説明

光学補償シート、偏光板、楕円偏光板および液晶表示装置

【課題】表示ムラが起こりにくい光学補償シートを提供する。
【解決手段】熱収縮開始温度が130℃以上190℃以下であるポリマーフイルムを光学補償シートに用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフイルムを有する光学補償シート、それを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテートフイルムは、その強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いられている。セルロースアセテートフイルムは、代表的な写真感光材料の支持体である。また、セルロースアセテートフイルムは、液晶表示装置にも用いられている。セルロースアセテートフイルムには、他のポリマーフイルムと比較して、光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)との特徴がある。従って、光学的等方性が要求される用途、例えば偏光板には、セルロースアセテートフイルムを用いることが普通である。
液晶表示装置の光学補償シート(位相差フイルム)には、逆に光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される。従って、光学補償シートとしては、ポリカーボネートフイルムやポリスルホンフイルムのようなレターデーション値が高い合成ポリマーフイルムを用いることが普通である。
【0003】
以上のように光学材料の技術分野では、ポリマーフイルムに光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される場合には合成ポリマーフイルムを使用し、光学的等方性(低いレターデーション値)が要求される場合にはセルロースアセテートフイルムを使用することが一般的な原則であった。
特許文献1には、従来の一般的な原則を覆して、光学的異方性が要求される用途にも使用できる高いレターデーション値を有するセルロースアセテートフイルムが開示されている。
【特許文献1】欧州特許0911656A2号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、表示ムラが起こりにくい光学補償シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、下記(1)〜(16)、(22)の光学補償シート、下記(17)の偏光板、下記(18)〜(21)、(25)の液晶表示装置および下記(23)、(24)の楕円偏光板により達成された。
【0006】
(1)熱収縮開始温度が130℃以上190℃以下であるポリマーフイルムを有することを特徴とする光学補償シート。
(2)ポリマーフイルムが延伸されており、ポリマーフイルムの遅相軸と延伸方向との間の軸ズレ角の面内の平均値が3°以内であり、かつ軸ズレ角のレンジが5°以下である(1)に記載の光学補償シート。
【0007】
(3)ポリマーフイルムの破断伸度が10%以上30%以下である(1)に記載の光学補償シート。
(4)ポリマーフイルムの破断強度が11kg/mm2 以上20kg/mm2 以下である(1)に記載の光学補償シート。
【0008】
(5)下記式(I)で定義されるReレターデーション値が20乃至70nmである(1)に記載の光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである]。
(6)Reのレンジが0%以上10%以下である(5)に記載の光学補償シート。
【0009】
(7)下記式(II)で定義されるRthレターデーション値が70乃至400nmである(1)に記載の光学補償シート。
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである]。
(8)Rthのレンジが0%以上10%以下である(7)に記載の光学補償シート。
【0010】
(9)ポリマーフイルムが、3乃至50%の延伸倍率で幅方向に延伸されている(1)に記載の光学補償シート。
(10)ポリマーフイルムが、セルロースアセテートからなる(1)に記載の光学補償シート。
【0011】
(11)セルロースアセテートが、59.0乃至61.5%の酢化度を有する(10)に記載の光学補償シート。
(12)セルロースアセテートが、30%以上40%以下の6位置換率を有する(10)に記載の光学補償シート。
【0012】
(13)ポリマーフイルムが、セルロースアセテートに加えて、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物を含む(10)に記載の光学補償シート。
(14)セルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物を0.01乃至20質量部含む(13)に記載の光学補償シート。
(15)芳香族化合物が、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有する(13)に記載の光学補償シート。
(16)アルカリ溶液を塗布することにより、ポリマーフイルムの少なくとも片面がケン化されている(10)に記載の光学補償シート。
【0013】
(17)偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の一方が(1)に記載の光学補償シートであり、さらに該光学補償シートの遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度の絶対値が3°以下になるように配置されていることを特徴とする偏光板。
【0014】
(18)液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜との間に配置される二枚の透明保護膜の一方が、(1)に記載の光学補償シートであり、さらに該光学補償シートの遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度の絶対値が3°以下になるように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
(19)液晶セルが、VAモード、TNモードまたはn−ASMモードの液晶セルである(18)に記載の液晶表示装置。
【0015】
(20)液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜との間に配置される二枚の透明保護膜が、それぞれ、(1)に記載の光学補償シートであり、さらに該光学補償シートの遅相軸の平均方向と該光学補償シートに隣接する偏光膜の透過軸のなす角度の絶対値の和が3°以下になるように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
(21)液晶セルが、VAモード、TNモードまたはn−ASMモードの液晶セルである(20)に記載の液晶表示装置。
【0016】
(22)(1)乃至(16)のいずれか一つに記載のポリマーフイルム上にさらに円盤状化合物を含む光学異方性層を設けたことを特徴とする光学補償シート。
(23)偏光膜およびその両側に配置された2枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の一方が(22)に記載の光学補償シートであることを特徴とする楕円偏光板。
(24)偏光膜およびその両側に配置された3枚以上の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜のうちの1枚が(22)に記載の光学補償シートであり、少なくとも1枚が(1)乃至(16)のいずれか一つに記載の光学補償シートであることを特徴とする楕円偏光板。
【0017】
(25)ベンド配向モードの液晶セルおよび液晶セルの両側に配置された一対の楕円偏光板であって、楕円偏光板が(23)または(24)に記載の楕円偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明者の研究によれば、光学補償シートを備えた液晶表示装置に通電してから時間が経過すると、画面周辺部に表示ムラが発生することがある。本発明者が、表示ムラを詳細に検討したところ、画面周辺部の透過率の上昇によってムラが生じていることが判明した。表示ムラは、黒表示において顕著である。
本発明者が、表示ムラの原因について研究を進めた結果、光学補償シートを液晶セルに張り付けた時に、微妙に存在する張力ムラが原因となっていることが判明した。光学補償シートを液晶セルにぴったりと張り付けることができれば、張力ムラ、そして、それを原因とする表示ムラを解消することができる。しかし、実際の液晶表示装置の生産工程において、そのように正確に光学補償シートを貼り付けることは、非常に困難である。
【0019】
本発明者は、さらに研究を進め、液晶表示装置に付属しているバックライトからの熱で光学補償シートを適度に収縮させ、それにより張力ムラを解消することを試みた。ただし、そのためには、光学補償シートを構成するポリマーフイルムが適度に熱収縮する必要がある。ほとんど熱収縮しないポリマーフイルムでは、張力ムラを解消することはできない。また、ポリマーフイルムが大幅に熱収縮しても、過度の収縮による別の張力ムラが発生してしまう。
本発明者が従来のポリマーフイルムからなる光学補償シートを検討したところ、合成ポリマーフイルムからなる光学補償シートは熱収縮が不足し、セルロースアセテートフイルムからなる光学補償シートでは熱収縮が過剰であった。
【0020】
本発明者の研究の結果、熱収縮開始温度が130℃以上190℃以下であるポリマーフイルムならば、適度の熱収縮が得られることが判明した。従来の合成ポリマーフイルムからなる光学補償シートは、熱収縮開始温度が190℃を越えており、熱収縮が不足していた。また、従来のセルロースアセテートフイルムからなる光学補償シートは、熱収縮温度が130℃に達せず、熱収縮が過剰であった。
本発明者は、さらに研究を進めて、合成ポリマーフイルムとセルロースアセテートフイルムとの双方について、熱収縮開始温度を調節することに成功した。すなわち、本発明によれば、適度に熱収縮するポリマーフイルムからなる光学補償シートが得られる。この光学補償シートを用いることで、表示ムラが起こりにくい鮮明な画像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[熱収縮開始温度]
熱収縮開始温度は、130℃以上190℃以下である。熱収縮開始温度は、140℃以上180℃以下であることが好ましく、140℃以上170℃以下であることがさらに好ましい。熱収縮開始温度は、TMA(Thermal Mechanical Analyzer)を用いて測定できる。具体的には、ポリマーフイルムを昇温しながら延伸方向のサンプルの寸法を測長し、原長に対し2%収縮した温度を調べる。
このような熱収縮開始温度は、後述する製造方法の(延伸法を含む)条件調整により達成できる。
【0022】
[破断伸度・強度]
ポリマーフイルムの破断伸度は10%以上30%以下が好ましく、より好ましくは15%以上29%以下、さらに好ましくは20%以上28%以下である。破断強度は11kg/m2 以上20kg/m2 以下が好ましく、より好ましくは12kg/m2 以上19kg/m2 以下、さらに好ましくは13kg/m2 以上18kg/m2 以下である。破断伸度・強度とは、サンプルを延伸方向(2軸に延伸した場合はより高倍率な方向)に切り出し、を25℃60%RHで10%/分で引っ張ったときに破断する長さ、強度(荷重を引張試験前のサンプルの断面積で割った値)である。
光学補償シートは、裁断し液晶セルに張り付けて使用する。裁断から張り付けにおいて発生する裁断屑やバリが、光学補償シートや液晶セルに付着し、これが液晶を黒表示したときに夜空の星状に輝点となる「輝点故障」の原因になる。上記の破断伸度・強度を有するポリマーフイルムを光学補償シートとして用いることで、輝点故障を大幅に軽減できる。
【0023】
[フイルムのレターデーション]
フイルムのReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)および(II)で定義される。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(I)および(II)において、nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率である。
式(I)および(II)において、nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率である。
式(II)において、nzは、フイルムの厚み方向の屈折率である。
式(I)および(II)において、dは、単位をnmとするフイルムの厚さである。
【0024】
ポリマーフイルムのReレターデーション値は、20乃至70nmであることが好ましい。ポリマーフイルムのRthのレターデーション値は、70乃至400nmであることが好ましい。
液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフイルムを使用する場合、フイルムのRthレターデーション値は70乃至200nmであることが好ましい。
液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフイルムを使用する場合、フイルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。
さらにRe、Rthのレンジは、0%以上10%以下であることが好ましく、より好ましくは0%以上8%以下、さらに好ましくは0%以上5%以下である。
なお、ポリマーフイルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0.00025乃至0.00088であることが好ましい。また、これらのフイルムの厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.00088乃至0.005であることが好ましい。
【0025】
[フイルムの遅相軸角度]
フイルム面内における遅相軸の角度(軸ズレ)は、延伸方向を基準線(0°)とし、遅相軸と基準線のなす角度で定義する。ここで、ロール形態のフイルムを幅方向に延伸する時は幅方向を基準線とし、長手方向に延伸する時は長手方向を基準線とする。
遅相軸角度(軸ズレ)の平均値は3°以下であることが好ましく、2°以下であることがさらに好ましく、1°以下であることが最も好ましい。遅相軸角度の平均値の方向を遅相軸の平均方向と定義する。
また、遅相軸角度(軸ズレ)のレンジは5°以下であることが好ましく、3°以下であることがさら好ましく、2°以下であることが最も好ましい。レンジとは、幅方向全域にわたって等間隔に20点測定し、軸ズレの絶対値の大きいほうから4点の平均と小さいほうから4点の平均の差をとったものである。
【0026】
[フイルムに使用するポリマー]
液晶セルに組み込んだ時にバックライト光源からの熱を逃がすために、光学補償シートに熱伝導率が高いポリマーフイルムを使用することが好ましい。熱伝導率が高いポリマーとしては、セルロースアセテート(0.22W/m・℃)、低密度ポリエチレン(0.34W/m・℃)、ABS(0.36W/m・℃)、ポリカーボネート(0.19W/m・℃)が好ましい。環状オレフィンポリマーである、ZEONEX(0.20W/m・℃、日本ゼオン(株)製)、ZEONOR(0.20W/m・℃、日本ゼオン(株)製)、ARTON(0.20W/m・℃、JSR(株)製)も好ましい。
これらの中で、より好ましいのがセルロースエステルフイルムであり、さらに好ましいのがセルロースアセテートフイルムである。この中でも、酢化度が59.0乃至61.5%であるセルロースアセテートが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
【0027】
セルロースには、酢酸とエステル化反応できる水酸基が、一つのグルコース単位当たり3個(2位、3位、6位)存在する。6位の置換率は、30%以上40%以下が好ましく、31%以上39%以下がさらに好ましく、32%以上38%以下が最も好ましい。
セルロースアセテートの2位、3位および6位の水酸基は、均等にアセチル化しない。6位の水酸基のアセチル化度は、2位および3位に比べて少ないことが普通である。6位置換率は、通常28%程度である。6位のアセチル化率を上記のように大きな値にすると、フイルムの延伸中に発生する白化故障を抑制することができる。
セルロースアセテートは、剛直なグルコピラノース環構造のため破断しやすい。そのため、セルロースアセテートは、延伸性が良好なポリエステルと比較すると、破断伸度が1/10程度しかない。その結果、延伸に伴って白化故障が発生する。これは、延伸中に剛直な分子が切断され、クレーズを発生し白化するものである。このような白化故障は、幅方向で差があり、中央部の方が端部よりも発生しやすい。これは、中央部の方が延伸倍率が大きくなりやすいためである。白化により生じるヘイズの差は、光学補償シートが液晶表示装置に組み込まれると、輝度のムラになる。すなわち、ヘイズの高いところの輝度が低下して見える。
【0028】
6位の酢化度を高い値にすると、破断伸度が伸びて、白化故障を小さくできる。2位、3位の水酸基はグルコピラノース環に直接付いているが、6位の水酸基はメチレン基を介して環に付いている。よって、6位を置換したアセチル基は、他のアセチル基よりも運動性が大きく、他の分子と絡み合いを生じやすい。6位のアセチル基が他の分子と絡み合う構造が、弱い架橋構造として機能し、破断を抑制し、白化故障を低減していると推定される。
6位酢化度が高いセルロースアセテートは、特開平11−5851号公報の記載(段落番号0011〜0022の記載、段落番号0043〜0044、0048〜0049および0051〜0052の合成例1〜3)を参照して調製することができる。
【0029】
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。
また、セルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.00乃至1.70であることが好ましく、1.30乃至1.65であることがさらに好ましく、1.40乃至1.60であることが最も好ましい。
【0030】
[レターデーション上昇剤]
セルロースアセテートフイルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することができる。
芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0031】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環および1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。
芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
【0032】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0033】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0034】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0035】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0036】
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチルおよび2−ジエチルアミノエチルが含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
【0037】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0038】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。
、脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。
【0039】
レターデーション上昇剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい
レターデーション上昇剤については、特開2000−111914号、同2000−275434号の各公報およびPCT/JP00/02619号明細書に記載がある。
【0040】
[セルロースアセテートフイルムの製造]
ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0041】
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0042】
一般的な方法でセルロースアセテート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアセテートの量は、得られる溶液中に10乃至40質量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースアセテートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
【0043】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0044】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアセテートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアセテートを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースアセテートの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0045】
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0046】
さらに、これを0乃至200℃(好ましくは0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至120℃、最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
【0047】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保存する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0048】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造する。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0049】
セルロースアセテートフイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
【0050】
セルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.01乃至0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フイルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
【0051】
[セルロースアセテートフイルムの延伸]
セルロースアセテートフイルムは、3乃至50%の延伸処理を行なうことが好ましい。延伸処理は、原反幅に対し5乃至40%であることが好ましく、7乃至30%であることがさらに好ましい。
また、延伸条件は、下記(1)〜(6)、特に(2)前熱処理と(4)後熱処理とを採用することが好ましい。
【0052】
(1)延伸前の残留溶剤濃度
延伸開始前の残留溶剤濃度が、3質量%以上50質量%以下(ポリマー、残留溶剤の和に対する残留溶剤の比率)、より好ましくは5質量%以上40質量%、さらに好ましくは7質量%以上35質量%であることが好ましい。このような延伸は、ドープを流延後、乾燥が不十分(未乾燥)の状態で、テンター内で延伸するのが好ましい。
【0053】
(2)延伸前の熱処理(前熱処理)
延伸に先だって50℃以上150℃以下、より好ましくは60℃以上140℃以下、さらに好ましくは70℃以上130℃以下で、5秒以上3分以下、より好ましくは10秒以上2分以下、さらに好ましくは15秒以上90秒以下熱処理(前熱処理)するのが好ましい。
【0054】
(3)延伸速度
前熱処理に引き続き、TD(幅)方向に上記倍率延伸する。延伸は5〜300%/分、より好ましくは10〜200%/分、さらに好ましくは15〜150%/分で実施するのが好ましい。本発明は、このような低速で延伸することを特徴としている。(通常のポリマーフイルム(例えばポリエステル)は500%/分以上の高速で延伸するのが一般的である。このような延伸は80℃以上160℃以下、より好ましくは90℃以上150℃以下、さらに好ましくは100℃以上145℃以下で行なうのが好ましい。延伸にはテンターを用いてフイルム両端を把持して行なうのが好ましい。
【0055】
(4)延伸後の熱処理(後熱処理)
延伸の後、直ちに90℃以上150℃以下、より好ましくは100℃以上145℃以下、さらに好ましくは110℃以上140℃以下で、5秒以上3分以下、より好ましくは10秒以上2分以下、さらに好ましくは15秒以上90秒以下で熱処理(後熱処理)するのが好ましい。
一般的な延伸製膜法では、延伸後200℃以上の温度で熱固定するのが一般的であるが、本発明ではこのような高温の熱処理を行わないことが特徴である。
【0056】
(5)冷却緩和
延伸後室温に冷却するが、この間にテンター幅を原反幅に対し1〜10%、より好ましくは2〜9%、さらに好ましくは2%以上8%以下縮め、弛緩させるのが好ましい。冷却速度は10〜300℃/分で実施するのが好ましく、より好ましくは30〜250℃/分、さらに好ましくは50〜200℃/分である。
【0057】
(6)端部スリットおよびこの再利用(再溶解)
この後、両端をスリットし巻き取るが、スリットした端部を再度溶解しドープにして再利用するのが好ましい。全セルロースアセテート中の再溶解セルロースアセテートの比は、10%〜90%が好ましく、より好ましくは20%〜80%、さらに好ましくは30%〜70%である。
【0058】
セルロースアセテートフイルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.7〜2.5m、さらに好ましくは0.9〜2mである。厚さは40乃至140μmであることが好ましく、より好ましくは55乃至130μmであることが好ましく、さらに好ましくは70乃至120μmである。長さは1ロールあたり300〜6000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜5000mであり、さらに好ましくは1000〜4000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mm、より好ましくは5mm〜30mm、高さは5〜500μmであり、より好ましくは10〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。
【0059】
[セルロースアセテートフイルムの表面処理]
セルロースアセテートフイルムを偏光板の透明保護膜として使用する場合、セルロースアセテートフイルムを表面処理することが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理を実施する。酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアセテートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
【0060】
ケン化処理液の溶媒は、水または有機溶媒が好ましい。ケン化処理液を透明支持体に塗布する場合、支持体への濡れ性が良く、支持体表面に凹凸を形成せずに面上を良好な状態に保つ溶媒を用いることが好ましい。アルコールが特に好ましい溶媒である。炭素原子数が1〜5の(モノ)アルコールまたはグリコールが好ましく、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールおよびエチレングリコールが好ましく、イソプロパノールが最も好ましい。アルコールと他の溶媒とを併用してもよい。他の溶媒としては水が好ましい。全溶媒中の水の割合は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下であることが最も好ましい。
界面活性剤をケン化処理液に添加してもよい。
ケン化処理液に使用するアルカリは、アルカリ金属の水酸化物であることが好ましく、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが特に好ましい。ケン化処理液のpHは、10以上であることが好ましく、12以上であることがさらに好ましい。
【0061】
ケン化処理は、支持体をケン処理液に浸漬する(浸漬法)か、あるいは、ケンか処理液を支持体に塗布する(塗布法)ことにより実施する。塗布法の方が浸漬法よりも好ましい。塗布法は、浸漬法と比較して、ケン化後のロール状態におけるブロッキングを抑制できる。セルロースアセテートフイルムを延伸した場合、あるいは6位のアセチル置換率が高いセルロースアセテートの場合に、ブロッキングの抑制効果が顕著である。延伸したフイルムは、保存中に収縮しようとするため、収縮応力によりフイルムがすりあわされてブロッキングが発生しやすい。また、6位置換のアセチル基はケン化処理ではずれ易く、ケン化により生じた水酸基がブロッキングを発生させる。塗布法のケン化処理は、ケン化処理液が支持体表面にしか存在せず(浸漬法のようにフイルム内部まで浸透せず)、必要最小限の弱いケン化となり、ブロッキングを防止できる。
ケン化処理液の塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法あるいはE型コーティング法を採用できる。
ケン化処理の温度は、10℃以上80℃以下が好ましく、15℃以上60℃以下がさらに好ましく、20℃以上40℃以下が最も好ましい。処理時間は、1秒以上5分以下が好ましく、2秒以上1分以下がさらに好ましく、3行以上30秒以下が最も好ましい。
【0062】
ケン化処理後に、ケン化処理液を洗い落とす。洗浄液の温度は、30℃以上80℃以下であることが好ましく、35℃以上70℃以下であることがさらに好ましく、40℃以上65℃以下であることが最も好ましい。洗浄は、浸漬でもよいし、洗浄液を塗布またはスプレーしても良い。洗浄液は、水であることが好ましく、純水であることが最も好ましい。水と他の溶媒との混合溶媒で洗浄でしてもよい。他の溶媒の割合は、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。他の溶媒としては、炭素原子数が5以下のアルコールが好ましい。
洗浄後に、支持体を乾燥する。乾燥温度は、40℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることがさらに好ましく、60℃以上120℃以下であることが最も好ましい。
ケン化処理面に配向膜を形成する場合、塗布法によるケン化処理と配向膜の塗布とを連続して行うことができ、その方が工程数を削減できて好ましい。
【0063】
[偏光板]
偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。一方の保護膜として、上記のセルロースアセテートフイルムを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフイルムを用いてもよい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。
セルロースアセテートフイルムの遅相軸と偏光膜の透過軸のなす角度は3°以下になるように配置することが好ましく、2°以下になるように配置することがさらに好ましく、1°以下になるように配置することが最も好ましい。
【0064】
[円盤状化合物を含む光学異方性層]
ポリマーフイルムを支持体として、円盤状化合物を含む光学異方性層を設けてもよい。
円盤状化合物を含む光学異方性層の光学特性は、前記(I)で定義されるReレターデーション値に加えて、下記式(III)で定義されるRthレターデーション値および円盤状化合物の平均傾斜角βで表される。
(III)Rth=[(n2+n3)/2−n1]×d
式中、 n1は、光学異方性層を屈折率楕円体で近似した場合の屈折率主値の最小値であり;n2およびn3は、光学異方性層のその他の屈折率主値であり;そして、dは光学異方性層の厚さである。光学異方性層のReレターデーション値は、10乃至100nmであることが好ましい。光学異方性層のRthレターデーション値は、40乃至200nmであることが好ましい。また、円盤状化合物の平均傾斜角β(屈折率の主値の最小値の方向とフイルム法線との角度)が、20乃至50°であることが好ましい。
【0065】
[液晶表示装置]
ポリマーフイルムからなる光学補償シート、またはポリマーフイルムを透明保護膜として用いた偏光板は、液晶表示装置、特に透過型液晶表示装置に有利に用いられる。
透過型液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
光学補償シートは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
偏光板では、液晶セルと偏光膜との間に配置される透明保護膜として、上記のポリマーフイルムを用いる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)透明保護膜のみ上記のポリマーフイルムを用いるか、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)二枚の透明保護膜に、上記のポリマーフイルムを用いる。
【0066】
液晶セルは、VAモードまたはTNモードであることが好ましい。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625および特公平7−69536号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した液晶セルが含まれる。具体的には、MVA(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845、SID99、Digest of tech. Papers(予稿集)30(1999)206及び特開平11−258605号公報記載)、SURVAIVAL(月刊ディスプレイ、第6巻、第3号(1999)14記載)、PVA(Asia Display98、 Proc. of the 18th Inter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)383記載)、Para-A(LCD/PDP International‘99で発表)、DDVA(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)838記載)、EOC(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)319記載)、PSHA(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)1081記載)、RFFMH(Asia Display98、Proc.of the 18th Inter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)375記載)、HMD(SID98、Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)702記載)が含まれる。その他に(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(IWD’98、Proc. of the 5th Inter. Display Workshop.(予稿集)(1998)143記載))も含まれる。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60乃至120°にねじれ配向している。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【実施例】
【0067】
実施例では、以下の測定方法を採用した。
【0068】
(1)Re、Rth
光学補償シートについて、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。また、幅方向に沿って等間隔に10点測定し、Re、Rthそれぞれの最大値と最小値の差を各々の平均値で割り、%で表示したものをRe、Rthのレンジとした。
【0069】
(2)軸ズレ
自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株))で軸ズレ角度を測定した。幅方向に全幅にわたって等間隔で20点測定し、絶対値の平均値を求めた。
また、遅相軸角度(軸ズレ)のレンジとは、幅方向全域にわたって等間隔に20点測定し、軸ズレの絶対値の大きいほうから4点の平均と小さいほうから4点の平均の差をとった値とした。
【0070】
(3)破断伸度・強度
延伸方向(MD/TD両方に延伸した場合は延伸倍率の高い方)に沿って15cm長、幅1cmにサンプリングした。これを、引張試験器を用いチャック間距離10cmで10mm/分で、25℃60%rhにおいて延伸し、破断した時の伸度、強度を求めた。
【0071】
(4)熱収縮開始温度
高延伸倍率方向に沿って35mm長に、低延伸倍率方向に沿って3mm幅に裁断した。長手方向に両端を25mm間隔でチャックした。これをTMA測定器(TA instruments社製、TMA2940型、Thermomechanical Analyzer)を用いて、0.04Nの力を加えながら30℃から200℃まで3℃/分で昇温しながら寸法変化を測定する。30℃の寸法を基長とし、これから2%収縮した温度を、収縮開始温度として求めた。
【0072】
[実施例1]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。なお、全アセチルセルロース中の再溶解アセチルセルロースの含率は30質量%とした。
【0073】
────────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成
────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
────────────────────────────────────
【0074】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤16質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、3.5質量部であった。
【0075】
【化1】

【0076】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。これを第1表の条件で延伸しセルロースアセテートフイルムTAC−1(厚さ:80μm)を製造した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0077】
第1表(その1)
────────────────────────────────────
残留 前熱処理 延伸
溶剤 温度 時間 方向 速度 温度 倍率
────────────────────────────────────
実施例1 20% 110℃ 30秒 TD 50%/分 130℃ 20%
実施例2 35% 70℃ 60秒 TD 20%/分 140℃ 30%
実施例3 10% 130℃ 15秒 TD 100%/分 115℃ 10%
実施例4 25% 90℃ 120秒 TD 180%/分 100℃ 25%
実施例5 49% 150℃ 5秒 MD 5%/分 90℃ 50%
22% 150℃ 5秒 TD 5%/分 90℃ 3%
実施例6 14% 50℃ 180秒 MD 300%/分 160℃ 3%
4% 50℃ 180秒 TD 300%/分 160℃ 50%
比較例1 1% 110℃ 30秒 TD 50%/分 130℃ 20%
比較例2 35% 前熱処理を実施せず TD 20%/分 140℃ 30%
比較例3 10% 130℃ 15秒 TD 500%/分 115℃ 90%
比較例4 25% 90℃ 120秒 TD 180%/分 100℃ 25%
比較例5 49% 150℃ 5秒 MD 5%/分 90℃ 50%
22% 150℃ 5秒 TD 5%/分 90℃ 3%
比較例6 4% 50℃ 180秒 MD 300%/分 160℃ 3%
4% 50℃ 180秒 TD 300%/分 160℃ 50%
────────────────────────────────────
【0078】
第1表(その2)
────────────────────────────────────
フイルム 延伸方向 後熱処理温度 後熱処理時間 冷却緩和率 冷却緩和速度
────────────────────────────────────
実施例1 TD 130℃ 30秒 4% 60℃/分
実施例2 TD 145℃ 15秒 2% 120℃/分
実施例3 TD 100℃ 60秒 6% 30℃/分
実施例4 TD 115℃ 100秒 8% 180℃/分
実施例5 MD 90℃ 180秒 10% 10℃/分
TD 90℃ 180秒 10% 10℃/分
実施例6 MD 150℃ 5秒 1% 300℃/分
TD 150℃ 5秒 1% 300℃/分
比較例1 TD 130℃ 30秒 4% 60℃/分
比較例2 TD 145℃ 15秒 2% 120℃/分
比較例3 TD 100℃ 60秒 6% 30℃/分
比較例4 TD 後熱処理を実施せず 8% 180℃/分
比較例5 MD 90℃ 180秒 15% 5℃/分
TD 90℃ 180秒 15% 5℃/分
比較例6 MD 150℃ 5秒 0% 500℃/分
TD 150℃ 5秒 0% 500℃/分
────────────────────────────────────
【0079】
[実施例2]
実施例1で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。なお全アセチルセルロース中の再溶解アセチルセルロースの含率は50質量%とした。得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。これを第1表の条件で延伸しセルロースアセテートフイルムTAC−2(厚さ:80μm)を製造した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0080】
[比較例1]
実施例1で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。なお全アセチルセルロース中の再溶解アセチルセルロースの含率は0質量%とした。得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。これを第1表の条件で延伸しセルロースアセテートフイルムTAC−5(厚さ:80μm)を製造した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0081】
[比較例2]
実施例1で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。なお全アセチルセルロース中の再溶解アセチルセルロースの含率は0質量%とした。得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。これを第1表の条件で延伸しセルロースアセテートフイルムTAC−6(厚さ:80μm)を製造した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0082】
[実施例3]
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液56質量部を混合してドープを調製した(セルロースアセテート100質量部に対して、レターデーション上昇剤7.8質量部を使用し)。なお全アセチルセルロース中の再溶解アセチルセルロースの含率は90質量%とした。得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。これを第1表の条件で延伸しセルロースアセテートフイルムTAC−3(厚さ:80μm)を製造した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0083】
[実施例4]
セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液56質量部を混合してドープを調製した(セルロースアセテート100質量部に対して、レターデーション上昇剤7.8質量部を使用し)。なお全アセチルセルロース中の再溶解アセチルセルロースの含率は10質量%とした。得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。これを第1表の条件で延伸しセルロースアセテートフイルムTAC−3(厚さ:80μm)を製造した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0084】
[比較例3]
実施例3で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。これを第1表の条件で延伸しセルロースアセテートフイルムTAC−7(厚さ:80μm)を製造した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0085】
[比較例4]
実施例3で得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。これを第1表の条件で延伸しセルロースアセテートフイルムTAC−8(厚さ:80μm)を製造した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0086】
[実施例5]
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:28000)を、ジクロロメタンに溶解して、18質量%溶液を得た。溶液を真空脱泡し、ドープを得た。ドープをバンド上に流延し、これをはぎ取り、100℃で乾燥した後、第1表の条件で延伸し、ポリカーボネートフイルムPC−1(厚さ:100μm)を製造した。縦延伸は2本のチャッキングロールの速度差で制御し、横延伸はテンターの幅で制御した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0087】
[比較例5]
実施例5と同じドープをバンド上に流延し、第1表の条件で延伸し、ポリカーボネートフイルムPC−2(厚さ:100μm)を製造した。縦延伸は2本のチャッキングロールの速度差で制御し、横延伸はテンターの幅で制御した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0088】
[実施例6]
ノルボルネン樹脂(商品名「ARTON」、JSR(株)製)100質量部と可塑剤(フタル酸ジエチル)5質量部を、トルエンに溶解して、25質量%溶液を得た。溶液を真空脱泡し、ドープを得た。ドープをバンド上に流延した後、第1表の条件で延伸し、ARTONフイルムAR−1(厚さ:65μm)を製造した。を製造した。縦延伸は2本のチャッキングロールの速度差で制御し、横延伸はテンターの幅で制御した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0089】
[比較例6]
実施例6のドープをバンド上に流延し、120℃で10分間乾燥後にはぎ取り、第1表の条件で延伸し、ARTONフイルムAR−2(厚さ:65μm)を製造した。縦延伸は2本のチャッキングロールの速度差で制御し、横延伸はテンターの幅で制御した。物性を上記方法で測定し第2表に示した。
【0090】
第2表(その1)
────────────────────────────────────
フイルム 破断強度 破断伸度 軸ズレ平均 軸ズレレンジ
────────────────────────────────────
実施例1 TAC−1 16kg/mm2 25% 0.5° 0.8°
実施例2 TAC−2 14kg/mm2 15% 0.8° 2.0°
実施例3 TAC−3 18kg/mm2 30% 0.3° 0.4°
実施例4 TAC−4 15kg/mm2 20% 1.2° 1.2°
実施例5 PC−1 11kg/mm2 30% 3.0° 4.8°
実施例6 AR−1 20kg/mm2 10% 2.0° 3.3°
比較例1 TAC−5 9kg/mm2 7% 5.0° 7.6°
比較例2 TAC−6 8kg/mm2 6% 8.0° 9.3°
比較例3 TAC−7 6kg/mm2 3% 7.5° 8.3°
比較例4 TAC−8 7kg/mm2 5% 11.0° 15.2°
比較例5 PC−2 7kg/mm2 55% 12.0° 12.3°
比較例6 AR−2 22kg/mm2 3% 11.8° 18.9°
────────────────────────────────────
【0091】
第2表(その2)
────────────────────────────────────
Re Rth 熱収縮
フイルム 平均 レンジ 平均 レンジ 開始温度
────────────────────────────────────
実施例1 TAC−1 25nm 3% 110nm 5% 150℃
実施例2 TAC−2 35nm 5% 180nm 6% 140℃
実施例3 TAC−3 15nm 1% 90nm 3% 160℃
実施例4 TAC−4 20nm 2% 80nm 1% 170℃
実施例5 PC−1 68nm 9% 380nm 9% 190℃
実施例6 AR−1 45nm 7% 255nm 8% 130℃
比較例1 TAC−5 37nm 12% 300nm 15% 120℃
比較例2 TAC−6 77nm 16% 340nm 25% 115℃
比較例3 TAC−7 85nm 18% 450nm 22% 110℃
比較例4 TAC−8 80nm 20% 420nm 26% 110℃
比較例5 PC−2 90nm 30% 470nm 29% 200℃
比較例6 AR−2 100nm 37% 550nm 31% 200℃
────────────────────────────────────
【0092】
[実施例7]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。実施例1で作製したセルロースアセテートフイルムTAC−1をケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。TAC−1と偏光膜の長手方向が平行になる様に貼り付けたため、TAC−1の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.5°であった。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)をケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。このようにして偏光板を作製した。
【0093】
[実施例8]
実施例2で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−2の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.3°であった。
【0094】
[実施例9]
実施例3で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−3の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は1.0°であった。
【0095】
[実施例10]
実施例4で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−4の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.4°であった。
【0096】
[比較例7]
比較例1で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−5の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.5°であった。
【0097】
[比較例8]
比較例2で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−6の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は3.9°であった。
【0098】
[比較例9]
比較例3で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−7の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.2°であった。
【0099】
[比較例10]
比較例4で作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして、偏光板を作製した。TAC−8の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は4.2°であった。
【0100】
[実施例11]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。実施例5で作製したポリカーボネートフイルムPC−1を、アクリル系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。PC−1と偏光膜の長手方向が平行になる様に貼り付けたため、PC−1の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.4°であった。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)をケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。このようにして偏光板を作製した。
【0101】
[比較例11]
比較例5で作製したポリカーボネートフイルムを用いた以外は、実施例11と同様にして、偏光板を作製した。PC−2の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は4.0°であった。
【0102】
[実施例12]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。実施例6で作製したARTONフイルムAR−1を、アクリル系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。AR−1と偏光膜の長手方向が平行になる様に貼り付けたため、AR−1の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.3°であった。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)をケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。このようにして偏光板を作製した。
【0103】
[比較例12]
比較例6で作製したARTONフイルムを用いた以外は、実施例11と同様にして、偏光板を作製した。AR−2の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は3.1°であった。
【0104】
[実施例13]
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(VL−1530S、富士通(株)製)に設けられている一対の偏光板および一対の光学補償シートを剥がし、代わりに実施例7で作製した偏光板を、実施例1で作製したセルロースアセテートフイルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。これらの偏光板、セルロースアセテートフイルムは、原反延伸フイルムの中央部どうしの組合せ(中央)、端部どうしの組合せ(端部)の両方について測定した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて上下左右でコントラスト比10:1が得られる最小の視野角を求め、結果を第3表に示す。併せて、全面黒表示として暗室中で星状に輝く輝点の数を数えた。同時に表示ムラ(ぼんやり雲状に明るくなている領域)を求めた(透明フイルムに1cm角の升目を記載したものを液晶上に置き、明るい領域の数を数え%表示した)。
【0105】
[実施例14]
実施例8で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0106】
[比較例13]
比較例7で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0107】
[比較例14]
比較例8で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0108】
[実施例15]
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(VL−1530S、富士通(株)製)に設けられている一対の偏光板および一対の光学補償シートを剥がし、代わりに実施例9で作製した偏光板を、実施例3で作製したセルロースアセテートフイルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して一枚、観察者側に貼り付けた。また、バックライト側には、市販の偏光板(HLC2−5618HCS、(株)サンリッツ製)を一枚貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0109】
[実施例16]
実施例10で作製した偏光板に変えた以外は実施例15と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0110】
[比較例15]
比較例9で作製した偏光板に変えた以外は実施例15と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0111】
[比較例16]
比較例10で作製した偏光板に変えた以外は実施例15と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラ、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0112】
[実施例17]
実施例11で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0113】
[比較例17]
比較例11で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0114】
[実施例18]
実施例12で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0115】
[比較例18]
比較例12で作製した偏光板に変えた以外は実施例13と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第3表に示した。
【0116】
第3表
────────────────────────────────────
液晶表示装置 中央部最小視野角 端部最小視野角 輝点故障 表示ムラ
────────────────────────────────────
実施例13 155° 150° 0 0%
実施例14 145° 140° 0 0%
比較例13 35° 15° 23 10%
比較例14 24° 10° 28 12%
実施例15 159° 155° 0 0%
実施例16 160° 150° 0 0%
比較例15 73° 45° 19 15%
比較例16 45° 30° 21 11%
実施例17 135° 103° 2 1%
比較例17 20° 10° 33 19%
実施例18 125° 100° 1 1%
比較例18 22° 15° 38 17%
────────────────────────────────────
【0117】
[実施例19]
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに実施例7で作製した偏光板を、実施例1で作製したセルロースアセテートフイルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは直交であり、Oモードとなるように配置した。
実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第4表に示した。
【0118】
[実施例20]
実施例8で作製した偏光板に変えた以外は実施例19と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第4表に示した。
【0119】
[比較例19]
比較例7で作製した偏光板に変えた以外は実施例19と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第4表に示した。
【0120】
[比較例20]
比較例8で作製した偏光板に変えた以外は実施例19と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例13と同様にして視野角と輝点の数、表示ムラを求め、結果を第4表に示した。
【0121】
第4表
────────────────────────────────────
液晶表示装置 中央部最小視野角 端部最小視野角 輝点故障 表示ムラ
────────────────────────────────────
実施例19 110° 104° 0 0%
実施例20 100° 93° 0 0%
比較例19 30° 15° 24 15%
比較例20 3° 0° 36 20%
────────────────────────────────────
【0122】
[実施例20]
セルロースアセテート溶液477質量部にレターデーション上昇剤溶液52質量部を混合してドープを調製し(セルロースアセテート100質量部に対して、レターデーション上昇剤6.7質量部を使用し)流延した。なお全アセチルセルロース中の再溶解アセチルセルロースの含率は40質量%とした。これを第5表に記載の条件で延伸した。この支持体の物性を第2表と同様に測定し第6表に示した。
【0123】
[実施例21]
セルロースアセテート溶液477質量部にレターデーション上昇剤溶液21質量部を混合してドープを調製した(セルロースアセテート100質量部に対して、レターデーション上昇剤2.8質量部を使用し)。なお全アセチルセルロース中の再溶解アセチルセルロースの含率は60質量%とした。これを流延後、第5表に記載の条件で延伸した。この支持体の物性を第2表と同様に測定し第6表に示した。
【0124】
[比較例20]
実施例20で得られたドープを、130℃の条件で、テンターを用いて17%の延伸倍率で横延伸し流延後、第5表に記載の条件で延伸した。この支持体の物性を第2表と同様に測定し第6表に示した。
【0125】
[比較例21]
実施例21で得られたドープを、130℃の条件で、テンターを用いて17%の延伸倍率で横延伸し流延後、第5表に記載の条件で延伸した。この支持体の物性を第2表と同様に測定し第6表に示した。
【0126】
第5表(その1)
────────────────────────────────────
残留 前熱処理 延伸
溶剤 温度 時間 方向 速度 温度 倍率
────────────────────────────────────
実施例20 18% 115℃ 40秒 TD 60%/分 125℃ 20%
実施例21 30% 90℃ 45秒 TD 40%/分 130℃ 18%
比較例20 1% 110℃ 30秒 TD 50%/分 130℃ 58%
比較例21 35% 前熱処理を実施せず TD 20%/分 140℃ 2%
────────────────────────────────────
【0127】
第5表(その2)
────────────────────────────────────
フイルム 延伸方向 後熱処理温度 後熱処理時間 冷却緩和率 冷却緩和速度
────────────────────────────────────
実施例20 TD 125℃ 40秒 3% 80℃/分
実施例21 TD 130℃ 25秒 2% 70℃/分
比較例20 TD 後熱処理を実施せず 4% 60℃/分
比較例21 TD 145℃ 15秒 2% 120℃/分
────────────────────────────────────
【0128】
第6表(その1)
────────────────────────────────────
フイルム 破断強度 破断伸度 軸ズレ平均 軸ズレレンジ
────────────────────────────────────
実施例20 TAC−9 18kg/mm2 27% 0.3° 0.5°
実施例21 TAC−10 17kg/mm2 19% 0.6° 0.4°
比較例21 TAC−11 8kg/mm2 7% 5.5° 7.6°
比較例22 TAC−12 6kg/mm2 6% 8.6° 9.8°
────────────────────────────────────
【0129】
第6表(その2)
────────────────────────────────────
Re Rth 熱収縮
フイルム 平均 レンジ 平均 レンジ 開始温度
────────────────────────────────────
実施例20 TAC−9 22nm 2% 120nm 3% 155℃
実施例21 TAC−10 31nm 2% 130nm 4% 144℃
比較例21 TAC−11 49nm 12% 450nm 15% 120℃
比較例22 TAC−12 14nm 16% 44nm 15% 220℃
────────────────────────────────────
【0130】
[実施例22]
(セルロースアセテートフイルムの鹸化処理)
実施例20で作製したセルロースアセテートフイルムTAC−9を、規定濃度1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液(55℃)に2分間浸漬してから、室温の水洗浴槽中で洗浄し、規定濃度0.1Nの硫酸(30℃)で中和し、再度、室温水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアセテートフイルムTAC−9の表面を鹸化処理した。
【0131】
(配向膜層の形成)
鹸化処理したセルロースアセテートフイルムTAC−9上に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24ml/m2 塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。次に、セルロースアセテートフイルムTAC−9の延伸方向(遅相軸とほぼ一致)と45°の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0132】
────────────────────────────────────
配向膜塗布液組成
────────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
────────────────────────────────────
【0133】
【化2】

【0134】
(光学異方性層の形成)
光学異方性層を形成する支持体として配向膜層を形成したセルロースアセテートフイルムTAC−9を用いた。配向膜上に、下記の円盤状(液晶性)化合物41.01質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.90質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.23質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45質量部を、102質量部のメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#3のワイヤーバーで塗布した。これを、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、円盤状化合物を配向させた。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、250mJ/cm2 のUV光を照射し円盤状化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シートRF−1を作製した。作製した光学補償シートについて、光学特性を測定した。結果は第7表に示す。
【0135】
【化3】

【0136】
[実施例23]
実施例21で作製したセルロースアセテートフイルムTAC−10を、規定濃度1.5NのKOH−イソプロピルアルコール溶液を25ml/m2 塗布し、25℃で5秒間乾燥させた。流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフイルム表面を乾燥させた。このようにして、セルロースアセテートフイルムTAC−10の表面を鹸化処理した。
鹸化処理したセルロースアセテートフイルムTAC−10上に、実施例22と同様にして配向膜を形成し、ラビング処理を行った後に、光学異方性層を形成し、光学補償シートRF−2を作製した。作製した光学補償シートについて、光学特性を測定した。結果は第7表に示す。
【0137】
[比較例22]
セルロースアセテートフイルムTAC−11を用いた以外は実施例22と同様にして光学補償シートRF−3を作製した。作製した光学補償シートについて、光学特性を測定した。結果は第7表に示す。
【0138】
[比較例23]
セルロースアセテートフイルムTAC−12を用いた以外は実施例23と同様にして光学補償シートRF−4を作製した。作製した光学補償シートについて、光学特性を測定した。結果は第7表に示す。
【0139】
第7表
────────────────────────────────────
フイルム Re β Rth 熱収縮
平均 レンジ 平均 レンジ 開始温度
(nm)(%) (°) (nm)(%) (℃)
────────────────────────────────────
実施例22 RF−1 34 1 35.0 100 2 145
実施例23 RF−2 35 2 35.5 110 1 139
比較例22 RF−3 33 9 36.0 111 7 122
比較例23 RF−4 34 10 35.0 109 9 200
────────────────────────────────────
【0140】
[実施例24]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。実施例22で作製した光学補償シートRF−1を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。光学補償シートRF−1と偏光膜の長手方向が平行になる様に貼り付けたため、光学補償シートRF−1の支持体であるTAC−9の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.3°であった。
市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80U、富士写真フイルム(株)製)を実施例22の方法で鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。このようにして楕円偏光板を作製した。
【0141】
[実施例25]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。実施例23で鹸下処理したセルロースアセテートフイルムTAC−10の鹸下処理した面を偏光膜側にして、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80U、富士写真フイルム(株)製)を実施例22の方法で鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
さらに、実施例22で作製した光学補償シートRF−2を、上記の様に偏光膜に貼り付けたセルロースアセテートフイルムTAC−10と、セルロースアセテートフイルム側が接するようにアクリル系接着剤を用いて貼り付けた。
セルロースアセテートフイルムTAC−10および光学補償シートRF−2の支持体であるTAC−10と偏光膜の長手方向が平行になる様に貼り付けたため、TAC−10の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.4°であった。このようにして楕円偏光板を作製した。
【0142】
[比較例24]
光学補償シートを比較例22で作製したRF−3に変えた以外は実施例24と同様にして楕円偏光板を作製した。光学補償シートRF−3の支持体であるTAC−11の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.4°であった。
【0143】
[比較例25]
セルロースアセテートフイルムを比較例21で作製したTAC−12に、光学補償シートを比較例23で作製したRF−4に変えた以外は実施例25と同様にして楕円偏光板を作製した。TAC−12の遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度は0.5°であった。
【0144】
[実施例26]
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
【0145】
(液晶表示装置の作製)
作製したベンド配向セルを挟むように、実施例24で作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
作製した液晶表示装置について、白表示電圧2V、黒表示電圧6Vを印加し、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて上下左右でコントラスト比10:1が得られる最小の視野角を求め、結果を第8表に示す。併せて、全面黒表示として暗室中で星状に輝く輝点の数、表示ムラを測定した。結果を第8表に示す。
【0146】
[実施例27]
実施例25で作製した楕円偏光板に変えた以外は実施例26と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例26と同様に評価し第8表に結果を示した。
【0147】
[比較例26]
比較例24で作製した楕円偏光板に変えた以外は実施例26と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例26と同様に評価し第8表に結果を示した。
【0148】
[比較例27]
比較例25で作製した楕円偏光板に変えた以外は実施例26と同様にして液晶表示装置を作製した。実施例26と同様に評価し第8表に結果を示した。
【0149】
第8表
────────────────────────────────────
液晶表示装置 中央部最小視野角 端部最小視野角 輝点故障 表示ムラ
────────────────────────────────────
実施例26 145° 133° 0 0%
実施例27 154° 135 0 0%
比較例26 33° 12 21 18%
比較例27 20° 10 38 19%
────────────────────────────────────
【0150】
[実施例28〜32]
下記第9表に示す条件でセルロースアセテートを合成した。セルロースアセテートは、セルロースと無水酢酸を硫酸触媒下で酢化した後、酢酸マグネシウムを用いて所望のアセチル化度まで低下させるが、硫酸量、酢化反応時間および酢酸マグネシウム量(30質量%酢酸マグネシウム水溶液の使用量)を第9表のように変更することで、第9表に示す6位置換度のセルロースアセテートを得た。なお、その他の合成条件は、特開平11−5851号公報の合成例3と同様に実施した。
【0151】
第9表
────────────────────────────────────
硫酸量 酢化反応時間 酢酸マグネシウム量 6位置換度
────────────────────────────────────
実施例28 7.5質量部 300分 25質量部 30.5%
実施例29 6.5質量部 330分 24質量部 32.2%
実施例30 5.5質量部 360分 23質量部 35.3%
実施例31 4.5質量部 420分 22質量部 39.7%
実施例32 12.0質量部 200分 28質量部 28.2%
────────────────────────────────────
【0152】
セルロースアセテートの2位、3位および6位のアセチル置換度は、セルロースアセテートをプロピオニル化処理した後、13C−NMRによる測定によって求めることができる。測定方法については、手塚他(carbohydr. Res. 273(1995)83-91)に記載がある。
実施例28〜32で合成したセルロースアセテートは、いずれも、置換度が2.82、粘度平均重合度が320、含水率が0.4質量%、6質量%メチレンクロライド溶液の粘度が305mPa・s、フレークの平均粒径が1.5mm、そして、粒径の標準偏差が0.5mmであった。また、セルロースアセテートは、いずれも、残存酢酸量が0.01質量%以下、Ca含率が0.05質量%以下、Fe含率が5ppm以下、そして、Mg含率が0.007質量%以下であった。さらい、セルロースアセテートは、いずれも、アセトン抽出分が11質量%、そして重量平均分子量と数平均分子量の比が0.5であった。
さらにまた、セルロースアセテートは、いずれも、再溶解セルロースアセテートの含率を30質量%となるように調整した。
【0153】
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0154】
────────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成
────────────────────────────────────
セルロースアセテート 20質量部
酢酸メチル 58質量部
アセトン 5質量部
メタノール 5質量部
エタノール 5質量部
ブタノール 5質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 1.2質量部
ジトリメチロールプロパンテトラアセテート(可塑剤) 1.2質量部
2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(UV吸収剤) 0.2質量部
2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(UV吸収剤) 0.2質量部
2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(UV吸収剤) 0.2質量部
1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 (剥離剤)
0.02質量部
クエン酸(剥離剤) 0.02質量部
平均粒径20nmのシリカ微粒子(モース硬度:7) 0.05質量部
────────────────────────────────────
【0155】
セルロースアセテート溶液に、実施例1で調製したレターデーション上昇剤溶液を混合して、ドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、3.5質量部であった。
【0156】
(セルロースアセテートフイルムの作製)
得られたドープをバンド流延機を用いて流延した。得られたフイルムを第1表に示す実施例1の延伸条件で延伸して、厚さ80μmのセルロースアセテートフイルムを作製した。
作製したフイルムを実施例1と同様に評価した。結果を第10表に示す。第10表に示されるように、6位置換度が大きい方が、破断伸度が大きく、延伸後の白化に伴うヘイズの上昇を小さくすることができる。
【0157】
第10表(その1)
────────────────────────────────────
6位置換度 破断強度 破断伸度 軸ズレ平均 軸ズレレンジ
────────────────────────────────────
実施例28 30.5% 17kg/mm2 29% 0.5° 0.8°
実施例29 32.2% 18kg/mm2 30% 0.5° 0.8°
実施例30 35.3% 20kg/mm2 34% 0.5° 0.8°
実施例31 39.7% 22kg/mm2 37% 0.5° 0.8°
実施例32 28.2% 16kg/mm2 15% 0.5° 0.8°
────────────────────────────────────
【0158】
第10表(その2)
────────────────────────────────────
Re Rth 熱収縮 ヘイズ
6位置換度 平均 レンジ 平均 レンジ 開始温度 (%)
────────────────────────────────────
実施例28 30.5% 25nm 3% 110nm 5% 150℃ 0.5
実施例29 32.2% 25nm 3% 110nm 5% 150℃ 0.4
実施例30 35.3% 25nm 3% 110nm 5% 150℃ 0.3
実施例31 39.7% 25nm 3% 110nm 5% 150℃ 0.2
実施例32 28.2% 25nm 3% 110nm 5% 150℃ 0.8
────────────────────────────────────
【0159】
(偏光板の作製)
作製したセルロースアセテートフイルムを用いた以外は、実施例7と同様にして偏光板を作製した。ただし、ケン化処理は、水酸化カリウムの1.5N(規定濃度)イソプロパノール溶液を、25ml/m2 塗布し、25℃で5秒間保持して実施した。処理後、直ちに50℃の流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフイルムを乾燥した。
上記の塗布法でケン化処理したセルロースアセテートフイルムを用いて作製した偏光板3000mを、直径30cmの巻芯に張力20kg/mで巻き付け、30℃で1月保存した。
別に、セルロースアセテートフイルムを、水酸化ナトリウムの1.5N(規定濃度)水溶液に50℃で3分浸漬してから、水洗、中和、乾燥して、ケン化処理した。
上記の浸漬法でケン化処理したセルロースアセテートフイルムを用いて作製した偏光板3000mを、直径30cmの巻芯に張力20kg/mで巻き付け、30℃で1月保存した。
それぞれの偏光板について、偏光膜のブロッキング長を調べた。結果を第11表に示す。
【0160】
第11表
────────────────────────────────────
偏光膜のブロッキング長
6位置換度 塗布法 浸漬法
────────────────────────────────────
実施例28 30.5% 0m 300m
実施例29 32.2% 0m 400m
実施例30 35.3% 0m 500m
実施例31 39.7% 0m 600m
実施例32 28.2% 0m 200m
────────────────────────────────────
【0161】
(液晶表示装置Aの作製)
塗布法で作製した偏光板を用いた以外は、実施例13と同様にして、液晶表示装置Aを作製した。
作製した液晶表示装置Aについて、実施例13と同様に、最小視野角、輝点の数、表示ムラを調べた。さらに、白表示にした時の画面内における、最大輝度に対する最小輝度と最大輝度との差の百分率を、輝度ムラとして評価した。結果を第12表に示す。6位アセチル置換度の高い方が輝度ムラが少なく良好であるのは、ヘイズが小さいことに由来すると考えられる。
【0162】
第12表
────────────────────────────────────
表示装置A 中央最小視野角 端部最小視野角 輝点故障 表示ムラ 輝度ムラ
────────────────────────────────────
実施例28 155° 150° 0 0% 0.2%
実施例29 155° 150° 0 0% 0.1%
実施例30 155° 150° 0 0% 0%
実施例31 155° 150° 0 0% 0%
実施例32 155° 150° 0 0% 0.6%
────────────────────────────────────
【0163】
(液晶表示装置Bの作製)
塗布法で作製した偏光板を用いた以外は、実施例15と同様にして、液晶表示装置Bを作製した。
作製した液晶表示装置Bについて、実施例13と同様に、最小視野角、輝点の数、表示ムラを調べた。さらに、白表示にした時の画面内における、最大輝度に対する最小輝度と最大輝度との差の百分率を、輝度ムラとして評価した。結果を第13表に示す。6位アセチル置換度の高い方が輝度ムラが少なく良好であった。
【0164】
第13表
────────────────────────────────────
表示装置B 中央最小視野角 端部最小視野角 輝点故障 表示ムラ 輝度ムラ
────────────────────────────────────
実施例28 155° 150° 0 0% 0.3%
実施例29 155° 150° 0 0% 0.2%
実施例30 155° 150° 0 0% 0.1%
実施例31 155° 150° 0 0% 0%
実施例32 155° 150° 0 0% 0.9%
────────────────────────────────────
【0165】
(液晶表示装置Cの作製)
作製したセルロースアセテートフイルムと塗布法で作製した偏光板とを用いた以外は、実施例19と同様にして、液晶表示装置Cを作製した。
作製した液晶表示装置Cについて、実施例13と同様に、最小視野角、輝点の数、表示ムラを調べた。さらに、白表示にした時の画面内における、最大輝度に対する最小輝度と最大輝度との差の百分率を、輝度ムラとして評価した。結果を第14表に示す。
【0166】
第14表
────────────────────────────────────
表示装置C 中央最小視野角 端部最小視野角 輝点故障 表示ムラ 輝度ムラ
────────────────────────────────────
実施例28 110° 104° 0 0% 0.3%
実施例29 110° 104° 0 0% 0.2%
実施例30 110° 104° 0 0% 0.1%
実施例31 110° 104° 0 0% 0%
実施例32 110° 104° 0 0% 0.4%
────────────────────────────────────

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮開始温度が130℃以上190℃以下であるポリマーフイルムを有することを特徴とする光学補償シート。
【請求項2】
ポリマーフイルムが延伸されており、ポリマーフイルムの遅相軸と延伸方向との間の軸ズレ角の面内の平均値が3°以内であり、かつ軸ズレ角のレンジが5°以下である請求項1に記載の光学補償シート。
【請求項3】
ポリマーフイルムの破断伸度が10%以上30%以下である請求項1に記載の光学補償シート。
【請求項4】
ポリマーフイルムの破断強度が11kg/mm2 以上20kg/mm2 以下である請求項1に記載の光学補償シート。
【請求項5】
下記式(I)で定義されるReレターデーション値が20乃至70nmである請求項1に記載の光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである]。
【請求項6】
Reのレンジが0%以上10%以下である請求項5に記載の光学補償シート。
【請求項7】
下記式(II)で定義されるRthレターデーション値が70乃至400nmである請求項1に記載の光学補償シート。
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さである]。
【請求項8】
Rthのレンジが0%以上10%以下である請求項7に記載の光学補償シート。
【請求項9】
ポリマーフイルムが、3乃至50%の延伸倍率で幅方向に延伸されている請求項1に記載の光学補償シート。
【請求項10】
ポリマーフイルムが、セルロースアセテートからなる請求項1に記載の光学補償シート。
【請求項11】
セルロースアセテートが、59.0乃至61.5%の酢化度を有する請求項10に記載の光学補償シート。
【請求項12】
セルロースアセテートが、30%以上40%以下の6位置換率を有する請求項10に記載の光学補償シート。
【請求項13】
ポリマーフイルムが、セルロースアセテートに加えて、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物を含む請求項10に記載の光学補償シート。
【請求項14】
セルロースアセテート100質量部に対して、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物を0.01乃至20質量部含む請求項13に記載の光学補償シート。
【請求項15】
芳香族化合物が、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有する請求項13に記載の光学補償シート。
【請求項16】
アルカリ溶液を塗布することにより、少なくとも片面がケン化されている請求項10に記載の光学補償シート。
【請求項17】
偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の一方が請求項1に記載の光学補償シートであり、さらに該光学補償シートの遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度の絶対値が3°以下になるように配置されていることを特徴とする偏光板。
【請求項18】
液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜との間に配置される二枚の透明保護膜の一方が、請求項1に記載の光学補償シートであり、さらに該光学補償シートの遅相軸の平均方向と偏光膜の透過軸のなす角度の絶対値が3°以下になるように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項19】
液晶セルが、VAモード、TNモードまたはn−ASMモードの液晶セルである請求項18に記載の液晶表示装置。
【請求項20】
液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜との間に配置される二枚の透明保護膜が、それぞれ、請求項1に記載の光学補償シートであり、さらに該光学補償シートの遅相軸の平均方向と該光学補償シートに隣接する偏光膜の透過軸のなす角度の絶対値の和が3°以下になるように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項21】
液晶セルが、VAモード、TNモードまたはn−ASMモードの液晶セルである請求項20に記載の液晶表示装置。
【請求項22】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載のポリマーフイルム上にさらに円盤状化合物を含む光学異方性層を設けたことを特徴とする光学補償シート。
【請求項23】
偏光膜およびその両側に配置された2枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の一方が請求項22に記載の光学補償シートであることを特徴とする楕円偏光板。
【請求項24】
偏光膜およびその両側に配置された3枚以上の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜のうちの1枚が請求項22に記載の光学補償シートであり、少なくとも1枚が請求項1乃至16のいずれか一項に記載の光学補償シートであることを特徴とする楕円偏光板。
【請求項25】
ベンド配向モードの液晶セルおよび液晶セルの両側に配置された一対の楕円偏光板であって、楕円偏光板が請求項23または24に記載の楕円偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−116347(P2009−116347A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328345(P2008−328345)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【分割の表示】特願2001−64625(P2001−64625)の分割
【原出願日】平成13年3月8日(2001.3.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】