説明

光学補償フィルム、偏光板

【課題】外観や光学特性に優れた光学補償フィルムを提供する。
【解決手段】ベースフィルム、配向膜及び液晶組成物から形成された光学異方性層をこの順で有する光学補償フィルムであって、前記支持体が、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、N−置換マレイミド単位の少なくとも1つとメタクリル酸メチル単位とを含有するアクリル系樹脂からなることを特徴とする、光学補償フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、特にTNモードの光学補償フィルムとして好適に用いられる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器はますます小型化し、ノートパソコン、携帯電話、携帯情報端末に代表されるように、軽量・コンパクトという特徴を生かした液晶表示装置が多く用いられるようになってきている。しかし、現在液晶表示装置の主流であるTNモードにおいては、原理的に見る方向によって表示色やコントラストが変化する等の、所謂視野角特性の問題があった。この視野角特性を改良し、表示品位の高い液晶表示装置を実現するために、特許文献1及び特許文献2では、透明支持体上にディスティック液晶からなる光学異方性層を塗布した光学補償フィルムを、偏光膜の片面の保護フィルムとした偏光板を用いることにより、好適に視野角特性を改良しうることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−191217号公報
【特許文献2】特開2009−69821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1または2の方法をもってしても、光学特性、外観欠陥について、近年ますます高まる市場の要求に応えることが困難になってきた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、外観や光学特性に優れた光学補償フィルムを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ベースフィルムに特定の樹脂組成物を用いれば、外観や光学特性に優れた光学補償フィルムを提供可能であることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、以下に関する。
【0007】
(I) ベースフィルム、配向膜及び液晶組成物から形成された光学異方性層をこの順で有する光学補償フィルムであって、前記支持体が、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、N−置換マレイミド単位の少なくとも1つとメタクリル酸メチル単位とを含有するアクリル系樹脂からなることを特徴とする、光学補償フィルム。
【0008】
(II) ベースフィルムが、下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するイミド樹脂であることを特徴とする、(I)に記載の光学補償フィルム。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
(III) ベースフィルムのイミド化率が30〜90%であることを特徴とする、(I)〜(II)に記載の光学補償フィルム。
【0011】
(IV)ベースフィルムの面内位相差(Re)が−20〜20nm、厚み方向位相差(Rth)が50〜150nmであることを特徴とする、請求項1〜3記載の光学用フィルム。
【0012】
(V) (IV)記載の光学補償フィルムを少なくとも1枚含むことを特徴とする、偏光板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外観や光学特性に優れた光学補償フィルムを提供することが可能となり、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について以下、説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
本発明に係る光学補償フィルムは、ベースフィルム、配向膜及び液晶組成物から形成された光学異方性層をこの順で有する光学補償フィルムであって、前記支持体が、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、N−置換マレイミド単位の少なくとも1つとメタクリル酸メチル単位とを含有するアクリル系樹脂からなることを特徴とする。
【0016】
(ベースフィルムの製造)
本発明に係るベースフィルムは、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、N−置換マレイミド単位の少なくとも1つとメタクリル酸メチル単位とを含有するアクリル系樹脂であることが必須である。環構造を有する上記樹脂は、高い耐熱性と低い透湿度を有することから光学材料として特に好ましく、本発明のベースフィルムとして特に適している。その中でも、光学特性を好適に制御可能な点、耐熱性に優れていることから、下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するアクリル系樹脂であることが好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。R1として好ましくはメチル基であり、R2として好ましくは水素であり、R3として好ましくはメチル基である。
【0019】
以下、グルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するアクリル系樹脂からなるベースフィルムの製造方法について記載する。
【0020】
まず、メタクリル酸メチルを重合させることにより、ポリメタクリル酸メチル樹脂を製造する。
【0021】
この工程において、メタクリル酸メチル以外にも、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなども併用しても良いが、これらを併用する場合はアクリル酸エステル単位が1重量%未満である。アクリル酸メチル単位が0.5重量%未満であることがより好ましい。
【0022】
また上記モノマー以外にも、スチレン、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合することも可能である。
【0023】
上記ポリメタクリル酸メチル樹脂の構造は、特に限定されるものではなく、リニアー(線状)ポリマー、ブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、および架橋ポリマー等のいずれであってもよい。
【0024】
ブロックポリマーの場合、A−B型、A−B−C型、A−B−A型、およびこれら以外のタイプのブロックポリマーのいずれであってもよい。コアシェルポリマーの場合、ただ一層のコアおよびただ一層のシェルのみからなるものであってもよいし、それぞれが多層からなるものであってもよい。
【0025】
ポリメタクリル酸メチル樹脂の製造方法としては特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などが適用可能であるが、光学分野に用いる場合、不純物が少ないとの観点から、塊状重合法、溶液重合法が特に好ましい。例えば、特開昭56−8404、特公平6−86492、特公平7−37482、あるいは特公昭52−32665、特公昭55−7845などに記載の方法に準じて製造できる。
【0026】
次いで、上記ポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱溶融して、イミド化剤で処理する工程(イミド化工程)を経て、イミド樹脂を製造する。
【0027】
上記イミド化剤は、上記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位を生成できるものであれば特に制限されず、WO2005/054311記載のもの等が挙げられる。具体的には、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミンを挙げることができる。
【0028】
また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素のように、加熱により、上記例示したアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。
【0029】
上記例示したイミド化剤のうち、コスト、物性の面からメチルアミン、アンモニア、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。
【0030】
また、常温にてガス状のメチルアミンなどは、メタノールなどのアルコール類に溶解させた状態で使用してもよい。
【0031】
このイミド化の工程において、上記イミド化剤の添加割合を調整することにより、得られるグルタルイミド系樹脂におけるグルタルイミド単位および(メタ)アクリル酸エステル単位の割合を調整することができる。
【0032】
また、イミド化の程度を調整することにより、得られるアクリル系樹脂を成形してなる光学用フィルムの光学特性等を調整することができる。
【0033】
なお、このイミド化の工程においては、上記イミド化剤に加えて、必要に応じて、閉環促進剤(触媒)を添加してもよい。
【0034】
加熱溶融し、イミド化剤と処理する方法は、特に限定されなく、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、押出機や、バッチ式反応槽(圧力容器)等を用いる方法により、上記ポリメタクリル酸メチル樹脂をイミド化することができる。
【0035】
押出機を用いて加熱溶融し、イミド化剤と処理する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。
【0036】
中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、ポリメタクリル酸メチル樹脂に対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を促進することができる。
【0037】
二軸押出機としては、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等を挙げることができる。中でも、噛合い型同方向回転式を用いることが好ましい。噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、原料ポリマーに対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を、より一層促進することができる。
【0038】
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列につないで用いてもよい。例えば、特開2008−273140に記載のタンデム型反応押出機を用いることができる。
【0039】
押出機中でイミド化を行う場合は、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂を押出機の原料投入部から投入し、該樹脂を溶融させ、シリンダ内を充満させた後、添加ポンプを用いてイミド化剤を押出機中に注入することにより、押出機中でイミド化反応を進行させることができる。
【0040】
この場合、押出機中での反応ゾーンの温度(樹脂温度)を180℃〜300℃にて行うことが好ましく、さらに200〜290℃にて行うことがより好ましい。反応ゾーンの温度(樹脂温度)が180℃未満では、イミド化反応がほとんど進行せず、耐熱性が低下する傾向にある。反応ゾーン温度が300℃を超えると、樹脂の分解が著しくなることから、得られるイミド化樹脂から形成しうるフィルムの耐折曲性が低下する傾向がある。ここで、押出機中での反応ゾーンとは、押出機のシリンダにおいて、イミド化剤の注入位置から樹脂吐出口(ダイス部)までの間の領域をいう。
【0041】
押出機の反応ゾーン内での反応時間を長くすることにより、イミド化をより進行させることができる。押出機の反応ゾーン内の反応時間は10秒より長くするのが好ましく、さらには30秒より長くするのがより好ましい。10秒以下の反応時間ではイミド化がほとんど進行しない可能性がある。
【0042】
押出機での樹脂圧力は、大気圧〜50MPaの範囲内とすることが好ましく、さらには1MPa〜30MPaの範囲内が好ましい。1MPa未満ではイミド化剤の溶解性が低く、反応の進行が抑えられる傾向がある。また、50MPa以上では通常の押出機の機械耐圧の限界を越えてしまい、特殊な装置が必要となりコスト的に好ましくない。
【0043】
また、押出機を使用する場合は、未反応のイミド化剤や副生物を除去するために、大気圧以下に減圧可能なベント孔を装着することが好ましい。このような構成によれば、未反応のイミド化剤、もしくはメタノール等の副生物やモノマー類を除去することができる。
【0044】
また、上記イミド樹脂の製造には、押出機に代えて、例えば住友重機械(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に用いることができる。
【0045】
上記イミド樹脂を、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されるものでない。
【0046】
具体的には、ポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱により溶融させ、攪拌することができ、イミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)を添加することができる構造を有していればよいが、攪拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。
【0047】
このようなバッチ式反応槽(圧力容器)によれば、反応の進行によりポリマー粘度が上昇し、撹拌が不十分となることを防止することができる。このような構造を有するバッチ式反応槽(圧力容器)としては、例えば、住友重機械(株)製の攪拌槽マックスブレンド等を挙げることができる。
【0048】
イミド化方法の具体例としては、例えば、特開2008−273140、特開2008−274187記載の方法など公知の方法をあげることができる。
【0049】
上記イミド化工程に加え、エステル化剤で処理する工程を含むことができる。このエステル化工程によって、イミド化工程で得られたイミド化樹脂の酸価を所望の範囲内に調整することができる。
【0050】
エステル化剤としては、例えば、ジメチルカーボネート、2,2−ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル−t−ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ−N−ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、コスト、反応性などの観点から、ジメチルカーボネートが好ましい。
【0051】
上記エステル化剤に加え、触媒を併用することもできる。触媒の種類は特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミンが挙げられる。これらの中でもコスト、反応性などの観点からトリエチルアミンが好ましい。
【0052】
グルタルイミドを含有したアクリル系樹脂を採用する場合、イミド化率は30〜90%が好ましく、40〜80%がより好ましい。イミド化率が30%未満であると、位相差発現性が不十分である傾向があり、イミド化率が90%を超えると、フィルム成形時の溶融粘度が高くなり、加工性が悪化する傾向がある。上記したイミド樹脂中のイミド化率は、求められる光学フィルムの物性に応じて適宜設定することが可能である。
【0053】
イミド化率は、樹脂中のグルタルイミド基の割合を示し、大きい程、分子中にグルタルイミド基が多いことを示す。グルタルイミド基は、それ自身正の固有複屈折を与える作用を有しているため、当該範囲に設定することで、樹脂組成物ならびに当該組成物を成形して得た成形品の複屈折性を抑制することができ、本発明の樹脂組成物から形成した樹脂成形品(例えば、樹脂フィルム)の光学部材としての使用用途が拡大する。
【0054】
本発明に係るイミド化率(Im%)は、例えば以下の方法で測定できる値である。1H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂の1H−NMR測定を行う。3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO−CH3プロトン由来のピークの面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN−CH3プロトン由来のピークの面積Bより、次式で求める。
【0055】
Im%=B/(A+B)×100
【0056】
(酸価)
グルタルイミドを含有したアクリル系樹脂の酸価は、イミド樹脂中でのカルボン酸単位、カルボン酸無水物単位の含有量を表す。酸価は、例えばWO2005−054311に記載の滴定法などにより算出することが可能である。
【0057】
グルタルイミドを含有したアクリル系樹脂を採用した場合の好ましい酸価は、0.001〜0.30mmol/gであり、0.005〜0.20mmol/gであることがより好ましい。酸価が上記範囲内であれば、耐熱性、機械物性、成形加工性のバランスに優れたイミド樹脂を得ることができる。酸価が上記範囲よりも大きい場合、得られた樹脂組成物を成型した際に、発泡やゲル状物の外観欠陥が多数発生することがあるため好ましくない。発泡は、分子内で隣接するカルボキシル基同士の無水物化の際に発生する水の影響と思われる。またゲル状物は、分子間のカルボン酸同士での水素結合による擬似架橋により形成されると思われる。酸価が上記範囲よりも小さい場合、当該酸価に調整するための変性剤をより多く費やす必要があるため、コストアップになったり、変性剤の残存によるゲル状物の発生を誘発することがあるため好ましくない。本発明のイミド樹脂の酸価は、イミド樹脂中でのカルボン酸単位、カルボン酸無水物単位の含有量を表す。酸価は、例えばWO2005−054311に記載の滴定法などにより算出することが可能である。
【0058】
グルタルイミドを含有したアクリル系樹脂を採用した場合、好ましいアクリル酸エステル単位の比率は、1重量%未満である。0.5重量%未満であることさらに好ましい。
【0059】
アクリル酸エステル単位が上記範囲内であれば、イミド樹脂は熱安定性に優れたものになるが、上記範囲を超えると熱安定性が悪くなり、樹脂製造時あるいは成形加工時に樹脂の分子量や粘度低下が低下して物性が悪化する傾向がある。
【0060】
上記イミド樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、メタクリル酸メチル単位、カルボン酸もしくはカルボン酸無水物単位、アクリル酸エステル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。
【0061】
その他の単位としては、例えば、スチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を挙げることができる。
【0062】
これらのその他の単位は、上記イミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
【0063】
上記樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×104〜5×105であることが好ましく、5×104〜3×105であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。
【0064】
一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0065】
また、上記イミド樹脂のガラス転移温度は特に限定されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることが特に好ましい。この範囲を下回ると、フィルム状に成形した場合の耐熱性が劣るため、高温時の物性変化が大きくなり、適用範囲が狭くなる。
【0066】
なお、本発明に係るベースフィルムは、一軸延伸した一軸延伸フィルムであってもよいし、さらに延伸工程を組み合わせて行って得られる二軸延伸フィルムであってもよい。
【0067】
本発明に係るベースフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、10μm〜200μmであることが好ましく、20μm〜150μmであることがより好ましく、30μm〜100μmであることがさらに好ましい。
【0068】
フィルムの厚みが上記範囲内であれば、光学特性が均一で、ヘーズが良好な光学用フィルムとすることができる。
【0069】
一方、ベースフィルムの厚みが上記範囲を越えると、フィルムの冷却が不均一になり、光学的特性が不均一になる傾向がある。また、ベースフィルムの厚みが上記範囲を下回ると、延伸倍率が過大になり、ヘーズが悪化する傾向がある。
【0070】
本発明に係るベースフィルムは、ヘーズが1%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0071】
本発明に係るベースフィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。
【0072】
全光線透過率が、上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明に係るベースフィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0073】
また、本発明に係るベースフィルムは、最終的に得られる光学補償フィルムの位相差と光学異方性層の位相差を鑑みると、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が0〜10nmであり、波長550nmの厚さ方向のレターデーションRth(550)が30〜150nmであることが好ましい。
【0074】
このような光学特性を有する構成とすれば、本発明に係るベースフィルムを、液晶表示装置の偏光板に備える光学補償フィルムとして用いることができる。
【0075】
一方、ベースフィルムのRe及びRthが上記範囲を超えると、得られる光学補償フィルムを液晶表示装置に組み込んだ場合、液晶表示装置においてコントラストが低下するなどの問題が発生する場合がある。
【0076】
なお、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。つまり、3次元方向について完全光学等方である理想的なフィルムでは、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthともに0となる。
【0077】
Re=(nx−ny)×d
Rth=|(nx+ny)/2−nz|×d
なお、上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さ、||は絶対値を表す。
【0078】
本発明に係るベースフィルムは、光弾性係数の絶対値が、20×10-122/N以下であることが好ましく、10×10-122/N以下であることがより好ましく、5×10-122/N以下であることがさらに好ましい。
【0079】
光弾性係数が上記範囲内であれば、本発明に係るフィルムを液晶表示装置に用いても、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生したりすることがない。
【0080】
一方、光弾性係数の絶対値が20×10-122/Nより大きいと、本発明に係るフィルムを液晶表示装置に用いた場合、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生しやすくなったりする傾向がある。この傾向は、高温多湿環境下において、特に顕著となる。
【0081】
なお、等方性の固体に外力を加えて応力(△F)を発生させると、一時的に光学異方性を呈し、複屈折(△n)を示すようになるが、本明細書において、「光弾性係数」とは、その応力と複屈折との比が意図される。すなわち、光弾性係数(c)は、以下の式により算出される。
【0082】
c=△n/△F
ただし、本発明において、光弾性係数はセナルモン法により、波長515nmにて、23℃、50%RHにおいて測定した値である。
【0083】
(配向膜)
本発明に係る配向膜は、従来既知の無機または有機の配向膜を好適に用いることが可能である。無機の配向膜としてはSiO斜方蒸着膜が、また有機の配向膜としてはラビングされたポリイミド膜が代表的なものであるが、その他ラビングした変性ポバールやラビングしたシリル化剤で処理したガラス基板またはラビングしたゼラチン膜などを用いても良い。
【0084】
(液晶組成物)
本発明に係る液晶組成物は、低分子液晶物質、高分子液晶物質を問わず広い範囲から選定することができる。さらに液晶物質の分子形状は、棒状であるか円盤状であるかを問わない。例えば、ディスコティックネマチック液晶性を示すディスコティック液晶化合物も使用することができる。また、当該液晶組成物は、架橋による高分子化などの後処理を行っても良い。
【0085】
本発明に係る液晶組成物の液晶相としては、ネマチック相、ねじれネマチック相、コレステリック相、スメクチック相、ディスコティックネマチック相等が挙げられる。また、配向状態としては、配向基板に水平に配向するホモジニアス配向や垂直に配向するホメオトロピック配向、両者の中間状態と考えられるチルト配向やハイブリッド配向が例示される。
【0086】
低分子液晶物質としては、飽和ベンゼンカルボン酸類、不飽和ベンゼンカルボン酸類、ビフェニルカルボン酸類、芳香族オキシカルボン酸類、シッフ塩基型類、ビスアゾメチン化合物類、アゾ化合物類、アゾキシ化合物類、シクロヘキサンエステル化合物類、ステロール化合物類などの末端に前記反応性官能基を導入した液晶性を示す化合物や前記化合物類のなかで液晶性を示す化合物に架橋性化合物を添加した組成物などが挙げられる。
【0087】
また、ディスコティック液晶化合物としては、トリフェニレン系、トルクセン系等が挙げられる。
【0088】
高分子液晶物質としては、各種の主鎖型高分子液晶物質、側鎖型高分子液晶物質、またはこれらの混合物(組成物)を用いることができる。
【0089】
(光学補償フィルム)
本発明に係る光学補償フィルムは、ベースフィルム、配向膜及び液晶組成物から形成された光学異方性層をこの順で積層されていることが必須である。
【0090】
ここで、本発明に係るベースフィルムを製造する方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。つまり、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を成形してフィルムを製造できる方法であれば、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。
【0091】
具体的には、例えば、射出成形、溶融押出フィルム成形、インフレーション成形、ブロー成形、圧縮成形、紡糸成形等を挙げることができる。
【0092】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を溶解可能な溶剤に溶解させた後、成形させる溶液流延法やスピンコート法によって、本発明に係るベースフィルムを製造することができる。
【0093】
中でも、溶剤を使用しない溶融押出法を用いることが好ましい。溶融押出法によれば、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
【0094】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を用いるため、Tダイ製膜を用いるような高温での成形条件下でも、紫外線吸収剤の飛散による成形機の汚染やフィルム欠陥を発生させることなく、ベースフィルムを製造することができる。
【0095】
以下、本発明に係るフィルムの製造方法の一実施形態として、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を溶融押出法により成形してフィルムを製造する方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、溶融押出法で成形されたフィルムを、溶液流延法等の他の方法で成形されたフィルムと区別して、「溶融押出フィルム」と称する。
【0096】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を溶融押出法によりフィルムに成形する場合、まず、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を、押出機に供給し、該熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融させる。
【0097】
熱可塑性樹脂組成物は、押出機に供給する前に、予備乾燥することが好ましい。このような予備乾燥を行うことにより、押出機から押し出される樹脂の発泡を防ぐことができる。
【0098】
予備乾燥の方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料(すなわち、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物)をペレット等の形態にして、熱風乾燥機等を用いて行うことができる。
【0099】
次に、押出機内で加熱溶融された熱可塑性樹脂組成物を、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイに供給する。このとき、ギアポンプを用いれば、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚みムラを低減させることができる。一方、フィルターを用いれば、熱可塑性樹脂組成物中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得ることができる。
【0100】
次に、Tダイに供給された熱可塑性樹脂組成物を、シート状の溶融樹脂として、Tダイから押し出す。そして、該シート状の溶融樹脂を2つの冷却ロールで挟み込んで冷却し、フィルムを成膜する。
【0101】
上記シート状の溶融樹脂を挟み込む2つの冷却ロールの内、一方は、表面が平滑な剛体性の金属ロールであり、もう一方は、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールであることが好ましい。
【0102】
このような剛体性の金属ロールと金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールとで、上記シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して成膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面が平滑で厚みムラが5μm以下であるフィルムを得ることができる。
【0103】
なお、本明細書において、「冷却ロール」とは、「タッチロール」および「冷却ロール」を包含する意味で用いられる。
【0104】
上記剛体性の金属ロールとフレキシブルロールとを用いる場合であっても、何れの冷却ロールも表面が金属であるため、成膜するフィルムが薄いと、冷却ロールの面同士が接触して、冷却ロールの外面に傷が付いたり、冷却ロールそのものが破損したりすることがある。
【0105】
そのため、上説したような2つの冷却ロールでシート状の溶融樹脂を挟み込んで成膜する場合、まず、該2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、比較的厚みの厚い原料フィルムを一旦取得する。その後、該原料フィルムを、一軸延伸または二軸延伸して所定の厚みのフィルムを製造することが好ましい。
【0106】
より具体的に説明すると、厚み40μmのフィルムを製造する場合、また、上記2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、一旦、厚み150μmの原料フィルムを取得する。その後、該原料フィルムを縦横二軸延伸により延伸させ、厚み40μmのフィルムを製造すればよい。
【0107】
このように、本発明に係るフィルムが延伸フィルムである場合、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を一旦、未延伸状態の原料フィルムに成形し、その後、一軸延伸または二軸延伸を行うことにより、延伸フィルムを製造することができる。
【0108】
本明細書では、説明の便宜上、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物をフィルム状に成形した後、延伸を施す前のフィルム、すなわち未延伸状態のフィルムを「原料フィルム」と称する。なお、該原料フィルムもまた、本発明に係るフィルムの一実施形態であることを付言しておく。
【0109】
原料フィルムを延伸する場合、原料フィルムを成形後、直ちに、該原料フィルムの延伸を連続的に行ってもよいし、原料フィルムを成形後、一旦、保管または移動させて、該原料フィルムの延伸を行ってもよい。
【0110】
なお、原料フィルムに成形後、直ちに該原料フィルムを延伸する場合、フィルムの製造工程において、原料フィルムの状態が非常に短時間(場合によっては、瞬間
また、上記原料フィルムは、その後、延伸される場合、延伸されるのに充分な程度のフィルム状を維持していればよく、完全なフィルムの状態である必要はない。また、上記原料フィルムは、完成品であるフィルムとしての性能を有していなくてもよい。
【0111】
原料フィルムを延伸する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の延伸方法を用いればよい。具体的には、例えば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、及びこれらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等を用いることができる。
【0112】
また、縦と横とを同時に延伸する同時二軸延伸方法を用いたり、ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う方法を用いたりすることもできる。
【0113】
原料フィルムを延伸するとき、原料フィルムを一旦、延伸温度より0.5℃〜5℃、好ましくは1℃〜3℃高い温度まで予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸することが好ましい。
【0114】
上記範囲内で予熱することにより、原料フィルムの厚みを精度よく保つことができ、また、延伸フィルムの厚み精度が低下したり、厚みムラが生じたりすることがない。また、原料フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりすることがない。
【0115】
一方、原料フィルムの予熱温度が高すぎると、原料フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりするといった弊害が発生する傾向にある。また、原料フィルムの予熱温度と延伸温度との差が小さいと、延伸前の原料フィルムの厚み精度を維持しにくくなったり、厚みムラが大きくなったり、厚み精度が低下したりする傾向がある。
【0116】
なお、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、原料フィルムに成形後、延伸する際、ネッキング現象を利用して、厚み精度を改善することが困難である。したがって、本発明では、上記予熱温度の管理を行うことは、得られるフィルムの厚み精度を維持したり、改善したりするためには重要となる。
【0117】
原料フィルムを延伸するときの延伸温度は、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムに要求される機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、変更すればよい。
【0118】
一般的には、DSC法によって求めた原料フィルムのガラス転移温度をTgとした時に、(Tg−30℃)〜(Tg+30℃)の温度範囲とすることが好ましく、(Tg−20℃)〜(Tg+20℃)の温度範囲とすることがより好ましく、(Tg)〜(Tg+20℃)の温度範囲とすることがさらに好ましい。
【0119】
延伸温度が上記温度範囲内であれば、得られる延伸フィルムの厚みムラを低減し、さらに、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を良好なものとすることができる。また、フィルムがロールに粘着するといったトラブルの発生を防止することができる。
【0120】
一方、延伸温度が上記温度範囲よりも高くなると、得られる延伸フィルムの厚みムラが大きくなったり、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質が十分に改善できなかったりする傾向がある。さらに、フィルムがロールに粘着するといったトラブルが発生しやすくなる傾向がある。
【0121】
また、延伸温度が上記温度範囲よりも低くなると、得られる延伸フィルムのヘーズが大きくなったり、極端な場合には、フィルムが裂けたり、割れたりするといった工程上の問題が発生したりする傾向がある。
【0122】
上記原料フィルムを延伸する場合、その延伸倍率もまた、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムの機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、決定すればよい。延伸温度にも依存するが、延伸倍率は、一般的には、1.1倍〜3倍の範囲で選択することが好ましく、1.3倍〜2.5倍の範囲で選択することがより好ましく、1.5倍〜2.3倍の範囲で選択することがさらに好ましい。
【0123】
延伸倍率が上記範囲内であれば、フィルムの伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を大幅に改善することができる。それゆえ、厚みムラが5μm以下であり、複屈折が実質的にゼロであり、さらに、ヘーズが1%以下である延伸フィルムを製造することができる。
【0124】
また、本発明に係る樹脂組成物において、熱可塑性樹脂と紫外線吸収剤との混合割合を上説した範囲で調整し、適切な延伸条件を選択することにより、実質的に複屈折を生じさせることなく、かつ、ヘーズの増大を実質的に伴うことなく、厚みムラの小さなフィルムを容易に製造することができる。
【0125】
次いで、当該ベースフィルムに、配向膜を形成する。配向膜を形成する前に、ベースフィルムと配向膜の接着性を向上させる目的で、ベースフィルムに、プライマー処理、ケン化処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面改質手段を用いても良い。
【0126】
配向膜は、斜方蒸着、コーティング、貼合など、用いる配向膜に応じて形成する方法を選ぶことができる。また、配向膜の形成後、熱処理、光照射、ラビングなどの後処理を加えても良い。
【0127】
光学異方性層は、配向膜形成後、コーティング、蒸着などの方法で形成される。形成後、光や熱による配向処理、高分子化処理などの後処理を加えることも適宜選択され得る。
【0128】
本発明に係る光学補償フィルムは、偏光子に貼り合わせて、偏光板として用いることができる。上記偏光子は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。具体的には、例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
【0129】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0130】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0131】
(イミド化率の算出)
1H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂の1H−NMR測定を行った。3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO−CH3プロトン由来のピークの面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN−CH3プロトン由来のピークの面積Bより、次式で求めた。
【0132】
Im%=B/(A+B)×100
なお、ここで、「イミド化率」とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
【0133】
(面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rth測定)
フィルムから、40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片を、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0゜で面内位相差Reを測定した。
【0134】
デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した試験片の厚みd、および、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製 3T)で測定した屈折率n、自動複屈折計で測定した波長590nm、面内位相差Reおよび40°傾斜方向の位相差値から3次元屈折率nx、ny、nz、を求め、厚み方向位相差 Rth=|(nx+ny)/2−nz|×d (||は絶対値を表す)を計算した。
【0135】
(酸価測定)
樹脂0.3gを塩化メチレン37.5mLに溶解し、さらにメタノール37.5mLを加えた。次に0.1mmol%の水酸化ナトリウム水溶液5mLとフェノールフタレインのエタノール溶液数滴を加えた。次に0.1mmol%の塩酸を用いて逆滴定を行い、中和に要する塩酸の量から酸価を求めた。
【0136】
(実施例1)
原料の樹脂としてポリメタクリル酸メチル(分子量Mw105,000)、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、イミド樹脂を製造した。
【0137】
使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230〜280℃、スクリュー回転数は150rpmとした。ポリメタクリル酸メチル(以下、「メタクリル系樹脂」とも言う)を2kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して13.5重量部のモノメチルアミン(三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド樹脂(I)を得た。
【0138】
次いで、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機にて、押出機各温調ゾーンの設定温度を250℃、スクリュー回転数150rpmとした。ホッパーから得られたイミド樹脂(I)を1kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して8.0重量部の炭酸ジメチルと2.0重量部のトリエチルアミンの混合液を注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、酸価を低減したイミド樹脂(II)を得た。
【0139】
さらに、イミド樹脂(II)を、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機に、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、供給量1kg/hrの条件で投入した。ベント口の圧力を−0.095MPaに減圧して再び未反応の副原料などの揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた脱揮したイミド樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド樹脂(III)を得た。
【0140】
イミド樹脂(III)について、上記の方法に従って、イミド化率、ガラス転移温度、および酸価を測定した。その結果、イミド化率は50%、ガラス転移温度は145℃、酸価は0.01mmol/gであった。
【0141】
得られたイミド樹脂を、100℃で5時間乾燥後、40mmφ単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて240℃で押し出すことにより得られたシート状の溶融樹脂を冷却ロールで冷却して幅300mm、厚み130μmの未延伸フィルムを得た。
【0142】
このフィルムについて、ガラス転移温度より5℃ 高い温度で延伸倍率縦2.5倍、横2.0倍で逐次二軸延伸を行ない、ベースフィルムを作製した。
【0143】
このベースフィルムの面内位相差は0nm、厚み方向位相差は100nmであった。
【0144】
当該ベースフィルムの両面に放電量133w・min/m2でコロナ処理をした後、特表2008−533502号公報の実施例1−1に記載の方法で、当該フィルムに変性ポリビニルアルコールを主成分とする配向膜を設けた。次いで、配向膜にラビング処理を施した後、特表2008−533502号公報の実施例1−1第1光学異方性層Aの作製欄に記載の方法で、ディスコティック液晶組成物を主成分とする光学異方性層を設けることで、光学補償フィルムを作製した。
【0145】
次に、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。上記で作製した光学補償フィルムのベースフィルム側を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。次いで、富士フイルム社製Z−TACを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼付した。上述の手段で、偏光板を作製した。
【0146】
TN方式の液晶セルを装着した液晶表示装置を用意して出射光側の偏光板をはずし、代わりに上述の偏光板を、延伸フィルムが液晶セルの出射光側になるように液晶セルに貼り合わせた表示装置を作製した。表示画面を観察した結果、正面から見ても斜め方向から見ても色表示が変わることなく、良好な画像が得られた。
【0147】
(実施例2)
モノメチルアミンの添加量を18部とした以外、実施例1と同様の手段でベースフィルム、偏光板、表示装置を作製した。
【0148】
イミド化率は66%、ガラス転移温度は153℃、酸価は0.01mmol/gであった。
【0149】
表示画面を観察した結果、正面から見ても斜め方向から見ても色表示が変わることなく、良好な画像が得られた。
【0150】
(実施例3)
モノメチルアミンの添加量を10部とした以外、実施例1と同様の手段でベースフィルム、偏光板、表示装置を作製した。
【0151】
イミド化率は40%、ガラス転移温度は140℃、酸価は0.01mmol/gであった。
【0152】
表示画面を観察した結果、正面から見ても斜め方向から見ても色表示が変わることなく、良好な画像が得られた。
【0153】
(比較例1)
実施例の光学補償フィルムの代わりに富士フイルム社製Z−TACを用いることを除いて、実施例1と同様の手段で偏光板及び当該偏光版を液晶セルに貼り合わせた表示装置を作製した。
【0154】
表示装置の表示画面を観察した結果、斜め方向から見た際、正面から見た時と色表示が異なっていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム、配向膜及び液晶組成物から形成された光学異方性層をこの順で有する光学補償フィルムであって、前記支持体が、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、N−置換マレイミド単位の少なくとも1つとメタクリル酸メチル単位とを含有するアクリル系樹脂からなることを特徴とする、光学補償フィルム。
【請求項2】
ベースフィルムが、下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するイミド樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の光学補償フィルム。
【化1】

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
【請求項3】
ベースフィルムのイミド化率が30〜90%であることを特徴とする、請求項1〜2に記載の光学補償フィルム。
【請求項4】
ベースフィルムの面内位相差(Re)が−20〜20nm、厚み方向位相差(Rth)が50〜150nmであることを特徴とする、請求項1〜3記載の光学用フィルム。
【請求項5】
請求項4記載の光学補償フィルムを少なくとも1枚含むことを特徴とする、偏光板。

【公開番号】特開2011−81124(P2011−81124A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232297(P2009−232297)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】