説明

光学素子

【課題】偏光板を介して観察することによって潜像が白及び黒以外の色を含む画像として鮮明に可視化される複屈折パターンを有する光学素子の提供。
【解決手段】二つ以上の画素を含む光学素子であって、光学異方性層を二層以上含み、該光学異方性層の各層内においては、遅相軸の向きが均一であり、前記画素は2つ以上のサブピクセルから構成され、該サブピクセルは前記の光学異方性層各層の一部領域を含み、前記の各層の一部領域内においてレターデーションは均一であり、かつ前記サブピクセルのいずれか1つは、同一画素中または他の画素中の前記サブピクセルの他のいずれか1つと、前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに互いに異なった色を示す光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学素子に関する。より詳しくは、本発明は偏光板を介して観測することによって潜像が白及び黒以外の色を含む像として可視化される光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
認証画像の分野において、従来は専ら反射ホログラムが用いられてきた。ホログラムは、目視で容易に真贋の判定が可能で、かつコピー機などを用いた単純な複写が困難であることから、認証画像として適している。しかし、近年の技術の普及に伴いホログラムの製造が容易になり目視用のホログラムは真正なものと区別のつかない程の模造品が比較的容易に製造されるようになっている。偽造を回避するため、機械を用いて回折光の方向や強度をより厳密に検出する構造とすることも可能であるが、目視での識別は困難となる。
【0003】
これに対し、複屈折パターンは偏光板の使用により容易に識別可能である。また、製造技術はほとんど広まっておらず偽造は困難であるため認証画像として適している。特許文献1又は2においては、複屈折パターンが画像記録の方法として提案されており、通常人間の目では識別できない複屈折パターンを、偏光板を介することによって可視化している。ここで複屈折パターンは異方性フィルムに対してヒートモードレーザーやサーマルヘッド、又はホットスタンプを用いて画像形成部分に熱を加え、完全にあるいは不完全に異方性を低下させる手法を用いて作製されている。
【0004】
しかし、上記のように熱を用いて複屈折性を低下させる手法で作製されたパターンはいずれも耐熱性に劣るという欠点がある。すなわち、複屈折性が残っている部分に熱が加わった場合、その部分の複屈折性が低下してしまう恐れがある。また、サーマルヘッドや加熱スタンプを用いる手法では膜厚方向の伝熱と面内方向の伝熱で差をつけることが難しいため、膜厚以下の解像度のパターンを描くことが極めて困難である。レーザーを用いた加熱では高解像度のパターン描画が可能だが、細かいパターンをレーザー走査で描くために加工が長時間になるという問題がある。
【0005】
また、上記の特許文献1又は2に記載の方法では、可視化される潜像はいずれもモノクロ画像であって、より偽造又は変造し難いマルチカラー画像は得られていない。
【0006】
特許文献3においては光軸をパターニングすることにより、複屈折パターンを形成することが提案されている。得られる複屈折パターンによって多数の色彩を有する画像を表すことができるとされている。しかし、光軸のパターニングのため光配向層が必要である、色彩の輝度を調整するためにフォトリソグラフィーを必要とする、また、一度の露光で複屈折パターンを形成するためには、偏光板のパターニングが必要であるなどの点において上記複屈折パターンはプロセスが煩雑であるという問題がある。
【特許文献1】特開2007−1130号公報
【特許文献2】特開2001−232978号公報
【特許文献3】特表2001−25080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は偏光板を介して観察することによって潜像が白及び黒以外の色を含む画像として鮮明に可視化される複屈折パターンを有する光学素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究の結果、面内レターデーションをパターン状に有する光学異方性層を2層以上積層して複屈折パターンを作製することにより、鮮明なマルチカラー画像を表現できる光学素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記[1]〜[18]を提供するものである。
【0009】
[1]二つ以上の画素を含む光学素子であって、
光学異方性層を二層以上含み、
該光学異方性層の各層内においては遅相軸の向きが均一であり、
前記画素は2つ以上のサブピクセルから構成され、
該サブピクセルは前記の光学異方性層各層の一部領域を含み、
前記の各層の一部領域内において面内レターデーションは均一であり、
かつ前記サブピクセルのいずれか1つは同一画素中または他の画素中の前記サブピクセルの他のいずれか1つと前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに互いに異なった色を示す光学素子。
【0010】
[2]前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときにそれぞれ互いに異なる色を示すサブピクセルを3つ以上含む[1]に記載の光学素子。
[3]前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに黒を示すサブピクセル及び/または白を示すサブピクセルを含む[1]または[2]に記載の光学素子。
[4]前記画素が、3つ以上のサブピクセル群からなり、
各サブピクセル群は前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに色Cを示すサブピクセル及び黒を示すサブピクセルまたは白を示すサブピクセルからなる群より選択される2以上のサブピクセルから構成されており、
色Cは黒又は白ではなく、
同一画素中の各サブピクセル群が示す色Cは互いに異なっている[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光学素子。
【0011】
[5]前記画素が、3つのサブピクセル群からなり、
1つのサブピクセル群は前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに赤を示すサブピクセル及び黒を示すサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成され、
他の一つのサブピクセル群は前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに緑を示すサブピクセル及び黒を示すサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成され、
残りの一つのサブピクセル群は前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに青を示すサブピクセル及び黒を示すサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成されている[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学素子。
【0012】
[6]前記の二層以上の光学異方性層の、前記観察側と反対側の最外層の外面に偏光層を有する[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学素子。
[7]前記の二層以上の光学異方性層のいずれかの側の最外層の外面に反射層を有する[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学素子。
[8]前記の二層以上の光学異方性層の遅相軸の向きが互いに全て同一である[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光学素子。
【0013】
[9]前記画素が、サブピクセルR、サブピクセルG、サブピクセルBの3つのサブピクセルからなり、
下記Re(R)またはRe(K)から選択される面内レターデーションを有し、サブピクセルGは、下記Re(G)またはRe(K)から選択される面内レターデーションを有し、サブピクセルBは、下記Re(B)またはRe(K)から選択される面内レターデーションを有する、[8]に記載の光学素子:
(I)350nm<Re(R)<370nm、または、600nm<Re(R)<700nm;
(II)440nm<Re(G)<560nm;
(III)160nm<Re(B)<220nm;
(IV)120nm<Re(K)<160nm。
【0014】
[10]前記画素が、3つのサブピクセル群からなり、
1つのサブピクセル群は下記面内レターデーションRe(R)を有するサブピクセル及び下記面内レターデーションRe(K)を有するサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成され、
他の一つのサブピクセル群は面内レターデーションRe(G)を有するサブピクセル及び下記面内レターデーションRe(K)を有するサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成され、
残りの一つのサブピクセル群は下記面内レターデーションRe(B)を有するサブピクセル及び下記面内レターデーションRe(K)を有するサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成されている[8]に記載の光学素子:
(I)350nm<Re(R)<370nm、または、600nm<Re(R)<700nm;
(II)440nm<Re(G)<560nm;
(III)160nm<Re(B)<220nm;
(IV)120nm<Re(K)<160nm。
【0015】
[11]前記の二層以上の光学異方性層の少なくとも一層の遅相軸の向きが、他のいずれか一層の光学異方性層の遅相軸の向きと異なっている[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光学素子。
[12]偏光板を介して観測される色の再現域が、NTSC比7%以上であることを特徴とする、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の光学素子。
[13]前記二層以上の光学異方性層の少なくとも一層以上が、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して重合固定化して形成した層からなる[1]〜[12]のいずれか一項に記載の光学素子。
[14]前記二層以上の光学異方性層の全ての層が、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して重合固定化して形成した層からなる[1]〜[13]のいずれか一項に記載の光学素子。
【0016】
[15]前記液晶性化合物が、2種類以上の異なる重合性基を有する[13]または[14]に記載の光学素子。
[16]前記二層以上の光学異方性層の少なくとも一層以上が、高分子を含む組成物からなる層にパターン露光を行う工程及び、50℃〜400℃でベークする工程を含む方法により前記一部領域を得ている層である[1]〜[15]のいずれか一項に記載の光学素子。
[17]偽造・変造を防止するための認証画像として用いられる[1]〜[16]のいずれか一項に記載の光学素子。
【0017】
[18][1]に記載の光学素子の製造方法であって、下記工程(1)及び(2)を含む方法:
(1)互いに異なった色を示す前記サブピクセルごとの面内レターデーション及び前記光学異方性層の各層の遅相軸の向き、及び該面内レターデーションを実現する該サブピクセル内の前記一部領域ごとの面内レターデーションをコンピュータで算出する工程;
(2)前記算出結果に従った遅相軸の向きと一部領域ごとの面内レターデーションとを有するパターニング光学異方性層の積層体を形成する工程。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、偏光板を介して観察することによって潜像が白及び黒以外の色を含む画像として鮮明に可視化される複屈折パターンを有する光学素子が提供される。本発明の光学素子は、同一層内では同一の向きの遅相軸を有する光学異方性層を含むため、製造プロセスが煩雑ではない。また、本発明の光学素子の色彩の調整は、所望のレターデーション値等をコンピュータで計算し、該計算に基づいて光学異方性層形成のための露光条件を調整することで行うことができ、光学素子の製造に追加の製造工程を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0020】
本明細書において、レターデーション又はReは、面内レターデーションを表す。面内レターデーション(Re(λ))はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。本明細書におけるレターデーション又はReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0021】
本明細書において、角度について「同一」、「同じ」、又は「均一」とは、角度の差異が±5°未満の範囲内であることを意味する。この範囲は、±4°未満であることが好ましく、±3°未満であることがより好ましい。したがって、例えば、「軸の向きが同一である」というとき、軸の向きの差異が±5°未満の範囲内であることを意味し、「軸の向きが異なっている」というとき、軸の向きの差異が±5°以上であることを意味する。
レターデーションについて「異なる」というとき、レターデーションが±5%より大きい差異を有することを意味する。さらに、Reが実質的に0であるとは、Reが5nm以下であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0022】
本明細書において、「NTSC比」とはNational Television Standards Committee規格で規定されている色度域に対する色再現範囲を面積比で表したものを意味する。例えば、一般的なデスクトップPC用ディスプレイはNTSC比68〜72%程度を有する。
【0023】
本明細書において、「画素」とは、本発明の光学素子が示す像を設計する際の色の最小単位である。1つの画素は、偏光板を介したときにそれぞれ異なる色に発色し得る2つ以上のサブピクセルから構成され、サブピクセル内においては均一に発色する。偏光板を介して観察される各サブピクセルの色は、後述する各光学異方性層の遅相軸の向きと、各サブピクセルにおける各光学異方性層(一部領域)のレターデーション値によって決めることができる。
【0024】
本発明の光学素子において、1つの画素は2つ以上のサブピクセルから構成される。それぞれのサブピクセルは2色以上の異なる色から選択された色を呈することが可能である。例えば、1つの画素が2つのサブピクセル(サブピクセル1、サブピクセル2)から構成され、それぞれのサブピクセルはR(赤色)またはG(緑色)の2色の内いずれかに発色することが可能であるとする。この場合、(サブピクセル1,サブピクセル2)=(R、R)の場合、その画素は赤色を、(サブピクセル1,サブピクセル2)=(G、G)の場合、その画素は緑色を、(サブピクセル1,サブピクセル2)=(R、G)、または、(G、R)の場合、混色の原理より黄色を呈する。このように、少ない色数で、より多くの色を表現することが可能になる。
【0025】
表現可能な色域を増やすためには、1つの画素は3つ以上のサブピクセルから構成されることが好ましい。例として、R、G、Bに対応する、3つのサブピクセル(サブピクセルR、サブピクセルG、サブピクセルB)からなる画素を図1に示す。サブピクセルRは、その画素を何色に発色させたいかに応じて、偏光板を介したときにR、もしくはK(黒色)に発色するように光学異方性層のレターデーションが調整される。サブピクセルGに関しては、G、もしくはK、サブピクセルBに関しては、B、もしくはKに発色するように調整される。このように画素を設計すると、表1に示すように、8色の色を表現することが可能である。ここでは、R、G、Bを例として挙げたが、C、M、Yを用いてもよく、両者を併用しても構わない。あるいは、その中間の色調を用いることも可能である。また、全てのサブピクセルに共通に黒色を用意したが、画素の輝度を向上させるために、更に白色を加えてもよい。白を示すサブピクセルにおいては、一般的にはレターデーションをゼロにするとよい。
【0026】
【表1】

【0027】
一画素内に同じサブピクセルを、複数個ずつ設置することで、階調表現も可能になる。例えば、図2に示すように、RまたはKに発色するサブピクセルR群(サブピクセルR1、サブサブピクセルR2、サブサブピクセルR3)、GまたはKに発色するサブピクセルG群(サブピクセルG1、サブサブピクセルG2、サブサブピクセルG3)、BまたはKに発色するサブピクセルB群(サブピクセルB1、サブサブピクセルB2、サブサブピクセルB3)からなる画素を形成することもできる。このとき、各サブピクセル群のKの割合を調整することで、各色の階調表現をおこなうことが可能である。この場合、各色4階調の表現ができ、4種類の色を組み合わせることで、64色の色表現がなされる。
画素の設計としては、複数考えられるが、潜像となる元画像に応じて、選択することが好ましい。
【0028】
本発明の光学素子は、複数の画素から形成される。該画素は、光学素子の平面上にパターン状に分布していることが好ましい。本発明の光学素子の各画素は、偏光板を介して観測することによってそれぞれ異なる色を示すサブピクセルを少なくとも2つ含む。色再現域を広げるためには、一画素内のサブピクセルは3つ以上であることが好ましい。該サブピクセルは、画素内に、パターン状に分布していることが好ましい。サブピクセルのサイズは、互いに異なっていてもよい。上記サブピクセルは、それぞれ2色以上の異なる色から選択された色を呈することが可能である。色の選択肢はサブピクセル毎に同じであっても、異なっていてもよい。
【0029】
階調表現を行うために2個以上のサブピクセルの集合からなるサブピクセル群の概念により画素を設計することもできる。例えば、RまたはKを示すサブピクセル3つからなるサブピクセル群Rg、GまたはKを示すサブピクセル3つからなるサブピクセル群Gg、BまたはKを示すサブピクセル3つからなるサブピクセル群Bgからなる画素を設計した場合、各色4階調、全64色の表現が可能である。顔写真のような画像を潜像に用いたい場合には、各色4階調以上となるように設計することが好ましい。
【0030】
本発明の光学素子は、二層以上の光学異方性層を含む。二層の光学異方性層からなる本発明の光学素子の例の模式図を、図3(a)〜(c)に示す。図3(a)はこの例を横から見た図である。第一の光学異方性層の上に第二の光学異方性層が積層されており、第一の光学異方性層の一部領域と第二の光学異方性層の一部領域との積層物がサブピクセルを形成している。そして2つのサブピクセルが一画素を形成している。図3(b)は同一の例における第二の光学異方性層を上から見た図であり、図3(c)は同一の例における第一の光学異方性層を上から見た図である。図3(b)及び(c)において、太枠で囲まれた部分が画素、細枠で囲まれた部分がサブピクセルを示す。
【0031】
本発明の光学素子において、二層以上の光学異方性層の遅相軸の向きは互いに、同じでも異なっていてもよい。例えば、前記の例において、第一の光学異方性層における遅相軸の向きは均一であり、かつ第二の光学異方性層における遅相軸の向きは均一であるが、第一の光学異方性層の遅相軸の向きと第二の光学異方性層の遅相軸の向きとは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0032】
二層以上の光学異方性層の遅相軸の向きが互いに同じである場合、該光学異方性層の遅相軸の向きは偏光板の吸収軸に対し、45度ずれていることが好ましい。二層以上の光学異方性層の遅相軸の向きが互いに同じである場合には、全ての光学異方性層のレターデーション合計値によって、発色される色が決まる。Rに発色させるためには、光学異方性層のレターデーション合計値は340〜380nm、あるいは、600〜700nmとするのが好ましく、350〜370nm、あるいは、630〜670nmとすることがより好ましい。Gに発色させるためには、440〜560nmとするのが好ましく、470〜530nmとするのがより好ましく、490〜510nmとすることが最も好ましい。Bに発色させるためには、160〜220nmとすることが好ましく、160〜210nmとするのがより好ましく、160〜190nmとすることが最も好ましい。Kは、輝度が低くなるように設計する必要がある。120〜160nmとすることが好ましく、130〜150nmとすることが最も好ましい。
【0033】
光学異方性層の遅相軸の向きが異なる場合には、その遅相軸の向きの選択肢は多数あり、それに応じてレターデーション値の最適値を選択すればよい。遅相軸をずらして積層することで、より他者から模造されにくいと考えられる。
本発明の光学素子は、該画素の集合で形成する複屈折パターンを有し、認証画像等として使用される。
【0034】
なお、本発明の光学素子は、以下のような原理により色を示している。クロスニコル偏光板間に光学異方性層を挿入した場合、その位相差に応じて光の透過率は変化する。位相差は波長によっても変化するので、波長によって光の透過率も変化する。従って、透過光は色づいて見えるが、その透過光は、光学異方性層のレターデーションによって変化する。同様に、反射板の上に光学異方性層を設けた場合、その上に偏光板を重ねることで、反射色は色づいて見え、その色は、光学異方性層のレターデーションによって変化する。また、レターデーションをパターニングすることが可能であるため、マルチカラー画像を潜像として扱うことが可能である。
【0035】
各画素のサブピクセルが所望の色を示すために適切なレターデーション値は、光学シミュレーションによって算出することが可能である。層構成(各層の屈折率、膜厚、偏光板の吸収軸の向き、あるいは、光学異方性層の遅相軸の向きなど)から、透過色、または、反射色をシミュレートするためには、透過スペクトル、または、反射スペクトルを求める必要がある。これらを、シミュレートするには、Berremannの4×4法、または、Pochi.Yehの4×4法を用いることが好ましい。これらの方法で、算出されたスペクトルには、実測の測定では現れない干渉フリンジが現れるが、アポディゼーションを施すことによって、この干渉フリンジを消すことができる。このようにして算出されたスペクトルは、ほぼ実測値を再現することができる。
アポディゼーションの方法は、いくつか提案されているが、例えば、SID 93 DIGEST P.101やSID 98 DIGEST P.825に記載の方法を用いることができる。
透過スペクトル、または、反射スペクトルから透過色、または反射色を算出するには、例えば、色彩光学第2版(大田登著)P.73に記載されている方法を用いることができる。
【0036】
本発明の光学素子における光学異方性層は、例えば液晶性組成物を原料としてUV光の露光条件を調整することなどによって、レターデーションを調整することが可能である。従って、各光学異方性層の遅相軸の向き、及び、偏光板の吸収軸の向きを固定した状態で、レターデーションを変化させたときの、透過色、あるいは反射色をシミュレートすればよい。例えば、RGBKに対応するレターデーションを求めるためには、レターデーションを実現可能な範囲で網羅的に変化させたときの色変化を計算し、RGB純色に最も近いレターデーションを抽出すればよい。Kに対応するレターデーションを求めるためには、輝度の低くなるレターデーションを選択すればよい。
【0037】
以下、上記の光学素子を作製するための材料及び方法等の例について、詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0038】
[パターニング光学異方性層]
本発明の光学素子における光学異方性層は、互いにレターデーションが異なる一部領域を2つ以上含むことを特徴とする。本発明の光学素子における光学異方性層は、レターデーションが実質的に0の部位を含んでいてもよい。このような面内レターデーションが異なる一部領域を2つ以上含む光学異方性層(以下「パターニング光学異方性層」という)を作製するための光学異方性層につき以下説明する。
【0039】
[光学異方性層]
光学異方性層は、位相差を測定したときにReが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。また、前記光学異方性層は、レターデーション消失温度を有することが好ましい。 本明細書において、「レターデーション消失温度」とは光学異方性層を20℃の状態から毎分20℃の速度で昇温させた際に、ある温度において該光学異方性層のレターデーションが該光学異方性層の20℃時のレターデーションの30%以下となる温度のことをいう。レターデーション消失温度は20℃より大きく250℃以下であることが好ましく、40℃〜245℃であることがより好ましく、50℃〜245℃であることがさらに好ましく、80℃〜240℃であることが最も好ましい。
【0040】
また、光学異方性層としては、露光を行う事によりレターデーション消失温度が上昇する光学異方性層を用いる。この結果として、露光部と未露光部とでレターデーション消失温度に差が生じることとなり、未露光部のレターデーション消失温度より高く露光部のレターデーション消失温度より低い温度でベークを行う事により未露光部のレターデーションのみを選択的に消失させることが可能となる。この際に露光によるレターデーション消失温度の上昇幅は、未露光部のレターデーションのみの選択的消失の効率及び加熱装置内の温度ばらつきに対するロバストネスを考慮すると、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく20℃以上であることが特に好ましい。
【0041】
光学異方性層は20℃においてレターデーションが5nm以上であればよく、10nm以上10000nm以下であることが好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが5nm以下では複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが10000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
【0042】
光学異方性層は高分子を含む組成物から形成されていることが好ましい。また光学異方性層を形成する高分子は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましい
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも1つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;高分子からなる層にカップリング剤を用いて反応性基を導入した後に延伸する方法;または高分子からなる層を延伸した後にカップリング剤を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。
また、本発明の光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0043】
[液晶性化合物を含有する組成物を重合固定化してなる光学異方性層]
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述する高分子を延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易である。
【0044】
[液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0045】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせがよい。前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
【0046】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶性化合物である。
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
以下に、上記一般式(I)で表される反応性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、反応性基である。反応性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、反応性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な反応性基であることが好ましい。以下に反応性基の例を示す。
【0047】
【化1】

【0048】
1、L2、L3およびL4で表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR2−、−NR2−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR2−、−NR2−CO−O−、およびNR2−CO−NR2−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。前記式(I)中、Q1−L1およびQ2−L2−は、CH2=CH−CO−O−、CH2=C(CH3)−CO−O−およびCH2=C(Cl)−CO−O−CO−O−が好ましく、CH2=CH−CO−O−が最も好ましい。
【0049】
1およびA2は、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12のアルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W1−L5n−W2
式中、W1およびW2は各々独立して、二価の環状アルキレン基もしくは環状アルケニレン基、二価のアリール基または二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例、−CH2−O−、および−O−CH2−が挙げられる。nは1、2または3を表す。
【0050】
1およびW2としては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体およびシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W1およびW2は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基などが挙げられる。
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0051】
【化2】

【0052】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0053】
【化3】

【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層にディスコティック液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物の層または重合性の液晶性ディスコティック化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であるのが好ましい。前記ディスコティック(円盤状)化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0060】
本発明では、下記一般式(III)で表わされるディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。
一般式(III): D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
前記式(III)中、円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられ、同公報に記載される円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)に関する内容をここに好ましく適用することができる。
上記ディスコティック化合物の好ましい例を下記に示す。
【0061】
【化9】

【0062】
【化10】

【0063】
【化11】

【0064】
【化12】

【0065】
【化13】

【0066】
【化14】

【0067】
光学異方性層は、液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であるのが好ましい。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
【0068】
本発明の光学素子における2層以上のパターニング光学異方性層は、2層以上の(パターン形成前の)光学異方性層を後述の方法により同時に露光及びベークを行って作製することもできる。
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体であってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0069】
光学異方性層は、液晶性化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する所定の配向層の上に塗布することで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0070】
[液晶性化合物の配向状態の固定化]
配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0071】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0072】
[偏光照射による光配向]
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。この偏光照射は上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねてもよいし、先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行ってもよいし、非偏光照射で先に固定化してから偏光照射によって光配向を行ってもよいが、偏光照射のみを行うか先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行うことが望ましい。偏光照射が上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねる場合であってかつ重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合、偏光照射は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。偏光照射によって硬化する液晶性化合物の種類については特に制限はないが、反応性基としてエチレン不飽和基を有する液晶性化合物が好ましい。照射波長としては300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0073】
[偏光照射後の紫外線照射による後硬化]
前記光学異方性層は、最初の偏光照射(光配向のための照射)の後に、偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射してもよい。最初の偏光照射の後に偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射することで反応性基の反応率を高め(後硬化)、密着性等を改良し、大きな搬送速度で生産できるようになる。後硬化は偏光でも非偏光でも構わないが、偏光であることが好ましい。また、2回以上の後硬化をすることが好ましく、偏光のみでも、非偏光のみでも、偏光と非偏光を組み合わせてもよいが、組み合わせる場合は非偏光より先に偏光を照射することが好ましい。紫外線照射は不活性ガス置換してもしなくてもよいが、特に重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては偏光照射の場合は300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。非偏光照射の場合は200〜450nmにピークを有することが好ましく、250〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0074】
[ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化]
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0075】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0076】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0077】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0078】
[水平配向剤]
前記光学異方性層の形成用組成物中に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。
以下、下記一般式(1)〜(4)について、順に説明する。
【0079】
【化15】

【0080】
式中、R1、R2およびR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2およびX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基またはフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2およびX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−およびSO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい
【0081】
【化16】

【0082】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、およびR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同じである。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0083】
【化17】

【0084】
式中、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8およびR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(1)におけるR1、R2およびR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特開2005−99248号公報の段落番号[0092]〜[0096]に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0085】
【化18】

【0086】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上12以下の整数を表す。一般式(4)を含む含フッ素ポリマー以外にも、塗布におけるムラ改良ポリマーとして特開2005−206638および特開2006−91205に記載の化合物を水平配向剤として用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0087】
[延伸によって作製される光学異方性層]
光学異方性層は高分子の延伸によって作製されたものでもよい。前述したように光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このような高分子を作製する際にはあらかじめ反応性基を有する高分子を延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0088】
[光学異方性層の後処理]
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる方法もあげられる。
【0089】
[その他の層]
本発明の光学素子の形状は通常、フィルムまたはシート形状であればよい。光学素子は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、支持体、配向層、反射層、後粘着層などが挙げられる。また本発明の光学素子は偏光層を有していてもよい。
【0090】
[支持体]
本発明の光学素子は支持体を有してもよい。支持体には特に限定はないが、本発明の光学素子の使用目的に応じて選択することが好ましい。例えば観察側と反対面に偏光層を配する態様の光学素子の場合は透明支持体が好ましく、もっぱら反射光により潜像を可視化する態様で使用される光学素子の場合は後述する反射層の代わりに、支持体自体が反射機能を有することもまた好ましい。反射機能を有する支持体の例としてはアルミホイル、ステンレス、のほか、光沢のある印刷を任意の支持体に設けることによって反射機能を付与してもよい。またホログラム加工を施した支持体を用いることもできる。支持体のそのほかの例としてはセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、布などが挙げられる。支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。
【0091】
[配向層]
上記した様に、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
【0092】
配向層用の有機化合物の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0093】
配向層の形成には、ポリマーを使用するのが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向層の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。配向層用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向層を用いることがより好ましく、かかる配向層としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。配向層は酸素遮断膜としての機能を有していてもよい。
【0094】
また、LCDの配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向層として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成工業(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0095】
また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0096】
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiO2を代表とし、TiO2、ZnO2等の金属酸化物、あるいやMgF2等のフッ化物、さらにAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0097】
[反射層]
本発明の光学素子において反射層又は上記のような反射機能を有する支持体を用いることによって、2層以上のパターニング光学異方性層から見て反射層又は支持体の反対側面から偏光板を介して観察することによって、複屈折パターンによる潜像を可視化することができる。
反射層としては特に限定されないが、例えばアルミや銀などの金属層が挙げられる。このような金属層を蒸着した支持体でもよいし、金属箔を箔押しした支持体でもよい。あるいはゴールドやシルバー等のインキで印刷した支持体を用いることもできる。完全鏡面である必要はなく、表面にマット加工が施されていてもよい。
【0098】
[後粘着層]
本発明の光学素子は他の物品に貼付されるための後粘着層を有していてもよい。後粘着層の材料は特に限定されないが、製造の際のベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。
【0099】
[偏光層]
2層以上のパターニング光学異方性層から見て視認側と反対側面に偏光層を設け、2層以上のパターニング光学異方性層から見て視認側から偏光板を介して観察することによって、反対側面透明支持体の上に設けたときには、本発明の光学素子を二枚の偏光子の間に設けることで、複屈折パターンによる潜像を可視化することができる。この場合には、光学素子中の偏光層と、観察の際に用いる二枚の偏光板がクロスニコルとなる角度に配置することが好ましい。なお、本明細書において“クロスニコル”とは吸収軸が略直交になるように重ねた2枚の偏光板の間にサンプルを配置した状態を意味する。
なお、このような偏光層を用いることなく、視認側の反対面及び視認側面に偏光板を配置して(通常クロスニコルとすることが好ましい)複屈折パターンによる潜像を可視化してもよい。
以下に、転写によって上記光学異方性層が作製される場合に使用される転写材料及び該転写材料に含まれる機能性層について説明する。
【0100】
[仮支持体]
転写材料は仮支持体を有することが好ましい。仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0101】
[転写用接着層]
転写材料は転写接着層を有することが好ましい。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、感光性樹脂層などが挙げられるが、液晶表示装置用基板等に用いられる場合に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。
【0102】
[粘着層]
粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0103】
[感圧性樹脂層」
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0104】
[感熱性樹脂層」
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0105】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0106】
[感光性樹脂層]
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、ポジ型でもネガ型でもよく特に限定はなく、市販のレジスト材料を用いることもでき合、光照射によって接着性を発現することが好ましい。また、液晶表示装置用基板等の物品の製造工程における環境上や防爆上の問題から、有機溶剤が5%以下の水系現像であることが好ましく、アルカリ現像であることが特に好ましい。また、感光性樹脂層は少なくとも(1)ポリマーと、(2)モノマー又はオリゴマーと、(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。
【0107】
以下、これら(1)〜(3)の成分について説明する。
(1)ポリマー
ポリマー(以下、単に「バインダ」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーからなるアルカリ可溶性樹脂が好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報および特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよい。全固形分に対するポリマーの含有量は20〜70質量%が一般的であり、25〜65質量%が好ましく、25〜45質量%がより好ましい。
【0108】
(2)モノマー又はオリゴマー
前記感光性樹脂層に使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマーおよびオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0109】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報および特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報および特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよく、着色樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
【0110】
(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系
前記感光性樹脂層に使用される光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書および同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾールおよびトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
【0111】
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
着色樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0112】
感光性樹脂層は、ムラを効果的に防止するという観点から、適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。前記界面活性剤は、感光性樹脂組成物と混ざり合うものであれば使用可能である。本発明に用いる好ましい界面活性剤としては、特開2003−337424号公報[0090]〜[0091]、特開2003−177522号公報[0092]〜[0093]、特開2003−177523号公報[0094]〜[0095]、特開2003−177521号公報[0096]〜[0097]、特開2003−177519号公報[0098]〜[0099]、特開2003−177520号公報[0100]〜[0101]、特開平11−133600号公報の[0102]〜[0103]、特開平6−16684号公報の発明として開示されている界面活性剤が好適なものとして挙げられる。より高い効果を得る為にはフッ素系界面活性剤、および/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤、フッソ原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましく、フッ素系界面活性剤が最も好ましい。フッ素系界面活性剤を用いる場合、該界面活性剤分子中のフッ素含有置換基のフッ素原子数は1〜38が好ましく、5〜25がより好ましく、7〜20が最も好ましい。フッ素原子数が多すぎるとフッ素を含まない通常の溶媒に対する溶解性が落ちる点で好ましくない。フッ素原子数が少なすぎると、ムラの改善効果が得られない点で好ましくない。
特に好ましい界面活性剤として、下記一般式(a)および、一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有するものが挙げられる。
【0113】
【化19】

【0114】
式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜18の整数、mは2〜14の整数を示す。p、qは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも同時に0になる場合は含まない。
【0115】
特に好ましい界面活性剤の一般式(a)で表されるモノマーをモノマー(a)、一般式(b)で表されるモノマーをモノマー(b)と記す。一般式(a)に示すCm2m+1は、直鎖でも分岐鎖でもよい。mは2〜14の整数を示し、好ましくは4〜12の整数である。Cm2m+1の含有量は、モノマー(a)に対して20〜70質量%が好ましく、特に好ましくは40〜60質量%である。R1は水素原子またはメチル基を示す。またnは1〜18を示し、中でも2〜10が好ましい。一般式(b)に示すR2およびR3は、各々独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基を示す。pおよびqは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも0は含まない。pおよびqは好ましくは2〜8である。
【0116】
また、特に好ましい界面活性剤1分子中に含まれるモノマー(a)としては、互いに同じ構造のものでも、上記定義範囲で異なる構造のものを用いてもよい。このことは、モノマー(b)についても同様である。
特に好ましい界面活性剤の重量平均分子量Mwは、1000〜40000が好ましく、更には5000〜20000がより好ましい。界面活性剤は前記一般式(a)および一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有することを特徴とする。特に好ましい界面活性剤100質量部は、モノマー(a)が20〜60質量部、モノマー(b)が80〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましく、更には、モノマー(a)が25〜60質量部、モノマー(b)が60〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましい。
【0117】
モノマー(a)および(b)以外の共重合可能なモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンゼンスルホン酸ソーダ、アミノスチレン等のスチレンおよびその誘導体、置換体、ブタジエン、イソプレン等のジエン類、アクリロニトリル、ビニルエーテル類、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、部分エステル化マレイン酸、スチレンスルホン酸無水マレイン酸、ケイ皮酸、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体等が挙げられる。
特に好ましい界面活性剤は、モノマー(a)、モノマー(b)等の共重合体であるが、そのモノマー配列は特に制限はなくランダムでも規則的、例えば、ブロックでもグラフトでもよい。更に、特に好ましい界面活性剤は、分子構造および/又はモノマー組成の異なるものを2以上混合して用いることができる。
前記界面活性剤の含有量としては、感光性樹脂層の層全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、特に0.1〜7質量%が好ましい。界面活性剤は、特定構造の界面活性剤とエチレンオキサイド基、およびポリプロピレンオキサイド基とを所定量含有するもので、感光性樹脂層に特定範囲で含有することにより該感光性樹脂層を備えた液晶表示装置の表示ムラが改善される。全固形分に対して0.01質量%未満であると、表示ムラが改善されず、10質量%を超えると、表示ムラ改善の効果があまり現れない。上記の特に好ましい界面活性剤を前記感光性樹脂層中に含有させカラーフィルタを作製すると、表示ムラが改良される点で好ましい。
【0118】
好ましいフッ素系界面活性剤の具体例としては、特開2004−163610号公報の段落番号[0054]〜[0063]に記載の化合物が挙げられる。また、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。本発明においては、一般式(a)で表されるモノマーを含まないフッ素系界面活性剤である、特開2004−331812号公報の段落番号[0046]〜[0052]に記載の化合物を用いることも好ましい。
【0119】
[力学特性制御層]
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましく、熱可塑性樹脂層が特に好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0120】
[剥離層]
転写材料は仮支持体の上に剥離層を有してもよい。剥離層は仮支持体と剥離層間の、あるいは剥離層とその直上層の間の密着力を制御し、光学異方性層を転写した後の仮支持体の剥離を助ける役目を負う。また前述の他の機能層、例えば配向層や力学特性制御層などが剥離層としての機能を有してもよい。
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0121】
[表面保護層]
樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護する為に薄い表面保護層を設けることが好ましい。表面保護層の性質は特に限定されず、仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、隣接する層(例えば転写接着層)から容易に分離されねばならない。表面保護層の材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0122】
光学異方性層、感光性樹脂層、転写接着層、配向層、熱可塑性樹脂層、力学特性制御層および中間層等の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0123】
[複屈折パターン作製材料]
上記の材料を用いて、下記に例示する方法により複屈折パターン作製材料を作製する。
支持体上に光学異方性層を形成する;支持体上に配向層を設けその上に光学異方性層を直接形成する;仮支持体上に光学異方性層が形成された転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する;仮支持体上の配向層に光学異方性層が形成された転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する;自己支持性の光学異方性層として形成する;自己支持性の光学異方性層上に他の機能性層を形成する;自己支持性の光学異方性層に支持体に貼合する。このうち光学異方性層の物性に制約を加えないという点からは支持体上に光学異方性層、又は配向層及び光学異方性層を形成する方法と転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法が好ましく、さらに支持体に対する制約が少ない点から転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
【0124】
[転写材料を被転写材料上に転写する方法]
転写材料を支持体等の被転写材料上に転写する方法については特に制限されず、基板上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を被転写材料表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
被転写材料としては、支持体、支持体及び他の機能性層を含む積層体、又は複屈折パターン作製材料が挙げられる。
【0125】
[転写に伴う工程]
複屈折パターン作製用転写材料を被転写材料上に転写した後、仮支持体は剥離してもよく、しなくともよい。ただし剥離しない場合には仮支持体がその後のパターン露光に適した透明性やベークに耐え得る耐熱性などを有していることが好ましい。また、光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0126】
また転写後、必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の層を形成してもよい。あるいは必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に転写材料を転写してもよい。この際に用いる転写材料は先に転写した転写材料と同じでもよく、異なってもよい。また、先に転写した転写材料の光学異方性層の遅相軸と新たに転写する転写材料の光学異方性層と遅相軸は互いに同じ向きでもよく、異なる向きでもよい。前述のように、複数層の光学異方性層を転写する事は遅相軸の向きを揃えた複数層の光学異方性層を積層した大きなレターデーションを持つ複屈折パターンや遅相軸の向きの異なる複数層を積層した特殊な複屈折パターンの作製などに有用である。
【0127】
[複屈折パターンの作製]
前記光学異方性層に少なくとも、パターン露光及び加熱(ベーク)をこの順に行うことにより、パターニング光学異方性層(複屈折パターン)を作製することができる。
【0128】
[パターン露光]
本明細書においてパターン露光とは、露光部と未露光部とを形成するように行う露光のほか、異なる露光条件で露光される領域が形成されるように行う露光を含む。パターン露光は、通常、光学異方性層における複屈折性を残したい領域を露光するように行う。露光部の光学異方性層はレターデーション消失温度が上昇する。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等を使用して露光を行うことができる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜100mJ/cm2程度である。
異なる露光条件で露光される領域が形成されるように行う露光としては使用する紫外光に対する透過率が異なる領域を有するフォトマスクを利用した露光などが挙げられる。
【0129】
光学異方性層のパターン露光は1層ずつ別々に行ってもよいが2層以上の層を同時に行ってもよい。プロセス低減の観点からは2層以上の層を同時に行うことが好ましい。1層ずつ別々に行う際には、上記のような複屈折パターン作製材料にパターン露光を行ったあと、その上に光学異方性層を直接塗布等により設ける、又は転写材料等を用いて設ける必要がある。この際複数層の遅相軸の向きの調節を行えばよい。例えば遅相軸の向きが同じ光学異方性層を積層する場合にはそれらの層は同時にパターン露光することが好ましい。遅相軸の向きが互いに異なる光学異方性層を積層する場合には一層ずつマスク露光されることが好ましい。
【0130】
[加熱(ベーク)]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。複屈折パターン作製に用いる複屈折パターン作製材料の有する光学異方性層の露光前のレターデーション消失温度をT1[℃]、露光後のレターデーション消失温度をT2[℃]とした場合(レターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない場合はT2=250とする)、ベーク時の温度はT1℃以上T2℃以下が好ましく、(T1+10)℃以上(T2−5)℃以下がより好ましく、(T1+20)℃以上(T2−10)℃以下が最も好ましい。
ベークによって光学異方性層の未露光部のレターデーションが低下し、一方で先のパターン露光でレターデーション消失温度が上昇した露光部はレターデーションの低下が小さく、もしくは全く低下しないかあるいは上昇し、結果として未露光部のレターデーションが露光部のレターデーションに比較して小さくなり複屈折パターン(パターンニング光学異方性層)が作製される。
光学異方性層のベークは通常2層以上の層を同時に行えばよいが、必要に応じて1層ずつ別々に行ってもよい。
【0131】
[複屈折パターンに積層される機能性層]
本発明の光学素子の作製の際、上述のように露光及びベークを行って複屈折性パターンを作製した後に、さらに様々な機能を持った機能性層を積層してもよい。機能性層としては、特に限定されるものではないが、例えば表面の傷つきを防止するハードコート層や、上記の反射層などがあげられる。
【0132】
[2層以上の光学異方性層]
本発明の光学素子は、パターニング光学異方性層を2層以上有することを特徴とする。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いに同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。
遅相軸の向きが互いに同じである場合、例えば数百nmを超える大きなレターデーションを得ることが可能である。すなわち、単層で実現するレターデーションは、液晶の複屈折と膜厚との積で表される。液晶は、界面の規制力により配向を制御するため、膜厚に伴い、配向が悪化する傾向にある。このため、液晶により、複屈折を付与する場合、単層で達成できるレターデーションには上限値があり、数百nmを超えるレターデーションを単層で実現するのは難しいが、遅相軸の方向が同じ層を積層することによって、大きなレターデーションを実現することができる。特に、反射型表示において、色再現域を拡大するためには、数百nm以上のレターデーションが必要になるため、遅相軸の向きが同じ層を積層する意義が大きい。
なお、光学異方性層の遅相軸の向きは、一般的に配向層に施されたラビングの向きと一致する。上述のようにパターニング光学異方性層においてレターデーションは、実質的に0の一部領域があってもよいが、この場合には、露光前の光学異方性層の遅相軸の向きは、上記ラビングの向きであると考えることができる。
【実施例】
【0133】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0134】
[シミュレーション]
反射支持体を有する本発明の光学素子により、偏光板を介して潜像を可視化することを前提に、シミュレーションを行った。反射色は空気層を考慮した上で、Berremanの4×4法を用いてシミュレートした。干渉フリンジを消すために、アポディゼーション法を用いた。反射支持体には、アルミ蒸着ガラスを仮定した。その反射スペクトルを図4に示す。また、光源としては、一般的な蛍光灯により、照明された白壁の部屋の分光分布を仮定した。その分光分布を図5に示す。
【0135】
液晶層の屈折率には、後述する光学異方性層の屈折率を用いた。また、偏光板の屈折率には、サンリッツ社製、スーパーハイコントラスト直線偏光板の屈折率を用いた。
上記構成にて、反射色を計算した。
【0136】
計算例1(一層の場合)
アルミ蒸着ガラスの上に、レターデーション上限値が330nmの光学異方性層を、その遅相軸の向きが45°となるように配置し、更に、その上に空気層を介して、偏光板をその吸収軸の向きが90°となるように配置した場合において、光学異方性層のレターデーション値を変化させたときの反射色を網羅的に計算した。その中で、NTSC規格における、R、G、Bの色度に最も近い反射色を呈する設計を抽出した。結果を表2に示す。
【0137】
【表2】

【0138】
表2に示す結果から算出されるNTSC比は、2.9%であり、色再現域は非常に狭いことがわかる。
【0139】
計算例2(同軸二層の場合)
アルミ蒸着ガラスの上に、レターデーション上限値が330nmの光学異方性層を、その遅相軸の向きが45°となるように二層積層し、更に、その上に空気層を介して、偏光板をその吸収軸の向きが90°となるように配置した場合において、光学異方性層のレターデーション値を変化させたときの反射色を網羅的に計算した。その中で、NTSC規格における、R、G、Bの色度に最も近い反射色を呈する設計を抽出した。結果を表3に示す。なお表3中のレターデーション値は、二層のレターデーション値の和で示している。
【0140】
【表3】

【0141】
計算例1と比較すると、R、Gの彩度が大きく改善していることが分かる。また、NTSC比にすると、7.5%であり、色再現域が広がることが示された。
【0142】
計算例3(軸ずらし二層の場合)
アルミ蒸着ガラスの上に、レターデーション上限値が330nmの第一の光学異方性層を、その遅相軸の向きがφ1となるように、更にその上に、レターデーション上限値が330nmの第二の光学異方性層を、その遅相軸の向きがφ2となるように設け、その上に空気層を介して、偏光板をその吸収軸が90°となるように配置した場合において、第一、および第二の光学異方性層のレターデーション値を変化させたときの反射色を網羅的に計算した。その中で、NTSC規格における、R、G、Bの色度に最も近い反射色を呈する設計を抽出した。φ1が5°、φ2が25°の場合の結果を表4に示す。
【0143】
【表4】

【0144】
計算例2と比較して、更にBの色度が外側に移動していることが分かる。また、NTSC比にすると、8.1%であり、色再現域が広がることが示された。
【0145】
[サンプル作製]
(力学特性制御層用塗布液CU−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、力学特性制御層用塗布液CU−1として用いた。
──────────────────────────────────―─────
力学特性制御層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―─────
メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、質量平均分子量=10万、Tg≒70℃)
5.89
スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=65/35、質量平均分子量=1万、Tg≒100℃)
13.74
BPE−500(新中村化学(株)製) 9.20
メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製) 0.55
メタノール 11.22
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.43
メチルエチルケトン 52.97
──────────────────────────────────―─────
【0146】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
【0147】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2は配向制御の目的で添加する円盤状の化合物である。Tetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
──────────────────────────────────―─────
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―─────
棒状液晶(LC−1−1) 32.59
水平配向剤(LC−1−2) 0.02
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―─────
【0148】
【化20】

【0149】
(転写接着層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液AD−1として用いた。
──────────────────────────────────―
転写接着層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.8万) 8.05
KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
メガファックF−176PF(大日本インキ化学工業(株)製) 0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
──────────────────────────────────―
【0150】
(上記計算例2に対応するレターデーションパターンBP−1の作成)
(光学異方性層塗布サンプルTRC−1および複屈折パターン作製用転写材料TR−1の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ3.6μmの光学異方性層を形成して光学異方性層塗布サンプルTRC−1を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。TRC−1の光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
最後に、光学異方性層塗布サンプルTRC−1の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.2μmの転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmのポリプロピレンフィルム)を圧着し、複屈折パターン作製用転写材料TR−1を作製した。
【0151】
(複屈折パターン作製材料BPM―1の作製)
アルミニウムを蒸着したガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
前記複屈折パターン作製用転写材料TR−1の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離した。この上に、再度同様の手法で複屈折パターン作製用転写材料TR−1をラミネートした。この際、先にラミネートした光学異方性層と後にラミネートした光学異方性層の両者の遅相軸の向きが概ね一致するように注意した。ラミネート後、仮支持体を剥離して複屈折パターン作製材料BPM−1を作製した。
【0152】
(複屈折パターン作製材料BP―1の作製)
BPM−1に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる3つの領域を有するフォトマスクIを用いて露光照度6.25mW/cm2で30秒間の露光を行った。フォトマスクIは濃度の異なる4つの領域BP―1R、BP―1G、BP―1B、BP―1Kからなる。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率を表5に示す。
【0153】
【表5】

露光後のBPM−1に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、レターデーションパターンBP−1を作製した。
【0154】
(反射色測定)
レターデーションパターンBP−1の上にスーパーハイコントラスト直線偏光板(サンリッツ社製)を、その吸収軸の向きと、光学異方性層の遅相軸の向きとの成す角が45°となるように重ねた。領域BP−1R、1G、1B、1Kはそれぞれ、赤色、緑色、青色、黒色を呈していた。それぞれの領域の反射色は、蛍光灯により照明された部屋にて放射輝度計BM−5A(トプコン社製)を用い、反射色(Yxy)を測定した。測定結果を表6に示す。
【0155】
【表6】

【0156】
表2と比較すると、シミュレーションにより算出された反射色が測定値をよく再現していることが分かる。
【0157】
(耐熱性評価)
BP−1を150℃のオーブンで10分間加熱した。加熱処理後のBP−1R、BP−1G、BP−1Bの領域を、それぞれBPB−1R、1G,1Bとする。前述の方法で測定したそれぞれの反射色は、表7のようになった。
【0158】
【表7】

【0159】
熱処理した後も、潜像の反射色はほとんど変化していないことから、本発明の光学素子が耐熱性に優れていることが分かる。
【0160】
(上記計算例3に対応するレターデーションパターンBP−2の作製)
(光学異方性層塗布サンプルTRC−2、3および複屈折パターン作製用転写材料TR−2、3の作製)
配向層のラビング方向を、MD方向から時計まわりに25°、5°とした以外は、TRC−1と同様にして、光学異方性層塗布サンプルTRC−2、及び3を作製した。また、光学異方性層塗布サンプルとして、TRC−2、及び3を用いる以外は、TR−1と同様にして、複屈折パターン作製用転写材料TR−2、及び3を作製した。
【0161】
(複屈折パターン作製材料BPM―2の作製)
BPM−1と同様に、アルミニウムを蒸着したガラスに、TRC−3をフィルムのTD方向とガラスの手前の辺が一致するようにラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離して複屈折パターン作製材料BPM−2を作製した。
【0162】
(複屈折パターン作製材料BP―2の作製)
BPM−2に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる4つの領域を有するフォトマスクIIを用いて露光照度6.25mW/cm2で5秒間の露光を行った。このとき、フォトマスクIIの手前の辺と、BMP−2のガラスの手前の辺が平行になるようにした。これをBP−2Aとする。
フォトマスクIIは濃度の異なる4つの領域BP―2R1、BP―2G1、BP―2B1、BP―2K1からなる。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率を表8に示す。
【0163】
【表8】

それぞれの領域について、ベーク後に予測されるレターデーションを表9に示す。
【0164】
【表9】

【0165】
次にTRC−2に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる4つの領域を有するフォトマスクIIIを用いて露光照度6.25mW/cm2で25秒間の露光を行
った。フォトマスクIIIの手前の辺と、TRC−2のTD方向とが平行になるようにした。フォトマスクIIIは濃度の異なる4つの領域BP―2R2、BP―2G2、BP―2B2、BP―2K2からなる。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率を表10に示す。
【0166】
【表10】

【0167】
それぞれの領域について、ベーク後に予測されるレターデーションを表11に示す。
【表11】

【0168】
BP−2Aの上に、TR−2Aをラミネートした。この際、領域BP−2R1とBP−2R2、BP−2G1とBP−2G2、BP−2B1とBP−2B2、BP−2K1とBP−2K2のパターンがそれぞれ一致するようにした。ラミネート後、仮支持体を剥離して複屈折パターン作製材料BPM−2を作製した。
BPM−2に対して、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、レターデーションパターンBP−2を作製した。
加熱処理後のBP−2R、BP−2G、BP−2B、BP−2Kの領域を、それぞれBPB−2R、2G、2B、2Kとする。前述の方法で測定したそれぞれの反射色は、表12のようになった。
【0169】
【表12】

【0170】
表4と比較すると、シミュレーションにより算出された反射色が測定値をよく再現していることが分かる。
【0171】
(階調表現)
RGB各色4階調の顔写真を用意し、これを元画像とした。
この元画像を潜像として形成するためのマスクを作成した。マスクは一画素を9つに分割し、それぞれ、R、G、Bに3サブピクセルずつ割り当てた。元画像の各画素のRGB値に応じて、R用サブピクセル部は、露光後にRまたはKに発色するように、G用サブピクセル部は、露光後にGまたはKに発色するように、B用サブピクセル部は、露光後にBまたはKに発色するように、透過率をパターニングした。
このようにして設計した露光マスクを、上記のBP−1及びBP−2の作製において用いられたそれぞれのフォトマスクの代わりに用いた以外は、BP−1及びBP−2の作製と同じ手順により、光学素子を作製した。偏光板を上からかざすと、いずれの光学素子においても、顔写真が浮かび上がった。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】R、G、Bに対応する、3つのサブピクセル(サブピクセルR、サブピクセルG、サブピクセルB)からなる画素を示す図である。
【図2】階調表現が可能であるサブピクセルR群、サブピクセルG群、およびサブピクセルB群からなる画素を示す図である。
【図3】二層の光学異方性層からなる本発明の光学素子の例の模式図である
【図4】シミュレーションにおいて仮定された反射支持体(アルミ蒸着ガラス)の反射スペクトルを示すグラフである。
【図5】シミュレーションにおいて仮定された光源(一般的な蛍光灯により照明された白壁の部屋)の分光分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ以上の画素を含む光学素子であって、
光学異方性層を二層以上含み、
該光学異方性層の各層内においては遅相軸の向きが均一であり、
前記画素は2つ以上のサブピクセルから構成され、
該サブピクセルは前記の光学異方性層各層の一部領域を含み、
前記の各層の一部領域内において面内レターデーションは均一であり、
かつ前記サブピクセルのいずれか1つは同一画素中または他の画素中の前記サブピクセルの他のいずれか1つと前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに互いに異なった色を示す光学素子。
【請求項2】
前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときにそれぞれ互いに異なる色を示すサブピクセルを3つ以上含む請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに黒を示すサブピクセル及び/または白を示すサブピクセルを含む請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記画素が、3つ以上のサブピクセル群からなり、
各サブピクセル群は前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに色Cを示すサブピクセル及び黒を示すサブピクセルまたは白を示すサブピクセルからなる群より選択される2以上のサブピクセルから構成されており、
色Cは黒又は白ではなく、
同一画素中の各サブピクセル群が示す色Cは互いに異なっている請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記画素が、3つのサブピクセル群からなり、
1つのサブピクセル群は前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに赤を示すサブピクセル及び黒を示すサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成され、
他の一つのサブピクセル群は前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに緑を示すサブピクセル及び黒を示すサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成され、
残りの一つのサブピクセル群は前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察されたときに青を示すサブピクセル及び黒を示すサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記の二層以上の光学異方性層の、前記観察側と反対側の最外層の外面に偏光層を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記の二層以上の光学異方性層のいずれかの側の最外層の外面に反射層を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記の二層以上の光学異方性層の遅相軸の向きが互いに全て同一である請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記画素が、サブピクセルR、サブピクセルG、サブピクセルBの3つのサブピクセルからなり、
下記Re(R)またはRe(K)から選択される面内レターデーションを有し、サブピクセルGは、下記Re(G)またはRe(K)から選択される面内レターデーションを有し、サブピクセルBは、下記Re(B)またはRe(K)から選択される面内レターデーションを有する、請求項8に記載の光学素子:
(I)350nm<Re(R)<370nm、または、600nm<Re(R)<700nm;
(II)440nm<Re(G)<560nm;
(III)160nm<Re(B)<220nm;
(IV)120nm<Re(K)<160nm。
【請求項10】
前記画素が、3つのサブピクセル群からなり、
1つのサブピクセル群は下記面内レターデーションRe(R)を有するサブピクセル及び下記面内レターデーションRe(K)を有するサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成され、
他の一つのサブピクセル群は面内レターデーションRe(G)を有するサブピクセル及び下記面内レターデーションRe(K)を有するサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成され、
残りの一つのサブピクセル群は下記面内レターデーションRe(B)を有するサブピクセル及び下記面内レターデーションRe(K)を有するサブピクセルから選択される2以上のサブピクセルから構成されている請求項8に記載の光学素子:
(I)350nm<Re(R)<370nm、または、600nm<Re(R)<700nm;
(II)440nm<Re(G)<560nm;
(III)160nm<Re(B)<220nm;
(IV)120nm<Re(K)<160nm。
【請求項11】
前記の二層以上の光学異方性層の少なくとも一層の遅相軸の向きが、他のいずれか一層の光学異方性層の遅相軸の向きと異なっている請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項12】
偏光板を介して観測される色の再現域が、NTSC比7%以上であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項13】
前記二層以上の光学異方性層の少なくとも一層以上が、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して重合固定化して形成した層からなる請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項14】
前記二層以上の光学異方性層の全ての層が、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して重合固定化して形成した層からなる請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項15】
前記液晶性化合物が、2種類以上の異なる重合性基を有する請求項13または14に記載の光学素子。
【請求項16】
前記二層以上の光学異方性層の少なくとも一層以上が、高分子を含む組成物からなる層にパターン露光を行う工程及び、50℃〜400℃でベークする工程を含む方法により前記一部領域を得ている層である請求項1〜15のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項17】
偽造・変造を防止するための認証画像として用いられる請求項1〜16のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項18】
請求項1に記載の光学素子の製造方法であって、下記工程(1)及び(2)を含む方法:
(1)互いに異なった色を示す前記サブピクセルごとの面内レターデーション及び前記光学異方性層の各層の遅相軸の向き、及び該面内レターデーションを実現する該サブピクセル内の前記一部領域ごとの面内レターデーションをコンピュータで算出する工程;
(2)前記算出結果に従った遅相軸の向きと一部領域ごとの面内レターデーションとを有するパターニング光学異方性層の積層体を形成する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−186579(P2009−186579A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24003(P2008−24003)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】