説明

光学部品、及びそれを用いた画像表示装置

【課題】ブラックマトリックスの影響を低減することができる光学部品、及び、それを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】シート状の光学部品は、複数のレンズ12aを備え、第1の方向に延在する凸面12bを含み、第1の方向に直交する第2の方向に配列されている。複数のレンズの各々の凸面は、第1の領域12dと、第2の方向において当該第1の領域の両側に存在する二つの第2の領域12と、を含んでいる。第1の領域は、一定の曲率を有し、第2の領域の第2の方向に対する傾きの絶対値が、第2の方向における縁部での第1の領域の当該第2の方向に対する傾きの絶対値以下となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品、及びそれを用いた画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶デバイスといった表示パネルと、アレイ状に配列されたシリンドリカルレンズを有するレンチキュラレンズとを組み合わせることにより、複数の視点に対して異なる画像を表示する表示装置がある。このような表示装置は、例えば、カーナビゲーション用途においては、運転席と助手席から異なる画像が見えるようにすることに利用される。また、このような表示装置は、右目と左目に異なる画像を見せることにより観察者に立体画像を認識させる立体画像表示装置として用いられることがある。
【0003】
特開2008−134617号公報には、立体画像表示装置にレンチキュラレンズを用いた例が開示されている。この立体画像表示装置の表示パネルでは、右目用画素と左目用画素が交互に配列されており、レンチキュラレンズによって、観察者の視認位置において右側に右目用の像が、左側に左目用の像が形成される。これによって、観察者の右目の網膜に右目用画素が構成する画像が、左目の網膜に左目用画素が構成する画像が結像される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−134617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、液晶デバイスの画素間にはブラックマトリックスと呼ばれる遮光部分が設けられている。かかるブラックマトリックスにより、観察者の視認位置では、ブラックマトリックスの像に対応する黒い領域が生じてしまう。このブラックマトリックスにより、見る位置等によっては、画像内に黒い筋や縞が観察される。したがって、従来の立体画像表示装置では、画質が低下することがある。
【0006】
本発明では、ブラックマトリックスの影響を低減することができる光学部品、及び、それを用いた画像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学部品は、シート状の光学部品である。この光学部品は、複数のレンズを備えている。複数のレンズは、第1の方向に延在する凸面を含んでいる。複数のレンズは、第1の方向に直交する第2の方向に配列されている。複数のレンズの各々の凸面は、第1の領域と、第2の方向において当該第1の領域の両側に存在する二つの第2の領域と、を含んでいる。第1の領域は、一定の曲率を有している。第2の領域の第2の方向に対する傾きの絶対値が、第2の方向における縁部での第1の領域の当該第2の方向に対する傾きの絶対値以下となっている。
【0008】
この光学部品によれば、第2の領域から出射される光の一部がブラックマトリクスに対応する領域に到達することにより、ブラックマトリックスの影響が低減される。
【0009】
本発明の光学部品は、凸面と反対側に一様な面を有することが好ましい。また、第2の領域の曲率半径が、第1の領域の曲率半径より大きくなっていてもよい。第2の領域の各々は、第2の方向に対して一定の傾きを有する平面であってもよい。第2の領域の傾きの絶対値が、縁部における第1の領域の傾きの絶対値に等しくなっていてもよい。
【0010】
本発明の別の側面は、画像表示装置に関するものである。この画像表示装置は、第1視点用の画像を表示する画素及び第2視点用の画像を表示する画素を含む複数の画素がマトリクス状に配列された表示パネルと、上述した本発明の光学部品であって表示パネルからの光を凸面から出射する該光学シートと、を備えている。
【0011】
この画像表示装置によれば、ブラックマトリックスの影響が低減されるので、従来の表示装置より高画質の画像が提供される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、ブラックマトリックスの影響を低減することができる光学部品、及び、それを用いた画像表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係る画像表示装置を概略的に示す図である。
【図2】図1に示す画像表示装置の光学部品におけるレンズの拡大図である。
【図3】従来のレンチキュラレンズでの光線の軌跡と、図1に示す画像表示装置の光学部品におけるレンズでの光線の軌跡とを示す図である。
【図4】別の実施形態に係る光学部品におけるレンズの拡大図である。
【図5】画像表示装置における種々のパラメータを示す図である。
【図6】実施例1の画像表示装置の像面での第2の方向Yにおける位置と光強度との関係を示す図である。
【図7】実施例2の画像表示装置の像面での第2の方向Yにおける位置と光強度との関係を示す図である。
【図8】比較例の画像表示装置の像面での第2の方向Yにおける位置と光強度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0015】
図1は、一実施形態に係る画像表示装置を概略的に示す平面図である。図1は、図中のZY平面に沿った任意の断面において、一実施形態に係る画像表示装置を概略的に示している。
【0016】
図1に示す画像表示装置1は、表示パネル10、及び、光学部品12を備えている。表示パネル10は、例えば液晶デバイスである。表示パネル10は、複数の画素10a及び10bを有している。表示パネル10は、第1の方向Xに延在する複数の画素列を有している。表示パネル10では、複数の画素10aを含む画素列と複数の画素10bを含む画素列とが第1の方向Xに直交する第2の方向Yにおいて交互に配列されている。複数の画素10aは右側視点用の画像を提供する画素であり、複数の画素10bは左側視点用の画像を提供する画素である。
【0017】
光学部品12は、複数のレンズ12aを有している。複数のレンズ12aは、第2の方向Yに配列されている。複数のレンズ12aの各々は、第1の方向Xに延在する凸面12bを含んでいる。また、複数のレンズ12aの凸面と反対側の面12cは一様な面、即ち、平面となっている。
【0018】
図2は、図1に示す画像表示装置の光学部品におけるレンズの拡大図である。図2に示すように、レンズ12aの凸面12bは、第1の領域12dと、第2の方向Yにおいて第1の領域12dの両側に位置する二つの第2の領域12eと、を含んでいる。
【0019】
本実施形態では、第1の領域12dは、一定の曲率半径R1をもった領域である。第2の領域12eの第2の方向Yに対する傾きの絶対値は、第2の方向Yにおける縁部での第1の領域12dの第2の方向Yに対する傾きの絶対値以下である。第2の方向Yにおける縁部での第1の領域12dの第2の方向Yに対する傾きの絶対値は、Y方向における凸面12bの中心位置から第1の領域12dの縁部までの円弧と当該円弧を含む円周の中心とが作る扇形の頂角をθとすると、|tanθ|で表すことができる。なお、第1の領域12dの幅をwとすると、θ=sin−1(w/2/R1)である。本実施形態では、第2の領域12eも一定の曲率半径R2をもった領域であり、その曲率半径R2は、曲率半径R1より大きくなっている。
【0020】
図3は、従来のレンチキュラレンズでの光線の軌跡と、図1に示す画像表示装置の光学部品におけるレンズでの光線の軌跡とを示す図である。従来の表示装置では、レンチキュラレンズの凸面が一定の曲率で形成されており、図3の(a)に示すように、画素の一点から出射した光は、像面IPにおいて左側視点用画像が結像する領域IL又は右側視点用画像が結像する領域IRの一方に入射する。したがって、画素10aと画素10bとの間のブラックマトリクスに対応する像面IP上の領域Bには、光が入射しない。
【0021】
一方、図3の(b)に示すように、本実施形態のレンズ12aの凸面12bを出射する光の一部は、領域Bにも入射する。これは、第2の領域12eから出射する光の広がりが第1の領域12dから出射する光の広がりよりも大きく、領域Bにも入射するからである。これによって、像面IPに結像される画像の画質が改善される。
【0022】
以下、別の実施形態に係る光学部品について説明する。図4は、別の実施形態に係る光学部品におけるレンズの拡大図である。図4に示す光学部品のレンズ12aの凸面12bでは、第2の領域12eが、縁部での第1の領域12dの第2の方向Yに対する傾きの絶対値|tanθ|と同一の傾きを有している。第2の領域12eの各々の傾きは、その第2の領域12eにおいて一定である。したがって、第2の領域12eは平面となっている。かかるレンズ12aを有する光学部品も、ブラックマトリクスの影響を低減することができる。
【0023】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、上述の実施形態では、光学部品12の面12cと表示パネル10とが接しているが、両者の間にガラス、接着剤、その他の光学部品などが挿入されていてもよい。この場合には、各部品の屈折率や厚さなどを考慮して、レンズのパラメータを決定する必要があるが、これらパラメータは光線行列を計算して設定することもできるし、光学設計用の市販されているシミュレータなどを用いても簡単に計算、最適化することができる。
【0024】
また、上述の実施形態は、2視点の画像表示装置であるが、より視点数の多い画像表示装置にも本発明の思想は適用可能である。もちろん、本発明の思想は、立体画像表示に限定されず、例えば車載用のデュアルディスプレイなどの複数の視点に対して異なる画像を表示する表示装置にも適用できる。
【0025】
さらに、上述の実施形態では、第2の領域が一定の曲率を有するものか、又は、平面であったが、第2の領域の形状をより複雑な形状とし、像面上に最適な光強度分布を与えることにより、より高画質な画像を提供することも可能である。なお、このような面形状は、光学設計用の市販されているシミュレータの最適化機能などを使って設計することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明に基づいてシミュレートした画像表示装置を実施例として、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
まず、図1に示した画像表示装置であって図2に示した形状のレンズを有するものを実施例1としてシミュレートした。図5に画像表示装置における種々のパラメータを示す。
【0028】
実施例1では、画素間のピッチPを0.15mm、レンズの厚みtを1.05mm、レンズの屈折率nを1.5、各画素の開口率w1/Pを0.7(w1は各画素の幅)、右側視点用画像が結像する領域IRの中心と左側視点用画像が結像する領域ILとの間距離w2を64mm、像面IPからレンズの凸面までの距離Lを300mmとした。
【0029】
次いで、図1に示した画像表示装置であって図3に示した形状のレンズを有するものを実施例2としてシミュレートした。実施例2におけるパラメータは、第2の領域の各々が第1の領域の縁部における傾きと同じ傾きを有する平面であること以外は、実施例1と同様のパラメータとした。
【0030】
また、比較のために、一定の曲率で形成された凸面を有する光学部品と表示パネルとを有する画像表示装置を比較例としてシミュレートした。比較例におけるパラメータは、凸面の曲率半径Rが一定の0.36mmであること以外は、実施例1と同様のパラメータとした。
【0031】
実施例1、実施例2、及び比較例の画像表示装置のそれぞれについて、像面での第2の方向Yにおける位置と光強度との関係を、図6〜8に示す。図8に示すように、比較例では、視点間の領域に光強度が0となる領域が像面中に存在した。一方、図6に示すように、実施例1では、視点間の領域における光強度が0ではなかった。即ち、実施例1では、視点間の領域に光が入射した。したがって、実施例1では、比較例に対して画質が改善されることが確認された。
【0032】
また、実施例2では、第1の領域の第2の方向Yにおける幅wを0.24mm、0.18mm、及び、0.15mmのそれぞれに変更した。実施例2では、図7に示すように、視点間の領域に光が入射したことに加えて、実施例1によりも滑らかな光強度分布が得られた。また、図7から明らかなように、第1の領域の第2の方向Yにおける幅wを変更することにより、より一様な光強度分布が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0033】
1…画像表示装置、10…表示パネル、10a,10b…画素、12…光学部品、12a…レンズ、12b…凸面、12c…面、12d…第1の領域、12e…第2の領域、IP…像面、IL…左側視点用画像の結像領域、IR…右側視点用画像の結像領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の光学部品であって、
第1の方向に延在する凸面を含む複数のレンズであって、前記第1の方向に直交する第2の方向に配列された該複数のレンズを備えており、
前記複数のレンズの各々の凸面は、第1の領域と前記第2の方向において該第1の領域の両側に存在する二つの第2の領域とを含んでおり、
前記第1の領域は、一定の曲率を有しており、
前記第2の領域の前記第2の方向に対する傾きの絶対値が、前記第2の方向における縁部での前記第1の領域の前記第2の方向に対する傾きの絶対値以下である、
光学部品。
【請求項2】
前記凸面と反対側に一様な面を有する、請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
前記第2の領域の曲率半径が、前記第1の領域の曲率半径より大きい、請求項1又は2に記載の光学部品。
【請求項4】
前記第2の領域の各々は、前記第2の方向に対して一定の傾きを有する平面である、請求項1又は2に記載の光学部品。
【請求項5】
前記第2の領域の傾きの絶対値が、前記縁部における前記第1の領域の前記傾きの絶対値に等しい、請求項4に記載の光学部品。
【請求項6】
第1視点用の画像を表示する画素及び第2視点用の画像を表示する画素を含む複数の画素がマトリクス状に配列された表示パネルと、
請求項1〜5の何れか一項に記載の光学部品であって、前記表示パネルからの光を前記凸面から出射する該光学部品と、
を備える画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−181610(P2010−181610A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24747(P2009−24747)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】