マスク35の開口部36に対応する領域の感光性樹脂膜34の分子が、照射された偏光軸に平行、即ち、ガラス繊維に沿った方向と平行に配向された状態で硬化される。この結果、偏光変調部25の配向膜28が形成される。この後、偏光の照射を停止する。次に、マスク35の開口部36を無変調部26に対応する位置に移動させる。この状態で、偏光板14の透過軸と平行な偏光軸を有する偏光を、マスク35を介して感光性樹脂膜34に照射する。これにより、マスク35の開口部36に対応する領域の感光性樹脂膜34の分子が、照射された偏光軸に平行、即ち、偏光板14の透過軸に沿った方向と平行に配向された状態で硬化される。この結果、無変調部26の配向膜31が形成される。この後、偏光の照射を停止した後、マスク35を除去する。
【0029】
次に、図5に示すように、配向膜28及び配向膜31の一方の面である後面に液晶が塗布されることにより、液晶膜29及び液晶膜32が形成される。この後、液晶膜29及び液晶膜32を乾燥させた後、加熱する。これにより、配向膜28の配向に従って、液晶膜29の分子が配向されつつ、液晶膜29が硬化する。この結果、透明基板27のガラス繊維に沿った方向と光学軸とが平行な偏光変調部25が透明基板27の一面に形成される。また、配向膜31の配向に従って、液晶膜32の分子が配向されつつ、液晶膜32が硬化する。この結果、偏光板14の透過軸と平行な光学軸を有する無変調部26が透明基板27の一面に形成される。一方、配向膜31は、光学的にランダムな配向性を有する。従って、液晶膜32は、配向膜31に倣って、光学的にランダムな配向性を有する状態で硬化する。これにより、入射する偏光の偏光状態を変調させるための偏光変調部25、及び、入射する偏光の偏光状態を変調させない無変調部26が完成する。尚、加熱の代わりに、紫外線によって液晶膜29及び液晶膜32を硬化させてもよい。この結果、光学素子部材15が完成する。
【0030】
次に、上述した第1実施形態による立体画像表示装置10の動作について説明する。まず、立体画像表示装置10では、光源11から出射された白色の無偏光が、偏光板12に入射して、偏光軸が水平方向から左方向に45°傾斜した直線偏光に変換される。次に、偏光板12から出射された直線偏光は、画像生成部13に入射して、右目用画像と左目用画像を構成する直線偏光と、画像を構成しないそれ以外の直線偏光を含む直線偏光となって出射される。ここで、右目用画像及び左目用画像を構成する直線偏光の偏光軸は、画像生成部13の右目用画像生成領域21及び左目用画像生成領域22の液晶部によって回転されて、水平方向から右方向に45°に傾斜される。即ち、画像を構成する直線偏光の偏光軸は、偏光板14の透過軸と平行である。次に、画像生成部13から出射された直線偏光のうち、右目用画像を構成する直線偏光は、偏光板14を透過して、光学素子部材15の偏光変調部25へと入射する。また、画像生成部13から出射された直線偏光のうち、左目用画像を構成する直線偏光は、偏光板14を透過して、光学素子部材15の無変調部26へと入射する。一方、右目用画像及び左目用画像を構成しない直線偏光は、偏光板14に吸収されて遮断される。
【0031】
上述したように、右目用画像を構成する直線偏光は、偏光変調部25に入射する。これにより、右目用画像を構成する直線偏光は、90°回転されて、水平方向から左方向に45°傾斜した直線偏光に変調される。一方、左目用画像を構成する直線偏光は、無変調部26に入射する。ここで、無変調部26は、偏光板14の透過軸と平行な光学軸を有するので、左目用画像を構成する直線偏光を変調させずに透過させる。従って、左目用画像を構成する直線偏光は、水平方向から右方向に45°傾斜した偏光状態を維持する。この後、両画像を構成する直線偏光は、透明基板27を透過する。ここで、透明基板27のガラス繊維に沿った方向(即ち、鉛直方向及び水平方向)は、偏光変調部25の光学軸(即ち、進相軸及び遅相軸)と平行に構成されている。このため、透明基板27を透過する直線偏光は、透明基板27を構成するエポキシ樹脂の偏り(即ち、樹脂配列)及び複屈折率の影響をほとんど受けない。このため、直線偏光は、透明基板27に入射された偏光状態を略維持したまま透過する。この結果、偏光軸のばらつきが抑制されたまま、画像を構成する直線偏光は出射される。この後、直線偏光は、反射防止膜16を透過した後、ユーザの偏光眼鏡へと入射する。そして、右目用画像を構成する水平方向から左方向に45°傾斜した直線偏光は、偏光眼鏡の左目用フィルターでは遮蔽されるが、右目用フィルターは透過してユーザの右目に達する。一方、左目用画像を構成する水平方向から右方向に45°傾斜した直線偏光は、偏光眼鏡の右目用フィルターでは遮蔽されるが、左目用フィルターは透過してユーザの左目に達する。これにより、ユーザは、立体画像を見る。
【0032】
次に、上述した第1実施形態の立体画像表示装置10の効果について説明する。上述したように第1実施形態の立体画像表示装置10は、偏光変調部25を保持する透明基板27はガラス繊維およびエポキシ樹脂により形成される。これにより、立体画像表示装置10は、透明基板27の軽量化、可撓性及び耐久性を向上させることができる。更に、立体画像表示装置10は、透明基板27のガラス繊維に沿った方向と偏光変調部25の光学軸(即ち、進相軸)とを平行にしている。これにより、偏光変調部25により変調された直線偏光の偏光状態が、透明基板27によって変化されることを抑制して、偏光軸のばらつき等を低減できる。この結果、ユーザは、鮮明な立体画像を見ることができる。
【0033】
また、光学素子部材15は、エポキシ樹脂よりも線膨張係数の小さいガラス繊維を有する透明基板27を備える。これにより、光学素子部材15は、透明基板27の熱膨張を低減することができる。この結果、光学素子部材15は、熱に起因する、右目用画像生成領域21及び左目用画像生成領域22と、偏光変調部25及び無変調部26との位置ずれを抑制することができるので、より画像を鮮明にすることができる。
【0034】
また、偏光変調部25では、偏光変調部25及び無変調部26がガラス繊維に沿った方向の一方である水平方向と平行な帯状に形成されている。
【0035】
また、光学素子部材15の透明基板27のガラス繊維は、鉛直方向及び水平方向に編まれている。これにより、透明基板27は、複数方向の外力に対する耐久性を向上させることができる。
【0036】
<第2実施形態>
次に、上述した実施形態の一部を変更した第2実施形態による立体画像表示装置について説明する。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。図6は、第2実施形態による立体画像表示装置の分解斜視図である。
【0037】
図6に示すように、第2実施形態による立体画像表示装置110の光学素子部材115の偏光変調部125と無変調部126とが、市松模様状(即ち、マトリックス状)に配置される。具体的には、偏光変調部125及び無変調部126は、それぞれ略正方形状に形成される。そして、偏光変調部125及び無変調部126は、鉛直方向及び水平方向に交互に配列される。偏光変調部125の光学軸は、矢印に示すように、水平方向と平行に形成される。これにより、偏光変調部25は、光学軸の矢印の右側に示す矢印のように、偏光板14から入射した直線偏光の偏光方向を90°回転させた直線偏光に変調する。一方、無変調部126の光学軸は、矢印に示すように、偏光板14の透過軸と平行に形成される。これにより、偏光板14から入射した直線偏光の偏光状態を変調させることなく、出射する。
【0038】
同様に、画像生成部113の右目用画像生成領域121及び左目用画像生成領域122は、偏光変調部125及び無変調部126に対応させて市松模様状に配置される。
【0039】
第2実施形態では、偏光変調部125及び無変調部126を市松模様状に配列することにより、光学軸が縦糸または横糸に対して直交または平行になる。これにより、透明基板27を透過する偏光は、透明基板27を構成するエポキシ樹脂の偏り(即ち、樹脂配列)及び複屈折率の影響を受けにくい。即ち、透明基板27に入射された偏光状態を略維持したまま透過するので、偏光軸のばらつきが抑制される。
【0040】
<第3実施形態>
次に、上述した実施形態の一部を変更した第3実施形態による立体画像表示装置について説明する。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。図7は、第3実施形態による立体画像表示装置の分解斜視図である。
【0041】
図7に示すように、第3実施形態による立体画像表示装置210の光学素子部材215の偏光変調部225及び無変調部226の延びる方向(即ち、水平方向)に対して、偏光変調部225の光学軸が45°傾斜している。偏光変調部225は、λ/2の位相差板である。従って、偏光変調部225に入射した偏光は、偏光軸を90°回転されて出射される。尚、傾斜角は、45°に限定されるものでなく、適宜変更することができる。一方、無変調部226は、偏光板214の透過軸と平行な光学軸を有する。これにより、無変調部226は、偏光板214を透過して入射した偏光の偏光状態を変調させることなく、出射する。
【0042】
図7に点線で示すように、透明基板227のガラス繊維に沿った方向は、偏光変調部225の光学軸に対応させて、鉛直方向から左右に45°傾斜した方向と平行である。本実施形態においても、ガラス繊維に沿った方向と偏光変調部225の光学軸は平行である。一方、帯状の偏光変調部225は、ガラス繊維に沿った方向と交差する方向に沿って形成される。
【0043】
また、偏光板212及び偏光板214の透過軸も偏光変調部225の光学軸に合わせて変更されている。具体的には、偏光板212及び偏光板214の一方の透過軸は鉛直方向と平行に、他方の透過軸は水平方向と平行に形成される。
【0044】
第3実施形態の偏光変調部225では、偏光変調部225の光学軸と偏光変調部225の延びる方向とを交差させている。これにより、光学軸と偏光変調部225との関係の自由度を向上させることができる。
【0045】
<第4実施形態>
次に、上述した実施形態の一部を変更した第4実施形態による立体画像表示装置について説明する。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。図8は、第4実施形態による立体画像表示装置の分解斜視図である。
【0046】
図8に示すように、第4実施形態による立体画像表示装置310の光学素子部材315の透明基板327では、ガラス繊維が、水平方向の一方向のみに揃えられている。即ち、透明基板327は、一方向繊維体(即ち、UD繊維体)である。
【0047】
第4実施形態による透明基板327では、ガラス繊維が一方向のみに延びるので、位相差における光学軸を容易に設定できる。また、第4実施形態は、ガラス繊維が二方向に延びる場合に比べて、透明基板327を透過する偏光は、透明基板327を構成するエポキシ樹脂の偏り(即ち、樹脂配列)及び複屈折率の影響をより受けがたいものとなる。その結果、位相差のずれを小さくすることができる。更に、第4実施形態は、ガラス繊維を編みこむ必要がないので、構成及び製造工程を簡略化することができる。
【0048】
<第5実施形態>
次に、上述した実施形態の一部を変更した第5実施形態による立体画像表示装置について説明する。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。図9は、第5実施形態による立体画像表示装置の分解斜視図である。
【0049】
図9に示すように、第5実施形態による立体画像表示装置410では、光学素子部材415の無変調部426を、光学的に等方性を有するように構成してもよい。光学的に等方性を有する無変調部426の製造方法は下記の通りである。まず、液晶膜を形成する。この後、無変調部426の領域の液晶膜をクリアリングポイント(即ち、透明点)以上まで加熱して液体にした後、再度硬化させる。これにより、非液晶膜からなる無変調部426を形成することができる。このように製造された無変調部426は、光学的に等方性を有するので、偏光板14から入射した直線偏光の偏光状態を変調させることなく出射する。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0051】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0052】
例えば、上述した各実施形態の構成の形状、材料、配置、数値等は適宜変更することができる。更に、異なる実施形態を組み合わせてもよい。
【0053】
具体的には、上述した実施形態では、光学素子部材の偏光変調部をλ/2位相差板と適用する例をあげたが、本発明の偏光変調部をλ/4位相差板として適用してもよい。偏光変調部をλ/4位相差板として適用する場合は、偏光変調部は入射した直線偏光の偏光軸を円偏光として出射する。この場合においても、透明基板のガラス繊維に沿った方向と、偏光変調部の進相軸または遅相軸は平行に設定される。また、無変調部を波長の整数倍の位相差を有する位相差板として構成してもよい。この場合においても、無変調部は入射する偏光の偏光状態を変調させることなく出射する。
【0054】
上述した実施形態では、光学素子部材の無変調部を、偏光変調部と同じ材料によって構成したが、無変調部を偏光変調部と異なる材料によって構成してもよい。例えば、無変調部を液晶膜及び配向膜が除去された空間、即ち、空気等の気体によって構成してもよい。また、光学素子部材の一面を平坦化するために、透明な樹脂等の複屈折性を有さない材料によって、無変調部を構成してもよい。更に、無変調部の液晶膜のみを偏光変調部の液晶膜と異なる透明材料によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 立体画像表示装置
11 光源
12 偏光板
13 画像生成部
14 偏光板
15 光学素子部材
16 反射防止膜
21 右目用画像生成領域
22 左目用画像生成領域
25 偏光変調部
26 無変調部
27 透明基板
28 配向膜
29 液晶膜
34 感光性樹脂膜
35 マスク
36 開口部
110 立体画像表示装置
113 画像生成部
115 光学素子部材
121 右目用画像生成領域
122 左目用画像生成領域
125 偏光変調部
126 無変調部
210 立体画像表示装置
212 偏光板
214 偏光板
215 光学素子部材
225 偏光変調部
226 無変調部
227 透明基板
310 立体画像表示装置
315 光学素子部材
327 透明基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維に樹脂を含浸させた、可撓性を有する透明基板と、
前記ガラス繊維に沿った方向と光学軸とが平行に、前記透明基板の少なくとも一方の面に形成され、入射光の偏光状態を変調する偏光変調部と
を備え、
前記偏光変調部は位相差板であり、前記光学軸は前記位相差板の進相軸または遅相軸であって、
前記偏光変調部は前記一方の面において、互いに離間した複数の領域に配され、
前記複数の領域の間に配され、入射光の偏光状態を変調せずに透過させる無変調部をさらに備える光学素子部材。
【請求項2】
前記無変調部は、光学的に等方性を有する請求項1に記載の光学素子部材。
【請求項3】
前記無変調部は、前記偏光変調部と同材料であって、光学軸は入射光の偏光方向と平行または垂直である請求項1または2に記載の光学素子部材。
【請求項4】
前記複数の領域のそれぞれは、前記ガラス繊維に沿った方向に帯状に形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学素子部材。
【請求項5】
前記複数の領域のそれぞれは、前記ガラス繊維に沿った方向と交差する方向に沿った帯状に形成される請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学素子部材。
【請求項6】
前記ガラス繊維は、交差する2方向に編まれたクロスである請求項1から請求項5のいずれかに記載の光学素子部材。
【請求項7】
前記ガラス繊維は、一方向に揃えられた一方向繊維体である請求項1から請求項5のいずれかに記載の光学素子部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の光学素子部材を備える立体画像表示装置。
【請求項9】
光学素子部材の製造方法であって、
ガラス繊維に樹脂を含浸させた透明基板を準備する段階と、
入射光の偏光状態を変調する偏光変調部を、前記ガラス繊維に沿った方向と光学軸とを平行にして、前記透明基板の一面に形成する段階と
を備え、
前記偏光変調部は位相差板であり、前記光学軸は前記位相差板の進相軸または遅相軸であって、
前記偏光変調部は前記一面において、互いに離間した複数の領域に配され、
前記複数の領域の間に配され、光学的に等方性を有する無変調部をさらに備える光学素子部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−186423(P2011−186423A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196109(P2010−196109)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】