説明

光学装置

【課題】色むら補正情報として記憶するデータ量を削減できる光学装置を提供する。
【解決手段】光学素子の変位位置および画像の階調もしくは明るさのレベル位置の内、一方の位置を基準位置に固定したときの他方の位置変化に伴う色むら補正情報を記憶する第1記憶手段と、一方の基準位置に対して一方の異なる位置における相対的な色むら補正情報を記憶する第2記憶手段と、第2記憶手段に記憶される相対的な色むら補正情報と第1記憶手段に記憶される色むら補正情報とに基づいて前記色むら補正回路へ入力する色むら補正情報を算出する算出手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の色むらを補正する色むら補正回路を備えた光学装置に関する。特に、変位可能な光学素子を備え、表示素子に表示される画像を投影する、または撮像素子へ画像を結像する光学系を有するプロジェクタや、カメラもしくはビデオカメラなどの光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像を投影するプロジェクタとして、ズーム位置に対応して色むら補正量を変化させる技術が提案されている。即ち、特許文献1では、画像信号に対応した投射画像をスクリーン上に形成するズーム機能付き投射レンズを有するプロジェクタにおいて、検出されるズーム状態に基づき、画像信号に対して色むら補正を施す色むら補正手段を有することが提案されている。
【0003】
また、特許文献2では、画像を投影するプロジェクタにおいて、表示素子である液晶パネルの各画素位置での階調に応じた色むら補正が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−28889号公報
【特許文献2】特開2009−288713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ズームに応じた複数の色むら補正量から現在のサイズに応じた色むら補正データを作成することについて開示されているが、特定ズーム位置に応じて色むら補正に関する全体情報を持つ必要がある。そのため、従来に比べ比較的効率が向上しているものの、まだメモリー効率が非効率であり、実装に際しては大幅なコストアップが避けられない。
【0006】
また、特許文献2では、液晶パネルの各画素位置での階調に応じた色むら補正を開示しているが、階調ならびにズームに応じた色むら補正を行おうとすると、多大なデータを蓄積する必要が考えられ、更なる改善が望まれる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、色むら補正情報として記憶するデータ量を削減できる光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、
画像を表示する表示素子または画像を撮像する撮像素子と、変位可能な光学素子を備え、前記表示素子を用いる場合は前記表示素子に表示される画像を投影する、または前記撮像素子を用いる場合は前記撮像素子へ画像を結像する光学系と、前記光学系の色むらを補正するために前記表示素子または前記撮像素子に入力される駆動信号を補正する色むら補正回路と、を有する光学装置であって、前記光学素子の変位位置および画像の階調もしくは明るさのレベル位置の内、一方の位置を基準位置に固定したときの他方の位置変化に伴う色むら補正情報を記憶する第1記憶手段と、前記一方の前記基準位置に対して前記一方の異なる位置における相対的な色むら補正情報を記憶する第2記憶手段と、前記第2記憶手段に記憶される相対的な色むら補正情報と前記第1記憶手段に記憶される色むら補正情報とに基づいて前記色むら補正回路へ入力する色むら補正情報を算出する算出手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、色むら補正情報として記憶するデータ量を削減できる光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるブロック図である。
【図2】第1の実施形態におけるフローチャート図である。
【図3】第1の実施形態におけるVT特性を示す図である。
【図4】第1の実施形態における、色むら補正プレーン内の色むら補正ポイントを示す図である。
【図5】第1の実施形態における、色むら補正プレーン配置を示す図である。
【図6】第1の実施形態における、テレ端での階調に応じた色むら補正量(第1の色むら補正量)を示す図である。
【図7】第1の実施形態における、テレ端を基準とし異なる光学変倍度に応じた各画素位置における色むら補正差分を示す図である。
【図8】第1の実施形態における階調および変倍に関連する色むら補正の全体像を示す図である。
【図9】液晶プロジェクタの投影光学系の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
《第1の実施形態》
(液晶プロジェクタ)
図9に示すように、画像を表示する表示素子としての液晶パネルに形成されるカラー画像は、投影光学系100により、表示面であるスクリーンへ拡大投影される。投影光学系は、画像サイズの変更を行う手段としてのズームレンズ101、および/または、画像位置の変更を行う手段102を備える。
【0013】
(投影光学系に対する色むら補正を行う色むら補正回路)
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施形態である液晶プロジェクタ(画像投影装置)のガンマ回路および色むら補正回路周りのブロック図について説明する。111、112、113は、それぞれ影像信号R、G、Bを示している。これらの信号は、入力されたビデオ信号をA/D変換後、RGBデジタル信号に変換された信号を想定しており、それぞれの12ビット(0〜4095の階調深度)を持つデジタル影像信号であるとして説明する。また、ここでの映像信号はXGA(1024*768)に正規化されている前提で話を進める。
【0014】
121、122、123は、夫々VT補正回路R、G、Bを示している。本実施形態ではパネル(透過型)の入力電圧に対する透過率の関係をVT特性と称している。しかし、パネル(反射型)の入力電圧に対する反射率の関係をVR特性として等価的に用いることもできる。ここでは、VT補正回路によって、電圧と透過率の関係を所望のガンマ特性に正規化している。131、132、133は、夫々色むら補正回路R、G、Bを示している。
【0015】
色むら補正回路は、同期信号から検出した画素座標とその階調情報から色むら補正量を決定し、本回路に入力された映像信号に足し合わせることにより、色むら補正を実現している。
【0016】
141、142、143は、RGB夫々のデジタル映像信号にD/A変換およびパネルを駆動するための同期信号付与などの処理を施し、液晶パネルに照射される光に適切な偏光処理を施すための信号変換を行っている。151、152、153は、RGB光夫々に光学変調を施すことにより、投影光学系(図9)を通してスクリーン上に、与えられた映像信号に対応した画像を投射するための像を形成するための液晶パネルである。
【0017】
図1において、161が本実施形態の色むら補正装置において特徴的な色むら補正量算出回路である。該色むら補正量算出回路は、162の基本色むら補正情報と163のレンズ色むら量記憶部、164のレンズズーム量検出部と、165のVT特性情報が関与する。
【0018】
162は、基本色むら補正情報で、例えばズームレンズのテレ(TELE)端における色むら補正テーブルが格納されており、複数色むら補正プレーン情報が格納されており、色むら補正回路に設定する全体情報として格納されている。163は、レンズ色むら量記憶部で、複数ズームポジションにおけるレンズ起因によるRGB光量の補正率(テレ端を基準としたときの各変倍度に応じた各画素位置における色むら補正差分)が記憶されている。
【0019】
164は、レンズズーム量検出回路であり、ここで検出したズーム量に応じて、ズームレンズ起因の色むら量が算出され、最終的には前記基本色むら補正情報に加算することにより、あらゆるズーム位置に対して高度な色むら補正を実現する。165は、RGB夫々のパネルのVT特性情報が記録されており、前記レンズ色むら量記憶部に記録されているRGB光量補正率の情報に基づいて、色むら補正プレーンが配置されている階調に対応した色むら補正量を算出する際に使用される。
【0020】
(色むら補正量算出と、算出される色むら補正量の多寡)
以下、図2のフローチャートを使って実際の色むら補正量算出方法について説明する。図2は、本実施形態の全体像を示すフローチャート図である。なお、図8に、本実施形態における階調および変倍に関連する色むら補正の全体像をブロックを用いて示す。図2
において、#201は、本フローの先頭を表している。#202は、ズームポジション取得する処理である。ズームレンズの駆動に対応して、ポテンショメータなどによりズーム位置を検出し、その電圧値をマイコンのA/D変換器によって検出し、レンズ鏡筒部のズーム位置を検出する。本処理によって検出されたズーム位置は、#203によって色むら補正量の更新が必要かどうか判断される。
【0021】
本処理では、現在適用されているズームポジションと#202で検出されたズームポジションから、再演算の必要性がテーブル化されていてもよい。本処理では、現在のズームポジションと検出したズームポジションの色むら量を算出後、夫々の色むら量の差に絶対値を取ったものを色むら変化量と定義し、その色むら変化量が所定値(一定量)を超える場合であれば色むら補正の再演算が必要とする。また、変化量が所定値(一定量)を超えない場合は、ズーム位置変化に対して色むらが発生しなかったとして前回と同様の色むら補正処理をする。
【0022】
ここで、変位可能な光学素子の変位量が所定範囲を超えた場合に色むら再演算を行い、所定範囲を超えない場合に色むら再演算を行わないようにすることもできる。なお、初回は必ず本判断で色むら再演算(実際には初期の色むら補正)が必要となるように、現在適用されているズームポジションに所定値で初期化しているなどしておくと、実装上初回処理を例外的に処理せず本ルーチンが使える。
【0023】
#204では、#203で色むら補正値の再演算が必要かどうかの判断に基づいてフローを制御している。本判断により色むら再演算が必要ないと判断された場合にはフローを#209へ進め、本フローを終了する。色むら再演算が必要と判断された場合には、フローを#205へフローを進める。#205では、色むら率とVT特性LUTから追加色むら補正量算出を行う。
【0024】
本実施形態での色むら補正量算出回路(#161)は、RGB夫々入力信号の座標情報として水平方向を0〜1023、垂直方向を0〜763と想定している。また、入力階調信号は0〜4095を想定しており、この入力階調信号に色むら補正信号を加算することにより、出力階調信号0〜4095の色むら補正を施した信号に変換する。
【0025】
この色むら補正量算出回路(#161)は、特定入力階調に対して4枚の色むら補正プレーンを有しており、それぞれの色むら補正プレーンは9*7の色むら補正ポイントから形成されている。色むら補正プレーンのイメージ図を図4に示す。図4に示す通り、色むら補正ポイントは、水平/垂直方向共に128画素毎に色むら補正ポイントを配置しており、この色むら補正ポイントに適切な色むら補正値を設定することにより、面内の画素夫々の色むら補正値を算出する。色むら補正値が設定されていない座標の色むら補正値は、線形補間などの補間処理により算出される。
【0026】
次に色むら補正プレーンの配置について、図5を使って説明する。図5の座標軸は、階調レベル、水平方向画素位置、垂直方向画素位置を示しており、この座標空間の夫々の座標に対して色むら補正量が対応している。#502、#503、#504、#505が図4で説明した色むら補正プレーンである。既述した通り、色むら補正プレーンと隣接する色むら補正プレーンの間の色むら補正量は、色むら補正プレーン面内で定義された色むら補正ポイントに設定した色むら補正量を用い、線形補間を使って算出される。
【0027】
このようにして、あらゆる座標と階調に対応した色むら補正量が算出可能に構成されている。#501と#506は、入力最大階調および入力最小階調(または、最大反射率を実現する階調および最小反射率を実現する階調でもよい)に配置された色むら補正を行わないレイヤーである。#501と#506に関しては、夫々の色むら補正量がゼロに設定されている以外は、上記色むら補正プレーンと同様に扱われる。
【0028】
(色むら補正データの一部記憶および色むら補正データの一部算出)
本実施形態では、上述した色むら補正量算出回路(#161)に設定された色むら補正データ(記憶されているデータ)に対して、レンズのズーム位置に対して適宜補正するための算出を行うシステムを提案するもので、その詳細について更に説明する。
【0029】
(画像の各位置における階調もしくは明るさに応じた第1の色むら補正量のデータ)
図6は、ズームレンズをTELEに設定したときの、RGBそれぞれの画像の各位置における階調に応じた第1の色むら補正量(単位は電圧V)として記憶(図1の♯162に相当する第1記憶手段)されているデータである。上記説明の通り、RGBそれぞれ色むら補正プレーンは4枚で構成されており、夫々の色むらプレーンは、LAYERで示される階調に配置されているものとする。
【0030】
(基準にした光学素子の位置と異なる位置に応じた各画素位置における相対的な色むら補正情報のデータ)
図7は、テレ端位置を基準とし、ズームレンズの各変倍位置に対して、夫々色むら補正ポイントの座標において、RGBそれぞれの光量をどのように補正するか相対的な色むら補正情報が記憶(図1の♯163に相当する第2記憶手段)されているテーブルである。本実施形態では、テレ端(TELE)を基準としているため、図7に示したズームレンズの各変倍度に対する色むら変化量のテレ端(TELE)は全て0となっている。なお、テレ側のズームレンズ起因の色むら補正量は、テーブルとして持つ必要はないが、本実施形態の説明のため敢えて載せている。
【0031】
このテーブルから、ズームレンズをワイド側に変化させた際、レンズによってRGB夫々をどの程度補正するかが明確となるが、明示されていないズームポジションでは補間により算出する。
【0032】
(画像の各位置における光学変倍度に応じた第2の色むら補正量のデータ)
ズームレンズ移動に関連して算出した色むら補正率(図7の差分データを示すテーブル)と、レンズズーム量検出部(図1の164)で検出されるレンズのズーム位置に基づき、実際の色むら補正量を算出する必要がある。以下、その算出方法について説明する。
【0033】
(VT特性)
図3は、液晶パネルのVT特性曲線で、電圧値と透過率の関連を示すもので、パネルの代表点、パネル全面の積算光量、もしくはある種重み付け後のパネル全面の積算光量などによって作成されたものである。即ち、画像形成素子に入力する電圧を階調に係る情報として、かつ電圧に対する画像形成素子の入射光束の透過率もしくは反射率を明るさに係る情報として、入力する電圧に対する透過率もしくは反射率を記憶したものである。このVT特性は、図1の165に相当する第3記憶手段に記憶されるが、相対的な色むら補正情報を電圧値で表される色むら補正情報(単位は電圧V)に変換する機能を備える。
【0034】
厳密には、パネルの場所毎にVT特性が異なると考えられるが、色むら補正パラメータを作成するにあたって、誤差は十分少ないため、RGB各パネルに対するVT特性が1本づつあれば十分である。また、このVT特性は、例えばsRGBモード用に作成された補正ガンマテーブル(VT特性と掛け合わせたものが所望のガンマ特性となるもの)からも算出できる。そのため、必ずしも本特性テーブルを従来機種に比べて別途用意しなければならないというものでもなく、多少の誤差が許容であれば、パネルガンマ特性を含んだ任意のガンマテーブルを使うこともできる。
【0035】
(第2の色むら補正量の算出)
図7で、テレ端を基準としたレンズズーム位置に起因した色むら補正光量率(差分データ)が分かり、電圧を階調に係る情報として図3で示したVT特性を用い、ズームレンズのズーム位置に起因する第2の色むら補正量を算出する(第1の算出手段)。この第1の算出手段は、図1の161に相当する。
【0036】
この第2の色むら補正量(単位は電圧V)は、階調に依存しない共通の色むら補正量として、前述した第1の色むら補正量(単位は電圧V)に加算可能である。例えば、図8で、画像位置(128,128)に対し、ワイド位置での色むら補正光量率(テレ位置との差分)は1.95%であるが、VT特性を用いて算出される階調に係る情報としての電圧は、階調の4つのレイヤー(LAYER)に共通の値とされる。
【0037】
(最終的な色むら補正量の算出)
上記のように算出された第2の色むら補正量は、階調に依存しない共通の色むら補正量として、図6で示したテレ端(TELE端)基準の色むら補正量(第1の色むら補正量)に加算される(図1の161に相当する第2の算出手段)。このようにして、色むら補正回路に設定すべき最終的な色むら補正量が算出できる。算出された最終的な色むら補正量を、液晶パネル(図1の151、152、153)への色むら補正回路(図1の131、132、133)に設定することにより、図2のフロー#205から#209へ進み、色むら補正値算出フローが終了する。
【0038】
以上、本実施形態においては、光学変倍という光学的に発生する色むらが、全輝度階調に共通した成分として発生するという物理現象を用いている。そして、液晶パネルのVT(VR)特性の非線形性を線形化する特性カーブを利用した算出を行うことで、記憶すべき色むら補正データ容量を小さくできる(なお、保存容量が同じなら、より高精度に色むらを補正することができることとなる)。これにより、色むら補正に必要な記憶容量を削減することで安価な色むら補正装置とすることができると共に、記憶データの引き出しに伴う時間を短縮できる。
【0039】
(変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、以下に例示するように、その要旨の範囲内で種々の変形(単独の変形または記載した実施形態並びに変形例との各種組合せに係る変形を含む)が可能である。
【0040】
(変形例1)
上記実施形態においては、基本色むら補正情報記憶部162に画像サイズを変更する光学素子の位置を基準位置(テレ位置)に固定したときの階調のレベル位置の変化に伴う電圧値で表される色むら補正情報を記憶させたが、本発明はこれに限らない。即ち、上述したものとは逆に、階調のレベル位置を基準位置に固定したときの画像サイズを変更する光学素子の位置の変化に伴う電圧値で表される色むら補正情報を記憶させても良い。また、これらを電圧値以外の情報(値)として記憶させても良い。
【0041】
この場合、記憶部163には、階調のレベルの基準位置に対して異なる位置における相対的な色むら補正情報を記憶させ、これを電圧値で表される色むら補正情報に変換した後に加算する。そして、加算された電圧値で表される色むら補正情報を色むら補正回路に入力させる。
【0042】
このように、光学素子の変位位置および画像の階調のレベル位置の内、一方の位置を基準位置に固定したときの他方の位置変化に伴う色むら補正情報を例えば電圧値で記憶させる。そして、一方の基準位置に対して一方の異なる位置における相対的な色むら補正情報を記憶させ、相対的な色むら補正情報を例えば電圧値で表される色むら補正情報に変換して加算した色むら補正情報を算出する。そして、表示素子に入力される駆動信号を補正する色むら補正回路へ、加算した色むら補正情報を入力させる。なお、本発明で、相対的な色むら補正情報を加算されるべき差としてでなく、乗算されるべき比として記憶させても良い。
【0043】
(変形例2)
上述した実施形態は、画像形成素子が表示素子(液晶パネル)であり、光学系がプロジェクタ用投影光学系であったが、本発明はこれに限らず、画像形成素子が撮像素子であり、光学系がカメラもしくはビデオカメラ用結像光学系であっても良い。この場合、画像形成素子に入力する電圧の替わりに、画像形成素子にチャージされる電圧が階調に係る情報となり、かつ電圧に対する画像形成素子の入射光束の透過率もしくは反射率の替わりに、蓄積電位が明るさに係る情報となる。そして、VT特性(VR特性)に替えて、チャージされる電圧に対する蓄積電位を記憶した特性を利用するようにすれば良い。
【0044】
(変形例3)
上述した実施形態は、画像サイズの変更を行う光学変倍に関連した色むら補正を行ったが、これに替えて画像位置の変更を行うことに関連した色むら補正を行っても良い。この場合、例えば所定の画像位置を基準として、階調に応じた色むら補正量(第1の色むら補正量)を記憶し、画像が異なる場合の相対的な色むら補正情報を第2記憶手段に記憶させることで、同様の色むら補正を行うことができる。なお、画像位置の変更は、光学系を構成するレンズの一部を光軸と垂直に、もしくは斜めに変位させる、あるいは光学系を構成するプリズムを斜めに変位させる等を行うことで達成される。
【0045】
(変形例4)
上述した実施形態は、画像の各位置における階調に応じた第1の色むら補正量を記憶手段より読み出し、次に光学変倍度に係る第2の色むら補正量を算出し、更に両者を加算した値を算出するものであったが、本発明はこれに限らない。即ち、先ず光学変倍度に係る第2の色むら補正量を算出し、次に画像の各位置における階調に応じた第1の色むら補正量を記憶手段より読み出し、更に両者を加算した値を算出するようにしても良い。
【0046】
(変形例5)
上述した実施形態は、画像の各位置における階調に応じた色むら補正量(第1の色むら補正量)を記憶し、算出される色むら補正量(第2の色むら補正量)と加算した値を用いて色むら補正を行った。ここで、「階調」を「明るさ」に替えて同様の色むら補正を行うことができる。即ち、画像の各位置における明るさに応じた色むら補正量(第1の色むら補正量)を記憶し、算出される色むら補正量(第2の色むら補正量)と加算した値を用いて色むら補正を行なうこともできる。
【0047】
(変形例6)
上述した実施形態は、光学変倍に関連して、テレ端で画像の各一における階調に応じた色むら補正量(第1の色むら補正量)を記憶し、テレ端を基準として算出される色むら補正量(第2の色むら補正量)と加算した値を用いて色むら補正を行った。本発明はこれに限らず、テレ端とは異なる光学変倍度(例えばワイド端)を基準として同様の色むら補正を行うこともできる。
【0048】
(変形例7)
変位可能な光学素子としては、画像サイズを変更するズームレンズや、画像位置を変更するシフトレンズ、シフトするプリズムの他、合焦状態を変更するフォーカシングレンズであっても良い。
【符号の説明】
【0049】
131・・色むら補正回路R、132・・色むら補正回路G、133・・色むら補正回路B、151・・パネルR、152・・パネルG、153・・パネルB、161・・色むら補正量算出回路、162・・基本色むら情報記憶部、163・・レンズ色むら量記憶部(差分データ記憶部)、165・・VT特性情報記憶部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示素子または画像を撮像する撮像素子と、
変位可能な光学素子を備え、前記表示素子を用いる場合は前記表示素子に表示される画像を投影する、または前記撮像素子を用いる場合は前記撮像素子へ画像を結像する光学系と、
前記光学系の色むらを補正するために前記表示素子または前記撮像素子に入力される駆動信号を補正する色むら補正回路と、
を有する光学装置であって、
前記光学素子の変位位置および画像の階調もしくは明るさのレベル位置の内、
一方の位置を基準位置に固定したときの他方の位置変化に伴う色むら補正情報を記憶する第1記憶手段と、
前記一方の前記基準位置に対して前記一方の異なる位置における相対的な色むら補正情報を記憶する第2記憶手段と、
前記第2記憶手段に記憶される相対的な色むら補正情報と前記第1記憶手段に記憶される色むら補正情報とに基づいて前記色むら補正回路へ入力する色むら補正情報を算出する算出手段と、
を有することを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記変位可能な光学素子は、画像サイズの変更を行う、または画像位置の変更を行うことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記第1記憶手段に記憶される色むら補正情報が電圧値で記憶され、前記相対的な色むら補正情報の電圧値への変換を、前記表示素子を用いる場合は前記表示素子に入力する電圧と入射光束の透過率もしくは反射率の特性に基づいて行い、前記撮像素子を用いる場合は前記撮像素子にチャージされる電圧と蓄積電位の特性に基づいて行い、変換された電圧値と前記第1記憶手段に記憶された電圧値とが加算された電圧値を前記色むら補正回路へ入力する色むら補正情報とすることを特徴とする請求項1または2に記載の光学装置。
【請求項4】
色むら量の差に絶対値を取ったものを色むら変化量とし、前記光学素子の変位に基づく色むら変化量が所定値を超える場合は色むら補正の再演算をし、所定値を超えない場合は、色むら補正の再演算を行わずに前回と同様の色むら補正処理をすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−19936(P2013−19936A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150767(P2011−150767)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】