説明

光学要素をガイドするシステム

【課題】既知のものよりも調整中に容易に、または滑らかに移動する、光学要素、特にズームシステムのレンズの遊びのないガイドシステムを提供する。
【解決手段】顕微鏡の光軸に沿って光学要素をガイドするシステムであって、光軸に対して平行に延び、少なくとも部分的に磁化可能材料から成る少なくとも1つのガイドロッド(312、314)と、光学要素のキャリア(320)とを有し、前記キャリアは、前記ガイドロッド(312、314)に沿って変位可能で、それ自体と前記ガイドロッド(312、314)との間に磁力をもたらす手段を有し、磁力をもたらす手段は、キャリア(320)が変位する際に、軸車軸を中心として回転しながら、ガイドロッド(312、314)に沿って転がるように構成された少なくとも1つの磁化可能な車輪(370、380、382)を有し、ガイドロッド(312、314)は磁化可能な材料で作られるか、磁化可能な車輪(370、380、382)は少なくとも部分的に永久磁性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文(上位概念部分、所謂おいて部分、プリアンブル部分)に記載される光学要素をガイドするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなシステムは、例えば、レンズまたはレンズ群等の光学組立体が互いに相対移動するズームシステムで使用される。例えば、ズームシステムでは、個々のレンズまたはレンズ群で構成される個々のズームシステム構成要素は、ズームシステムの光軸に沿って互いに相対移動する。
【0003】
特許文献1には、レンズスライドが磁石により2つのガイドロッドに保持され、ガイドロッドに沿って遊びなしで移動可能な、遊びのないレンズガイドシステムが記載されている。そのシステムでは、1枚または複数枚のレンズがレンズスライドに取り付けられる。レンズスライドは、レンズスライドの片側に配置されたカム従動節に係合する円筒カムの回転により、ガイドロッドのうちの1つに沿って移動する。その特許および本明細書において使用される用語「レンズスライド」は、レンズまたは装着されたレンズ群を受けるように構成された機械的構成要素を指すものとして理解される。それらレンズまたはレンズ群は、軸方向または横方向に調整可能でもあり得る。レンズまたはレンズ群は、レンズスライド自体が光軸に平行する軸に沿って移動する際に、光軸に沿ってレンズスライドによりガイドされる。したがって、レンズスライドは、光学要素の特別な種類のキャリアを構成する。
【0004】
そのようなレンズスライドは、一方の(第1の)ガイドロッドのみに対して作用するため、位置合わせから外れて回転または傾斜しがちである。一方の(第1の)ガイドロッドを中心とした回転は、第2のガイドロッドへの係合により回避される。
【0005】
全体的に、この場合、レンズスライドをガイドロッド上に実質的に傾斜しないように固定するために、大きな磁力が必要である。しかし、それら大きな磁力は、例えば、高い摩擦を生じさせると共に、ズーム調整の調整性を悪化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 96/34306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、当該技術分野において既知のものよりも調整中に容易に、または滑らかに移動する、光学要素、特にズームシステムのレンズの遊びのないガイドシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴構成を備えるシステムにより達成される。
【0009】
光学要素のキャリア、特に、少なくとも1つのレンズのレンズスライド(上記定義参照)と、少なくとも部分的に磁性材料または磁化可能な材料で作られた少なくとも1つのガイドロッドの間に磁力を提供するために、キャリアに、少なくとも1つの磁化可能なガイドロッドに沿ってキャリアが変位する際に、そのガイドロッドに沿って転がるように構成された磁性または磁化可能な車輪が設けられることは、本発明のガイドシステムの特徴である。本明細書において使用される用語「車輪」は、特に、軸を中心として回転可能な構成要素を指すものとして理解される。さらに、本明細書において使用される用語「車輪」は、周縁転がり面の軸方向寸法、すなわち、幅に対して任意の限定を課すことを意味せず、したがって、薄いまたは円盤のような本体ならびに幅広の、すなわちローラ円柱体のような本体もこの用語に含まれる。本発明によれば、磁化可能または磁性の車輪が、ガイドロッドの長手軸に平行する方向に転がることに留意されたい。それにより、(円柱形)ロッドと車輪との接触面積が最小になる。
【0010】
本明細書において使用される用語「軸」は、回転の(数学的な)軸および車輪が回転する(物理的な)軸または車軸の両方を含み得る。文脈に応じて、これら2つの意味のうちの一方のみが当てはまる場合もある。
【0011】
本明細書において使用される用語「磁化可能」は、「部分的または全体的に磁化可能な材料で作られる」ことを意味するものと理解される。用語「磁化可能」は、本明細書では特にガイドロッドおよび車輪に関して使用され、特に、永久磁性材料(「硬磁性」または磁気的に硬い材料とも呼ばれる)および軟磁性(磁気的に軟らかい)材料を含むことが意図される。
【0012】
当該技術分野において一般に使用される用語によれば、永久磁石材料は、磁化可能な材料、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、またはフェライト等の強磁性材料で構成され、外部磁場または電流に頼らずに永久的な静磁場を生み出す材料であると理解される。
【0013】
同様に、従来の用語によれば、軟磁性材料は、例えば、永久磁石の存在により生じる磁場で、例えば、容易に磁化可能な強磁性材料であると理解される。軟磁性材料の例としては、金属および強磁性材料である鉄、コバルト、およびニッケルに基づく合金が挙げられる。金属酸化物に基づくフェライト等のセラミック材料も単なる例として言及され得る。
【0014】
したがって、使用される用語によれば、本発明は特に、軟磁性を有するガイドロッドと永久磁性を有し、ガイドロッド上を転がるように構成された車輪との組み合わせ、ならびに逆に、永久磁性を有するガイドロッドおよび軟磁性を有し、ガイドロッド上を転がるように構成された車輪を備える。永久磁性を有するガイドロッドと、これもまた永久磁性を有して、ガイドロッド上を転がる車輪との組み合わせも含まれる。
【0015】
したがって、従来技術と比較して、同様の大きさの磁力をキャリアとガイドロッドとの間に提供して、特に、摩擦力およびその影響の発生を大きく制限しながら、同時に傾斜を回避することができる。これは、調整中のガイドシステムの移動しやすさを大幅に増大させる。本発明による磁化可能な車輪は、取り付けが容易であると共に、一定の力を提供することが可能である。
【0016】
本発明によるシステムまたは装置の有利な実施形態は、独立請求項の主旨である。
【0017】
好ましい実施形態によれば、磁化可能な車輪は、ガイドロッドに沿って転がるように構成された輪形永久磁石を備える。そのような永久磁石(輪形磁石)は、輪形S極を第1の平面に有し、対応する輪形N極を第2の平面(第1の平面の上方に配置される)に有する。輪形永久磁石は、ガイドロッドに沿って転がるように構成される。必要な部品数が非常に少ないことは、この実施形態の特徴である。
【0018】
別の好ましい実施形態によれば、磁化可能な車輪は、ガイドロッドに沿って転がるように構成された軟磁性(磁気的に軟らかい)車輪を備え、少なくとも1つの永久磁石が、軟磁性車輪の(軸方向において)少なくとも片側に設けられる。したがって、全体的に、本明細書において使用される用語によれば、永久磁性を有する磁化可能な車輪が提供される。この実施形態は、車輪の片側または側面の周囲に配置される、適した数の小型永久磁石の提供および軟磁性車輪への輪形磁石の提供の両方を含む。いくつかの(より少数の)永久磁石を提供することにより、輪形磁石を使用するよりも安価になる。
【0019】
有利なことに、永久磁石が軟磁性車輪の両側に設けられる。
【0020】
両実施形態では、いくつかの磁石を車輪の(片側または両側の)周縁に均一に分散させることが有利である。
【0021】
少なくとも1つの永久磁石の極は、好ましくは、軟磁性車輪の軸に対して互いに軸方向に位置合わせされる。これは、例えば、永久磁石のN極が車輪に直接隣接、すなわち直接接触し、その一方で、N極に隣接するS極の車輪からの距離は(軸方向において)より大きいことを意味する。もちろん、逆順の配置(S極が直接車輪上にある)も可能である。
【0022】
車輪の片側にあるすべての磁石が同じ軸方向の向きを有することを確実にしなければならない。
【0023】
永久磁石が車輪の両側に設けられる場合、車輪の異なる側にある永久磁石の極が互いに対して逆方向の向きになることを確実にすることが有利である。これは、例えば、両側において、すべてのN極がS極よりも車輪の各側面から離れること、またはこの逆を意味する。
【0024】
有利なことに、磁化可能な車輪がガイドロッドに沿って転がる際の回転軸である物理的な軸(車軸)は、非磁化可能な材料または非磁性材料から作られる。これにより、キャリアとガイドロッドとの間に作用する磁力を低減する磁束による軸(車軸)の通過を回避することが可能になる。しかし、軸(車軸)は磁化可能材料で作られてもよい。この場合、十分な遊びが軸(車軸)または回転軸と車輪上に形成される少なくとも1つの永久磁石との間に設けられることを確実にすることが有利である。
【0025】
車輪を支持する玉軸受を使用して、または使用せずに、磁化可能な車輪を(物理的な)軸(車軸)を中心として回転可能なように取り付けることも好ましい。玉軸受の使用により、調整中に移動を特に容易に行うことができる。他方、従来技術と比較して、磁力に起因する摩擦力は、車輪を直接、すなわち玉軸受を使用しなくとも、回転可能に支持し得るような程度まで低減される。
【0026】
さらに、磁化可能な車輪の周縁回転面(接触面)がプロファイル形状を有することが好ましい。そのようなプロファイルをガイドロッドの形状に合うように構成することにより、有利なことに、ガイドロッドに沿った車輪の回転移動をさらに安定化させることが可能である。
【0027】
2つのガイドロッドを提供し、各ガイドロッドに沿って、少なくとも1つの磁化可能な車輪が回転することが好ましい。この実施形態では、位置合わせから外れる傾斜および回転は、特に効率的に回避される。
【0028】
さらに好ましい実施形態では、一方のガイドロッドは、互いにV字形に配置された少なくとも一対の磁化可能な車輪に係合可能である。この特徴により、V字形の溝により傾斜および回転に対する耐性に関して提供される特別な利点を本発明でも使用することができる。
【0029】
本発明によるシステムは、レンズの正確な位置決めが極めて重要であり、光軸に対するレンズのいかなる傾斜および/または回転も画質を低減させる顕微鏡、特に立体顕微鏡またはマクロスコープ(macroscope)での使用に特に適する。
【0030】
本発明について、添付図面を参照してより詳細にこれより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来技術によるレンズガイドシステムを下から示す断面図である。
【図2】図1のシステムの側面図である。
【図3】本発明によるシステムの第1の好ましい実施形態を示す図1に対応する底面図である。
【図4】図3の実施形態の側面図である(図2に対応する)。
【図5】本発明の別の好ましい実施形態の一部分の詳細な断面底面図である。
【図6】本発明のさらなる好ましい実施形態を示す図5に対応する底面図である。
【図7】本発明の別の好ましい実施形態を示す図5に対応する底面図である。
【図8】本発明のさらなる好ましい実施形態を示す図5に対応する底面図である。
【図9】本発明のさらに別の好ましい実施形態を示す図5に対応する底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1および図2に示される立体顕微鏡用の従来技術によるガイドシステムまたは装置は、全体として参照番号100で示される。示される装置は2つのガイドロッド112、114を含み、ガイドロッド112は、主ガイドロッドとして設計され、ガイドロッド114は回転防止手段として設計される。レンズスライド120は、ガイドロッド112、114に沿って、すなわち、図2に示される双方向矢印101の方向に移動可能である。この移動は、レンズスライド120に装着されたレンズ109の光軸に沿った(すなわち、光軸に平行する)移動に対応する。同じ高さに配置された図示の2枚のレンズの配置は、2つの平行する観察光路が提供される立体顕微鏡の構成に対応する。通常、ズームシステムは、上下に配置され、ガイドロッド112、114上で変位可能な2枚以上のそのようなレンズスライドを有する。
【0033】
レンズスライド120はV字形の溝134を有し、その溝134により、ガイドロッド112に沿ってガイドされる。
【0034】
参照番号110は、レンズスライド120のカム従動節111に係合する円筒カムを示す。円筒カム110が長手軸110aを中心として手動で、またはモータ手段により回転した場合、力Fがレンズスライド120に対して及ぼされる。この力の第1の成分は、ガイドロッド114の方向、すなわち、双方向矢印101の方向に作用し、第2の力成分は、円筒カム110の接線方向に、すなわち、図2の用紙平面に垂直に入って出る方向に作用する。
【0035】
双方向矢印101の方向における上記第1の力成分は、保持力に打ち勝たなければならず、その結果、ガイドロッド112、114上にレンズスライド120の摩擦が生じる。
【0036】
ガイドロッド112からのカム従動節111の距離により、レンズスライド120は、ガイドロッド112に垂直な平面から傾斜する傾向を有する。そのような傾斜の場合、レンズ109の中心は、ガイド溝134の上記V字形構成により、適切な位置から移動する。そのような傾斜は、特に立体顕微鏡において非常に大きな欠点になる。
【0037】
さらに、上記第2の力成分(円筒カム110の接線方向における)は、レンズスライド120が、ガイドロッド112の長手軸を中心として回転する傾向を生み出す。この回転も、レンズ109の中心を適切な位置から移動させる。
【0038】
これら傾斜および回転移動を打ち消すために、磁化可能(例えば、軟磁性)材料で作られたガイドロッド112、114と相互作用して磁力を生み出す永久磁石が、レンズスライド120上に形成される。142として示され、ガイドロッド114と相互作用する永久磁石は、図1に特によく示されている。ガイドロッド112と相互作用する2つの磁石が、144として示される。上記保持力は、これら磁石により生成されるか、またはこれら磁石に実質的に影響される。円筒カムの回転中、レンズスライドはガイドロッドに沿って摺動し、磁力によりそこに保持される。ここで、永久磁石はポケット142aにより支持される。そのようなポケットにより、永久磁石とガイドロッドとの間に定義された距離を提供することが可能になる。ポケットは、例えば、金属等の磁化可能(軟磁性)材料から製造し得る。
【0039】
ガイドロッド112と相互作用する永久磁石144は、レンズスライド120をガイドロッド112に対して保持し、上記傾斜移動を回避する役割を果たす。
【0040】
ガイドロッド114と相互作用する磁石142も、ガイドロッド112を中心としたレンズスライド120の回転を回避する役割を果たす。磁石142は、レンズスライド120をガイドロッド114に引きつけることによりそれを行う。このために、レンズスライド(図示の変形ではシェル142a)は、レンズスライド120の逆側に配置されてさらなるガイドロッド112と係合する上記V字形溝134に平行して延びるレンズスライド120の平坦面115を有する。
【0041】
磁石142は、ロッド114からある距離をおいてこの表面115の背後、すなわち、シェル142aの背後に配置され、この表面をロッド114に押し付ける。表面115およびV字形溝134が厳密に平行ではない場合、対立が生じる。すなわち、レンズスライドが位置から回転する。この場合、通常、表面115の全体がロッド114に接触しているわけではなく、表面115の縁のみがロッド114に接触しており、これによっても摩耗が生じる。この表面平行性要件は、本発明により、さらに詳細に後述するように、車輪を使用し、それにより生じる点接触によりなくなる。
【0042】
全体的に、上記力Fおよび重力の作用に反して、かつ恐らくは、例えば、衝撃に応答して生じ得る加速力に反して、レンズスライド120をガイドロッド112および114に対して保持するために、非常に大きな磁力が必要である。これに関連して、打ち消すべき重力は、立体顕微鏡の(可変)空間的向きに既存する。極端な場合、重力は、力Fの上記成分のうちの1つと同じ方向に作用する。この場合も、生成される磁力は、生じるすべての力を打ち消すために十分でなければならない。
【0043】
V字形溝134が、ガイドロッド112、114の中心軸を通る平面116に対して傾斜することも、摩耗の増大に繋がる。
【0044】
しかし、これら欠点を回避するために必要であり、ガイドロッドとの磁石142、144の相互作用により提供される高磁力は、高摩擦および調整中のレンズスライド120の移動に対する抵抗を増大させる。
【0045】
全体的に、従来技術では、使用される磁石の保持力が、ガイドロッドからの距離に大きく依存するため、常に小さな許容差のレンズスライドが必要である。したがって、発生する磁力を厳しい許容差限度内に保持するために、磁石の非常に正確な取り付けおよび/または磁石とガイドロッドとの間隔の非常に正確な調整を提供する必要がある。
【0046】
これより、本発明の第1の好ましい実施形態について、図3および図4を参照して説明する。上述した従来技術と同様に、本発明のガイドシステム(全体的に参照番号300で示される)は、軟磁性を有する2つのガイドロッド312、314と、上記ガイドロッド上で変位可能なレンズスライド320とを含む。レンズスライド320は、円筒カム310に係合するカム従動節311を有する。円筒カム310が回転した場合、力Fがレンズスライド320に対して及ぼされ、レンズガイド320をガイドロッド312、314に沿って移動させる。従来技術の説明において述べたように作用する力成分は、ここでも同様に打ち消なければならない。
【0047】
この実施形態では、レンズスライド320には、永久磁性を有する磁化可能な車輪370が形成され、上記車輪は、回転軸370aを中心として回転可能なようにレンズスライド320に取り付けられる。この車輪370と軟磁性ガイドロッド314との磁気的相互作用は、車輪370とガイドロッド314との間に磁力を生成させる。レンズスライド320の変位中、車輪370は、磁力を維持しながら、ガイドロッド314に沿って転がる。
【0048】
車輪370の磁性は、ガイドロッド314に必要な保持力を提供するように選択されるか、またはそのような寸法にされる。車輪370は、レンズスライド320が変位する際にガイドロッド314に沿って転がることが可能なため、従来技術と比較して、プロセスで生じる摩擦力を最小に抑えることができる。したがって、所望であれば、保持力は、従来技術において可能なよりも高くなるように選択することができる。車輪はガイドロッド上を転がるため、車輪とガイドロッドとの間隔を微調整する必要はない。
【0049】
さらなるガイドロッド312上のレンズスライド320のガイドも、そのような磁化可能または永久磁性の車輪を使用して達成することができる。図3の表現では、一対のそのような車輪380、382が提供され、これら車輪380、382は、各回転軸380aおよび382aを中心として回転可能であり、レンズスライドが変位する際にガイドロッド312に沿って転がるように構成されるようにレンズスライド320に取り付けられる。車輪380、382は、ガイドロッド312に沿ったレンズスライド320のガイドが、従来技術によるV字形溝により提供されるガイドと同様であるように、互いに対して傾斜して配置される。この実施形態では、そのような一対の車輪は、図4に概略的に示されるように設けられる。したがって、図3および図4は、ロッド312に設けられた一対の車輪と、さらに上方に設けられ、従来技術により構成された磁石344とを有する実施形態を示す。これら磁石を一対の車輪として構成してもよいことに留意すべきである。そのような実施形態は、合計で2対の車輪を含むことになる。
【0050】
図3および図4に示されるような車輪380、382の傾斜した、またはV字形構成に対する代替として、1つのみの車輪を設け、例えば、ガイドロッド312に沿って転がるV字形円周面を有するように上記車輪を構成することも考えられる。この例を以下に与える。
【0051】
これより、本発明により使用される車輪の好ましい実施形態について、ガイドロッド314およびレンズスライド320の隣接部分をそれぞれ示す図5〜図9を参照して説明する。示される各車輪は、側面370’および円周転がり面370”を有する。同様の設計を、ガイドロッド312に係合するために設けてもよい。この場合、および後述する実施形態では、車輪は、特に、互いに対してVの形状に配置し得る。後述するすべての実施形態において、車輪は永久磁性を有する。ここでも、ガイドロッドが永久磁性を有してもよく、その場合、ガイドロッドと相互作用する車輪が、例えば、軟磁性を有し得ることも、本発明の範囲内であることに留意する。
【0052】
図5に示される実施形態では、車輪370は、強磁性であるか、軟磁性材料から作られ、回転軸370aを中心として(数学的に)回転可能なように玉軸受374により取り付けられた車輪372を含む。
【0053】
永久磁石378は、側面370’、すなわち、軟磁性車輪370の側に取り付けられる。例えば、車輪372の円周に側方に配置された、いくつかの永久磁石378を設けることが可能である。そのような構成では、個々の永久磁石378は、同一の極(図5ではN極で表される)が車輪372の側面370’に接触し、それにより、N極、車輪372、ガイドロッド314、およびS極を一緒に通る磁束が車輪370とガイドロッド314との間に磁力を生み出すような向きでなければならない。対応する磁場線を図5に概略的に示される。そのような構成では、磁束(巡回路)は、車輪372の外側領域または縁部領域内で閉じられる。
【0054】
もちろん、磁石378の各S極を車輪372の側面370’に取り付けて、対応する磁束を達成することも等しく可能である。
【0055】
個々の磁石378を使用することに代えて、対応する極性を有する輪形磁石を設けることも可能である。
【0056】
車輪370の設計に関しては、(非回転)軸車軸390、すなわち、回転軸370aの近傍が、非磁化可能な、例えば、非強磁性材料で作られて、車輪とガイドロッドとの間の磁力を低減する磁束による軸(車軸)の通過を回避する場合が有利である。しかし、軸(車軸)390が磁化可能材料で作られてもよいことに留意する。この場合、永久磁石が軸(車軸)390から、かつ回転軸370aから十分な距離を有することを確実にすることが有利である。
【0057】
有利なことに、軸(車軸)390は、玉軸受内に挿入または押し込まれる第1の端部390aと、軸方向ストップとして構成される中央部390bと、レンズスライド320のマウント320a内に挿入される第2の端部(390c)とを有する。もちろん、ここで示される軸(車軸)390は、単なる例としての役割を果たす。他の適した形状も可能である。
【0058】
図5から分かるように、軟磁性車輪372は、レンズスライド320が変位する際にガイドロッド314に沿って転がり、プロセス中、磁石378とガイドロッド314との間隔は一定のままである。これは、磁力を所望の大きさまで調整し、摩擦力をさらに低減できるようにするために有用である。しかし、車輪370がガイドロッド314に沿って転がる際、磁石378とガイドロッド314とを接触させることも可能である。
【0059】
本発明による車輪の別の変形を図6に示す。この変形は、主に、磁石378が車輪372の両側に設けられるという点で図5に示されるものと異なる。この実施形態では、比較的大きな磁力を非常に小さな空間内に提供することが可能である。生成される磁束は、磁力線により概略的に示される。
【0060】
この実施形態でも、軟磁性車輪372は、ここに概略的に示されるように、玉軸受374内に回転可能に取り付けられる。ここでも、軸(車軸)(ここではさらに詳細には示されない)は、非磁化可能材料から作られる。
【0061】
図7は、本発明により使用可能な車輪370の別の好ましい実施形態を示す。まず第1に、図5および図6に示される実施形態と異なり、各磁石378の各S極(または、輪形磁石が使用される場合には、この磁石のS極)が軟磁性車輪372の表面に接触することが分かる。
【0062】
図5および図6の実施形態と比較して車輪の軸受構成が簡略化されることが、この実施形態の特徴である。特に、この実施形態では、玉軸受は設けられない。むしろ、車輪372は軸(車軸)390に回転可能に直接取り付けられる。
【0063】
最後に、図8および図9は、本発明による磁化可能な車輪のさらなる好ましい実施形態を示す。車輪370の転がり周縁面370”がプロファイル形を有し、各プロファイルが、車輪が転がるように構成された特定のガイドロッド314の相補形であることが、図8および図9の実施形態の特徴である。
【0064】
図8の実施形態では、磁化可能な、特に永久磁性の車輪370の周縁面370”は、円の弧形であり、したがって、任意の所望の精度でガイドロッド314の円形断面に適合する。
【0065】
これに関連して、ガイドロッドおよび/または車輪の周縁面が、楕円形曲率等の他の曲率を有することも考えられる。
【0066】
図9の実施形態では、車輪周縁面370”はV字形プロファイルを有する。このプロファイルも、ガイドロッド上の車輪のガイドを向上させる。
【0067】
図8および図9の実施形態では、車輪370を軸(車軸)390に支持する軸受手段は、図7の軸受手段に対応するため、ここで再び詳細に説明しない。1つまたは複数の玉軸受を使用する軸受構成も考えられる。
【0068】
本発明のガイドシステムは、グリノー式立体顕微鏡、平行ズーム円筒状拡大光学器械を有する立体顕微鏡、およびシングルチャネルズームマクロスコープ内での使用に適する。
【0069】
磁化可能な車輪は、可能な限り小さな遊びを有して支持される。このため、例えば、市販の精密構成要素および/または精密な玉軸受の使用が可能である。
【0070】
摩擦低減に関する上記の有利な効果に加えて、本発明により使用される磁化可能な車輪370は、従来技術に使用される摺動構成要素と比較して摩耗が少ないことを特徴とする。
【0071】
さらに、車輪は、従来技術による面接触よりも傾斜に対して大きな耐性を提供する点接触を提供する。ガイドロッドに沿って転がる車輪を使用せずには、点接触を達成することは不可能である。この利点については、従来技術において既知のようなV字形溝および2つの車輪のV字形配置と併せて本明細書において上述した。
【0072】
本発明のガイドシステムは、ズームシステムの調整中、観察チャネルの位置決め可能なレンズ要素がズームシステムの光軸からずれない、または傾斜しないことが極めて重要な立体顕微鏡内での使用に特に適する。
【符号の説明】
【0073】
100 従来技術によるガイドシステム
109 レンズ
110、310 円筒カム
111、311 カム従動節
112、114、312、314 ガイドロッド
115 平坦面
116 平面
120、320 レンズスライド
134 ガイド溝
142、144、344、378 磁石
142a シェル
300 ガイドシステム
320a マウント
370、372、380、382 車輪
370a、380a、382a 回転軸
370’ 側面
370” 転がり周縁面
374 玉軸受
378 永久磁石
390 軸
390a 第1の端部
390b 中央部
390c 第2の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡、特に立体顕微鏡、またはマクロスコープの光軸に沿って光学要素、特にレンズをガイドするシステムであって、前記光軸に対して平行に延び、少なくとも部分的に磁化可能材料から作られる少なくとも1つのガイドロッド(312、314)を備えると共に、前記光学要素のためのキャリア(320)をさらに備え、前記キャリア(320)は、前記少なくとも1つのガイドロッド(312、314)に沿って変位可能であり、それ自体と前記少なくとも1つのガイドロッド(312、314)との間に磁気引力をもたらす手段を有し、
前記磁気引力をもたらす手段は、前記キャリア(320)が変位する際に軸車軸を中心として回転しながら前記少なくとも1つのガイドロッド(312、314)に沿って転がるように構成された少なくとも1つの磁化可能な車輪(370、380、382)を含み、前記少なくとも1つのガイドロッド(312、314)は磁化可能な材料で作られ、および/または前記磁化可能な車輪(370、380、382)は少なくとも部分的に永久磁性を有する、システム。
【請求項2】
前記磁化可能な車輪(370、380、382)は、前記ガイドロッド(312、314)に沿って転がるように構成された輪形永久磁石を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記磁化可能な車輪は、前記ガイドロッド(312、314)に沿って転がるように構成された軟磁性車輪(372)を含み、前記軟磁性車輪(372)の少なくとも片側または一側面(370’)に少なくとも1つの永久磁石(378)が設けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの永久磁石(378)は、前記軟磁性車輪(372)の両側のそれぞれに設けられる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの永久磁石(378)の極は、前記軟磁性車輪(372)の回転軸(370a)に関して互いに軸方向に位置合わせされる、請求項3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記軟磁性車輪(372)の異なる側にある前記永久磁石(378)の前記極は、互いに逆方向に向けられる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記磁化可能な車輪(370)が回転する軸(車軸)(390)は、非磁性材料または磁化可能材料から作られる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記車輪(370)は、玉軸受を使用して、または玉軸受を使用せずに前記軸(車軸)(390)を中心として取り付けられる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記磁化可能な車輪(370)の転がり周縁面(370”)はプロファイル形を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
2つのガイドロッド(312、314)が設けられ、各ガイドロッド(312、314)に沿って、少なくとも1つの磁化可能な車輪(370、380、382)が転がる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
互いにV字形に配置された少なくとも一対の磁化可能な車輪(380、382)が、1つのガイドロッド(312)に沿って転がるように前記ガイドロッド(312)に設けられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれが一項に記載のシステムを有する顕微鏡、特に立体顕微鏡、またはマクロスコープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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