説明

光学調整方法及びその調整方法を用いた画像読取装置

【課題】 カラー画像読取装置の光学調整方法で、RGB各色の解像力が所定値以上あり、かつ、RGB各色の解像力の差が所定値以下になるように、CCD等の撮像素子の位置を調整する。
イメージスキャナー、複写機等のカラー画像読取装置において、所定の解像力を有しつつ、黒文字検知等で誤判定をおこさない等の後段の処理に不都合がない、高画質な読取を可能とするカラー画像読取装置の光学調整方法を提供すること。
【解決手段】 複数の物高、RGB各色で、主走査方向と副走査方向の解像力のデフォーカス特性を測定する工程、
前記解像力のデフォーカス特性の測定結果に基づき、前記解像力の絶対値とRGB各色の解像力差で決まる共通深度幅を求める工程、
前記共通深度幅内で撮像素子の位置を決定する工程、
前記決定された位置に撮像素子を調整する工程、
を有するカラー画像読取装置の光学調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージスキャナー、複写機等に適用可能なカラー画像読取装置の光学調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なカラー画像読取装置の要部断面図を図8に示す。
【0003】
同図において、82は原稿台ガラスであり、その面上に原稿81が載置されている。87はキャリッジであり、照明系83、複数の反射ミラー84a、84b、84c、84d、84e、結像光学系85、そして読取手段86等を一体的に収納しており、モーターなどの副走査機構88により図中の副走査方向へ走査し、原稿81の画像情報を読み取っている。読み取られた画像情報は、図示しないインターフェイスを通じて、外部機器であるパーソナルコンピューターなどに送られる。
【0004】
ここで照明系83は、キセノン管、冷陰極管、LEDアレイ等の光源より成っている。なお、照明系83は、原稿81を効率よく照明するために、アルミ蒸着された反射板や、透明樹脂による導光部材を組み合わせて用いてもよい。
【0005】
84a、84b、84c、84d、84eは、各々反射ミラーであり、原稿81からの反射光をキャリッジ87内部で折り曲げて、キャリッジ87の小型化を図っている。
【0006】
85は結像光学系であり、原稿81からの反射光を読取手段87面上に結像させている。結像光学系85は、例えば回転対称面で形成されている屈折光学系や非回転対称非球面を含んだ屈折光学系やオフアキシャル反射光学系によって構成されている。
【0007】
読取手段86は、3つのラインセンサー(CCDやCMOS等の撮像素子)を互いに1次元方向(紙面と垂直な主走査方向)に平行となるように配置した、所謂モノリシック3ラインセンサーより成っている。3つのラインセンサー面上には各々赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の色フィルターが設けられており、このモノリシック3ラインセンサーで順次、原稿の色情報(R,G,B)を読み取っている。
【0008】
このようなカラー画像読取装置においては、高画質な読み取りのために、設計性能の向上だけでなく、組立調整の高精度化が強く求められている。特に、結像光学系等の製造誤差で発生する光学性能のバラツキは大きく、それを吸収すべく、光学調整が行われている。このような光学調整の調整項目としては、解像力、倍率、主走査位置、副走査位置等があり、特に解像力は重要な調整項目であり、R、G、B各色の解像力が、所定値以上になるようにラインセンサーの位置を調整している。
【0009】
例えば、特許文献1では、カラー画像読取装置の光学調整方法において、調整用チャートとラインセンサー間の距離を所定の範囲にわたって変化させ、所定の範囲の光学距離に位置するラインセンサーに調整用チャートを読み取らせて、R、G、Bの各色の画像信号を発生させ、R、G、Bの各色の画像信号に所定の演算処理を施して光学距離に対応した評価値を算出し、この評価値に基づいて光学距離の調整を行うことが開示されている。
【0010】
また、特許文献2では、解像力テストチャートの画像を読み取る画像読み取り部と、読み取り画像から解像度を測定する解像度測定部と、測定した解像度とあらかじめ調整規格設定部により定められた調整規格とを比較して調整位置を決定し、画像読み取り装置に調整位置をフィードバックして光学ユニットの焦点位置を移動させる調整位置決定部とを備えた光学調整装置及び光学調整方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−111743号公報
【特許文献2】特開2001−116983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の特許文献1及び2に開示された従来技術では、R、G、Bの各色解像力が所定値以上に調整できるものの、結像光学系の製造誤差によっては、R、G、Bの各色解像力の差が大きくなる場合が発生する。このR、G、Bの各色解像力の差が大きくなると、読み取った画像の後段の処理において不都合が発生する場合がある。例えば、R、G、Bの各解像力差で閾値レベルを決定している黒文字検知処理等で、黒文字を色文字と判定する誤判定をおこし、高画質な読取が達成できないという問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、黒文字検知等で誤判定をおこさない等、後段の処理に不都合がない、高画質な読取を可能とするカラー画像読取装置の光学調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明にかかわるカラー画像読取装置の光学調整方法は、
複数の物高、RGB各色で、主走査方向と副走査方向の解像力のデフォーカス特性を測定する工程、
前記解像力のデフォーカス特性の測定結果に基づき、前記解像力の絶対値とRGB各色の解像力差で決まる共通深度幅を求める工程、
前記共通深度幅内で撮像素子の位置を決定する工程、
前記決定された位置に撮像素子を調整する工程、
を有したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、イメージスキャナー、複写機等のカラー画像読取装置において、黒文字検知等で誤判定をおこさない等、後段の処理に不都合がない、高画質な読取を可能とするカラー画像読取装置の光学調整方法を提供することでできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用されるカラー画像読取装置の要部断面図
【図2】本発明が適用される光学調整装置の要部断面図
【図3】本発明の光学調整装置に用いられる調整用チャートの説明図
【図4】本発明の光学調整手順を説明するフローチャート
【図5】本発明の実施例1の共通深度幅説明図
【図6】本発明の実施例2の共通深度幅説明図
【図7】本発明の実施例3の共通深度幅説明図
【図8】従来のカラー画像読取装置の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明が適用されるイメージスキャナーや複写機等のカラー画像読取装置の要部断面図である。図中、2は原稿台ガラスであり、その面上に原稿1が載置されている。7はキャリッジであり、照明系3、複数の反射ミラー4a、4b、4c、4d、結像光学系5、そして読取手段6等を一体的に収納している。
【0019】
ここで照明系3は、キセノン管、冷陰極管、LEDアレイ等の光源より成っている。なお、照明系3は、原稿1を効率よく照明するために、アルミ蒸着された反射板や、透明樹脂による導光部材を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
4a、4b、4c、4dは、各々反射ミラーであり、原稿1からの反射光をキャリッジ7内部で折り曲げて、キャリッジ7の小型化を図っている。
【0021】
5は結像光学系であり、原稿1からの反射光を読取手段7面上に結像させている。結像光学系5は、例えば回転対称面で形成されている屈折光学系や非回転対称非球面を含んだ屈折光学系やオフアキシャル反射光学系によって構成されている。
【0022】
読取手段6は、3つのラインセンサー(CCDやCMOS等の撮像素子)を互いに1次元方向(紙面と垂直な主走査方向)に平行となるように配置した、所謂モノリシック3ラインセンサーより成っている。3つのラインセンサー面上には各々赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の色フィルターが設けられている。このモノリシック3ラインセンサーで順次、原稿の色情報(R,G,B)を読み取っている。
【0023】
上記構成において、照明系3から放射された光束は直接あるいは反射板(不図示)を介して原稿1を照明し、原稿1からの反射光を第1、第2、第3、第4の反射ミラー4a、4b、4c、4dを介してキャリッジ7内部でその光束の光路を折り曲げ結像光学系5により読取手段6(以下ラインセンサー6)面上に結像させている。そしてキャリッジ7を副走査機構8により副走査方向に移動させることにより、原稿1の画像情報を読み取っている。そして読み取られた画像情報は不図示のインターフェイスを通じて外部機器であるパーソナルコンピューターやプリンターなどに送られる。
【0024】
このようなカラー画像読取装置に用いられる光学調整装置について、図2を用いて説明する。キャリッジ調整装置27は、調整用チャート21、チャート用照明装置23、結像光学系位置調整機構25、読取手段位置調整機構26を有し、前述のキャリッジ7を載置して、光学調整が行える構成になっている。
【0025】
このキャリッジ調整装置27を用いて調整する項目としては、解像力、倍率、主走査位置、副走査位置等があり、キャリッジ7に照明系3、反射ミラー4a、4b、4c、4d、結像光学系5、ラインセンサー6等の部品を仮組したのちに、結像光学系5とラインセンサー6の位置をそれぞれ結像光学系位置調整機構25、読取手段位置調整機構26用いて調整している。
【0026】
ここで、本発明の特徴とするところの解像力調整方法に関して、図3及び図4を用いて詳細に説明する。図3は、キャリッジ調整装置27に用いられる調整用チャート21の説明図である。図3に示すように、ラインセンサー6の受光素子配列方向に対し垂直方向に並んだ万線パターン12と、ラインセンサー6の受光素子配列方向に対し平行方向から一定角度を持って並んだ万線パターン13が、各々ペアで、主走査方向の3箇所(中心部と両周辺部)に配置されている。
【0027】
この調整チャート21のパターンを結像光学系5によりラインセンサー6上に結像させ、解像力の評価を行っている。解像力の評価方法は、既知の技術であり、ここでは詳細を省略する。本発明では、白黒万線チャートのコントラストで評価している。
【0028】
図4は、本発明の光学調整手順を説明するフローチャートであり、ステップ順に詳細に説明する。
【0029】
まず、キャリッジ7に照明系3、反射ミラー4a、4b、4c、4d、結像光学系5、ラインセンサー6等の部品を仮組したのち、キャリッジ7をキャリッジ調整装置27に載置する。
【0030】
次に、チャート用照明装置23を点灯させ、図3で示した調整用チャート21を照明し、チャート像を結像光学系5により、ラインセンサー6上に投影する。ここで、読取手段位置調整機構26でラインセンサー6を結像光学系5の光軸方向に所定範囲移動させながら、所定ピッチで解像力を評価し、解像力のデフォーカス特性を測定する。解像力のデフォーカス特性は、チャートパターン位置に対応した主走査方向の3箇所(中心部1箇所と周辺部2箇所)で、主走査方向の解像力と副走査方向の解像力の両方を、R、G、B各色毎に取得する。(ステップ01)
次に、ステップ01で取得した解像力のデフォーカスデータをもとに、後述する共通深度幅を算出する。(ステップ02)
次に、ステップ02で算出した共通深度幅の算出結果にもとづき、ラインセンサー6の位置を決定する。本実施例1の場合には、共通深度幅の中心にラインセンサー6の位置を決定している。(ステップ03)
次に、ステップ03で決定したラインセンサー6の位置に、読取手段位置調整機構26を駆動させて、所定の位置へラインセンサー6を移動する。この際、解像力以外の項目、例えば倍率等が所定値を満たさない場合は、結像光学系位置調整機構25を利用して調整しても良い。(ステップ04)
上記のフローに従い調整後、結像光学系5とラインセンサー6は、ビス止め、接着等の既知の方法で固定され、光学調整終了となる。
【0031】
ここで、本発明の最大の特徴であるステップ02の共通深度幅算出工程に関して、より詳細に説明する。
【0032】
図5の(A)、(B)、(C)、(D)に示すグラフは、前述のステップ01で取得した解像力のデフォーカス特性の一例である。ここで、図5(A)はチャート中心部分でのR、G、B各色での解像力のデフォーカス特性であり、横軸はラインセンサー位置(mm)、縦軸は解像力の指標となるコントラスト(%)である。図5(B)は、チャート周辺部分でのR、G、B各色での解像力のデフォーカス特性であり、実線は主走査方向、点線は副走査方向を示している。説明の簡略化のため、周辺部分は片側1箇所のみ示している。図5(C)は、チャート中心部分でのR、G、B各色の解像力差のデフォーカス特性を示すグラフであり、横軸はラインセンサー位置(mm)、縦軸はR、G、B各色の解像力差の絶対値を示している。ここで、曲線XはGとBの解像力差の絶対値、曲線YはBとRの解像力差の絶対値、曲線ZはRとGの解像力差の絶対値を示している。図5(D)は、チャート周辺部分でのR、G、B各色の解像力差のデフォーカス特性を示すグラフであり、実線は主走査方向、点線は副走査方向の解像力差を示している。曲線X、曲線Y、曲線Zの定義は、図5(C)と同様である。
【0033】
ここで、共通深度幅の算出工程を説明する。
【0034】
まず、解像力の絶対値が、チャート中心部と周辺部の両方、かつ、R、G、Bの全ての色、かつ、主走査方向と副走査方向の両方、で所定値以上になる範囲を絶対値共通深度と定義する。一例として、コントラストの値が35%以上の範囲とした場合、実線aと実線bの間の範囲が絶対値共通深度となる。ここで実線aは、中心部のGのデフォーカス特性で決まり、実線bは、周辺部のGの主走査方向のデフォーカス特性で決まる位置である。
【0035】
一方、R、G、B各色の解像力差の絶対値が、チャート中心部と周辺部の両方、かつ、R、G、Bの全ての色差、かつ、主走査方向と副走査方向の両方、で所定値以下になる範囲を色差共通深度と定義する。一例として、コントラスト差の絶対値が16%以下の範囲とした場合、点線cと点線dの間の範囲が色差共通深度となる。ここで点線cは、中心部の曲線Zで決まり、点線dは、周辺部の主走査方向の曲線Xで決まる位置である。
【0036】
つまり、解像力の絶対値が所定値以上、かつ、RGB各色の解像力差が所定値以下になる範囲は、点線cと実線bの範囲となり、この範囲が共通深度幅となる。
【0037】
前記ステップ02の工程で、この共通深度幅を算出し、その結果にもとづき、ステップ03の工程でラインセンサー6の位置を決定している。本実施例1の場合は、共通深度幅の中心である実線eの位置としている。
【0038】
このような光学調整フローでラインセンサー6の位置調整を行うことにより、高画質な読取が可能なカラー画像読取装置を得ることができる。
【実施例2】
【0039】
以下、図6を参照して、本発明の第2の実施例について説明する。
【0040】
図6に示すデフォーカス特性は、実施例1で示した特性よりも、周辺部分の像面湾曲が大きく、像面がオーバー側に倒れている。これは、結像光学系のバラツキ、例えばレンズの肉厚や空気間隔に誤差を持った場合に発生する。このようなデフォーカス特性であった場合でも、実施例1で説明したのと同様にして、解像力の絶対値が所定値以上、かつ、R、G、B各色の解像力差が所定値以下になる共通深度幅を算出し、その中心位置(図6の実線e)にラインセンサー7を調整することで、高画質な読取が可能なカラー画像読取装置を得ることができる。
【実施例3】
【0041】
以下、図7を参照して、本発明の第3の実施例について説明する。
【0042】
前述の実施例1や実施例2で示した調整方法を行えば、所望の特性が得られ、高画質な読取が可能となるが、画像読取装置の使用環境によっては、温湿度等の影響によりピントズレが発生し、調整時初期の性能を維持できないという場合も発生する。特に温度等の影響を受けた場合には、初期位置からのピントズレが、プラス側とマイナス側で非対称に発生し、一方だけ所望の値を得られない場合が出てくる。本実施例では、その点を鑑み、環境でのピントズレ量を予測し、その分、ラインセンサーの初期位置を中心位置(実線e)から実線fにシフトさせている。こうする事により、環境変化があった場合でも安定して高画質な読取が達成できる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
5 結像光学系
6 読取手段(撮像素子)
7 キャリッジ
21 調整用チャート
27 読取手段位置調整機構
28 キャリッジ調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物高、RGB各色で、主走査方向と副走査方向の解像力のデフォーカス特性を測定する工程、
前記解像力のデフォーカス特性の測定結果に基づき、前記解像力の絶対値とRGB各色の解像力差で決まる共通深度幅を求める工程、
前記共通深度幅内で撮像素子の位置を決定する工程、
前記決定された位置に撮像素子を調整する工程、
を有するカラー画像読取装置の光学調整方法。
【請求項2】
前記共通深度幅は、
RGB各色の解像力が所定値以上、かつ、RGB各色解像力差の絶対値が所定値以下の条件で決めることを特徴とする特許請求項1記載のカラー画像読取装置の光学調整方法。
【請求項3】
前記撮像素子の調整位置は、
前記共通深度幅の中心位置であることを特徴とする特許請求項1記載のカラー画像読取装置の調整方法。
【請求項4】
前記撮像素子の調整位置は、
前記共通深度幅の中心位置から所定量シフトした位置であることを特徴とする特許請求項1記載のカラー画像読取装置の調整方法。
【請求項5】
特許請求項1〜4記載の光学調整方法で調整されたカラー画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−55277(P2011−55277A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202776(P2009−202776)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】