光学装置の製造方法
【課題】本発明は、遮光部材に設けられた開口部の側面に対応する部分の遮光部材の傾斜面の傾斜角度が所定の角度となるように遮光部材を精度良く形成することのできると共に、製造コストを低減することのできる光学装置を提供することを課題とする。
【解決手段】透光性部材12を透過した光を反射するミラー24を有したミラー素子18と、透光性部材12を透過した光をミラー24に直接照射するための開口部26を有した遮光部材13と、を備え、開口部26の側面に対応する部分の遮光部材13の形状が傾斜面27とされた光学装置10の製造方法であって、遮光部材13の形成領域に対応する部分の透光性部材12に、遮光部材13の形状に対応する貫通部33を有したマスク32を配置して、印刷法によりCr含有樹脂35をマスク32の貫通部33に充填し、その後、貫通部33に充填されたCr含有樹脂5を硬化させて遮光部材13を形成した。
【解決手段】透光性部材12を透過した光を反射するミラー24を有したミラー素子18と、透光性部材12を透過した光をミラー24に直接照射するための開口部26を有した遮光部材13と、を備え、開口部26の側面に対応する部分の遮光部材13の形状が傾斜面27とされた光学装置10の製造方法であって、遮光部材13の形成領域に対応する部分の透光性部材12に、遮光部材13の形状に対応する貫通部33を有したマスク32を配置して、印刷法によりCr含有樹脂35をマスク32の貫通部33に充填し、その後、貫通部33に充填されたCr含有樹脂5を硬化させて遮光部材13を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に係り、特にプロジェクタ、光スイッチ、バーコード、コピー機等に適用される光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プロジェクタ、光スイッチ、バーコード、コピー機等の装置には、図1に示すような光学装置100が内蔵されている。
【0003】
図1は、従来の光学装置の断面図である。図1において、Jは光源111から放出された光の進行方向、Kはミラー114により反射された光の進行方向をそれぞれ示している。
【0004】
図1を参照するに、従来の光学装置100は、透光性部材支持フレーム101と、透光性部材102と、遮光部材103と、反射防止膜104,105と、ミラー素子108と、気密材109とを有する。
【0005】
透光性部材支持フレーム101は、透光性部材102が装着される装着部112を有する。装着部112は、透光性部材支持フレーム101を貫通するように形成されている。透光性部材支持フレーム101は、透光性部材102を支持するためのものである。
【0006】
透光性部材102は、透光性部材支持フレーム101の装着部112に装着されている。透光性部材102は、ミラー素子108に設けられた複数のミラー114と対向するように配置されている。透光性部材102は、光源111から放出された光を透過させると共に、複数のミラー114により反射された光を光学装置100の外部に放出するための部材である。
【0007】
遮光部材103は、透光性部材102の下面102Bから透光性部材支持フレーム101の下面101Bに亘るように形成されている。遮光部材103は、額縁形状とされており、開口部116を有する。開口部116は、透光性部材102を透過した光を複数のミラー114へ通過させるためのものである。開口部116は、透光性部材102の下面102Bから離間するにつれて幅広となるような形状とされている。開口部116の側面に対応する部分の遮光部材103の形状は、傾斜面117とされている。傾斜面117に対応する部分の遮光部材103は、光源111から放出された光が遮光部材103を介して、ミラー114に到達することを防止するためのものである。遮光部材103の面103A(透光性部材102の下面102Bと接触する遮光部材103の面)に対する遮光部材103の傾斜面117の傾斜角度θXは、所定の角度(例えば、30度)となるように設定されている。この傾斜角度θXが所定の角度と異なる場合、複数のミラー114により反射された光(投影光)で形成される映像の投影枠がぼやけてしまうという問題が発生する。そのため、傾斜角度θXが所定の角度となるように、開口部116を形成することは非常に重要である。
【0008】
遮光部材103は、複数のミラー114により反射された光の反射領域の規制を行うと共に、光源111から放出された光を複数のミラー114に直接照射するためのものである。言い換えれば、遮光部材103は、複数のミラー114により反射された光(投影光)により形成される映像の投影枠として機能すると共に、複数のミラー114に反射された光(投影光)にノイズ(例えば、光の散乱)が発生することを防止するための部材である。
【0009】
遮光部材103としては、例えば、Cr層と、CrxOy層と、Cr層とが順次積層されたCr/CrxOy/Cr積層膜を用いることができる。Cr/CrxOy/Cr積層膜の厚さは、例えば、170μmとすることができる。
【0010】
反射防止膜104は、透光性部材102の上面102Aを覆うように設けられている。反射防止膜104は、光源111から放出された光が透光性部材102の上面102Aで反射されることを防止するための膜である。
【0011】
反射防止膜105は、開口部116に露出された部分の透光性部材102の下面102Bと、遮光部材103とを覆うように設けられている。反射防止膜105は、複数のミラー114により反射された光が透光性部材102の下面102Bで反射されることを防止するための膜である。
【0012】
ミラー素子108は、反射防止膜105を介して、透光性部材支持フレーム101に固定されている。ミラー素子108は、複数のミラー114を有する。ミラー114は、透光性部材102及び反射防止膜104,105を介して、光源111から放出された光を光学装置100の外部に反射するためのものである。ミラー素子108と開口部116の形成領域に対応する部分に設けられた反射防止膜105との間には、空間Lが形成されている。空間Lは、反射防止膜105と接触することなく、複数のミラー108を可動させるための空間である。空間Lは、反射防止膜105とミラー素子108との間に設けられた気密材109により気密されている。
【0013】
図2〜図8は、従来の光学装置の製造工程を示す図である。図2〜図8において、図1に示す従来の光学装置100と同一構成部分には同一符号を付す。
【0014】
図2〜図8を参照して、従来の光学装置100の製造方法について説明する。 始めに、図2に示す工程では、透光性部材支持フレーム101の装着部112に透光性部材102を挿入して、透光性部材支持フレーム101と透光性部材102とを溶着する。
【0015】
次いで、図3に示す工程では、透光性部材支持フレーム101の下面101B及び透光性部材102の下面102Bを覆うようにCr/CrxOy/Cr積層膜119を成膜する。Cr/CrxOy/Cr積層膜119は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法等の方法により形成することができる。
【0016】
次いで、図4に示す工程では、Cr/CrxOy/Cr積層膜119の面119Aに開口部121Aを有したレジスト膜121を形成する。開口部121Aは、先に説明した遮光部材103の開口部116(図1参照)の形成領域に対応する部分のCr/CrxOy/Cr積層膜119の面119Aを露出するように形成する。
【0017】
次いで、図5に示す工程では、レジスト膜121をマスクとして、図4に示す構造体に設けられたCr/CrxOy/Cr積層膜119をエッチングして、開口部116を有した遮光部材103を形成する。
【0018】
次いで、図6に示す工程では、図5に示すレジスト膜121を除去する。次いで、図7に示す工程では、透光性部材102の上面102Aを覆う反射防止膜104と、開口部116に露出された部分の透光性部材102の下面102B及び遮光部材103を覆う反射防止膜105とを形成する。
【0019】
次いで、図8に示す工程では、密着材109及び反射防止膜105にミラー素子108を固定する。これにより、従来の光学装置100が製造される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−145610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来の光学装置100では、透光性部材支持フレーム101の下面101B及び透光性部材102の下面102Bを覆うように成膜したCr/CrxOy/Cr積層膜119をエッチングすることで、開口部116を有した遮光部材103を形成していた。
【0021】
そのため、遮光部材103の傾斜面117と遮光部材103の面103A(透光性部材102の下面102Bと接触する遮光部材103の面)とが成す角度θXを所定の角度(例えば、30度)に制御することが技術的に困難であるという問題があった。また、上記説明した方法を用いて遮光部材103を形成する場合、光学装置100の製造コストが増加してしまうという問題があった。
【0022】
そこで本発明は、遮光部材に形成された開口部の側面に対応する部分の遮光部材の傾斜面の傾斜角度が所定の角度となるように遮光部材を精度良く形成することができると共に、製造コストを低減することのできる光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一観点によれば、光源から放出された光を透過させる透光性部材と、前記透光性部材を透過した光を反射する複数のミラーを有し、前記透光性部材と対向するように配置されたミラー素子と、前記複数のミラーにより反射された光の反射領域の規制を行うと共に、前記透光性部材を透過した光を前記複数のミラーに直接照射するための開口部を有した遮光部材と、を備え、前記開口部の側面に対応する部分の前記遮光部材の形状が傾斜面とされた光学装置の製造方法であって、前記遮光部材の形成領域に対応する部分の前記透光性部材に、前記遮光部材の形状に対応する貫通部を有したマスクを配置するマスク配置工程と、印刷法により、樹脂にCrを含んだ粒子を含有させたCr含有樹脂を前記貫通部に充填するCr含有樹脂充填工程と、前記貫通部に充填された前記Cr含有樹脂を硬化させて、硬化された前記Cr含有樹脂からなる前記遮光部材を形成するCr含有樹脂硬化工程と、前記Cr含有樹脂硬化工程後に、前記マスクを除去するマスク除去工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法が提供される。
【0024】
本発明によれば、遮光部材の形成領域に対応する部分の透光性部材に、遮光部材の形状に対応する貫通部を有したマスクを配置し、次いで、印刷法により、樹脂にCrを含んだ粒子を含有させたCr含有樹脂を貫通部に充填し、その後、貫通部に充填されたCr含有樹脂を硬化させて遮光部材を形成することにより、遮光部材に形成された開口部の側面に対応する部分の遮光部材の傾斜面の傾斜角度が所定の角度となるように遮光部材を精度良く形成することができる。
【0025】
また、マスクを用いた印刷法により遮光部材を形成することにより、マスクを繰り返し使用することが可能となるので、レジスト膜を用いたエッチング法により遮光部材を形成する従来の製造方法と比較して、光学装置の製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、遮光部材に形成された開口部の側面に対応する部分の遮光部材の傾斜面の傾斜角度が所定の角度となるように遮光部材を精度良く形成することができると共に、光学装置の製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
(実施の形態)
図9は、本発明の実施の形態に係る光学装置の断面図である。図9において、Aは光源21から放出された光の進行方向、Bは複数のミラー24により反射された光の進行方向をそれぞれ示している。
【0029】
図9を参照するに、本実施の形態の光学装置10は、透光性部材支持フレーム11と、透光性部材12と、遮光部材13と、反射防止膜14,15と、Ni/Au積層膜17と、ミラー素子18と、気密材19とを有する。
【0030】
透光性部材支持フレーム11は、透光性部材12が装着される装着部22を有する。装着部22は、透光性部材支持フレーム11を貫通するように形成されている。透光性部材支持フレーム11は、透光性部材12を支持するためのものである。透光性部材支持フレーム11の材料としては、例えば、コバール(Cu−Ni−Co合金)を用いることができる。
【0031】
透光性部材12は、透光性部材支持フレーム11の装着部22に溶着されている。透光性部材12は、ミラー素子18に設けられた複数のミラー24と対向するように配置されている。透光性部材12は、光源21から放出された光を透過させると共に、複数のミラー24により反射された光を光学装置10の外部に照射するための部材である。
【0032】
遮光部材13は、透光性部材12の下面12Bから透光性部材支持フレーム11の下面11Bに形成された部分のNi/Au積層膜17の下面に亘るように配設されている。遮光部材13は、額縁形状とされており、開口部26を有する。開口部26は、透光性部材12を透過した光を複数のミラー24へ通過させるためのものである。
【0033】
開口部26は、透光性部材12の下面12Bから離間するにつれて幅広となるような形状とされている。開口部26の側面に対応する部分の遮光部材13の形状は、傾斜面27とされている。傾斜面27に対応する部分の遮光部材13は、光源21から放出された光が遮光部材13を介して、ミラー24に到達することを防止するためのものである。遮光部材13の面13A(透光性部材12の下面12Bと接触する遮光部材13の面)に対する遮光部材13の傾斜面27の傾斜角度θ1は、所定の角度θとなるように設定されている。所定の角度θは、例えば、30度とすることができる。
【0034】
遮光部材13は、複数のミラー24により反射された光の反射領域の規制を行うと共に、光源21から放出された光を複数のミラー24に直接照射するためのものである。言い換えれば、遮光部材13は、複数のミラー24により反射された光(投影光)により形成される映像の投影枠として機能すると共に、複数のミラー24に反射された光(投影光)にノイズ(例えば、光の散乱)が発生することを防止するための部材である。
【0035】
遮光部材13の材料としては、例えば、樹脂にCrを含んだ粒子を含有させたCr含有樹脂を用いることができる。この場合、遮光部材13の厚さM1は、例えば、50μmとすることができる。上記樹脂としては、例えば、ポリイミドシリコーン樹脂を用いることができる。また、Crを含んだ粒子としては、例えば、三価クロムの粒子を用いることができる。Crを含んだ粒子として三価クロムを用いた場合、三価クロムの粒子径は、例えば、1μmとすることができる。また、上記樹脂としてポリイミドシリコーン樹脂を用いた場合、三価クロムの粒子は、例えば、Cr含有樹脂に対して10%〜30%の割合となるように配合するとよい。
【0036】
反射防止膜14は、透光性部材12の上面12Aを覆うと共に、透光性部材12の上面12Aから透光性部材支持フレーム11の上面11Aに形成された部分のNi/Au積層膜17上に亘るように配設されている。反射防止膜14は、光源21から放出された光が透光性部材12の上面12Aで反射されることを防止するための膜である。
【0037】
反射防止膜15は、遮光部材13を覆うように、透光性部材支持フレーム11の下面11Bに形成された部分のNi/Au積層膜17の下面と、開口部26に露出された部分の透光性部材12の下面12Bとに設けられている。反射防止膜15は、複数のミラー24により反射された光が透光性部材12の下面12Bで反射されることを防止するための膜である。
【0038】
Ni/Au層17は、透光性部材支持フレーム11の上面11Aと、透光性部材支持フレーム11の下面11Bと、透光性部材支持フレーム11の側面11Cとを覆うように設けられている。Ni/Au層17は、透光性部材支持フレーム11に設けられたNi層と、Ni層上に設けられたAu層とから構成されている。Ni層の厚さは、例えば、7μmとすることができる。また、Au層の厚さは、例えば、5μmとすることができる。Ni/Au層17は、透光性部材支持フレーム11と反射防止膜14,15との間の密着性を向上させるためのものである。
【0039】
ミラー素子18は、反射防止膜15を介して、透光性部材支持フレーム11に固定されている。ミラー素子18は、複数のミラー24を有する。複数のミラー24は、透光性部材12及び反射防止膜14,15を介して、光源21から放出された光を光学装置10の外部に反射するためのものである。開口部26により露出された部分の透光性部材12の下面12Bに設けられた反射防止膜15とミラー素子18との間には、空間Cが形成されている。空間Cは、反射防止膜15と接触することなく、複数のミラー24を可動させるための空間である。空間Cは、反射防止膜15とミラー素子18との間に設けられた気密材19により気密されている。気密材19の材料としては、例えば、セラミックの粉末を樹脂で固めたものを用いることができる。ミラー素子18としては、例えば、デジタル・マイクロミラー・デバイス(米国テキサス・インスツルメンツ社の登録商標)を用いることができる。
【0040】
図10〜図17は、本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図である。図10〜図17において、本実施の形態の光学装置10と同一構成部分には同一符号を付す。
【0041】
図10〜図17を参照して、本実施の形態の光学装置10の製造方法について説明する。始めに、図10に示す工程では、透光性部材支持フレーム11の装着部22に透光性部材12を溶着する。次いで、図11に示す工程では、透光性部材支持フレーム11の上面11A、透光性部材支持フレーム11の下面11B、及び透光性部材支持フレーム11の側面11Cを覆うようにNi/Au層17を形成する。具体的には、例えば、透光性部材支持フレーム11を給電層とする電解めっき法により、Ni/Au層17を形成する。
【0042】
次いで、図12に示す工程では、遮光部材13の形状に対応する貫通部33を有したマスク32を透光性部材支持フレーム11の下面11B側に設けられたNi/Au層17の下面及び透光性部材12の下面12Bに配置する(マスク配置工程)。貫通部33は、額縁形状とされている。貫通部33の内側面に対応する部分のマスク32の形状は、傾斜面32Aとされている。この傾斜面32Aは、遮光部材13の傾斜面27を形成するための面である。マスク32の傾斜面32Aと透光性部材12の下面12Bとが成す角度θ2は、遮光部材13の傾斜面27の傾斜角度θ1の値と略等しくなるように設定されている。具体的には、角度θ2は、例えば、30度とすることができる。
【0043】
次いで、図13に示す工程では、印刷法により、樹脂にCrを含んだ粒子を含有させたCr含有樹脂35をマスク32の貫通部33に充填する(Cr含有樹脂充填工程)。印刷法としては、例えば、スキージ36を用いたスキージ印刷法を用いることができる。Cr含有樹脂35を構成する樹脂としては、例えば、ポリイミドシリコーン樹脂を用いることができる。また、Crを含んだ粒子としては、例えば、三価クロムの粒子を用いることができる。Crを含んだ粒子として三価クロムを用いた場合、三価クロムの粒子径は、例えば、1μmとすることができる。また、上記樹脂としてポリイミドシリコーン樹脂を用いた場合、三価クロムの粒子は、例えば、Cr含有樹脂35に対して10%〜30%の割合となるように配合するとよい。Cr含有樹脂35の厚さM2は、例えば、50μmとすることができる。
【0044】
次いで、図14に示す工程では、貫通部33に充填されたCr含有樹脂35を硬化させて、貫通部33に遮光部材13を形成する(Cr含有樹脂硬化工程)。具体的には、例えば、Cr含有樹脂35が熱硬化性樹脂の場合、図13に示す構造体(スキージ36及び貫通部33以外に存在する余分なCr含有樹脂35を除く)を加熱して、貫通部33に充填されたCr含有樹脂35を硬化させる。遮光部材13の厚さM1は、例えば、50μmとすることができる。また、遮光部材13の面13A(透光性部材12の下面12Bと接触する遮光部材13の面)に対する遮光部材13の傾斜面27の傾斜角度θ1は、例えば、30度(所定の角度θ)とすることができる。
【0045】
このように、透光性部材支持フレーム11の下面11B側に設けられたNi/Au層17の下面及び透光性部材12の下面12Bに、遮光部材13の形状に対応する貫通部33を有したマスク32を配置し、次いで、印刷法により、貫通部33にCr含有樹脂35を充填し、その後、貫通部33に充填されたCr含有樹脂35を硬化させて遮光部材13を形成することにより、遮光部材13の傾斜面27の傾斜角度θ1が所定の角度θとなるように遮光部材13を精度良く形成することができる。
【0046】
また、マスク32を用いた印刷法により遮光部材13を形成することにより、マスク32を繰り返し使用することが可能となるので、レジスト膜121を用いたエッチング法により遮光部材103を形成する従来の製造方法(図2〜図6参照)と比較して、光学装置10の製造コストを低減することができる。
【0047】
次いで、図15に示す工程では、図14に示すマスク32を透光性部材支持フレーム11及び透光性部材12から取り外す(マスク除去工程)。
【0048】
次いで、図16に示す工程では、周知の手法により、反射防止膜14,15を形成する(反射防止膜形成工程)。反射防止膜14は、透光性部材12の上面12Aを覆うと共に、透光性部材12の上面12Aから透光性部材支持フレーム11の上面11Aに形成された部分のNi/Au積層膜17上に亘るように形成する。このような反射防止膜14を形成することにより、光源21から放出された光が透光性部材12の上面12Aで反射されることを防止することができる。
【0049】
反射防止膜14としては、例えば、透光性部材12の上面12AにSiO2膜(厚さ90nm)、Al2O3膜(厚さ80nm)、LaTiO2膜(厚さ110nm)、及びMgF2膜(厚さ80nm)を順次積層したSiO2/Al2O3/LaTiO2/MgF2積層膜を用いることができる
反射防止膜15は、遮光部材13を覆うように、透光性部材支持フレーム11の下面11Bに形成された部分のNi/Au積層膜17の下面と、開口部26に露出された部分の透光性部材12の下面12Bとに形成する。このような反射防止膜15を形成することにより、複数のミラー24により反射された光が透光性部材12の下面12Bで反射されることを防止できる。
【0050】
反射防止膜15としては、例えば、透光性部材12の下面12BにSiO2膜(厚さ90nm)、Al2O3膜(厚さ80nm)、LaTiO2膜(厚さ110nm)、及びMgF2膜(厚さ80nm)を順次積層したSiO2/Al2O3/LaTiO2/MgF2積層膜を用いることができる。反射防止膜14,15は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法等の方法により形成することができる。
【0051】
次いで、図17に示す工程では、反射防止膜15及び気密材19を介して、ミラー素子18を透光性部材支持フレーム11に固定する。これにより、本実施の形態の光学装置10が製造される。
【0052】
本実施の形態の光学装置の製造方法によれば、透光性部材支持フレーム11の下面11B側に設けられたNi/Au層17の下面及び透光性部材12の下面12Bに、遮光部材13の形状に対応する貫通部33を有したマスク32を配置し、次いで、印刷法により、貫通部33にCr含有樹脂35を充填し、その後、貫通部33に充填されたCr含有樹脂35を硬化させて遮光部材13を形成することにより、遮光部材13の傾斜面27の傾斜角度θ1が所定の角度θとなるように遮光部材13を精度良く形成することができる。
【0053】
また、マスク32を用いた印刷法により遮光部材13を形成することにより、マスク32を繰り返し使用することが可能となるので、レジスト膜121を用いたエッチング法により遮光部材103を形成する従来の製造方法(図2〜図6参照)と比較して、光学装置10の製造コストを低減することができる。
【0054】
なお、本実施の形態の光学装置10では、透過性部材12の下面12B側に遮光部材13を設けた場合を例に挙げて説明したが、上記製造方法と同様な手法を用いて、透過性部材12の上面12B側に遮光部材13を形成してもよい。また、反射防止膜14,15を形成後に、上記製造方法と同様な手法を用いて、反射防止膜14,15に遮光部材13を形成してもよい。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、プロジェクタ、光スイッチ、バーコード、コピー機等に内蔵される光学装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来の光学装置の断面図である。
【図2】従来の光学装置の製造工程を示す図(その1)である。
【図3】従来の光学装置の製造工程を示す図(その2)である。
【図4】従来の光学装置の製造工程を示す図(その3)である。
【図5】従来の光学装置の製造工程を示す図(その4)である。
【図6】従来の光学装置の製造工程を示す図(その5)である。
【図7】従来の光学装置の製造工程を示す図(その6)である。
【図8】従来の光学装置の製造工程を示す図(その7)である。
【図9】本発明の実施の形態に係る光学装置の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その1)である。
【図11】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その2)である。
【図12】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その3)である。
【図13】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その4)である。
【図14】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その5)である。
【図15】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その6)である。
【図16】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その7)である。
【図17】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その8)である。
【符号の説明】
【0058】
10 光学装置
11 透光性部材支持フレーム
11A,12A 上面
11B,12B 下面
11C 側面
12 透光性部材
13 遮光部材
13A 面
14,15 反射防止膜
17 Ni/Au積層膜
18 ミラー素子
19 気密材
21 光源
22 装着部
24 ミラー
26 開口部
27,32A 傾斜面
32 マスク
33 貫通部
35 Cr含有樹脂
36 スキージ
C 空間
M1,M2 厚さ
θ 所定の角度
θ1 傾斜角度
θ2 角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置に係り、特にプロジェクタ、光スイッチ、バーコード、コピー機等に適用される光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プロジェクタ、光スイッチ、バーコード、コピー機等の装置には、図1に示すような光学装置100が内蔵されている。
【0003】
図1は、従来の光学装置の断面図である。図1において、Jは光源111から放出された光の進行方向、Kはミラー114により反射された光の進行方向をそれぞれ示している。
【0004】
図1を参照するに、従来の光学装置100は、透光性部材支持フレーム101と、透光性部材102と、遮光部材103と、反射防止膜104,105と、ミラー素子108と、気密材109とを有する。
【0005】
透光性部材支持フレーム101は、透光性部材102が装着される装着部112を有する。装着部112は、透光性部材支持フレーム101を貫通するように形成されている。透光性部材支持フレーム101は、透光性部材102を支持するためのものである。
【0006】
透光性部材102は、透光性部材支持フレーム101の装着部112に装着されている。透光性部材102は、ミラー素子108に設けられた複数のミラー114と対向するように配置されている。透光性部材102は、光源111から放出された光を透過させると共に、複数のミラー114により反射された光を光学装置100の外部に放出するための部材である。
【0007】
遮光部材103は、透光性部材102の下面102Bから透光性部材支持フレーム101の下面101Bに亘るように形成されている。遮光部材103は、額縁形状とされており、開口部116を有する。開口部116は、透光性部材102を透過した光を複数のミラー114へ通過させるためのものである。開口部116は、透光性部材102の下面102Bから離間するにつれて幅広となるような形状とされている。開口部116の側面に対応する部分の遮光部材103の形状は、傾斜面117とされている。傾斜面117に対応する部分の遮光部材103は、光源111から放出された光が遮光部材103を介して、ミラー114に到達することを防止するためのものである。遮光部材103の面103A(透光性部材102の下面102Bと接触する遮光部材103の面)に対する遮光部材103の傾斜面117の傾斜角度θXは、所定の角度(例えば、30度)となるように設定されている。この傾斜角度θXが所定の角度と異なる場合、複数のミラー114により反射された光(投影光)で形成される映像の投影枠がぼやけてしまうという問題が発生する。そのため、傾斜角度θXが所定の角度となるように、開口部116を形成することは非常に重要である。
【0008】
遮光部材103は、複数のミラー114により反射された光の反射領域の規制を行うと共に、光源111から放出された光を複数のミラー114に直接照射するためのものである。言い換えれば、遮光部材103は、複数のミラー114により反射された光(投影光)により形成される映像の投影枠として機能すると共に、複数のミラー114に反射された光(投影光)にノイズ(例えば、光の散乱)が発生することを防止するための部材である。
【0009】
遮光部材103としては、例えば、Cr層と、CrxOy層と、Cr層とが順次積層されたCr/CrxOy/Cr積層膜を用いることができる。Cr/CrxOy/Cr積層膜の厚さは、例えば、170μmとすることができる。
【0010】
反射防止膜104は、透光性部材102の上面102Aを覆うように設けられている。反射防止膜104は、光源111から放出された光が透光性部材102の上面102Aで反射されることを防止するための膜である。
【0011】
反射防止膜105は、開口部116に露出された部分の透光性部材102の下面102Bと、遮光部材103とを覆うように設けられている。反射防止膜105は、複数のミラー114により反射された光が透光性部材102の下面102Bで反射されることを防止するための膜である。
【0012】
ミラー素子108は、反射防止膜105を介して、透光性部材支持フレーム101に固定されている。ミラー素子108は、複数のミラー114を有する。ミラー114は、透光性部材102及び反射防止膜104,105を介して、光源111から放出された光を光学装置100の外部に反射するためのものである。ミラー素子108と開口部116の形成領域に対応する部分に設けられた反射防止膜105との間には、空間Lが形成されている。空間Lは、反射防止膜105と接触することなく、複数のミラー108を可動させるための空間である。空間Lは、反射防止膜105とミラー素子108との間に設けられた気密材109により気密されている。
【0013】
図2〜図8は、従来の光学装置の製造工程を示す図である。図2〜図8において、図1に示す従来の光学装置100と同一構成部分には同一符号を付す。
【0014】
図2〜図8を参照して、従来の光学装置100の製造方法について説明する。 始めに、図2に示す工程では、透光性部材支持フレーム101の装着部112に透光性部材102を挿入して、透光性部材支持フレーム101と透光性部材102とを溶着する。
【0015】
次いで、図3に示す工程では、透光性部材支持フレーム101の下面101B及び透光性部材102の下面102Bを覆うようにCr/CrxOy/Cr積層膜119を成膜する。Cr/CrxOy/Cr積層膜119は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法等の方法により形成することができる。
【0016】
次いで、図4に示す工程では、Cr/CrxOy/Cr積層膜119の面119Aに開口部121Aを有したレジスト膜121を形成する。開口部121Aは、先に説明した遮光部材103の開口部116(図1参照)の形成領域に対応する部分のCr/CrxOy/Cr積層膜119の面119Aを露出するように形成する。
【0017】
次いで、図5に示す工程では、レジスト膜121をマスクとして、図4に示す構造体に設けられたCr/CrxOy/Cr積層膜119をエッチングして、開口部116を有した遮光部材103を形成する。
【0018】
次いで、図6に示す工程では、図5に示すレジスト膜121を除去する。次いで、図7に示す工程では、透光性部材102の上面102Aを覆う反射防止膜104と、開口部116に露出された部分の透光性部材102の下面102B及び遮光部材103を覆う反射防止膜105とを形成する。
【0019】
次いで、図8に示す工程では、密着材109及び反射防止膜105にミラー素子108を固定する。これにより、従来の光学装置100が製造される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−145610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来の光学装置100では、透光性部材支持フレーム101の下面101B及び透光性部材102の下面102Bを覆うように成膜したCr/CrxOy/Cr積層膜119をエッチングすることで、開口部116を有した遮光部材103を形成していた。
【0021】
そのため、遮光部材103の傾斜面117と遮光部材103の面103A(透光性部材102の下面102Bと接触する遮光部材103の面)とが成す角度θXを所定の角度(例えば、30度)に制御することが技術的に困難であるという問題があった。また、上記説明した方法を用いて遮光部材103を形成する場合、光学装置100の製造コストが増加してしまうという問題があった。
【0022】
そこで本発明は、遮光部材に形成された開口部の側面に対応する部分の遮光部材の傾斜面の傾斜角度が所定の角度となるように遮光部材を精度良く形成することができると共に、製造コストを低減することのできる光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一観点によれば、光源から放出された光を透過させる透光性部材と、前記透光性部材を透過した光を反射する複数のミラーを有し、前記透光性部材と対向するように配置されたミラー素子と、前記複数のミラーにより反射された光の反射領域の規制を行うと共に、前記透光性部材を透過した光を前記複数のミラーに直接照射するための開口部を有した遮光部材と、を備え、前記開口部の側面に対応する部分の前記遮光部材の形状が傾斜面とされた光学装置の製造方法であって、前記遮光部材の形成領域に対応する部分の前記透光性部材に、前記遮光部材の形状に対応する貫通部を有したマスクを配置するマスク配置工程と、印刷法により、樹脂にCrを含んだ粒子を含有させたCr含有樹脂を前記貫通部に充填するCr含有樹脂充填工程と、前記貫通部に充填された前記Cr含有樹脂を硬化させて、硬化された前記Cr含有樹脂からなる前記遮光部材を形成するCr含有樹脂硬化工程と、前記Cr含有樹脂硬化工程後に、前記マスクを除去するマスク除去工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法が提供される。
【0024】
本発明によれば、遮光部材の形成領域に対応する部分の透光性部材に、遮光部材の形状に対応する貫通部を有したマスクを配置し、次いで、印刷法により、樹脂にCrを含んだ粒子を含有させたCr含有樹脂を貫通部に充填し、その後、貫通部に充填されたCr含有樹脂を硬化させて遮光部材を形成することにより、遮光部材に形成された開口部の側面に対応する部分の遮光部材の傾斜面の傾斜角度が所定の角度となるように遮光部材を精度良く形成することができる。
【0025】
また、マスクを用いた印刷法により遮光部材を形成することにより、マスクを繰り返し使用することが可能となるので、レジスト膜を用いたエッチング法により遮光部材を形成する従来の製造方法と比較して、光学装置の製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、遮光部材に形成された開口部の側面に対応する部分の遮光部材の傾斜面の傾斜角度が所定の角度となるように遮光部材を精度良く形成することができると共に、光学装置の製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
(実施の形態)
図9は、本発明の実施の形態に係る光学装置の断面図である。図9において、Aは光源21から放出された光の進行方向、Bは複数のミラー24により反射された光の進行方向をそれぞれ示している。
【0029】
図9を参照するに、本実施の形態の光学装置10は、透光性部材支持フレーム11と、透光性部材12と、遮光部材13と、反射防止膜14,15と、Ni/Au積層膜17と、ミラー素子18と、気密材19とを有する。
【0030】
透光性部材支持フレーム11は、透光性部材12が装着される装着部22を有する。装着部22は、透光性部材支持フレーム11を貫通するように形成されている。透光性部材支持フレーム11は、透光性部材12を支持するためのものである。透光性部材支持フレーム11の材料としては、例えば、コバール(Cu−Ni−Co合金)を用いることができる。
【0031】
透光性部材12は、透光性部材支持フレーム11の装着部22に溶着されている。透光性部材12は、ミラー素子18に設けられた複数のミラー24と対向するように配置されている。透光性部材12は、光源21から放出された光を透過させると共に、複数のミラー24により反射された光を光学装置10の外部に照射するための部材である。
【0032】
遮光部材13は、透光性部材12の下面12Bから透光性部材支持フレーム11の下面11Bに形成された部分のNi/Au積層膜17の下面に亘るように配設されている。遮光部材13は、額縁形状とされており、開口部26を有する。開口部26は、透光性部材12を透過した光を複数のミラー24へ通過させるためのものである。
【0033】
開口部26は、透光性部材12の下面12Bから離間するにつれて幅広となるような形状とされている。開口部26の側面に対応する部分の遮光部材13の形状は、傾斜面27とされている。傾斜面27に対応する部分の遮光部材13は、光源21から放出された光が遮光部材13を介して、ミラー24に到達することを防止するためのものである。遮光部材13の面13A(透光性部材12の下面12Bと接触する遮光部材13の面)に対する遮光部材13の傾斜面27の傾斜角度θ1は、所定の角度θとなるように設定されている。所定の角度θは、例えば、30度とすることができる。
【0034】
遮光部材13は、複数のミラー24により反射された光の反射領域の規制を行うと共に、光源21から放出された光を複数のミラー24に直接照射するためのものである。言い換えれば、遮光部材13は、複数のミラー24により反射された光(投影光)により形成される映像の投影枠として機能すると共に、複数のミラー24に反射された光(投影光)にノイズ(例えば、光の散乱)が発生することを防止するための部材である。
【0035】
遮光部材13の材料としては、例えば、樹脂にCrを含んだ粒子を含有させたCr含有樹脂を用いることができる。この場合、遮光部材13の厚さM1は、例えば、50μmとすることができる。上記樹脂としては、例えば、ポリイミドシリコーン樹脂を用いることができる。また、Crを含んだ粒子としては、例えば、三価クロムの粒子を用いることができる。Crを含んだ粒子として三価クロムを用いた場合、三価クロムの粒子径は、例えば、1μmとすることができる。また、上記樹脂としてポリイミドシリコーン樹脂を用いた場合、三価クロムの粒子は、例えば、Cr含有樹脂に対して10%〜30%の割合となるように配合するとよい。
【0036】
反射防止膜14は、透光性部材12の上面12Aを覆うと共に、透光性部材12の上面12Aから透光性部材支持フレーム11の上面11Aに形成された部分のNi/Au積層膜17上に亘るように配設されている。反射防止膜14は、光源21から放出された光が透光性部材12の上面12Aで反射されることを防止するための膜である。
【0037】
反射防止膜15は、遮光部材13を覆うように、透光性部材支持フレーム11の下面11Bに形成された部分のNi/Au積層膜17の下面と、開口部26に露出された部分の透光性部材12の下面12Bとに設けられている。反射防止膜15は、複数のミラー24により反射された光が透光性部材12の下面12Bで反射されることを防止するための膜である。
【0038】
Ni/Au層17は、透光性部材支持フレーム11の上面11Aと、透光性部材支持フレーム11の下面11Bと、透光性部材支持フレーム11の側面11Cとを覆うように設けられている。Ni/Au層17は、透光性部材支持フレーム11に設けられたNi層と、Ni層上に設けられたAu層とから構成されている。Ni層の厚さは、例えば、7μmとすることができる。また、Au層の厚さは、例えば、5μmとすることができる。Ni/Au層17は、透光性部材支持フレーム11と反射防止膜14,15との間の密着性を向上させるためのものである。
【0039】
ミラー素子18は、反射防止膜15を介して、透光性部材支持フレーム11に固定されている。ミラー素子18は、複数のミラー24を有する。複数のミラー24は、透光性部材12及び反射防止膜14,15を介して、光源21から放出された光を光学装置10の外部に反射するためのものである。開口部26により露出された部分の透光性部材12の下面12Bに設けられた反射防止膜15とミラー素子18との間には、空間Cが形成されている。空間Cは、反射防止膜15と接触することなく、複数のミラー24を可動させるための空間である。空間Cは、反射防止膜15とミラー素子18との間に設けられた気密材19により気密されている。気密材19の材料としては、例えば、セラミックの粉末を樹脂で固めたものを用いることができる。ミラー素子18としては、例えば、デジタル・マイクロミラー・デバイス(米国テキサス・インスツルメンツ社の登録商標)を用いることができる。
【0040】
図10〜図17は、本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図である。図10〜図17において、本実施の形態の光学装置10と同一構成部分には同一符号を付す。
【0041】
図10〜図17を参照して、本実施の形態の光学装置10の製造方法について説明する。始めに、図10に示す工程では、透光性部材支持フレーム11の装着部22に透光性部材12を溶着する。次いで、図11に示す工程では、透光性部材支持フレーム11の上面11A、透光性部材支持フレーム11の下面11B、及び透光性部材支持フレーム11の側面11Cを覆うようにNi/Au層17を形成する。具体的には、例えば、透光性部材支持フレーム11を給電層とする電解めっき法により、Ni/Au層17を形成する。
【0042】
次いで、図12に示す工程では、遮光部材13の形状に対応する貫通部33を有したマスク32を透光性部材支持フレーム11の下面11B側に設けられたNi/Au層17の下面及び透光性部材12の下面12Bに配置する(マスク配置工程)。貫通部33は、額縁形状とされている。貫通部33の内側面に対応する部分のマスク32の形状は、傾斜面32Aとされている。この傾斜面32Aは、遮光部材13の傾斜面27を形成するための面である。マスク32の傾斜面32Aと透光性部材12の下面12Bとが成す角度θ2は、遮光部材13の傾斜面27の傾斜角度θ1の値と略等しくなるように設定されている。具体的には、角度θ2は、例えば、30度とすることができる。
【0043】
次いで、図13に示す工程では、印刷法により、樹脂にCrを含んだ粒子を含有させたCr含有樹脂35をマスク32の貫通部33に充填する(Cr含有樹脂充填工程)。印刷法としては、例えば、スキージ36を用いたスキージ印刷法を用いることができる。Cr含有樹脂35を構成する樹脂としては、例えば、ポリイミドシリコーン樹脂を用いることができる。また、Crを含んだ粒子としては、例えば、三価クロムの粒子を用いることができる。Crを含んだ粒子として三価クロムを用いた場合、三価クロムの粒子径は、例えば、1μmとすることができる。また、上記樹脂としてポリイミドシリコーン樹脂を用いた場合、三価クロムの粒子は、例えば、Cr含有樹脂35に対して10%〜30%の割合となるように配合するとよい。Cr含有樹脂35の厚さM2は、例えば、50μmとすることができる。
【0044】
次いで、図14に示す工程では、貫通部33に充填されたCr含有樹脂35を硬化させて、貫通部33に遮光部材13を形成する(Cr含有樹脂硬化工程)。具体的には、例えば、Cr含有樹脂35が熱硬化性樹脂の場合、図13に示す構造体(スキージ36及び貫通部33以外に存在する余分なCr含有樹脂35を除く)を加熱して、貫通部33に充填されたCr含有樹脂35を硬化させる。遮光部材13の厚さM1は、例えば、50μmとすることができる。また、遮光部材13の面13A(透光性部材12の下面12Bと接触する遮光部材13の面)に対する遮光部材13の傾斜面27の傾斜角度θ1は、例えば、30度(所定の角度θ)とすることができる。
【0045】
このように、透光性部材支持フレーム11の下面11B側に設けられたNi/Au層17の下面及び透光性部材12の下面12Bに、遮光部材13の形状に対応する貫通部33を有したマスク32を配置し、次いで、印刷法により、貫通部33にCr含有樹脂35を充填し、その後、貫通部33に充填されたCr含有樹脂35を硬化させて遮光部材13を形成することにより、遮光部材13の傾斜面27の傾斜角度θ1が所定の角度θとなるように遮光部材13を精度良く形成することができる。
【0046】
また、マスク32を用いた印刷法により遮光部材13を形成することにより、マスク32を繰り返し使用することが可能となるので、レジスト膜121を用いたエッチング法により遮光部材103を形成する従来の製造方法(図2〜図6参照)と比較して、光学装置10の製造コストを低減することができる。
【0047】
次いで、図15に示す工程では、図14に示すマスク32を透光性部材支持フレーム11及び透光性部材12から取り外す(マスク除去工程)。
【0048】
次いで、図16に示す工程では、周知の手法により、反射防止膜14,15を形成する(反射防止膜形成工程)。反射防止膜14は、透光性部材12の上面12Aを覆うと共に、透光性部材12の上面12Aから透光性部材支持フレーム11の上面11Aに形成された部分のNi/Au積層膜17上に亘るように形成する。このような反射防止膜14を形成することにより、光源21から放出された光が透光性部材12の上面12Aで反射されることを防止することができる。
【0049】
反射防止膜14としては、例えば、透光性部材12の上面12AにSiO2膜(厚さ90nm)、Al2O3膜(厚さ80nm)、LaTiO2膜(厚さ110nm)、及びMgF2膜(厚さ80nm)を順次積層したSiO2/Al2O3/LaTiO2/MgF2積層膜を用いることができる
反射防止膜15は、遮光部材13を覆うように、透光性部材支持フレーム11の下面11Bに形成された部分のNi/Au積層膜17の下面と、開口部26に露出された部分の透光性部材12の下面12Bとに形成する。このような反射防止膜15を形成することにより、複数のミラー24により反射された光が透光性部材12の下面12Bで反射されることを防止できる。
【0050】
反射防止膜15としては、例えば、透光性部材12の下面12BにSiO2膜(厚さ90nm)、Al2O3膜(厚さ80nm)、LaTiO2膜(厚さ110nm)、及びMgF2膜(厚さ80nm)を順次積層したSiO2/Al2O3/LaTiO2/MgF2積層膜を用いることができる。反射防止膜14,15は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法等の方法により形成することができる。
【0051】
次いで、図17に示す工程では、反射防止膜15及び気密材19を介して、ミラー素子18を透光性部材支持フレーム11に固定する。これにより、本実施の形態の光学装置10が製造される。
【0052】
本実施の形態の光学装置の製造方法によれば、透光性部材支持フレーム11の下面11B側に設けられたNi/Au層17の下面及び透光性部材12の下面12Bに、遮光部材13の形状に対応する貫通部33を有したマスク32を配置し、次いで、印刷法により、貫通部33にCr含有樹脂35を充填し、その後、貫通部33に充填されたCr含有樹脂35を硬化させて遮光部材13を形成することにより、遮光部材13の傾斜面27の傾斜角度θ1が所定の角度θとなるように遮光部材13を精度良く形成することができる。
【0053】
また、マスク32を用いた印刷法により遮光部材13を形成することにより、マスク32を繰り返し使用することが可能となるので、レジスト膜121を用いたエッチング法により遮光部材103を形成する従来の製造方法(図2〜図6参照)と比較して、光学装置10の製造コストを低減することができる。
【0054】
なお、本実施の形態の光学装置10では、透過性部材12の下面12B側に遮光部材13を設けた場合を例に挙げて説明したが、上記製造方法と同様な手法を用いて、透過性部材12の上面12B側に遮光部材13を形成してもよい。また、反射防止膜14,15を形成後に、上記製造方法と同様な手法を用いて、反射防止膜14,15に遮光部材13を形成してもよい。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、プロジェクタ、光スイッチ、バーコード、コピー機等に内蔵される光学装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来の光学装置の断面図である。
【図2】従来の光学装置の製造工程を示す図(その1)である。
【図3】従来の光学装置の製造工程を示す図(その2)である。
【図4】従来の光学装置の製造工程を示す図(その3)である。
【図5】従来の光学装置の製造工程を示す図(その4)である。
【図6】従来の光学装置の製造工程を示す図(その5)である。
【図7】従来の光学装置の製造工程を示す図(その6)である。
【図8】従来の光学装置の製造工程を示す図(その7)である。
【図9】本発明の実施の形態に係る光学装置の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その1)である。
【図11】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その2)である。
【図12】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その3)である。
【図13】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その4)である。
【図14】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その5)である。
【図15】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その6)である。
【図16】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その7)である。
【図17】本発明の実施の形態に係る光学装置の製造工程を示す図(その8)である。
【符号の説明】
【0058】
10 光学装置
11 透光性部材支持フレーム
11A,12A 上面
11B,12B 下面
11C 側面
12 透光性部材
13 遮光部材
13A 面
14,15 反射防止膜
17 Ni/Au積層膜
18 ミラー素子
19 気密材
21 光源
22 装着部
24 ミラー
26 開口部
27,32A 傾斜面
32 マスク
33 貫通部
35 Cr含有樹脂
36 スキージ
C 空間
M1,M2 厚さ
θ 所定の角度
θ1 傾斜角度
θ2 角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から放出された光を透過させる透光性部材と、前記透光性部材を透過した光を反射する複数のミラーを有し、前記透光性部材と対向するように配置されたミラー素子と、前記複数のミラーにより反射された光の反射領域の規制を行うと共に、前記透光性部材を透過した光を前記複数のミラーに直接照射するための開口部を有した遮光部材と、を備え、
前記開口部の側面に対応する部分の前記遮光部材の形状が傾斜面とされた光学装置の製造方法であって、
前記遮光部材の形成領域に対応する部分の前記透光性部材に、前記遮光部材の形状に対応する貫通部を有したマスクを配置するマスク配置工程と、
印刷法により、樹脂にCrを含んだ粒子を含有させたCr含有樹脂を前記貫通部に充填するCr含有樹脂充填工程と、
前記貫通部に充填された前記Cr含有樹脂を硬化させて、硬化された前記Cr含有樹脂からなる前記遮光部材を形成するCr含有樹脂硬化工程と、
前記Cr含有樹脂硬化工程後に、前記マスクを除去するマスク除去工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記光源から放出された光が入射する前記透光性部材の面と、前記ミラー素子と対向する前記透光性部材の面とを覆うように反射防止膜を形成する反射防止膜形成工程をさらに設けたことを特徴とする請求項1記載の光学装置の製造方法。
【請求項1】
光源から放出された光を透過させる透光性部材と、前記透光性部材を透過した光を反射する複数のミラーを有し、前記透光性部材と対向するように配置されたミラー素子と、前記複数のミラーにより反射された光の反射領域の規制を行うと共に、前記透光性部材を透過した光を前記複数のミラーに直接照射するための開口部を有した遮光部材と、を備え、
前記開口部の側面に対応する部分の前記遮光部材の形状が傾斜面とされた光学装置の製造方法であって、
前記遮光部材の形成領域に対応する部分の前記透光性部材に、前記遮光部材の形状に対応する貫通部を有したマスクを配置するマスク配置工程と、
印刷法により、樹脂にCrを含んだ粒子を含有させたCr含有樹脂を前記貫通部に充填するCr含有樹脂充填工程と、
前記貫通部に充填された前記Cr含有樹脂を硬化させて、硬化された前記Cr含有樹脂からなる前記遮光部材を形成するCr含有樹脂硬化工程と、
前記Cr含有樹脂硬化工程後に、前記マスクを除去するマスク除去工程と、を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記光源から放出された光が入射する前記透光性部材の面と、前記ミラー素子と対向する前記透光性部材の面とを覆うように反射防止膜を形成する反射防止膜形成工程をさらに設けたことを特徴とする請求項1記載の光学装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−275772(P2008−275772A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117213(P2007−117213)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
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