説明

光学補償フィルム、及び液晶表示装置

【課題】中間調表示の視野角特性を改善、及び全方位の斜め方向のコントラストの改善に寄与する光学補償フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも第1及び第2の光学異方性層を有する光学補償フィルム(10)であって、フィルム面内進相軸(F)とフィルム面の法線(N)とを含む平面(P)内で前記法線からフィルム面方向に時計回りに40°の方向(D+)から測定した面内レターデーションRe(+40°)及び前記法線から反時計回りに40°の方向(D-)から測定したRe(−40°)のうち、大きい方をReL及び小さい方をReSとした場合に、下記式(I)を満足することを特徴とする光学補償フィルム(10)である。
(I) 14 ≦ ReL/ReS ≦ 27

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、特に垂直配向(VA)モード液晶表示装置の視野角特性の改善に寄与する新規な光学補償フィルム、及び該光学補償フィルムを有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
VAモード液晶表示装置は、コントラストが高く、及び応答速度も速いという特徴がある。また、マルチドメイン構造とすることで、白表示/黒表示のコントラストの視野角依存性を軽減できることが知られている。一方、黒表示以外の中間調表示については、表示状態に視野角依存性があるという問題があり、その解決が望まれている。
例えば、特許文献1には、負の複屈折を有する層が傾いて積層されて積層群をなし、このような積層群が傾きの方向が逆方向となるように2つ対向して積層されていることを特徴とする視野角補償フィルムが提案されていて、この視野角補償フィルムが、VAモード液晶表示装置の視野角特性の改善に寄与することが記載されている。
また、特許文献2には、円盤状の高分子からなる一群の屈折率楕円体をそれぞれ含む少なくとも一対の第1および第2光学フィルムを備え、前記第1光学フィルム内の屈折率楕円体は厚さ方向に直角な平面に対して徐々に傾斜して厚さ方向にハイブリッド配列された状態にあり、前記第2光学フィルム内の屈折率楕円体は前記第1光学フィルム内の屈折率楕円体の傾斜方位に対してそれぞれ反平行となるように徐々に傾斜して厚さ方向にハイブリッド配列された状態にあることを特徴とする光学位相差板が提案され、この光学位相差板が中間階調での視野角−輝度特性向上に寄与することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−182036号公報
【特許文献2】特開2005−62724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、本発明者が検討したところ、上記特許文献1及び2で提案された視野角補償フィルム等を利用すると、黒表示時に方位によっては斜め方向に光漏れが発生し、コントラストが低下してしまうことが判明した。
従って、本発明は、液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置、の中間調表示の視野角特性を改善に寄与するとともに、全方位の斜め方向において黒表示時の光漏れを軽減するのに寄与する光学補償フィルムを提供することを課題とする。
また、本発明は、中間調表示の視野角特性が改善され、及び全方位の斜め方向において高コントラストを達成可能な液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 少なくとも第1及び第2の光学異方性層を有する光学補償フィルムであって、フィルム面内進相軸とフィルム面の法線とを含む平面内で前記法線からフィルム面方向に時計回りに40°の方向から測定した面内レターデーションRe(+40°)及び前記法線から反時計回りに40°の方向から測定したRe(−40°)のうち、大きい方をReL及び小さい方をReSとした場合に、下記式(I)を満足することを特徴とする光学補償フィルム:
(I) 14 ≦ ReL/ReS ≦ 27 。
[2] 第1及び第2の光学異方性層それぞれの波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、20〜30nmであることを特徴とする[1]の光学補償フィルム。
[3] 第1及び第2の光学異方性層がそれぞれ、互いに平行で且つ逆向きの配向処理方向によって制御された配向状態に固定された液晶化合物の分子を含有する光学異方性層であることを特徴とする[1]又は[2]の光学補償フィルム。
[4] 第1及び第2の光学異方性層がそれぞれ、互いに平行で且つ逆向きの配向処理方向によって制御されたハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶化合物の分子を含有することを特徴とする[3]の光学補償フィルム。
[5] 波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が0〜3nmであり、及び同波長における厚み方向レターデーションRth(550)が0〜40nmであるポリマーフィルムをさらに有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの光学補償フィルム。
[6] 互いの偏光軸を直交にして配置された一対の偏光子と、前記一対の偏光子の間に垂直配向モードの液晶セルとを有する液晶表示装置であって、前記液晶セルと前記一対の偏光子それぞれとの間に、[1]〜[5]のいずれかの光学補償フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
[7] 前記垂直配向モード液晶セルが、マルチドメイン構造の液晶セルであることを特徴とする[6]の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置、の中間調表示の視野角特性を改善に寄与するとともに、全方位の斜め方向において黒表示時の光漏れを軽減するのに寄与する光学補償フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、中間調表示の視野角特性が改善され、及び全方位の斜め方向において高コントラストを達成可能な液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置、を提供することをできる。
【発明の実施の形態】
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
(レターデーション、Re、Rth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(10)及び式(11)よりRthを算出することもできる。
【0007】
【数1】

注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
【0008】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 210ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本明細書において、レターデーション等の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。なお、「面内遅相軸」とは、面内で屈折率が最大になる方向であり、「面内進相軸」とは面内遅相軸に面内で直交する方向である。
【0009】
本発明は第1及び第2の光学異方性層を有する光学補償フィルムに関する。図1に本発明の光学補償フィルムの性質を説明するための模式図を示す。本発明の光学補償フィルム10は、第1及び第2の面内屈折率が最大になる面内遅相軸sと、面内屈折率が最小となる面内進相軸Fとを有し、面内進相軸Fとフィルム面の法線Nとを含む平面P内で、法線Fからフィルム面方向に時計回りに40°の方向D+から測定した面内レターデーションRe(+40°)及び前記法線から反時計回りに40°の方向D−から測定したRe(−40°)のうち、大きい方をReL及び小さい方をReSとした場合に、下記式(I)を満足することを特徴とする。
(I) 14 ≦ ReL/ReS ≦ 27
【0010】
特許文献1及び2等に開示されている第1及び第2の光学異方性層を有する光学補償フィルムでは、第1及び第2の光学異方性層を互いの遅相軸を一致させて積層すると、その方位においては、視野角を法線方向から時計回り及び反時計回りのいずれかに所定の角度だけ回転(例えば極角60°)させても、第1及び第2の光学異方性層の進相方向が一致しているので、偏光板の偏光軸が直交している黒状態において光漏れは生じない。一方、面内遅相軸とは異なる方位(例えば、面内遅相軸と直交する進相軸方向)において、視野角を法線方向から時計回り及び反時計回りのいずれかに所定の角度だけ回転(例えば極角60°)させていくと、第1及び第2の光学異方性層は、異なった偏光媒体として作用するため、偏光板の偏光軸が直交している黒状態においても光漏れを生じてしまい、理想的な黒状態を得ることができない。本発明者が鋭意検討した結果、前記式(I)を満足することによって、2層の光学異方性層は互いに偏光特性をキャンセルして、いずれの方位の斜め方向においても、光漏れのない理想的な黒状態が達成できることを見出した。その結果、本発明の光学補償フィルムを液晶表示装置に利用することにより、第1及び第2の光学異方性層の組み合わせによる中間調表示の視野角特性の改善が達成できるとともに、黒表示時にいずれの方位においても光漏れを生じず、全方位の斜め方向において高コントラストを達成できる。
【0011】
VAモード液晶表示装置の光学補償に利用する態様では、第1及び第2の光学異方性層のRe(550)は、20〜30nmであるのが好ましい。第1及び第2の光学異方性層のRe(550)が前記範囲であると、VAモード液晶表示装置の中間調表示の視野角特性をより改善できるので好ましい。
【0012】
本発明の光学補償フィルムの一例の断面模式図を図2に示す。光学補償フィルム10は、互いに平行で且つ逆向きの関係(以下、この関係を「反平行」という)にある配向処理方向a及びbそれぞれによって制御された配向状態に固定された液晶化合物の分子を含有する、第1の光学異方性層12a及び第2の光学異方性層12bを有する。配向処理方向a及びbは、例えば、各光学異方性層の作製のために利用された配向膜の表面に施されたラビング処理方向である。VAモード液晶表示装置の光学補償に利用する態様では、光学異方性層12a及び12bは、互いに反平行な配向処理方向a及びbそれぞれによって制御された配向状態に固定された円盤状液晶化合物の分子を含有するのが好ましい。さらに、各光学異方性層中において円盤状液晶分子は、ハイブリッド配列状態に固定されているのが好ましい。所定の配向処理方向(例えば、ラビング処理方向)によって配向制御されたハイブリッド配列状態に固定された円盤状液晶の分子を含有する光学異方性層では、一般的には、その配向処理方向が、面内平均屈折率が最大となる方向になる。従って、ハイブリッド配列状態に固定された円盤状液晶の分子を含有する第1及び第2の光学異方性層12a及び12bはそれぞれ、配向処理方向a及びbの方向が面内屈折率が最大になる方向であり、光学補償フィルム10は、その方向に面内遅相軸sを有する。一方、配向処理方向a及びbは逆向きであるので、ハイブリッド配列の傾斜方位は同一ではなく、傾斜方位はそれぞれの配向処理方向a及びbによって決定され、反平行になっている。従って、面内遅相軸s以外の方位の斜め入射光に対して、第1及び第2の光学異方性層12a及び12bが互いに異なる偏光媒体として作用してしまうが、光学補償フィルム10は、前記式(I)を満足しているので、互いの偏光特性をキャンセルすることができ、その結果、いずれの方位の斜め入射光に対しても、黒表示時において光漏れを軽減することができる。
【0013】
図2の光学補償フィルムにおいて、第1及び第2の光学異方性層12a及び12bは、液晶分子の配向によって達成された光学特性を示し、Re(550)は20〜30nmに調整されているのが好ましい。
【0014】
図3に、本発明の光学補償フィルムの他の例の断面模式図を示す。図2と同一の部材には、同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。図3に示す光学補償フィルム10’は、第1及び第2の光学異方性層12a及び12bを支持する支持体14をさらに有する。支持体14は、ポリマーフィルムであるのが好ましい。ポリマーフィルムが面内遅相軸cを有する場合は、該面内遅相軸cを、第1及び第2の光学異方性層12a及び12bの配向処理方向a及びbと平行とするのが好ましく、その結果、光学補償フィルム10’は、配向処理方向a及びbと平行な面内遅相軸sを有する。支持体14は、第1及び第2の光学異方性層12a及び12bの光学特性を損なわないのが好ましい。この観点では、支持体14のRe(550)はおおよそ0nmであるのが好ましく、許容誤差は3nmである。一方、Rth(550)は、0〜40nmであるのが好ましい。
【0015】
なお、図3中、支持体14が、第2の光学異方性層12bに隣接する構成を示したが、勿論、支持体は第1の光学異方性層12aに隣接していてもよい。
【0016】
支持体14がポリマーフィルムであると、偏光膜の保護フィルムとしても利用することができるので、液晶表示装置に組み込む際に、光学補償フィルム10’と偏光膜とを一体化した状態で組み込むことができる。また、第1及び第2の光学異方性層12a及び12bが、塗布や転写などを利用して形成される自己支持性のない膜である態様では、ポリマーフィルムからなる支持体14によって支持することで、自己支持性のある部材となり、取り扱い性が改善されるので好ましい。
【0017】
図4に、図3に示す光学補償フィルム10'を備えたVAモード液晶表示装置の一例の断面模式図を示す。図3に示す液晶表示装置は、偏光板PL1及びPL2と、その間にVAモード液晶セルLCとを有する。偏光板PL1及びPL2はそれぞれ、偏光子16、その外側表面に保護フィルム18、及びその液晶セル側表面に光学補償フィルム10’を有する。図中、光学補償フィルム10’の層構造については省略するが、光学補償フィルム10’は、第1の光学異方性層12aを液晶セルLC側にして、及びポリマーフィルムからなる支持体14を偏光子16側にして貼合されている。偏光子16は互いの吸収軸cを直交にして配置されていて、光学補償フィルム10’はそれぞれ、その遅相軸sを隣接する偏光子16の吸収軸cと直交にして配置されている。即ち、光学補償フィルム10’は、互いの遅相軸sを直交にして配置されている。偏光子16の表面側保護フィルム18は、低透湿性のポリマーフィルムからなり、偏光子16を外部環境から保護する機能を有する。
【0018】
VAモード液晶セルLCは、無電界時に液晶分子が基板(不図示)に対してほぼ垂直になるため、無電界時に表示面法線方向から観察すると、クロスニコル偏光板と同等の黒レベルを達成することができる。さらに、マルチドメイン構造の液晶セルLCを利用すると、白表示/黒表示のコントラストの視野角依存性を軽減できるので好ましい。マルチドメイン構造は、基板内面に配置された突起部や、電界勾配によって作製できる。図3の液晶表示装置は、本発明の光学補償フィルム(図4中、光学補償フィルム10’)を有することで、中間調表示における視野角依存性が改善されているとともに、全方位の斜め方向において高コントラストを達成できる。
【0019】
以下、本発明の光学補償フィルムの作製に利用可能な材料及び作製方法等について種々説明する。
[第1及び第2の光学異方性層]
本発明の光学補償フィルムは、第1及び第2の光学異方性層を有する。前記第1及び第2の光学異方性層は、液晶化合物を含有する液晶組成物から形成するのが好ましい。
前記光学異方性層は、支持体の表面に直接形成してもよいし、支持体上に配向膜を形成し、該配向膜上に形成してもよい。また、別の基材に形成した液晶化合物層を、粘着剤等を用いて、支持体上に転写することで、本発明の光学補償フィルムを作製することも可能である。
光学異方性層の形成に用いる液晶化合物としては、棒状液晶化合物及びディスコティック液晶化合物が挙げられる。棒状液晶化合物及びディスコティック液晶化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、更に、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。中でもディスコティック液晶化合物が好ましい。
【0020】
[棒状液晶化合物]
本発明に使用可能な棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも用いることができる。言い換えると、棒状液晶化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。棒状液晶化合物については、季刊化学総説第22巻「液晶の化学(1994)日本化学会編」の第4章、第7章、及び第11章、及び液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
【0021】
本発明に用いる棒状液晶化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。棒状液晶化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基又はエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基が更に好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。
【0022】
[ディスコティック液晶化合物]
ディスコティック液晶化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。ディスコティック液晶化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がより好ましい。
【0023】
前記ディスコティック液晶化合物には、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、又は置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の、液晶性を示す化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。ディスコティック液晶化合物から光学異方性層を形成した場合、最終的に光学異方性層に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はない。例えば、低分子のディスコティック液晶化合物が熱、又は光で反応する基を有しており、熱又は光によって該基が反応して、重合又は架橋し、高分子量化することによって光学異方性層が形成される場合などは、光学異方性層中に含まれる化合物は、もはや液晶性を失っていてもよい。ディスコティック液晶化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0024】
ディスコティック液晶化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶化合物は、下記一般式(I)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
上記一般式(I)中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
【0027】
円盤状コア(D)の例として、(D1)〜(D15)を以下に示す。以下の各例において、LQ(又はQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
また、上記一般式(I)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリ−レン基、−CO−、−NH−、−O−及び−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが更に好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−及び−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが特に好ましい。前記アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。前記アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。前記アリ−レン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0033】
二価の連結基(L)の例として、(L1〜L24)を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基又はアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基及びアリ−レン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
【0034】
上記一般式(I)の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(Q)は、不飽和重合性基又はエポキシ基であることが好ましく、不飽和重合性基であることが更に好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。また、上記一般式(I)において、nは4〜12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0035】
前記光学異方性層中に液晶化合物の配向については、光学異方性層の分子対称軸の平均方向が、長手方向に対して43°〜47°であることが好ましい。VAモード液晶表示装置の光学補償に利用する態様では、第1及び第2の光学異方性層はそれぞれ、Re(550)が20〜30nmに調整されているのが好ましい。かかる光学特性は、ハイブリッド配列状態に固定されたディスコティック液晶分子を含有する光学異方性層によって達成することができる。ハイブリッド配列では、液晶化合物の分子対称軸と支持体の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ支持体の面からの距離の増加と共に増加又は減少している。角度は、距離の増加と共に増加することが好ましい。更に、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加及び減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加又は減少していればよい。更に、角度は連続的に変化することが好ましい。本発明の一例では、第1及び第2の光学異方性層中ディスコティック液晶化合物の分子が、その配向処理方向によって決定されるハイブリッド配列状態に固定されている。第1及び第2の光学異方性層のそれぞれの配向処理方向が反平行であると、その傾斜方位も反平行の関係になる。
【0036】
液晶化合物の分子対称軸の平均方向は、一般に液晶化合物もしくは配向膜の材料を選択することにより、又はラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の液晶化合物の分子対称軸方向は、一般に、液晶化合物又は液晶化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
液晶化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。分子対称軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶化合物と添加剤との選択により調整できる。特に界面活性剤に関しては、上述の塗布液の表面張力制御と両立することが好ましい。
【0037】
液晶化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマーは、ディスコティック液晶化合物と相溶性を有し、液晶化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。前記重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。
また、上記化合物の添加量は、液晶化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高めることができる。
【0038】
液晶化合物としてディスコティック液晶化合物を用いる場合は、ディスコティック液晶化合物とある程度の相溶性を有し、ディスコティック液晶化合物に傾斜角の変化を与えられるポリマーを用いるのが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。ディスコティック液晶化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることが更に好ましい。
【0039】
本発明において、第1及び第2の光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることが更に好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。
【0040】
<<支持体>>
本発明の光学補償フィルムは、前記第1及び第2の光学異方性層を支持する支持体を有していてもよい。前記支持体は、透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上である透明なポリマーフィルムが好ましい。支持体として使用可能なポリマーフィルムとしては、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースジアセテート)、ノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等からなるポリマーフィルムが挙げられる。市販のポリマー(ノルボルネン系ポリマーでは、ア−トン(登録商標)、及びゼオネックス(登録商標)を用いてもよい。中でもセルロースエステルからなるフィルムが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルからなるフィルムが更に好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。特に、炭素原子数が2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)又は4(セルロースブチレート)が好ましい。これらの中でも、セルロースアセテートからなるフィルムが特に好ましい。また、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることもできる。
【0041】
なお、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても、国際公開WO00/26705号パンフレットに記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、本発明において、支持体として用いることもできる。
【0042】
本発明の光学補償フィルムを、偏光板の保護フィルムとして使用する場合は、ポリマーフィルムとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度は、57.0〜62.0%であることが更に好ましい。ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算によって求められる。セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。また、セルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜40であることが好ましく、1.0〜1.65であることが更に好ましく、1.0〜1.6であることが特に好ましい。
【0043】
セルロースアセテートでは、セルロースの2位、3位及び6位のヒドロキシルが均等に置換されるのではなく、6位の置換度が小さくなる傾向がある。支持体として用いるポリマーフィルムでは、セルロースの6位置換度が、2位、3位に比べて同程度又は多い方が好ましい。2位、3位及び6位の置換度の合計に対する6位の置換度の割合は、30〜40%であることが好ましく、31〜40%であることがより好ましく、32〜40%であることが特に好ましい。また、6位の置換度は0.88以上であることが好ましい。なお、各位置の置換度は、NMRによって測定することできる。6位置換度が高いセルロースアセテートは、特開平11−5851号公報の段落番号[0043]〜「0044」に記載の合成例1、段落番号[0048]〜[0049]に記載の合成例2、及び段落番号[0051]〜[0052]に記載の合成例3の方法を参照して合成することができる。
【0044】
支持体のRe(550)及びRth(550)は、第1及び第2の光学異方性層の光学特性を損なわない範囲であるのが好ましい。その観点からは、支持体のRe(550)はおおよそ0nmであるのが好ましく、許容誤差は3nmである。一方、Rth(550)は、0〜40nmであるのが好ましい。但し、支持体の光学特性を積極的に光学補償に利用する態様では、この範囲に限定されるものではない。
【0045】
<<配向膜>>
前記第1及び第2の光学異方性層の作製には、配向膜を利用するのが好ましい。
前記配向膜は、架橋されたポリマーからなる層であるのが好ましい。配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーであっても、架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。上記配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱又はPH変化等により、ポリマー間で反応させて形成するか、又は、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成することができる。
【0046】
架橋されたポリマーからなる配向膜は、通常、上記ポリマー又はポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、支持体上に塗布した後、加熱等を行なうことにより形成することができる。後述のラビング工程において、配向膜の発塵を抑制するために、架橋度を上げておくことが好ましい。前記塗布液中に添加する架橋剤の量(Mb)に対して、架橋後に残存している架橋剤の量(Ma)の比率(Ma/Mb)を1から引いた値(1−(Ma/Mb))を架橋度と定義した場合、架橋度は50〜100%が好ましく、65〜100%がより好ましく、75〜100%が特に好ましい。
【0047】
上記ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、更にゼラチン、ポリビルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0048】
上記ポリマーの中で、ポリビニルアルコール、又は変性ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールとしては、例えば鹸化度70〜100%のものであり、一般に鹸化度80〜100%のものであり、より好ましくは鹸化度85〜95%のものである。重合度としては、100〜3,000の範囲が好ましい。変性ポリビニルアルコールとしては、共重合変性したもの(変性基として、例えば、COONa、Si(OX)3、N(CH33・Cl、C919COO、SO3、Na、C1225等が導入される)、連鎖移動により変性したもの(変性基として、例えば、COONa、SH、C1225等が導入されている)、ブロック重合による変性をしたもの(変性基として、例えば、COOH、CONH2、COOR、C65等が導入される)等のポリビニルアルコールの変性物を挙げることができる。重合度としては、100〜3,000のも範囲が好ましい。これらの中で、鹸化度80〜100%の未変性〜変性ポリビニルアルコールが好ましく、より好ましくは鹸化度85〜95%の未変性、又はアルキルチオ変性ポリビニルアルコールである。
【0049】
配向膜に用いる変性ポリビニルアルコールとして、下記一般式(2)で表わされる化合物とポリビニルアルコールとの反応物が好ましい。なお、下記一般式(2)において、R1は無置換のアルキル基、又はアクリロリル基、メタクリロイル基もしくはエポキシ基で置換されたアルキル基を表わし、Wはハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表わし、Xは活性エステル、酸無水物又は酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群を表わし、lは0又は1を表わし、nは0〜4の整数を表わす。
【0050】
【化6】

【0051】
また、配向膜に用いる変性ポリビニルアルコールとして、下記一般式(3)で表わされる化合物とポリビニルアルコールとの反応物も好ましい。なお、下記一般式(3)において、X1は活性エステル、酸無水物又は酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群を表わし、mは2〜24の整数を表わす。
【0052】
【化7】

【0053】
前記一般式(2)、及び一般式(3)により表される化合物と反応させるために用いられるポリビニルアルコールとしては、上記変性されていないポリビニルアルコール、及び上記共重合変性したもの、即ち連鎖移動により変性したもの、ブロック重合による変性をしたもの等のポリビニルアルコールの変性物、を挙げることができる。
上記特定の変性ポリビニルアルコールの好ましい例としては、特開平8−338913号公報に詳しく記載されている。配向膜にポリビニルアルコール等の親水性ポリマーを使用する場合、硬膜度の観点から、含水率を制御することが好ましく、制御される含水率としては、0.4〜2.5%であることが好ましく、0.6〜1.6%であることがより好ましい。含水率は、市販のカールフィッシャー法の水分率測定器で測定することができる。
なお、配向膜は、10μm以下の膜厚であるのが好ましい。
【0054】
本発明のロール状光学補償フィルムの製造方法の一例は、下記工程を含む。
工程(1):長手方向に搬送される長尺状の支持体の表面又は該支持体上に形成された配向膜の表面に、ラビングローラによりa方向にラビング処理を施す工程。
工程(2):液晶性化合物を含む塗布液を前記ラビング処理面に塗布する工程。
工程(3):塗布された塗布液を乾燥するのと同時に又は乾燥した後に、液晶転移温度以上の温度で前記液晶化合物を配向させ、その配向を固定して第1の光学異方性層を作製する工程。
工程(4):第1の光学異方性層の表面、又は第1の光学異方性層上に形成された配向膜の表面に、ラビングローラによりb方向(但し、b方向はa方向と平行であり且つ逆向きな方向である)にラビング処理を施す工程。
工程(5):液晶性化合物を含む塗布液を前記ラビング処理面に塗布する工程。
工程(6):塗布された塗布液を乾燥するのと同時に又は乾燥した後に、液晶転移温度以上の温度で前記液晶化合物を配向させ、その配向を固定して第2の光学異方性層を作製する工程。
工程(7):第1及び第2の光学異方性層が形成された長尺状の積層体を巻き取る工程。
この方法により、長尺状の光学補償フィルムを連続的に製造することができ、さらに長尺状の偏光膜とロールtoロールで貼合することにより、偏光板を連続的に製造することができる。
【0055】
更に、本発明の光学補償フィルムの製造方法においては、以下の(a)〜(d)のいずれかの要件を含むことが望ましい。なお、これらの各工程の詳細は、特開平9−73081号公報に記載されている。
(a)上記工程(2)及び(5)において、液晶化合物として架橋性官能基を有する重合性液晶化合物を用い、上記工程(3)及び(6)において、連続的に塗布層を光照射して重合性液晶化合物を重合により硬化させて配向状態に固定する。
(b)上記工程(1)及び(4)において、前記支持体又は配向膜の表面を除塵しながら、ラビングローラでラビング処理する。
(c)上記工程(2)及び(5)の前に、ラビング処理した前記支持体又は前記配向膜の表面、及びラビング処理した第1の光学異方性層又はその上に形成された配向膜を除塵する工程を行う。
(d)上記工程(7)の前に、形成した第1及び第2の光学異方性層の光学特性を連続的に測定することにより検査する検査工程。
【0056】
ここで、上記工程の詳細について、以下に説明する。
[工程(1)及び(4)]
前記工程(1)及び(4)では、長手方向に搬送される長尺状の支持体の表面又は該支持体上に形成された配向膜の表面に、ラビングローラによりラビング処理を施す。
【0057】
前記工程(1)及び(4)に用いるラビングローラの直径は、ハンドリング適性、及び布寿命の観点から、100〜500mmであることが好ましく、200〜400mmであることが更に好ましい。ラビングローラの幅は、搬送するフィルムの幅よりも広いことが必要であり、フィルム幅×21/2以上であることが好ましい。また、ラビングローラの回転数は、発塵の観点から低く設定することが好ましく、液晶化合物の配向性にもよるが、100〜1,000rpmであることが好ましく、250〜850rpmであることが更に好ましい。
【0058】
ラビングロールの回転数を低くしても液晶化合物の配向性を維持するには、ラビング時の支持体又は配向膜を加熱することが好ましい。加熱温度は、支持体又は配向膜表面の膜面温度で、(素材のTg−50℃)〜(素材のTg+50℃)であることが好ましい。ポリビニルアルコールからなる配向膜を使用する場合は、ラビングの環境湿度を制御することが好ましく、25℃の相対湿度として25〜70%RHであることが好ましく、30〜60%RHであることが更に好ましく、35〜55%RHであることが特に好ましい。
【0059】
支持体の搬送速度は、生産性の観点と液晶の配向性の観点から、10〜100m/分であることが好ましく、15〜80m/分であることが更に好ましい。搬送は、従来、フィルムの搬送に用いられる種々の装置を用いて行うことができ、特に搬送方式については制限されない。
【0060】
なお、配向膜は、前述のポリビニルアルコール等の素材を、水及び/又は有機溶媒等に溶解した塗布液を、支持体の表面に塗布して、乾燥することによって作製することができる。配向膜の作製は、上記一連の工程の前に行うことができ、搬送される長尺状の支持体の表面に配向膜を連続的に作製してもよい。
【0061】
[工程(2)及び(5)]
上記工程(2)及び(5)では、液晶性化合物を含む塗布液を前記ラビング処理面に塗布する。光学異方性層形成用の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0062】
均一性の高い光学異方性層を作製するためには、塗布液の表面張力は、25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であるのが更に好ましい。この低表面張力を実現するには、該光学異方性層を形成する塗布液に、界面活性剤、又はフッ素化合物、特に、下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体等のフッ素系ポリマーを含有することが好ましい。
(i)下記一般式(4)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)ポリ(オキシアルキレン)アクリレート及び/又はポリ(オキシアルキレン)メタクリレート
【0063】
【化8】

【0064】
上記一般式(4)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、又は−N(R2)−を表し、mは、1以上6以下の整数、nは、2〜4の整数を表す。また、R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0065】
光学異方性層形成用塗布液中に添加する前記フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましい。
更に、前記フッ素系ポリマーの添加量は、液晶化合物を主とする塗布組成物(溶媒を除いた塗布成分)に対して0.005〜8質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましく、0.05〜0.5質量%が更に好ましい。前記フッ素系ポリマーの添加量が、0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学補償フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性、等)に悪影響を及ぼす。
【0066】
前記塗布液のラビング処理面への塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施することができる。塗布量は、光学異方性層の所望の厚みに基づいて適宜決定することができる。
【0067】
[工程(3)及び(6)]
上記工程(3)及び(6)では、塗布された塗布液を乾燥するのと同時、又は乾燥した後に、液晶転移温度以上の温度で前記液晶化合物を配向させ、その配向を固定して光学異方性層を作製する。液晶化合物は、乾燥時の加熱によってもしくは乾燥後の加熱によって、所望の配向となる。乾燥温度は、塗布液に用いた溶媒の沸点、ならびに支持体及び配向膜の素材を考慮して決定することができる。液晶化合物の配向温度は、用いる液晶化合物の液晶相−固相転移温度に応じて決定することができる。
液晶化合物として、ディスコティック液晶化合物を用いる場合は、配向温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃が更に好ましい。
また、液晶状態の粘度は、10〜10,000cpであることが好ましく、100〜1,000cpであることが更に好ましい。
粘度が低すぎると、配向時の風の影響を受けやすく、連続生産のために、非常に高精度の風速/風向制御が必要となる。一方、粘度が高いと風の影響は受けにくいが、液晶の配向が遅くなり、生産性が非常に悪化することとなる。
液晶層の粘度は、液晶化合物の分子構造によって適宜制御できる。また、上述の添加剤(特にセルロース系のポリマー、等)、及びゲル化剤等を適量使用することで所望の粘度に調整する方法が好ましく用いられる。
加熱は、所定の温度の温風を送風することによって、又は所定の温度に維持された加熱室内を搬送することによって実施できる。
このときの温風は、下記式(3)に示すように、液晶化合物層に当たるラビング方向以外の風速を制御されることが好ましい。なお、下記式(3)中、Vは液晶化合物表面の膜面風速(m/sec)、ηは液晶化合物の配向温度での液晶化合物層の粘度(cp)である。
0<V<5.0×10-3×η・・・・・・・・・・式(3)
【0068】
更に、配向させた液晶化合物を、配向状態を維持して固定し、光学異方性層を形成する。液晶化合物の固定は、固相転移温度まで冷却することによって、又は重合反応により実施することができるが、重合反応により行うのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、及び米国特許2367670号の各明細書に記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書に記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書に記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、及び米国特許2951758号の各明細書に記載)、トリアリールイミダゾールダイマーと、p−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書に記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、及び米国特許4239850号明細書に記載)、及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書に記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることが更に好ましい。
【0069】
液晶化合物の重合を進行させて固定するための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20〜5,000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2の範囲にあることが更に好ましい。
また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光照射は、光学異方性層形成用塗布液を塗布した支持体を、1以上の光源が上下及び左右のいずれかの位置に配置された搬送路を通過させることによって実施することができる。
【0070】
上記工程(7)に移行する前に、上記工程(6)で作製した第2の光学異方性層の上に、保護層を設けることもできる。例えば、あらかじめ作製した保護層用フィルムを、長尺状に作製された光学異方性層の表面に連続的にラミネートしてもよい。
【0071】
上記工程(7)では、前記光学異方性層が形成された長尺状の積層体を巻き取る。巻き取りは、例えば、連続的に搬送される光学異方性層を有する支持体を、円筒状の芯に巻きつけることによって行ってもよい。
上記工程(7)により得られる光学補償フィルムは、ロール形態であるので、大量に製造した場合にもその取り扱いが容易である。そのままの形態で保管・搬送できる。
【0072】
上記例は、塗布工程を2回含むが、例えば、1回の塗布工程により1の光学異方性層を形成し、それを所定に大きさに切断して、配向処理方向が反平行となるようにそれぞれの光学異方性層を貼り合せて、第1及び第2の光学異方性層の積層体を作製することもできる。
【0073】
(偏光板)
上記した通り、本発明の光学補償フィルムは、偏光膜と貼合して、楕円偏光板として液晶表示装置に組み込むことができる。前記偏光膜としては、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、又はバインダーとヨウ素、もしくは二色性色素とからなる偏光膜が好ましい。前記ヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
現在市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
【0074】
前記偏光膜の本発明の光学補償フィルムを貼合していない側の表面には、保護フィルムを貼合するのが好ましい。保護フィルムとしては、前記支持体として用いるポリマーフィルの例と同様である。
【0075】
本発明の光学補償フィルムは、VAモード、特にマルチドメインVAモード液晶表示装置に有用である。従来のVAモード液晶表示装置は、中間調表示に視野角依存性があったが、本発明の液晶表示装置によれば、25/255階調のγ特性について、従来技術よりも大きな改善が見込まれる。さらに、本発明の液晶表示装置は、全方位の斜め方向において、高コントラストを達成可能である。具体的には、画面左右方向を方位角0度とした場合に、0°及び90°の方位において極角60°の斜め方向から測定したコントラストが、50°程度を達成可能であり、及び45°の方位において極角60°の斜め方向から測定したコントラストが、25以上を達成可能である。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
(光学補償フィルムの作製)
<支持体の作成>
光学補償フィルムの支持体として、富士フイルム社製のZ−タックを準備した。この支持体のRe及びRthの値を測定したところ、Re及びRthともほぼ0nmであった。
【0077】
準備した支持体のバンド面側に、1.0Nの水酸化カリウム溶液(溶媒:水/イソプロピルアルコール/プロピレングリコール=69.2質量部/15質量部/15.8質量部)を10mL/m2塗布し、約40℃の状態で30秒間保持した後、アルカリ液を掻き取り、純水で水洗し、エアーナイフで水滴を削除した。
その後、100℃で15秒間乾燥した。この支持体の純水に対する接触角を求めたところ、42°であった。
【0078】
<<配向膜の作製>>
この支持体上(アルカリ処理面)に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、更に90℃の温風で150秒乾燥し、配向膜を作製した。
【0079】
[配向膜塗布液組成]
・下記一般式(6)に示す変性ポリビニルアルコール・・・・・・・・・10質量部
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・371質量部
・メタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・119質量部
・グルタルアルデヒド(架橋剤)・・・・・・・・・・・・・・・・・0.5質量部
・クエン酸エステル(三協化学(株)製 AS3)・・・・・・・・ 0.35質量部
【0080】
【化9】

【0081】
<<ラビング処理>>
支持体を速度20m/分で搬送し、長手方向にラビング処理されるようにラビングロール(300mm直径)を設定し、650rpmで回転させて、支持体の配向膜設置表面にラビング処理を施した。ラビングロールと支持体との接触長さは、18mmとなるように設定した。
【0082】
<光学異方性層の形成>
前記配向膜上に、下記一般式(7)に示すディスコティック液晶性化合物41.01kg、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06kg、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.45kg、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35kg、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45kgを102kgのメチルエチルケトンに溶解した塗布液に、フルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780 大日本インキ(株)製)を0.1kg加え、#3.4のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されている支持体の配向膜面に連続的に塗布して、光学異方性層(ディスコティック液晶化合物層)を形成した。
【0083】
【化10】

【0084】
室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、130℃の乾燥ゾ−ンでディスコティック液晶化合物層の膜面風速が、2.5m/secとなるように、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾ−ンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させて、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷して光学異方性層を形成した(第1の光学異方性層)。
次に、第1の光学異方性層上に、上記配向膜塗布液を塗布して、膜を形成し、その膜面に対して長手方向にラビング処理を行った。但し、処理の方向を上記とは逆向きに行った。このラビング処理面に、上記と同一の光学異方性層形成用塗布液を同様に塗布、乾燥及び硬化して、室温まで放冷して光学異方性層(第2の光学異方性層)を形成した。
その後、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。このようにして、ロール状光学補償フィルム1を作製した。作製したロール状光学補償フィルム1の一部を切り取り、サンプルとして用いて、光学特性を測定した。光学補償フィルム1のRe(550)を測定した。結果を表1に示す。また、図1中のD+方向からRe(+40°)及びD−方向からRe(−40°)をそれぞれ測定し、大きいほうをReL及び小さいほうをReSとした。結果を表1に示す。
【0085】
またこの光学補償フィルム1の面内遅相軸は、長手方向と一致し、即ち、支持体であるセルロースアシレートフィルムの面内遅相軸、第1及び第2の光学異方性層のラビング処理方向と一致していた。
【0086】
上記光学補償フィルム1の作製において、第1及び第2の光学異方性層の形成方法中、
光学異方性層の膜厚及びラビングの条件(接触長さ)を代えた以外は同様にして、下記表1に示す光学補償フィルム2及び3を作製した。
また、光学補償フィルム1の作製において、支持体として用いたセルロースアシレートフィルムを、富士フイルム社製の「フジタック」セルロースアシレートフィルムに代え(Re(550)及びRth(550)は下記表1に示す)、及び第1及び第2の光学異方性層の形成方法中、光学異方性層の膜厚及びラビングの条件(接触長さ)を代えた以外は同様にして、下記表1に示す光学補償フィルム4を作製した。
光学補償フィルム2〜4のRe(550)、ReL及びReSについても光学補償フィルム1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0087】
[比較例用光学補償フィルムの作製]
比較例用光学補償フィルム1cとして、セルロースアシレートフィルムを2軸延伸して作製したポリマーフィルム(Re(550)が55nm及びRth(550)が125nm)を使用した。
光学補償フィルム1の作製において、第1及び第2の光学異方性層の形成方法中、
光学異方性層の膜厚及びラビングの条件(接触長さ)を代えた以外は同様にして、比較例用光学補償フィルム2cを作製した。
光学補償フィルム1の作製において、第1及び第2の光学異方性層の形成方法中、
光学異方性層の膜厚及びラビングの条件(接触長さ)を代えた以外は同様にして、比較例用光学補償フィルム3cを作製した。
光学補償フィルム2c及び3cのRe(550)、ReL及びReSについても光学補償フィルム1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0088】
[偏光板の作製]
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着して偏光膜を作製した。
この偏光膜の表面に、光学補償フィルム1〜4、及び比較例用光学補償フィルム1c〜3cのそれぞれを貼合し、偏光板をそれぞれ作製した。なお、各偏光板の光学補償フィルムを貼合しなかった表面には、保護のため市販のセルロースアシレートフィルム(富士フイルム製、フジタック)を貼り付けた。
また、下記表1に示す比較例4用の偏光板として、上記偏光膜の両面に、市販のセルロースアシレートフィルム(富士フイルム製、フジタック)を貼り付けた偏光板も作製した。
【0089】
[液晶表示装置の作製と評価]
上記で作製した各偏光板を用いて、図4に示すVAモード液晶表示装置と同一の構成の液晶表示装置を作製した。具体的には、上記で作製した各偏光板を2枚ずつ用意し、図4中の偏光板PL1及びPL2としてそれぞれ用いた。液晶セルLCとして、垂直配向セルを作製した。この液晶セルは、液晶(ZLI−2806、メルク社製)を含み、セル中において、液晶が基板面に対して垂直配向になるように、基板にはあらかじめ垂直配向材(LQ−1800,日立化成デュポンマイクロシステムズ社製)を塗布・乾燥したものを用いた。セルギャップはシリカ球を用いて形成した。セルの複屈折率であるΔn×d=300nmであった。各層の軸関係も図4に示す通りとした。
作製した各液晶表示装置について、以下の評価を行った。
・コントラスト評価
画面左右方向を0度の方位として、(1)方位角0度及び極角60度、(2)方位角90度及び極角60度、及び(3)方位角45度及び極角60の3つの斜め方向の、白表示及び黒表示の透過率をそれぞれ測定して、コントラストを算出した。結果を下記表1に示す。
・ γ特性(25/255階調)評価(中間調表示の輝度の視野角依存性の評価)
画面左右方向を0度の方位として、方位角45度及び極角60度方向の、中間調におけるγ特性を測定した。中間調を代表する階調として25階調を用いた。25階調におけるγ特性は、25階調輝度値をL25、255階調輝度値(白状態)をL255とすると、次の式で与えられる。
γ=log(L25/L255)/log(25/255)
γ特性の結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

*1 Re(550)が55nm及びRth(550)が125nmのポリマーフィルムを使用。
【0091】
上記表に示す結果から、前記式(I)を満足する、第1及び第2の光学異方性層を有する光学補償フィルムを利用することで、中間調表示の視野角特性が改善されるとともに(γ特性が0.9以上)、0°、90°及び45°のいずれの方位においても、斜め方向(極角60°)において高コントラストが達成できることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の説明のために用いた、光学補償フィルムの斜視図である。
【図2】本発明の光学補償フィルムの一例の断面模式図である。
【図3】本発明の光学補償フィルムの他の例の断面模式図である。
【図4】本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
【符号の説明】
【0093】
10、10’ 光学補償フィルム
12a 第1の光学異方性層
12b 第2の光学異方性層
14 支持体
16 偏光子
18 保護フィルム
a、b 配向処理方向
c 吸収軸
S、s 光学補償フィルムの面内遅相軸
F 光学補償フィルムの面内進相軸
N 光学補償フィルム面の法線方向
P 光学補償フィルムの進相軸Sと法線Nとを含む面
D+ 面P内で法線をフィルム面方向に時計回りに40°(+40°)回転させた方向
D− 面P内で法線をフィルム面方向に反時計回りに40°(−40°)回転させた方向
PL1、PL2 偏光板
LC 液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1及び第2の光学異方性層を有する光学補償フィルムであって、フィルム面内進相軸とフィルム面の法線とを含む平面内で前記法線からフィルム面方向に時計回りに40°の方向から測定した面内レターデーションRe(+40°)及び前記法線から反時計回りに40°の方向から測定したRe(−40°)のうち、大きい方をReL及び小さい方をReSとした場合に、下記式(I)を満足することを特徴とする光学補償フィルム:
(I) 14 ≦ ReL/ReS ≦ 27 。
【請求項2】
第1及び第2の光学異方性層それぞれの波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、20〜30nmであることを特徴とする請求項1に記載の光学補償フィルム。
【請求項3】
第1及び第2の光学異方性層がそれぞれ、互いに平行で且つ逆向きの配向処理方向によって制御された配向状態に固定された液晶化合物の分子を含有する光学異方性層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学補償フィルム。
【請求項4】
第1及び第2の光学異方性層がそれぞれ、互いに平行で且つ逆向きの配向処理方向によって制御されたハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶化合物の分子を含有することを特徴とする請求項3に記載の光学補償フィルム。
【請求項5】
波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が0〜3nmであり、及び同波長における厚み方向レターデーションRth(550)が0〜40nmであるポリマーフィルムをさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
【請求項6】
互いの偏光軸を直交にして配置された一対の偏光子と、前記一対の偏光子の間に垂直配向モードの液晶セルとを有する液晶表示装置であって、前記液晶セルと前記一対の偏光子それぞれとの間に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学補償フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
前記垂直配向モード液晶セルが、マルチドメイン構造の液晶セルであることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−180946(P2009−180946A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20150(P2008−20150)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】